説明

スライドファスナー用引手延長具

【課題】指で摘みやすい把持部を形成し、該把持部とスライダーの引手部を連結する間の紐体を短くすることにより、上下左右斜めに引っ張り易くしたスライドファスナー用引手延長具を提供する。
【解決手段】スライドファスナーの引手hに、紐体sを介して取り付けられるスライドファスナー用引手延長具1であって、一端部50に、当該一端50から他端部51側に向けて切り込まれ、上記一端部50の外周に開口するとともに、上記他端部51側に内壁7を有するスリット4が形成されることにより、当該スリット4を間に挟んで対向する第1の把持片5と第2の把持片6とが形成され、かつ上記他端部51に、その外周面と上記内壁7との間を貫通して上記紐体sが挿通される孔部2が穿設されてなることを特徴とするスライドファスナー用引手延長具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドファスナーの開閉操作を容易にするために用いられるスライドファスナー用の引手延長具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にスライドファスナーは、洗濯ネット、衣類、靴、鞄類、小銭入れなどに取り付けられ、開口部の開閉や合わせ部の着脱を行うために利用されている。このスライドファスナーは、一対の細帯状の基材と、これら基材の対向線に沿って形成された務歯と、この務歯を左右対に配置し、その間を往復動することにより、上記務歯同士の保合・離脱を行うスライダーと、このスライダーに取り付けられた引手とで構成されている。
【0003】
この引手を指で摘んで引っ張り、スライダーを動かすことで、左右の務歯同士が順に噛み合い、または外れることにより開閉や着脱が出来るようになっている。
【0004】
ところが、このような引手は、親指と人差し指で摘むことを前提として、比較的小さいものが多い。そのため、女性が爪を長くしている場合や、寒い冬に手が悴んだ際は、小さい引手をしっかりと摘むことができない。そのため、指に力が入らず、ファスナーの開閉や着脱を行うのが困難になるなど問題点がある。
【0005】
また、加齢や病気によって視力が衰えた場合などは、引手自体が見えにくいこともある。さらに、手に怪我をして指の自由が思うように利かない場合には、引手を上手く摘むことができず、ファスナーの開閉や着脱を行うことが困難になるという問題点がある。
【0006】
そこで、たとえば下記特許文献1のように、丸紐などの紐体を用いた引手をスライダー胴体(引手)に装着できる引手連結具が提案されている。
【0007】
この引手連結具は、紐体連結用の連結体における一端外側にスライダー胴体に取付けるためのリング状の連結管を突設し、この連結体の連結環寄りの個所に紐体挿通用の貫通孔を横設し、この貫通孔に対して反連結環側から紐体挿通用の2条の挿通孔を直交状に連結し、挿通孔は連結体の内側が狭小状に開口する開口部を連結体の外面に向けて設け、貫通孔に紐体の端部を挿通し、紐体の両側を掴んで開口部から挿通孔に圧入し、紐体を引揃えて引張り端部を固定したものである。
【0008】
【特許文献1】特開平11−103911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載の引手連結具は、引手部分を紐体で形成することにより、上記紐体を指で摘んで引っ張り、スライダーを動かす際に大きく撓み、スライドファスナーの開閉操作がやりにくくなる。また、連結体から延びる紐体も長くなるため体裁も悪く邪魔になる。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、指で摘みやすい把持部を形成し、該把持部とスライダーの引手部を連結する間の紐体を短くすることにより、上下左右斜めに引っ張り易くしたスライドファスナー用引手延長具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、スライドファスナーの引手に、紐体を介して取り付けられるスライドファスナー用引手延長具であって、一端部に、当該一端から他端部側に向けて切り込まれ、上記一端部の外周に開口するとともに、上記他端部側に内壁を有するスリットが形成されることにより、当該スリットを間に挟んで対向する第1の把持片と第2の把持片とが形成され、かつ上記他端部に、その外周面と上記内壁との間を貫通して上記紐体が挿通される孔部が穿設されてなることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のスライドファスナー用引手延長具において、上記孔部が楕円形に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または2に記載のスライドファスナー用引手延長具において、上記他端部に、上記孔部を中空部とする円筒状の補強部が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライドファスナー用引手延長具において、上記第1および第2の把持片が、上記他端部側から上記一端部側に向けて漸次幅寸法が増大するとともに、上記一端が円弧状をなす板状に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の本発明によれば、上記紐体を上記孔部に挿通して連結することで、上記スライドファスナー用引手延長具と上記引手間の上記紐体の長さ寸法を短くすることができる。また、上記紐体を撓ませることなく上下左右斜めに引っ張ることができうるために、開閉操作が容易になる。さらに、スライドファスナーの開閉操作を行わない時も、上記紐体の長さ寸法を短くすることができるために、上記スライドファスナー用引手延長具が邪魔になることもない。また、上記第1および第2把持片を摘む際に、上記第1および第2把持片の間に上記スリットが形成させることにより、互いに対向する方へと撓むことで力が入れやすく、よって当該引手延長具を確実に把持することができる。
【0016】
請求項2に記載の本発明によれば、上記孔部を楕円形に形成しているために、挿通された二本の上記紐体が、それぞれ重なり合うよにして、上記孔部に体裁よく収まる。また、上記孔部に形成されている上記楕円形の長軸を、上記スライドファスナー用引手延長具の平板面と垂直になるように形成しているため、二本の上記紐体も垂直方向に重なり合うこととなり、上記引手の上記貫通孔に通された上記紐体が捻ることなく、上記スライドファスナー用引手延長具の上記平板面と上記スライドファスナーの上記引手の平板面とを平行に保持することができ、使用しないときの体裁もよい。
【0017】
請求項3に記載の本発明によれば、上記引手と上記スライドファスナー用引手延長具との連結部にある上記孔部を、円筒状の中空部として形成しているために、ファスナーの開閉時に引張力や曲げ力が作用する当該部分の強度を増加させることにより、上記スリットやスライドファスナー用引手延長具の全体を小型に形成することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の本発明によれば、上記第1および第2把持片は、一端部が円弧状をなす板状に形成されていることで、例えば、親指と人差し指で使用する場合に、持ちやすく摘みやすくなり開閉操作を容易に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜5は、本発明のスライドファスナー用引手延長具1の一実施形態を示すものである。
図5(a)に示すように、このスライドファスナー用引手延長具1が取り付けられるスライドファスナーの引手hには、一般に通常貫通孔pが設けられている。そして、このスライドファスナー用引手延長具1は、引手hに設けられている貫通孔pへ紐体sを通し、この紐体sを介して取り付けられる構造のものである。
【0020】
図1〜4に示すように、スライドファスナー用引手延長具1は、平板状に形成され、図2(a)で示すように、一端部50側から他端部51側に向けて、漸次幅寸法が狭くなるテーパー状をなしている。さらに、幅が広くなっている一端部50の側面は、円弧状をなしている。他方、狭まっている他端部51の端面は、平面状に形成されている。
【0021】
そして、一端部50側から他端部51側に向け、外周の側壁部の4分の3の範囲まで、スリット4が切り込まれている。これにより、スリット4を間に挟んで、対向する第1の把持片5と第2の把持片6が形成されている。さらに、他端部51側から一端部50側に向け、外周の側壁部の4分の1の範囲には、その内側に内壁7が形成されている。
【0022】
また、他端部51には、円筒状の補強部3が形成されている。そして、補強部3には、補強部3の中心軸と同軸に、楕円形の孔部2が穿設されている。この孔部2は、内壁7との間を貫通して、上記紐体sが挿通されるように構成されている。これにより、一端部50側から他端部51側までは、上記スリット4と上記内壁7との間を貫通して、上記紐体sが挿通される中空部が設けられている。
【0023】
さらに、スリット4の切り込み幅は、上記紐体sを通せる程度の幅に形成されている。また、一端部50側の外周の側壁面には、紐体sの結び目tを通せる程度に広い開口部が形成されている。これにより、一端部50側の外周の側壁面には、段部52が形成されている。また、紐体sが挿通される中空部は、スリット4の切り込み幅に段部52が設けられているために、その中央部は、紐体sの結び目tが収まるように幅広部10が形成されている。
【0024】
また、スリット4を間に挟むように対向する第1把持片5の外側面には、一端部50側の円弧と同心で形成される円形で平坦な第1把持部8が設けられている。他方、第2把持片6の外側面にも、一端部50側の円弧と同心で形成される円形で平坦をなす第2把持部9が設けられている。
【0025】
以上の構成からなるスライドファスナー用引手延長具1をスライドファスナーの引手hに取り付けるには、まず図5(a)に示すように、スライドファスナーの引手hに設けられた貫通孔pに紐体sの一端を通す。そして、この紐体sの両端を合わせ揃えてから、二本に重なった紐体sの両端を他端部51の端面より、孔部2の中へ挿入する。この孔部2へ紐体sを通した後、スリット4が形成されている外周の側壁部より上記紐体sを引き出す。
【0026】
そして、図5(b)に示すように、スリット4から引き出した紐体sのそれぞれの端を、一端部50の側面付近で結び合わせる。そのとき、図5(c)に示すように引手延長具1と引手hの距離が短くなるように、引手延長具1を適当な位置に移動させるとともに、他端部51側に向かって、結び目tも移動させ結んでいく。
【0027】
さらに、図5(d)に示すように、紐体sをもう一度結び合わせ、紐体sが解けないように二度結びにする。結び目tは、スリット4内の幅広部10の中空孔内に収まる。その後、上記スリット4から飛び出ている紐体sを切り落とし、体裁を整える。
【0028】
上述の実施形態のスライドファスナー用引手延長具1によれば、紐体sを孔部2に挿通して連結することで、スライドファスナー用引手延長具1と引手h間の紐体sの長さ寸法を短くすることができる。また、紐体sを撓ませることなく上下左右斜めに引っ張ることができるために、開閉操作が容易になる。さらに、スライドファスナーの開閉操作を行わない時も、紐体sの長さ寸法を短くすることができるために、スライドファスナー用引手延長具1が邪魔になることもない。
【0029】
また、第1および第2把持片5,6を摘む際に、第1および第2把持片5,6の間にスリット4が形成させることにより、互いに対向する方へと撓むことで力が入れやすく、よって引手延長具1を確実に把持することができる。さらに、第1および第2把持片5,6は、一端部50が円弧状をなす板状に形成されていることで、例えば、親指と人差し指で使用する場合に、持ちやすく摘みやすくなり開閉操作を容易に行うことが出来る。
【0030】
さらに、引手hとスライドファスナー用引手延長具1との連結部にある孔部2を楕円形に形成しているために、挿通された二本の紐体sが、それぞれ重なり合うよにして、孔部2に体裁よく収まる。また、孔部2に形成されている上記楕円形の長軸を、スライドファスナー用引手延長具1の平板面と垂直になるように形成しているため、二本の紐体sも垂直方向に重なり合うこととなり、引手hの上通孔pに通された紐体sが捻ることなく、スライドファスナー用引手延長具1の上記平板面と上記スライドファスナーの引手hの平板面とを平行に保持することができ、使用しないときの体裁もよい。
【0031】
また、引手hとスライドファスナー用引手延長具1との連結部である補強部3を、円筒状の中空部として形成しているために、ファスナーの開閉時に引張力や曲げ力が作用する当該部分の強度を増加させることにより、スリット4やスライドファスナー用引手延長具1の全体を小型に形成することが可能となる。
【0032】
そして、このスライドファスナー用引手延長具1によれば、引手hの貫通孔pに紐体sを通し、この紐体sを孔部2に挿通して紐体sを結び合わせるという簡単な装着方法で取り付けることが出来るようになる。
【0033】
なお、上記実施の形態において、スライドファスナー用引手延長具1の把持部材を板状の第1および第2把持片5,6を用いた場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、半球体のものでも良く、また、形状にとらわれない把持部材でも対応可能である。また、孔部2の形状においても、楕円形を用いた場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、非円形の形状であれば良く、また、六角形や八角形などの多角形でも対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態を示す全体の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の構成を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】本発明のスライドファスナー用引手延長具を引手への取り付け手順を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 引手延長具
2 孔部
3 補強部
4 スリット
5 第1把持片
6 第2把持片
7 内壁
8 第1把持部
9 第2把持部
10 幅広部
50 一端部
51 他端部
52 段部
h 引手
p 貫通孔
s 紐体
t 結び目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナーの引手に、紐体を介して取り付けられるスライドファスナー用引手延長具であって、
一端部に、当該一端から他端部側に向けて切り込まれ、上記一端部の外周に開口するとともに、上記他端部側に内壁を有するスリットが形成されることにより、当該スリットを間に挟んで対向する第1の把持片と第2の把持片とが形成され、
かつ上記他端部に、その外周面と上記内壁との間を貫通して上記紐体が挿通される孔部が穿設されてなることを特徴とするスライドファスナー用引手延長具。
【請求項2】
上記孔部は、楕円形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用引手延長具。
【請求項3】
上記他端部には、上記孔部を中空部とする円筒状の補強部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスライドファスナー用引手延長具。
【請求項4】
上記第1および第2の把持片は、上記他端部側から上記一端部側に向けて漸次幅寸法が増大するとともに、上記一端が円弧状をなす板状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライドファスナー用引手延長具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−284230(P2008−284230A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133288(P2007−133288)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000115968)レック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】