説明

スライドレール

【課題】傾斜棚、高所にも受けられる収納棚等に使用されるスライドレールに関するもので、全閉状態でロックを解除した時の移動側レールの当初の飛び出しをなくすだけでなく、引出し時に加速することもなく、最後まで移動側レールが自動的引出されるスライドレールを提供する。
【解決手段】移動側レール2の引出し方向への走行時には、走行位置に関わらず一定の抵抗を付加し、移動側レール2の収納方向への走行時には、前記抵抗を解除する走行制御装置80を移動側レール2と固定側レール1間に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜棚、高所に設けられる収納棚等に使用されるスライドレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なスライドレールは、引出し方向への移動側レールの走行を極力軽くする方向で工夫がなされてきた。
従って、傾斜棚等(前下がりとなった棚、あるいは引出し)に、従来のスライドレールを使用すると、ロック機構で全閉状態に維持された傾斜棚等のロック状態を解除すると、重量によって、引出し方向(開方向)に急激に動き出し、加速して、最大スペードで、全開時ストッパーに衝突して停止する。このため、衝突の衝撃によって、全開時ストッパーが破損したり、急激な飛び出しによって、作業者に危険をおよぼしたりすることがあった

【0003】
これを防止する為、バネ部材の復元力によって、移動側レールが自動的に収納されるスライドレールを傾斜棚等に使用する事があった。(例えば特許文献1参照。)
この場合、バネ部材を使用しているので、移動側レールの引出し量が多くなればなるほどバネ部材の復元力が大きくなるので、全閉状態でロックを解除した時の移動側レールの当初の飛び出しをなくそうとすると、移動側レールが自動的に引出されず、移動側レールが最後まで自動的に引出されるようにすると、ロックを解除したときの引出し等の飛び出しを防ぐことができなかった。
【0004】
【特許文献1】実公平4−9860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、全閉状態でロックを解除した時の移動側レールの当初の飛び出しをなくすだけでなく、引出し時に加速することもなく、最後まで移動側レールが自動的引出されるスライドレールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、移動側レールの引出し方向への走行時には、走行位置に関わらず一定の抵抗を付加し、移動側レールの収納方向への走行時には、前記抵抗を解除する走行制御装置を移動側レールと固定側レール間に設けたものである。
【0007】
次に、本発明が第2の手段として構成したところは、第1の手段として構成したところに加え、走行制御装置は、移動側レールの走行方向に渡って移動側レールに配設されるラック部材と、固定側レールに設けられる制御部材よりなり、制御部材は、移動側レールの引出し方向への走行時にはラック部材に直接的あるいは間接的に噛み合って一定の抵抗が付加されながら回転するピニオンを有する一方向性のロータリーダンパーが組み込まれているものである。
【0008】
次に、本発明が第3の手段として構成したところは、第1の手段として構成したところに加え、走行制御装置は、移動側レールの走行方向に渡って移動側レールに配設されるラック部材と、固定側レールに設けられる制御部材よりなり、制御部材は、移動側レールの走行時にラック部材と噛み合う補助ピニオンと、移動側レールの引出し方向への走行時には補助ピニオンに噛み合って一定の抵抗が付加されながら回転し、移動側レールの収納方向への走行時には、補助ピニオンが離間し無回転となるピニオンを有する両方向性のロータリーダンパーが組み込まれているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によると、移動側レールの引出し方向への走行時には、走行位置に関わらず一定の抵抗としているので、移動側レールの当初の飛び出し、及び走行時の加速がなく、自動的に最後まで引出され、移動側レールの収納方向への走行時には、前記抵抗を解除するので、移動側レールの収納方向の走行に支障をきたすことはない。
請求項2に記載の発明によると、前記効果に加え、ラック部材と制御部材よりなる構成であるので、部材管理が容易で、走行制御装置の組み立てが容易で、既存のスライドレールにも簡単に走行制御装置を取付けることができる。
請求項3に記載の発明によると、第2の手段として構成したところの効果に加え、制御部材は、補助ピニオンをピニオンと離間したり、ピニオンに噛み合ったりする構成としているので、安価な両方向性のロータリーダンパーを使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、移動側レールの引出し方向への走行時には、走行位置に関わらず一定の抵抗を付加し、移動側レールの収納方向への走行時には、前記抵抗を解除する走行制御装置を移動側レールと固定側レール間に設けたスライドレールにおいて、走行制御装置は、移動側レールの走行方向に渡って移動側レールに配設されるラック部材と、固定側レールに設けられる制御部材よりなり、制御部材は、移動側レールの走行時にラック部材と噛み合う補助ピニオンと、移動側レールの引出し方向への走行時には補助ピニオンに噛み合って一定の抵抗が付加されながら回転し、移動側レールの収納方向への走行時には、補助ピニオンが離間し無回転となるピニオンを有する両方向性のロータリーダンパーが組み込まれているものである。
【実施例】
【0011】
以下、添付図面に基づいて実施例を説明する。
図1、図2において、符号1は固定側レールを示し、符号2は移動側レールを示し、符号3は中間レールを示し、符号4は固定側レール1のボール保持板を示し、符号6は移動側レール2のボール保持板を示し、符号80はスライドレール100の走行制御装置を示している。そして、図1において左側斜め下方向を引出し側、右側斜め上方向を収納側とし、引出し側、収納側の両方向を走行方向として説明する。
【0012】
固定側レール1は、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げた内面長手方向にボール案内溝を有する上下の両折曲縁11、11と、家具等の本体側と連結される固定側レール基板12より断面略C字形に形成されている。
そして、固定側レール基板12の収納側端部を移動側レール2方向に折り曲げて固定側収納時ストッパー13が形成され、固定側レール1の基板12の引出し側端部を移動側レール2方向に折り曲げて固定側移動時ストッパー(図示せず)が形成されている。
【0013】
中間レール3は、上記固定側レール1に挿入可能な大きさで固定側レール1よりやや短い長さの固定側基板31と、固定側基板31の上下端部を外向き円弧状に折り曲げた上下の両折曲縁32、32よりなる断面略C字形の固定側中間レール30と、上記移動側レール2に挿入可能な大きさで固定側レール1よりやや短い長さの移動側基板311と、移動側基板311の上下端部を内向き円弧状に折り曲げた上下の両折曲縁322、322よりなる断面略C字形の移動側中間レール300よりなり、固定側基板31の後端部が移動側基板311の後端部より収納側に突出するようずらして背中合わせに固着した断面略I字形に構成されている。
【0014】
そして、スライドレール100の最大伸長時、ボール保持板4の収納側端面に緩衝部材を介して当接し、スライドレール100の最短収縮時、固定側収納時ストッパー13の内面に緩衝部材を介して当接する中間レール収納時ストッパー35が、固定側中間レール30の固定側基板31の収納側端部に、固定側レール1側に突出して形成されている。
又、スライドレール100の最大伸長時、移動側レール2のボール保持板6の引出し側端面が緩衝部材を介して当接するボール保持板引出し時ストッパー(図示せず。)が、中間レール3の移動側基板311の移動側端部に、移動側レール2側に突出して形成されている。
【0015】
ボール保持板4、6は対向した同形で、帯条金属板にて固定側レール1、移動側レール2及び、中間レール3との間に挿入可能な大きさで、かつ、両レール1、2の半分以下の長さで、基板41、61と上下の折曲片42、42、62、62からなり、基板41、61は中央部をコ字形に折り曲げ、そして、上下の両折曲片42、42、62、62の摺動方向の数箇所に複数個のボール40・・・を回転自在に保持している。
【0016】
移動側レール2は、固定側レール1と対向した断面同形で、ほぼ同長に形成され、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて形成された内面長手方向にボール案内溝を有する上下の両折曲縁21、21と、移動側レール基板22より、断面略C字形に形成されている。
【0017】
そして、移動側レール基板22の引出し側端部を固定側レール1方向に折り曲げて形成された移動側収納時ストッパー23と、移動側レール基板22の収納側端部の一部を固定側レール1方向に突出させて形成された移動側移動時ストッパー24を有している。
【0018】
実施例のスライドレール100は上記の如く構成され、スライドレール100の最大伸長時には、移動側レール2の移動側移動時ストッパー24にボール保持板6の収納側端面に当接し、ボール保持板6の引出し側端面は緩衝部材を介して中間レール3のボール保持板引出し時ストッパー(図示せず。)に当接し、中間レール3の中間レール収納時ストッパー35がボール保持板4の収納側端面に緩衝部材を介して当接し、ボール保持板4の引出し側端面が緩衝部材を介して固定側移動時ストッパー(図示せず。)に当接している。
【0019】
一方、スライドレール100の最短収縮状態では、中間レール3の収納側端部に形成された中間レール収納時ストッパー35が緩衝部材を介して固定側レール1の収納側端部に形成された固定側収納時ストッパー13に当接し、中間レール3のボール保持板引出し時ストッパー(図示せず。)の引出し側端面に移動側レール2の移動側収納時ストッパー23が緩衝部材を介して当接して停止する。
【0020】
走行制御置80は、図1、図4、図5に示す如く、固定側レール1の引出し側端部に取付けられる制御部材81と、移動側レール2の上折曲縁21の上面に走行方向全幅に渡って配設されるラック部材82より構成されている。
制御部材81は、固定側レール1の基板12の引出し側端部と連結された制御部材取付板120に連結される合成樹脂製の保持基板83と、保持基板83に連結される両方向性のロータリーダンパー84(以後、ロータリーダンパーという。)と、保持基板83と共に補助ピニオン85を回転自在に保持する合成樹脂製のカバー体86より構成されている。
【0021】
保持基板83は、移動側レール2側にロータリーダンパー84の取付凹部831と、取付凹部831内で移動レール側に突出する補助ピニオン85の基板側支持部832を有する基板部830と、基板部830の走行側両端部に連設された連結用突部833、833より合成樹脂材にて一体に形成されている。
そして、基板側支持部832には補助ピニオン85を回転可能で走行方向に移動可能に支持する案内支持溝834が形成されている。
符号835・・・は制御部材取付板120との連結孔、符号836・・はカバー体86
との連結孔、符号837・・・はカバー体86の連結時の位置決め孔、838・・・は取付凹部831に形成されたロータリーダンパー84の連結孔を示している。
【0022】
ロータリーダンパー84は、前記連結孔838、838に対応する取付孔841、841を有し、移動側レール2側に突出する回転中心軸(図示せず。)にはピニオン842が取付けられている。
補助ピニオン85は、ピニオン842の略2倍弱の径で、中心部に前記案内支持溝834に回転可能で走行方向に移動自在に嵌合する基板側回動中心軸851と、基板側回動中心軸851の反対側に位置する基板側回動中心軸851と同形のカバー側回動中心軸852より、合成樹脂材にて一体に形成されている。
【0023】
カバー体86は、前記基板部830と対向した対称形で、前記の取付凹部831対向してカバー側取付凹部861が形成され、カバー側取付凹部861内で前記基板側支持部832に対向してカバー側支持部862が形成され、カバー側支持部862には案内支持溝834に対向して、補助ピニオン85のカバー側回動中心軸852が回動自在で走行方向に移動可能に嵌合するカバ−側案内支持溝864が形成されている。
符号866・・は連結孔836・・・に対応して設けられた保持基板83との連結孔、符号867・・・は位置決め孔837・・・に対応して形成された嵌合突部を示している。
【0024】
保持基板83、ロータリダンパー84、補助ピニオン85、カバー体86は上記のように形成され、ロータリーダンパー84が取付けられた状態の保持基板83の案内支持溝834に補助ピニオン85の基板側回動中心軸851を嵌入し、この状態維持しながら、カバー体86の嵌合突部867、867を保持基板83の位置決め孔837、837に嵌合すると同時に、補助ピニオン85のカバー側回動中心軸852をカバ−側案内支持溝864に嵌入し、連結孔836・・・866・・・を一致させ、保持基板83側から連結ネジにて保持基板83とカバー体86を連結し制御部材81を構成する。
【0025】
尚、この状態で、図6、図7に示すように、補助ピニオン85の下側の一部は保持基板83及びカバー体86の下端面より突出し、固定側レール1(制御部材取付板120)に連結された状態で、ラック部材82と噛み合う。
ラック部材82は、移動側レール2の移動側レール基板22の外面側に連結された逆L字型のラック取付板220の上端突片221の上面に走行方向全幅にわたって配設されている。
【0026】
走行制御装置80は上記の如く構成されて、スライドレール100に取付けられ傾斜棚等に使用される。
例えば、図3に示すように、前面が開口する傾斜棚本体90の側板91、91の内面に前下がりの状態に配設され、左右の移動側レール2、2間に傾斜棚板92が連結され、傾斜棚板92の収納側端部と傾斜棚本体90の奥部内面間に自動係止装置50を取り付ける事で、傾斜棚板92が傾斜棚本体90に収納された状態が維持される。
そして、収納状態の傾斜棚板92を収納方向に押しやると収納状態が解除され、傾斜棚板92は、スライドレール100、100が前下がりの傾斜状態に収納されているので、引き出し方向に自走する。
この時、移動側レール2と固定側レール1間に走行制御装置80が設けられているので、
傾斜棚板92は急に前方に飛び出すことはない。
【0027】
すなわち、図6に示すように、移動側レール2(ラック部材82)が前方に移動すると、
ラック部材82と噛み合う補助ピニオン85は、基板側回動中心軸851とカバー側回動中心軸852が、案内支持溝834とカバ−側案内支持溝864に回転可能で走行方向に移動自在に嵌合しているので、引出し方向に一旦移動し、ロータリーダンパー84のピニオン842とも噛み合う。(図6に示す状態。)
これによって、補助ピニオン85は緩慢な回転に制御され、したがって、補助ピニオン85と噛み合うラック部材82の引出し方向への移動も緩やかとなり、傾斜棚板92は使用者に危険が及ばない穏やかなスピードで引出し方向へ自走し、移動側レール2が固定側レ−ル1に対し最大伸長状態となり停止する。
【0028】
次に 傾斜棚板92が最も引出された状態から、収納方向に移動させると、ラック部材82と噛み合う補助ピニオン85は一旦収納方向に移動し、ロータリーダンパー84のピニオン842から、補助ピニオン85は離間し、ピニオン842は無回転となり、補助ピニオン85は無抵抗で回転し、したがって、ラック部材82(移動側レール2)もロータリーダンパー84とは無関係に収納方向に移動し(図7に示す状態。)、やがて、プッシュラッチ装置93によって、傾斜棚板92(移動側レール2)はは収納状態が維持される。
尚、実施例では、両方向性のロータリーダンパー84(小型で安価)を使用しているので、補助ピニオンが必要であるが、一方向性のロータリーダンパーを使用し、ロータリーダンパーのピニオンがラック部材82と直接噛み合うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のスライドレールの斜視図
【図2】図1のスライドレールの要部断面図
【図3】本発明のスライドレールを傾斜棚に使用した状態の斜視図
【図4】制御部材の分解斜視図
【図5】制御部材の裏面側からの分解斜視図
【図6】移動側レールが引出し方向に移動(自走)する時の説明図
【図7】移動側レールが収納方向に移動する時の説明
【符号の説明】
【0030】
1 固定側レール
100 スライドレール
2 移動側レール
3 中間レール
8 走行制御装置
81 制御部材
82 ラック部材
83 保持基板
84 ロータリーダンパー
842 ピニオン
85 補助ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動側レールの引出し方向への走行時には、走行位置に関わらず一定の抵抗を付加し、移動側レールの収納方向への走行時には、前記抵抗を解除する走行制御装置を移動側レールと固定側レール間に設けたことを特徴とするスライドレール。
【請求項2】
走行制御装置は、移動側レールの走行方向に渡って移動側レールに配設されるラック部材と、固定側レールに設けられる制御部材よりなり、制御部材は、移動側レールの引出し方向への走行時にはラック部材に直接的あるいは間接的に噛み合って一定の抵抗が付加されながら回転するピニオンを有する一方向性のロータリーダンパーが組み込まれている事を特徴とする請求項1に記載のスライドレール。
【請求項3】
走行制御装置は、移動側レールの走行方向に渡って移動側レールに配設されるラック部材と、固定側レールに設けられる制御部材よりなり、制御部材は、移動側レールの走行時にラック部材と噛み合う補助ピニオンと、移動側レールの引出し方向への走行時には補助ピニオンに噛み合って一定の抵抗が付加されながら回転し、移動側レールの収納方向への走行時には、補助ピニオンが離間し無回転となるピニオンを有する両方向性のロータリーダンパーが組み込まれている事を特徴とする請求項1に記載のスライドレール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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