説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物

【課題】本発明の目的は、熱による成形品表面の色への影響がより少ない黄色の顔料を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を提供することである。
【解決手段】熱可塑性樹脂粉末(A)及び黄色着色剤(B)を必須成分とする着色スラッシュ成形用樹脂粉末組成物であって、黄色着色剤(B)が水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、かつ酸化クロム(G)を実質的に含有しないことを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の顔料を含有する着色スラッシュ成形用樹脂粉末組成物関するものである。
【背景技術】
【0002】
インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材として適する、熱可塑性樹脂粉末、特に熱可塑性ポリウレタン系樹脂粉末を主体とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物において、従来、黄色の顔料として酸化クロムが使用されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平6−116490
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、酸化クロムからなる黄色の顔料を使用したスラッシュ成形用の樹脂粉末組成物の成形品に熱を長期にわたってかけると、成形品表面の色が場合により変化するということがあるため、熱による色への影響がより少ない他の黄色顔料に代替することが要望されていた。
本発明の課題は、熱による成形品表面の色への影響がより少ない黄色の顔料を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、熱可塑性樹脂粉末(A)及び黄色着色剤(B)を必須成分とする着色スラッシュ成形用樹脂粉末組成物であって、黄色着色剤(B)が水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、かつ酸化クロム(G)を実質的に含有しないことを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物、及び該スラッシュ成形用樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなる樹脂成形品である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、熱による成形品表面の色への影響が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、熱可塑性樹脂粉末(A)とは、スラッシュ成形用に使用可能な樹脂粉末であれば特に制限はない。好ましい例としては、(以下、熱可塑性を省略して記載する。)ポリウレタン樹脂粉末、塩化ビニル樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ビニル芳香族樹脂粉末、アクリレート樹脂粉末、共役ジエン樹脂粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ、特に好ましいものはポリウレタン樹脂粉末である。
【0007】
ポリウレタン樹脂粉末におけるポリウレタン樹脂は、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等からなる樹脂である。
【0008】
ポリウレタン樹脂粉末としては、例えば以下の製造方法で得られるものが挙げられる。
(1)ウレタン結合およびウレア結合を有し、水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平8−120041号公
報等に記載されたものを使用することができる。
(2)ウレタン結合およびウレア結合を有するウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはジオール)と反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。
(3)ジイソシアネートと高分子ジオールと必要に応じて鎖伸長剤(低分子ジオール、低分子ジアミン)とを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)する方法で製造されるもの。
【0009】
塩化ビニル樹脂粉末は、例えば、懸濁重合法又は塊状重合法によって製造した塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーとエチレン酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニルモノマーを主成分とする共重合体の樹脂粉末が挙げられる。
【0010】
ポリオレフィン樹脂粉末は、一般的にオレフィン系熱可塑性エラストマーに属する物であればいかなるものも使用でき、さらに、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン−ゴム(EPM、EPDM)とプロピレン系重合体等のポリオレフィン等とを複合したオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。また、α−オレフィン共重合体よりなるオレフィン熱可塑性エラストマー、α−オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂から成るオレフィン熱可塑性エラストマーの微粉末も使用することができる。
【0011】
ビニル芳香族樹脂粉末には、芳香族ビニル化合物単独重合体、芳香族ビニル化合物とビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末等が含まれる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ブロモスチレン、ビニルスチレン、ビニルキシレン、フルオロスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0012】
アクリレート樹脂粉末は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルとビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末等が挙げられる。
【0013】
共役ジエン樹脂粉末は、共役ジエン系共重合体中の共役ジエン系部分を水素添加または一部水素添加して得られる共重合体であり、例えば、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ランダム共重合体の水素添加物、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物の樹脂粉末が含まれる。
【0014】
熱可塑性樹脂粉末(A)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmの範囲にある。
【0015】
本発明において、黄色着色剤(B)とは、水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、かつ酸化クロム(G)を実質的に含有しない着色剤をさすものとする。本発明において、酸化クロム(G)を実質的に含有しないとは、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の重量に対して、酸化クロム(G)の含有量が5ppm以下であることを言うものとする。
水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)は、製法、処理により黄、黄赤、赤褐、紫、黒色等の色を呈するが、本発明の水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)は黄色を呈するものである。
水酸化鉄(C)としては、Fe(OH)、Fe(OH)3等、酸化鉄(D)としては、Fe3等、酸化チタン(E)としては、TiO・BaO・NiO、TiO・NiO・Sb3等が挙げられる。
【0016】
水酸化鉄(C)の製法は、例えば硫酸第一鉄溶液にカ性ソーダ、ソーダ灰、アンモニアなどのアルカリを加えると、水酸化第一鉄の沈降が得られる。これを核として硫酸第一鉄溶液に懸濁し、鉄くずまたはアルカリを加えて空気を吹き込む。
酸化鉄(D)の製法は、例えば硫酸第一鉄溶液にカ性ソーダ、ソーダ灰、アンモニアなどのアルカリを加えると、水酸化第一鉄の沈降が得られる。これを核として硫酸第一鉄溶液に懸濁し、鉄くずまたはアルカリを加えて空気を吹き込み、500〜900℃で焼く。
【0017】
黄色着色剤(B)の必須成分は、水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)からなる群より選ばれる少なくとも一種であるが、水酸化鉄(C)が好ましい。

本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、黄色着色剤(B)を必須成分として含有して着色されているが、色は黄色に限定されているわけではなく、さまざまな色を呈するために黄色着色剤(B)以外の顔料、染料等の着色剤を含有していてもよい。
黄色着色剤(B)は、水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するほか、可塑剤、キレート分散剤等を含有していてもよい。黄色着色剤(B)中に含有される可塑剤は、下記に記載したスラッシュ成形用樹脂粉末組成物に必要により含有される可塑剤と同じであっても、異なるものであってもよい。
黄色着色剤(B)は被着色物中での分散性の観点から、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物を着色する前に可塑剤中に分散させておくことが好ましい。
【0018】
可塑剤としては、フタル酸エステル類[フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジイソデシル等];脂肪族2塩基酸エステル類[アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸−2−エチルヘキシル等];トリメリット酸エステル類[トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチル等];脂肪酸エステル[オレイン酸ブチル等];安息香酸エステル類[ジエチレングリコールジ安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステル等];脂肪族リン酸エステル類[トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシホスフェート等];芳香族リン酸エステル類[トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート等];ハロゲン脂肪族リン酸エステル類[トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(βークロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等];およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
キレート分散剤としては、例えばアルミニウム系キレート分散剤octadec-9-enyl acetoacetato-O1,O3)dipropan-2-olatoaluminiumt等が挙げられる。
【0020】
黄色着色剤(B)中、黄色着色剤(B)の重量に基づいて、水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)の重量は、好ましくは40〜100重量%、より好ましくは35〜55重量%である。
黄色着色剤(B)が、水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)のほかに可塑剤、キレート分散剤等を含有する場合は、例えばロールミルを用いて分散させる方法で製造することができる。
【0021】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の重量に対して、水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)を好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.03〜0.8重量%、さらに好ましくは0.05〜0.7重量%含有する。
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物中の水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)の含有量は、例えば誘導結合プラズマ発光分析装置、X線光電子分光装置等で分析することができる。
また、酸化クロム(G)の含有量は誘導結合プラズマ発光分析装置で分析することができる。
【0022】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物には、必要により可塑剤、安定剤、ブロッキング防止剤、離型剤、架橋剤、難燃剤等を含有させることができる。
【0023】
本発明において、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物を着色する方法としては、黄色着色剤(B)をそのまま使用してもよいし、また黄色着色剤(B)を含む数種の着色剤を混合してマスターカラーを作成し該マスターカラーを使用してもよい。マスターカラーを使用する方法が好ましい。
マスターカラーを製造する装置としてはプロペラ式撹拌機等がある。
【0024】
本発明において、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の着色は、該粉末組成物のどの製造工程において行ってもよいが、重合反応中(重合反応後熟成工程を行う場合、重合反応原料の仕込み等も本重合反応工程に含まれているものとする。)及び/又は該重合反応工程以前の工程において行われることが好ましい。
【0025】
着色剤により着色を受ける被着色物は、たとえば、着色スラッシュ成形用材料の原料、その混合物、ウレタン化反応途中の反応混合物、ウレタンプレポリマー、ウレア化反応途中の反応混合物、ウレタン化及びウレア化反応途中の反応混合物等がある。着色剤により着色を受ける被着色物は液状であることが好ましい。
被着色物を着色剤により着色する装置としては、リボン型撹拌翼付き反応容器等がある。
【0026】
着色剤により着色を受ける着色スラッシュ成形用材料の原料液又は重合物の液の25℃における粘度は、顔料成分の分散性、沈降性の観点から、好ましくは100〜60,000mPa・s、さらに好ましくは1,000〜40,000mPa・s、より好ましくは2,000〜5,000mPa・sである。粘度はB型粘度計で測定する。
【0027】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物からなる樹脂成形品はスラッシュ成形法で成形することができる。例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後、冷却後、固化させ、表皮を製造する方法で好適に実施することができる。
上記金型温度は好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは210〜280℃である。
【0028】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物で成形された表皮厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。成形表皮は、表面を発泡型に接するようにセットし、ウレタンフォームを流し、裏面に5mm〜15mmの発泡層を形成させて、樹脂成形品とすることができる。
【0029】
本発明の樹脂成形品は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等に好適に使用される。
【0030】
実施例
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0031】
製造例1
ウレタンプレポリマー(UP−1)の製造
内容積3Lのリボン型撹拌翼付き反応容器に、ブチレンアジペート(重量平均分子量1000、水酸基価112)36部、ヘキシレンイソフタレート(重量平均分子量900、水酸基価125)24部、ヘキサメチレンジイソシアネート15部、メチルエチルケトン15部、フィラー(酸化アルミニウム、メーカー:ジョージアエンゲル、品番:ASP400P)9部、酸化防止剤(メーカー:チバ・スペシャリティ、品番:IRGANOX 1010 )0.5部、光安定剤(メーカ:チバ・スペシャリティ、品番TINUVIN571)0.5部を仕込み、90℃で5時間反応させ、ウレタンプレポリマー(UP−1)100部を得た。
(UP−1)の粘度(65℃)は3500mPa・s、重量平均分子量は9000であった。
【0032】
製造例2
ブラウン系マスターカラー(PP−1)の製造
ホワイト着色剤(P−1)、ブラック着色剤(P−2)、ブラウン着色剤(P−3)、黄色着色剤(B−1)を重量比49.7:16.7:9.6:24.0でプロペラ式撹拌機で混合して、ブラウン系マスターカラー(PP−1)を得た。
ホワイト着色剤(P−1)は、EB−300[三洋化成工業 (株) 製、 ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル]39.5部、酸化チタン(白色)56.9部、含水アルミナ1.7部、含水ケイ酸0.7部、酸化亜鉛0.7部、キレート分散剤0.5部をロールミルで混練したペーストカラーである。
ブラック着色剤(P−2)はEB−300 84.5部、カーボンブラック15.0部、キレート分散剤0.5部を混練したペーストカラーである。
ブラウン着色剤(P−3)はEB−300 54.5部、茶色を呈する酸化鉄(Fe)(大日本インキ化学工業(株)製)42.3部、ケイ酸アルミニウム2.7部、キレート分散剤0.5部を混練したペーストカラーである。
黄色着色剤(B−1)は、EB−300 60部、黄色を呈する水酸化鉄(C−1)(大日精化工業(株)製)40部を混練したペーストカラーである。
【0033】
製造例3
黄色着色剤(B−2)の製造
黄色着色剤(B−2)は、EB−300 60部、黄色を呈する酸化鉄(D−1)(大日本インキ化学工業(株)製)40部を混練したペーストカラーである。
【0034】
製造例4
黄色着色剤(B−3)の製造
黄色着色剤(B−3)は、EB−300 60部、黄色を呈する酸化チタン(E−1)(チタニウムイエロー、石原産業(株)製)40部を混練したペーストカラーである。
【0035】
実施例1
内容積3Lのリボン型撹拌翼付き反応容器中でウレタンプレポリマー(UP−1)100部に、ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部を一定撹拌速度(30rpm)で撹拌しながら添加し混合した。(温度;60〜63℃、時間;3時間)。得られた着色したウレタンプレポリマー(UP−1’)100部とヘキサメチレンジアミンとメチルエチルケトンのジケチミン化物10部を撹拌棒で1分間混合し、そこに分散剤水溶液(DS−1)300部を加えて、ミキサー(型番;ULTRA−TURRAX T50、IKA−Labotechnik製)で混合撹拌し(回転数5,000rpm)乳化分散した。(DS−1)はサンスパールPS−8[三洋化成工業 (株) 製(無水マレイン酸とジイソブチレンの共重合体のナトリウム塩)]の2%水溶液である。その後得られた分散スラリーを遠心脱水後、乾燥機で乾燥し、着色された樹脂粉末を得た。篩で分級後、得られた樹脂粉末103部に、リン酸エステル系可塑剤24部、離型剤0.2部、シリカ0.5部混合することでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−1)を得た。スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−1)の重量に対する水酸化鉄の含有量は0.3重量%であった。(U−1)の重量に対する酸化クロムの含有量は5ppm(測定限界値)以下であった。
【0036】
製造例3
グレー系マスターカラー(PP−2)の製造
ホワイト着色剤(P−1)、ブラック着色剤(P−2)、ブラウン着色剤(P−3)、黄色着色剤(B−1)を重量比94.60:2.79:0.53:2.09で混合して、グレー系マスターカラー(PP−2)を得た。
【0037】
実施例2
ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部の代わりに、グレー系着色剤(PP−2)3部を使用する以外は、実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−2)を得た。スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−2)の重量に対する水酸化鉄の含有量は0.03重量%であった。(U−1)の重量に対する酸化クロムの含有量は5ppm(測定限界値)以下であった。
【0038】
実施例3
ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部の代わりに、黄色着色剤(B−1)3部を使用する以外は、実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−3)を得た。スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−1)の重量に対する水酸化鉄の含有量は0.6重量%であった。(U−1)の重量に対する酸化クロムの含有量は5ppm(測定限界値)以下であった。
【0039】
実施例4
ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部の代わりに、黄色着色剤(B−2)3部を使用する以外は、実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−4)を得た。スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−4)の重量に対する酸化鉄の含有量は0.6重量%であった。(U−1)の重量に対する酸化クロムの含有量は5ppm(測定限界値)以下であった。
【0040】
実施例5
ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部の代わりに、黄色着色剤(B−3)3部を使用する以外は、実施例1と同様にしてスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−5)を得た。スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−5)の重量に対する酸化鉄の含有量は0.6重量%であった。(U−1)の重量に対する酸化クロムの含有量は5ppm(測定限界値)以下であった。
【0041】
比較製造例1
ブラウン系比較着色剤(RPP−2)の製造
ホワイト着色剤(P−1)、ブラック着色剤(P−2)、ブラウン着色剤(P−3)、黄色系比較着色剤(RP−5)を重量比49.7:16.7:9.6:24.0で混合して、ブラウン系比較着色剤(RPP−2)を得た。
着色剤(P−1)、着色剤(P−2)、着色剤(P−3)は製造例2と同様である。
黄色比較着色剤(RP−5)は、EB300 54.5部、チタン、アンチモン、クロムの複合酸化物(大日本インキ化学工業株式会社製、品名POLYTON C5 YELLOW TPU−BASE)45.0部、キレート分散剤0.5部を混練したペーストカラーである。
【0042】
比較例1
ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部の代わりに、ブラウン系比較着色剤(RPP−2)3部を使用する以外は、実施例1と同様にしてスラッシュ成形用比較樹脂粉末組成物(RU−1)を得た。(RU−1)の重量に対する酸化クロムの含有量は0.02重量%であった。
【0043】
比較製造例2
グレー系比較着色剤(RPP−3)の製造
ホワイト着色剤(P−1)、ブラック着色剤(P−2)、ブラウン着色剤(P−3)、黄色比較着色剤(RP−5)を重量比94.60:2.79:0.53:2.09で混合して、グレー系比較着色剤(RPP−3)を得た。
着色剤(P−1)、着色剤(P−2)、着色剤(P−3)は製造例2と同様である。
黄色比較着色剤(RP−5)は、比較製造例1と同様である。
【0044】
比較例2
ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部の代わりに、グレー系比較着色剤(RPP−3)3部を使用する以外は、実施例1と同様にしてスラッシュ成形用比較樹脂粉末組成物(RU−2)を得た。(RU−2)の重量に対する酸化クロムの含有量は0.01重量%であった。
【0045】
比較例3
ブラウン系マスターカラー(PP−1)3部の代わりに、黄色比較着色剤(RP−5)3部を使用する以外は、実施例1と同様にしてスラッシュ成形用比較樹脂粉末組成物(RU−3)を得た。(RU−3)の重量に対する酸化クロムの含有量は0.04重量%であった。
【0046】
水酸化鉄、酸化鉄、酸化チタンの含有量
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の前処理は、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物を80℃にてジメチルホルムアミドで溶解させる。
分析は誘導結合プラズマ発光分析装置(メーカー:バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド、型番:ICP730−ES)を用いて行った。
【0047】
酸化クロムの含有量
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の前処理スラッシュ成形用樹脂粉末組成物を80℃にてジメチルホルムアミドで溶解させる。
分析誘導結合プラズマ発光分析装置(メーカー:バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド、型番:ICP730−ES)を用いて行った。測定限界値は5ppmである。
【0048】
評価方法
評価サンプルの作成方法
予め270℃に加熱したシボ付きNi電鋳型に、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(U−1)〜(U−5)、スラッシュ成形用比較樹脂粉末組成物(RU−1)〜(RU−3)を流し込み、電鋳型のもつ熱によって材料を溶融させ、厚さ1mm程度の均一な薄膜表皮を作成した。
【0049】
上記で得られた薄膜表皮について、次に示す試験法により、表皮の色、測色値、均一着色性、摩耗色落ち(乾布摩擦堅牢度)試験、耐熱老化性試験(色の保持率)の評価を実施し、結果を表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
(1)測色値
分光光度計(型番CM−3600d、コニカミノルタ社製)で表皮シボ面の測色(L*、a*、b*)を行った。まず、サンプルN数=10で測定を行い、各サンプルの測色値と標準板の測定値との差(ΔL*、Δa*、Δb*)を求めた。下記の式から各サンプルの10個のΔE*を計算し、その平均値を求めた。結果は表1に記した。
ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)20.5
ΔE*は薄膜表皮の色ぶれを示す。
【0052】
(2)均一着色性
表皮シボ面を目視で観察し、下記4段階で評価した。
◎・・・極めて良好
○・・・良好
△・・・若干むらが認められる
×・・・むらが認められる
【0053】
(3)摩擦色落ち(乾布摩擦堅牢度)試験
幅約30mm、長さ約200mmの試験片を切り取り、染色物摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製)に取り付け、白綿布を摩擦子にかぶせて固定し、摩擦試験を行った。白綿布の色落ち程度を目視で観察し、下記4段階で評価した。
◎・・・全く認められない
○・・・わずかに認められるが目立たない
△・・・明らかに認められる
×・・・著しく認められる
【0054】
(4)色の保持率(耐熱老化性試験)
薄膜表皮をモールド内にセットした状態でその上にウレタンフォーム形成成分[EOチップドポリプロピレントリオール(数平均分子量5,000)95部、トリエタノールアミン5部、水2.5部、トリエチルアミン1部およびポリメリックMDI61.5部からなる]を添加し発泡密着させ、ウレタンフォーム成形体を得た。この成形体をまず分光光度計(型番CM−3600d、コニカミノルタ社製)で表皮シボ面の測色(L*、a*、b*)を行い、その値を初期値とした。次にこの成形体を110℃の順風乾燥機内で2400時間熱処理した後、分光光度計(型番CM−3600d、コニカミノルタ社製)で表皮シボ面の測色(L*、a*、b*)を行い、実施例、比較例それぞれの色の保持率(%)を求めた。
色の保持率(%)の計算方法
色の保持率(%)=(熱処理後の測色値÷初期値)×100
【0055】
実施例1〜5を比較例1〜3と比較すると、測色値、均一着色性、摩擦色落ち試験においては同等の性能を有しており、耐熱老化性試験における色の保持率はブラウン同士、グレー同士、黄色同士を比較すると、より高い値を示すことがわかった。このことから、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、熱による成形品表面の色への影響が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形される表皮は、熱による色への影響が少なく、色ぶれが少なく、均一着色性に優れているので、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂粉末(A)及び黄色着色剤(B)を必須成分とする着色スラッシュ成形用樹脂粉末組成物であって、黄色着色剤(B)が水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、かつ酸化クロム(G)を実質的に含有しないことを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項2】
黄色着色剤(B)が水酸化鉄(C)を含有する請求項1に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項3】
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の重量に対して、水酸化鉄(C)、酸化鉄(D)及び酸化チタン(E)を0.01〜1重量%含有する請求項1又は2に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項4】
スラッシュ成形用樹脂粉末組成物の重量に対して、酸化クロム(G)の含有量が5ppm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂粉末(A)がウレタン樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなる樹脂成形品。

【公開番号】特開2008−156494(P2008−156494A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347624(P2006−347624)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】