説明

スリッター装置

【課題】シート材の位置補正をより精度よく行うことが可能なスリッター装置を提供する。
【解決手段】スリッター装置100において、ロールコア1とロールコア1の周囲に巻回されたシート材とを備えたロール2から巻き出されたシート材を、その巻き出し方向に搬送する走行制御部4と、シート材の巻き出し方向において、走行制御部4の下流に設けられ、シート材を巻き出し方向に切断する上切断部6及び下切断部7との間に、巻き出し方向に交差する方向におけるシート材の位置を検出する第1位置検出部21を備えている。そして制御装置5は、第1位置検出部21の検出結果に基づいて、シート材の巻き出し方向に交差する方向における位置を調整するように、第1移動部にロール2及び走行制御部4を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールコアと当該ロールコアの周囲に巻回されたシート材とを備えたシートロールから巻き出されたシート材を、その巻き出し方向に切断するスリッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻き回されたシート材を引き出して、引き出したシート材の走行方向に切れ目を入れて所定寸法幅に切断(以下、「スリット」と称する)し、所定幅のシート材を形成するようなスリッター装置においては、ロール状に巻き回されたシート材を引き出し、搬送ローラーに掛け渡してシート材を走行させる。この場合、シート材は幅方向の位置を変動させながら走行する(以下、「蛇行」という)。このようにシート材が蛇行する原因として、ロールの巻き姿がシートエッジ不揃いである、シート材の厚さ分布が均一でない等が挙げられる。
【0003】
したがってスリッター装置には、従来、シート材の蛇行を抑制する制御機構が設けられており、当該機構によりスリット部とシート材との相対位置を制御している。このような蛇行制御機構は、例えば、シート材に予め形成されたスリット位置決め基準パターンを、シート材の巻き出し位置の近傍において、光電管やCCDカメラ等のセンサーで検出し、検出した位置情報信号に基づいて、シート材の幅方向の位置が適正な位置になるように、シート材の巻き出し部の位置を移動させる。また、引き出したシート材のエッジ位置を検出することによって、シート材の幅方向の位置を制御する方法も行われている。
【0004】
このようなシート材の位置補正技術として、特許文献1には、スリット部の近傍においてシート材の幅方向の位置変動を検出し、その検出結果に基づいて、位置検出部、スリット部、及びスリットしたシート材を巻き取る小巻取り部を移動させるスリッター装置が記載されている。また、特許文献2には、スリット部の近傍において検出したシート材の幅方向の位置情報に基づいて、シート材が巻回されたシートロールの位置を移動させることによって、シート材の位置を補正するスリッター装置が記載されている。特許文献1に記載のスリッター装置においては、シートロールから巻き出されたシート材がスリット部に到達するまでの間、シート材の次の位置補正処理を停止させて間欠的に位置補正を制御することによって、シート材の巻き出し速度の影響を受けることなく位置補正を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−226102号公報(2002年8月14日公開)
【特許文献2】特開平4−16452号公報(1992年1月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シート材の巻き出し位置の近傍においてシート材の幅方向の位置を検出する従来のスリッター装置にいては、巻き出し部よりも下流に設けられた搬送ローラーや、シート材の走行を制御する走行制御部等を通過してスリット部に到達するまでに生じるシート材の位置ずれを補正することは困難である。特に、走行制御部は、シート材を上下に挟み込むことによってシート材の走行を制御するものであるため、走行制御部の上流でシート材の幅方向の位置を補正したとき、走行制御部よりも下流のシート材によって補正方向とは反対方向の引張り力を受けてしまう。これにより、スリット部とシート材との相対位置がばらつくという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のスリッター装置では、スリット部をシート材の幅方向に移動させることによってシート材の位置を補正するので、シート材の切断部が鋸刃状にジグザグになったり、バリがでやすかったりする。切断部が鋸刃状にジグザグであると、シート材の搬送に必要な張力によって、シート材が裂けてしまいやすくなる。さらに、切断部に発生するバリは、吸引や粘着等の清掃手段で完全に除去することが難しく、プロセス中にシート材からバリが外れて異物となってしまうため好ましくない。
【0008】
特許文献2に記載のスリッター装置においても、走行制御部よりも上流のシートロールの移動によりシート材の位置を補正するため、走行制御部よりも下流のシート材によって補正方向とは反対方向の引張り力を受けてしまう。さらに、位置補正を間欠的に制御するため、高精度に補正することが困難である。また、シートロール近傍とスリッター近傍とでシート材の位置ずれ量が同一であるとは限らないため、正確な位置ずれの補正が困難である。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シート材の位置補正をより精度よく行うことが可能なスリッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスリッター装置は、上記課題を解決するために、ロールコアと当該ロールコアの周囲に巻回されたシート材とを備えたシートロールから巻き出された当該シート材を、その巻き出し方向に切断するスリッター装置であって、上記シートロールから巻き出された上記シート材を、その巻き出し方向に搬送する走行制御手段と、上記シート材の巻き出し方向において、上記走行制御手段の下流に設けられ、上記シート材を巻き出し方向に切断する切断手段と、上記走行制御手段と上記切断手段との間において、上記巻き出し方向に交差する方向におけるシート材の位置を検出する第1位置検出手段と、上記シートロール及び上記走行制御手段の、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を移動させる第1位置調整手段と、上記第1位置検出手段の検出結果に基づいて、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を調整するように、上記第1位置調整手段に上記シートロール及び上記走行制御手段を移動させる制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、第1位置検出手段を、走行制御手段と切断手段との間に配置し、第1位置検出手段が検出したシート材の幅方向の位置に基づいて、シートロールと走行制御手段とを移動させるので、切断手段に対するシート材の幅方向の位置を高精度に制御することができる。また、切断手段を固定とし、シート材を幅方向に移動させることによってシート材の幅方向の位置を補正するので、切断手段の刃先に対してシート材が進行し、切断部が鋸刃状になったりバリが発生したりするのを抑制することができる。
【0012】
本発明に係るスリッター装置は、上記シートロール及び上記走行制御手段を支持する第1支持手段をさらに備え、上記第1位置調整手段は、上記第1支持手段を、上記巻き出し方向に交差する方向に移動させることによって、上記シートロール及び上記走行制御手段を移動させることが好ましい。
【0013】
これにより、第1支持手段を移動させることで、シートロールと走行制御手段とを一体で移動させることができるので、比較的簡易な装置構成で、かつシート材に対して蛇行の要因を生じさせることなく、シート材の幅方向の位置を補正することができる。
【0014】
本発明に係るスリッター装置は、上記シートロールと上記走行制御手段との間において、上記巻き出し方向に交差する方向における上記シート材の位置を検出する第2位置検出手段をさらに備え、上記第1位置調整手段は、上記走行制御手段の上記巻き出し方向に交差する方向における位置を移動させる第1移動部と、上記シートロールの、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を移動させる第2移動部とをさらに備え、上記制御手段は、上記第1位置検出手段の検出結果に基づいて、上記巻き出し方向に交差する方向における上記シート材の位置を調整するように、上記第1位置調整手段の第1移動部により上記走行制御手段を移動させ、上記第2位置検出手段の検出結果に基づいて、上記巻き出し方向に交差する方向における上記シート材の位置を調整するように、上記第1位置調整手段の第2移動部により上記シートロールを移動させることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、走行制御手段の上流におけるシート材の幅方向位置を第2位置検出手段により検出し、その検出結果に基づいて第1位置調整手段の第2移動部がシートロールの位置を移動させるので、走行制御手段に侵入するシート材の位置を一定に保つことができる。さらに、走行制御手段と切断手段との間におけるシート材の幅方向位置を第1位置検出手段により検出し、その検出結果に基づいて第1位置調整手段の第1移動部が走行制御手段の位置を移動させる。
【0016】
このように、走行制御手段に侵入するシート材の位置と、走行制御手段を通過後の切断手段に対するシート材の幅方向位置とを個別に制御することができる。したがって、ロールの巻き姿がシートエッジ不揃いであったり、シート材の厚さ分布が均一でなかったりすることなどに起因するシート材の蛇行を低減した後に、切断手段に対するシート材の幅方向位置を補正することができるので、従来のスリッター装置よりも広範囲かつ高精度にスリットすることができる。
【0017】
本発明に係るスリッター装置は、上記シートロールを支持する第2支持手段をさらに備え、上記第1位置調整手段の上記第2移動部は、上記第2支持手段を、上記巻き出し方向に交差する方向に移動させることによって、上記シートロールを移動させることが好ましい。
【0018】
これにより、第1支持手段を移動することにより走行手段を移動させ、第2支持手段を移動させることによりシートロールを移動させることができるので、シート材に対して蛇行の要因を生じさせることなく、シート材の幅方向の位置をより精度よく補正することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るスリッター装置は、ロールコアと当該ロールコアの周囲に巻回されたシート材とを備えたシートロールから巻き出された当該シート材を、その巻き出し方向に切断するスリッター装置であって、上記シートロールから巻き出された上記シート材を、その巻き出し方向に搬送する走行制御手段と、上記シート材の巻き出し方向において、上記走行制御手段の下流に設けられ、上記シート材を巻き出し方向に切断する切断手段と、上記走行制御手段と上記切断手段との間において、上記巻き出し方向に交差する方向におけるシート材の位置を検出する第1位置検出手段と、上記シートロール及び上記走行制御手段の、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を移動させる第1位置調整手段と、上記第1位置検出手段の検出結果に基づいて、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を調整するように、上記第1位置調整手段に上記シートロール及び上記走行制御手段を移動させる制御手段とを備えているので、切断手段に対するシート材の巻き出し方向に交差する方向の位置補正を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るスリッター装置の上面図及び断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態に係るスリッター装置の上面図及び断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るスリッター装置によるシート材の切断処理を説明する上面図である。
【図4】(a)〜(c)は、従来のスリッター装置によるシート材の切断処理を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るスリッター装置100について、図1(a)及び(b)を参照して以下に説明する。図1中(a)は、スリッター装置100の上面図であり、(b)は、その断面図である。図1中(a)及び(b)に示すように、スリッター装置100は、ロールコア1の周囲にシート材が巻回されてなるロール(シートロール)2から巻き出されたシート材をスリットする装置であって、走行制御部(走行制御手段)4、制御装置(制御手段)5、上切断部(切断手段)6、下切断部(切断手段)7、第1位置検出部(第1位置検出手段)21、及び第1移動部(第1位置調整手段)31を備えている。またスリッター装置100は、第1搬送ローラー11、第2搬送ローラー12、及び第1支持部材(第1支持手段)101を備えていてもよい。スリッター装置100において、ロール2と第1搬送ローラー11とで巻き出し部3を構成し、上切断部6と下切断部7とでシート材を切断するスリット部を構成している。また、ロール2、第1搬送ローラー11、第2搬送ローラー12、及び走行制御部4は、第1支持部材101によって支持されている。
【0022】
スリッター装置100は、ロール2を回転させることによって巻き出したシート材を、第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12を経由して走行制御部4に搬送する。そして、搬送したシート材を、走行制御部の下流に位置する上切断部6及び下切断部7(以下、これらを組み合わせて「スリット部」と称することもある。)によって、シート材の搬送方向に、所定寸法幅で切断する。第1位置検出部21は、走行制御部4とスリット部との間に位置しており、当該位置におけるシート材の幅方向(巻き出し方向に交差する方向)の位置を検出する。
【0023】
第1位置検出部21は、検出したシート材の幅方向の位置情報を表す位置情報信号を制御装置5に送信し、制御装置5は、受信した位置情報信号に基づいて、シート材の幅方向の位置を補正するように、第1移動部31に指示する。第1移動部31は、制御装置5からの指示に基づいて、第1支持部材101を移動させ、これにより、シート材の幅方向の位置ずれを補正する。
【0024】
ロール2は、第1支持部材101に固定された支持軸に取り付けられ、支持軸を回転させることによって、シート材を巻きだす。そして、巻き出されたシート材に所定の張力を加え、ロール2の支持軸の回転に対して、シート材の搬送方向と反対向きにブレーキ力を加えるようになっている。これにより、シート材が第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12に接し、シート材に適正な摩擦力を加えることができるので、シート材の幅方向の位置を補正するために第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12を移動させると、シート材は第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12に引き連れられて移動する。その結果、シート材の蛇行制御を安定して行うことができる。
【0025】
第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12は、第1支持部材101に固定された支持軸によって、回転可能に設けられている。第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12は、ロール2の巻き径が変動しても、走行制御部4の上流におけるシート材の走行ラインが変動しないように規制するためのものである。
【0026】
走行制御部4は、第1支持部材101に固定されており、シート材を搬送するための駆動源である。走行制御部4は、例えば、シート材を搬送用ローラーとピンチ用ローラーとで挟み込み、ピンチ用ローラーが原動回転することによって、シート材を搬送するように構成することができる。
【0027】
ロール2、第1搬送ローラー11、第2搬送ローラー12、及び走行制御部4を支持する第1支持部材101は、第1移動部31によってシート材の幅方向に移動可能になっている。第1移動部31は、例えば、リニアガイド上に第1支持部材101を設置し、アクチュエーターでこれをシート材の幅方向に移動及び停止させることによって、第1支持部材101の移動を可能にする。このようなアクチュエーターとしては、サーボモーターやステッピングモーター等で制御可能な直動モーターが好適であるが、これに限定されず、シート材の蛇行を制御するのに必要な移動量を与えることができるものであればよい。
【0028】
第1位置検出部21は、走行制御部4を通過したシート材が、スリット部に到達するまでの間に、その幅方向の位置を検出する。第1位置検出部21として、例えば、光電管やCCDカメラ等のセンサーを用いることができる。第1位置検出部21によるシート材の位置検出方法として、例えば、シート材に予め形成したスリット位置決め基準パターン8のエッジ位置を検出することにより、シート材の幅方向の位置を認識する方法が上げられる。スリット位置決め基準パターン8は、シート材に形成する製品パターンと同一の印刷マスクで同時に印刷することにより形成することが好ましく、又は、製品パターンと共用できるものであることが好ましい。このようにスリット位置決め基準パターン8を形成することで、スリット位置決め基準パターン8と製品パターンとの相対位置を精度良く保持することができる。これにより、スリット位置決め基準パターン8を基準としてシート材の幅方向の位置を高精度に検出することができる。第1位置検出部21は、検出したシート材の幅方向の位置を表す位置情報信号を制御装置5に送信する。
【0029】
制御装置5は、受信した置情報信号に基づいて、シート材の幅方向位置を適正に補正するための第1支持部材の移動量を演算し、当該移動量を表す移動量信号を第1移動部31に送信する。第1移動部31は、受信した移動量信号に基づいて、第1支持部材101を移動させる。このように、シート材が走行制御部4の下流に通過した直後において検出したシート材の幅方向の位置に基づいて、シート材の幅方向位置を補正する。
【0030】
上切断部6及び下切断部7(スリット部)は、走行制御部4を通過したシート材を、その搬送方向に沿って、所定寸法幅で切断(スリット)するものである。上切断部6及び下切断部7としては、例えば、断面が皿状の回転丸刃(上切断部6として)と断面が矩形状の回転丸刃(下切断部7として)の組み合わせを好適に使用できる。その他にも、上切断部6及び下切断部7を、カッター刃を用いた空中切りや、刃先形状を加工した回転体での押し切りなどによりシート材をスリットするように構成することができる。
【0031】
このように、走行制御部4とスリット部との間には、シート材を蛇行させる要因がない。したがって、走行制御部4とスリット部との間におけるシート材の幅方向の位置に基づいて、走行制御部4と、その上流に位置するシート材の幅方向の位置に影響を及ぼし得る部材とを移動させてシート材の位置ずれを補正することによって、スリット部に対するシート材の幅方向位置を高精度に制御することができる。すなわち、スリット部近傍の第1位置検出部21の検出位置よりも上流の、シート材の蛇行に影響を及ぼす部材を全て移動させてシート材の幅方向の位置を補正するので、検出位置からスリット部までの間に位置ずれが生じることがなく、シート材の幅方向の位置を高精度に制御することができる。
【0032】
次に、スリッター装置100による、シート材のスリット処理について、図3(a)〜(c)及び図4(a)〜(c)を参照して説明する。図3(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るスリッター装置によるシート材の切断処理を説明する上面図であり、図4(a)〜(c)は、従来のスリッター装置によるシート材の切断処理を説明する上面図である。スリッター装置100においては、ロール2から巻き出さしたシート材を、走行制御部4のピンチ用ローラーが原動回転することによって、第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12を経由してスリット部に搬送する。スリット部に搬送されたシート材は、上切断部6及び下切断部7によってスリットされる。このとき、ロール2の巻き姿がエッジ不揃いであると、走行制御部4に進入するシート材の幅方向位置にばらつきが生じる。また、シート材の厚みが均一でないと、第1搬送ローラー11及び第2搬送ローラー12を経由する過程で、シート材が蛇行する。
【0033】
また、図3(a)〜(c)に示すように、製品パターンニング領域間の印刷マスクの位置ずれにより、スリット位置決め基準パターン8のずれが生じる場合がある。このような場合であっても、スリッター装置100は、スリット部の直近にある第1位置検出部21において、走行制御部4を通過したシート材のスリット位置決め基準パターン8のエッジを検出し、これに基づいて第1位置検出部21よりも上流の部材を移動させることによってシート材の幅方向位置を補正するので、スリット部に対してシート材の幅方向の位置が合致するようにシート材を搬送することができる。これにより、製品パターンを基準として精度良くシート材の所定位置をスリットすることができる。
【0034】
一方、図4(a)〜(c)に示すように、従来のスリッター装置400においては、ロールコア401にシート材が巻回されてなるロール402から引き出されたシート材に形成されたスリット位置決め基準パターン408にずれが生じている場合、上切断部406及び下切断部407に対するシート材の幅方向の位置を精度よく補正することができない。すなわち、従来のスリッター装置400においては、位置検出部421が、上切断部406及び下切断部407から離れた、より上流に位置する搬送ローラー411に設けられており、この位置のシート材の位置に基づいて、走行制御部404よりも上流の部材の位置を移動させることによって、シート材の位置ずれを補正する。
【0035】
したがって、位置補正後のシート材が上切断部406及び下切断部407に到達するまでに、搬送ローラー412又は走行制御部404の影響によって位置ずれが生じる。さらに、図4に示すように、走行制御部404の上流でシート材の幅方向位置を補正すると、走行制御部404の下流で補正の影響を受け、適正なシート材の幅方向位置からずれてしまうので、製品パターンを基準として精度良くシート材の所定位置をスリットすることができない。
【0036】
このように、スリッター装置100によれば、従来のスリッター装置400と比較して、より精度よくシート材の位置補正を行うことができる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るスリッター装置200について、図2(a)及び(b)を参照して以下に説明する。図2中(a)は、スリッター装置200の上面図であり、(b)は、その断面図である。スリッター装置200においては、第1搬送ローラー11と第2搬送ローラー12との間に、第2位置検出部(第2位置検出手段)22を備え、巻き出し部3を支持する第2支持部材(第2支持手段)102とこれを移動させる第2移動部32とを備えており、第1支持部材101が第2搬送ローラー12及び走行制御部4のみを支持している点において第1実施形態のスリッター装置100と異なっている。したがって、本実施形態においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、他の説明については省略する。
【0038】
図2(a)及び(b)に示すように、スリッター装置200は、第1搬送ローラー11と第2搬送ローラー12との間に第2位置検出部22を備えている。また、第1移動部31の上に、第1移動部31に対してシート材の幅方向に移動可能な第2移動部32を備えている。第1移動部31は、第2搬送ローラー12及び走行制御部4を支持する第1支持部材101を、シート材の幅方向に移動させ、第2移動部32は、ロール2及び第1搬送ローラー11からなる巻き出し部3を支持する第2支持部材102を、シート材の幅方向に移動させる。
【0039】
第2位置検出部22は、シート材に形成されたスリット位置決め基準パターン8のエッジ位置を検出するものであり、例えば、光電管や超音波センサー、CCDカメラ等を用いることができる。第2位置検出部22は、検出したエッジ位置を表すエッジ位置情報信号を制御装置5に送信する。制御装置5は、受信したエッジ位置情報信号に基づいて、シート材のエッジ位置を適正とするような移動量を演算し、当該移動量を表す移動量信号を第2移動部32に送信する。第2移動部32は、受信した移動量信号に基づいて、第2支持部材102を移動させる。これにより、走行制御部4に進入するシート材のエッジ位置が一定になるように制御する。
【0040】
そして、第1位置検出部21によって、走行制御部4を通過したシート材の幅方向の位置を検出し、その検出結果に基づいて制御装置5が、第1移動部31に第1支持部材101を移動させる。すなわち、走行制御部4の上流と下流との2箇所においてシート材の幅方向の位置を検出し、これに基づいて巻き出し部3と第2搬送ローラー12及び走行制御部4とを移動させる。
【0041】
このように構成とすることで、ロールの巻き姿のエッジが不揃いである場合や、シート材の厚みが不均一な場合に生じるシート材の蛇行と、走行制御部4に起因するシート材の幅方向位置ずれとを、それぞれ個別に補正することができるので、シート材の所定位置とスリット部とをより高精度に合致させることが可能である。
【0042】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、スリット部に対してシート材の幅方向の位置を精度よく補正することができるので、ロール状のシート材を巻き出して、シート材の幅方向の所定位置を切断するスリッター装置に利用できる。特に、配線がパターンニングされたシート材の幅方向の所定位置を精度良く切断し、切断部におけるバリの発生を抑制することが要求されるスリッター装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 ロールコア
2 ロール(シートロール)
3 巻き出し部
4 走行制御部(走行制御手段)
5 制御装置(制御手段)
6 上切断部(切断手段)
7 下切断部(切断手段)
8 スリット位置決め基準パターン
11 第1搬送ローラー
12 第2搬送ローラー
21 第1位置検出部(第1位置検出手段)
22 第2位置検出部(第2位置検出手段)
31 第1移動部(第1位置調整手段)
32 第2移動部
101 第1支持部材(第1支持手段)
102 第2支持部材(第2支持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールコアと当該ロールコアの周囲に巻回されたシート材とを備えたシートロールから巻き出された当該シート材を、その巻き出し方向に切断するスリッター装置であって、
上記シートロールから巻き出された上記シート材を、その巻き出し方向に搬送する走行制御手段と、
上記シート材の巻き出し方向において、上記走行制御手段の下流に設けられ、上記シート材を巻き出し方向に切断する切断手段と、
上記走行制御手段と上記切断手段との間において、上記巻き出し方向に交差する方向におけるシート材の位置を検出する第1位置検出手段と、
上記シートロール及び上記走行制御手段の、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を移動させる第1位置調整手段と、
上記第1位置検出手段の検出結果に基づいて、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を調整するように、上記第1位置調整手段に上記シートロール及び上記走行制御手段を移動させる制御手段と
を備えていることを特徴とする、スリッター装置。
【請求項2】
上記シートロール及び上記走行制御手段を支持する第1支持手段をさらに備え、
上記第1位置調整手段は、上記第1支持手段を、上記巻き出し方向に交差する方向に移動させることによって、上記シートロール及び上記走行制御手段を移動させることを特徴とする請求項1に記載のスリッター装置。
【請求項3】
上記シートロールと上記走行制御手段との間において、上記巻き出し方向に交差する方向における上記シート材の位置を検出する第2位置検出手段をさらに備え、
上記第1位置調整手段は、上記走行制御手段の上記巻き出し方向に交差する方向における位置を移動させる第1移動部と、上記シートロールの、上記巻き出し方向に交差する方向における位置を移動させる第2移動部とをさらに備え、
上記制御手段は、上記第1位置検出手段の検出結果に基づいて、上記巻き出し方向に交差する方向における上記シート材の位置を調整するように、上記第1位置調整手段の第1移動部により上記走行制御手段を移動させ、上記第2位置検出手段の検出結果に基づいて、上記巻き出し方向に交差する方向における上記シート材の位置を調整するように、上記第1位置調整手段の第2移動部により上記シートロールを移動させることを特徴とする請求項1に記載のスリッター装置。
【請求項4】
上記シートロールを支持する第2支持手段をさらに備え、
上記第1位置調整手段の上記第2移動部は、上記第2支持手段を、上記巻き出し方向に交差する方向に移動させることによって、上記シートロールを移動させることを特徴とする請求項3に記載のスリッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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