説明

スルフィナートアルキル化を介した共有結合架橋ポリマーおよびポリマー膜

【課題】共有結合架橋ポリマー(ブレンド)成分がイオン伝導性ポリマー(ブレンド)成分と十分に相溶している新規の共有結合架橋ポリマー/膜を提供する。
【解決手段】以下の官能基:(M=ハロゲン(F,Cl,Br,I)、OR、NR;R=アルキル、ヒドロキシアルキル、アリール;(Me=H、Li、Na、K、Cs、または他の金属陽イオンもしくはアンモニウムイオン):a)陽イオン交換基の前駆体:SOMおよび/またはPOMおよび/またはCOM、b)スルフィナート基SOMeを有することができ、以下の有機化合物:a)スルフィナート基SOMeと反応する多官能性ハロアルカンまたはハロ芳香族、および/またはb)一方(ハロゲン)がスルフィナート基SOMeと反応し、他方(−NHR)がSOM−基と反応する化合物、および/またはc)スルフィナート基SOMeと反応することができる化合物からなるポリマー膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフィナートアルキル化を介した共有結合架橋ポリマーおよびポリマー膜に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願明細書の執筆者は、スルフィナート基を含むポリマー、ポリマーブレンド、およびポリマー(ブレンド)膜のアルキル化反応に基づく、共有結合架橋アイオノマー膜の新規な調製法を開発した(J.Kerres、W.Cui、W.Schnurnberger:「Vernetzung von modifdizierten Engineering Thermoplasten」、ドイツ特許第19622337.7号(出願日:1996年6月4日)、ドイツ特許庁(1997)、「Reticulation de Materiaux Thermoplastiques Industriels Modifies」、1997年3月30付けのフランス特許F9706706号)。共有結合網状構造の利点は、高温でさえも加水分解に耐性を示すことである。上記発明に記載のイオン伝導物質、共有結合架橋ポリマー、およびポリマーブレンドの不利な点は、膜形成におけるスルフィナート基のアルキル化時に疎水性網状構造が形成されることであり、この疎水性網状構造はイオン伝導性ポリマー(ブレンド)成分(スルホン化ポリマー:ポリマー−SOMe)と部分的に相溶性がないので、不均一なポリマー(ブレンド)形態になり、機械的安定性が減少し(乾燥により脆化する)、スルフィナート相とスルホネート相が部分的に分離し完全な架橋が阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第19622337.7号明細書
【特許文献2】仏国特許第F9706706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、共有結合架橋ポリマー(ブレンド)成分がイオン伝導性ポリマー(ブレンド)成分と十分に相溶している新規の共有結合架橋ポリマー/膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の膜を得ることによって達成される。
さらに、本発明の方法がこの目的に加わる。
それに対して、以下の官能基:
・スルフィナート基−SOMe
・スルホクロリド基および/または陽イオン交換基の他の前駆体
を含むポリマーを含むポリマー溶液を調製する。さらに、二官能性またはオリゴ官能性(origofunctional)アルキル化架橋剤(典型的には、α,ω−ジハロアルカン)および任意選択的に第2級ジアミン架橋剤NHR−(CH−NHRを、ポリマー溶液に添加する。スルフィナート基のアルキル化および任意選択的にポリマー中に存在するスルホハロゲニド基とジアミン架橋剤の第2級アミノ基との反応を介したスルホンアミドの形成により溶媒を蒸発する際の膜を形成する間に共有結合架橋が形成される。膜を形成後に膜を酸性および/または塩基性および/または中性水溶液で後処理する間に、陽イオン交換基の前駆体が加水分解されて陽イオン交換基が形成される。
【0006】
本発明の複合物は以下の官能基を有するポリマーからなる。膜調製後で、且つ加水分解前では、
・−SOMおよび/または−POMおよび/または−COM(M=ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OR、NR;R=アルキル、ヒドロアルキル、アリール)、
架橋:
a)ポリマー−SO−Y−SO−ポリマー、
b)ポリマー−SO−Y’−NR−SO−ポリマー、
c)ポリマー−SO−NR−Y’’−NR−SO−ポリマー、
加水分解後では、
・−SOM−、−PO−、−COOM基、
・上記の架橋。
陽イオン交換ポリマー前駆体との混合物中のスルフィナートポリマーの共有結合架橋により、ブレンド段階でより良好に混合されるので架橋度が高くなり、陽イオン交換ポリマーおよび重合体スルフィナートから作製される共有結合架橋ポリマー(ブレンド)フィルムと比較して得られたポリマーフィルムの機械的安定性はより向上する。ポリマーの網状構造中の陽イオン交換基の前駆体と反応するアミノ基を含む架橋成分の組み込みを制御することにより、機械的特徴がさらに改良される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】スルホクロル化ポリマーとスルフィナート化ポリマーとのブレンドにおける共有結合架橋の形成を概略的に示した図である。
【図2】スルフィナート基およびスルホクロリド基の両方を含むポリマー中の共有結合架橋の形成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施例)
本発明を、以下の2つの実施例でさらに詳細に例示する。使用した成分の重量/体積を、表1に示す。
【0009】
膜調製の説明。
スルホクロル化PSU Udel(商標名)(ICE=1.8meq SOCl/g)およびPSUSOLi(ICE=1.95meq SOLi/g)(ポリマーの構造については図2を参照のこと)を、N−メチルピロリジノン(NMP)に溶解する。次いで、α,ω−ジヨードブタンを架橋剤溶液に添加する。15分間撹拌後、溶液を濾過して脱気する。ポリマー溶液の薄膜をガラスプレート上にナイフコーターでコートした。ガラスプレートを減圧乾燥オーブンにおき、700から最終的に15mbarの低圧の80〜130℃の温度で溶媒を除去する。フィルムを乾燥オーブンから取り出し、冷却する。ポリマーフィルムを水中でガラスプレートから剥離し、最初に10%塩酸中で加水分解/後処理し、それぞれの水を60〜90℃で24時間完全に脱塩する。
【0010】
2.反応物質の使用量および結果の特徴
【表1】

* 2SO2Cl基/PSU繰返しユニット
【0011】
(第2部)共有結合架橋複合膜
(先行技術)
さらなる出願を基礎とする本発明は、ドイツ特許出願DE10024575.7(Kovalent vernetzte Polymere und Polymermembran via Sulfinatalkylierung)の継続出願または変更に関する。このドイツ特許の先願DE10024575.7の内容は、参照して本明細書中に取り込むことを明示する。
【0012】
この上記特許出願の生成物および方法は、それぞれ以下の不利益を有する。
【0013】
記載の方法によって調製された膜については、水素燃料電池における操作に含水ガスがさらに必要である。ガスが湿っていない場合、膜は乾燥し、プロトン伝導性が大幅に減少する。
【0014】
この問題を解決するために、本出願は、親出願に従って、特に共有結合網状構造に任意選択的に官能基が導入されたテクトシリケートおよびフィロシリケートの組み込みを提案する。
【0015】
親出願は、共有結合網状構造へのポリマーの組み込みのみを記載している。官能基導入フィロシリケートおよび/またはテクトシリケートを使用する場合、驚くべきことに、低分子量官能基を有し且つフィロシリケートおよび/またはテクトシリケートに結合した化合物は、特に水素燃料電池で使用される場合、膜の使用時に放出しないか、穏やかにのみ放出することが見出された。これにより、膜の機械的特徴を非常に悪化させる通常みられる影響(脆性または大きな膨潤)を有することなく共有結合網状構造内のイオン伝導性基の濃度が増加する。従って、極端な場合、共有結合網状構造中に封入されたイオン伝導性ポリマーを使用することを完全にやめることが可能となる。イオン伝導性は、官能基を有するシリケートを介して排他的に得られる。
【0016】
したがって、本発明は、膜の乾燥および膜内のイオン伝導性基の数の限定という問題を解決する。
【0017】
したがって、本発明の目的は、湿らせていないかわずかしか湿らせていないガスの使用時でさえプロトン伝導性を示す新規の共有結合架橋ポリマー/膜を提供することにある。さらに、さらなる目的は、産業的に有用な期間、膜中に残存するように共有結合網状構造にカップリングされた低分子量の官能基導入化合物を組み込むことにある。
【0018】
さらに、本発明の方法は、この目的を解決するのを支援する。
【0019】
(発明の説明)
以下の文章は、親特許出願DE10024575.7を詳細に示す。ポリマーおよび官能基導入テクトシリケートおよび/またはフィロキシリケートおよび任意選択的に低分子化合物を含む適切な溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒溶液の混合物を調製する。
【0020】
混合物は、ポリマーおよび以下の基を含む:
・スルフィナート基SOMe(Meは1価または多価金属陽イオン)、
・スルホクロリド基および/または他の陽イオン交換基の前駆体。
さらに、二官能性またはオリゴ官能性(origofunctional)アルキル化架橋剤(典型的にはα,ω−ジハロアルカン)および任意選択的に第2級ジアミン架橋ジアミンNHR−(CH−NHRを混合物、好ましくはポリマー溶液に添加する。スルフィナート基のアルキル化および任意選択的なポリマー中に存在するスルホハライド基のジアミン架橋剤の第2級アミノ基との反応を介したスルホンアミドの形成によって溶媒を蒸発させ、膜形成中に共有結合架橋が形成される。膜形成後、酸性および/または塩基性および/または中性水溶液による膜処理において、イオン交換基の前駆体は加水分解および酸化されて、イオン交換基を形成する。
【0021】
本発明の複合物は、以下の官能基を有するポリマーからなる。膜調製後で、且つ加水分解前では、
・SOMおよび/またはPOMおよび/またはCOM(M=ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OR、NR;R=アルキル、ヒドロアルキル、アリール)、
・架橋:
a)ポリマー−SO−Y−SO−ポリマー、
任意選択的に、
b)ポリマー−SO−Y’−NR−SO−ポリマー、
c)ポリマー−SO−NR−Y’’−NR−SO−ポリマー、
加水分解後では、
・−SOM−、−PO−、−COOM基、
・上記の架橋。
官能基導入フィロシリケートおよび/またはテクトシリケートの存在下でのイオン交換ポリマー、特に、陽イオン交換ポリマーの前駆体と混合したスルフィナートポリマーを共有結合架橋することにより、ブレンド相が良好に混合され、架橋度もより高くなるので、得られたポリマーフィルムは陽イオン交換ポリマーおよび重合体スルフィナートから作製された共有結合ポリマー(ブレンド)フィルムと比較して機械的安定性がより高い。ポリマー網状構造への陽イオン交換基の前駆体と反応するアミノ基を有する架橋成分の封入の制御により機械的特徴がさらに改良される。
【0022】
膜形成中の共有結合網状構造への官能基導入テクトシリケートおよび/またはフィロシリケートの組込みにより、膜の水分保持能力が増加する。官能基導入テクトシリケートまたはフィロシリケートの表面から突出した官能基により、その機能性に関する膜の特徴がさらに変化する。
【0023】
無機充填剤の説明。
無機活性充填剤は、モントモリロナイト、スメクタイト、イライト、海泡石、パリゴルスカイト、白雲母、アレバルダイト(allevardite)、アメサイト(amesite)、ヘクトライト(hectorite)、タルク、フルオロヘクトライト(fluorohectorite)、サポナイト、ベイデライト(beidelite)、ノントロナイト(nontronite)、ステベンサイト(stevensite)、ベントナイト、マイカ、バーミキュライト、フルオロバーミキュライト、ハロイサイト、合成タルク型を含むホタル石、または2つまたはそれ以上の上記フィロシリケートのブレンドベースのフィロシリケートである。フィロシリケートの層間を剥離するか、架橋することができる。モンモリロナイトが特に好ましい。フィロシリケートの重量比は、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは2〜30重量%、最も好ましくは5〜20重量%である。
官能基導入充填材、とくにベイデライト系及びベントナイトのゼオライト及び部材が唯一のイオン伝導性成分である場合、その重量比は通常5〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、最も好ましくは30〜60重量%である。
【0024】
官能基導入フィロシリケートの説明。
用語「フィロシリケート」は、通常、SiO四面体が二次元で無限大に網状構造に接続されたシリケートを意味する。(陰イオンの実験による形態は(SiO2−である)。単層膜は、その間に存在する陽イオン(天然に存在するフィロシリケートでは、通常、Na、K、Mg、Al、または/およびCa)によって互いに連結している。
【0025】
用語「脱アミノ化官能基導入フィロシリケート」は、いわゆる官能基導入剤との反応によって最初に層間の距離が増すフィロシリケートと理解される。このようなシリケートの脱アミノ化前の層の厚さは、好ましくは5〜100Å、より好ましくは5〜50Å、最も好ましくは8〜20Åである。層間の距離を増加させる(疎水化)ために、フィロシリケートを(本発明の複合物の生成前に)しばしばオニウムイオンまたはオニウム塩と呼ばれるいわゆる官能基導入疎水化剤と反応させる。
【0026】
フィロシリケートの陽イオンを、有機官能基導入疎水化剤と置換することによって所望の層間距離が得られるが、この距離はフィロシリケートに組み込まれる反応性官能基導入分子またはポリマーの種類に依存し、有機残基の種類によって調整することができる。
【0027】
金属イオンまたはプロトンの交換を、完全または部分的に行うことができる。金属イオンまたはプロトンの完全な交換が好ましい。金属イオンまたはプロトンの交換量を、通常、1gのフィロシリケートまたはテクトシリケートあたりのミリ当量(meq)で示し、これをイオン交換容量という。
【0028】
少なくとも0.5meq/g、好ましくは0.8〜1.3meq/gの陽イオン交換容量を有するフィロシリケートまたはテクトシリケートが好ましい。
【0029】
適切な有機官能基導入疎水化剤は、1つまたは複数の有機残基を保有することができるオキソニウム、アンモニウム、ホスホニウム、およびスルホニウムイオンに由来する。
【0030】
適切な官能基導入疎水化剤として、以下の一般式Iおよび/またはIIを示す。
【化1】

【0031】
式中、置換基は、以下の意味を有する。R、R、R、Rは、互いに独立して水素、1〜40個、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、飽和、または不飽和炭化水素ラジカル由来であり、任意選択的に少なくとも1つの官能基を有し、2つのラジカルが互いに好ましくは5〜10個の炭素原子、より好ましくは1つまたは複数のN原子を有する複素環の残基に連結している。
【0032】
Xはリン、窒素、または炭素を示し、Yは酸素または硫黄を示し、nは1〜5、好ましくは1〜3の整数であり、Zはアニオンである。
【0033】
適切な官能基は、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホ基であり、カルボキシル基またはスルホン酸基が特に好ましい。同様に、スルホクロリド基およびカルボン酸クロリド基が特に好ましい。
【0034】
適切な陰イオンZは、プロトンを発生する酸、特に鉱酸に由来し、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素などのハロゲン、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、およびカルボン酸塩、特に酢酸塩が好ましい。出発物質として使用されるフィロシリケートは、通常、懸濁液として反応する。好ましい懸濁媒は、水であり、任意選択的にアルコール、特に1〜3個の炭素原子を有する低級アルコールと混合されている。官能基導入疎水化剤が水溶性でない場合、薬剤が溶解する溶媒が好ましい。このような場合、これは特に非プロトン性溶媒である。懸濁剤のさらなる例は、ケトンおよび炭化水素である。通常、水混和性懸濁剤が好ましい。フィロシリケートに疎水化剤を添加すると、イオン交換が起こり、通常、フィロシリケートが溶液から沈殿する。イオン交換の副産物として得られた金属塩は水溶性であることが好ましく、この場合、疎水化フィロシリケートが例えば濾過によって結晶性固体として分離することができる。
【0035】
イオン交換は、反応温度とはほとんど無関係である。反応温度は溶剤の凝固点以上で且つ沸点未満であることが好ましい。水系では、温度は、0℃と100℃との間、好ましくは40℃と80℃との間である。
【0036】
陽イオンおよび陰イオン交換ポリマーでは、特に官能基としてさらにカルボキシル酸クロリドまたはスルホン酸クロリドが同一分子に存在する場合、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。アルキルアンモニウムイオンを、通常のメチル化試薬(ヨウ化メチルなど)を介して得ることができる。適切なアンモニウムイオンは、ω−アミノカルボン酸であり、ω−アミノアリールスルホン酸およびω−アルキルアミノスルホン酸が特に好ましい。ω−アミノアリールスルホン酸およびω−アルキルアミノスルホン酸を、通常の鉱酸(例えば、塩酸、硫酸、またはリン酸)を用いるか、ヨウ化メチルなどのメチル化試薬によって得ることができる。
【0037】
さらに好ましいアンモニウムイオンは、ピリジンイオンおよびラウリルアンモニウムイオンである。疎水化後、フィロシリケートの膜間距離は、一般に、10Åと90Åとの間、好ましくは13Åと40Åとの間である。
【0038】
乾燥によって疎水化および官能基導入フィロシリケートから水を除去する。一般に、そのようにして処理したフィロシリケートは、0〜5重量%の水を未だ含んでいる。その後、疎水化フィロシリケートを、できるだけ水を含まない懸濁剤中での懸濁液の形態で記載のポリマーと混合し、さらに処理して膜を得ることができる。
【0039】
特に好ましいテクトシリケートおよび/またはフィロシリケートの官能基導入を、一般に、修飾色素またはその前駆体、特にトリフェニルメタン色素を用いて行う。これらを、以下の一般式で示す。
【化2】

(式中、R=アルキル(特に、CH;C))
【0040】
本発明では、以下の基本骨格に由来する色素を使用する。
【化3】

(式中、RはC〜C20、0〜4個のN原子、0〜3個のS原子を含み、Rを陽性に変化させることができる)
【0041】
フィロシリケートに官能基を導入するために、色素またはその還元前駆体を、容器中のシリケートと共に非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、DMAc、NMP)中で撹拌する。24時間後、色素およびその前駆体をそれぞれフィロシリケートの空洞にインターカレーションする。イオン伝導基がシリケート粒子の表面上に存在するようにインターカレーションされなければならない。
【0042】
以下の図は、この過程を概略的に示す。
【化4】

【0043】
したがって、出願DE10024575.7に記載のように、官能基導入フィロシリケートを添加物としてポリマー溶液に添加する。色素前駆体を使用することが特に好ましいことが見出された。酸性の場合のみ、処理後、水の分解によって色素自体が形成される。
【化5】

【0044】
トリフェニルメタン色素の場合、驚くべきことに、本発明によって調製された膜中でこれらの色素がプロトン伝導性を支持することが見出された。これが、無水プロトン伝導性を十分な確実性をもって明言することはできない場合であろうとなかろうと。色素がシリケートと結合しない場合、つまり、色素が遊離形態で膜中に存在する場合、色素は短期間で反応水を有する燃料電池から排出される。
【0045】
本発明によれば、上記の親出願のスルフィナート基を含むポリマーブレンド、最も好ましくは熱可塑性官能基導入ポリマー(アイオノマー)を疎水化フィロシリケートの懸濁液に添加する。これは、既に溶解させた形態のポリマーを使用して行うことができるか、或いは、ポリマーを懸濁液自体に溶解する。好ましくは、フィロシリケートの量は、1〜70重量%、より好ましくは2〜40重量%、最も好ましくは5〜15重量%である。
【0046】
親特許出願に関するさらなる改良は、膜ポリマー溶液およびフィロシリケートおよび/またはテクトシリケートの空洞への塩化ジルコニル(ZrOCl)をさらに混入させることにより可能となる。リン酸中で膜の後処理を行った場合、膜中のシリケート粒子のすぐ近くにほとんど溶解しないリン酸ジルコニウムが沈殿する。リン酸ジルコニウムは、燃料電池を稼動させた場合、自己プロトン伝導性を示す。プロトン伝導性は、中間工程としてのリン酸水素の形成を介して作用し、これは、本技術水準の一部である。貯水剤(シリケート)のすぐ近くへの封入を制御することは新規である。
【0047】
1.膜調製の実施形態。
スルホクロル化PSU Udel(商標名)(IEC=1.8meq SOCl/g)およびPSUSOLi(IEC=1.95meq SOLi/g)(ポリマーの構造については、図2を参照のこと)およびトリフェニルメタン色素を官能基導入したモントモリロナイトを、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解する。次いで、架橋剤としてα,ω−ジヨードブタンを溶液に添加する。15分間撹拌後、溶液を濾過し、脱気する。ポリマー溶液の薄膜をガラスプレート上にナイフコーターでコートする。ガラスプレートを減圧乾燥オーブンに置き、80〜130℃、700mbarから最終的に15mbarの低圧下で溶媒を除去する。このフィルムを乾燥オーブンから取り出して、冷却する。ポリマーフィルムを水中でガラスプレートから剥離し、最初に10%塩酸中で加水分解/後処理し、それぞれの水を60〜90℃で24時間完全に脱塩する。
【0048】
2.実施形態。
スルホクロル化PSU Udel(商標名)(IEC=1.2meq SOCl/g)およびPSUSOLi(IEC=1.95meq SOLi/g)、およびα,ω−アミノアルキルスルホクロリド(外側に面してスルホクロリド基を有する)で処理したモントモリロナイトを、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解する。次いで、架橋剤としてα,ω−ジヨードブタンを溶液に添加する。15分間撹拌後、溶液を濾過および脱気して、実施例1に記載のように膜を処理する。
【0049】
この膜は、官能基導入フィロシリケートを含まない対照例よりも硬化後高いIEC値を有する。
【0050】
3.実施形態。
スルホクロル化PSU Udel(商標名)(IEC=1.8meq SOCl/g)およびPSUSOLi(IEC=1.95meq SOLi/g)(ポリマーの構造については、図2を参照のこと)および塩化ジルコニルで処理したモントモリロナイトを、ジメチルホルムアミド(DMSO)に溶解する。
【0051】
以下の順序で溶解させる。最初に、モントモリロナイトK10をDMSO中に懸濁し、全膜量に基づいて10重量%の塩化ジルコニルを添加する。次いで、他のポリマー成分を添加する。架橋剤α,ω−ジヨードブタンを溶液に添加する。15分間撹拌後、溶液を濾過および脱気する。ポリマー溶液の薄膜をガラスプレート上にナイフコーターでコートした。ガラスプレートを減圧乾燥オーブンにおき、700から最終的に15mbarの低圧の80〜130℃の温度で溶媒を除去する。フィルムを乾燥オーブンから取り出し、冷却する。ポリマーフィルムをリン酸中でガラスプレートから剥離し、30℃と90℃との間の温度において約10時間リン酸中で保存し、任意選択的に10%塩酸でさらに加水分解/後処理し、それぞれの水を60〜90℃で24時間完全に脱塩する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意選択的に以下の官能基:(M=ハロゲン(F,Cl,Br,I)、OR、NR;R=アルキル、ヒドロキシアルキル、アリール;Me=H、Li、Na、K、Cs、または他の金属陽イオンもしくはアンモニウムイオン):
a)陽イオン交換基の前駆体:SOMおよび/またはPOMおよび/またはCOM、
b)スルフィナート基SOMe
を有し、以下の有機化合物:
a)スルフィナート基SOMeと反応することにより、得られた架橋がポリマー/ポリマーブレンド/ポリマー膜(Y=架橋)、X=ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OR、Y=−(CH−;−アリーレン−;−(CH−アリーレン−;−(CH)−アリーレン−(CH)−、x=3〜12):ポリマー−SO−Y−SO−ポリマー中に存在する、二官能性、三官能性、またはオリゴ官能性(origofunctional)ハロアルカンまたはハロ芳香族、および/または
b)一方(ハロゲン−)がスルフィナート基SOMeと反応し、他方(−NHR)がSOM−基と反応することによって、得られた架橋がポリマー/ポリマーブレンド/ポリマー膜:ポリマー−SO−(CH−NR−SO−ポリマー中に存在する、以下の基:ハロゲン−(CH−NHRを含む化合物、および/または
c)SOMe基と反応することによって、得られた架橋がポリマー/ポリマーブレンド/ポリマー膜:ポリマー−SO−NR−(CH−NR−SO−ポリマー中に存在する、以下の基:NHR−(CH−NHRを含む化合物と共有結合することができる、1つまたは複数のポリマーを含む共有結合架橋ポリマーまたは共有結合架橋ポリマー膜。
【請求項2】
以下のポリマー:
a)少なくともSOM基を含むポリマー、
b)少なくともSOMe基を含むポリマーから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の共有結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。
【請求項3】
以下の基:SOM基およびSOMe基を含むポリマーからなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の共有結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。
【請求項4】
官能基を有する基材ポリマーがポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリジフェニルフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、またはこれらの化合物の少なくとも1つを含むコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の共有結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。
【請求項5】
基材ポリマーとして、以下のポリマー:ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、またはリチウム化することができる他のポリマーが好ましいことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の共有結合およびイオン結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。
【請求項6】
架橋剤としてハロゲン−(CH−ハロゲンまたはハロゲン−CH−フェニレン−CH−ハロゲン(x=3〜12、ハロゲン=F、Cl、Br、I)が好ましいことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の共有結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。
【請求項7】
前記ポリマー/ポリマー(ブレンド)膜のSOM基および/またはPOM基および/またはCOM基が、以下の後処理(硬化)工程:
a)T=RT−95℃での1〜50重量%のアルカリ水溶液、
b)T=RT−95℃での完全に脱塩した水、
c)T=RT−95℃での1〜50重量%の鉱酸水溶液、
d)T=RT−95℃での完全に脱塩した水、
によって陽イオン交換基SOMeおよび/またはPOMeおよび/またはCOOMe(Me=H、Li、Na、K、Cs、または他の金属陽イオンまたはアンモニウムイオン)に加水分解されるが、1つまたは複数の前記硬化工程を任意選択的に省略することができることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の共有結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。
【請求項8】
前記ポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはスルホラン(sulfolane)からなる群から選択される双極性非プロトン性溶媒中に同時または連続して溶解後、架橋剤を添加し、前記架橋剤を撹拌によって前記ポリマー溶液中で均一に分散させ、前記ポリマー溶液を濾過して脱気し、前記ポリマー溶液を薄膜として基板(ガラスプレート、金属プレート、織物、不織布など)上に広げ、前記溶媒を80〜130℃での加熱または低圧または循環エアドライヤーによって除去し、前記ポリマーフィルムを任意選択的に基板から剥離し、前記ポリマーフィルムを以下の工程:
a)T=RT−95℃での1〜50重量%のアルカリ水溶液、
b)T=RT−95℃での完全に脱塩した水、
c)T=RT−95℃での1〜50重量%の鉱酸水溶液、
d)T=RT−95℃での完全に脱塩した水によって硬化するが、1つまたは複数の前記硬化工程を任意選択的に省略することができることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の共有結合架橋ポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマーブレンド膜の調製法。
【請求項9】
電気化学的経路でエネルギーを産出するために、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の膜を使用する方法。
【請求項10】
0〜180℃の温度での膜燃料電池(水素または直接メタノール型燃料電池)の構成要素としての、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の膜を使用する方法。
【請求項11】
化学電池において、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の膜を使用する方法。
【請求項12】
二次電池において、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の膜を使用する方法。
【請求項13】
電解槽において、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の膜を使用する方法。
【請求項14】
ガス分離法、浸透気化法、膜抽出、逆浸透法、電気透析法、および拡散透析法などの膜分離工程において、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の膜を使用する方法。
【請求項15】
1つまたは複数のポリマーおよびテクトシリケートおよび/またはフィロシリケートを含み、存在する前記テクトシリケートおよび/またはフィロシリケートは官能基が導入されていても導入されていなくても良く、
前記ポリマーは、以下の官能基(M=ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OR、NR;R=アルキル、ヒドロキシアルキル、アリール;Me=H、Li、Na、K、Cs、または他の金属陽イオンまたはアンモニウムイオン):
a)陽イオン交換基の前駆体:SOMおよび/またはPOMおよび/またはCOM、
b)スルフィナート基SOMe
を有することができ、以下の有機化合物:
a)スルフィナート基SOMeと反応することにより、得られた架橋がポリマー/ポリマーブレンド/ポリマー膜(Y=架橋)、X=ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OR、Y=−(CH−;−アリーレン−;−(CH−アリーレン−;−(CH)−アリーレン−(CH)−、x=3〜12):ポリマー−SO−Y−SO−ポリマー中に存在する、二官能性、三官能性、またはオリゴ官能性(origofunctional)ハロアルカンまたはハロ芳香族、および/または
b)一方(ハロゲン−)がスルフィナート基SOMeと反応し、他方(−NHR)がSOM−基と反応することによって、得られた架橋がポリマー/ポリマーブレンド/ポリマー膜:ポリマー−SO−(CH−NR−SO−ポリマー中に存在する、以下の基:ハロゲン−(CH−NHRを含む化合物、および/または
c)SOMe基と反応することによって、得られた架橋がポリマー/ポリマーブレンド/ポリマー膜:ポリマー−SO−NR−(CH−NR−SO−ポリマー中に存在する、以下の基:NHR−(CH−NHRを含む化合物と共有結合することができるという点で特徴づけられる、共有結合架橋複合ポリマーまたは共有結合架橋複合ポリマー膜。
【請求項16】
以下のポリマー:
a)少なくともSOM基を含むポリマー、
b)少なくともSOMe基を含むポリマーから構成されることを特徴とする、請求項15に記載の共有結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。
【請求項17】
以下の基:SOM基およびSOMe基を含むポリマーからなることを特徴とする、請求項15または請求項16に記載の共有結合架橋ポリマーブレンドまたはポリマーブレンド膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−162722(P2012−162722A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−66401(P2012−66401)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【分割の表示】特願2002−505894(P2002−505894)の分割
【原出願日】平成13年5月21日(2001.5.21)
【出願人】(502023815)
【Fターム(参考)】