スレッド及び偽造防止用紙及び偽造防止印刷物
【課題】従来のように正文字(正向き文字)のマイクロ文字と逆文字(逆向き文字)のマイクロ文字の両方が視認されることにより文字が表す意味が判別し難くならないように、用紙を光に透かして観察したときに、その用紙の表面と裏面の両面から正文字のみのマイクロ文字が観察される効果が得られるスレッドを得ること、このスレッドを使用した偽造防止用紙を得ること、及びこの偽造防止用紙を使用した偽造防止印刷物を得ること。
【解決手段】短冊形状をなし且つ光不透過性を持つ白色のスレッド用基材2の両面に、少なくとも文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層31、32が形成され、前記スレッド用基材の両面から前記着色印刷層が目視できるようにしたスレッド及びスレッド入り偽造防止用紙及び印刷物。
【解決手段】短冊形状をなし且つ光不透過性を持つ白色のスレッド用基材2の両面に、少なくとも文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層31、32が形成され、前記スレッド用基材の両面から前記着色印刷層が目視できるようにしたスレッド及びスレッド入り偽造防止用紙及び印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短冊形状を成し且つ光不透過性をもつ白色のスレッド用基材の両方の面に、正文字(正向き文字)のマイクロ文字および/または正画像(正向き画像)のみのマイクロ画像(以下両者を併せてマイクロ文字と称す)を有するスレッド、及び該スレッドが用紙の流れ方向に抄き込まれた「スレッド入り紙」タイプの偽造防止用紙、及び該偽造防止用紙に印刷を施した偽造防止印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙層内に糸状物を抄き込んだ「スレッド入り紙」と称される偽造防止用紙は良く知られている。スレッド入り紙は製造に極めて高度な技術を必要とするものであり、偽造防止には大きな効果があり、周知のように各国の紙幣などに多く使用されている。
【0003】
スレッド入り紙には大きく分けて2種類あり、一つはスレッドが用紙の内部に抄き込まれ、用紙表面には露出しない種類のものであり、もう一つはスレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と称されるものである。
【0004】
スレッドが用紙の内部に抄き込まれ、用紙表面には露出しない種類のスレッド入り紙を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(特許文献3)などが提案されている。
【0005】
またスレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、抄紙ワイヤー上の紙料懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端にスレッドを通した溝を有するベルト機構を埋没させて製造する方法(特許文献4)や、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して、窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(特許文献5)や、長網抄紙機のワイヤー上の回転ドラム内に、圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙匹に挿入したスレッド上のスラリーを圧縮空気で間欠的に吹き飛ばしてスレッドを露出させる方法(特許文献6)などが提案されている。
【0006】
この「窓空きスレッド入り紙」は、用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くした窓空き部を形成し、この窓空き部にスレッドが露出していることが特徴である。従って、表面に接着剤を塗工していないスレッドを使用して製造した用紙では、スレッドの露出部を爪などで擦ると、スレッドが簡単に剥がれてしまったり、印刷時にスレッドが浮き上がったりするので致命的な欠点となる。このため表面に感熱接着剤を設けたスレッドを使用して窓空きスレッド入り紙を抄紙し、抄紙機の乾燥ゾーン(加熱乾燥ゾーン)でこの用紙を乾燥する際に、スレッドに塗工されている感熱接着剤を溶融若しくは軟化することによって、用紙を構成するセルロース繊維とスレッドとを確実に接着させ、剥離強度を高める対策が採られている。
【0007】
上記のようなスレッド入り紙に使用するスレッドにも、多種多様な構成が提案されている。例えば、ホログラムスレッド、磁気スレッド、紫外線の照射により蛍光発色するスレッド、サーモクロミック剤を塗工したスレッド、金属蒸着スレッド、マイクロ文字入りスレッド等々が実用化されている。
【0008】
マイクロ文字入りスレッドは、プラスチックフィルムに、直接箔押し(金属箔押し)する方法や、真空蒸着装置においてマスク若しくはテンプレートを使用して金属蒸着を行って選択的に金属化をする方法、あるいは金属化と腐食とにより非金属化する方法(パスター加工、或いはデメタライジング加工と呼ばれるが、この方法ついては後述する)により製造することが知られている(特許文献7参照)。
【0009】
上記の「デメタライジング加工」によりマイクロ文字を形成したスレッドは、外国紙幣に多く使用されている。例えば、現在の米国のドル紙幣やヨーロッパのユーロ紙幣などでは、スレッドが紙層間に埋没する構成の用紙が、またユーロ紙幣に移行する前のドイツの100マルク紙幣などでは、スレッドが窓部に間欠的に露出する構成の用紙が採用されている。
【0010】
これらスレッドに形成されたマイクロ文字は、「正文字」(正向き文字)と「上下反転の逆文字」(逆向き文字)とが交互に位置するようになっている。このことは、用紙を抄造するときにスレッドが反転しても良いような設計になっていることを意味している。別の言い方をすれば、スレッドには表裏の区別をしていないことを意味している。
【0011】
また、マイクロ文字は文字を形成する部分が金属蒸着層の場合(前記米国ドル紙幣等)と、マイクロ文字を形成する部分が抜き文字になっている場合(前記ドイツ100マルク紙幣等)がある。別の言い方をすると、マイクロ文字には「ポジ型」或いは「ネガ型」があることとなる。
【0012】
一方、スレッドの表裏を区別して用紙に抄き込んだ偽造防止用紙の提案は、特許文献8でなされている。この提案は、用紙の流れ方向にスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙において、前記スレッドは、ベースとなるフィルムと、該フィルムの表面に形成された金属蒸着層からなる正文字(正向き文字)のみのマイクロ文字と、該金属蒸着層上に形成された透明インクによる印刷層と、前記フィルムの裏面に形成された感熱接着剤層とからなり、前記印刷層を形成するインクには、紫外線の照射で発色する染料や顔料が添加されており、用紙の表側から見た場合に、正文字のマイクロ文字が見えるように、前記スレッドを用紙に抄き込んでいることを要旨とする偽造防止用紙である。スレッドをこのような構成にすることで、スレッドに紫外線を照射したときに、スレッドの印刷層が発色して見えるか否かを判定することにより、スレッドの表裏面の識別が簡単にできるという効果が得られる。この特許において金属蒸着層からなるマイクロ文字は、所謂、「デメタライジング加工」で得られることが述べられている。
【0013】
上記特許文献8に提案されたスレッドは、用紙に抄き込まれた際に、用紙の表面(オモテ面)から観察した時にスレッドの表面(オモテ面)が観察されるだけで、用紙の裏面から観察した時にはスレッドに形成されたマイクロ文字は必然的に「逆文字」として観察されることとなる。このような構成のスレッドは、商品券や株券のような場合は、特に商品価値を低下するようなことは無いが、用紙の表裏を同じように使用する、例えばパスポートの本文用紙等の場合は、スレッドに形成されたマイクロ文字が、用紙の表面(オモテ面)と裏面のそれぞれから観察した時にいずれも「正文字」に観察された方が好ましいことは言うまでもない。
【0014】
これらの課題を解決したスレッドの提案を、本出願人は、特願2005−202621号として出願した。この出願の発明の要旨とするところは、「短冊形を成し且つ光透過性を持つ基材の片側又は両側の面に、少なくとも、文字または模様の片方または両方によるパターン状に形成された1以上の金属薄膜層、及び、該金属薄膜層のそれぞれの上にそれ
ぞれの金属薄膜層と同様のパターン状に形成され且つ着色された着色樹脂層を備え、前記金属薄膜層が有る領域と、該金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ該基材の該金属薄膜層および着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の着色樹脂層を視認できる」ことを特徴とするスレッドである。
【0015】
上記の特願2005−202621号で提案したスレッドのうち、光透過性を持つスレッド基材の片側の面に正文字のマイクロ文字などによるパターン状の金属薄膜層と着色樹脂層とを積層したスレッドの場合には、反射光で、そのスレッド入り用紙の片面(例えばオモテ面)から視認できた該スレッドの着色樹脂層によるマイクロ文字の着色された像が、反対面(例えば裏面)からは、反射光ではコントラストによる像(陰影像)のみであって着色された像としては視認できない(又は視認し難い)。これは、当然何か見えるはずであろうと云う予想を覆すことから、偽造防止対策の工夫点として、また、趣向心や遊び心としての楽しみを与えられる有効な工夫点として期待できる。
【0016】
また、上記の特願2005−202621号で提案したスレッドのうち、光透過性を持つスレッド基材の両側の面に正文字のマイクロ文字などによるパターン状の金属薄膜層と着色樹脂層とを積層したスレッドを紙に抄き込むと、用紙の表面(オモテ面)と裏面のそれぞれから観察した時に、いずれも「正文字」のマイクロ文字が観察できるという今までに無い効果が得られるが、スレッド入り紙を光に透かして観察すると、スレッドを形成する基材が透明であるため、表面及び裏面に形成されたマイクロ文字がいずれも視認されることとなる。即ち、正文字(正向き文字)のマイクロ文字と逆文字(逆向き文字)のマイクロ文字の両方が視認されることとなり、文字が表す意味が判別し難くなるという問題があった。そのため、文字が表す意味が判別可能になるためには、スレッド入り紙を光に透かして観察したときに、正文字(正向き文字)のみのマイクロ文字が観察された方が好ましい場合が多い。
【0017】
以下に、本発明に関連する公知の特許文献を記載する。
【特許文献1】特開昭51−130309号公報
【特許文献2】特開平2−169790号公報
【特許文献3】特公平5−40080号公報
【特許文献4】特公平5−85680号公報
【特許文献5】米国特許第4462866号公報
【特許文献6】特開平6−272200号公報
【特許文献7】特公平6−062030号公報(5欄46行〜6欄3行、7欄26行〜8欄12行)
【特許文献8】特許第3279212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものてあり、その課題とするところは、用紙を光に透かして観察した際に、スレッドを形成する透明な基材を透かして表面及び裏面の両面に形成された正文字(正向き文字)のマイクロ文字がいずれも視認され
るようにすることにあり、即ち従来のように正文字(正向き文字)のマイクロ文字と逆文字(逆向き文字)のマイクロ文字の両方が視認されることにより文字が表す意味が判別し難くならないように、用紙を光に透かして観察したときに、その用紙の表面と裏面の両面から正文字のみのマイクロ文字が観察される効果が得られるスレッドを得ること、及びこのスレッドを使用した偽造防止用紙を得ること、及びこの偽造防止用紙を使用した偽造防止印刷物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を達成する為になされた本発明の請求項1に係る発明は、短冊形状を成し且つ光不透過性を持つスレッド用基材の両面に、少なくとも文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層が形成され、前記スレッド用基材の両面から前記着色印刷層が目視できるようにしたことを特徴とするスレッドである。
【0020】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係るスレッドにおいて、前記2以上の着色印刷層の着色が同一色であることを特徴とするスレッドである。
【0021】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1に係るスレッドにおいて、前記2以上の着色印刷層の着色が異なった色であることを特徴とするスレッドである。
【0022】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至3のいずれか1項に係るスレッドが用紙の流れ方向に連続的に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0023】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る偽造防止用紙において、前記スレッドが、紙層間に抄き込まれていて用紙表面には露出しておらず、該用紙表面を反射光で観察した時に、着色された正文字や正模様のパターンが観察されることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0024】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項4または5のいずれか1項に係る偽造防止用紙に所定の印刷部を設けたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスレッドは、光不透過性を持つスレッド用基材(例えば白色基材)の両面に、文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層が形成されているものである。また、本発明の偽造防止用紙は、本発明の前記スレッドを紙層間に抄き込むことにより形成されていて、その用紙表面には露出しておらず、該用紙の表面及び裏面を反射光で観察した時には、文字若しくは模様のいずれか一方または両方によりパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層による着色された正文字や正模様のパターンが観察されるものである。
【0026】
このように本発明のスレッドは、光不透過性のスレッド基材の両面に、着色印刷層(例えば正文字(正向き文字)のマイクロ文字など)が形成されているため、本発明のスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙は、その用紙の表面(オモテ面)から観察した時には、スレッドの表面(オモテ面)に形成された着色印刷層(正文字(正向き文字)のマイクロ文字など)が観察され、その用紙の裏面から観察した時には、前記スレッドの裏面に形成された着色印刷層(例えば正文字(正向き文字)のマイクロ文字など)が観察されるものである。
【0027】
本発明の偽造防止用紙は、本発明の上記スレッドが、用紙の流れ方向に連続的に抄き込まれたスレッド入り用紙であるため、1枚の偽造防止用紙の表面(オモテ面)と裏面のそ
れぞれから観察した時に、それぞれの面に形成された着色印刷層(例えばマイクロ文字)が透けて見えることがなく、本発明の偽造防止用紙のスレッドに形成された着色印刷層(例えばマイクロ文字)を、いずれも着色された正文字(正向き文字)として観察することができる。また本発明の偽造防止用紙を透過光で観察しても、本出願人が先に特願2005−202621号として出願したスレッドを抄き込んで得られたスレッド入り用紙のように、その用紙に抄き込まれたスレッドの表裏両面のマイクロ文字が重なって見えると言う問題点が解消される。
【0028】
また本発明の偽造防止用紙は、パスポートや通帳の本文用紙等に採用すれば、商品価値を向上させることになると同時に、高い偽造防止効果も得ることができる。例えば、本発明のスレッド本体にパスポート冊子のページ数に一致する数字を形成しておけば、この数字がページ数を表すと言うような使い方ができることとなる。
【0029】
また本発明のスレッドは、上記の偽造防止用紙としての用途以外にも用いることができる。例えば、和服用の生地の製造に使用される金銀糸と同様な製造方法、即ち撚り糸の外周方向にスパイラル状にこのスレッドを巻き付けて縫い糸を製造すれば、偽造防止を目的とした縫い糸とすることができる。この縫い糸を、ブランド物と呼ばれる高級なバッグ等の人目に付かない部分に縫い付けておくことにより、偽物と本物の区別を容易に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態を以下図面を用いて説明する。図1は、本発明のスレッドを作成するためのスレッド原反(10)(1単位のスレッドが複数単位に多面付けされたシート)の一例を説明する部分平面図(正面図)であり、光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色の基材(2))の表面には、着色された着色印刷層(31)(例えば、★マーク、「正文字」(正向き文字)のA、B、C、Dなど)が形成され、該基材(2)の裏面にも着色された着色印刷層が形成されている。図2は、本発明におけるスレッド原反(10)の部分拡大断面図であり、基材(2)の表面には前記着色印刷層(31)が、裏面には着色された着色印刷層(32)が形成されている。それぞれ着色された着色印刷層(31、32)は例えばマイクロ文字やマイクロパターンなどであり、複写機(コピー機)などにて等倍複写や拡大複写が不可能な微細(微小)なキャラクタやパターンとして印刷されている。
【0031】
この際、前記着色印刷層(31、32)には、紫外蛍光発色剤を併用することも可能である。さらに紫外線で発色し、且つ通常の光で着色して見える染料や顔料も使用することができる。
【0032】
前記着色印刷層(31、32)はオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等で設けることができる。通常、この印刷層の厚味は、0.5μm〜5μmである。また着色印刷層(31、32)として形成する各マイクロ文字、マイクロパータンの大きさは2〜10ポイント程度が適当であるが、コピー機にて等倍複写や拡大複写が不可能な微細(微小)なキャラクタやパターンの大きさとしては、通常2ポイント相当あるいはそれ以下のものを使用することが好ましい。
【0033】
本発明のスレッド(1)が多面付け印刷にて形成されたスレッド原反(10)(前記着色印刷層(31、32)の印刷形成された基材(2))には、必要に応じて、その片面若しくは両面に接着剤を塗工し、次いで、スレッド原反(10)をマイクロスリッターやマイクロカッターを使用して、微細な幅のテープ状体(又は微細な小片状体)にスリットあるいはカッティングすることにより、微細幅テープ状体若しくは微細小片状体の複数単位の本発明のスレッド(1)が完成する。なお、本発明のスレッドがマイクロスリッターを
用いてスリット形成された微細幅テープ状体の場合には、それをボビンなど巻取軸にウエブ状に巻き取り、ロール状スレッドとしての本発明のスレッド(1)が完成する。
【0034】
図3〜図8は、本発明のスレッド(1)の種々の形態の例を示した平面図(正面図)であり、スレッド(1)に実線(ベタ)で示す★マーク、「正文字」(正向き文字)のA、B、C、Dは、スレッド(1)の基材(2)表面に形成された着色印刷層(31)の部分を表し、ハッチング(斜線)で示す★マーク、「正文字」(正向き文字)のA、B、C、Dは、スレッド(1)の基材(2)裏面に形成された着色印刷層(32)の部分を表すものである。
【0035】
図3に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)がスレッド(1)の用紙への抄き込み流れ方向(矢印方向、抄紙方向)に対して2列平行に配列されている。スレッド裏面の着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の用紙への抄き込み流れ方向に対して2列平行に配列されている。なお図3において、裏面の着色印刷層(32)は、光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色基材)に妨げられて、スレッド(1)の表面側からは視認することはできない。
【0036】
図4に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)がスレッドの用紙への抄き込み流れ方向(矢印方向、抄紙方向)に対して、所定の角度θ(例えばθ1 )を付けて配列されている。スレッド裏面の着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の用紙への抄き込み流れ方向(矢印方向、抄紙方向)に対して、所定の角度θ(例えばθ2 )を付けて配列されている。なお、角度θ1 とθ2 との関係は、本発明においては特に限定されるものではないが、例えばθ2 =θ1 、あるいはθ2 ≠θ1 であってもよい。
【0037】
図5に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)が、そのスレッド(1)の幅方向(例えば矢印方向に対して直交方向)に上下が切断されない形態で、少なくとも1列入るように配列されている。スレッド裏面に形成された着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の幅方向(例えば矢印方向に対して直交方向)に上下が切断されない形態で、少なくとも1列入るように配列されている。
【0038】
前述の図3〜図5に図示したスレッド(1)の場合は、スレッド表面の着色印刷層(31)、裏面の(32)の両方又は片方が「ポジ型」で形成表示され配列されている場合であるが、本発明においては「ネガ型」(白抜き)で形成表示され配列されていてもよい。例えば、図6に図示したスレッド(1)においては、着色印刷層(31)の一列が「ネガ型」で配列されている場合を示す。
【0039】
図7に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)がスレッド(1)の中央に一列に位置するように配列され、裏面に形成された着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の中央に一列に位置するように配列されて、互いにオーバーラップして中央に位置するように配列されている。
【0040】
図8に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された2列の着色印刷層(31)と、スレッド裏面に形成された2列の着色印刷層(32)とが、互いに平行にスレッド(1)の幅方向に上下が切断されない形態で配列されている。
【0041】
本発明においては、上記にて例示した形態のスレッドだけでなく、この他の形態のスレッドも、本発明の要旨を変更しないものであれば、本発明の範疇に入ることは言うまでもない。また本発明においては、スレッド表裏を同一のデザインにすること、スレッド表裏を異なったデザインにすること、スレット表裏を同一の色にすること、スレッド表裏を異なった色にすることなど、いずれであっても構わない。またマイクロ文字も、図6に示すように「ポジ型」若しくは「ネガ型」のいずれであっても構わない。
【0042】
図9は、本発明の偽造防止用紙(20)の一例を示す平面図であり、図10は、図9のA−A線における断面説明図である。図示した偽造防止用紙(20)は、紙層(20a)と紙層(20b)の2層から構成されてなり、これらの紙層(20a、20b)間にスレッド(1)が挿入されている。
【0043】
本発明におけるスレッド入り偽造防止用紙には大きく分けて2種類あり、一つは、図11(a)の部分拡大断面図に示すようなスレッド(1)が用紙の内部に抄き込まれ、用紙表面には露出しないスレッド入り偽造防止用紙(20)であり、もう一つは、図11(b)の部分拡大断面図に示すような窓空き部wを備え、スレッド(1)の一部が用紙表面に間欠的に露出した窓空きスレッド入り偽造防止用紙(20)である。
【0044】
図11(a)に示す本発明のスレッド入り偽造防止用紙は、紙層(20a、20b)間にスレッド(1)が抄き込まれた窓空き部wのないものであり、その見え方は、スレッド(1)を偽造防止用紙(20)の表面(F)(オモテ面)からみると、スレッド(1)表面の着色印刷層(31)が、紙層(20a)を透かして、例えば「赤色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。同様に偽造防止用紙(20)の裏面(R)からは、裏側の着色印刷層(32)が、紙層(20b)を透かして、例えば「青色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。
【0045】
図11(b)に示す窓空き部wを備えた本発明のスレッド入り偽造防止用紙は、紙層(20a、20b)間にスレッド(1)が抄き込まれた窓空き部wのあるものであり、その見え方は、スレッド(1)を偽造防止用紙(20)の表面(F)(オモテ面)からみると、スレッド(1)表面の着色印刷層(31)が、窓空き部w領域内に露出しており、該窓空き部w領域内にて直接、例えば「赤色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。同様に偽造防止用紙(20)の裏面(R)からは、裏側の着色印刷層(32)が、例えば「青色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。
【0046】
前に述べたように、本発明の偽造防止用紙(20)は、窓空き部wが有るもの無いものに関わらず、その表面(F)から透過して観察しても、裏面(R)側に形成したスレッド(1)裏面のマイクロ文字は全く視認できない。透過光は光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色の基材(2))によって遮られてしまうからである。
【0047】
以下、本発明をより詳しく説明する。光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色の基材)としては、例えば、セロファン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン等の半合成、若しくは合成樹脂フィルムを、単層あるいは複合体として使用できる。さらに基材(2)は、抄紙機の乾燥ゾーンにおいて融解若しくは軟化しない材質であって、通常は90〜110℃で粘着性を帯びない性質の材質を選択するのが好ましい。
【0048】
基材(2)は光不透過性(例えば白色の光不透過性)とするために、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等の白色の顔料や、必要に応じて着色剤(染料・顔料)が練り込まれたり、或いはこれらの顔料と接着剤よりなる塗工液を塗工したり、あるいは基材(2)の両面(又は片面)をサンドブラスト加工されたり、あるいは基材(2)を化学的発泡法、物理的発泡法にて発泡加工されている。
【0049】
基材(2)の厚みは、薄すぎても各種の加工が困難となり、また厚すぎてもスレッド(1)を紙層間に抄き込んだ場合に部分的に紙の厚味が増大し、種々の問題点を引き起こすので、基材(2)の厚みは5〜25μmとすることが好ましい。
【0050】
本発明に使用する光不透過性を持つ基材(2)において「光不透過性」とは、完全に光を透過しないことを意味するのではなく、本発明の目的を達成できれば僅かに光を透過しても良いことを意味する。即ち、スレッド用基材(2)の表裏に形成された着色印刷層(31、32)が、その基材(2)を基材(2)の表面又は裏面から透かして観察した際に、反対面の着色印刷層が透けて見えない程度であれば、僅かに光を透過しても良いことを意味する。また基材(2)の「光不透過性」における「白色光不透過性」又は「着色光不透過性」とは、スレッド(1)として紙に抄き込まれた際に、スレッド(1)が紙の表面から観察されない程度に、その基材(2)が白色又は僅かに着色されていてもよいことを意味する。
【0051】
基材(2)に着色印刷層(31、32)を設けるには、水不溶性の紅・藍・黄・墨等の染料や顔料の単独或いは混合物の着色剤を、通常のオフセット印刷やスクリーン印刷や凸版印刷等の印刷インキの製造に使用されるビヒクル、あるいは通常のグラビア印刷インキの製造に使用される樹脂バインダー、あるいは接着性樹脂(接着剤)等の樹脂液に混合して印刷インキを製造して、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等により、マイクロ文字や、微細画像、微細パターンを印刷する方法を採用できる。
【0052】
基材(2)に以上の処理を施して着色印刷層(31、32)を設けた後、あるいは着色印刷層(31、32)を設ける前に、必要に応じて、その基材(2)の片面或いは両面に接着剤を塗工して接着剤層を設ける。使用する接着剤としては、偽造防止用紙(20)を抄紙するための抄紙機のドライヤーにより軟化若しくは溶融し、偽造防止用紙(20)の紙層(20a、20b)と強固に接着する性能を有した周知の接着剤を使用することができる。
【0053】
接着剤の具体例としては、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系等の公知の接着剤を、水系若しくは溶剤系の塗料とし、ロールコーターやグラビアコーター等の周知の塗工機を用いてスレッド用基材(2)の表面に塗工することにより形成できる。その塗工量は通常で0.1〜10g/m2 (乾燥質量換算)とする。
【0054】
偽造防止用紙(20)の紙層間にスレッド(1)が埋没しているタイプのスレッド抄き込み紙においては、接着剤層形成用の接着剤塗工量は少なくて良いが、窓空きスレッド入り紙の場合は塗工量を増加させる。接着剤には必要に応じて、ブロッキング防止剤、潤滑剤、着色剤、蛍光発色剤等を添加してもよい。
【0055】
前に述べたようにスレッド(1)の表裏を判定する必要がある場合には、スレッド用基材(2)として紫外線を吸収する基材を使用し、接着剤には蛍光発色剤を添加して、基材(2)の片面だけにこの蛍光発色剤添加の接着剤を塗工したスレッド(1)を製造する。これによりスレッド(1)の表面若しくは裏面から紫外線を照射することにより、該スレッド(1)の蛍光発色剤を添加した接着剤層が紫外線により発光する。その発光の有無によりスレッド(1)の表裏を容易に判定できるようになる。
【0056】
本発明のスレッド(1)は、次いで、マイクロスリッター装置などを使用して常法に従い、所定の幅でスリットすることにより、微細帯状体(テープ状体)の本発明のスレッド
(1)が完成する。微細帯状体(テープ状体)のスレッド(1)の幅は特に限定されるものではないが、通常は0.5mm幅〜10mm幅とすることが適当である。スレッド(1)に形成されている着色印刷層(31、32)によるマイクロ文字は、1列以上の正文字(正向き文字)や正模様(正向き模様)のパターンが視認できるように形成されている必要がある。
【0057】
次に、本発明の偽造防止用紙の製造方法の一例を説明する。
【0058】
まず、抄紙のための紙料の調製としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の製紙用パルプを主体とし、ビーターやディスクリファイナー等を使用して叩解処理し、これに白土、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の各種填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、定着剤等を適宜併用し、本発明の偽造防止用紙(20)を抄紙するための紙料(例えば用紙(20)の紙層(20a)、(20b)となる紙料)を調整する。
【0059】
次に、偽造防止用紙の製造としては、従来公知の方法を使用して製造できる。前にも述べたようにスレッド入り紙には大きく分けて2種類ある。一つはスレッド(1)が偽造防止用紙(20)内部に抄き込まれ、用紙(20)の表面に露出しない種類のものであり、もう一つはスレッド(1)の一部が用紙(20)の表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と呼ばれるものである。
【0060】
前者の用紙(20)の表面にスレッド(1)が露出しない偽造防止用紙を製造する方法としては、前に述べたように、長網抄紙機のスライス部分における紙料(紙層20a、20b)の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながら、その流水にて微細なスレッド(1)を抄紙網に繰り出す。これにより抄紙網に形成される紙匹中にスレッド(1)を抄き込む方法(特許文献1)がある。
【0061】
また、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料にスレッドを挿入するためのスレッド挿入装置を設置して、空気流でスレッド(1)と紙料(紙層(20a)、(20b)を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)がある。
【0062】
また、2槽以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッド(1)を紙層(紙層(20a)、(20b))間に送り出し、紙層(紙層(20a)、(20b))間にスレッド(1)を抄き込む方法(特許文献3)等が採用できる。本発明においては、用紙(20)の表面にスレッド(1)が露出しない方法であればこれら以外の製造方法を採用しても良いことは言うまでもない。
【0063】
後者の「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、前に述べたように、下網(ワイヤー)上に流し入れた紙料(紙層(20a)、(20b))懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端にスレッド(1)を送り込む溝を有するベルト機構を埋没して製造する方法(特許文献4)がある。
【0064】
また、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッド(1)を凹凸状の上網表面の下向き凸部に接触させながら、下網に流した紙料(紙層(20a)、(20b)懸濁液に挿入して、窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(特許文献5)がある。
【0065】
また、長網抄紙機の下網(ワイヤー)上の回転ドラム内に圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙料(紙層(20a)、(20b))懸濁液に挿入したスレッド(1)上の前記懸濁
液(スラリー)を圧縮空気で間欠的に吹き飛ばしてスレッド(1)を露出させる方法(特許文献6)等が採用できる。本発明においては、「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法であれば、これら以外の方法を採用しても良いことは言うまでもない。
【0066】
また、抄紙途上で紙面にポリアクリルアマイド樹脂、澱粉、ポリビニルアルコール等を塗工することも可能である。さらに必要に応じて、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。
【0067】
例えば、図11に示すように、スレッド(1)の表面(F)には赤色に見えるマイクロ文字による着色印刷層(31)が形成され、裏面(R)には青色に見えるマイクロ文字による着色印刷層(32)が形成されたスレッド(1)が紙層(20a)、(20b)間に抄き込まれた偽造防止用紙(20)においては、下記に述べるような工夫がなされる。
【0068】
即ち、偽造防止用紙(20)の厚味や用紙の製造処方を工夫するものである。用紙(20)の表面(F)(オモテ面)から入射した光は、赤色に着色された着色印刷層(31)で反射するので、用紙(20)の表面(F)で赤色のマイクロ文字が視認できるようにする。同様の理由で、用紙(20)の裏面(R)では青色のマイクロ文字が視認できるようにする。用紙(20)の表面(F)から入射した光は、スレッド(1)の光不透過性の基材(2)内部に入射することはないので、用紙(20)を翳して透過光で観察しても、観察面と反対の面のスレッド表面に形成されたマイクロ文字が視認されることはない。用紙(20)は、通常坪量50〜150g/m2 で製造される。
【0069】
図12は、窓空きスレッド入り紙である本発明の偽造防止用紙(20)の一例を示す平面図であり、帯状体(テープ状体)(又は小片状体など)の微細なスレッド(1)が、比較的薄い紙層(20a、20b)部分である窓領域(w)内の表面に露出して抄き込まれている偽造防止用紙(20)である。なお、窓領域(w)の領域サイズとスレッド(1)のサイズとは、図示するように互いに異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0070】
図12に示したような窓空きスレッド入り紙である本発明の偽造防止用紙(20)として、例えば、図7で示したような両面に着色印刷層(31、32)があるスレッド(1)を抄き込んだ場合は、偽造防止用紙(20)の表面(図12の図表面側)からは、窓部分(w)に露出するスレッド(1)の表面に形成された着色印刷層(31)を直接視認することができ、その偽造防止用紙(20)の裏面からは、その用紙(20)の紙層(20a)、(20b)を通してスレッド(1)の裏面に形成された着色印刷層(32)を視認することができる。
【0071】
また、本発明の偽造防止用紙(20)は、複数枚の用紙(20)を接着剤を使用して貼合して貼り合わせ紙を製造する際に、本発明のスレッド(1)を連続的に繰り出して、複数枚の前記用紙間に埋没させることによっても製造することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明のスレッド(1)、及び偽造防止用紙(20)の具体的実施例について説明する。質量部は乾燥質量部を、厚味は乾燥厚味を表す。
【0073】
<実施例1>
[スレッド(1)の製造]
基材(2)として、厚み16μmの二酸化チタンを練り込んだ不透明ポリエステルフィルムの巻き取りを使用し、その基材(2)の片面(表面)には、グラビア印刷機と、青色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(31)(着色樹脂印刷層)を形成した。その基材(2)の反対面(裏面)には、グラビア印刷機と、
赤色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(32)(着色樹脂印刷層)を形成した。
【0074】
上記マイクロ文字は、「★ABCD 」の文字からなり、その文字の大きさは2.5ポイント(ポイント数はアメリカ式ポイント数を意味し、1ポイントは約0.35mmである)、文字と文字の間隔は0.4mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。文字列は、基材(2)の偽造防止用紙(20)への抄き込み時における抄紙流れ方向に対して傾斜角度θ=18度に傾斜して印刷し、図4に示す着色印刷層31、32の表裏配置による本発明のスレッド(1)を作成した。
【0075】
さらに、このスレッド(1)の片面(着色印刷層31面又は着色印刷層32面)に、エチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を1.5μmの厚みでグラビアコーターを使用して塗工して、偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み用の接着剤層を形成した。
【0076】
次いで、このスレッド(1)を、マイクロスリッターを使用して偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み時における抄紙流れ方向に平行に幅2mmにスリットして、図4に示す帯状体(テープ状体)のスレッド(1)を製造した。スリットした幅2mmのスレッド(1)はボビンに巻き取った。
【0077】
<実施例2>
[スレッド(1)の製造]
基材(2)として、厚み12μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製造)の巻き取りを使用し、その基材(2)の片面に、二酸化チタン30質量部、ポリエステル樹脂70質量部よりなる塗料を7μmの厚みで全面に塗工して光不透過性層を形成して、光不透過性を持つ白色の基材(2)を製造した。
【0078】
その光不透過性の基材(2)の片面(表面)(光不透過性層面又はその反対面)には、グラビア印刷機と、青色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(31)(着色樹脂印刷層)を形成した。この基材(2)の反対面(裏面)には、グラビア印刷機と、赤色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(32)(着色樹脂印刷層)を形成した。
【0079】
上記のマイクロ文字は、図5に図示したように「★ABCD 」の文字からなり、その大きさは2.5ポイント(ポイント数はアメリカ式ポイント数を意味し、1ポイントは約0.35mmである)、文字と文字の間隔は0.4mm、文字列と文字列の間隔は0.325mmとした。文字列は、図5に示したように、透過光で観察した時にスレッド(1)の表側の文字列と裏側の文字列が互いに重ならないように配列して、図5に示す着色印刷層31、32の表裏配置による本発明のスレッド(1)を作成した。
【0080】
さらに、このスレッド(1)の片面(着色印刷層31面又は着色印刷層32面)に、オキサゾール系の蛍光発色剤(接着剤に対して2.5質量%使用)を添加したエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚みで塗工して、偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み用の接着剤層を形成した。
【0081】
次いで、このスレッド(1)を、マイクロスリッターを使用して偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み時における抄紙流れ方向に平行にマイクロ文字の上や下が切られないようにマイクロスリッターを制御して幅2mmにスリットして、図5に示す帯状体(テープ状体)のスレッド(1)を製造した。スリットした幅2mmのスレッド(1)はボビンに巻き取った。
【0082】
<実施例3>
[偽造防止用紙(20)の製造](図9に示す偽造防止用紙の製造)]
・紙料の調製
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)25質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)75質量部を、フリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部、二酸化チタン5質量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン」、荒川化学工業(株)製)0.4質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製)1.0質量部、硫酸バンドを適量加え、紙料を調製した。
・偽造防止用紙の製造
図13に示すような2槽式円網抄紙機を用いて、その第1槽目11と第2槽目12で、それぞれ坪量45g/m2 の紙匹を抄造し、両者を抄き合わせる際に、紙層間に上記実施例1で製造したスレッド(1)を、接着剤を塗工していないスレッド(1)面が上面に向くようにして抄き込んだ。その後、常法に従い乾燥して、偽造防止用紙(20)を製造した。得られた偽造防止用紙(20)は、反射光で観察すると、該用紙(20)の片方の面にはスレッド(1)による青色のマイクロ文字のみが、その反対の面では赤色のマイクロ文字のみが見えた。
【0083】
<実施例4>
[窓空き部wを備える偽造防止用紙(20)の製造]
・抄紙網の製造
図13に示すような2槽式円網抄紙機の第1槽11と第2槽12のうち、2槽式円網抄紙機の窓空き部wのない紙層(例えば図11(b)の紙層(20b)(最外層の紙層20aに接する紙層)を形成するための第1槽11内にて浸漬して回転する第1円網シリンダー11aには、何等細工を施さない第1円網11bを装着し、また、円網抄紙機の最外層の紙層(例えば図11(b)の紙層(20a))を形成する第2槽12内にて浸漬して回転する第2円網シリンダー12aの第2円網12b(幅1300mm)の外面には、短辺10mm、長辺25mm、厚み0.3mmの樹脂板からなる窓空き部w領域形成用の多数の窓空き部形成型13を紙層の流れ方向(上網12bの回転方向)に、10mm間隔で連続的に1列に接着剤を使用して貼り付け、この列を、この第2上網12bの流れ幅方向に等間隔に6列貼り付けて取り付けた。
・用紙の抄造
次に上記実施例1と同じ紙料16を用いて、第1槽11の第1円網11bで形成される第1紙層(例えば図11(b)の紙層(20b))の上に、第2槽12の第2円網12bで形成される第2紙層(最外層)(例えば図11(b)の紙層(20a))が重なるようにして、さらに該第2円網12bの窓空き部形成用型13にて第2層20a側に窓空き部wを形成しながら、クーチロール15(又はサクションロール)にてガイドされるフェルトシート14(例えばエンドレスベルト状フェルトシート)面に抄紙速度50m/分(円網11、12の回転速度、フェルトシート14の送行速度)にて湿紙として移行させ、2層抄合わせ紙を製造した。この際、前記第1紙層(20b)(乾燥質量に換算して50g/m2 )と第2紙層(20a)(同50g/m2 )の間に、上記実施例2で製造したスレッド(1)(蛍光発色剤を添加した感熱接着剤層をスレッド基材2裏面に塗工したスレッド)を、スレッド挿入位置Vにて押し型13の中央に相当する位置に挿入して、第2紙層(20a)の窓空き部w領域内に第1紙層(20b)面上のスレッド(1)が露出する2層抄合わせ紙を形成した。
・スレッドの表裏面の検知
スレッド挿入位置Vにて挿入するスレッド(1)の表裏関係については、クーチロール15の位置に紫外線照射用のブラックライト(図示せず)を設置して次の通り実施した。フェルトシート面にて送行する2層抄合わせ紙である湿紙に、クーチロール15の位置にてブラックライト(紫外線)を照射した。湿紙の窓空き部wに露出するスレッドが紫外線の照射で発色して見える場合は、スレッド(1)の裏面の感熱接着剤層が露出しているこ
とを意味するので、スレッド挿入位置Vで挿入されているスレッド(1)を切断し、スレッド(1)の表裏面を反転させたのち、再び挿入する動作を行った。この動作を紫外線の照射でスレッドが発色しなくなるまで行うことにより、正常なスレッド挿入状態とすることができた。
・2層抄合わせ紙である湿紙の脱水
次いで、フェルトシート14面に移行して送行する2層抄合わせ紙である湿紙を、常法に従い、ロールプレスなどにて圧搾、脱水後、シリンダードライヤーで乾燥して、2層抄合わせ紙からなるスレッド入り窓空き部wを備えた本発明の偽造防止用紙(20)を製造した。得られた偽造防止用紙(20)は用紙の流れ方向における窓空き部wの長さが10mm、非窓空き部の長さが10mmであり、窓空き部w領域内ではスレッド(1)が露出し、非窓空き部ではスレッド(1)が紙層(例えば紙層(20a)、(20b))の間に埋設された状態となっていた。
【0084】
<実施例5>
[偽造防止印刷物の製造]
上記実施例3の偽造防止用紙(20)を使用して、該用紙(20)面に、図14に示す商品券の図柄Pを印刷し、偽造防止印刷物(30)を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のような特性を生かして得られる本発明のスレッド(1)は、その製造に極めて高度の技術が必要なため、偽造防止を目的とした縫い糸の用途等に好適に用いることができる。また本発明で得られるスレッドを抄き込んだ本発明の偽造防止用紙(20)及び偽造防止印刷物(30)は、紙幣や、商品券、小切手、株券、債券、カード、各種チケット、機密文書、パスポート、身分証明書等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明のスレッドを製造するためのスレッド原反、及びそれを製造するために白色の基材の表面に着色印刷層を設けた状態を模式的に示した平面図。
【図2】図1の部分拡大側断面図であり、基材の表裏面に着色印刷層を設けた状態を模式的に示した側断面図。
【図3】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図4】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図5】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図6】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図7】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図8】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図9】本発明の偽造防止用紙の一例を模式的に示す平面図。
【図10】図9のA−A側断面図。
【図11】(a)は本発明のスレッドが紙層間に抄き込まれた本発明の偽造防止用紙の一例を説明する部分拡大側断面図、(b)は本発明のスレッドが窓空き部を設けて紙層間に抄き込まれた本発明の偽造防止用紙の一例を説明する部分拡大側断面図。
【図12】本発明のスレッドが窓空き部を設けて紙層間に抄き込まれた本発明の偽造防止用紙の一例を説明する平面図。
【図13】本発明の窓空き部を有する偽造防止用紙の製造に好ましく使用できる2槽式円網抄紙機の一例を示す説明図。
【図14】本発明の偽造防止印刷物の一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0087】
1…スレッド
2…スレッド用基材
10…スレッド原反
11…第1円網槽
11a…第1円網シリンダー
11b…第1円網
12…第2円網層
12a…第1円網シリンダー
12b…第2円網
13…押し型
14…フェルトシート
15…クーチロール
20…偽造防止用紙
20a…紙層
20b…紙層
30…偽造防止印刷物
31…着色印刷層
32…着色印刷層
w…窓空き部領域
P…印刷部
【技術分野】
【0001】
本発明は、短冊形状を成し且つ光不透過性をもつ白色のスレッド用基材の両方の面に、正文字(正向き文字)のマイクロ文字および/または正画像(正向き画像)のみのマイクロ画像(以下両者を併せてマイクロ文字と称す)を有するスレッド、及び該スレッドが用紙の流れ方向に抄き込まれた「スレッド入り紙」タイプの偽造防止用紙、及び該偽造防止用紙に印刷を施した偽造防止印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙層内に糸状物を抄き込んだ「スレッド入り紙」と称される偽造防止用紙は良く知られている。スレッド入り紙は製造に極めて高度な技術を必要とするものであり、偽造防止には大きな効果があり、周知のように各国の紙幣などに多く使用されている。
【0003】
スレッド入り紙には大きく分けて2種類あり、一つはスレッドが用紙の内部に抄き込まれ、用紙表面には露出しない種類のものであり、もう一つはスレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と称されるものである。
【0004】
スレッドが用紙の内部に抄き込まれ、用紙表面には露出しない種類のスレッド入り紙を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(特許文献3)などが提案されている。
【0005】
またスレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、抄紙ワイヤー上の紙料懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端にスレッドを通した溝を有するベルト機構を埋没させて製造する方法(特許文献4)や、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して、窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(特許文献5)や、長網抄紙機のワイヤー上の回転ドラム内に、圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙匹に挿入したスレッド上のスラリーを圧縮空気で間欠的に吹き飛ばしてスレッドを露出させる方法(特許文献6)などが提案されている。
【0006】
この「窓空きスレッド入り紙」は、用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くした窓空き部を形成し、この窓空き部にスレッドが露出していることが特徴である。従って、表面に接着剤を塗工していないスレッドを使用して製造した用紙では、スレッドの露出部を爪などで擦ると、スレッドが簡単に剥がれてしまったり、印刷時にスレッドが浮き上がったりするので致命的な欠点となる。このため表面に感熱接着剤を設けたスレッドを使用して窓空きスレッド入り紙を抄紙し、抄紙機の乾燥ゾーン(加熱乾燥ゾーン)でこの用紙を乾燥する際に、スレッドに塗工されている感熱接着剤を溶融若しくは軟化することによって、用紙を構成するセルロース繊維とスレッドとを確実に接着させ、剥離強度を高める対策が採られている。
【0007】
上記のようなスレッド入り紙に使用するスレッドにも、多種多様な構成が提案されている。例えば、ホログラムスレッド、磁気スレッド、紫外線の照射により蛍光発色するスレッド、サーモクロミック剤を塗工したスレッド、金属蒸着スレッド、マイクロ文字入りスレッド等々が実用化されている。
【0008】
マイクロ文字入りスレッドは、プラスチックフィルムに、直接箔押し(金属箔押し)する方法や、真空蒸着装置においてマスク若しくはテンプレートを使用して金属蒸着を行って選択的に金属化をする方法、あるいは金属化と腐食とにより非金属化する方法(パスター加工、或いはデメタライジング加工と呼ばれるが、この方法ついては後述する)により製造することが知られている(特許文献7参照)。
【0009】
上記の「デメタライジング加工」によりマイクロ文字を形成したスレッドは、外国紙幣に多く使用されている。例えば、現在の米国のドル紙幣やヨーロッパのユーロ紙幣などでは、スレッドが紙層間に埋没する構成の用紙が、またユーロ紙幣に移行する前のドイツの100マルク紙幣などでは、スレッドが窓部に間欠的に露出する構成の用紙が採用されている。
【0010】
これらスレッドに形成されたマイクロ文字は、「正文字」(正向き文字)と「上下反転の逆文字」(逆向き文字)とが交互に位置するようになっている。このことは、用紙を抄造するときにスレッドが反転しても良いような設計になっていることを意味している。別の言い方をすれば、スレッドには表裏の区別をしていないことを意味している。
【0011】
また、マイクロ文字は文字を形成する部分が金属蒸着層の場合(前記米国ドル紙幣等)と、マイクロ文字を形成する部分が抜き文字になっている場合(前記ドイツ100マルク紙幣等)がある。別の言い方をすると、マイクロ文字には「ポジ型」或いは「ネガ型」があることとなる。
【0012】
一方、スレッドの表裏を区別して用紙に抄き込んだ偽造防止用紙の提案は、特許文献8でなされている。この提案は、用紙の流れ方向にスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙において、前記スレッドは、ベースとなるフィルムと、該フィルムの表面に形成された金属蒸着層からなる正文字(正向き文字)のみのマイクロ文字と、該金属蒸着層上に形成された透明インクによる印刷層と、前記フィルムの裏面に形成された感熱接着剤層とからなり、前記印刷層を形成するインクには、紫外線の照射で発色する染料や顔料が添加されており、用紙の表側から見た場合に、正文字のマイクロ文字が見えるように、前記スレッドを用紙に抄き込んでいることを要旨とする偽造防止用紙である。スレッドをこのような構成にすることで、スレッドに紫外線を照射したときに、スレッドの印刷層が発色して見えるか否かを判定することにより、スレッドの表裏面の識別が簡単にできるという効果が得られる。この特許において金属蒸着層からなるマイクロ文字は、所謂、「デメタライジング加工」で得られることが述べられている。
【0013】
上記特許文献8に提案されたスレッドは、用紙に抄き込まれた際に、用紙の表面(オモテ面)から観察した時にスレッドの表面(オモテ面)が観察されるだけで、用紙の裏面から観察した時にはスレッドに形成されたマイクロ文字は必然的に「逆文字」として観察されることとなる。このような構成のスレッドは、商品券や株券のような場合は、特に商品価値を低下するようなことは無いが、用紙の表裏を同じように使用する、例えばパスポートの本文用紙等の場合は、スレッドに形成されたマイクロ文字が、用紙の表面(オモテ面)と裏面のそれぞれから観察した時にいずれも「正文字」に観察された方が好ましいことは言うまでもない。
【0014】
これらの課題を解決したスレッドの提案を、本出願人は、特願2005−202621号として出願した。この出願の発明の要旨とするところは、「短冊形を成し且つ光透過性を持つ基材の片側又は両側の面に、少なくとも、文字または模様の片方または両方によるパターン状に形成された1以上の金属薄膜層、及び、該金属薄膜層のそれぞれの上にそれ
ぞれの金属薄膜層と同様のパターン状に形成され且つ着色された着色樹脂層を備え、前記金属薄膜層が有る領域と、該金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ該基材の該金属薄膜層および着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の着色樹脂層を視認できる」ことを特徴とするスレッドである。
【0015】
上記の特願2005−202621号で提案したスレッドのうち、光透過性を持つスレッド基材の片側の面に正文字のマイクロ文字などによるパターン状の金属薄膜層と着色樹脂層とを積層したスレッドの場合には、反射光で、そのスレッド入り用紙の片面(例えばオモテ面)から視認できた該スレッドの着色樹脂層によるマイクロ文字の着色された像が、反対面(例えば裏面)からは、反射光ではコントラストによる像(陰影像)のみであって着色された像としては視認できない(又は視認し難い)。これは、当然何か見えるはずであろうと云う予想を覆すことから、偽造防止対策の工夫点として、また、趣向心や遊び心としての楽しみを与えられる有効な工夫点として期待できる。
【0016】
また、上記の特願2005−202621号で提案したスレッドのうち、光透過性を持つスレッド基材の両側の面に正文字のマイクロ文字などによるパターン状の金属薄膜層と着色樹脂層とを積層したスレッドを紙に抄き込むと、用紙の表面(オモテ面)と裏面のそれぞれから観察した時に、いずれも「正文字」のマイクロ文字が観察できるという今までに無い効果が得られるが、スレッド入り紙を光に透かして観察すると、スレッドを形成する基材が透明であるため、表面及び裏面に形成されたマイクロ文字がいずれも視認されることとなる。即ち、正文字(正向き文字)のマイクロ文字と逆文字(逆向き文字)のマイクロ文字の両方が視認されることとなり、文字が表す意味が判別し難くなるという問題があった。そのため、文字が表す意味が判別可能になるためには、スレッド入り紙を光に透かして観察したときに、正文字(正向き文字)のみのマイクロ文字が観察された方が好ましい場合が多い。
【0017】
以下に、本発明に関連する公知の特許文献を記載する。
【特許文献1】特開昭51−130309号公報
【特許文献2】特開平2−169790号公報
【特許文献3】特公平5−40080号公報
【特許文献4】特公平5−85680号公報
【特許文献5】米国特許第4462866号公報
【特許文献6】特開平6−272200号公報
【特許文献7】特公平6−062030号公報(5欄46行〜6欄3行、7欄26行〜8欄12行)
【特許文献8】特許第3279212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものてあり、その課題とするところは、用紙を光に透かして観察した際に、スレッドを形成する透明な基材を透かして表面及び裏面の両面に形成された正文字(正向き文字)のマイクロ文字がいずれも視認され
るようにすることにあり、即ち従来のように正文字(正向き文字)のマイクロ文字と逆文字(逆向き文字)のマイクロ文字の両方が視認されることにより文字が表す意味が判別し難くならないように、用紙を光に透かして観察したときに、その用紙の表面と裏面の両面から正文字のみのマイクロ文字が観察される効果が得られるスレッドを得ること、及びこのスレッドを使用した偽造防止用紙を得ること、及びこの偽造防止用紙を使用した偽造防止印刷物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を達成する為になされた本発明の請求項1に係る発明は、短冊形状を成し且つ光不透過性を持つスレッド用基材の両面に、少なくとも文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層が形成され、前記スレッド用基材の両面から前記着色印刷層が目視できるようにしたことを特徴とするスレッドである。
【0020】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係るスレッドにおいて、前記2以上の着色印刷層の着色が同一色であることを特徴とするスレッドである。
【0021】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1に係るスレッドにおいて、前記2以上の着色印刷層の着色が異なった色であることを特徴とするスレッドである。
【0022】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至3のいずれか1項に係るスレッドが用紙の流れ方向に連続的に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0023】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る偽造防止用紙において、前記スレッドが、紙層間に抄き込まれていて用紙表面には露出しておらず、該用紙表面を反射光で観察した時に、着色された正文字や正模様のパターンが観察されることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0024】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項4または5のいずれか1項に係る偽造防止用紙に所定の印刷部を設けたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスレッドは、光不透過性を持つスレッド用基材(例えば白色基材)の両面に、文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層が形成されているものである。また、本発明の偽造防止用紙は、本発明の前記スレッドを紙層間に抄き込むことにより形成されていて、その用紙表面には露出しておらず、該用紙の表面及び裏面を反射光で観察した時には、文字若しくは模様のいずれか一方または両方によりパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層による着色された正文字や正模様のパターンが観察されるものである。
【0026】
このように本発明のスレッドは、光不透過性のスレッド基材の両面に、着色印刷層(例えば正文字(正向き文字)のマイクロ文字など)が形成されているため、本発明のスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙は、その用紙の表面(オモテ面)から観察した時には、スレッドの表面(オモテ面)に形成された着色印刷層(正文字(正向き文字)のマイクロ文字など)が観察され、その用紙の裏面から観察した時には、前記スレッドの裏面に形成された着色印刷層(例えば正文字(正向き文字)のマイクロ文字など)が観察されるものである。
【0027】
本発明の偽造防止用紙は、本発明の上記スレッドが、用紙の流れ方向に連続的に抄き込まれたスレッド入り用紙であるため、1枚の偽造防止用紙の表面(オモテ面)と裏面のそ
れぞれから観察した時に、それぞれの面に形成された着色印刷層(例えばマイクロ文字)が透けて見えることがなく、本発明の偽造防止用紙のスレッドに形成された着色印刷層(例えばマイクロ文字)を、いずれも着色された正文字(正向き文字)として観察することができる。また本発明の偽造防止用紙を透過光で観察しても、本出願人が先に特願2005−202621号として出願したスレッドを抄き込んで得られたスレッド入り用紙のように、その用紙に抄き込まれたスレッドの表裏両面のマイクロ文字が重なって見えると言う問題点が解消される。
【0028】
また本発明の偽造防止用紙は、パスポートや通帳の本文用紙等に採用すれば、商品価値を向上させることになると同時に、高い偽造防止効果も得ることができる。例えば、本発明のスレッド本体にパスポート冊子のページ数に一致する数字を形成しておけば、この数字がページ数を表すと言うような使い方ができることとなる。
【0029】
また本発明のスレッドは、上記の偽造防止用紙としての用途以外にも用いることができる。例えば、和服用の生地の製造に使用される金銀糸と同様な製造方法、即ち撚り糸の外周方向にスパイラル状にこのスレッドを巻き付けて縫い糸を製造すれば、偽造防止を目的とした縫い糸とすることができる。この縫い糸を、ブランド物と呼ばれる高級なバッグ等の人目に付かない部分に縫い付けておくことにより、偽物と本物の区別を容易に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態を以下図面を用いて説明する。図1は、本発明のスレッドを作成するためのスレッド原反(10)(1単位のスレッドが複数単位に多面付けされたシート)の一例を説明する部分平面図(正面図)であり、光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色の基材(2))の表面には、着色された着色印刷層(31)(例えば、★マーク、「正文字」(正向き文字)のA、B、C、Dなど)が形成され、該基材(2)の裏面にも着色された着色印刷層が形成されている。図2は、本発明におけるスレッド原反(10)の部分拡大断面図であり、基材(2)の表面には前記着色印刷層(31)が、裏面には着色された着色印刷層(32)が形成されている。それぞれ着色された着色印刷層(31、32)は例えばマイクロ文字やマイクロパターンなどであり、複写機(コピー機)などにて等倍複写や拡大複写が不可能な微細(微小)なキャラクタやパターンとして印刷されている。
【0031】
この際、前記着色印刷層(31、32)には、紫外蛍光発色剤を併用することも可能である。さらに紫外線で発色し、且つ通常の光で着色して見える染料や顔料も使用することができる。
【0032】
前記着色印刷層(31、32)はオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等で設けることができる。通常、この印刷層の厚味は、0.5μm〜5μmである。また着色印刷層(31、32)として形成する各マイクロ文字、マイクロパータンの大きさは2〜10ポイント程度が適当であるが、コピー機にて等倍複写や拡大複写が不可能な微細(微小)なキャラクタやパターンの大きさとしては、通常2ポイント相当あるいはそれ以下のものを使用することが好ましい。
【0033】
本発明のスレッド(1)が多面付け印刷にて形成されたスレッド原反(10)(前記着色印刷層(31、32)の印刷形成された基材(2))には、必要に応じて、その片面若しくは両面に接着剤を塗工し、次いで、スレッド原反(10)をマイクロスリッターやマイクロカッターを使用して、微細な幅のテープ状体(又は微細な小片状体)にスリットあるいはカッティングすることにより、微細幅テープ状体若しくは微細小片状体の複数単位の本発明のスレッド(1)が完成する。なお、本発明のスレッドがマイクロスリッターを
用いてスリット形成された微細幅テープ状体の場合には、それをボビンなど巻取軸にウエブ状に巻き取り、ロール状スレッドとしての本発明のスレッド(1)が完成する。
【0034】
図3〜図8は、本発明のスレッド(1)の種々の形態の例を示した平面図(正面図)であり、スレッド(1)に実線(ベタ)で示す★マーク、「正文字」(正向き文字)のA、B、C、Dは、スレッド(1)の基材(2)表面に形成された着色印刷層(31)の部分を表し、ハッチング(斜線)で示す★マーク、「正文字」(正向き文字)のA、B、C、Dは、スレッド(1)の基材(2)裏面に形成された着色印刷層(32)の部分を表すものである。
【0035】
図3に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)がスレッド(1)の用紙への抄き込み流れ方向(矢印方向、抄紙方向)に対して2列平行に配列されている。スレッド裏面の着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の用紙への抄き込み流れ方向に対して2列平行に配列されている。なお図3において、裏面の着色印刷層(32)は、光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色基材)に妨げられて、スレッド(1)の表面側からは視認することはできない。
【0036】
図4に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)がスレッドの用紙への抄き込み流れ方向(矢印方向、抄紙方向)に対して、所定の角度θ(例えばθ1 )を付けて配列されている。スレッド裏面の着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の用紙への抄き込み流れ方向(矢印方向、抄紙方向)に対して、所定の角度θ(例えばθ2 )を付けて配列されている。なお、角度θ1 とθ2 との関係は、本発明においては特に限定されるものではないが、例えばθ2 =θ1 、あるいはθ2 ≠θ1 であってもよい。
【0037】
図5に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)が、そのスレッド(1)の幅方向(例えば矢印方向に対して直交方向)に上下が切断されない形態で、少なくとも1列入るように配列されている。スレッド裏面に形成された着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の幅方向(例えば矢印方向に対して直交方向)に上下が切断されない形態で、少なくとも1列入るように配列されている。
【0038】
前述の図3〜図5に図示したスレッド(1)の場合は、スレッド表面の着色印刷層(31)、裏面の(32)の両方又は片方が「ポジ型」で形成表示され配列されている場合であるが、本発明においては「ネガ型」(白抜き)で形成表示され配列されていてもよい。例えば、図6に図示したスレッド(1)においては、着色印刷層(31)の一列が「ネガ型」で配列されている場合を示す。
【0039】
図7に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された着色印刷層(31)がスレッド(1)の中央に一列に位置するように配列され、裏面に形成された着色印刷層(32)も同様にスレッド(1)の中央に一列に位置するように配列されて、互いにオーバーラップして中央に位置するように配列されている。
【0040】
図8に図示したスレッド(1)においては、スレッド表面に形成された2列の着色印刷層(31)と、スレッド裏面に形成された2列の着色印刷層(32)とが、互いに平行にスレッド(1)の幅方向に上下が切断されない形態で配列されている。
【0041】
本発明においては、上記にて例示した形態のスレッドだけでなく、この他の形態のスレッドも、本発明の要旨を変更しないものであれば、本発明の範疇に入ることは言うまでもない。また本発明においては、スレッド表裏を同一のデザインにすること、スレッド表裏を異なったデザインにすること、スレット表裏を同一の色にすること、スレッド表裏を異なった色にすることなど、いずれであっても構わない。またマイクロ文字も、図6に示すように「ポジ型」若しくは「ネガ型」のいずれであっても構わない。
【0042】
図9は、本発明の偽造防止用紙(20)の一例を示す平面図であり、図10は、図9のA−A線における断面説明図である。図示した偽造防止用紙(20)は、紙層(20a)と紙層(20b)の2層から構成されてなり、これらの紙層(20a、20b)間にスレッド(1)が挿入されている。
【0043】
本発明におけるスレッド入り偽造防止用紙には大きく分けて2種類あり、一つは、図11(a)の部分拡大断面図に示すようなスレッド(1)が用紙の内部に抄き込まれ、用紙表面には露出しないスレッド入り偽造防止用紙(20)であり、もう一つは、図11(b)の部分拡大断面図に示すような窓空き部wを備え、スレッド(1)の一部が用紙表面に間欠的に露出した窓空きスレッド入り偽造防止用紙(20)である。
【0044】
図11(a)に示す本発明のスレッド入り偽造防止用紙は、紙層(20a、20b)間にスレッド(1)が抄き込まれた窓空き部wのないものであり、その見え方は、スレッド(1)を偽造防止用紙(20)の表面(F)(オモテ面)からみると、スレッド(1)表面の着色印刷層(31)が、紙層(20a)を透かして、例えば「赤色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。同様に偽造防止用紙(20)の裏面(R)からは、裏側の着色印刷層(32)が、紙層(20b)を透かして、例えば「青色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。
【0045】
図11(b)に示す窓空き部wを備えた本発明のスレッド入り偽造防止用紙は、紙層(20a、20b)間にスレッド(1)が抄き込まれた窓空き部wのあるものであり、その見え方は、スレッド(1)を偽造防止用紙(20)の表面(F)(オモテ面)からみると、スレッド(1)表面の着色印刷層(31)が、窓空き部w領域内に露出しており、該窓空き部w領域内にて直接、例えば「赤色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。同様に偽造防止用紙(20)の裏面(R)からは、裏側の着色印刷層(32)が、例えば「青色」のマイクロ文字のパターンとして観察できるように製造されている。
【0046】
前に述べたように、本発明の偽造防止用紙(20)は、窓空き部wが有るもの無いものに関わらず、その表面(F)から透過して観察しても、裏面(R)側に形成したスレッド(1)裏面のマイクロ文字は全く視認できない。透過光は光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色の基材(2))によって遮られてしまうからである。
【0047】
以下、本発明をより詳しく説明する。光不透過性を持つ基材(2)(例えば白色の基材)としては、例えば、セロファン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン等の半合成、若しくは合成樹脂フィルムを、単層あるいは複合体として使用できる。さらに基材(2)は、抄紙機の乾燥ゾーンにおいて融解若しくは軟化しない材質であって、通常は90〜110℃で粘着性を帯びない性質の材質を選択するのが好ましい。
【0048】
基材(2)は光不透過性(例えば白色の光不透過性)とするために、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等の白色の顔料や、必要に応じて着色剤(染料・顔料)が練り込まれたり、或いはこれらの顔料と接着剤よりなる塗工液を塗工したり、あるいは基材(2)の両面(又は片面)をサンドブラスト加工されたり、あるいは基材(2)を化学的発泡法、物理的発泡法にて発泡加工されている。
【0049】
基材(2)の厚みは、薄すぎても各種の加工が困難となり、また厚すぎてもスレッド(1)を紙層間に抄き込んだ場合に部分的に紙の厚味が増大し、種々の問題点を引き起こすので、基材(2)の厚みは5〜25μmとすることが好ましい。
【0050】
本発明に使用する光不透過性を持つ基材(2)において「光不透過性」とは、完全に光を透過しないことを意味するのではなく、本発明の目的を達成できれば僅かに光を透過しても良いことを意味する。即ち、スレッド用基材(2)の表裏に形成された着色印刷層(31、32)が、その基材(2)を基材(2)の表面又は裏面から透かして観察した際に、反対面の着色印刷層が透けて見えない程度であれば、僅かに光を透過しても良いことを意味する。また基材(2)の「光不透過性」における「白色光不透過性」又は「着色光不透過性」とは、スレッド(1)として紙に抄き込まれた際に、スレッド(1)が紙の表面から観察されない程度に、その基材(2)が白色又は僅かに着色されていてもよいことを意味する。
【0051】
基材(2)に着色印刷層(31、32)を設けるには、水不溶性の紅・藍・黄・墨等の染料や顔料の単独或いは混合物の着色剤を、通常のオフセット印刷やスクリーン印刷や凸版印刷等の印刷インキの製造に使用されるビヒクル、あるいは通常のグラビア印刷インキの製造に使用される樹脂バインダー、あるいは接着性樹脂(接着剤)等の樹脂液に混合して印刷インキを製造して、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等により、マイクロ文字や、微細画像、微細パターンを印刷する方法を採用できる。
【0052】
基材(2)に以上の処理を施して着色印刷層(31、32)を設けた後、あるいは着色印刷層(31、32)を設ける前に、必要に応じて、その基材(2)の片面或いは両面に接着剤を塗工して接着剤層を設ける。使用する接着剤としては、偽造防止用紙(20)を抄紙するための抄紙機のドライヤーにより軟化若しくは溶融し、偽造防止用紙(20)の紙層(20a、20b)と強固に接着する性能を有した周知の接着剤を使用することができる。
【0053】
接着剤の具体例としては、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系等の公知の接着剤を、水系若しくは溶剤系の塗料とし、ロールコーターやグラビアコーター等の周知の塗工機を用いてスレッド用基材(2)の表面に塗工することにより形成できる。その塗工量は通常で0.1〜10g/m2 (乾燥質量換算)とする。
【0054】
偽造防止用紙(20)の紙層間にスレッド(1)が埋没しているタイプのスレッド抄き込み紙においては、接着剤層形成用の接着剤塗工量は少なくて良いが、窓空きスレッド入り紙の場合は塗工量を増加させる。接着剤には必要に応じて、ブロッキング防止剤、潤滑剤、着色剤、蛍光発色剤等を添加してもよい。
【0055】
前に述べたようにスレッド(1)の表裏を判定する必要がある場合には、スレッド用基材(2)として紫外線を吸収する基材を使用し、接着剤には蛍光発色剤を添加して、基材(2)の片面だけにこの蛍光発色剤添加の接着剤を塗工したスレッド(1)を製造する。これによりスレッド(1)の表面若しくは裏面から紫外線を照射することにより、該スレッド(1)の蛍光発色剤を添加した接着剤層が紫外線により発光する。その発光の有無によりスレッド(1)の表裏を容易に判定できるようになる。
【0056】
本発明のスレッド(1)は、次いで、マイクロスリッター装置などを使用して常法に従い、所定の幅でスリットすることにより、微細帯状体(テープ状体)の本発明のスレッド
(1)が完成する。微細帯状体(テープ状体)のスレッド(1)の幅は特に限定されるものではないが、通常は0.5mm幅〜10mm幅とすることが適当である。スレッド(1)に形成されている着色印刷層(31、32)によるマイクロ文字は、1列以上の正文字(正向き文字)や正模様(正向き模様)のパターンが視認できるように形成されている必要がある。
【0057】
次に、本発明の偽造防止用紙の製造方法の一例を説明する。
【0058】
まず、抄紙のための紙料の調製としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の製紙用パルプを主体とし、ビーターやディスクリファイナー等を使用して叩解処理し、これに白土、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の各種填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、定着剤等を適宜併用し、本発明の偽造防止用紙(20)を抄紙するための紙料(例えば用紙(20)の紙層(20a)、(20b)となる紙料)を調整する。
【0059】
次に、偽造防止用紙の製造としては、従来公知の方法を使用して製造できる。前にも述べたようにスレッド入り紙には大きく分けて2種類ある。一つはスレッド(1)が偽造防止用紙(20)内部に抄き込まれ、用紙(20)の表面に露出しない種類のものであり、もう一つはスレッド(1)の一部が用紙(20)の表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と呼ばれるものである。
【0060】
前者の用紙(20)の表面にスレッド(1)が露出しない偽造防止用紙を製造する方法としては、前に述べたように、長網抄紙機のスライス部分における紙料(紙層20a、20b)の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながら、その流水にて微細なスレッド(1)を抄紙網に繰り出す。これにより抄紙網に形成される紙匹中にスレッド(1)を抄き込む方法(特許文献1)がある。
【0061】
また、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料にスレッドを挿入するためのスレッド挿入装置を設置して、空気流でスレッド(1)と紙料(紙層(20a)、(20b)を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)がある。
【0062】
また、2槽以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッド(1)を紙層(紙層(20a)、(20b))間に送り出し、紙層(紙層(20a)、(20b))間にスレッド(1)を抄き込む方法(特許文献3)等が採用できる。本発明においては、用紙(20)の表面にスレッド(1)が露出しない方法であればこれら以外の製造方法を採用しても良いことは言うまでもない。
【0063】
後者の「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、前に述べたように、下網(ワイヤー)上に流し入れた紙料(紙層(20a)、(20b))懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端にスレッド(1)を送り込む溝を有するベルト機構を埋没して製造する方法(特許文献4)がある。
【0064】
また、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッド(1)を凹凸状の上網表面の下向き凸部に接触させながら、下網に流した紙料(紙層(20a)、(20b)懸濁液に挿入して、窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(特許文献5)がある。
【0065】
また、長網抄紙機の下網(ワイヤー)上の回転ドラム内に圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙料(紙層(20a)、(20b))懸濁液に挿入したスレッド(1)上の前記懸濁
液(スラリー)を圧縮空気で間欠的に吹き飛ばしてスレッド(1)を露出させる方法(特許文献6)等が採用できる。本発明においては、「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法であれば、これら以外の方法を採用しても良いことは言うまでもない。
【0066】
また、抄紙途上で紙面にポリアクリルアマイド樹脂、澱粉、ポリビニルアルコール等を塗工することも可能である。さらに必要に応じて、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。
【0067】
例えば、図11に示すように、スレッド(1)の表面(F)には赤色に見えるマイクロ文字による着色印刷層(31)が形成され、裏面(R)には青色に見えるマイクロ文字による着色印刷層(32)が形成されたスレッド(1)が紙層(20a)、(20b)間に抄き込まれた偽造防止用紙(20)においては、下記に述べるような工夫がなされる。
【0068】
即ち、偽造防止用紙(20)の厚味や用紙の製造処方を工夫するものである。用紙(20)の表面(F)(オモテ面)から入射した光は、赤色に着色された着色印刷層(31)で反射するので、用紙(20)の表面(F)で赤色のマイクロ文字が視認できるようにする。同様の理由で、用紙(20)の裏面(R)では青色のマイクロ文字が視認できるようにする。用紙(20)の表面(F)から入射した光は、スレッド(1)の光不透過性の基材(2)内部に入射することはないので、用紙(20)を翳して透過光で観察しても、観察面と反対の面のスレッド表面に形成されたマイクロ文字が視認されることはない。用紙(20)は、通常坪量50〜150g/m2 で製造される。
【0069】
図12は、窓空きスレッド入り紙である本発明の偽造防止用紙(20)の一例を示す平面図であり、帯状体(テープ状体)(又は小片状体など)の微細なスレッド(1)が、比較的薄い紙層(20a、20b)部分である窓領域(w)内の表面に露出して抄き込まれている偽造防止用紙(20)である。なお、窓領域(w)の領域サイズとスレッド(1)のサイズとは、図示するように互いに異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0070】
図12に示したような窓空きスレッド入り紙である本発明の偽造防止用紙(20)として、例えば、図7で示したような両面に着色印刷層(31、32)があるスレッド(1)を抄き込んだ場合は、偽造防止用紙(20)の表面(図12の図表面側)からは、窓部分(w)に露出するスレッド(1)の表面に形成された着色印刷層(31)を直接視認することができ、その偽造防止用紙(20)の裏面からは、その用紙(20)の紙層(20a)、(20b)を通してスレッド(1)の裏面に形成された着色印刷層(32)を視認することができる。
【0071】
また、本発明の偽造防止用紙(20)は、複数枚の用紙(20)を接着剤を使用して貼合して貼り合わせ紙を製造する際に、本発明のスレッド(1)を連続的に繰り出して、複数枚の前記用紙間に埋没させることによっても製造することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明のスレッド(1)、及び偽造防止用紙(20)の具体的実施例について説明する。質量部は乾燥質量部を、厚味は乾燥厚味を表す。
【0073】
<実施例1>
[スレッド(1)の製造]
基材(2)として、厚み16μmの二酸化チタンを練り込んだ不透明ポリエステルフィルムの巻き取りを使用し、その基材(2)の片面(表面)には、グラビア印刷機と、青色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(31)(着色樹脂印刷層)を形成した。その基材(2)の反対面(裏面)には、グラビア印刷機と、
赤色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(32)(着色樹脂印刷層)を形成した。
【0074】
上記マイクロ文字は、「★ABCD 」の文字からなり、その文字の大きさは2.5ポイント(ポイント数はアメリカ式ポイント数を意味し、1ポイントは約0.35mmである)、文字と文字の間隔は0.4mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。文字列は、基材(2)の偽造防止用紙(20)への抄き込み時における抄紙流れ方向に対して傾斜角度θ=18度に傾斜して印刷し、図4に示す着色印刷層31、32の表裏配置による本発明のスレッド(1)を作成した。
【0075】
さらに、このスレッド(1)の片面(着色印刷層31面又は着色印刷層32面)に、エチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を1.5μmの厚みでグラビアコーターを使用して塗工して、偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み用の接着剤層を形成した。
【0076】
次いで、このスレッド(1)を、マイクロスリッターを使用して偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み時における抄紙流れ方向に平行に幅2mmにスリットして、図4に示す帯状体(テープ状体)のスレッド(1)を製造した。スリットした幅2mmのスレッド(1)はボビンに巻き取った。
【0077】
<実施例2>
[スレッド(1)の製造]
基材(2)として、厚み12μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製造)の巻き取りを使用し、その基材(2)の片面に、二酸化チタン30質量部、ポリエステル樹脂70質量部よりなる塗料を7μmの厚みで全面に塗工して光不透過性層を形成して、光不透過性を持つ白色の基材(2)を製造した。
【0078】
その光不透過性の基材(2)の片面(表面)(光不透過性層面又はその反対面)には、グラビア印刷機と、青色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(31)(着色樹脂印刷層)を形成した。この基材(2)の反対面(裏面)には、グラビア印刷機と、赤色に着色したグラビア印刷インキを使用して、マイクロ文字による着色印刷層(32)(着色樹脂印刷層)を形成した。
【0079】
上記のマイクロ文字は、図5に図示したように「★ABCD 」の文字からなり、その大きさは2.5ポイント(ポイント数はアメリカ式ポイント数を意味し、1ポイントは約0.35mmである)、文字と文字の間隔は0.4mm、文字列と文字列の間隔は0.325mmとした。文字列は、図5に示したように、透過光で観察した時にスレッド(1)の表側の文字列と裏側の文字列が互いに重ならないように配列して、図5に示す着色印刷層31、32の表裏配置による本発明のスレッド(1)を作成した。
【0080】
さらに、このスレッド(1)の片面(着色印刷層31面又は着色印刷層32面)に、オキサゾール系の蛍光発色剤(接着剤に対して2.5質量%使用)を添加したエチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚みで塗工して、偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み用の接着剤層を形成した。
【0081】
次いで、このスレッド(1)を、マイクロスリッターを使用して偽造防止用紙(20)へのスレッド抄き込み時における抄紙流れ方向に平行にマイクロ文字の上や下が切られないようにマイクロスリッターを制御して幅2mmにスリットして、図5に示す帯状体(テープ状体)のスレッド(1)を製造した。スリットした幅2mmのスレッド(1)はボビンに巻き取った。
【0082】
<実施例3>
[偽造防止用紙(20)の製造](図9に示す偽造防止用紙の製造)]
・紙料の調製
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)25質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)75質量部を、フリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部、二酸化チタン5質量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン」、荒川化学工業(株)製)0.4質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製)1.0質量部、硫酸バンドを適量加え、紙料を調製した。
・偽造防止用紙の製造
図13に示すような2槽式円網抄紙機を用いて、その第1槽目11と第2槽目12で、それぞれ坪量45g/m2 の紙匹を抄造し、両者を抄き合わせる際に、紙層間に上記実施例1で製造したスレッド(1)を、接着剤を塗工していないスレッド(1)面が上面に向くようにして抄き込んだ。その後、常法に従い乾燥して、偽造防止用紙(20)を製造した。得られた偽造防止用紙(20)は、反射光で観察すると、該用紙(20)の片方の面にはスレッド(1)による青色のマイクロ文字のみが、その反対の面では赤色のマイクロ文字のみが見えた。
【0083】
<実施例4>
[窓空き部wを備える偽造防止用紙(20)の製造]
・抄紙網の製造
図13に示すような2槽式円網抄紙機の第1槽11と第2槽12のうち、2槽式円網抄紙機の窓空き部wのない紙層(例えば図11(b)の紙層(20b)(最外層の紙層20aに接する紙層)を形成するための第1槽11内にて浸漬して回転する第1円網シリンダー11aには、何等細工を施さない第1円網11bを装着し、また、円網抄紙機の最外層の紙層(例えば図11(b)の紙層(20a))を形成する第2槽12内にて浸漬して回転する第2円網シリンダー12aの第2円網12b(幅1300mm)の外面には、短辺10mm、長辺25mm、厚み0.3mmの樹脂板からなる窓空き部w領域形成用の多数の窓空き部形成型13を紙層の流れ方向(上網12bの回転方向)に、10mm間隔で連続的に1列に接着剤を使用して貼り付け、この列を、この第2上網12bの流れ幅方向に等間隔に6列貼り付けて取り付けた。
・用紙の抄造
次に上記実施例1と同じ紙料16を用いて、第1槽11の第1円網11bで形成される第1紙層(例えば図11(b)の紙層(20b))の上に、第2槽12の第2円網12bで形成される第2紙層(最外層)(例えば図11(b)の紙層(20a))が重なるようにして、さらに該第2円網12bの窓空き部形成用型13にて第2層20a側に窓空き部wを形成しながら、クーチロール15(又はサクションロール)にてガイドされるフェルトシート14(例えばエンドレスベルト状フェルトシート)面に抄紙速度50m/分(円網11、12の回転速度、フェルトシート14の送行速度)にて湿紙として移行させ、2層抄合わせ紙を製造した。この際、前記第1紙層(20b)(乾燥質量に換算して50g/m2 )と第2紙層(20a)(同50g/m2 )の間に、上記実施例2で製造したスレッド(1)(蛍光発色剤を添加した感熱接着剤層をスレッド基材2裏面に塗工したスレッド)を、スレッド挿入位置Vにて押し型13の中央に相当する位置に挿入して、第2紙層(20a)の窓空き部w領域内に第1紙層(20b)面上のスレッド(1)が露出する2層抄合わせ紙を形成した。
・スレッドの表裏面の検知
スレッド挿入位置Vにて挿入するスレッド(1)の表裏関係については、クーチロール15の位置に紫外線照射用のブラックライト(図示せず)を設置して次の通り実施した。フェルトシート面にて送行する2層抄合わせ紙である湿紙に、クーチロール15の位置にてブラックライト(紫外線)を照射した。湿紙の窓空き部wに露出するスレッドが紫外線の照射で発色して見える場合は、スレッド(1)の裏面の感熱接着剤層が露出しているこ
とを意味するので、スレッド挿入位置Vで挿入されているスレッド(1)を切断し、スレッド(1)の表裏面を反転させたのち、再び挿入する動作を行った。この動作を紫外線の照射でスレッドが発色しなくなるまで行うことにより、正常なスレッド挿入状態とすることができた。
・2層抄合わせ紙である湿紙の脱水
次いで、フェルトシート14面に移行して送行する2層抄合わせ紙である湿紙を、常法に従い、ロールプレスなどにて圧搾、脱水後、シリンダードライヤーで乾燥して、2層抄合わせ紙からなるスレッド入り窓空き部wを備えた本発明の偽造防止用紙(20)を製造した。得られた偽造防止用紙(20)は用紙の流れ方向における窓空き部wの長さが10mm、非窓空き部の長さが10mmであり、窓空き部w領域内ではスレッド(1)が露出し、非窓空き部ではスレッド(1)が紙層(例えば紙層(20a)、(20b))の間に埋設された状態となっていた。
【0084】
<実施例5>
[偽造防止印刷物の製造]
上記実施例3の偽造防止用紙(20)を使用して、該用紙(20)面に、図14に示す商品券の図柄Pを印刷し、偽造防止印刷物(30)を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のような特性を生かして得られる本発明のスレッド(1)は、その製造に極めて高度の技術が必要なため、偽造防止を目的とした縫い糸の用途等に好適に用いることができる。また本発明で得られるスレッドを抄き込んだ本発明の偽造防止用紙(20)及び偽造防止印刷物(30)は、紙幣や、商品券、小切手、株券、債券、カード、各種チケット、機密文書、パスポート、身分証明書等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明のスレッドを製造するためのスレッド原反、及びそれを製造するために白色の基材の表面に着色印刷層を設けた状態を模式的に示した平面図。
【図2】図1の部分拡大側断面図であり、基材の表裏面に着色印刷層を設けた状態を模式的に示した側断面図。
【図3】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図4】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図5】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図6】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図7】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図8】本発明のスレッドの一例を示す平面図。
【図9】本発明の偽造防止用紙の一例を模式的に示す平面図。
【図10】図9のA−A側断面図。
【図11】(a)は本発明のスレッドが紙層間に抄き込まれた本発明の偽造防止用紙の一例を説明する部分拡大側断面図、(b)は本発明のスレッドが窓空き部を設けて紙層間に抄き込まれた本発明の偽造防止用紙の一例を説明する部分拡大側断面図。
【図12】本発明のスレッドが窓空き部を設けて紙層間に抄き込まれた本発明の偽造防止用紙の一例を説明する平面図。
【図13】本発明の窓空き部を有する偽造防止用紙の製造に好ましく使用できる2槽式円網抄紙機の一例を示す説明図。
【図14】本発明の偽造防止印刷物の一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0087】
1…スレッド
2…スレッド用基材
10…スレッド原反
11…第1円網槽
11a…第1円網シリンダー
11b…第1円網
12…第2円網層
12a…第1円網シリンダー
12b…第2円網
13…押し型
14…フェルトシート
15…クーチロール
20…偽造防止用紙
20a…紙層
20b…紙層
30…偽造防止印刷物
31…着色印刷層
32…着色印刷層
w…窓空き部領域
P…印刷部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短冊形状を成し且つ光不透過性を持つスレッド用基材の両面に、少なくとも文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層が形成され、前記スレッド用基材の両面から前記着色印刷層が目視できるようにしたことを特徴とするスレッド。
【請求項2】
前記2以上の着色印刷層の着色が同一色であることを特徴とする請求項1記載のスレッド。
【請求項3】
前記2以上の着色印刷層の着色が異なった色であることを特徴とする請求項1記載のスレッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のスレッドが用紙の流れ方向に連続的に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項5】
請求項4記載の偽造防止用紙において、前記スレッドが、紙層間に抄き込まれていて用紙表面には露出しておらず、該用紙表面を反射光で観察した時に、着色された正文字や正模様のパターンが観察されることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか1項記載の偽造防止用紙に所定の印刷部を設けたことを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項1】
短冊形状を成し且つ光不透過性を持つスレッド用基材の両面に、少なくとも文字若しくは模様のいずれか一方または両方によるパターン状に形成された1又は2以上の着色印刷層が形成され、前記スレッド用基材の両面から前記着色印刷層が目視できるようにしたことを特徴とするスレッド。
【請求項2】
前記2以上の着色印刷層の着色が同一色であることを特徴とする請求項1記載のスレッド。
【請求項3】
前記2以上の着色印刷層の着色が異なった色であることを特徴とする請求項1記載のスレッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のスレッドが用紙の流れ方向に連続的に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項5】
請求項4記載の偽造防止用紙において、前記スレッドが、紙層間に抄き込まれていて用紙表面には露出しておらず、該用紙表面を反射光で観察した時に、着色された正文字や正模様のパターンが観察されることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか1項記載の偽造防止用紙に所定の印刷部を設けたことを特徴とする偽造防止印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−111203(P2008−111203A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293772(P2006−293772)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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