説明

スローアウェイチップ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスローアウェイチップのチップブレーカに関し、特に難削材の仕上面粗度の向上に関する。
【0002】
【従来技術】旋削における切屑は、切刃に絡み付き易く、切屑により仕上面に損傷が起こり、仕上面粗度を劣化させてしまう。スローアウェイチップではチップブレーカを設け、切屑をカールおよび切損させ、切刃への絡み付を防止している。しかし、防錆重視傾向により使用量の増大したステンレス鋼は靭性が強く、したがって切屑もカールおよび切損し難い。その防止策として特開平2−109612号公報では、ノーズ部のチップブレーカの曲率を2つ設けたり、ノーズ部の中央を高くしたり、辺切刃稜のチップブレーカ形状に変化を付け切屑のカールの強制を強化している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】スローアウェイチップは、種々の改善が計られたものの切屑の排出方向が定まらず切屑が切刃に絡み何き、切削における精密仕上に近い上仕上加工面(3S)へ使用できるほど仕上面粗度が向上していない。本発明は、スローアウェイチップにおいて難削材の仕上面粗度の向上を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】ノーズ部の長さ方向をX軸、幅方向をY軸、厚み方向をZ軸としたとき、ノーズ部上面のチップブレーカ面がX−Y軸平面に対して2度ないし12度のすくい角を有する多角形状のスローアウェイチップにおいて、該チップブレーカ面をX−Z軸に対して3度ないし12度傾斜させ、チップブレーカ面の両切刃稜の被切削物との接触部分の断面形状を半径0.05ミリメートル以下の鋭利な断面形状としたチップブレーカ面を有することを特徴とする。
【0005】
【実施例】本発明の実施例の要部を図1に、チップブレーカの形態の説明を図2、図3に、スローアウェイチップの詳細を図4に示す。三角形のスローアウェイチップ1のノーズ2の上面をチップブレーカ面3とし、該チップブレーカ面3は、その辺縁3a部においてスローアウェイチップ上面1aと円弧4で滑らかに段差をつけて形成されている。切刃稜5、6は、横逃げ面7、8とチップブレーカ面3のなす辺で、その断面形状は、半径0.05ミリメートル以下の鋭利な切刃となるように研削されている。
【0006】図1に示すようにノーズ部2の長さ方向をX軸、ノーズ部2の幅方向をY軸、同じく厚み方向をZ軸とし、図2、図3に示すように、今ノーズ部2の先端をX・Y・Zの三軸の中心Oとする。X−Z軸平面においてX軸と8度の角度をなす線上に点Aを仮定する。A点よりX軸に平行に伸ばした線とZ軸との交点をBとする。A点を含むX−Y軸軸平面に平行な面において、A点を中心にB点を70度の角度だけ回転し、回転後のBの位置をC点とする。線分ACを含みZ軸に平行な面において、A点を中心としてC点を4度の角度だけ回転し回転後のCの位置をD点とする。このD点と、先のO点、D点を結んで出来る三角形OADのなす複合角度を有する面をチップブレーカ面3の傾斜状態となる。ここで、線分OAは切刃5、線分ADは切刃6、線分ADはチップブレーカ面の辺縁3aに相当するものである。
【0007】断面における70度の角度の規定は、切刃測定上の通常行われる制約である。また、8度の傾斜は、通常のすくい角である。このチップブレーカ面3を持つスローアウェイチップを使用して実験したところ、次のような仕上面粗度の切削結果が得られた。
切削条件材質 ステンレス鋼(SUS304L)
加工 Φ25内面旋削回転数 16000回転毎分切込量 0.05ミリメートル送り量 0.03ミリメートル毎回転仕上げ面粗度(最大高さ:Rmax)
2マイクロメートル(2s)
(従来のスローアウェイチップ: 5マイクロメートル)
両切刃間は平滑面または曲率半径の大きな曲面で形成しても良い。
【0008】
【作 用】切削する場合は、図5に示すように、高い切刃6の側から行なう。切屑は、チップブレーカ面3が傾斜しているため、高い切刃6の側から低い切刃5の側へ一定の方向を保って確実に排出される。従って、切屑がチップに絡み付くことがない。
【0009】両切刃5、6の角部を半径0.05ミリメートル以下とすることは、被切削面への掛かりが向上し、切込量を少なくすることが出来る。仕上面粗度を向上させるためには切込量を少なくすることが不可欠であり、本発明の切刃では切込量を0.03〜0.05ミリメートルとすることが可能である。(従来のスローアウェイチップの切込量: 1ミリメートル以上)
両切刃5、6間を曲面で構成することは切屑をカールさせる作用がある。
【0010】
【効 果】チップブレーカ面3を切削方向に僅かに傾斜させるという単純な構成により、切屑が切刃に絡み付かず、仕上面粗度が向上する効果がある。両切刃5、6の角部を半径0.05ミリメートル以下とすることは、仕上面粗度を向上させるための切込量の減少に効果がある。したがって、本発明のスローアウェイチップによれば、難削材の仕上面粗度が向上する。ステンレス鋼以外の難削材としてSKD11等のダイス鋼にも効果があることはいうまでもない。
【0011】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の要部斜視図。
【図2】本発明の構成を説明するための立体図。
【図3】本発明の構成を説明するための立体図。
【図4】本発明の実施例の二面図。
【図5】本発明の使用状態を説明するための概略図。
【符号の説明】
1 スローアウェイチップ
1aスローアウェイチップ上面
2 ノーズ部
3 チップブレーカ面
3a辺縁
4 円弧
5 切刃
6 切刃
7 横すくい面
8 横すくい面
9 被切削物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ノーズ部の長さ方向をX軸、輻方向をY軸、厚み方向をZ軸としたとき、ノーズ部上面のチップブレーカ面がX−Y軸平面に対して2度ないし12度のすくい角を有する多角形状のスローアウェイチップにおいて、該チップブレーカ面をX−Z軸平面に対して3度ないし12度傾斜させ、チップブレーカ面の両切刃稜の被切削物との接触部分の断面形状を半径0.05ミリメートル以下の鋭利な断面形状としたチップブレーカ面を有することを特徴とするスローアウェイチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2739399号
【登録日】平成10年(1998)1月23日
【発行日】平成10年(1998)4月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−322283
【出願日】平成3年(1991)10月2日
【公開番号】特開平5−96402
【公開日】平成5年(1993)4月20日
【審査請求日】平成8年(1996)5月24日
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)