セグメントの位置合せ方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はシールド掘進機が掘削したトンネルの内壁を覆工するセグメントの位置合せ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来シールド掘進機が掘削したトンネルの内壁は、セグメントを内壁に沿って組み立てることにより、覆工作業を自動化する場合、これから組み立てるセグメントを既設セグメントにいかに正確に位置合せするかが重要となる。
【0003】このため従来ではこれから組み立てるセグメントから既設セグメントまでの距離をセンサ(図示せず)を使用してX軸(摺動)、Y軸(旋回)、Z軸(昇降)の各方向及びMx(ローリング)、My(ピッチング)、Mz(ヨーイング)の各方向の全てについて検出し、既設セグメントに対してこれから組み立てるセグメントの位置合せを行っていた。(第6図参照)
しかし、センサにより多軸にわたって距離を検出する場合、多くのセンサを使用するため、測定誤差が累積されるなど測定結果に不安があり完全自動化を達成することが難しく、更にはセンサが検出した位置をすべてマイクロコンピュータを使用して演算処理して、その結果によりセグメントエレクタの各アクチュエータを制御しているため、セグメントの位置合せに多くの時間を費やし作業能率を低下させるなどの欠点があった。
【0004】かかる欠点を解消すべく、例えば本発明者により開発された特開平2−54100号公報に開示されたセグメント組立マニプレータがある。このマニプレータはエレクタ本体に装備され、新設セグメントの位置合せ手段を備えており、同位置合せ手段として既設セグメントの内周面に倣って新設セグメントの内周面の位置合せをするためのガイドローラと、内周面の位置合せ後に同セグメントの1コーナ部を挟む2側面を既設セグメントの相対する側面に押し付けるための複数個のジャッキとから構成されている。
【0005】このマニプレータによれば、前記ガイドローラにより機械的に内周面の位置合せがなされた状態で、前記複数のジャッキを新設及び既設の各セグメントに形成されているボルト溝に挿入し、同ジャッキを作動させることにより2端面同士を密着させることで、上記X軸(摺動)、Y軸(旋回)、Z軸(昇降)の3軸方向及びMx(ローリング)、My(ピッチング)、Mz(ヨーイング)方向の全ての位置合せが機械的に短時間で正確になされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、前述の公報に開示されたセグメント組立マニプレータにあっても、ガイドローラを既設セグメントの内周面に押し付けるだけでは、新設セグメントと既設セグメントとの密着させるべき側面同士が平行であるという保障がなく、例えばエレクタ本体のセグメント把持部によるセグメントの把持姿勢が常に正確であるとは限らず、新設セグメントの側面が既設セグメントの対応する側面に密着するように上記ジャッキを作動しても、新設セグメントの側面が全面で密着せずに、その一部稜線部が密着するに過ぎない場合もある。
【0007】すなわち、例えばエレクタ本体に固設された前記ガイドローラを既設セグメントの内周面に押し付けただけで、上記ジャッキを作動させるときには、上記ローリング(Mx)方向、ピッチング(My)方向、ヨーイング(Mz)方向の調整が不要になるという保障はなく、セグメントの組立の完全な自動化を図るためには、エレクタ本体に把持された新設セグメントの密着すべき2端面が既設セグメントの対応する各端面と平行であるか否かを確認する必要がある。
【0008】本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、具体的には上記ガイドローラの有効な機能を利用するとともに、更に優れた位置合せ精度が確保される機械的なセグメントの位置合せ方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】この発明は上記目的を達成するために、シールド本体が掘削したトンネルの内壁を覆工する既設セグメントに続けてセグメントを組み立てるに当たって、(1)請求項1記載の発明は最初に複数のガイド部を既設セグメントの内周面に押し付けて、少なくとも上下(Z軸)方向の概略位置合せを行なうので、セグメントがトンネルの半径方向に対する極端な位置ずれが補正される。この補正がなされた後のセグメント姿勢を保持して、既設セグメントの端面に同新設セグメントの対応する端面を面接触させる。この面接触により残る前後(X軸)方向、旋回(Y軸)方向、ローリング(Mx)、ピッチング(My)及びヨーイング(Mz)の各方向の位置合せがなされる。従って、本発明によれば格別のセンサを用いることなく機械的に、効率よく、かつ精度がよいセグメントの位置合せができる。
【0010】なお既設セグメントにこれから組み立てるセグメントを間接的に倣わせることにより各軸方向の位置合せを行うようにしたことから、従来のように各軸について距離を検出し、かつそのデータをもとに制御値を演算して演算結果により各軸のジャッキを制御していた場合に比べて検出するためのセンサ数が少なくてよく、信頼性が格段に向上する。
【0011】また複雑な演算を必要としないため、短時間でセグメントの位置合せが可能となり、作業能率の大幅な向上も図れるようになる。
【0012】(2)請求項2〜5に記載の発明は、前記既設セグメントの端面に対する前記新設セグメントの押し付ける力、及びエレクタ本体に設けられた前記ガイド部による既設セグメントの内周面に押し付け力を、それぞれの検出手段により検出し、その検出された値に基づいて押し付け力が所定値となるように制御手段により制御する。そして、前記押し付け力の検出手段が力センサを使うことが望ましい。新設セグメントの位置合せには、上述の請求項1の発明をもって充分に初期の目的が達成されるが、セグメントの端面および内周面に押し付ける力が過大である場合にはセグメントを破損させかねない。そこで、これらの押し付け力を監視し、自動的に適正な押し付け力に補正するものである。その押し付け力の検出手段としては、前記押し付け力の作動が油圧によりなされるため、通常は同油圧管路の油圧センサを適用してもよいが、油圧センサに代えて歪み計等の力センサを採用することもでき、この力センサを採用する場合には、押し付け力の検出感度に優れているため、さらに高精度の検出が可能となる。
【0013】従って本発明によれば、既設セグメントの端面及び内周面に押し付けることにより、これから組み立てるセグメントを倣わせるガイド部の押し付け力を検出する手段を設け、一定の押し付け力で押し付けることにより押し付け力が過大にならず、セグメントを破損させることがない。
【0014】また、ガイド部に直接力センサを設けたので押し付け力検出の感度がさらに良くなる。
【0015】(3)請求項6及び7記載の発明は、新設セグメントの組立位置を検出手段により検出し、その検出位置からこれから組み立てる前記セグメントの押し付け力を演算し、その演算値に基づいて前記押し付け力を制御手段により制御するものであり、新設セグメントの組立位置を検出する前記検出手段としては旋回リングの回転角度を検出する角度センサであることが、位置検出のために特別の機構を必要とせず、位置測定を容易に行なうことができるため好ましい。
【0016】トンネル内壁面に対するセグメントの覆工は、円弧状の同内壁面に沿って下方から上方へと順次リング状に組立てていく。従って、上述の押し付け力もセグメントの組立位置の変化に基づく荷重変化に対応させて、荷重の変化による影響を受けないように補正する必要がある。上述のごとくセグメントの各据え付け位置ごとの位置検出を行い、その位置情報に基づく演算処理により前記押し付け力を自動的に補正する。
【0017】従って本発明によれば、セグメントの組立位置に関係なく常に一定の倣い力(押し付け力)になるのでセグメントに無理な力がかからない。
【0018】また旋回リングの回転角からセグメントの組立位置を検出するようにすると、特別な機構を必要としないで、位置測定を容易に行うことができる。
【0019】
【発明の実施形態】この発明方法の好適な実施の形態を、図1乃至図10に示す代表的な実施例に基づいて詳述する。これらの図において1は地中を掘進するシールド本体で、シールドジャッキ2により推進されると共に、シールド本体1の前面にはカッタモータ3により回転されるカッタヘッドによりシールド本体1の前方の切羽が掘削されるようになっている。
【0020】上記カッタヘッド4により掘削された土砂はシールド本体1前部のチャンバ1a内へ取り込まれた後、スクリュウコンベヤ5によりチャンバ1a内より搬出され、さらに図示しない土砂搬送装置によりトンネル内を後方へ搬出されるようになっている。
【0021】また図中6はシールド本体1が掘削したトンネル内壁に沿ってセグメント7を組み立てるセグメントエレクタで、シールド本体1の内壁に設けられたローラ21’に案内されて円周方向へ旋回リング6aを有していて、この旋回リング6aより後方へ突設された支持ブラケット6bの先端に経方向に一対のガイド杆6cが支承されていて、これらガイド杆6cは昇降ジャッキ8により上下動するようになっている。
【0022】上記各ガイド杆6cの下端部はほぼV字形をなすブラケット6dを介して基台6eが取付けられていて、この基台6eの下面には摺動ジャッキ9により前後方向(X軸方向)へ摺動自在なスライド10が設けられている。
【0023】そしてこのスライド10の下部に旋回ジャッキ11によりシールド本体1の内面に沿ったY軸方向へ旋回自在な支持部材12がピン13及び長孔12aを介して支持されていると共に、支持部材12の下部にヨーイングジャッキ14によりY軸を中心に旋回自在な旋回部材15が支承され、この旋回部材15の下部にピン16によりアーム6fの中間部が揺動自在に装着されている。
【0024】上記アーム6fはローリングジャッキ17によりローリング(Mx)が、そしてピッチングジャッキ18によりピッチング(My)ができるようになっていると共に、アーム6fの中央下部にはセグメント7を吊上げるブラケット6gが、そして両端側と後部両側には、既設セグメント7’の内周面を転動するガイドローラ6h、6iが回転自在に支承されている。
【0025】一方第4図及び第5図は上記セグメントエレクタ6の力制御を行なう制御回路を示すもので、上記昇降ジャッキ8、摺動ジャッキ9及び旋回ジャッキ11は第4図に示す制御回路により制御されるようになっている。
【0026】すなわち各ジャッキ8、9、11はマイクロコンピュータよりなる制御装置20により制御される制御弁21を有していて、この制御弁21と各ジャッキ8、9、11を接続する管路22の途中に、管路22内を流れる油圧を検出する圧力センサ23が設けられている。
【0027】これら圧力センサ23により検出された油圧は制御装置20に入力されて、予め設定された一定の押し付け力と比較され、各ジャッキ8、9、11の押し付け力が設定値となるように制御弁21が制御されるようになっている。
【0028】またヨーイングジャッキ14、ローリングジャッキ17およびピッチングジャッキ18は第5図に示すように制御されるようになっている。
【0029】すなわち各ジャッキ14、17、18も制御装置20により制御される制御弁25に接続されており、制御弁25より各ジャッキ14、17、18へ供給される油圧は圧力センサ26により検出されて制御装置20へ入力される。
【0030】また旋回リングの旋回角度が角度センサ27により検出されて制御装置20へ入力され、上記圧力センサ26及び角度センサ27からの信号をもとに制御弁25が制御されるようになっている。
【0031】なお図中28は既設セグメント7’に沿って組立られたセグメント7をボルトで締結するボルト締結装置である。
【0032】つぎにシールド本体1が掘削したトンネルの内壁を覆工する既設セグメント7’に、これから組み立てるセグメント7を位置合せする方法について説明する。
【0033】既設セグメント7’を足場にしてシールドジャッキ2によりシールド本体1が1ピッチ推進されたら、これから組み立てる新設セグメント7をセグメントエレクタ6のアーム6f下部に突設したブラケット6gに取付け、既設セグメント7’のこれから接続する位置へ移動する。
【0034】先ず昇降ジャッキ8により新設セグメント7を下降させると、アーム6fの後部に突設されたガイドローラ6iが既設セグメント7’の内周面に第7図に示すように当接されるため、既設セグメント7’に対するZ軸方向の位置決めが行えると共に、各ガイドローラ6iが既設セグメント7’の内面に当接することによりX軸を中心に新設セグメント7が回転されるため、同時にローリング方向(Mx)の位置決めも行える。
【0035】ついで摺動ジャッキ9によりこれから組み立てる新設セグメント7を、第8図に示すように既設セグメント7’の前端面に接触させる。
【0036】これによって既設セグメント7’に対するX軸方向にセグメント7の後端面を既設セグメント7’の前端面へ当接することによりY軸を中心に新設セグメント7が回転されて、同時にヨージング方向(Mz)の位置決めも行える。
【0037】なお、接触は新設セグメントの後端面と既設セグメントの前端面の平行度が位置合せできればよく、接触状態が面接触、線接触、点接触のどれかに限定されることはない。
【0038】上記のようにして各方向の位置決めが完了したら、旋回ジャッキ14により第9図に示すように、これから組み立てる新設セグメント7をすでに組み立てたセグメント7″に一定の押し付け力で押し付けて旋回方向(Y軸)の位置決めを行うと共に、このときアーム6fの両端側に突設されたガイドローラ6hが第10図に示すようにすでに組み立てられているセグメント7”の内面に面接触させてY軸を中心に回転させるため、同時にピッチング方向(My)の位置決めを行える。
【0039】以下上記操作を繰り返すことにより既設セグメント7’に沿って新設セグメント7を組み立てることができる。
【0040】既設セグメント7’にこれから組み立てる新設セグメント7を押し付けて、力で既設セグメント7’に倣わせるために押し付け力を常に一定にする必要があるが、これを第4図に示す制御回路により行う。
【0041】また既設セグメント7’に倣わせるためにヨーイングジャッキ14、ローリングジャッキ17及びピッチングジャッキ18は外力に対して軽く動くように制御する必要があるが、旋回リング6aが旋回されてセグメント7の組立位置が変わると、各ジャッキ14、17、18に作用する負荷も変化する。
【0042】そこで角度センサ27により旋回リング6aの旋回角度を検出して負荷の変化を演算し、その結果をもとに制御弁25を制御することにより、セグメント7の組立位置がどの位置でも一定の押し付け力でセグメント7を既設セグメント7’に倣わせることができる。
【0043】なお上記実施例では各ジャッキへ供給される油圧を検出して力制御を行っているが、各ガイドローラ6h、6iに力センサを設けて押し付け力を検出し、この押し付け力をもとに各制御弁を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施例を示すシール掘進機の断面図である。
【図2】図1のII方向から見た矢視図である。
【図3】図2をIII 方向から見た矢視図である。
【図4】同掘進機の制御系を示す一部回路図である。
【図5】同制御系の他部回路図である。
【図6】位置合せすべき各軸の説明図である。
【図7】本発明による位置合せの第1ステップを示す説明図である。
【図8】同第2ステップを示す説明図である。
【図9】同第3ステップを示す説明図である。
【図10】同第4ステップを示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・シールド本体
6h・・・ガイドローラ
6i・・・ガイドローラ
7・・・これから組立てるセグメント
7’・・・既設セグメント
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はシールド掘進機が掘削したトンネルの内壁を覆工するセグメントの位置合せ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来シールド掘進機が掘削したトンネルの内壁は、セグメントを内壁に沿って組み立てることにより、覆工作業を自動化する場合、これから組み立てるセグメントを既設セグメントにいかに正確に位置合せするかが重要となる。
【0003】このため従来ではこれから組み立てるセグメントから既設セグメントまでの距離をセンサ(図示せず)を使用してX軸(摺動)、Y軸(旋回)、Z軸(昇降)の各方向及びMx(ローリング)、My(ピッチング)、Mz(ヨーイング)の各方向の全てについて検出し、既設セグメントに対してこれから組み立てるセグメントの位置合せを行っていた。(第6図参照)
しかし、センサにより多軸にわたって距離を検出する場合、多くのセンサを使用するため、測定誤差が累積されるなど測定結果に不安があり完全自動化を達成することが難しく、更にはセンサが検出した位置をすべてマイクロコンピュータを使用して演算処理して、その結果によりセグメントエレクタの各アクチュエータを制御しているため、セグメントの位置合せに多くの時間を費やし作業能率を低下させるなどの欠点があった。
【0004】かかる欠点を解消すべく、例えば本発明者により開発された特開平2−54100号公報に開示されたセグメント組立マニプレータがある。このマニプレータはエレクタ本体に装備され、新設セグメントの位置合せ手段を備えており、同位置合せ手段として既設セグメントの内周面に倣って新設セグメントの内周面の位置合せをするためのガイドローラと、内周面の位置合せ後に同セグメントの1コーナ部を挟む2側面を既設セグメントの相対する側面に押し付けるための複数個のジャッキとから構成されている。
【0005】このマニプレータによれば、前記ガイドローラにより機械的に内周面の位置合せがなされた状態で、前記複数のジャッキを新設及び既設の各セグメントに形成されているボルト溝に挿入し、同ジャッキを作動させることにより2端面同士を密着させることで、上記X軸(摺動)、Y軸(旋回)、Z軸(昇降)の3軸方向及びMx(ローリング)、My(ピッチング)、Mz(ヨーイング)方向の全ての位置合せが機械的に短時間で正確になされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、前述の公報に開示されたセグメント組立マニプレータにあっても、ガイドローラを既設セグメントの内周面に押し付けるだけでは、新設セグメントと既設セグメントとの密着させるべき側面同士が平行であるという保障がなく、例えばエレクタ本体のセグメント把持部によるセグメントの把持姿勢が常に正確であるとは限らず、新設セグメントの側面が既設セグメントの対応する側面に密着するように上記ジャッキを作動しても、新設セグメントの側面が全面で密着せずに、その一部稜線部が密着するに過ぎない場合もある。
【0007】すなわち、例えばエレクタ本体に固設された前記ガイドローラを既設セグメントの内周面に押し付けただけで、上記ジャッキを作動させるときには、上記ローリング(Mx)方向、ピッチング(My)方向、ヨーイング(Mz)方向の調整が不要になるという保障はなく、セグメントの組立の完全な自動化を図るためには、エレクタ本体に把持された新設セグメントの密着すべき2端面が既設セグメントの対応する各端面と平行であるか否かを確認する必要がある。
【0008】本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、具体的には上記ガイドローラの有効な機能を利用するとともに、更に優れた位置合せ精度が確保される機械的なセグメントの位置合せ方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】この発明は上記目的を達成するために、シールド本体が掘削したトンネルの内壁を覆工する既設セグメントに続けてセグメントを組み立てるに当たって、(1)請求項1記載の発明は最初に複数のガイド部を既設セグメントの内周面に押し付けて、少なくとも上下(Z軸)方向の概略位置合せを行なうので、セグメントがトンネルの半径方向に対する極端な位置ずれが補正される。この補正がなされた後のセグメント姿勢を保持して、既設セグメントの端面に同新設セグメントの対応する端面を面接触させる。この面接触により残る前後(X軸)方向、旋回(Y軸)方向、ローリング(Mx)、ピッチング(My)及びヨーイング(Mz)の各方向の位置合せがなされる。従って、本発明によれば格別のセンサを用いることなく機械的に、効率よく、かつ精度がよいセグメントの位置合せができる。
【0010】なお既設セグメントにこれから組み立てるセグメントを間接的に倣わせることにより各軸方向の位置合せを行うようにしたことから、従来のように各軸について距離を検出し、かつそのデータをもとに制御値を演算して演算結果により各軸のジャッキを制御していた場合に比べて検出するためのセンサ数が少なくてよく、信頼性が格段に向上する。
【0011】また複雑な演算を必要としないため、短時間でセグメントの位置合せが可能となり、作業能率の大幅な向上も図れるようになる。
【0012】(2)請求項2〜5に記載の発明は、前記既設セグメントの端面に対する前記新設セグメントの押し付ける力、及びエレクタ本体に設けられた前記ガイド部による既設セグメントの内周面に押し付け力を、それぞれの検出手段により検出し、その検出された値に基づいて押し付け力が所定値となるように制御手段により制御する。そして、前記押し付け力の検出手段が力センサを使うことが望ましい。新設セグメントの位置合せには、上述の請求項1の発明をもって充分に初期の目的が達成されるが、セグメントの端面および内周面に押し付ける力が過大である場合にはセグメントを破損させかねない。そこで、これらの押し付け力を監視し、自動的に適正な押し付け力に補正するものである。その押し付け力の検出手段としては、前記押し付け力の作動が油圧によりなされるため、通常は同油圧管路の油圧センサを適用してもよいが、油圧センサに代えて歪み計等の力センサを採用することもでき、この力センサを採用する場合には、押し付け力の検出感度に優れているため、さらに高精度の検出が可能となる。
【0013】従って本発明によれば、既設セグメントの端面及び内周面に押し付けることにより、これから組み立てるセグメントを倣わせるガイド部の押し付け力を検出する手段を設け、一定の押し付け力で押し付けることにより押し付け力が過大にならず、セグメントを破損させることがない。
【0014】また、ガイド部に直接力センサを設けたので押し付け力検出の感度がさらに良くなる。
【0015】(3)請求項6及び7記載の発明は、新設セグメントの組立位置を検出手段により検出し、その検出位置からこれから組み立てる前記セグメントの押し付け力を演算し、その演算値に基づいて前記押し付け力を制御手段により制御するものであり、新設セグメントの組立位置を検出する前記検出手段としては旋回リングの回転角度を検出する角度センサであることが、位置検出のために特別の機構を必要とせず、位置測定を容易に行なうことができるため好ましい。
【0016】トンネル内壁面に対するセグメントの覆工は、円弧状の同内壁面に沿って下方から上方へと順次リング状に組立てていく。従って、上述の押し付け力もセグメントの組立位置の変化に基づく荷重変化に対応させて、荷重の変化による影響を受けないように補正する必要がある。上述のごとくセグメントの各据え付け位置ごとの位置検出を行い、その位置情報に基づく演算処理により前記押し付け力を自動的に補正する。
【0017】従って本発明によれば、セグメントの組立位置に関係なく常に一定の倣い力(押し付け力)になるのでセグメントに無理な力がかからない。
【0018】また旋回リングの回転角からセグメントの組立位置を検出するようにすると、特別な機構を必要としないで、位置測定を容易に行うことができる。
【0019】
【発明の実施形態】この発明方法の好適な実施の形態を、図1乃至図10に示す代表的な実施例に基づいて詳述する。これらの図において1は地中を掘進するシールド本体で、シールドジャッキ2により推進されると共に、シールド本体1の前面にはカッタモータ3により回転されるカッタヘッドによりシールド本体1の前方の切羽が掘削されるようになっている。
【0020】上記カッタヘッド4により掘削された土砂はシールド本体1前部のチャンバ1a内へ取り込まれた後、スクリュウコンベヤ5によりチャンバ1a内より搬出され、さらに図示しない土砂搬送装置によりトンネル内を後方へ搬出されるようになっている。
【0021】また図中6はシールド本体1が掘削したトンネル内壁に沿ってセグメント7を組み立てるセグメントエレクタで、シールド本体1の内壁に設けられたローラ21’に案内されて円周方向へ旋回リング6aを有していて、この旋回リング6aより後方へ突設された支持ブラケット6bの先端に経方向に一対のガイド杆6cが支承されていて、これらガイド杆6cは昇降ジャッキ8により上下動するようになっている。
【0022】上記各ガイド杆6cの下端部はほぼV字形をなすブラケット6dを介して基台6eが取付けられていて、この基台6eの下面には摺動ジャッキ9により前後方向(X軸方向)へ摺動自在なスライド10が設けられている。
【0023】そしてこのスライド10の下部に旋回ジャッキ11によりシールド本体1の内面に沿ったY軸方向へ旋回自在な支持部材12がピン13及び長孔12aを介して支持されていると共に、支持部材12の下部にヨーイングジャッキ14によりY軸を中心に旋回自在な旋回部材15が支承され、この旋回部材15の下部にピン16によりアーム6fの中間部が揺動自在に装着されている。
【0024】上記アーム6fはローリングジャッキ17によりローリング(Mx)が、そしてピッチングジャッキ18によりピッチング(My)ができるようになっていると共に、アーム6fの中央下部にはセグメント7を吊上げるブラケット6gが、そして両端側と後部両側には、既設セグメント7’の内周面を転動するガイドローラ6h、6iが回転自在に支承されている。
【0025】一方第4図及び第5図は上記セグメントエレクタ6の力制御を行なう制御回路を示すもので、上記昇降ジャッキ8、摺動ジャッキ9及び旋回ジャッキ11は第4図に示す制御回路により制御されるようになっている。
【0026】すなわち各ジャッキ8、9、11はマイクロコンピュータよりなる制御装置20により制御される制御弁21を有していて、この制御弁21と各ジャッキ8、9、11を接続する管路22の途中に、管路22内を流れる油圧を検出する圧力センサ23が設けられている。
【0027】これら圧力センサ23により検出された油圧は制御装置20に入力されて、予め設定された一定の押し付け力と比較され、各ジャッキ8、9、11の押し付け力が設定値となるように制御弁21が制御されるようになっている。
【0028】またヨーイングジャッキ14、ローリングジャッキ17およびピッチングジャッキ18は第5図に示すように制御されるようになっている。
【0029】すなわち各ジャッキ14、17、18も制御装置20により制御される制御弁25に接続されており、制御弁25より各ジャッキ14、17、18へ供給される油圧は圧力センサ26により検出されて制御装置20へ入力される。
【0030】また旋回リングの旋回角度が角度センサ27により検出されて制御装置20へ入力され、上記圧力センサ26及び角度センサ27からの信号をもとに制御弁25が制御されるようになっている。
【0031】なお図中28は既設セグメント7’に沿って組立られたセグメント7をボルトで締結するボルト締結装置である。
【0032】つぎにシールド本体1が掘削したトンネルの内壁を覆工する既設セグメント7’に、これから組み立てるセグメント7を位置合せする方法について説明する。
【0033】既設セグメント7’を足場にしてシールドジャッキ2によりシールド本体1が1ピッチ推進されたら、これから組み立てる新設セグメント7をセグメントエレクタ6のアーム6f下部に突設したブラケット6gに取付け、既設セグメント7’のこれから接続する位置へ移動する。
【0034】先ず昇降ジャッキ8により新設セグメント7を下降させると、アーム6fの後部に突設されたガイドローラ6iが既設セグメント7’の内周面に第7図に示すように当接されるため、既設セグメント7’に対するZ軸方向の位置決めが行えると共に、各ガイドローラ6iが既設セグメント7’の内面に当接することによりX軸を中心に新設セグメント7が回転されるため、同時にローリング方向(Mx)の位置決めも行える。
【0035】ついで摺動ジャッキ9によりこれから組み立てる新設セグメント7を、第8図に示すように既設セグメント7’の前端面に接触させる。
【0036】これによって既設セグメント7’に対するX軸方向にセグメント7の後端面を既設セグメント7’の前端面へ当接することによりY軸を中心に新設セグメント7が回転されて、同時にヨージング方向(Mz)の位置決めも行える。
【0037】なお、接触は新設セグメントの後端面と既設セグメントの前端面の平行度が位置合せできればよく、接触状態が面接触、線接触、点接触のどれかに限定されることはない。
【0038】上記のようにして各方向の位置決めが完了したら、旋回ジャッキ14により第9図に示すように、これから組み立てる新設セグメント7をすでに組み立てたセグメント7″に一定の押し付け力で押し付けて旋回方向(Y軸)の位置決めを行うと共に、このときアーム6fの両端側に突設されたガイドローラ6hが第10図に示すようにすでに組み立てられているセグメント7”の内面に面接触させてY軸を中心に回転させるため、同時にピッチング方向(My)の位置決めを行える。
【0039】以下上記操作を繰り返すことにより既設セグメント7’に沿って新設セグメント7を組み立てることができる。
【0040】既設セグメント7’にこれから組み立てる新設セグメント7を押し付けて、力で既設セグメント7’に倣わせるために押し付け力を常に一定にする必要があるが、これを第4図に示す制御回路により行う。
【0041】また既設セグメント7’に倣わせるためにヨーイングジャッキ14、ローリングジャッキ17及びピッチングジャッキ18は外力に対して軽く動くように制御する必要があるが、旋回リング6aが旋回されてセグメント7の組立位置が変わると、各ジャッキ14、17、18に作用する負荷も変化する。
【0042】そこで角度センサ27により旋回リング6aの旋回角度を検出して負荷の変化を演算し、その結果をもとに制御弁25を制御することにより、セグメント7の組立位置がどの位置でも一定の押し付け力でセグメント7を既設セグメント7’に倣わせることができる。
【0043】なお上記実施例では各ジャッキへ供給される油圧を検出して力制御を行っているが、各ガイドローラ6h、6iに力センサを設けて押し付け力を検出し、この押し付け力をもとに各制御弁を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施例を示すシール掘進機の断面図である。
【図2】図1のII方向から見た矢視図である。
【図3】図2をIII 方向から見た矢視図である。
【図4】同掘進機の制御系を示す一部回路図である。
【図5】同制御系の他部回路図である。
【図6】位置合せすべき各軸の説明図である。
【図7】本発明による位置合せの第1ステップを示す説明図である。
【図8】同第2ステップを示す説明図である。
【図9】同第3ステップを示す説明図である。
【図10】同第4ステップを示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・シールド本体
6h・・・ガイドローラ
6i・・・ガイドローラ
7・・・これから組立てるセグメント
7’・・・既設セグメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シールド本体が掘削したトンネルの内壁を覆工する既設セグメントに続けてセグメントを組み立てるにあたって、先ずエレクタ本体に設けた2以上のガイド部を既設セグメントの内周面に所定の押し付け力をもって押し付けて上下方向の位置合せを行ない、次に前述の姿勢を保持した状態でこれから組み立てる新設セグメントの端面を既設セグメントの端面に所定の押し付け力をもって押し付け、残る多軸方向の位置合せをするセグメントの位置合せ方法。
【請求項2】 前記既設セグメントの端面に対する前記新設セグメントの押し付け力を検出手段により検出し、その検出された値に基づいて制御手段により押し付け力が所定値となるように制御する請求項1記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項3】エレクタ本体に設けられた前記ガイド部による既設セグメントの内周面に押し付け力を検出手段により検出し、その検出された検出値に基づいて制御手段により同押し付け力を所定値に制御する請求項1又は2記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項4】 前記押し付け力の検出手段が液圧センサである請求項2又は3記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項5】 前記押し付け力の検出手段が力センサである請求項2又は3記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項6】 新設セグメントの組立位置を検出手段により検出し、その検出位置からこれから組み立てる前記セグメントの押し付け力を演算し、その演算値に基づいて制御手段により前記押し付け力を制御する請求項2〜3のいずれかに記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項7】 セグメントの組立位置を検出する前記検出手段が旋回リングの回転角度を検出する角度センサである請求項6記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項1】 シールド本体が掘削したトンネルの内壁を覆工する既設セグメントに続けてセグメントを組み立てるにあたって、先ずエレクタ本体に設けた2以上のガイド部を既設セグメントの内周面に所定の押し付け力をもって押し付けて上下方向の位置合せを行ない、次に前述の姿勢を保持した状態でこれから組み立てる新設セグメントの端面を既設セグメントの端面に所定の押し付け力をもって押し付け、残る多軸方向の位置合せをするセグメントの位置合せ方法。
【請求項2】 前記既設セグメントの端面に対する前記新設セグメントの押し付け力を検出手段により検出し、その検出された値に基づいて制御手段により押し付け力が所定値となるように制御する請求項1記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項3】エレクタ本体に設けられた前記ガイド部による既設セグメントの内周面に押し付け力を検出手段により検出し、その検出された検出値に基づいて制御手段により同押し付け力を所定値に制御する請求項1又は2記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項4】 前記押し付け力の検出手段が液圧センサである請求項2又は3記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項5】 前記押し付け力の検出手段が力センサである請求項2又は3記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項6】 新設セグメントの組立位置を検出手段により検出し、その検出位置からこれから組み立てる前記セグメントの押し付け力を演算し、その演算値に基づいて制御手段により前記押し付け力を制御する請求項2〜3のいずれかに記載のセグメントの位置合せ方法。
【請求項7】 セグメントの組立位置を検出する前記検出手段が旋回リングの回転角度を検出する角度センサである請求項6記載のセグメントの位置合せ方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【特許番号】第2801585号
【登録日】平成10年(1998)7月10日
【発行日】平成10年(1998)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−7742
【分割の表示】特願平2−293716の分割
【出願日】平成2年(1990)11月1日
【公開番号】特開平9−217596
【公開日】平成9年(1997)8月19日
【審査請求日】平成9年(1997)1月20日
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【参考文献】
【文献】特開 平2−54100(JP,A)
【文献】特開 平1−263509(JP,A)
【文献】特開 平2−308097(JP,A)
【文献】特開 平4−151003(JP,A)
【登録日】平成10年(1998)7月10日
【発行日】平成10年(1998)9月21日
【国際特許分類】
【分割の表示】特願平2−293716の分割
【出願日】平成2年(1990)11月1日
【公開番号】特開平9−217596
【公開日】平成9年(1997)8月19日
【審査請求日】平成9年(1997)1月20日
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【参考文献】
【文献】特開 平2−54100(JP,A)
【文献】特開 平1−263509(JP,A)
【文献】特開 平2−308097(JP,A)
【文献】特開 平4−151003(JP,A)
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