説明

セパレータ

【目的】 電解コンデンサの耐熱性(例えば加熱による寸法安定性)と吸湿性を改善し、信頼性の高い電解コンデンサ用セパレータを提供することを目的とする。
【構成】 電解液を保持させてなるコンデンサの陽極と陰極の間に挿入して用いられるセパレータであって、水分量が少なく、耐薬品性の高い、繰り返し単位の90%以上が一酸化炭素とオレフィンとの交互共重合体からなるポリケトン繊維からなる合成繊維を含む不織布で構成されるセパレータとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液を保持させてなるコンデンサの陽極と陰極の間に挿入して用いられるセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、巻回型アルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間にセパレータを介在させて巻付け形成してコンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子を液状の電解液中に浸漬して電解液を含浸させ、封口することにより製作されていた。
【0003】
近年、デジタル化された業務用及び民生用の各種電子機器に使用される電解コンデンサには、小型化、高性能化、使用温度の高温度化に伴って、より一層の耐熱性が求められる様になってきている。
【0004】
例えば、カーエレクトロニクスの進展に伴い、自動車に搭載されるアルミ電解コンデンサの数が増えるとともに、電装部品の設置場所については、省スペースを図るため車室内からエンジンルームへの設置することが検討されている。
【0005】
また、一方ではデジタル化に伴い、テレビの更なる薄型化が進められている。これらの薄型ディスプレイのセット内温度は高く、ここに用いられるコンデンサについても、より一層の長寿命化を要求されてきている。
【0006】
このように、アルミ電解コンデンサには様々な用途、あるいは実装工程において、耐熱性の向上が求められており、高温で使用できる電解コンデンサの開発が進められている。
【0007】
電解コンデンサの最高使用温度は、標準品で85℃、高信頼性品は105℃に対応したものが多い。これらのコンデンサの保証寿命は、短いもので1000時間、長いものになると5000時間、10000時間に達する。最高使用温度85℃のアルミ電解コンデンサでは長寿命型の場合には保証寿命が20000時間にまで達するものも登場してきている。
【0008】
一方、近年、自動車の電装用等の用途向けに、最高使用温度が105℃を超え125℃や150℃のコンデンサが開発されているが、最高使用温度の高いコンデンサの保証寿命は、125℃タイプで5000時間程度が限界であり、85℃タイプや105℃タイプに比べて寿命が短い。また、150℃タイプでは保証寿命がまだ2000時間程度に過ぎない。
【0009】
このように、最高使用温度の高い125℃タイプや150℃タイプの電解コンデンサが開発され、上市されてはいるものの、最高使用温度の高い電解コンデンサの保証寿命は、85℃タイプや105℃タイプの最高使用温度が低い電解コンデンサの寿命に比べてまだまだ短い。
【0010】
最高使用温度が125℃や150℃の電解コンデンサの保証寿命を長くすることが出来ない主な理由は、高温度長時間使用時における等価直列抵抗(ESR)の上昇及び容量の減少である。
【0011】
ESRや容量が変化する最も大きな要因は、電解液の溶媒が封口部材を通じて蒸散してしまうことである。そこで、特許文献1に記載のコンデンサは、不揮発成分としてイオン液体を電解コンデンサ用の電解液に使用して長寿命化を図っていた。
【0012】
又、特許文献2に記載のコンデンサは、ホウ素元素を含む錯体を電解コンデンサ用の電解液に使用して長寿命化を図っていた。
【0013】
電解液の揮発性の問題を回避する別の手段として、電解質に導電性高分子などを使用した固体電解コンデンサを用いる方法もあげられる。
【0014】
しかしながら、固体電解コンデンサは電解液を使用していないため酸化皮膜の修復性が乏しく、酸化皮膜の欠損箇所に起因するショート不良率が多いといった課題がある。この課題を回避するために電解液と導電性高分子を併用したアルミ電解コンデンサが提案されている。
【0015】
この電解液と導電性高分子を併用したアルミ電解コンデンサは、導電性高分子コンデンサでは未達成である50WVの定格電圧を達成し且つESRは略同等となっている。
【0016】
しかしながら、電解質としてイオン液体やホウ素元素を含む錯体を用いた巻回型アルミ電解コンデンサおよび電解液と導電性高分子を併用したアルミ電解コンデンサは、高温で連続使用した後に分解して状態を検査すると、セパレータの劣化が観察され、高温長時間の使用に充分に耐えることができる特性を有しているか疑問である。
【0017】
また、イオン液体やホウ素元素を含む錯体を電解コンデンサ用電解液として使用しているにもかかわらず、寿命試験では一般のアルミ電解コンデンサと同様インピーダンスが増加し、容量が減少してしまっていた。この減少は水分の混入によりイオン液体やホウ素元素を含有した錯体の分解によるものとされている。
【0018】
これらの欠点を解消するため、特許文献3や特許文献4に記載のコンデンサは、透湿性の低い封口材料を用いたり、脱水剤を封入して水分の混入を防いでいた。
【0019】
更に、特許文献5に記載のコンデンサは、コンデンサ素子内部にキレート化剤、シランカップリング剤を使用しイオン液体の分解を抑えていた。更に、特許文献6はホウ素元素を含有した錯体にホウ酸を添加して、電解液の電導度を高くして、高温多湿下におけるホウ素錯体の加水分解を抑制して、特性の安定した電解コンデンサとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2005−353568号公報
【特許文献2】特開平11−67604号公報
【特許文献3】特開2007−273928号公報
【特許文献4】特開2008−085241号公報
【特許文献5】特開2008−091371号公報
【特許文献6】特開2008−177197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、脱水剤の使用やホウ酸の添加は混入した水との反応性を低下する手法であり、素子作製時に過剰に混入した水との反応を抑制する事はできない。
【0022】
本願発明者が精査した結果、イオン液体はセパレータがコンデンサ素子中に持ち込む程度の水分にも影響を受け、分解し劣化していることが明らかとなった。このため、脱水剤や透湿性の低い封口材料を使用しても、コンデンサ作製時に混入する初期水分の影響でコンデンサの劣化を防ぐことには限界があり、どうしても耐熱性に問題を残し、高温環境下で長時間使用したときのESR及び容量の変化率,更にはショート不良率を低く抑える事が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願発明者は、電解液を保持させてなるコンデンサの劣化を抑えるためにはコンデンサ作製時に混入する初期水分量を抑えることが重要であることを、見いだした。ここで、耐薬品性に強く含水率の少ないPPS繊維は繊維径が10μm程度と大きいため、含水率は低いもののセパレータの空隙が大きくなり、ショート不良率が増大した。また、アラミド繊維を主体としたセパレータは、耐熱性は良好であっても含水率が大きいため使用することが困難であった。
【0024】
そこで、本願発明は、上記課題を解決するために、セパレータとしての含水率を低く抑え、高温電解液中での耐熱性を著しく高めたセパレータを提供することを目的とする。
かかる目的を達成する一手段として、例えば以下の構成を備える。即ち、電解液を保持させてなるコンデンサの陽極と陰極の間に挿入して用いられるセパレータであって、少なくともポリケトン系樹脂からなる合成繊維を含む不織布を含むことを特徴とするセパレータとする。
【0025】
そして例えば、前記ポリケトン系樹脂からなる合成繊維は、繰り返し単位の90%以上が一酸化炭素とオレフィンとの交互共重合体からなるポリケトン繊維であることを特徴とする。
【0026】
又例えば、前記ポリケトン系樹脂からなる合成繊維の比表面積が0.2〜8.0m2/gの範囲であり、少なくとも一部がフィブリル化されていることを特徴とする。
【0027】
更に例えば、前記ポリケトン系樹脂からなる合成繊維の平均繊維長が約0.01mm〜10mmの範囲であることを特徴とする。あるいは、ポリケトン系合成繊維を30重量%以上含み、且つセパレータの20℃、65%RHでの平衡水分量が5%未満であることを特徴とする。
【0028】
又例えば、前記セパレータが、ポリケトンカット繊維、パラアラミドフィブリッド、天然セルロース繊維、ポリアクリルアミド、湿熱融着樹脂であるポリビニルアルコールバインダー繊維より選択した1種または2種以上の組み合わせのバインダーを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、耐熱性に優れた、ESR及び容量の変化率が少なく経時変化の少ない、高寿命のコンデンサ用セパレータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る一発明の実施の形態例の電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る一発明の実施の形態例を詳細に説明する。
本実施の形態例では、電解コンデンサの陽極箔と陰極箔との間に介在させて電解液を含浸・保持したセパレータについて説明し、前記セパレータとして電解液中での熱劣化が少なく、ショート不良率を下げるために緻密なフィブリルを形成し、電解液の分解を少なくするために含水率の少ないポリケトンを含有するセパレータとすることにより、高温使用時の寿命を長くした耐熱性を高めた電解コンデンサを提供可能としている。
【0032】
先ず図1を参照して本実施の形態例のセパレータを使用する巻回型コンデンサの製造方法の概要を説明する。図1は本発明に係る一発明の実施の形態例の電解コンデンサの製造方法を説明するための図である。
電極71,72としてアルミニウム箔のような金属箔を準備し、セパレータの原材料として絶縁性繊維からなるセパレータ基材8を準備する。電極71,72およびセパレータ基材8ともに所定幅の帯状に作製されている。
【0033】
図1の(a)に示すように、アルミニウム箔電極71,72の適所にタブ73付きのリード74をそれぞれ接続する。電極71,72へのタブ73の取り付けにはかしめ又は超音波溶接を用いる。図中の符号75はかしめ又は超音波溶接で取り付けた取付部を示す。
【0034】
図1の(b)に示すように、帯状の陽極71と陰極72の間に帯状のセパレータ基材8を配置して互いに重ね合わせ、これらを巻回して円柱状のコンデンサ素子10を形成する。コンデンサ素子10において正負両極リード74は同じ側の巻き面から突出している。電極71,72およびセパレータ基材8の巻きが解けないように、コンデンサ素子10の外周には結束テープ11が巻き付けられる。
【0035】
次いで、図1の(c)に示すように、液溜めから電解液12を例えば減圧(いわゆる真空)により下から上の素子へ含浸を促進する等してコンデンサ素子10に電解液12を含浸させることにより電解コンデンサ13を作製する。
【0036】
また,電解液と導電性高分子を併用したコンデンサは更に次のように作製する。コンデンサ素子10に導電性高分子を保持させる。保持の手段の一つとして導電性高分子を形成するためのモノマーと重合開始剤を含浸させる。含浸させた重合液中の導電性高分子と重合開始剤とが反応し、重合液がコンデンサ素子10のなかで固体化して固体電解コンデンサ素子となる。この素子に更に電解液を含浸させることにより電解液および導電性高分子併用の電解コンデンサ素子13が作製できる。更にリード74側から封口ゴム15を取り付け、封口ゴム15でリード74側を絶縁密封する。
【0037】
さらに、図1の(d)に示すように、リード74が突出する巻き面とは反対側の巻き面のほうからケース14を被せて固体電解コンデンサ素子13の全体をケースで覆う。封口ゴム15はケース14の開口にはまり込み、開口を塞いでいる。これにより、図1に示す形状の電解コンデンサあるいは電解液および導電性高分子併用の電解コンデンサ16が完成する。
【0038】
このコンデンサ16に所定の電圧を印加して、エージング(デバッキング)処理を行なう。エージングの後、コンデンサ16の特性検査(誘電率、誘電正接、特性インピーダンスの測定と短絡の有無)と外観検査を行なう。さらに、コンデンサを所望の形状に成型し、その表面に所定の情報を表示印刷する。
【0039】
次に、以上のコンデンサに用いられるセパレータについて説明する。まず以下の説明で使用する重要な用語を定義する。
「ポリケトン系合成繊維」とは、繰り返し単位の90%以上が一酸化炭素とオレフィンとの交互共重合体からなる脂肪族ポリケトンや芳香族ポリケトンなどを包括的に含む化学合成繊維のことをいう。
【0040】
「平衡水分量」とは、セパレータもしくは繊維の吸湿性を百分率であらわした吸湿性指標のことをいい、具体的には温度20℃±2℃、相対湿度65%±2%の大気圧環境下において平衡状態にある水が繊維のなかで安定的に存在しうる水の存在率のことをいう。
【0041】
平衡水分量は次式により与えられる。
M={(W1−W2)/W2}×100
但し、Mは平衡水分量(%)、W1は乾燥前の繊維の測定重量、W2は乾燥直後の繊維の測定重量をそれぞれ示す。W2での「乾燥」とは、汎用の湿度測定器では測定可能限界を超えてしまい水分を検出できないレベルまで水分を失った状態をいうものと定義する。
【0042】
本発明にかかる一発明の実施の形態例の電解コンデンサにおいて、ポリケトン樹脂を含有するセパレータを使用した。ポリケトン樹脂はフィブリル化物を主に使用した。フィブリル化物を使用している目的はバインダー力のみではなく高温長期間試験前後のショート不良率を抑えるためである。
【0043】
更に、セパレータの引張強さを改善するために他のバインダーを使用してもよい。バインダーの種類は強度を維持することが目的であり化成への影響がみられない限り種類を問わない。
【0044】
例えば、パラアラミドフィブリッド、ポリエステルバインダー繊維,ポリアクリルアミド,湿熱融着樹脂であるポリビニルアルコールバインダー繊維より選択した1種または2種以上の組み合わせを選ぶことができる。
【0045】
さらに、本実施の形態例において、ポリケトン系合成繊維と他の繊維(例えばセルロース繊維)とを混合したものでセパレータ基材を作製する場合は、温度20℃±2℃、相対湿度65%±2%の大気圧雰囲気下において平衡水分量が1%以下であるポリケトン系合成繊維を30重量%以上含ませることが好ましい。
【0046】
ポリケトン/他の繊維の混合物からなるセパレータでは、ポリケトン繊維に比べて他の繊維の吸湿量が大きく、セパレータ全体での平衡水分量も高くなってしまう。
【0047】
そこで、ポリケトン系合成繊維の配合量を30%以上にし、セパレータ乾燥から使用までの水分量を抑制することが重要となる。他の繊維は、セパレータの水分量を配慮すれば、化学合成繊維のみに限定されず、植物繊維や動物繊維などの天然繊維、再生天然繊維、無機繊維のうちのいずれであってもよい。
【0048】
他の繊維として、例えばセルロース繊維、パラアラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維などを用いることができる。
ここで、ポリケトン系合成繊維とは、脂肪族ポリケトン繊維、芳香族ポリケトン繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維に代表されるような、繰り返し単位の90%以上が一酸化炭素とオレフィンとの交互共重合体からなる化学合成繊維のこと包括的に指す。
【0049】
本実施の形態例では、これらのうち、代表として化1に示した脂肪族ポリケトン繊維を使用した。
〔化1〕
―(CH2―CH2―CO)n―
【0050】
繰り返し単位の90%以上がこのような一酸化炭素とオレフィンとの交互共重合体からなる構造は上記に示したとおりである。より好ましくは98モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
【0051】
本実施の形態例において、ポリケトン系合成繊維の比表面積が0.2〜8.0m2/gの範囲であることが好ましく、分散性を向上しショート不良率の少ない電化遺恨デンサを得るために2.2〜3.9m2/gの範囲であることがさらに好ましい。
【0052】
比表面積が3.9m2/gを上回ると、吸湿性が次第に増大する。特に、繊維の比表面積が8.0m2/gを超えると、吸湿する平衡水分量が無視できないほど増加するおそれがある。一方、繊維の比表面積が0.2m2/g未満になると、抄紙法を用いて緻密なシート状に製造しにくくなり、ショート不良率が増加する。
【0053】
ポリケトン系合成繊維の平均繊維長が0.01mm〜10mmの範囲にカットされた短繊維であることが好ましい。平均繊維長が0.01mm以下であると、短繊維同士の交絡点が少なくなり抄紙時の紙強度を維持することが困難となる。一方、平均繊維長が10.0mm以上になると抄紙時に繊維同士の縺れが増加し分散均一性が低下し、厚さの不均一(厚さむら)を増大することとなる。
【0054】
本実施の形態例では、電解液の一つとしてγ−ブチロラクトンを使用する例について説明したが、これに限定されるものではない。一例として、スルホラン、2,5−ジメチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン等を用いることが出来る。
【0055】
さらに、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジノン、1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン等を用いてもよく、1,3,4,5−テトラアルキル−2−イミダゾリジノン、1,3,4,5−テトラメチル−2−イミダゾリジノン等を用いても良い。
【0056】
そのほか、3−エチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロジリノン、イオン液体があげられ、これらは単体もしくは混合して用いてもよい。
【0057】
これらの各電解液を用いても、本実施の形態例のコンデンサ製造方法で製造することにより、ほぼ同様の作用効果を奏することが期待できる。
【0058】
電解液と導電性高分子を併用した電解コンデンサでは、電解液による再化成能力と導電性高分子コンデンサによる長寿命特性をさらに向上するためにイオン液体または前述の電解液あるいはイオン液体および導電性高分子を使用する。
【0059】
本実施の形態例のコンデンサに使用するセパレータは、耐熱性及び耐薬品性が強く、イオン液体は、セルロース繊維100%のセパレータと異なり広く選択することが可能となる。
【0060】
高伝導率を示すイオン液体の多くは、水分の混入によりアニオンが除々に加水分解する性質があり、平衡水分量の高いセパレータを長期間使用するとアニオンが分解することとなり安定性に問題がある。
【0061】
そこで、本実施の形態例のセパレータによれば、平衡水分量を低くおさえることが可能となり、イオン液体を使用した電解質を用いた電解コンデンサであっても長期間安定して使用することができる。
【0062】
本実施の形態例の電解コンデンサで用いるイオン液体の組み合わせの一例として、カチオン種ではイミダゾリウムカチオンを初めとしたアミジン塩やピリジニウムカチオンやホスホニウムカチオンなどを用いることが好ましい。
【0063】
カチオン種としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムや1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウムを使用したがこの例に限定されるものではない。
【0064】
またアニオン種として電極箔の酸化皮膜への影響が少ないイオン種が好ましく、アニオン種の例としてホウ素元素を含んだ錯イオンやジシアノアミドイオンなどを使用することが好ましい。
【0065】
また、ホウ素錯イオンは、ボロジサリチル酸イオン、ボロジグリコール酸イオン、ボロジシュウ酸イオン、ボロジマロン酸、ボロジアジピン酸、ボロジマレイン酸、ボロジ乳酸、ボロジリンゴ酸、ボロジ酒石酸、ボロジクエン酸、ボロジフタル酸、ボロジ(2−ヒドロキシ)イソ酪酸、ボロジマンデル酸、ボロジ(3−ヒドロキシ)プロピオン酸等が挙げられる。
【0066】
以上に説明したセパレータと電解質の組み合わせとを精査したところ、導電性高分子と電解液を併用して低ESR且つ酸化皮膜の修復化成能を持たせたアルミ電解コンデンサの寿命特性にも向上がみられた。
【0067】
この種の導電性高分子には、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることができる。またいずれの電解液を使用した場合でも寿命特性は向上し、特にイオン液体またはホウ素元素を含んだ錯体と導電性高分子を併用した場合に寿命特性の向上率は著しかった。
【0068】
〔実施例〕
以下に、以上に説明した本発明に係る一発明の実施の形態例などの具体的な実施例を説明する。まず、電解コンデンサに使用するセパレータについて説明する。
【0069】
本実施の例のセパレータは、前記したポリケトン繊維を配合して、抄紙方法によりセパレータとしてシート化した。即ち、湿式不織布でセパレータを構成したのである。
【0070】
ここで、抄紙方法によりセパレータを製造する方法(抄造)は、繊維とバインダーとを溶媒(水)中に添加して紙すきの要領で繊維を漉き取り、繊維相互間がバインダーで結着されたシートを得る方法をいう。
【0071】
この抄紙法は、水を媒介とすることにより、繊維を均一に分散・積層することが可能であり、均一性を要求されるアルミ電解コンデンサのセパレータの製造方法として適切である。
【0072】
またポリケトン繊維は、PPS繊維と異なり繊維製造後にリファイナー等の叩解機によってフィブリル化が可能であり、フィブリル化ポリケトン繊維と適切なバインダーとを用いてセパレータを作製することで、本願の目的を達成するための緻密なセパレータの形成が可能となる。
【0073】
本実施例ではバインダーとして、ポリケトンカット繊維の他、セルロース繊維やPVA繊維、パラアラミドフィブリッド、一般的なケミカルボンド法としてポリアクリルアミドを使用した。その他サーマルボンド法として実施例ではポリエステルバインダー繊維を混抄した。
【0074】
次に、陽極箔と陰極箔及び本実施例のセパレータとを所望の裁断幅にスリットした。スリットした陽極箔と陰極箔とをセパレータを介してリード棒に巻き付け、コンデンサ素子を作成した。従来例、比較例ともに実施例と同様の操作でコンデンサ素子を作成した。
【0075】
セパレータの電解液中での耐熱性は、セパレータを構成する繊維自体の耐熱性により大きな影響を受けるものである。従って、電解液中で耐熱性が高く、平衡水分量を低くおさえることができ、比表面積が高い繊維を用いることが重要である。
【0076】
言い換えれば、湿式不織布を構成する繊維同士の接着方法で電解液中での耐熱性を満足するものではないので、セパレータを構成する繊維間の接着方法に限定はなく、いずれの接着方法、バインダー種を用いても本発明の課題を解決することができる。
【0077】
巻回素子作製後のコンデンサの作製は、以下の2通りでおこなった。以下に示す乾燥処理は条件を一定にするためのものでコンデンサ製造工程上必須とされるわけではない。尚、各電解液は水分含有量を抑えるために水分量を0.1重量%まで十分に精製したものを使用した。
【0078】
第1の方法は、上記したように、陽極箔と陰極箔の間に上記セパレータを挟み巻回しコンデンサ素子を形成したものを、105℃10分間の乾燥後、温度20℃±2℃、相対湿度40%±2%の大気圧雰囲気下でコンデンサ素子に電解液としてイオン液体30重量%とγ―ブチロラクトン70重量%、またはホウ素元素を含んだ錯塩30重量%とγ―ブチロラクトン70重量%、またはγ―ブチロラクトン系電解液を含浸し、アルミケースに入れ透湿性の低い素材を使用して封口し、アルミ電解コンデンサを得た。
得られたアルミ電解コンデンサは、63WV、270μFの仕様である。
【0079】
第2の方法は、上記したように、陽極箔と陰極箔の間に上記セパレータを挟み巻回しコンデンサ素子を形成したものに対して、導電性高分子を保持させ、105℃10分間の乾燥後、温度20℃±2℃、相対湿度40%±2%の大気圧雰囲気下で精製した電解液を含浸させ、50WV、100μFの電解コンデンサを作成した。
含浸させる電解液としては上記した第1の方法における電解液の組み合わせと同じものを使用した。
【0080】
耐熱性の評価は、1000個の素子を作製し、電気特性として等価直列抵抗(ESR)及び静電容量(C)、ショート不良率の各項目で検査を行い、表2にそれぞれ初期特性と熱劣化後の特性を示した。なお、測定条件は次の通りである。
【0081】
電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)は、20℃、100kHzの周波数でLCRメータによって測定した。静電容量(C)は、20℃、120Hzの周波数でLCRメータによって測定した。ショート不良率(%)については、テスターにより導通の有無を確認した。
【0082】
加熱劣化試験は、導電性高分子を用いない電解コンデンサについては、150℃の恒温槽で3000時間連続印加をおこなった。また電解液と導電性高分子の併用の電解コンデンサについては、135℃で2000時間の連続印加をおこなった。
【0083】
それぞれを20℃に復帰後、等価直列抵抗(ESR)、静電容量(C)、ショート不良率(%)を測定した。また電解質として導電性高分子を使用しない電解コンデンサは耐熱試験後にコンデンサ素子を分解後、内部のセパレータを観察した。それぞれのコンデンサのESR及び容量変化の目標値は20%以内とした。加速劣化試験における電気特性の変化を表1、表2に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】

〔実施例1〕
実施例1のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0087】
〔実施例2〕
実施例2のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0088】
〔実施例3〕
実施例3のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維40重量%」+「マニラ麻繊維60重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0089】
〔実施例4〕
実施例4のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維40重量%」+「マニラ麻繊維60重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0090】
〔実施例5〕
実施例5のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとして「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0091】
〔実施例6〕
実施例6のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとして「PVA繊維」20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0092】
〔実施例7〕
実施例7のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとして「パラアラミドフィブリッド20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0093】
〔実施例8〕
実施例8のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとして「ポリエステルバインダー繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0094】
〔実施例9〕
実施例9のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維30重量%」+「マニラ麻繊維67重量%」+バインダーとして「ポリアクリルアミド3重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0095】
〔実施例10〕
実施例10のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤として「シリカ」を添加した。
【0096】
〔実施例11〕
実施例11のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤として「ホウ酸」を添加した。
【0097】
実施例12以降は電解液と導電性高分子を用いる電解コンデンサの実施例である。
〔実施例12〕
実施例12のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0098】
〔実施例13〕
実施例13のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0099】
〔実施例14〕
実施例14のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリピロール」を用い、添加剤なしとした。
【0100】
〔実施例15〕
実施例15のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリピロール」を用い、添加剤なしとした。
【0101】
〔実施例16〕
実施例16のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維40重量%」+「マニラ麻繊維60重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0102】
〔実施例17〕
実施例17のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維40重量%」+「マニラ麻繊維60重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0103】
〔実施例18〕
実施例18のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0104】
〔実施例19〕
実施例19のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0105】
〔実施例20〕
実施例20のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとして「パラアラミドフィブリッド20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0106】
〔実施例21〕
実施例21のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとして「ポリエステルバインダー繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0107】
〔実施例22〕
実施例22のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維30重量%」+「マニラ麻繊維67重量%」+バインダーとして「ポリアクリルアミド3重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0108】
〔実施例23〕
実施例23のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、「シリカ」を添加した。
【0109】
〔実施例24〕
実施例24のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、「ホウ酸」を添加した。
【0110】
〔実施例25〕
実施例25のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリピロール」を用い、「シリカ」を添加した。
【0111】
〔実施例26〕
実施例26のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維70重量%」+「ポリケトン繊維30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、「ホウ酸」を添加した。
【0112】
次に従来例について示す。
〔従来例1〕
従来例1のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Bを「GBL」とし、添加剤として「フタル酸エチルジメチルアミン」を添加した。
【0113】
〔従来例2〕
従来例2のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bを「GBL」とし、添加剤は用いなかった。
【0114】
〔従来例3〕
従来例3のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤は用いなかった。
【0115】
〔従来例4〕
従来例4のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bを「GBL」とし、添加剤として「シリカ」を添加した。
【0116】
〔従来例5〕
従来例5のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bを「GBL」とし、添加剤として「ホウ酸」を添加した。
【0117】
〔従来例6〕
従来例6のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Bを「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0118】
〔従来例7〕
従来例7のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Bを「GBL」とし、導電性高分子として「ポリピロール」を用い、添加剤なしとした。
【0119】
〔従来例8〕
従来例8のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bを「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0120】
〔従来例9〕
従来例9のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bを「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0121】
〔従来例10〕
従来例10のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bを「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤としてシリカ」を添加した。
【0122】
〔従来例11〕
従来例11のセパレータは、「マニラ麻繊維」100%のセパレータとし、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bを「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤として「ホウ酸」を添加した。
【0123】
〔比較例1〕
比較例1のセパレータは、「マニラ麻繊維80重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0124】
〔比較例2〕
比較例2のセパレータは、「マニラ麻繊維80重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0125】
〔比較例3〕
比較例3のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維30重量%」+「マニラ麻繊維70重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0126】
〔比較例4〕
比較例4のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維30重量%」+「マニラ麻繊維70重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0127】
〔比較例5〕
比較例5のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0128】
〔比較例6〕
比較例6のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0129】
〔比較例7〕
比較例7のセパレータは、「アラミド繊維70重量%」+「パラアラミドフィブリッド30重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、添加剤なしとした。
【0130】
〔比較例8〕
比較例8のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維40重量%」+「マニラ麻繊維60重量%」の配合で作製し、電解液Bは「GBL」とし、添加剤として「フタル酸エチルジメチルアミン」を添加した。
【0131】
〔比較例9〕
比較例9のセパレータは、「マニラ麻繊維80重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0132】
〔比較例10〕
比較例10のセパレータは、「マニラ麻繊維80重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0133】
〔比較例11〕
比較例11のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維30重量%」+「マニラ麻繊維70重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0134】
〔比較例12〕
比較例12のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維30重量%」+「マニラ麻繊維70重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0135】
〔比較例13〕
比較例13のセパレータは、「フィブリル化アラミド繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0136】
〔比較例14〕
比較例14のセパレータは、「フィブリル化アラミド繊維50重量%」+「マニラ麻繊維30重量%」+バインダーとしての「PVA繊維20重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1、3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム」でアニオン「ボロジサリチル酸」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0137】
〔比較例15〕
比較例15のセパレータは、「アラミド繊維70重量%」+「パラアラミドフィブリッド30重量%」の配合で作製した。又、電解液Aは、カチオン「1−エチル−3−メチルイミダゾリウム」でアニオン「ジシアノアミド」、電解液Bは「GBL」とし、導電性高分子として「ポリエチレンジオキシチオフェン」を用い、添加剤なしとした。
【0138】
〔比較例16〕
比較例16のセパレータは、「フィブリル化ポリケトン繊維40重量%」+「マニラ麻繊維60重量%」の配合で作製し、電解液Bは「GBL」とし、添加剤として「フタル酸エチルジメチルアミン」を添加した。
【0139】
表1、表2において、加速劣化試験の合否を容量、ESR変化率20%未満、ショート不良率1%未満とする。この加速劣化試験によると、表1の従来例に示すセルロース系セパレータを用いて製造した電解液使用の電解コンデンサ(従来の電解コンデンサ)は、150℃の温度で3000時間相当で使用すると、ESRが増加し、容量が減少するという特性劣化を示した。コンデンサを分解するとセルロース系セパレータの繊維は部分溶解を始めていた。
【0140】
一方、表1の実施例のポリケトン系セパレータおよび比較例のアラミド系セパレータは150℃の温度で3000時間相当で使用してもセパレータは電解液浸漬前のものと比較しても外観に変化が無かった。電気特性を比較すると本発明のポリケトン系セパレータではESR、容量の変化が少なく、アラミド系セパレータの電気特性はセルロース系セパレータと同様にESRが増大し、容量が減少していた。このポリケトン系セパレータを用いた電気特性の維持は、一般のγ−ブチロラクトン系電解液でもみられた。
【0141】
表1に示すポリケトン系セパレータおよび比較例のアラミド系セパレータは、150℃の温度で3000時間相当で使用しても、セパレータは電解液浸漬前のものと比較しても、外観に変化が無かった。
【0142】
電気特性を比較すると、本実施例のポリケトン系セパレータでは、ESR、容量の変化が少なく、アラミド系セパレータの電気特性はセルロース系セパレータと同様にESRが増大し、容量が減少していた。このポリケトン系セパレータを用いた電気特性の維持は、一般のγ−ブチロラクトン系電解液でもみられた。
【0143】
本実施例で開示する電解コンデンサに用いるセパレータ構成成分として、セルロース繊維などの他の繊維を単一で使用することは難があるが、ポリケトン繊維を主成分として混抄する場合は、セルロース繊維なども配合することができる。
セパレータにセルロース繊維といった高い水分量をもつ繊維を配合する場合、その配合量はセパレータ全体に対するセルロース繊維からの吸湿性の影響を考慮する必要がある。
【0144】
配合割合の目安として、各実施例、各比較例のセパレータの平衡水分量を調べた。
温度20℃±2℃、相対湿度65%±2%の水分量を測定した結果を表1内に示す。
【0145】
得られた結果から実施例1〜9及び実施例12〜16の各セパレータは水分量が5%未満と低く、ESR変化率および容量変化率を小さくおさえることが可能であると分った。
【0146】
比較例3,比較例4及び比較例11、比較例12のようにセルロース繊維の配合量が70%以上となると平衡水分量が5%を超えてしまう。実施例9、実施例22のように吸湿性の低い成分との混合(本実施例ではポリアクリルアミド)により5%未満とすることが可能である。
【0147】
これらの結果から、水分量が5%未満であることが好ましく、更に好ましくは3%未満であることがわかった。また、この条件下で水分量の高いセパレータは、工業的に吸湿を抑えることは実用的でない。
【0148】
周知の通り大気圧下では、水の沸点は100℃で系外へ揮発する。しかしながら100℃をはるかに超える本試験では含水率が電気特性に影響を及ぼしている。これは、封口部材により素子内の水の系外への揮発が抑えられていること、高温により系内の水分との反応性が迅速であるためであると推察される。
【0149】
1)平衡水分量が5%以下と低いセパレータを用いると、電解液の寿命特性が良く、電気特性に優れる。
2)本実施例のセパレータの平衡水分量は5%未満である。
よって、本実施例のセパレータは、高温使用条件下で長寿命を要求される電解コンデンサ、特に電解液としてイオン液体、ホウ素元素を含んだ錯体を使用する電解コンデンサのセパレータの素材として適していることが分る。
【0150】
また、表21の実施例12〜実施例26に示したとおり電解液と導電性高分子の併用のアルミ電解コンデンサにおいても非固体の電解コンデンサと同様の良好な結果が得られた。
【0151】
更に、この実施例のセパレータと吸水剤やホウ酸を添加剤として併用することで、セパレータ以外の部材から混入する水分を抑制することが可能となり、より長寿命のコンデンサが得られ、更に好ましい形態となることがわかった。
【0152】
このことから、吸水剤、ホウ酸、ニトロ化合物、カップリング剤、ガス吸収剤や腐食抑制剤等の適切な添加により更なる長寿命化も期待できることが示唆された。
【0153】
以上説明したように、本実施の形態例のセパレータを使用することにより、高温及び長時間の使用環境下で、従来の電解コンデンサよりESR及び容量の変化率,ショート不良率が少なくなった。また、電解液と導電性高分子併用のアルミ電解コンデンサにおいても同様の効果が得られた。
【0154】
本実施の形態例及び各実施例のセパレータ、及び該セパレータを用いたコンデンサとすることにより、高温及び長時間の使用環境下で、ESR、容量の変化率及びショート不良率が少ない、優れたセパレータ及び該セパレータを用いたコンデンサを提供できる。
【0155】
また、電解液と導電性高分子併用のアルミ電解コンデンサにおいても同様の効果が得られた。本セパレータより好ましくは本セパレータと水分の混入に配慮した添加剤、封口部材を使用することで、電装部品全体の耐熱性向上および電装部品の設置場所の自由度を向上、集積化を可能にすることができる。
【0156】
また該セパレータの効果は、その他の非水条件が好まれ、含水により封口材料を劣化させるテトラフルオロホウ酸イオンやヘキサフルオロリン酸イオンを使用した電解コンデンサ及び電解液と導電性高分子併用の電解コンデンサへの使用や電気二重層コンデンサへの応用も期待することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を保持させてなるコンデンサの陽極と陰極の間に挿入して用いられるセパレータであって、
少なくともポリケトン系樹脂からなる合成繊維を含む不織布を含む構成としたことを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記ポリケトン系樹脂からなる合成繊維は、繰り返し単位の90%以上が一酸化炭素とオレフィンとの交互共重合体からなるポリケトン繊維であることを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
前記ポリケトン系樹脂からなる合成繊維の比表面積が0.2〜8.0m2/gの範囲であり、少なくとも一部がフィブリル化されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のセパレータ。
【請求項4】
前記ポリケトン系樹脂からなる合成繊維の平均繊維長が約0.01mm〜10mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項5】
ポリケトン系合成繊維を30重量%以上含み、且つ20℃、65%RHでの平衡水分量が5%未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項6】
ポリケトンカット繊維、パラアラミドフィブリッド、天然セルロース繊維、ポリアクリルアミド、湿熱融着樹脂であるポリビニルアルコールバインダー繊維より選択した1種または2種以上の組み合わせのバインダーを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のセパレータ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−192573(P2010−192573A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33814(P2009−33814)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(390032230)ニッポン高度紙工業株式会社 (41)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)