説明

セメントキルン抽気ガスの処理システム及び処理方法

【課題】セメントキルン排ガス流路より抽気した抽気ガスを処理するに際し、抽気ガス中の有機汚染物質を効果的に除去し、有機汚染物質の濃度を低減することなどを可能にする。
【解決手段】セメントキルン31の窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気するプローブ32と、プローブ32により抽気された抽気ガスG1から粗粉D1を分離するサイクロン34と、少なくとも150℃の耐熱性を有するとともに、有機汚染物質を分解除去する触媒機能を備えた触媒付高温バグフィルタ2とを備え、サイクロン34から排出される微粉D2を含む排ガスG2を150℃以上700℃以下の温度で触媒付高温バグフィルタ2に導入するセメントキルン抽気ガスの処理システム1。触媒付高温バグフィルタ2としては、セラミックフィルタを備えたバグフィルタを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より抽気した抽気ガスを処理するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント製造設備におけるプレヒータの閉塞等の問題を引き起こす原因となる塩素、硫黄、アルカリなどの中で、塩素が特に問題となることに着目し、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気して塩素を除去する塩素バイパスシステムが用いられている。
【0003】
この塩素バイパスシステムとは、例えば、特許文献1に記載のように、抽気した燃焼ガスを冷却した後、該排ガス中のダストを分級機により粗粉と微粉とに分離し、分離された塩素分(塩化カリウム・KCl)を多く含む微粉(塩素バイパスダスト)を回収するシステムである。
【0004】
この種の塩素バイパスシステムにおいては、例えば、図3に示すように、セメントキルン31の窯尻から最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路からの抽気ガスG1は、プローブ32において冷却ファン33からの冷風により冷却された後、サイクロン34に導入され、粗粉D1と、微粉D2を含む排ガスG2とに分離される。
【0005】
粗粉D1は、セメントキルン系に戻され、一方、微粉D2及び排ガスG2は、冷却器35において冷却ファン36からの冷風により150〜250℃に冷却された後、バグフィルタ37に導入される。そして、バグフィルタ37において、微粉D2(塩素バイパスダスト)が集塵され、ダストタンク38に回収されるとともに、バグフィルタ37からの排ガスG3が排気ファン39を経てセメントキルン系に戻されるか、排ガス処理後大気へ放出される。
【0006】
【特許文献1】国際公開第97/21638号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、従来の塩素バイパスシステムは、微粉D2を含む排ガスG2を、一旦、冷却器35で冷却し、その後、バグフィルタ37に導入するように構成されている。これは、バグフィルタ37の耐熱性(上限250℃程度)に対処したものであるが、微粉D2を含む排ガスG2を冷却すると、ダイオキシン類(PCDD、PCDF、co−PCB)などの残留性有機汚染物質(POPs)の濃度を増大させるという問題がある。
【0008】
すなわち、ダイオキシン類は、800℃以上の高温下で完全燃焼すれば熱分解できるものの、その後、300℃前後の温度領域にさらすと再合成するという性質を有する。ここで、サイクロン34、冷却器35において排ガスG2がダイオキシン類の再合成温度領域となるため、セメントキルンで熱分解されたダイオキシン類が、サイクロン34、冷却器35で再合成されることになる。特に、ガス中の微粉D2や塩素は、再合成反応の触媒として機能し、ダイオキシン類の発生を促進するため、有機汚染物質の濃度を大幅に増大させる虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、キルン排ガス流路より抽気した抽気ガスを処理する際に、抽気ガス中の有機汚染物質を効果的に除去することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、セメントキルン抽気ガスの処理システムであって、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気する抽気装置と、少なくとも150℃の耐熱性を有するとともに、有機汚染物質を分解除去する触媒機能を備えた固気分離装置とを備え、前記抽気装置により抽気された抽気ガスを前記固気分離装置に導入することを特徴とする。尚、有機汚染物質とは、ダイオキシン類(PCDD、PCDF、co−PCB)、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)などの残留性有機汚染物質(POPs)や、ダイオキシン類の前駆体、揮発性有機汚染物質(VOC)などをいう。
【0011】
そして、本発明において、固気分離装置の高耐熱性を積極的に利用する場合には、抽気装置により抽気した抽気ガスを高い温度に保った状態で固気分離装置に導入することで、抽気ガスの温度がダイオキシン類の再合成温度を下回るのを回避し、固気分離装置の前段でダイオキシン類が再合成されるのを抑制することができる。これに加え、固気分離装置の触媒機能により、抽気ガス中に存在する有機汚染物質を除去することもできるため、有機汚染物質の濃度を大幅に低減することが可能になる。
【0012】
一方、固気分離装置の触媒機能を積極的に利用する場合には、抽気装置により抽気された抽気ガスを触媒活性の適温に調温することで、固気分離装置の触媒機能を有効に機能させ、抽気ガス中に存在する有機汚染物質を除去することができる。この際、固気分離装置が高耐熱性を併せ持つことから、固気分離装置の耐熱性の制約を受けることなく、抽気ガスを自由に調温することができる。従って、抽気ガスを触媒活性に最適な温度に調温することができ、有機汚染物質を効果的に除去することが可能になる。
【0013】
また、固気分離装置の高耐熱性又は触媒機能のいずれを積極的に利用するかに関わらず、固気分離機能と触媒機能を一つの装置に集約しているため、各々別々の装置とした場合に比較してシステム構成を簡略化することができ、設備コストや保守管理コストの削減を図ることも可能になる。
【0014】
上記セメントキルン抽気ガスの処理システムにおいて、前記固気分離装置を、有機汚染物質を分解除去する触媒を付与したセラミックフィルタを備え、該フィルタに触媒機能と固気分離機能を一体化した固気分離装置とすることができる。通常、セラミックフィルタは、900℃程度の耐熱性を有するため、上記の耐熱条件を満足し、本発明にかかる固気分離装置として、好適に用いることができる。
【0015】
上記セメントキルン抽気ガスの処理システムにおいて、前記抽気装置により抽気された抽気ガスを150℃以上700℃以下の温度で前記固気分離装置に導入することができる。
【0016】
上記セメントキルン抽気ガスの処理システムにおいて、前記固気分離装置の前段に、該固気分離装置の排ガスから熱回収する熱交換器を備え、抽気されたガスを150℃以上500℃以下に調温した後に前記固気分離装置に導入することができ、これによれば、固気分離前の排ガスから熱回収して他の用途等に有効活用することができるとともに、固気分離装置の触媒機能を有効に機能させることができる。
【0017】
上記セメントキルン抽気ガスの処理システムにおいて、前記固気分離装置の後段に、該固気分離装置の排ガスから熱回収する熱交換器を備えることができ、これによれば、固気分離後の排ガス中に残存する熱エネルギーを回収して他の用途に有効活用することができる。
【0018】
上記セメントキルン抽気ガスの処理システムにおいて、前記抽気装置により抽気された抽気ガスから粗粉を分離する分級機を備え、該分級機から排出される微粉を含む抽気ガスを前記固気分離装置に供給することができる。
【0019】
上記セメントキルン抽気ガスの処理システムにおいて、前記分級機と前記固気分離装置の間に脱硫剤を吹き込むことができ、触媒装置の硫黄による腐食を防止することができる。
【0020】
また、本発明は、セメントキルン抽気ガスの処理方法であって、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気した抽気ガスを、少なくとも150℃の耐熱性を有するとともに、有機汚染物質を分解除去する触媒機能を備えた固気分離装置に導入し、固気分離することを特徴とする。本発明によれば、前記発明と同様に、抽気ガス中の有機汚染物質を有効に除去することなどが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、キルン排ガス流路より抽気した抽気ガスを処理するに際して、抽気ガス中の有機汚染物質を効果的に除去し、有機汚染物質の濃度を低減することなどが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明にかかるセメントキルン抽気ガスの処理システムの第1の実施形態を示し、この処理システム1は、大別して、セメントキルン31の窯尻から最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気する抽気プローブ32と、プローブ32に冷風を供給する冷却ファン33と、プローブ32で抽気した抽気ガスG1に含まれる粗粉D1を分離する分級機としてのサイクロン34と、サイクロン34から排出された微粉D2を含む排ガスG2を固気分離する触媒付高温バグフィルタ2と、触媒付高温バグフィルタ2で集塵された微粉(塩素バイパスダスト)D2を回収するダストタンク38と、排気ファン39を通じて誘引された触媒付高温バグフィルタ2の排ガスG3から熱回収する熱交換器3などから構成される。
【0024】
尚、上記の構成のうち、触媒付高温バグフィルタ2及び熱交換器3以外の設備については、従来の塩素バイパスシステムで用いられる設備と同様のものである。また、これらに関し、図1においては、図3で付した符号と同一の符号を付す。
【0025】
触媒付高温バグフィルタ2は、例えば、セラミックフィルタを備えたバグフィルタであり、900℃程度までの耐熱性を有する高耐熱型の固気分離装置である。こうしたバグフィルタとしては、ハニカムセル化した棒状のセラミック管(セラミックフィルタ)を複数配列したものや、シート状のセラミックフィルタを用いたものなど、様々なタイプのものが開発されているが、本発明においては、排ガスG2中から0.1μm以上の微細粒子を集塵し得るものであれば、いずれのものであってもよい。
【0026】
また、セラミックフィルタには、ダイオキシン類(PCDD、PCDF、co−PCB)及びポリ塩化ビフェニル(PCBs)などの残留性有機汚染物質(POPs)や、ダイオキシン類の前駆体(出発物質)、揮発性有機汚染物質(VOC)などを分解除去する触媒が付与される。セラミックフィルタへの触媒の付与は、セラミックフィルタの表面に触媒層をコーティングしたり、セラミック素材と触媒金属を織り交ぜてセラミックフィルタを成形する(フィルタ中に触媒を埋め込む)など、種々の方法があるが、特に限定されるものではない。
【0027】
触媒は、有機汚染物質を分解除去し得るものであれば、既存のものから適宜選択することができるが、例えば、酸化物系触媒としてチタンバナジウム触媒を用い、貴金属系触媒として白金又はパラジウム触媒等を用いることができる。ここで、チタンバナジウム系触媒とは、チタン(Ti)及びバナジウム(V)を必須とする触媒を意味する。この触媒は、有機汚染物質の分解除去に高い機能を発揮する他、有害物質であるNOxの高い分解活性(脱硝活性)を有する。
【0028】
尚、プローブ32から抽気した直後の抽気ガスG1の温度は、通常、700℃以下であるため、触媒付高温バグフィルタ2において、必ずしも900℃程度までの耐熱性を有する必要はなく、少なくとも700℃までの耐熱性があれば十分である。
【0029】
また、硫黄による触媒の腐食を防止するため、サイクロン34と触媒付高温バグフィルタ2を連結する管路2a上に噴霧機4を設置し、必要に応じて脱硫剤を添加してもよい。脱硫剤としては、消石灰、生石灰、仮焼したセメント原料(プレヒータの最下段サイクロンなどから分取したセメント原料)、石炭灰、苛性ソーダなどを用いることができる。また、脱硫に適したガス水分にするための調湿(スプレーなど)を行うことができる。
【0030】
熱交換器3は、触媒付高温バグフィルタ2から排出される排ガスG3から熱回収し、排ガスG3の熱エネルギーを有効活用するために備えられる。この熱交換器3の内部には、熱媒を循環させるための管路3aが設けられる。管路3aは、図示しない原料ミルや汚泥乾燥用の乾燥機等に接続され、排ガスG3から回収された熱は、原料乾燥や汚泥乾燥のための熱源として有効利用される。
【0031】
次に、上記処理システム1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0032】
セメントキルン31の窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部をプローブ32によって抽気すると同時に、冷却ファン33からの冷風によって、塩素化合物の融点である700℃以下にまで急冷する。次いで、サイクロン34において、プローブ32から排気される抽気ガスG1を、粗粉D1と、微粉D2を含む排ガスG2とに分離し、粗粉D1をセメントキルン系に戻す。
【0033】
その一方で、150〜700℃の排ガスG2を触媒付高温バグフィルタ2に導入するが、前述のとおり、触媒付高温バグフィルタ2は、900℃程度までの耐熱性を有するため、サイクロン34から供給された排ガスG2をそのままの温度状態で固気分離することができる。このため、排ガスG2をダイオキシン類の再合成温度より高い温度に維持したまま、固気分離処理のための装置に導入することができ、固気分離処理の前段でのダイオキシン類の発生を抑制することができる。また、触媒付高温バグフィルタ2は、有機汚染物質の分解機能も有するため、セメントキルン31内で熱分解し切れなかった有機汚染物質や、ガス処理過程で僅かに発生した有機汚染物質を除去することもできる。
【0034】
次いで、触媒付高温バグフィルタ2において、排ガスG2中の微粉D2を集塵してダストタンク38に回収するとともに、排気ファン39によって、触媒付高温バグフィルタ2の排ガスG3を誘引し、セメントキルン排ガス系に戻したり、セメント原料や汚泥等の乾燥熱源として利用した後大気に放出する。また、熱交換器3に導入し、熱交換器3において、排ガスG3から熱回収するとともに、回収した熱を乾燥・粉砕工程やボイラーなどに有効利用することもできる。その後、熱交換器3からの排ガスG4は、排気ファン(不図示)を介してセメントキルン系に戻してもよいし、大気に放出してもよい。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、サイクロン34の後段に触媒付高温バグフィルタ2を配置するため、サイクロン34から排出された際の温度状態(150〜700℃)を維持したまま、排ガスG2を固気分離することができる。このため、微粉D2と排ガスG2が混在し、ダイオキシン類が再合成され易い環境下において、ダイオキシン類の再合成を抑制することができ、有機汚染物質の発生を抑制することが可能になる。
【0036】
また、触媒機能を備えた高温バグフィルタを用いるため、排ガスG2中に存在する有機汚染物質を分解除去することができ、排ガスG3のより一層の無害化を図ることが可能になる。さらに、別途に触媒装置等を設ける必要もなくなるため、システム構成を簡略化することができ、設備コストや保守管理コストの削減を図ることが可能になる。
【0037】
さらに、触媒付高温バグフィルタ2の高温ガスをそのままセメント原料や汚泥の乾燥に有効利用することができる。また、この高温ガスを熱交換器3を導入し、熱交換器3において排ガスG3から熱回収するとともに、回収した熱を乾燥・粉砕工程やボイラーなどに有効利用することもできる。
【0038】
尚、触媒付高温バグフィルタ2の前段において、排ガスG2がダイオキシン類の再合成温度(300℃程度)になる場合には、ダイオキシン類の再合成を招くことになるが、この場合でも、触媒付高温バグフィルタ2側の触媒機能により、再合成されたダイオキシン類を有効に分解除去することができる。
【0039】
次に、本発明にかかるセメントキルン抽気ガスの処理システムの第2の実施形態について、図2を参照しながら説明する。尚、同図において、図1の処理システム1と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
同図に示すように、この処理システム10は、大別して、プローブ32と、冷却ファン33と、サイクロン34と、サイクロン34から排出された微粉D2を含む排ガスG2を所定の温度に調温する調温装置11と、触媒付高温バグフィルタ2と、ダストタンク38などから構成され、サイクロン34と触媒付高温バグフィルタ2との間に調温装置11を備える点で、図1に示す処理システム1と相違する。
【0041】
図1に示す処理システム1においては、微粉D2を含む状態での排ガスG2を高い温度に保ち、ダイオキシン類の再合成を抑制したが、本実施の形態にかかる処理システム10は、触媒付高温バグフィルタ2の前段において、排ガスG2の温度を触媒活性に適した温度に調温し、触媒付高温バグフィルタ2での有機汚染物質の分解機能を有効に機能させることで、有機汚染物質の発生を抑制する。
【0042】
調温装置11は、上記のとおり、微粉D2を含む排ガスG2を触媒付高温バグフィルタ2の触媒活性に適した温度に調温するために備えられる。POPsやVOCなどの有機汚染物質を分解除去するにあたっての触媒活性温度は、150〜500℃程度であり、好ましくは230〜270℃であることから、調温装置11は、排ガスG2の温度がそれらの範囲内に属するように調温する。調温装置11としては、サイクロン34から排出される400〜600℃のガスを上記の温度範囲内に調節できるものであれば、特に限定されるものではなく、図1に示す熱交換器3や、図3に示す冷却器35などを用いることができる。
【0043】
次に、上記処理システム10の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0044】
サイクロン34において、抽気ガスG1から粗粉D1を分離した後、サイクロン34から排出される微粉D2を含む排ガスG2を、調温装置11により150〜500℃に調温する。そして、調温した排ガスG2を触媒付高温バグフィルタ2に導入し、排ガスG2から微粉D2を集塵しつつ、排ガスG2中に存在する有機汚染物質を分解除去する。
【0045】
尚、触媒付高温バグフィルタ2の前段において、排ガスG2をダイオキシン類の再合成温度(300℃程度)に調温した場合には、ダイオキシン類の再合成を招くことになるが、この場合でも、触媒付高温バグフィルタ2側の触媒機能により、再合成されたダイオキシン類を有効に分解除去することができる。
【0046】
次いで、触媒付高温バグフィルタ2で集塵した微粉D2をダストタンク38に回収するとともに、触媒付高温バグフィルタ2の排ガスG3を排気ファン39を通じて誘引し、セメントキルン系に戻したり、大気に放出する。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、触媒付高温バグフィルタ2の前段において、排ガスG2の温度を触媒活性に適した温度に調温し、触媒付高温バグフィルタ2の有機汚染物質の分解機能を有効に機能させるため、固気分離処理の段階で、排ガスG2中の有機汚染物質を除去することが可能になる。
【0048】
特に、本実施の形態においては、高耐熱型のバグフィルタを用いるため、触媒活性の適温の上限値(500℃)よりもバグフィルタの耐熱温度を高くすることができる。従って、バグフィルタの耐熱性(図3に示す従来のバグフィルタ37であれば、250℃程度)の制約を受けることなく、排ガスG2を自由に調温することができ、有機汚染物質を効果的に除去することが可能になる。
【0049】
尚、上記の第1及び第2の実施形態においては、いずれも、サイクロン34で粗粉D1を分離した後に、微粉D2を含む排ガスG2を触媒付高温バグフィルタ2に導入するが、サイクロン34を設けることなく、プローブ32で抽気した抽気ガスG1を触媒付高温バグフィルタ2に直接導入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明にかかるセメントキルン抽気ガスの処理システムの第1の実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明にかかるセメントキルン抽気ガスの処理システムの第2の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】従来のセメントキルン抽気ガスの処理システムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 セメントキルン抽気ガスの処理システム
2 触媒付高温バグフィルタ
2a 管路
3 熱交換器
3a 管路
4 噴霧機
10 セメントキルン抽気ガスの処理システム
11 調温装置
31 セメントキルン
32 プローブ
33 冷却ファン
34 サイクロン
38 ダストタンク
39 排気ファン
G1 抽気ガス
G2〜G4 排ガス
D1 粗粉
D2 微粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気する抽気装置と、
少なくとも150℃の耐熱性を有するとともに、有機汚染物質を分解除去する触媒機能を備えた固気分離装置とを備え、
前記抽気装置により抽気された抽気ガスを前記固気分離装置に導入することを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理システム。
【請求項2】
前記固気分離装置は、有機汚染物質を分解除去する触媒を付与したセラミックフィルタを備え、該フィルタに触媒機能と固気分離機能を一体化した固気分離装置であることを特徴とする請求項1に記載のセメントキルン抽気ガスの処理システム。
【請求項3】
前記抽気装置により抽気された抽気ガスを150℃以上700℃以下の温度で前記固気分離装置に導入することを特徴とする請求項1又は2に記載のセメントキルン抽気ガスの処理システム。
【請求項4】
前記固気分離装置の前段に、該固気分離装置の排ガスから熱回収する熱交換器を備え、抽気されたガスを150℃以上500℃以下に調温した後に前記固気分離装置に導入することを特徴とする請求項1又は2に記載のセメントキルン抽気ガスの処理システム。
【請求項5】
前記固気分離装置の後段に、該固気分離装置の排ガスから熱回収する熱交換器を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセメントキルン抽気ガスの処理システム。
【請求項6】
前記抽気装置により抽気された抽気ガスから粗粉ダストを分離する分級機を備え、
該分級機から排出される微粉を含む抽気ガスを前記固気分離装置に供給することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセメントキルン抽気ガスの処理システム。
【請求項7】
前記分級機と前記固気分離装置の間に脱硫剤を吹き込むことを特徴とする請求項6に記載のセメントキルン抽気ガスの処理システム。
【請求項8】
セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、
該抽気した抽気ガスを、少なくとも150℃の耐熱性を有するとともに、有機汚染物質を分解除去する触媒機能を備えた固気分離装置に導入し、固気分離することを特徴とするセメントキルン抽気ガスの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−298677(P2009−298677A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157799(P2008−157799)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】