説明

セメント焼成用バーナ

【課題】バーナ間に生じる熱応力の影響を低減することができるセメント焼成用バーナを提供する。
【解決手段】主燃料を供給する主バーナ10と、主バーナ10の鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナ11とを有するセメント焼成用バーナ1であって、主バーナ10及び廃棄物バーナ11は、互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを焼成するバーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント焼成用バーナとして、セメントクリンカを焼成するセメントロータリーキルンに採用されるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載のセメント焼成用バーナは、ロータリーキルン内に挿入され微粉炭を供給する主バーナと、廃プラスチック材料等の粉砕粒子を供給する補助燃料バーナとを備えている。補助燃料バーナは、主バーナの上面側に戴置固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第433226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のセメント焼成用バーナにあっては、バーナそれぞれが互いに固定されているため、熱膨張率の違いに起因してバーナそれぞれに不要な熱応力が加わり、バーナの配置がずれたりバーナが変形したりするおそれがある。バーナの配置のずれやバーナの変形は、火炎を不安定とし、セメントクリンカの焼成に悪影響を与える場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、バーナ間に生じる熱応力の影響を低減することができるセメント焼成用バーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係るセメント焼成用バーナは、主燃料を供給する主バーナと、前記主バーナの鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナとを有するセメント焼成用バーナであって、前記主バーナ及び前記廃棄物バーナは、互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられていることを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係るセメント焼成用バーナによれば、主バーナとその鉛直上方に配置された廃棄物バーナとが、互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられている。このため、主バーナと廃棄物バーナとの間に生じる熱応力の影響を低減することができる。
【0008】
ここで、前記主バーナの鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定し、前記主バーナを支持する主バーナ支持手段と、前記主バーナ支持手段とは独立して設けられ、前記廃棄物バーナの鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定する廃棄物バーナ支持手段と、を備えてもよい。
【0009】
また、前記廃棄物バーナを冷却する冷却手段を備えてもよい。冷却手段により廃棄物バーナが冷却されることで、主バーナと廃棄物バーナとの間に生じる熱膨張量の差が大きくなった場合であっても、主バーナと廃棄物バーナとの間に生じる熱応力の影響を低減することができる。
【0010】
また、前記廃棄物バーナの鉛直荷重は、前記廃棄物バーナ支持手段及び前記主バーナで受け持つことが好適である。このように構成することで、廃棄物バーナ支持手段の負担を軽減させることが可能となり、廃棄物バーナ支持手段を小型化することができる。
【0011】
さらに、前記廃棄物バーナの鉛直上方に設けられ、他の燃料を供給する他燃料バーナを備えてもよい。このように構成することで、主バーナの火炎と他燃料バーナの火炎とで可燃性廃棄物を挟み込んで可燃性廃棄物の燃焼のばらつきを抑制することができる。よって、可燃性廃棄物の燃焼性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バーナ間に生じる熱応力の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るセメント焼成用バーナを用いた装置の構成を示す概要図である。
【図2】図1のセメント焼成用バーナの一部拡大断面図及び正面図である。
【図3】図1のセメント焼成用バーナの支持部を説明する概略図である。
【図4】第2実施形態に係るセメント焼成用バーナの一部拡大断面図及び正面図である。
【図5】図4のセメント焼成用バーナの作用効果を説明する概要図である。
【図6】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【図7】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【図8】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【図9】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【図10】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【図11】セメント焼成用バーナの変形例における一部拡大断面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るセメント焼成用バーナを用いた装置の構成を示す概要図である。図1に示す装置は、セメント製造装置の一部であり、クリンカ焼成工程で用いられるものである。
【0016】
図1に示すように、クリンカ焼成工程に採用される装置は、略円柱状の回転窯であるロータリーキルン3を備えている。ロータリーキルン3は、セメント原料を焼成しクリンカを生成する。ロータリーキルン3は、窯尻(入口)から窯前(出口)へセメント原料が移動するように傾斜配置されている。ロータリーキルン3の窯尻側には、セメント原料を予備的に加熱するサイクロンを有する予熱部4及びセメント原料を仮焼する仮焼炉5が接続されており、予熱及び仮焼されたセメント原料がロータリーキルン3内部に供給される。キルン内部に供給されたセメント原料は、仮焼されながらロータリーキルン3の回転に応じて窯前側へ移動し、焼成されたクリンカとして排出される。排出されたクリンカは、ロータリーキルン3の窯前側に設けられた冷却部6により冷却される。
【0017】
ここで、ロータリーキルン3の窯前側には、炉外からロータリーキルン3内部(炉内)へセメント焼成用バーナ1が挿入されて配置されている。図2の(A)は、セメント焼成用バーナ1の一部拡大断面図であり、図2の(B)は、セメント焼成用バーナ1の正面図である。図2に示すように、セメント焼成用バーナ1は、炉壁20を貫通して炉内へ挿入されている。セメント焼成用バーナ1は、主燃料を供給する主バーナ10を備えている。この主バーナ10は、炉外に設けられ鉛直方向下側から支持する主バーナ支持部(主バーナ支持手段)31によって、鉛直方向及び水平方向が拘束かつ固定されて支持されている。主バーナ10は、その表面が耐火物12によって覆われており、耐火物12と一体的に形成されている。例えば、主バーナ10に溶接されたスタッドを埋め込むように耐火物15を施工することによって互いに固定されて形成されている。なお、主バーナ10により供給される主燃料としては、例えば石炭(微粉炭)が用いられる。
【0018】
また、主バーナ10の鉛直上方には、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナ11が炉外からロータリーキルン内部(炉内)へ挿入されて配置されている。この廃棄物バーナ11は、炉外に主バーナ支持部31とは独立して設けられ、鉛直方向上側から支持する廃棄物バーナ支持部(廃棄物バーナ支持手段)30によって、鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定され、この廃棄物バーナ支持部30により鉛直方向荷重を支持されている。図3は、セメント焼成用バーナの支持部を説明する概略図であり、図3に示すように、主バーナ10と廃棄物バーナ11とが、それぞれ独立に設けられた主バーナ支持部31及び廃棄物バーナ支持部30によって支持される。また、廃棄物バーナ11は、耐火物12に形成された貫通孔12aに挿入され、主バーナ10の表面を覆う耐火物12上であって、この耐火物12に対し軸方向に(主バーナ10の軸方向に)相対移動可能に設けられている。また、耐火物12の貫通孔12aの内径は、廃棄物バーナ11の外径よりも大きく形成(例えば5〜10mm)されている。また、廃棄物バーナ11により供給される可燃性廃棄物としては、例えば廃プラスチック等が用いられる。
【0019】
次に、作用効果について説明する。ロータリーキルン3内の熱放射によって、ロータリーキルン3内部に配置されたセメント焼成用バーナ1は高温となる。ここで、ロータリーキルン3の主バーナ10と廃棄物バーナ11とは配置位置が異なり、また熱膨張率が異なる場合もあるため、主バーナ10と廃棄物バーナ11とは熱膨張量が異なるおそれがある。特に、主バーナ10の下面側は、ロータリーキルン3の窯前におけるクリンカ放射熱の影響を強く受けるため、熱膨張量の差異は一層大きくなる。
【0020】
したがって、従来のセメント焼成用バーナのように、主バーナ10と廃棄物バーナ11とが一体的に構成され、互いに固定されている場合には、熱膨張量の差異によって周囲を覆う耐火物12に亀裂が発生し、又は、廃棄物バーナ11が変形するおそれがある。
【0021】
これに対して、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1では、主バーナ10とその鉛直上方に配置された廃棄物バーナ11とが、独立した支持部によって支持されつつ互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられている。このため、実操業中に、主バーナ10と廃棄物バーナ11とで熱膨張量に差異がある場合であっても、廃棄物バーナ11が耐火物12の貫通孔12a内部をスライドすることが可能となる。このため、耐火物12の破損を抑制し、又は、廃棄物バーナ11の配置ずれや変形を抑制し、バーナ間に生じる熱応力の影響を低減することが可能となる。さらに、廃棄物バーナ11の耐久性を向上させることができるとともに、簡易な構成で廃棄物バーナ11を支持し、経済性にも優れた構成とすることができる。
【0022】
さらに、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1によれば、廃棄物バーナ11の鉛直荷重の一部を主バーナ10が受け持つことが可能となり、廃棄物バーナ支持部30に加わる負担を低減することが可能となる。従って、廃棄物バーナ支持部30の小型化を図ることができる。
【0023】
[第1実施形態の効果]
(1)主燃料を供給する主バーナと、主バーナの鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナとを有するセメント焼成用バーナであって、主バーナ及び廃棄物バーナは、互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられていることとした。
(2)また、主バーナの鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定し、主バーナを支持する主バーナ支持手段と、主バーナ支持手段とは独立して設けられ、廃棄物バーナの鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定する廃棄物バーナ支持手段と、を備えることとした。
これにより、主バーナ10と廃棄物バーナ11とで熱膨張量に差異がある場合であっても、廃棄物バーナ11が耐火物12の貫通孔12a内部を鞘内部のように機能させてスライドすることが可能となる。このため、耐火物12の破損を抑制し、又は、廃棄物バーナ11の配置ずれや変形を抑制することができる。よって、バーナ間に生じる熱応力の影響を低減することができる。また、主バーナ支持部31と廃棄物バーナ支持部30をそれぞれ独立して設け、主バーナ10と廃棄物バーナ11とを別支持とすることで、さらにスライドを促進することができる。
(4)廃棄物バーナの鉛直荷重は、廃棄物バーナ支持手段及び主バーナで受け持つこととした。これにより、廃棄物バーナ11の鉛直荷重の一部を主バーナ10が受け持つことが可能となる。よって、廃棄物バーナ支持部30に加わる負担を低減し、廃棄物バーナ支持部30の小型化を図ることができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。図4は、セメント焼成用バーナの一部拡大断面図及び正面図である。図4に示すセメント焼成用バーナ2は、第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1とほぼ同様に構成されており、相違点を中心に説明する。なお、図4中において、炉外に配置されたバーナ支持部は省略している。
【0025】
図4に示すように、セメント焼成用バーナ2は、廃棄物バーナ11の鉛直上方に配置され主燃料とは異なる他燃料を供給する他燃料バーナ40を備えている。他燃料バーナ40は、主バーナ支持部31及び廃棄物バーナ支持部30とは独立して炉外に設けられた他燃料バーナ支持部(不図示)によって、鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定され、耐火物12に形成された貫通孔12bに対し相対移動可能に挿入されている。また、他燃料バーナ40により供給される他燃料としては、例えば肉骨粉等、可燃性廃棄物よりも燃焼性の良好な燃料が用いられる。
【0026】
このように、第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2では、主バーナ10、主バーナ10の鉛直上方に配置された廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40が、独立した支持部によって支持されつつ互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられている。このため、実操業中に、主バーナ10、廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40のそれぞれの熱膨張量に差異がある場合であっても、廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40のそれぞれが耐火物12の貫通孔12a,12b内部をスライドすることが可能となる。これにより、バーナ間に生じる熱応力の影響を低減し、耐火物12の破損を抑制し、又は、廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40の配置ズレや変形を抑制して耐久性を向上させることができる。さらに、簡易な構成で廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40を支持し、経済性にも優れた構成とすることができる。
【0027】
また、図5は、セメント焼成用バーナ2の作用効果を説明する概要図である。第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2では、廃棄物バーナ11の上下を、可燃性廃棄物よりも燃焼速度の速い燃料を用いた主バーナ10及び他燃料バーナ40で挟み込んだ構成としている。図中では、簡略化のため、各バーナの配置のみを表示している。また、廃棄物バーナ11からは廃プラスチックが吹き出され、主バーナ10からは廃プラスチックよりも燃焼速度の速い微粉炭、他燃料バーナ40からは廃プラスチックよりも燃焼速度の速い肉骨粉が吹き出されているものとする。
【0028】
図5に示すように、3つのバーナのうち最下部に位置する主バーナ10から吹き出された微粉炭、及び最上部に位置する他燃料バーナ40から吹き出された肉骨粉の燃焼タイミングは、中間部に位置する廃棄物バーナ11から吹き出された廃プラスチックの燃焼タイミングよりも相対的に早い。このため、廃プラスチックは、主バーナ10及び他燃料バーナ40の火炎によって上下から同時に高温で加熱されるため、主バーナ10及び廃棄物バーナ11のみでセメント焼成用バーナを構成する場合に比べて迅速に廃プラスチックを燃焼することができる。
【0029】
ところで、主バーナ10及び廃棄物バーナ11のみでセメント焼成用バーナを構成する場合には、廃プラスチックが下側のみ加熱され、上側からは加熱されないため、上側の廃プラスチックの燃焼が遅れるおそれがある。また、廃プラスチックは破砕されたものが採用されるが、大きさにばらつきがあるため、燃焼にばらつきが生じるおそれがある。さらに、廃プラスチックにカーボン繊維等の難燃性材料が混入している場合には、燃焼のばらつきが一層生じるおそれがある。このように、廃プラスチックの燃焼性にばらつきが存在する場合には、吹き出された廃プラスチックは、ロータリーキルン3の空間内で完全に燃焼せずにロータリーキルン3の下側に着地して燃え続け(着地燃焼)、セメント焼成に悪影響を与えるおそれがある。このため、主バーナ10及び廃棄物バーナ11のみでセメント焼成用バーナを構成する場合には、吹き込む廃プラスチックの種類や量を制限する必要がある。
【0030】
これに対して、第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2によれば、廃プラスチックは、主バーナ10及び他燃料バーナ40の火炎によって上下から同時に高温で加熱されるため、上側の廃プラスチックの燃焼遅れを改善し均一性に優れた燃焼を実現することができる。また、上下で加熱することにより廃プラスチックの燃焼性が向上するので、ロータリーキルン3の下側における着地燃焼を低減させるとともに、多種多量の廃プラスチックを可燃性廃棄物として採用することができる。
【0031】
[第2実施形態の効果]
(5)廃棄物バーナの鉛直上方に設けられ、他の燃料を供給する他燃料バーナを備えることとした。これにより、廃プラスチックを上下から同時に高温で加熱し、上側の廃プラスチックの燃焼遅れを改善し均一性に優れた燃焼を実現することができる。また、廃プラスチックの燃焼性が向上するため、ロータリーキルン3の下側における着地燃焼を低減させるとともに、多種多量の廃プラスチックを可燃性廃棄物として採用することができる。
【0032】
上述した第1実施形態では、主バーナ10及び廃棄物バーナ11が一体的に形成された耐火物12によって保護されている例を説明したが、これに限られるものではない。
【0033】
(変形例1)
図6の変形例1では、廃棄物バーナ11を冷却する冷却機構を備えている。なお、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0034】
図6に示すように、主バーナ10及び廃棄物バーナ11は、それぞれの周囲に耐火物を備えていない。そして、主バーナ10と廃棄物バーナ11との間には、耐熱材17が配置されている。主バーナ10及び廃棄物バーナ11は、互いに固定されることなく配置され、主バーナ10及び廃棄物バーナ11は、独立した支持部によって支持されつつ互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられている。このため、実操業中に、主バーナ10と廃棄物バーナ11とで熱膨張量に差異がある場合であっても、廃棄物バーナ11が耐熱材17上をスライドすることが可能となる。
【0035】
このように、一体的に形成された耐火物を用いなくても第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1と同様の効果を奏することができる。また、図6に示す変形例では、セメント焼成用バーナ1が廃棄物バーナ11の冷却機構を備えるため、主バーナ10と廃棄物バーナ11との間に生じる熱膨張量の差が一層大きくなる。このような場合、バーナ間に生じる熱応力の影響を低減することができるという効果を一層奏することが可能となる。また、このような冷却機構を第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2に採用してもよい。また、冷却用の媒体は空気に限定されるものではなく、水であってもよい。
【0036】
また、上述した第1実施形態では、炉外に配置された主バーナ支持部31及び廃棄物バーナ支持部30について説明したが、各バーナ支持部の設置態様はこれに限られるものではない。例えば、図6に示すように、廃棄物バーナ支持部30が鉛直方向下側から廃棄物バーナ11を支持するものであってもよい。また、図7〜9に示すように、廃棄物バーナ支持部30が炉壁20から離れた場所に固定部を介して配置されてもよい。例えば、図7に示すように、炉外であって廃棄物バーナ11の鉛直上方かつ炉壁20から離間した位置に、固定部21が配置されている。主バーナ支持部31及び廃棄物バーナ支持部30は、固定部21に設けられており、主バーナ10及び廃棄物バーナ11をそれぞれ吊り下げて支持している。また、図8に示すように、炉外であって主バーナ10と廃棄物バーナ11との間で、かつ炉壁20から離間した位置に、固定部21が配置されている。主バーナ支持部31及び廃棄物バーナ支持部30は、固定部21に設けられており、主バーナ10を吊り下げて支持するとともに、廃棄物バーナ11を鉛直下方から支持している。また、図9に示すように、炉外であって廃棄物バーナ11の鉛直上方かつ炉壁20から離間した位置に、固定部21が配置され、炉外であって主バーナ10の鉛直上方かつ炉壁20から離間した位置に、固定部22が配置されている。主バーナ支持部31及び廃棄物バーナ支持部30は、固定部22,21にそれぞれ設けられており、主バーナ10及び廃棄物バーナ11をそれぞれ吊り下げて支持している。このように各バーナ支持部は、炉外に配置されていればよく、設置態様に限定されるものではない。
【0037】
[変形例1の効果]
(3)廃棄物バーナを冷却する冷却手段を備えることとした。この場合、廃棄物バーナと廃棄物バーナとの熱膨張率の差が大きくなるため、上記(1)の効果がより顕著となる。
【0038】
(変形例2)
以下では、図10,11を用いて、第2実施形態の変形例を説明する。図10,11は、セメント焼成用バーナ2が、円形以外の径方向断面形状である廃棄物バーナ11を備えるとともに、耐火物が一体的でない変形例を示している。
【0039】
図10,11に示すように、主バーナ10の鉛直上方に配置された廃棄物バーナ11は、その径方向断面形状が矩形であって、主バーナ10の周囲には耐火物19が設けられている。また、廃棄物バーナ11の周囲には、耐火物19と独立した耐火物18が設けられている。さらに、耐火物18の貫通孔18bに他燃料バーナ40が挿入されている。上記第2実施形態と同様、主バーナ10と、廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40とは、互いに固定されることなく独立した支持部によって支持されつつ互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられている。このため、実操業中に、主バーナ10、廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40のそれぞれの熱膨張量に差異がある場合であっても、耐火物18で覆われた廃棄物バーナ11及び他燃料バーナ40が耐熱材17上をスライドし、かつ、他燃料バーナ40が耐火物18の貫通孔18b内部をスライドすることが可能となる。また、図10では、耐熱材17が露出しているが、図11に示すように耐熱材17が耐火物に覆われていてもよい。
【0040】
このように、一体的に形成された耐火物を用いなくても第2実施形態に係るセメント焼成用バーナ2と同様の効果を奏することができる。また、上述のとおり、各バーナがスライドするように構成されていればよく、バーナの形状やそのスライド機構に限定されるものではない。また、円形以外の径方向断面形状を有する廃棄物バーナ11を第1実施形態に係るセメント焼成用バーナ1に採用してもよい。また、第2実施形態では他の燃料として肉骨粉を用いたが、廃プラスチックよりも燃焼速度の速い燃料であれば他のものでもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,2…セメント焼成用バーナ、10…主バーナ、11a,11b…流路、11…廃棄物バーナ、12…耐火物、30…廃棄物バーナ支持部(廃棄物バーナ支持手段)、31…主バーナ支持部(主バーナ支持手段)、40…他燃料バーナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃料を供給する主バーナと、前記主バーナの鉛直上方に設けられ、可燃性廃棄物を供給する廃棄物バーナとを有するセメント焼成用バーナであって、
前記主バーナ及び前記廃棄物バーナは、互いに軸方向に対して相対移動可能に設けられていること、
を特徴とするセメント焼成用バーナ。
【請求項2】
前記主バーナの鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定し、前記主バーナを支持する主バーナ支持手段と、
前記主バーナ支持手段とは独立して設けられ、前記廃棄物バーナの鉛直方向及び水平方向を拘束かつ固定する廃棄物バーナ支持手段と、
を備える請求項1に記載のセメント焼成用バーナ。
【請求項3】
前記廃棄物バーナを冷却する冷却手段を備える請求項1又は2に記載のセメント焼成用バーナ。
【請求項4】
前記廃棄物バーナの鉛直荷重は、前記廃棄物バーナ支持手段及び前記主バーナで受け持つ請求項2又は3に記載のセメント焼成用バーナ。
【請求項5】
前記廃棄物バーナの鉛直上方に設けられ、他の燃料を供給する他燃料バーナを備える請求項1〜4の何れか一項に記載のセメント焼成用バーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−207831(P2012−207831A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72507(P2011−72507)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】