説明

セメント系余剰物の廃棄処理方法

【課題】セメント系余剰物が固化することにより生じる問題点を解消可能なセメント系余剰物の廃棄処理方法を提供するものである。
【解決手段】本発明のセメント系余剰物の廃棄処理方法は、セメント系余剰物1を廃棄する際に当該セメント系余剰物に糖分(砂糖水S)を添加したり、セメント系余剰物発生部3で発生したセメント系余剰物1を、排出管35及び吸引手段(サンドポンプ34)を使用して、排出管35を介して排出する場合において、セメント系余剰物発生部3で発生したセメント系余剰物1に糖分を添加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタル等のセメント系余剰物の廃棄処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート打設作業の際には使用コンクリートに余剰が生ずることは避けられず、余剰になったセメント系余剰物としての残コンクリートは再利用が出来ない為、工事現場の適当な空地などにそのまま放置して固化させ、固化後に、ブレーカー、電動ピック等の破砕装置を用いて適当な大きさになる様に破砕するなどして処理していた(特許文献1等参照)。
例えば、コンクリート打設をポンプ圧送にて作業する際、コンクリート配管へ先行モルタルを圧送し、管内をモルタルにて湿潤させコンクリート圧送時の閉塞を防止することがあるが、この際のモルタルは、型枠内に打設することができないため、適当な容器内に排出して硬化させ、その後、破砕装置を用いて細かくはつり壊して産業廃棄物として処分する。コンクリート打設において生じた残コンクリートも同様に処理していた。
このようにセメント系余剰物としての先行モルタルや残コンクリート等を廃棄する際においては、セメント系余剰物を硬化させた後にはつり壊すという作業を行っており、多大な労力を費やしていた。
【0003】
また、注入ロッドを地盤中に回転上昇させながら、該注入ロッドに形成された噴射孔を介して地盤中に硬化剤を含むグラウト(セメントミルク)を高圧噴射することによって地盤改良体を造成する高圧噴射攪拌工法が知られている(特許文献2等参照)。この工法においては、グラウトや水の高圧噴射によって地盤が広範囲に切削攪拌されるため、短時間に多量のセメント系余剰物としてのスライム(排泥)が発生し、このスライムは注入ロッドの周りを通じて地上のスライムピットへと排出される。そして、この排出されたスライムを、排泥用ポンプ等の吸引手段でタンク車及びバキューム車等の運搬車に送り、運搬車で産業廃棄物処分場に運ぶようにしている。
この工法では、短時間に多量のスライムが発生するため、スライムピットタンク等に貯留されたまま時間が経過するとスライムが固まってしまって、スライムを吸引手段で運搬車に送れなくなってしまう。このため、造成作業を中断しながら断続的に行うことにより、スライムの集中発生を抑えるようにすることも考えられるが、造成作業を中断しながら断続的に行うと造成する地盤改良体の品質を劣化させる可能性があるため、好ましくない。
そこで、従来は、造成作業を中断することなく、しかもスライムが固まる前にスライムを運搬車に送れるようにするため、スライムの単位時間当たりの最大排出量と廃棄物処分場への往復時間等を考慮して、運搬車の必要台数を多めに見積もって運搬車を手配していたので、運搬費用が嵩むという問題点があった。尚、スライムピットの容量を大きくすれば、スライム全体が固まる時間が長くなるため、運搬車での運搬に余裕ができるが、それでも、集中的に運搬作業を行わなくてはならないことには変わりなく、運搬費用が嵩む。
【0004】
また、シールド工事においては、裏込注入材として使用するセメントミルク等の余剰物であるセメント系余剰物を、坑内排水管を介してバキューム等の吸引手段で吸引排出するようにしているが、排水管内に固化したセメント系余剰物が溜まるため、定期的に管を交換しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−004231号公報
【特許文献2】特開平10−338931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、セメント系余剰物は、固化することにより、上述した問題点を生じさせていた。
本発明は、上述した問題点を解消可能なセメント系余剰物の廃棄処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセメント系余剰物の廃棄処理方法は、セメント系余剰物を廃棄する際に当該セメント系余剰物に糖分を添加するので、セメント系余剰物を廃棄する際の固化を防止でき、セメント系余剰物の廃棄処理作業を容易とできる。
本発明に係るセメント系余剰物の廃棄処理方法は、セメント系余剰物発生部で発生したセメント系余剰物を、排出管及び吸引手段を使用して、排出管を介して排出する場合において、セメント系余剰物発生部で発生したセメント系余剰物に糖分を添加するので、セメント系余剰物を廃棄する際に、排出管及び吸引手段内でセメント系余剰物が固化することを防止できるので、排出管及び吸引手段の詰まりを抑止でき、排出管の交換を少なくできたり、吸引手段の効率低下を抑止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】セメント系余剰物の廃棄処理方法を示す図(実施形態1)。
【図2】セメント系余剰物を排出管及び吸引手段を使用して排出する場合の廃棄処理方法を示す図(実施形態2)。
【図3】地盤改良体を造成する造成現場に設けた廃棄処理装置を示す図(実施形態3)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
図1に示すように、コンクリート打設作業現場等で発生したセメント系余剰物1を収容容器2内に入れ、セメント系余剰物1に砂糖水Sを添加して攪拌した。糖分としての砂糖の添加量は、重量比0.04%以上とした。これにより、砂糖がサッカライトを生成して溶液中のアルミンの溶解度を高め、アルミナシリカゲルをセメント粒子上に生成するため、セメント系余剰物1の固化を防止できる。よって、従来のようにセメント系余剰物を硬化させた後にはつり壊すという作業を不要とできるので、セメント系余剰物1の廃棄処理作業を容易とできる。また、砂糖を用いるので、安価で安全である。
【0010】
また、現場においてコンクリートミキサー車によるコンクリート打設完了後、コンクリートミキサー車に残ったセメント系余剰物1としての残コンクリートはコンクリートミキサー車に積載したままコンクリートプラントに返して廃棄する。よって、コンクリートプラントに収容容器2を設置しておき、コンクリートミキサー車が持ち帰った残コンクリートを収容容器2内に入れ、残コンクリートに砂糖水Sを添加して攪拌して、残コンクリートの固化を防止する。そして、固化していない残コンクリートを収容容器2から取り出して一部を再生材料として再利用し、その他を廃棄する。例えば、残コンクリートから骨材を分離して骨材を再利用し、その他を廃棄する。よって、この場合も、従来のようにセメント系余剰物を硬化させた後にはつり壊すという作業を不要とできるので、セメント系余剰物1の廃棄処理作業を容易とできる。
【0011】
尚、収容容器2内に砂糖水Sを散布する図外の砂糖水散布機、及び、収容容器2内に入れられたセメント系余剰物1と砂糖水Sとを攪拌する図外の攪拌機を備えたセメント系余剰物の廃棄処理装置を構成すれば、廃棄処理を簡単に行える。
【0012】
実施形態2
図2に示すように、高圧噴射攪拌工法によって地盤改良体を造成する造成現場やシールド工事現場等のセメント系余剰物発生部3で発生したセメント系余剰物1を、排出管4及びポンプ又はバキューム等の吸引手段5を用い、排出管4を介して排出するセメント系余剰物1の排出処理方法において、セメント系余剰物発生部3で発生したセメント系余剰物1に砂糖水Sを添加するようにした。
このようにすれば、セメント系余剰物1を廃棄する際に、排出管4及び吸引手段5内でセメント系余剰物1が固化することを防止できるので、排出管4及び吸引手段5の詰まりを抑止できる。よって、排出管4の交換を少なくできる。また、吸引手段5の効率低下を抑止できるようになる。
【0013】
実施形態3
高圧噴射攪拌工法によって地盤改良体を造成する造成現場において本願方法を適用した場合について図3に基づいて説明する。
高圧噴射攪拌工法による地盤改良体の造成作業は、下端部に噴射孔13を備えた注入ロッド12を用いて行われる。尚、注入ロッド12は、図外の施工機械の回転・昇降ユニットに上下動可能及び回転可能に支持されて上下動及び回転運動を行う。また、図外のグラウト(セメントミルク)生成装置、水槽、高圧ポンプ、空気圧縮機を備え、グラウト生成装置、水槽、高圧ポンプ、空気圧縮機によって作られた高圧グラウト、及び、水槽、高圧ポンプ、空気圧縮機によって作られた高圧水が注入ロッド12内に供給され、噴射孔13より噴射される。
【0014】
まず、下端に削孔ビットを備えた図外のケーシングを用いて施工深度DNまでガイドホール21を削孔する。そして、ケーシングをガイドとしてケーシング内に注入ロッド12を建て込んだ後に、ケーシングを引き抜くことにより、ガイドホール21内に注入ロッド12が建て込まれた状態となり、以後、造成作業を行なう。
造成作業は、注入ロッド12を注入ロッド12の中心軸を回転中心として回転させるとともに注入ロッド12の噴射孔13より高圧水及び高圧グラウトを地盤14に噴射させながら、注入ロッド12の下端を施工深度DNの位置から計画改良域上限DTまで上昇させる。これにより、噴射孔13より噴射された高圧グラウトで地盤改良された地盤改良体22が、施工深度DNの位置から上方に向かって順次形成され、計画改良域Dへの1つの地盤改良体の造成が完了する。尚、この時発生したセメント系余剰物1としての余剰スライムは、ガイドホール21を通じてガイドホール21の上端部に形成されたスライムピット23へ排出される。地盤改良体を計画改良域上限DTまで形成した後、注入ロッド12を地上14tまで引き抜きながらガイドホール21を埋め戻す。
【0015】
実施形態3では、スライムピット23の近くの地上14tに収容容器2を設置するとともに砂糖水貯留槽31を設置する。
サンドポンプ29の吐出口にスライム排出ホースのような排出管30の一端を繋ぎ、サンドポンプ29をスライムピット23内に設置して、排出管30の他端を収容容器2内に設置する。
砂糖水貯留槽31内には、砂糖水Sを貯留しておく。そして、吸引手段としての水中ポンプ32の吐出口に給水ホースのような給水管33の一端を繋ぎ、水中ポンプ32を砂糖水貯留槽31内の砂糖水S中に設置して、給水管33の他端を収容容器2内に設置する。
吸引手段としてのサンドポンプ34の吐出口にスライム排出ホースのような排出管35の一端を繋ぎ、サンドポンプ34を収容容器2内に設置して、排出管35の他端を図外の予備容器内に設置する。
従って、サンドポンプ29、排出管30、収容容器2、砂糖水貯留槽31、水中ポンプ32、給水管33、サンドポンプ34、排出管35、予備容器により、廃棄処理装置40が構成される。
【0016】
そして、サンドポンプ29を駆動して、スライムピット23内の余剰スライムを収容容器2内に送り、砂糖水貯留槽31の砂糖水Sを水中ポンプ32で収容容器2内のサンドポンプ34の吸込口付近に圧送するとともに、サンドポンプ34を駆動して収容容器2内の余剰スライムを予備容器に排出した。これによれば、サンドポンプ34の吸い込み攪拌機能によって砂糖水Sと混ぜ合わされた余剰スライムが予備容器に排出されるので、予備容器に排出されたセメント系余剰物1としての余剰スライムが固化することを防止できる。したがって、余剰スライムを予備容器内に長時間ストックしておけるので、余剰スライムを集中的に運搬する必要がなくなる。よって、従来のように、運搬のために、スライムピットを大きくしたり、運搬車の必要台数を多めに見積もる必要がなくなる。
また、余剰スライムの固化による排出管35及びサンドポンプ34等の吸引手段の詰まりを抑止できるので、排出管35の交換を少なくでき、また、サンドポンプ34等の吸引手段の効率低下を抑止できるようになる。
【0017】
尚、上記では、砂糖水Sを用いたが、砂糖を添加してもよい。また、砂糖以外の糖分を添加してもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 セメント系余剰物、4 排出管、5 ポンプ(吸引手段)、S 砂糖水(糖分)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系余剰物を廃棄する際に当該セメント系余剰物に糖分を添加することを特徴とするセメント系余剰物の廃棄処理方法。
【請求項2】
セメント系余剰物発生部で発生したセメント系余剰物を、排出管及び吸引手段を使用して、排出管を介して排出する場合において、セメント系余剰物発生部で発生したセメント系余剰物に糖分を添加することを特徴とするセメント系余剰物の廃棄処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200764(P2011−200764A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68624(P2010−68624)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】