説明

セメント組成物

【課題】塩素バイパスダストを有効利用し、長期強度、流動性に優れたセメント組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントにおいて生成されたセメントクリンカーと、抽気されたキルン排ガスに存在するダストを集塵して回収された塩素バイパスダストと、石膏と、石灰石とを混合して、セメント組成物を製造する。塩素バイパスダストには塩素が含まれており、セメント組成物の塩素量X質量%と石灰石量Y質量%との関係が、0<Y<−55X+5を満足し、塩素量X質量%がX≧0.024を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントにおいて回収される塩素バイパスダストを有効利用したセメント組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントにおいて回収された塩素バイパスダストのセメント組成物への利用方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、特開平10−330136号公報に示されるセメント原料焼成装置のように、塩素バイパス装置によってセメントキルン内の排ガスの一部を抽気した後、その排ガスに含まれる塩化アルカリ等の揮発性成分を系外で固定化処理して、セメント原料焼成系内における塩化アルカリ等の量を低減させる技術がある。この塩素バイパス装置は、セメント原料焼成系内におけるコーチングトラブルを防止したり、セメントクリンカー中の塩素などを抜き出したりする目的で、セメントキルンに付加的に設置されている。
【0004】
この塩素バイパス装置によって抽気されたガス成分は、集塵機を経て再びセメント原料系内に戻されたり大気中に放出されたりするが、窯尻で1000℃以上の熱履歴を経たKCl等の塩化物やセメント原料の仮焼物とそれらの硫酸塩等から成る固形物が発生する。この固形物のことを塩素バイパスダストといい、水洗処理することにより塩素濃度を低減してスラッジ等にする場合もある。
【0005】
また、特開平10−218657号公報には、高炉スラグまたはフライアッシュを含むセメント90〜99.7質量%と塩素バイパスダスト0.3〜10質量%からなるセメント組成物とその製造方法が開示されている。この製造方法によれば、塩素バイパスダストを添加することにより、材齢3日および7日の初期強度を増大させる効果があり、初期強度改善剤の欠点である材齢28日強度の低下がないことが示されている。また、ここで塩素バイパスダスト添加量を0.3〜10質量%としたのは、0.3質量%より少ないと、高炉スラグまたはフライアッシュを含むセメントの初期強度を増大させる効果がなく、10質量%より多いと、塩分が多くなり、コンクリートとしての用途が制限されると示されている。
【0006】
また、特開2000−281417号公報には、セメントに塩素バイパスダスト及び石灰石を添加するセメント組成物が開示されている。この文献には、セメント組成物にポリカルボン酸等のセメント分散剤を添加し流動性を付与する場合、更に石灰石及び塩素バイパスダストを適量添加することにより、石膏やセメント分散剤によって供給される硫酸イオンの阻害による流動性の低下を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−330136号公報
【特許文献2】特開平10−218657号公報
【特許文献3】特開2000−281417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塩素バイパスダストは、キルンの特性によりその組成が異なるが、上記文献には、塩素バイパスダストの組成がセメント組成物に与える影響に関して何ら言及されていない。
【0009】
そこで、本発明は、塩素バイパスダストの組成及び特性に着目することにより、塩素バイパスダストを有効利用し、長期強度、流動性に優れたセメント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、石灰石を含有するセメント組成物に添加する塩素バイパスダストが強度発現性に及ぼす影響を、様々な塩素バイパスダストおよび様々な添加量で鋭意研究した結果、塩素バイパスダスト添加量よりも、その組成、即ち、塩素バイパスダストの添加によってセメント組成物に含有されることとなる塩素量が、強度発現性に大きく影響することを見出し、さらに、セメント組成物に添加された石灰石の添加量が流動性に大きく影響することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るセメント組成物は、セメントクリンカーと、石膏と、石灰石と、塩素を含有する塩素バイパスダストとを組成成分とし、石灰石量Y質量%と、塩素量X質量%との関係が、0<Y<−55X+5を満足し、塩素量X質量%が、X≧0.024を満足することを特徴とする。
【0012】
この発明に係るセメント組成物にあっては、硬化させたときに、Y≧−55X+5のセメント組成物を硬化させたときよりも、優れた初期強度及び長期強度を発現する。また、本発明に係るセメント組成物は、Y=0のセメント組成物よりも、適切なスランプフローで十分な流動性を有する。これにより、塩素バイパスダストを有効利用して、品質が安定したセメント組成物を製造することができる。
【0013】
さらに、上記セメント組成物は、高炉スラグを1質量%〜5質量%含有していることが好ましい。これにより、高炉スラグの潜在水硬性を適度に利用した高炉セメントのセメント組成物とすることができる。
【0014】
また、セメント組成物のブレーン比表面積は2500cm/g〜4000cm/gであることが好ましい。この範囲のブレーン比表面積であれば、セメント組成物に十分な初期強度及び長期強度を発現させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塩素バイパスダストを有効利用することができ、長期強度、流動性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】塩素量と石灰石添加量とモルタル圧縮強さ試験の判定結果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係るセメント組成物の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
セメント組成物は、セメントクリンカーと石膏と塩素バイパスダストとを含む。このセメント組成物は、セメントキルン内の排ガスの一部を抽気する塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントを用いて製造される。塩素バイパスダストは、塩素バイパス装置によって抽気された排ガスから集塵されたダストであり、通常は固形物であるが、水洗処理してなる塩素濃度が低減されたスラッジ等であっても良い。この塩素バイパスダストの固形物は、KCl、NaCl、CaCl等の塩化物やセメント原料の仮焼物、それらの硫酸塩等から成る。
【0019】
そのような塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントを用いてセメント組成物を製造するにあたって、セメント組成物においては、塩素量X質量%に対して石灰石量Y質量%が、次式(1)の関係を満足するようにする。
0<Y<−55X+5 (1)
【0020】
ここで、塩素量X質量%は、塩素パイパスダストの塩素量γ質量%と塩素バイパスダストの添加量δ質量%から、X=γ×δ÷100で計算される。X≧0.024である。なお、添加される塩素パイパスダスト自体は、塩素量を0.5質量%以上含有していることが好ましい。なお、塩素量はJIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定される値である。また、塩素バイパスダストの塩素含有量を除く化学成分は、JIS M 8853「セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法」に準じて測定する。
【0021】
塩素量X質量%と石灰石量Y質量%との関係を式(1)を満足するようにすれば、セメント組成物により作製される硬化させたモルタルやコンクリートの圧縮に対する強度が十分確保される。また、モルタルやコンクリートを作製する際におけるセメント組成物の流動性もよい。Yが−55X+5を超えると、セメント組成物の圧縮強度性が低下する。また、石灰石量Y質量%が0であると、塩素バイパスダストによる分散剤や石膏に起因する硫酸イオンの流動性を阻害し、セメントモルタルやコンクリートの流動性が低下する。なお、石灰石量Y質量%は、0.5質量%以上が好ましい。
【0022】
ここで、塩素バイパスダストの添加量δ質量%は好ましくは0<δ≦10、より好ましくは0<δ≦5として、上記式(1)を満足するように調整すると良い。セメント組成物に石灰石が含有されている場合、塩素バイパスダストを少量添加することにより硬化したコンクリートの初期強度を増大させる効果があるが、塩素バイパスダストの添加量が10質量%を超えると、セメント組成物に水を加え練混ぜているとき、または練混ぜを終えて間もない時期に、一時的にこわばり、または流動性を失った状態となる偽凝結を起こし、強度発現性が低下するうえ、鉄筋等の発錆の原因となるおそれがある。なお、塩素バイパスダスト中に含まれる塩化カリウムは、セメントの初期強度を増大させる作用を有する。
【0023】
セメント組成物に用いるセメントクリンカーとしては、普通ポルトランドセメントクリンカー、早強セメントクリンカー、低熱セメントクリンカー等が挙げられる。
【0024】
これらの石膏を用いて石膏と共に粉砕することにより、普通ポルトランドセメント、早強セメント、或いは低熱セメントとして用いることとなる。さらには、普通セメント等に高炉スラグ微粉末やフライアッシュを混合した高炉セメント、フライアッシュセメント等として用いても良い。なお、長期強度を改善させる場合には普通ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0025】
セメント組成物の製造に用いる石膏としては、天然石膏、排脱石膏、フッ酸石膏、燐酸石膏等が挙げられ、それら石膏の形態は、二水石膏、半水石膏、無水石膏の何れの形態であっても良い。
【0026】
セメント組成物の製造に用いる石灰石としては、CaCO3量がCaO換算量で53%以上含有しているものが好ましい。なお、CaO換算量はJIS M 8850「石灰石分析方法」に準じて測定される値である。石灰石の添加量を調整することにより強度発現性を維持若しくは増大させることができる。また、流動性を改善することも可能である。
【0027】
セメント組成物に高炉スラグ粉末を添加する場合には、高炉スラグ粉末は、急冷砕されたものであって、セメント組成物に1質量%〜5質量%含有させることが好ましい。これにより、高炉スラグの潜在水硬性を適度に利用した高炉セメントのセメント組成物とすることができる。また、高炉スラグの塩基度は1.4以上であることが好ましい。ここで塩基度とはCaO量、MgO量、及びAl2O3量の合計量をSiO2量で割って算出される。なお、これらの含有量はJIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定される。
【0028】
また、セメント組成物にフライアッシュを添加する場合には、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるI種、II種、III種、或いはIV種のフライアッシュを用いると良い。
【0029】
また、セメント組成物のブレーン比表面積は、2500cm/g〜4000cm/gであることが好ましい。この範囲のブレーン比表面積であれば、セメント組成物に十分な初期強度及び長期強度を発現させることができる。なお、セメント組成物のブレーン比表面積は、3000cm/g〜3500cm/gであることがより好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0031】
[使用材料]
使用した材料を以下に示す。
(1)セメント
使用したセメントは、宇部興産(株)製の普通ポルトランドセメントクリンカーに、セメントのSO3含有量が2.0±1.0%となるように石膏を添加すると共に、石灰石及び高炉スラグを添加し、仕上粉砕ミルで粉砕することによって製造した。使用するセメントの作製条件を表1に示す。表1に示すように、(1)〜(9)の9種類のセメントを作製した。
【0032】
【表1】

【0033】
ここで、普通ポルトランドセメントクリンカーは、A、Bの2種類を使用した。普通ポルトランドセメントクリンカーAを使用したセメント(1)はブレーン比表面積が3300±100cm/gになるように製造し、普通ポルトランドセメントクリンカーBを使用したセメント(2)〜(9)はブレーン比表面積が3150±100cm/gになるように製造した。各普通ポルトランドセメントクリンカーA、Bの鉱物組成を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
なお、普通ポルトランドセメントクリンカーの鉱物組成は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて化学成分を測定し、C3S量及びC2S量は次式(2)、(3)により求めた。
C3S量=4.071×CaO量−7.600×SiO2量−6.718×Al2O3量−1.430×Fe2O3量−2.852×SO3量 (2)
C2S量=2.876×SiO2量−0.7544×C3S量 (3)
【0036】
また、セッコウの化学成分はJIS R 9101「セッコウの分析方法」に準じ、石灰石の化学成分はJIS M 8850「石灰石分析方法」に準じ、高炉スラグの化学成分はJIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定した。
【0037】
次に、普通ポルトランドセメントクリンカーに添加する石膏、石灰石及び高炉スラグの化学成分を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
(2)塩素バイパスダスト
セメント組成物に添加する塩素バイパスダストは塩素量の異なるa,bの2種類を用いた。各塩素バイパスダストa,bの化学成分を表4及び表5に示す。なお、塩素量はJIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定した。また、塩素バイパスダストの塩素含有量を除く化学成分はJIS M 8853「セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法」に準じて測定した。
【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
[試料調製]
セメント組成物(1)〜(9)に、さらに塩素バイパスダスト及び高炉スラグ粉末を添加して、複数の試料を作製した(試料No.1〜19)。各試料における各組成物の量及びブレーン比表面積を表6に示す。
【0043】
【表6】

【0044】
表6に示すように、セメント(1)をベースとしたものは、塩素バイパスダストaによってセメント組成物に含有されることとなる塩素量が0、0.006、0.021、0.036質量%となるように、塩素バイパスダストaをそれぞれ0、0.17、0.61、1.05質量%の割合でセメントに添加し、混合して試料とした(試料No.1〜4)。
【0045】
セメント(2)をベースとしたものは、塩素バイパスダストbによってセメント組成物に含有されることとなる塩素量が0、0.010、0.024、0.041、0.062質量%となるように、塩素バイパスダストbをそれぞれ0、0.03、0.07、0.12、0.18質量%の割合で添加し、混合して試料とした(試料No.5〜9)。
【0046】
また、セメント(3)をベースとしたものは、塩素バイパスダストbを0.12質量%添加することによって、セメント組成物に含有されることとなる塩素量をそれぞれ0.041質量%とした(試料No.10)。セメント(4)をベースとしたものは、塩素バイパスダストbを0.07質量%添加することによって、塩素量を0.024質量%とした(試料No.11)。セメント(5)では、塩素バイパスダストbを0.12、0.18質量%添加することによって、塩素量をそれぞれ0.041、0.062質量%とした(試料No.12,13)。セメント(6)では、塩素バイパスダストbを0.07、0.18質量%添加することによって、塩素量をそれぞれ0.024、0.062質量%とした(試料No.14,15)。セメント(7)では、塩素バイパスダストbを0.07、0.18質量%添加することによって、塩素量をそれぞれ0.024、0.062質量%とした(試料No.16,17)。セメント(8),(9)では、塩素バイパスダストbを0.18質量%添加することによって、塩素量をそれぞれ0.062質量%とした(試料No.18,19)。
【0047】
[モルタル圧縮強さ試験とその評価]
次に、JIS R 5201に規定された「セメントの物理試験方法」に従って、各試料から供試体を作製し、モルタル圧縮強さ試験を行った。その結果を表7に示す。表7の「モルタル圧縮強さ」の欄には、供試体の圧縮強さの値を示している。また、「モルタル圧縮強さ変化比」の欄には、基準とした供試体の圧縮強さを100とした場合の各供試体の圧縮強さの割合を示している。すなわち、普通ポルトランドセメントクリンカーAを使用したセメント組成物で作製した供試体については、セメント(1)−1で作製した供試体を基準とし、その基準供試体のモルタル圧縮強さに対するモルタル圧縮強さの変化の比率(百分率)を示した。普通ポルトランドセメントクリンカーBを使用したセメント組成物で作製した供試体については、セメント(2)−1で作製した供試体を基準とし、その基準供試体のモルタル圧縮強さに対するモルタル圧縮強さの変化の比率(百分率)を示した。そして、材齢28日のモルタル圧縮強さ変化比が100%以上となる場合を良好(○)、材齢28日のモルタル圧縮強さ変化比が100%未満となる場合を不良(×)と判定した。
【0048】
【表7】

【0049】
表7における塩素量と石灰石添加量と判定結果との関係を図1に示す。図1に示すように、石灰石の添加量Y質量%と、塩素バイパスダストによってセメント組成物に含有されることとなった塩素量X質量%との関係が、0≦Y<−55X+5を満足する領域(実施例1〜6)であれば、材齢3日、7日、28日を経てもモルタル圧縮強さ変化比は100%以上となることが分かった。
【0050】
[コンクリートのスランプフロー試験とその評価]
次に、コンクリートのスランプフロー試験について説明する。各試料No.1〜19に、細骨材、粗骨材、分散剤及び水を加え、表8に示す水セメント比(W/C)、スランプフロー、及び空気量で、50Lのパン型強制練りミキサを使用してコンクリートを調製した。練混ぜ量は1バッチ30Lとした。各材料は以下のものを使用した。なお、スランプフローの測定は、JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に従って測定した。
【0051】
(1)骨材
(i)細骨材(S):
海砂:密度2.59g/cm、粗粒率2.71、北九州市若松産
(ii)粗骨材(G):
・砕石(2005):密度2.58g/cm、粗粒率6.58、山口市宮野産
(2)練混ぜ水(W):水道水
(3)分散剤:ポリカルボン酸系分散剤((株)エヌエムビー社製、商品名:レオビルドSP8S)
【0052】
なお、「コンクリートのスランプフロー試験方法」は、JIS A1101「コンクリートのスランプ試験方法」に規定された円錐台形状カップのスランプコーンに、各試料No.1〜19で調整されたコンクリートを詰めて平板に載置し、スランプコーンを鉛直方向に引き上げて、コンクリートをスランプコーンから開放し、平板上に広がったコンクリートの径を測定する試験である。表8に配合条件を示す。
【0053】
【表8】

【0054】
また、この試験結果を表9に示す。なお、コンクリートのスランプフロー評価では、スランプフローが目標の60±2.5cm範囲内であって適度の流動性を有するものを良好(○)、この範囲外で実用上遜色があるものを不良(×)とした。
【0055】
表9の結果より、石灰石をセメント組成物に添加しなかった試料No.16,17(使用セメント種別(7):参照表1)は、目標スランプフロー値を下回り、十分なスランプフローが得られなかったが、他の石灰石をセメント組成物に添加した試料No.1〜15,18,19は、目標スランプフロー範囲内となり、十分なスランプフローが得られた。
【0056】
[圧縮強さ試験とスランプフロー試験の総合評価]
上記のモルタル圧縮強さ試験とスランプフロー試験とを総合的に評価すると、モルタル圧縮強さ試験においても十分な圧縮強度が得られ、且つスランプフロー試験においても十分な流動性が得られたのは、セメント組成物における石灰石量Y質量%と、塩素量X質量%との関係が、0≦Y<−55X+5であって、且つ石灰石量Y質量%が0%を超えているものであった。したがって、0<Y<−55X+5を満足するセメント組成物が、初期強度、長期強度及び流動性の観点から適正であることがわかった。
【0057】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカーと、石膏と、石灰石と、塩素を含有する塩素バイパスダストとを組成成分とし、
石灰石量Y質量%と塩素量X質量%との関係が、0<Y<−55X+5を満足し、
前記塩素量X質量%が、X≧0.024を満足することを特徴とするセメント組成物。(但し、塩素量X質量%は、塩素パイパスダストの塩素量γ質量%と塩素バイパスダストの含有量δ質量%から、X=γ×δ÷100で計算される値である。)
【請求項2】
前記セメントクリンカーと、前記石膏と、前記石灰石と、前記塩素バイパスダストと、を、ミルで粉砕して得られる、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
塩素バイパスダストの含有量δ質量%が、0<δ≦10を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
さらに高炉スラグを1質量%〜5質量%含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項5】
ブレーン比表面積が2500cm/g〜4000cm/gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセメント組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−83757(P2010−83757A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8231(P2010−8231)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【分割の表示】特願2004−233855(P2004−233855)の分割
【原出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)