説明

セラミツクス成形用組成物

【構成】 セラミックス粉末(好ましくは40〜70vol %)、有機溶媒(好ましくは、石油系炭化水素溶剤、特にn−パラフィン、10〜60vol %)、分散剤(例えば、ポリエチレンアルキルエーテル系フォスフェート、ポリエチレングリコールアルキルエーテルなど)、及び酸化ワックス1〜50vol %)からなるセラミックス成形用組成物。
【効果】 脱脂工程の際、溶剤が先に蒸発することにより成形体に気孔が出来、酸化ワックスの脱脂性を促進する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はセラミックス成形用組成物に係る。
【0002】
【従来の技術】複雑な形状の生のセラミックス体を容易に成形でき、かつ高強度の成形体を得ることを目的として、セラミックス粉末に1種以上の有機性分散剤を加えセラミックの泥しょうを作りその泥しょうを型内に注入し分散剤の融点以下に冷却してその分散性を消失させることによって保形する方法が提案されている(特開昭61−158403号公報)。有機性分散剤としては例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル系フォスフォレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどが用いられている。
【0003】また、バインダーとしてワックスを使用して離型性、脱脂性を高め、かつ分散剤として炭素数12以上のオキシカルボン酸の2量体以上の分子間オリゴエステル等を用いて分散性を高めたセラミックス成形用組成物が提案されている(特開昭62−87234号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】特開昭61−158403号公報に記載の方法では、常温で固体の分散剤を用い加熱溶解してセラミックススラリーを作り、冷却することによって分散剤が固化して分散性が消失することにより泥しょうを固化するものであるが、分散性の消失による粉体の凝集作用によって固化させるため均質な成形体が得られず、また凝集力は粒子間のファンデルワールス力によるものであるため強度が弱く、かつ凝集固化に時間がかかるという問題点がある。
【0005】また、特開昭62−87234号公報に記載の方法では、ワックスの熱膨張が大きいために肉厚成形品にヒケを発生する、ワックスをバインダーとしているので急速加熱すると内部にガスが多発し、脱脂に長時間を要するという問題点がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き問題点を解決するために、セラミックス粉末、有機溶媒、分散剤及び酸化ワックスからなることを特徴とするセラミックス成形用組成物を提供する。
【0007】すなわち、本発明のセラミックス成形用組成物は、セラミックス粉末とワックと分散剤からなるセラミックス成形用組成物において、ワックスとして酸化ワックスを使用すると共に有機溶媒を添加したものである。酸化ワックスと有機溶媒を用いることによって、組成物を加熱溶融し、型内に注入し、冷却すると、融解していたワックスが折出固化し、有機溶媒がワックス中に均一に分散した状態が得られる。これによって、有機溶媒を添加する分だけワックスの量が減少してヒケの量が減少する、また有機溶剤が蒸発して成形体内部に均一に気孔ができ、脱脂する際にワックスの分解ガスの抜け道になるので脱脂時間を短縮できるなどの効果が得られる。
【0008】本発明で使用できるセラミックス粉末は特に限定なく、窒化珪素炭化珪素等に広く適用できる。焼結助剤等を含んでもよいことは当然である。セラミックス粉末の量は40〜70体積%の範囲が一般的で、粉末の充填性に依存するが、望ましくは45〜65体積%である。
【0009】有機溶媒としては石油系炭化水素溶剤が好ましい。石油系炭化水素溶剤としてはパラフィン系炭化水素(iso−パラフィン、n−パラフィン)、芳香族系炭化水素(アルキルベンゼン等)、ナフテン系などが挙げられる。有機溶媒の量は一般的に10〜60体積%である。有機溶媒の量が60体積%より多いと、焼成時の収縮が大きく、亀裂の発生する可能性が高い。また、10体積%より少ないと脱脂する際必要な気孔が少なくなるため脱脂後に亀裂が発生する。
【0010】分散剤としては、セラミックス粉末、有機溶媒および酸化ワックスからなる配合物を加熱して流動化されたときセラミックス粉末を分散させる機能を有する化合物であれば使用できるが、例えばポリエチレンアルキルエーテル系フォスフェートやポリエチレングリコールアルキルエーテルが好ましく使用される。その他に、ポリオキシプロピレンモノアリルモノブチルエーテルと無水マレイン酸及びスチレンの共重合物などが使用できる。
【0011】分散型の添加量は一般にセラミックス粉末に対して1〜10wt%である。過剰に添加するとスラリー粘度が増加し、過少の場合はスラリーにすることはできない。また最適な添加量は分散剤のタイプ、セラミックス粉末の特性(特に比表面積)により決まる。
【0012】本発明において特徴的な固化剤として使用するワックスは酸化ワックスである。すなわち、配合物を加熱した状態で液状化し、型内で冷却すると固化する。典型的には、50〜100℃の温度で溶融し、室温で固化する化合物がよい。酸化ワックスの量は一般に1〜50体積%の範囲内でよく、望ましくは30体積%以下であり、特に多量であることを要せず、脱脂を短時間化する上で有効である。
【0013】また、この固化剤には、スラリー流動性、成形体強度向上等を考慮して、ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、高級アルコール、脂肪酸及びそのエステル、金属石ケン等を組み合わせて使用することも可能である。
【0014】本発明のセラミックス粉末、有機溶媒、分散剤及び酸化ワックスからなる組成物は、混粉後、典型的には40〜100℃で加熱しスラリー化し、次いで型内に注入した後、ワックスの融点以下に冷却して固化せしめる。脱型後、50〜80℃、10〜24時間程度の条件で有機溶媒を乾燥除去する。得られたセラミックス成形体は、脱脂後焼成してセラミックス焼結体とすることができる。脱脂条件は、一般的に、5〜20℃/hr昇温し、約480℃(max)で3〜5時間保持であり、焼成温度はセラミックス粉末に依存する。
【0015】
【作用及び効果】酸化ワックスが有機溶媒を固化せしめるので固化時間が速く、高強度の成形体を与え、かつ均一に分散した状態で固化するので均一な成形体が得られる。ワックスの量が少なくてすむのでヒケが減少し、また乾燥時に溶媒が蒸発して気孔を発生するので脱脂が容易になり、短時間化する。
【0016】
【実施例】
実施例窒素珪素 (平均粒径0.2μm) 96wt%(97体積%)
イットリア(平均粒径0.6μm) 2wt%(1.2体積%)
スピネル (平均粒径0.4μm) 2wt%(1.8体積%)
を均一に混合した粉末に対してヒドロキシル価80の酸化ワックスを用い表Iに示す組成物を70℃のポットボールミルにより均一混練物を得る。この時の混練物の粘度(室温、70℃)を表Iに示す。該混練物を20℃のターボホイール金型内に5気圧で注入し冷却固化して成形体を得た。
【0017】成形体内部のヒケの有無を破壊して確認した結果を表Iに併記する。成形体の離型が可能であったどうかを表Iに示す。該成形体を60℃24時間その後時間当たり7℃で昇温し480℃まで加熱し脱脂した。脱脂後の成形体の亀裂発生の有無を表Iに示す。亀裂のない脱脂体は1700℃〜1800℃窒素ガス中で焼結した。
【0018】
【表1】


【0019】
【表2】


【0020】またNo.4のサンプルにおいて酸化ワックスのかわりにパラフィンワックス(融点72℃)を同量添加したものを同様の方法で混練したところ粘度が70℃で2000cpであった。これとNo.4のスラリーを用いて次のことを行った。
【0021】70℃にてスラリーを作成後、φ30深さ30の金型(型温25℃:水冷)に同一量大気圧下で流し込み、中心部が固まるまでの時間を比較したところNo.4酸化ワックス使用時:3分パラフィンワックス使用時:6分となった。すなわち、成形時間が短くなった。これは、酸化ワックスの折出固化により有機溶媒がワックス中に均一に分散した状態で固化するためと思われる。
【0022】更に、固化するために必要な添加量がパラフインワックスに比べ少なくて済む効果がある。すなわち、No.3の実施例において酸化ワックスのかわりにパラフィンワックス(融点72℃)を用いた所70℃1700cp室温45000cpとなり固化しなかった。
【0023】
比較例 Si3 4 (粒径0.1〜1μm、平均粒径0.5μm)100重量部 (93.2体積%)
2 3 (粒径0.1〜1μm、平均粒径0.8μm) 5重量部 (3体積%)
Al2 3 (粒径0.1〜1μm、平均粒径0.3μm) 5重量部 (3体積%)
【0024】比較のため、従来法に従い、上記セラミックス粉末混合物50体積%に、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル系フォスフェート8体積%、有機溶媒としてミネラルスピリット42体積%を添加し、40℃で10時間加熱攪拌してスラリーを作製した。このスラリーを15℃に温調した型内に5kg/cm2 で注入し、固化(180分)後脱型した。得られた成形体は60℃×10hrの条件で溶媒を乾燥した。
【0025】得られた乾燥体を20℃/hrで450℃まで昇温後3時間保持し分散剤を除去し、N2 中、1800℃で焼成しセラミックス焼成体を得た。セラミックス焼成体はφ30×50の円筒で、その特性は、固化時間180分、成形体強度5kg/cm2 で、また脱脂の結果亀裂が発生した(成形体不均質に起因すると考えられる)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミックス粉末、有機溶媒、分散剤及び酸化ワックスからなることを特徴とするセラミックス成形用組成物。