説明

セリアック病を治療するためのクレーの使用

本発明は、セリアック病を治療するための薬剤を製造するためにクレーを使用することに関する。好ましくは、使用するクレーはスメクタイト型のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、セリアック病の治療又は予防を目的とした薬剤を製造するためにクレーを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
セリアック病は自己免疫疾患である;この疾患は、プロラミンなどの所定のグルテン成分に対する食物不耐性を特徴とする。プロラミンは、多くの穀類、特に小麦、ライ麦及び大麦中にかなりの量で存在する。セリアック病は、これらのグルテン成分に対する消化管の過敏症の結果である。遺伝的に罹患しやすい所定の患者では、このタンパク質の摂取が過剰の免疫反応の引き金となり、腸粘膜傷害に至る。遺伝的要因とは別に、他の要因(ウイルス及び/又は細菌の感染)も関与している可能性がある。
【0003】
この疾患の罹患率は、国によって大きく異なるが、その理由は、まだよく分かっていない:例えば、欧州では1/100(アイルランドでは1/300〜1/125)であり、米国では1/300である。これは少年よりも少女に影響を及ぼす。この疾患の最初の兆候は、幼年期、通常は6ヶ月〜2歳の間に現れるが、これらの兆候は、かなり後になって、場合によっては成人期に発見されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今のところ、その治療は、専ら、食事からグルテンを除外することに基づいているが、これは、大抵の場合、臨床治癒を確実にし、また、リンパ腫や骨の脱ミネラル化などの合併症を予防する。たとえこのグルテンなしの食事が原理上は単純に見えるにしても、これは、非常に限定的なものであり、社会的生活を阻害し、しかも医療支援なしに活動することが困難になる場合が非常に多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の主題は、セリアック病の治療又は予防を目的とした薬剤を製造するためのクレーの使用である。
【0006】
本発明のさらに特定の主題は、セリアック病の予防を目的とした薬剤を製造するためのクレーの使用である。
【0007】
また、本発明のさらに特定の主題は、セリアック病の治療を目的とした薬剤を製造するためのクレーの使用でもある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
クレーは、化粧用途において使用されている及び下痢などの所定の病状を治療するために医療分野において使用されている既知の天然物質である。
【0009】
本発明に従って使用されるクレーは、スメクタイト類のクレーであることができる。スメクタイトとは、特定のクレーの部類をいい、それには、モンモリロナイト及びバイデライトなどの2−八面体種と、ヘクトライト及びサポナイトなどの3−八面体種がある。
【0010】
本発明に従って使用されるクレーは、好ましくはスメクタイトであり、非常に好ましくは2−八面体スメクタイトである。好ましくは、2−八面体スメクタイトは、モンモリロナイト若しくはバイデライト又は次の2つの結晶化学極:モンモリロナイト及びバイデライト間の中間結晶構造である。この中間結晶構造は、モンモリロナイト極に近く、さらにはモンモリロナイト極に非常に近くてよい;また、このものは、バイデライト極に近く、さらにはバイデライト極に非常に近くてもよい。
【0011】
好ましくは、本発明に従う2−八面体スメクタイトは、モンモリロナイト又はモンモリロナイト極に近い中間構造であり、非常に好ましくは、モンモリロナイト又はモンモリロナイト極に非常に近い中間構造である。
【0012】
また、非常に好ましくは、使用するクレーは、「ジオスメクタイト」と呼ばれるスメクタイトであり、これはSmecta(登録商標)という商品名で販売されている。
【0013】
クレーを含む医薬組成物は、固体、例えば粉末、顆粒、錠剤又はゼラチンカプセルの状態であることができる。好適な固体担体は、例えば、タルク、糖質、ラクトース、デキストリン、ゼラチン、セルロース及びそのエステルであることができる。
【0014】
また、クレーを含む医薬組成物は、液体の状態、例えば、溶液、懸濁液又はシロップの状態で与えることもできる。好適な液体担体は、例えば、水、有機溶媒、例えばアルコール類(グリセリン、グリコール類)並びにそれらの様々な割合の水混合物であることができる。また、当該組成物は、安息香酸エステルなどの保存料も含むであろう。
【0015】
上記医薬組成物において、クレーを着色料及び/又は香料と混合させることもできる。
【0016】
本発明に従うクレーの投与は、経口経路又は経腸経路で実施できる。好ましくは、クレー、特に上で定義したスメクタイトを経口経路で投与する。
【0017】
クレーの一日投与量は、この物質について推奨される通常の投与量である。「ジオスメクタイト」と呼ばれるスメクタイトの特定の場合には、18g/日の最大一日量で投与できる。
【0018】
特に特定しない限り、ここで使用した全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
【実施例】
【0019】
薬理学の部
セリアック病に罹患している個人に対して、食道胃十二指腸内視鏡検査及び十二指腸生検により診断を行い、その組織学的解析により、やや顕著な絨毛組織萎縮症(villositary atrophy)を明らかにする。つまり、セリアック病の治療におけるクレーの有効性は、腸粘膜の組織構造により監視できる。
セリアック病の治療における「ジオスメクタイト」(Smecta(登録商標))と呼ばれるスメクタイトなどのスメクタイト型クレーの活性を次の実験プロトコールに従って評価することができる:
最初の臨床研究は、有効性研究の証明であることができる(第II期)。スメクタイトは、少なくとも6ヶ月にわたり1日当たり3回3gの投与量で投与できた。
この研究中に、臨床状態、特に下痢及び腹部膨満などの消化器症状、栄養(特に生物学的)状態、主要栄養素及び微量栄養素の吸収試験、免疫学的状態、特にセリアック病のマーカーである抗体の力価、腸粘膜の状態、特に絨毛組織萎縮症及び炎症の改善を監視する。
次の進行計画は、最近になって診断され、かつ、グルテンなしの食事が開始された患者の無作為化二重盲検式プラセボ対照第III期研究を含む。有効性を、腸粘膜が正常化するのにかかる時間と、第II期で監視したのと同じパラメーターとによって評価する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリアック病の治療又は予防を目的とした薬剤の製造のためのクレーの使用。
【請求項2】
セリアック病の予防を目的とした薬剤の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項3】
セリアック病の治療を目的とした薬剤の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記クレーがスメクタイトであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記スメクタイトが2−八面体であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記2−八面体スメクタイトがモンモリロナイト若しくはバイデライト又は次の2つの結晶化学極:モンモリロナイト及びバイデライトの間の中間結晶構造であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記2−八面体スメクタイトがモンモリロナイト又はモンモリロナイト極に近い中間結晶構造であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記2−八面体スメクタイトがモンモリロナイト又はモンモリロナイト極に非常に近い中間結晶構造であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記クレーが「ジオスメクタイト」と呼ばれるスメクタイトであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2010−518054(P2010−518054A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548713(P2009−548713)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000142
【国際公開番号】WO2008/113905
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509120469)イプセン・ファルマ・ソシエテ・パ・アクシオンス・シンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】