説明

セルロース材スラリー処理装置

【課題】細砕セルロース繊維材のスラリーから化学セルロースパルプを製造する装置を提供する。
【解決手段】セルロース材スラリー処理装置において、頂部近くの入口と底部近くの出口とを備える垂直の連続式蒸解缶11;スラリーポンプを含む蒸解缶用供給システム12;前記スラリーポンプの前のスラリーに収率向上または強度増進添加剤を導入するための収率向上または強度増進添加剤導管;前記蒸解缶の頂部処理ゾーンと頂部処理ゾーンの底部近くのスクリーンアセンブリと前記スクリーンアセンブリの下の蒸解ゾーン29;前記蒸解缶内で温度遷移部を生成させる前記スクリーンアセンブリ;前記スクリーンの上の前記蒸解缶に上向きの液の流れを確立するために設けられた、液を前記蒸解缶に導入、または再循環する手段;および前記蒸解缶の前記頂部ゾーンおよび/または供給システムへ収率向上または強度増進添加剤を導入する手段を備えることを特徴とする処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平成12年9月13日に出願された特願2000−278086号を原出願とする分割出願であり、本出願の発明は、セルロース材スラリー処理装置に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
1999年2月10日出願の米国特許出願第09/248,009号明細書および国際公開99/45191号公報は、化学蒸解に先だって有利な添加剤で細砕セルロース繊維材を処理する方法を開示している。この添加剤は、アントラキノン(AQ)またはポリサルファイド(PS)およびこれらの誘導体並びに同等品のような強度増進剤または収率向上剤であることが好ましい。本発明は更に、細砕セルロース繊維材、普通は木材チップ(本発明は他の形のセルロースの処理にも同じく適用できるけれども)の前処理に用いて、得られるパルプの品質(例えば、強度)を改良し、あるいはパルプ製造工程の効率(例えば、収率)を改良する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者により発見されたことによると、細砕セルロース繊維材、例えば、木材チップの前処理は、なかんずく、前処理後のチップの加熱と蒸解とを、前処理工程から本質的に分離すると、一層効果的になる。すなわち、前処理工程が、より低温で、アルカリが存在してもよいが、好ましくは実質的にアルカリの存在なしに行われ、蒸解温度へのチップの加熱が、前処理(セルロース材の浸透)が本質的に終了した後に行われる場合に、一層効果的な前処理を行うことができる。原出願の発明の態様の一つでは、添加剤は処理工程の初期段階で添加され、一方、蒸解薬剤、例えば、クラフト白液は、前処理の初期段階では量を減少したり、あるいは導入を避け、導入は前処理の後段階、あるいは正式な蒸解処理の際に行うようにする。従って、原出願の発明に従えば、前処理は恐らく従来に比して長時間、低温、低アルカリ量で行われ、蒸解添加剤により、チップは、蒸解温度、すなわち、140℃を超える温度に加熱される前に一層効果的に処理される。
【0004】
原出願の発明の態様の一つに従えば、細砕セルロース繊維材スラリーから化学セルロースパルプを連続的に製造する方法が提供された。この方法は、(a)セルロースのアルカリ劣化が実質的に起こらず、かつ酸加水分解が殆どあるいは実質的に全く起こらない効果的なアルカリおよび温度条件下で収率向上または強度増進添加剤含有の溶液でセルロース材を浸透するステップ、および(b)、ステップ(a)の後に、蒸解温度でセルロース材をアルカリ蒸解液で処理し、ステップ(a)を行わなかった場合に較べて高収率または高強度の化学セルロースパルプを製造するステップを実質的に連続的に行うものである。
【0005】
原出願の発明の方法では、ステップ(a)はセルロース材からリグニンの溶解が実質的に全くないように行うことができる。セルロース材は、ステップ(a)の終期に収率向上または強度増進添加剤(AQまたはその誘導体並びに同等品)を浸透させたものなので、従来の高温添加剤浸透に関連する問題は回避される。例えば、特にAQについて言えば、AQは巨大分子であるから、木材チップまたはセルロース材のようなものへの拡散は、例えば、アルカリに較べて長時間を要するので、よく拡散できるように溶解するには還元する必要がある。従って、時にはAQは還元形(普通、SAQと称される)で用いられる。しかし、普通はAQの約80%は溶解リグニンと反応してしまうので、意図した収率向上または強度増進という機能を果たすことができず、所望の機能を行うためのAQは約20%が残されるだけである。原出願の発明を用いることによって、従来より高いパーセンテージ(最大では実質的に全部)の添加AQが実際に木材チップを浸透し、その収率向上または強度増進という機能を果たすので、AQは還元形で添加してもよいし添加しなくてもよい。AQがチップに成功裡に浸透すれば、ヘミセルロースは蒸解中に溶解しないので、収率が向上し、強度を増進させる他の機構も用いられる。他の物質、例えば、界面活性剤を用いて添加剤をチップに浸透しやすくすることもできる。
【0006】
原出願の発明の方法ではステップ(a)のアルカリ濃度は、NaOHで表すと0〜10g/l未満で、温度は約80〜130℃、普通は約120℃未満、好ましくは約110℃以下で行うことができる。アルカリの量は最も好ましくは実質的にゼロであるが、好ましくはNaOHとして表すと約5g/l未満である。
【0007】
原出願の発明の方法では、ステップ(a)は連続式蒸解缶への供給システムで、ステップ(b)は連続式蒸解缶で行うことができる。正確には供給システムの何処でステップ(a)を行うかは、広範囲に変えることができる。例えば、チップビンは、これを木材ヤードに設置することができ、この場合添加剤は、噴霧方式などで木材チップの上に掛けるが、チップをチップビンに入れる前にも、入れている途中にも、あるいはチップビンに入っている間にも掛けることができる。次に、この木材チップを木材ヤードから蒸解缶まで、スラリー化媒体として主にあるいは実質的に独占的に水を用いて(アルカリ添加は意図的には行わないで)ポンプ輸送することができるので、このチップは、相当な時間望ましい低温、低アルカリという浸透に容易な条件にある。典型的な条件ではステップ(a)での浸透は、大気圧より高い圧力で少なくとも約20秒間、例えば、約2〜60分間行われる(大気圧より高い圧力は、従来の方法で作ることができる。例えば、液レベルがチップの上に来るようにしたり、ポンプで加圧したり、加圧槽で行ったりして圧力を上げる)。別法としては、添加剤の導入は、チップビンの後で、かつポンプおよび/または高圧フィーダーの前において、浸透槽のような別個の槽で行うことができるし、あるいは供給システムの他の位置でも、何らかの理由で有利ということが確かならば導入することができる。
【0008】
また、原出願の発明は、ステップ(a)の浸透の実質的直後に、ステップ(b)を含めてセルロース材処理に使用されるアルカリの約35〜100%をセルロース材に添加する方法も含むことができる。別法としては、アルカリはずっと下流側に添加することもできる。また、原出願の発明の方法は、ステップ(a)とステップ(b)との間に、(c)約110〜130℃、かつステップ(a)の温度より高い温度で、NaOHで表すと約5〜15g/l未満、かつステップ(a)の濃度より高い有効アルカリ濃度の添加剤を含む溶液を用いて第二ゾーンでセルロース材を処理するステップを更に含むことができる。
【0009】
原出願の発明の方法では、ステップ(a)はAQまたはその誘導体または同等品、ポリサルファイドまたはその誘導体または同等品、または二酸化硫黄、NaHSOまたはNaSOの形のサルファイトのうちの少なくとも一つを添加剤として用いることができる。好適な量の添加剤を用いることができる。例えば、AQまたはその誘導体または同等品を用いる場合は、ステップ(a)は普通、木材に対して約0.02〜0.5%、普通は木材に対して約0.02〜0.1%の全添加剤濃度で行われる。
【0010】
添加剤は蒸解工程中にも添加することができるが、これは従来通りである。
【0011】
原出願の発明の態様の別の一つに従えば、細砕セルロース繊維材を実質的に連続的に処理する方法が提供される。この方法は、(a)約80〜130℃の第一温度で少なくとも約20秒間、例えば、約2〜60分間、大気圧を超える圧力で、最大有効アルカリ濃度10g/l未満の有益な添加剤を含む主にあるいは実質的に独占的に水から成る第一液を用いて細砕セルロース繊維材のスラリーを処理するステップ、および(b)、ステップ(a)の後に、130℃を超える(例えば、140℃を超える)第二温度でNaOHで表すと10g/lを超える(好ましくは15g/lを超え、最も好ましくは20g/lを超える)初期有効アルカリ濃度を有する第二液を用いてスラリー中のセルロース材を処理し、化学セルロースパルプを製造するステップを実質的に連続的に行うものである。
【0012】
原出願の発明の方法は、ステップ(a)とステップ(b)との間に、(c)第一温度より高く、かつ140℃より低い第三温度で、第一液より高く第二液より低い最大有効アルカリ濃度の有益な添加剤を含む第三液でスラリーを処理するステップを更に含むことができる。
【0013】
原出願の発明の態様の別の一つは、細砕セルロース繊維材を処理する方法である。この方法は、(a)第一温度で第一アルカリ濃度(例えば、0〜10g/l未満)の有益な添加剤を含む液を用いて細砕セルロース繊維材のスラリーを処理(例えば、前処理)するステップ、(b)、ステップ(a)の後に、第一温度を超える第二温度で第二有効アルカリ濃度(ゼロより高く、第一有効アルカリ濃度より好ましくは少なくとも10%高い)の有益な添加剤を含む第二液を用いてスラリーを処理するステップ、および(c)、ステップ(b)の後に、第一温度と第二温度より高く、かつ130℃より高い(例えば、140℃より高い)温度で第一と第二有効アルカリ含有量より高い有効アルカリ含有量(すなわち濃度)を有する第三液でスラリーを処理し(恐らく、添加剤を実質的に全て置換した後であるが、必ずしもそうでなくてもよい)、化学セルロースパルプを製造するステップを行うものである。
【0014】
上記のように、ステップ(a)とステップ(b)で用いられる有益な添加剤は、AQ(最も望ましくはSAQ)、ポリサルファイド、硫黄、界面活性剤、およびこれらを組み合わせたものである。NaOHとして「有効アルカリ」(EA)として表される第一アルカリ濃度は好ましくは10g/l未満で、約5g/l未満でも良く、第一液にはアルカリが全く含まれないのも差し支えない。例えば、第一液は、工場用水、スチーム凝縮液、またはアルカリを殆ど、あるいは全く含まない洗浄機濾液でよい。処理ステップ(a)の第一温度は、好ましくは比較的低温、すなわち、130℃未満、好ましくは約120℃未満の温度で、第一温度は約90〜110℃の範囲、あるいはこれより低くても差し支えない。
【0015】
ステップ(a)の手順は、米国、ニューヨーク州グレンス フォールス(Glens Falls)のアンドリッツ−アールストローム社(Andritz−Ahlstrom Inc.)が商標ロー・レベル(LO−LEVEL)(登録商標)供給システムとして販売のシステムである米国特許第5,476,572号公報、第5,622,598号公報、第5,632,025号公報に記載の方法および装置を用いて行うことができる。ロー・レベル(登録商標)供給システムは、チップポンプを用い、水平式「スチーム処理槽」を用いないシステムであり、原出願の発明の処理に特に好適である。このシステムは、従来の供給システムで取り扱うことができる温度より低温でチップを供給し、処理することができるからである。他の従来の機器と方法も、例えば、チップポンプを用いずに、水平式スチーム処理槽を備えるものも原出願の発明を行うのに用いることができる。
【0016】
ステップ(b)の第二液は、少なくともある程度はアルカリを含むのが好ましく、例えば、第二液は 15g/l未満のEA、普通は約5〜10g/lのEAを含む。このアルカリ含有量は、クラフト白液、緑液、黒液、または白液、緑液、黒液の混合液および水または洗浄機濾液によって供給することができる。第二温度も好ましくは140℃未満、例えば、約120℃未満の温度で、普通は約110〜130℃の範囲である。ステップ(b)の手順は普通、連続式蒸解缶、例えば、米国、ニューヨーク州グレンス フォールスのアンドリッツ−アールストローム社販売のカミヤ(Kamyr)式(登録商標)連続式蒸解缶の上部で行われる。
【0017】
ステップ(c)の手順は正式のパルプ製造プロセスであり、どんな形の化学パルプ製造法でも差し支えないが、米国特許第5,489,363号公報、第5,536,366号公報、第5,547,012号公報、第5,575,890号公報、第5,620,562号公報、第5,662,775号公報などに記載のプロセスの一つまたは複数のプロセスであるのが好ましい。これらの特許に記載のプロセスと装置はアンドリッツ−アールストローム社から商標ロー・ソリッド(LO−SOLIDS)(登録商標)の下に市販されている。
【0018】
原出願の発明の態様の別の一つに従えば、細砕セルロース繊維材スラリーから化学セルロースパルプを連続的に製造する方法が提供される。この方法は、(a)第一処理ゾーンにおいて、セルロース材のアルカリ劣化が実質的に起こらないように効果的なアルカリおよび温度条件下で収率向上または強度増進添加剤含有の溶液でセルロース材を処理(その際、セルロース剤と添加剤の流れとがある時間互いに接触するように)するステップ、(b)、ステップ(a)の後に第二ゾーンにおいて約110〜130℃、かつステップ(a)の温度より高い温度でNaOHとして表される有効アルカリ濃度約5〜15g/l未満を有する添加剤を含む液でセルロース材を処理するステップ、および(c)、ステップ(b)の後に(恐らく、添加剤を実質的に全て取り出してセルロース材と接触させないようにした後であるが、必ずしもそうでなくてもよい)セルロース材をアルカリ蒸解液で蒸解温度で処理し、ステップ(a)とステップ(b)とを行わなかった場合に較べて高い(例えば、少なくとも2%高い)収率向上または高強度の化学セルロースパルプを製造するステップを連続的に行うものである。
【0019】
原出願の発明の方法では、ステップ(a)は連続式蒸解缶の供給システムで行い、ステップ(b)は連続式蒸解缶の頂部ゾーンで行い、ステップ(c)は頂部ゾーンの下の連続式蒸解缶で行うのが好ましい。また、ステップ(a)は、NaOHとして表される0〜10g/l未満、かつステップ(b)より低いアルカリ濃度で、温度は約80〜110℃で行うのが好ましい。添加剤の少なくとも50%をステップ(a)に導入することができるが、約40%をステップ(a)に、60%の添加剤は主としてステップ(b)で使用するためここ以外に導入することも差し支えない。添加剤がAQまたはその誘導体または同等品である態様では、ステップ(a)とステップ(b)とは、パルプに対して約0.05〜0.15%の全添加剤濃度で行われる。
【0020】
原出願の発明を実施するのに用いられる装置は、主に従来の装置であるが、幾つかの点の相違を述べれば、供給システムと連続式蒸解缶の頂部とへ添加剤を添加する個所と、頂部(連続式蒸解缶の頂部ゾーンと蒸解ゾーンの間の遷移部のスクリーンを含む)から抜き出された添加剤を場合によっては循環し、これを供給システムへ導入する個所とが相違する。
【0021】
本分割出願の発明に従えば、セルロース材スラリー処理装置が提供される。この装置は、頂部近くの入口と底部近くの出口とを備える垂直の連続式蒸解缶;スラリーポンプを含む蒸解缶用供給システム;スラリーポンプの前のスラリーに収率向上または強度増進添加剤を導入する収率向上または強度増進添加剤導管;蒸解缶の頂部処理ゾーンと頂部処理ゾーンの底部近くのスクリーンアセンブリとスクリーンアセンブリの下の蒸解ゾーン;蒸解缶内で温度遷移部を生成させるスクリーンアセンブリ;スクリーンの上の蒸解缶に上向きの液の流れを確立するために設けられた、液を蒸解缶に導入、または再循環する手段;および蒸解缶の頂部ゾーンおよび/または供給システムへ収率向上または強度増進添加剤を導入する手段を備える。
【0022】
本分割出願の発明の装置では、供給システムへ添加剤を導入する手段は、流れている液またはスラリーに液を導入することができる従来の導管、ノズル、ベンチュリー、または他の従来構造で差し支えない。スクリーンアセンブリ(これは、蒸解缶の頂部から底部へ配置される第二スクリーンアセンブリであるのが好ましい)の直近に上向き流を確立する蒸解缶に液を導入する手段は、この目的を達成するどんな従来の構造でもよく、ポンプ等に接続された中央パイプを備える再循環導管などである。また、本発明は、蒸解缶の頂部ゾーンから抜き出された添加剤を供給システム関連の添加剤導入手段へ再循環する手段を備えるのが好ましい。このような再循環手段は、この目的のための従来の導管、および/またはポンプ、バルブ、または同様な流体構造品でよく、再循環される液の一部から添加剤を分離する分離機器を備えることもできる。好ましい添加剤は、米国特許出願第09/248,009号明細書に記載されるものである。
【0023】
本分割出願の発明の主目的は、細砕セルロース繊維材を効果的に処理するに当たって、パルプの強度および/または他の有利な性質を増進させたり、あるいは処理プロセスの収率を向上させたりすることである。本分割出願の発明のこの目的および他の目的は、本発明の詳細な説明をよく吟味し、前記の特許請求の範囲をよく読めば明白となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本分割出願の発明の装置の好ましい実施の形態の一つを示す。図1は、連続式蒸解缶11と連続式蒸解缶供給システム12とから実質的に構成される細砕セルロース繊維材処理装置10を示す。供給システム12は、アンドリッツ−アールストローム社から販売されているロー・レベル(LO−LEVEL)(登録商標)供給システムであるが、細砕セルロース繊維材を導入し、スチーム処理し、スラリー化する従来のどんな供給システムも用いることができるし、および/または個別の浸透槽も一基または複数基用いることもできるし、および/または従来的でないシステム、例えば、蒸解缶に送るポンプを有する木材ヤードの機器および/またはチップビンを備えるシステムを用いることもできる。また、状況によっては複数の浸透池を用いることができる。この場合、添加剤の浸透が一旦完了すれば特定の池からスラリーがポンプ移送される(あるいは移送中に浸透が完了する)。
【0025】
例えば、針葉樹チップの形の細砕セルロース繊維材13が遮断装置へ導入され、遮断装置はチップを槽14でスチーム処理するために送る。槽14は、米国特許第5,500,083号公報、第5,617,975号公報、第5,628,873号公報、第4,958,741号公報、第5,700,355号公報に記載され、ダイアモンドバック(登録商標)という商品名のもとにアンドリッツ−アールストローム社から販売の槽であることが好ましい。もっとも他のタイプのスチーム処理槽も用いることができる。槽14からチップは計量装置15経由で導管16へ入り、導管16はアンドリッツ−アールストローム社販売のチップチューブ(Chip Tube)であることが好ましい。スラリー液は導管17経由で導管16へ導入され、液のレベルが導管16に保たれる。チップと液のスラリーはチップポンプ18の入口に供給され、チップポンプ18は、導管19経由で高圧輸送装置20の入口へスラリーを供給する。
【0026】
装置20は普通、アンドリッツ−アールストローム社から販売の高圧フィーダーである。装置20は更にスラリーを約5〜15バールの圧力に昇圧して、導管21経由でスラリーを連続式蒸解缶11の頂部へ圧送する。スラリー中に含まれる過剰液は、分離装置22、普通は従来のトップセパレーターを用いて、蒸解缶11の入口の所でスラリーから取り出される。この過剰液は導管23とポンプ24経由で供給システム12へ戻される。ポンプ24と導管25で昇圧されたスラリーは、フィーダー20から蒸解缶11へスラリーを圧送する駆動力を提供する。
【0027】
供給システムはまた普通インライン液抜出器26、レベルタンク27および補給液ポンプ28のような従来の装置を備える。蒸解液、例えばクラフト白液(WL)は普通レベルタンク27に従来どおり送られる。
【0028】
蒸解缶11は普通、複数の段数の円環状スクリーン31,32,33,34,35を備える。図1には5段のこのようなスクリーンアセンブリが概略示されているけれども、本発明は、2〜5段、またはそれ以上の段数のスクリーンを備えた蒸解缶で行うことができる。各スクリーンアセンブリ31〜35は普通、再循環導管36〜40、ポンプ41〜45、熱交換器46〜50を備える。実質的に完全に処理されたパルプは蒸解缶11の底部から導管51経由で排出される。
【0029】
本分割出願の発明に従えば、蒸解添加剤60、例えば、AQ、ポリサルファイドなどは、導管61,62,63の一本または複数の導管経由で供給システム12へ導入される。例えば、クラフト白液、緑液、黒液、または洗浄機濾過液を含むアルカリは導管64経由で供給システム12へ導入される。あるいは、相当な量のアルカリ(すなわち、10g/l以上、または5g/l以上)導入は後の工程になるまで遅らせることができる(すなわち、供給システムでは相当な量のアルカリ添加は全く行わない。精々フィーダー20や類似機器を潤滑する程度である)。普通は、これらのアルカリ源で、NaOHとして10g/l未満、好ましくはNaOHとして5g/l未満の有効アルカリ濃度(EA)が得られる。本発明の態様の一つでは、導管64に導入される液はアルカリを殆ど、または全く含まない。例えば、導入される液は水、凝縮液、高温黒液、または弱い黒液である。
【0030】
本分割出願の発明に従えば、供給システム12の温度は、好ましくは130℃以下、すなわち、好ましくは約80〜130℃、最も好ましくは約120℃未満、あるいは約110℃未満に保ち、アルカリ含有量は、十分に低くして、セルロースのアルカリ劣化が殆どあるいは全く起こらないようにして、添加剤、例えば、AQでの処理の際にリグニンの溶解が実質的に起こらないようにする。浸透剤、例えば、界面活性剤も添加剤と一緒に導入して、添加剤の処理を増強したり、アルカリのチップへの浸透を増進させることができる。ロー・レベル(登録商標)供給システムはこの種の低温処理に適しているのであるが、この処理は従来の供給システムでも、供給システムの温度を下げることによって行うことができる。温度低下は、例えば、水平式スチーム処理槽の圧力を下げたり、および/または液のフラッシュ蒸発を防止するために冷却熱交換器を用いて供給システム内または周りの液を冷却したりして行うことができるし、あるいは他の機器も用いることができる。
【0031】
好ましくは、低温かつ殆どあるいは全くアルカリがない状態でのこの前処理の後、セルロース材を従来のアルカリ蒸解液(例えば、クラフト、サルファイト、または他のアルカリ法液)で蒸解し、化学パルプを製造する。蒸解レベルのアルカリ(例えば、NaOHとして表して初期に30g/l以上)での処理は、添加剤添加の浸透操作の実質的直後で差し支えないが、これらは処理の中間段階で行ってもよい。このような中間段階処理は図1に見られる。
【0032】
図1において、供給システム12での前処理の後、前処理されたスラリーは導管21経由で蒸解缶11へ輸送され、更に前処理(蒸解缶11の頂部、例えば、ゾーン29で)され、その後に正式な蒸解(蒸解缶11の真ん中、スクリーン32の近くの下で)に掛けられる。分離器22を通過後、依然として好ましくは約120℃未満の温度にあるチップスラリーが矢印65に概略示されているようにスクリーン31に達するまで下向きに流れる。スクリーン31ではスラリー中の液がある程度スラリーから除かれる。除去されたスラリーの一部は導管66経由で除き、他で使ったり、処理したりすることができ、および/または液の一部は取り除いて導管36経由で循環し、スクリーン31の近くに戻すことができる。再循環された液はポンプ41でポンプ移送されるが、熱交換器46で加熱・冷却しても、あるいはしなくてもよい。導管66の液は普通、少なくともある程度の添加剤を含んでいる。この添加剤は、例えば、これを導管67に導入することによって供給システム12へ戻すこともできる。導管66の液は熱交換器68で冷却することもできる。蒸解薬剤、添加剤、希釈液、またはこれらを組み合わせた液を導管69経由で循環ライン36へ添加することができる。
【0033】
セルロース材のスラリーはスクリーン31を通過して、次にスクリーン32へ入って来る。本発明に従えば、スクリーン31から液を取り出すと、矢印70に概略示されているようにスクリーン31とスクリーン32との間のチップの流れに対して液の向流が生じる。スクリーン32の所で、液が更に除かれ、ポンプ42、導管37、熱交換器47経由で再循環される。加熱はしてもしなくてもよい。またここでも、添加剤、希釈液、蒸解液、および/またはこれらを組み合わせた液を導管71経由で循環ライン37へ導入することができる。熱を循環ライン47に加えることができ、そうすればスクリーン32を通過しながら120℃より高い温度にスラリー温度を上げられる。運転モードの一つでは、スクリーン32の上の液の流れは上向きであり、スクリーン32の下の液の流れは下向きなので、スクリーン32の近くで温度差が生じる。
【0034】
ゾーン29では、スラリーには添加剤(例えば、AQ)が含まれ、適当なアルカリ添加があれば、第二アルカリ濃度(例えば、約5〜15g/l未満で、供給システム12の第一アルカリ濃度より高い)で、供給システム12の第一温度より高い第二温度(例えば、約110〜130℃)にある。ゾーン29では、わずかなアルカリ劣化が起こるかも知れないが、添加剤による効果的な処理も行われる。
【0035】
スクリーン32を通過すると、スラリーは普通、正式な蒸解温度、すなわち、140℃より高い温度に加熱され、正式な蒸解プロセスが始まる。添加剤の幾部分かは蒸解工程の方へ流れるが、別法としては、蒸解プロセスが始まる前に、例えば、導管80の方に流してしまって、添加剤を部分的あるいは実質的に完全に(例えば、90%を超えて)除いてしまうこともできる。
【0036】
本分割出願の発明によれば、前処理添加剤は供給システム12に導入され、チップは添加剤で処理され、その後でチップスラリーが蒸解缶11に導入される。この処理は120℃未満の温度で行われるのが好ましい。AQの場合、添加剤濃度は普通、パルプに対して約0.20%未満で典型的にはパルプに対して約0.02〜0.5%である。AQの約50%を導管61経由で導入し、約25%を導管69と導管71に導入することができる。また、AQ全部、すなわち、実質的に100%を供給システム12に(あるいは別法では、アルカリ添加を実質的に行う前に)導入することができ、そうすれば蒸解缶11にはAQは殆ど、あるいは全く導入されない。実施の形態の別の一つでは、AQの約40%を供給システム12に導入し、約60%を蒸解缶11に導入することができる。
【0037】
装置10に導入される全アルカリの50%未満を供給システム12に導入することができる。これは、約40%未満でもあるいは約30%未満でも差し支えない。態様の一つでは、アルカリは供給システム12へ導入されない、すなわち、供給システム12での処理の際には、チップは実質的に添加剤と主に水(新鮮な水や濾過水の形にかかわらず)のみに曝されるのも差し支えない。
【0038】
供給システム12、蒸解缶11の頂部ゾーン29、蒸解缶11の蒸解ゾーン(32の下)における処理時間は、処理される具体的なセルロース材や他の因子によって変化する。普通の針葉樹では、供給システム12での添加剤による処理時間(セルロースのアルカリ劣化が実質的に起こらない条件下では)は約2〜60分間で、ゾーン29での処理は、この処理を用いるならば、処理時間は約20〜60分間で、蒸解時間は通常通りで、例えば、約1〜3時間である。
【0039】
スクリーンアセンブリ33〜35各々に関連して、抽出導管81〜83があるが、これらはフラッシュタンクや薬剤回収系に連結することができるし、あるいは単に、ロー・ソリッド(LO−SOLIDS)(登録商標)蒸解プロセスの際に比較的高濃度の溶解有機物を含む液を抽出するために用いることができる。単一槽装置の代わりに、多槽装置(浸透槽を含む)も用いることができ、この場合(機器を円滑に動かすことを除いて)相当程度のアルカリ添加は浸透槽の最後の所に、あるいはその後の所のみに使用することができる。
【0040】
以上開示した説明では、各広い範囲内にある具体的な範囲は全て本明細書に開示されたものとする。例えば、例示するだけであるが、10g/l未満のEAとは、0〜1g/l、0.2〜5g/l、3〜8g/l、およびこの広い範囲内の他の狭い範囲全てを意味する。
【0041】
本分割出願の発明は、最も実際的かつ好ましい実施の形態であると現在考えられたものについて示し、記載したものであるので、本分割出願の発明は開示された態様に限定されず、本分割出願の発明の精神と特許請求の範囲内に含まれる多くの部分的修正や等価の工程や装置を含むものであることは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本分割出願の発明の装置の概略図である。
【符号の説明】
【0043】
10…蒸解缶装置、11…連続式蒸解缶、12…供給システム、13…細砕セルロース繊維材、14…スチーム処理槽、15…計量装置、16…チップチューブ、17,19,21,23,25、51,61,62,63,64,66,67、69,71,80…導管、18…スラリーポンプ、20…高圧輸送装置、22…セパレーター、24,41,42,43,44,45…ポンプ、26…インライン液抜出器、27…レベルタンク、28…補給液ポンプ、29…上部ゾーン、31,32,33,34,35…円環状スクリーン、36,37,38,39,40…再循環ライン、46,47,48,49,50,68…熱交換器、60…添加剤、65,70…矢印、81,82,83…抽出導管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース材スラリー処理装置において、
頂部近くの入口と底部近くの出口とを備える垂直の連続式蒸解缶;
スラリーポンプを含む蒸解缶用供給システム;
前記スラリーポンプの前のスラリーに収率向上または強度増進添加剤を導入するための収率向上または強度増進添加剤導管;
前記蒸解缶の頂部処理ゾーンと頂部処理ゾーンの底部近くのスクリーンアセンブリと前記スクリーンアセンブリの下の蒸解ゾーン;
前記蒸解缶内で温度遷移部を生成させる前記スクリーンアセンブリ;
前記スクリーンの上の前記蒸解缶に上向きの液の流れを確立するために設けられた、液を前記蒸解缶に導入、または再循環する手段;および
前記蒸解缶の前記頂部ゾーンおよび/または供給システムへ収率向上または強度増進添加剤を導入する手段
を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記蒸解缶の頂部ゾーンから抜き出された収率向上または強度増進添加剤を、前記スラリーポンプ前のスラリーへ添加剤を導入する前記手段へ再循環する手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
収率向上または強度増進添加剤がアトラキノン(AQ)であることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
実質的にアルカリの不存在下にAQを含むAQ溶液の供給源を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−223217(P2008−223217A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116793(P2008−116793)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【分割の表示】特願2000−278086(P2000−278086)の分割
【原出願日】平成12年9月13日(2000.9.13)
【出願人】(502075342)アンドリッツ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】