説明

セルロース系材料から構成物質を抽出、単離する方法

セルロース系材料から構成成分を抽出し、単離する方法であって、抽出物を得るための条件下でセルロース系材料を超臨界流体と接触させる工程と、得られた抽出物から不溶性材を取り除く工程と、蒸留によって抽出物を精留して1つ以上の分離された構成成分を供する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系材料の構成物質を抽出し、単離する方法およびこの方法を用いて単離される構成物質に関する。より具体的には本発明は、タバコなどのセルロース系材料を超臨界抽出することを含み、その後に抽出媒体に存在する構成物質の少なくとも1つの蒸留によって分離する方法に関する。
【0002】
抽出、単離されるセルロース系材料の構成物質は、風味および/または芳香特性を有し、これらは、これらが単離されるセルロース材料またはこれらが後に加えられるセルロース系材料に風味または芳香を付与する。
【0003】
単離された構成物質は、製品、特に燃焼性および非燃焼性タバコ製品もしくはタバコまたはニコチン代替え製品の風味および/または芳香性を向上させるために使用されるものである。
【背景技術】
【0004】
燃焼性および非燃焼性タバコ製品のユーザーは、嗜好する製品の味に極めて敏感である。このような製品の製造に関連する方法は、味および芳香に寄与するタバコの構成物質を取り除いてしまう場合がある。その結果、タバコの処理前、処理中または処理後にタバコの風味を高めることが望まれている。
【0005】
さらにユーザーにタバコ製品に関連する味または芳香感覚を提供し、かつ、タバコ製品自体は、タバコを含まない、例えばタバコフリーニコチン代替え品の製造が望まれる場合がある。
【0006】
またユーザーに特定の味または芳香感覚、例えばメンソール風味および/またはメンソールの匂いを供することが望まれる場合もある。
【0007】
これらの目的は、風味剤および/または芳香剤を使用することによって達成される。
【0008】
風味剤は、ユーザーの口内に何らかの感覚をもたらす物質である。この感覚は、味および匂いを感じることによって主に感じられるが、渋味、辛味および暑い/冷たいなどの三叉神経による感覚を検知する口の中の触覚および熱受容体によっても検知される。
【0009】
口の中に風味を発生させるほとんどの物質は、極性であり、非揮発性であり、かつ水溶性である。芳香を付与する物質は、鼻腔または口腔のいずれかを介して臭覚受容体内で感知されるように十分な揮発性を有していなければならない。ユーザーが感知することができる風味の強さは、味、三叉神経系および芳香受容体との化合物の相互作用から生じる。
【0010】
非揮発性および揮発性芳香および風味化合物類のいくつかの例を下記表1に示すが、当然のことながら単一の類の化学物質であっても、特に異なる濃度では多くの多岐に亘る風味を生じる。
【0011】
【表1】

【0012】
風味および/または芳香特性を有する物質は、種々の源から得ることができる。これらの源の多くは、ミント風味が単離されるハッカまたはセイヨウハッカ、ショウガ風味が単離されるショウガ、風味剤であるソラノンが単離されるクロフサスグリの芽、風味剤であるジヒドロアクチニジオリドが単離されるフェヌグリークおよびチコリ風味が単離されるキニガナなどの天然のセルロース材などがあげられる。
【0013】
別の風味源としてはタバコがあり、これはプレゴン、ピペロナール、ゲラニルアセトン、3−メチルブタナール、ベンゼンエタノール、メチルテトラデカノエート、ベンズアルデヒドおよびフェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類、ノナナール、ペンタナールおよびヘキサナールなどのアルキルアルデヒド類、サフロール、トランス−アネトール、ミリスチシンおよびメチルオイゲノールなどのアルキルベンゼン類、イオノンおよびソラノンなどのケトン類、リナロールなどのテルペンアルコール類、およびセンブレンおよびジヒドロアクチニジオリドなどの単環または揮発性テルペン類などの風味剤を含むことが知られている。
【0014】
セルロース材料から風味および/または芳香特性を有する成分を抽出できることが望まれている。
【0015】
溶剤を使用してセルロース材の成分を抽出することが可能である。例えば下記特許文献1は、石油系エーテルおよび無水エタノールを高温または低温条件で使用してタバコから成分を抽出して「タバコエキス」を提供することを開示している。しかしながらこの抽出方法は、例えばろ過または蒸留工程などの抽出物から溶剤を分離、除去するための処理工程を必要とするといった不利な点がある。溶剤を除去するための追加の処理工程を必要とすることは、時間およびコストが掛り、溶剤と似た物性を有するセルロース材の成分も「エキス」から取り除いてしまうことがあり得る。例えば溶剤と同じような沸点を有する抽出された風味または芳香性化合物が、沸点を基に化合物を区別する蒸留による分離を行った場合、溶剤と一緒に取り除かれてしまう場合がある。これにより抽出された風味または芳香性化合物によって溶剤が汚染され、抽出物から風味/芳香性化合物が失われてしまう。またセルロース材の可溶性成分を超臨界状態で溶剤を使用することによって抽出することができることも知られている。この方法は、超臨界抽出または超臨界流体抽出として知られている。
【0016】
超臨界流体は、その熱力学的臨界点を超えた温度または圧力にある物質である。流体がその臨界点に近いとき、圧力または温度の小さな変化で密度などの特性が大きく変化する。
【0017】
超臨界抽出の基本的な原理は、供給材料を超臨界流体と接触させて、供給材料内の揮発物質を超臨界相に分配することである。あらゆる可溶性物質を溶解させた後、溶解した物質を含む超臨界流体を除去し、供給材料の溶解した物質が超臨界流体から分離される。
【0018】
本明細書中で使用する「超臨界流体」は、その臨界点、好ましくは臨界点を超えた温度および圧力にある媒体を指す。温度/圧力が液体/気体層線に沿って上昇するにつれて、液体および気体状態との間の区別が、「臨界点」と呼ばれる液体相と気体層が1つの層になる点に徐々に近づくにつれて消失する。従って超臨界流体は、純粋な液体と気体の物理的および熱的特性の間にある物理的および熱的特性によって特徴づけられる。従って「超臨界流体」なる表現は、圧力および/または温度が臨界点の下でかつその付近にある場合に2つの相を有する媒体および圧力および温度が臨界点またはそれを超える場合に1つの相だけを有する媒体を包含する。臨界点付近でかつ臨界点を超える場合、媒体の特性は、圧力および/または温度が僅かに変化するだけで急激に変化する。超臨界流体は、液状有機溶剤と同じような溶媒力を有するが、それよりもかなり高い拡散性、低い粘度および低い表面張力を有し、従って容易に多孔性の繊維性の固体内に入り込む。超臨界流体の溶媒和力は、よって圧力または温度を変えることによって調節することができる。
【0019】
下記特許文献2は、高温高圧で超臨界流体を使用して、ニトロサミン類を除去するためにタバコを処理する方法を開示している。
【0020】
下記特許文献3は、超臨界COを使用してタバコ葉からニコチン含有物を除去することを開示している。
【0021】
超臨界抽出は、追加の処理工程を必要とせずに溶剤を抽出物から除去できるという利点を他の抽出法に対して有する。その系は、抽出後に大気条件(または非超臨界)に戻すことができ、これにより溶剤が蒸発する。これは純粋な形で溶剤(即ち抽出された成分で汚染されることなく)を収集し、系内に戻すことができ、抽出された成分が溶剤内に失われないという利点を有する。
【0022】
しかしながら超臨界抽出は、供給材料から個々の成分を選択的に除去することができない。従って供給材料から特定の成分を抽出したい場合、所望の成分を超臨界流体から分離しなければならず、残った物質材料は、供給材に戻される。
【0023】
例えば超臨界抽出は、セルロース系供給材料から実質的にすべての溶質を抽出するのに充分な条件下で実施することができる。抽出後に分離工程が続き、そこで構成成分が超臨界流体から分離される。分離された成分は、取り除かれるが、他の成分は、超臨界流体によってセルロース系供給材料に戻され、これにより効果的に供給材料を再構成する。
【0024】
この方法の一例が下記特許文献3に開示されており、これはタバコのニコチン量を減らすが、他の成分の量が実質的に影響を受けないようにすることを目的とした方法を開示している。特許文献3の方法は、超臨界状態または液体状態にある溶剤でタバコを抽出することを含む。溶剤は、酸含有トラップを通過し、そこでは実質的にニコチンが取り除かれる。ニコチンを含まないが、超臨界相に分配された他の成分を豊富に含む溶媒は、タバコのセルロース成分に戻される。
【0025】
下記特許文献5は、タバコから有害要素を除去するために超臨界COを使用することを開示している。タバコくずからの抽出物を含む超臨界COは、活性炭などの吸着材を含む精留分離器に加圧下で制御された温度で供給され、有害なタバコ成分を除去する。この超臨界COは、タバコくずと再度接触させ、温度と圧力を下げて所望の成分をタバコくずに移行させる。
【0026】
超臨界流体から成分を単離する手段も知られている。例えば下記特許文献6は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して超臨界流体によって得られたフラクションを分離することを開示している。しかしながらクロマトグラフィーなどの分離方法は、潜在的に有毒で、環境に優しくなくおよび/または可燃性で、かつ、通常単離後に成分から除去する必要がある溶剤を使用する。このような溶剤としては、ベンゼン、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、トリエチルアミンおよびメタノールなどがある。
【0027】
さらに超臨界流体から個々の構成成分を効果的に単離するのが非常に困難である。これは、特に所望の成分が少量の供給材料内に存在する場合、または所望の成分を単離する成分の特性が供給材料に見られる他の成分の特性と極めて類似している場合などである。例えばHPLCおよびガスクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー技術は、分離されるサンプル間の極性の違いに依存している。ゲルろ過クロマトグラフィーは、分子量の違いに依存している。従ってこれらの技術では、同じような分子量または極性を有する成分を単離することは極めて困難である。
【0028】
混和性の液体混合物を分離する別の方法としては、蒸留が知られている。VTA Verfahrenstechnische Anlagen GmbH&Co.KG(ニーダーヴィンクリング、ドイツ)などの会社は、蒸留の分野で専門技術を有している。蒸留は、液体を沸騰するまで加熱し、得られた熱蒸気を捕獲し、冷却し、得られた濃縮サンプルを集めることである。沸騰した液体混合物中の成分の揮発性の違いに基づいて混合物を蒸留を利用して分離することが可能である。蒸留の理想的なモデルは、基本的にはラウールの法則およびドルトンの法則によって規定されている。
【0029】
ラウールの法則は、成分が混合物中のその成分の割合および成分が純粋なときの蒸気圧に比例する混合物の総蒸気圧に寄与すると仮定している。
【0030】
ドルトンの法則は、混合気体としての全体の圧力が混合気体中の各成分の分圧の和に等しいとしている。液体混合物を加熱すると、混合物中の各成分の蒸気圧が上昇し、これにより全体の圧力を上昇させる。全体の蒸気圧が液体周囲の圧力に達すると、沸騰し、液体は、その大半を介して気体に変化する。所定の組成を有する混合物は、その成分が相互に可溶性である場合、所定の圧力で1つの沸点を有する。
【0031】
沸点で混合物の全ての揮発性成分は、沸騰するが、蒸気中の単一の成分の割合は、全体の蒸気圧のその成分の割合に等しい。軽い成分は、高い分圧を有し、従って蒸気中で濃縮されるが、重い揮発性成分も分圧を有し、必然的に蒸発するが、蒸気中であまり濃縮されない。
【0032】
通常、蒸留は分留カラムを使用して実施される。混合物は、それが蒸発するまで熱せられる。蒸気が分留カラムを上昇しながら通過し、そこで徐々に冷却される。蒸気中の種々の成分が、分留カラム内の異なる高さで濃縮し、元の混合物の成分(ここでは液体)が分離される。
【0033】
単独の蒸気濃縮相を利用する単純な蒸留法は、沸点の差が60〜70°C未満の混合物を効果的に分離しないという点で不利である。より近い沸点を有する混合物を分離しよとして分留サイクルを繰り返すことは、費用が掛かり、かつ、特に混合物中の成分が同じまたは極めて類似した沸点を有する場合、該混合物中の物質の1つを純粋な蒸留物として供する目的が達成されない。
【0034】
例えば下記特許文献1は、粉砕されたタバコ片を高温または低温状態の石油エーテルに晒して得られたエキスからタバコ成分を分離するために多段階分子蒸留を利用することを開示している。
【0035】
超臨界抽出によって供される個々の構成成分を効果的に単離することの難しさは、タバコに風味または芳香を付与するタバコの成分を単離することを考慮した場合に特に問題になる。これは多くのこのような成分は、望ましくないと考えられるタバコの成分と性質が似ており、かつ、同じような物性を有するからである。
【0036】
例えば単離された成分がニトロサミン類で確実に汚染されないようにすることが望ましい。ニトロサミン類は、100年以上も前に化学の文献で最初に紹介された化合物の一類である。タバコは、特定のニトロサミン類を含むことが知られており、これらはタバコ特有ニトロサミン類(TSNA類)として知られている。TSNA類は、N−ニトロソノルニコチン(NNN)、4−メチル−ニトロソアミノ−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)、N−ニトロソアナタビン(NAT)およびN−ニトロソアナバシン(NAB)などの4つの化合物からなる。TSNA類は、成長しているタバコ植物または新鮮な刻みタバコ(生タバコ)中にはあまり多く存在していないと考えられているが、タバコの硬化および熟成中に形成されると考えられている。
【0037】
タバコ抽出物から選択的に除去するのが望まれている別の化合物は、ベンゾピレンであり、これは環境よびタバコ煙中に見られる多環式炭化水素である。
【0038】
所望の風味または芳香特性を利用するために分離されるタバコの構成成分は、ベンゾピレンおよび/またはTSNA類で著しく汚染されないようにするのが望ましい。このような汚染は、これら化合物の物性が単離することが望まれているタバコ構成成分の物性に似ているので、化合物を単離するなんらかの方法を利用すると生じる可能性がある。
【0039】
風味または芳香特性を利用するために単離されるセルロース系材料の構成成分は、ニコチンで著しく汚染されることが望ましくない場合もありうる。例えば、このような構成成分をニコチンを含まない製品に使用することが望ましい場合もある。ニコチンによる汚染は、単離すべきセルロース供給材料の構成成分の物理的特性がニコチンの物理的特性と類似していることによって、いくつかの単離法で生じる可能性がある。
【0040】
例えばニコチンの分子量は、162.24gであり、風味剤サフロールの分子量は、162.2gである。混合物から化合物をその分子量を基に単離する標準的なゲルろ過分離法は、従って、ニコチンも含む供給材料と接触させた超臨界流体から実質的に純粋なサフロールのサンプルを得るために使用することはできない。
【0041】
下記表2は、タバコに通常存在するいくつかの芳香化合物の物性の詳細を示している。また表2は、望ましくないと考えられているタバコの成分のいくつかの物性の詳細を示している。
【0042】
【表2】

NNN:N−ニトロソノルニコチン、NNK:4−メチル−ニトロソアミノ−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン、NAT:N−ニトロソアナタビン、NAB:N−ニトロソアナバシン、B[a]P:ベンゾピレン
Mwt:分子量、BPt:沸点、Mpt:融点
【0043】
望ましくない化合物によって所望の構成成分の1つ以上が汚染されると、さらなるサンプルの処理が必要になる。これには費用と時間が掛る。
【0044】
下記特許文献7は、天然の固体原料からニコチンなどの「目的成分」を抽出する方法を開示し、この方法では、原料を第1の高圧流体と接触させている。その後流体およびその中に溶解している成分は、吸収剤と接触させる。吸収剤−可溶性成分は、温度勾配を受けた第2の高圧流体と接触させる。温度勾配によって、確実に目的成分だけが第2高圧流体に溶解する。目的成分を含む第2高圧流体は、セパレーターに導入され、そこで目的成分は、第2高圧流体中の目的成分の溶解度を減少させることによって分離される。
【0045】
タバコからニトロサミンを単離、除去することに関する下記特許文献8は、10を超える処理工程を必要とする方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
本発明の目的は、セルロース系材料から選択的に成分を単離することができる簡単な方法を提供することである。
【0047】
特に本発明は、沸点および/または蒸気圧が類似している化合物の単離を可能にする単純な方法を提供することを目的としている。
【0048】
さらに本発明は、処理工程が5未満の方法を提供することを目的としている。
【0049】
さらに本発明は、汚染分離マトリックスを必要としない点で相対的に環境に優しい方法を提供することを目的としている。
【0050】
また本発明は、セルロース系材料から可溶性成分を抽出するために潜在的に有毒または可燃性の抽出溶剤の使用を必要とせず、抽出物から構成成分を単離するための溶剤の使用を必要としない方法を提供することを目的としている。
【0051】
さらに本発明は、処理工程を実施するために市販されている道具および/または機械に関し、高度な制御性を有する方法を提供することを目的としている。
【0052】
さらに本発明は、比較的費用の掛からない方法を提供することを目的としている。
【0053】
本発明のさらなる目的は、使用する機械が元の作業工程に戻す際に過剰な清掃サイクルを必要としない点で比較的よごれの少ない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0054】
従って本発明の態様では、セルロース系材料から構成成分を抽出、単離する方法が提供され、この方法は、
(a)抽出物を供するための条件下でセルロース系材料を超臨界流体と接触させる工程と、
(b)抽出物から不溶性材料を除去する工程と、
(c)1つ以上の単離された構成成分を供するために蒸留によって抽出物を分留する工程とを含む。
【0055】
本明細書中で使用する「セルロース系材料の構成成分」または「セルロース系材料からの構成成分」なる語句は、超臨界流体によって可溶化される化合物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
超臨界用途に実際に使用できる流体の例は、二酸化炭素、六フッ化硫黄、亜鉛化窒素、CF、CHF、CClF、CBrF、CF=CH、CF−CFCF、CHCIF、CCl、CHClF、CClF、CBrF、CFCl=CF、CH−CF、オクタフルオロシクロブタンなどの最大で4つの炭素原子を有するハロゲン化炭化水素およびプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、エタノール、アセトン、酢酸メチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、四塩化炭素などの最大で7つの炭素原子を有する炭化水素などがある。その他の利用可能な流体としては、NO、SFおよびアルゴンがある。
【0057】
好ましい実施態様では、超臨界流体は、無毒で可燃性で環境に優しい抽出媒体である。従っていくつかの実施態様では、超臨界流体は、メタノールやヘキサンではない。好ましい実施態様では超臨界流体は、二酸化炭素(CO)である。
【0058】
セルロース系材料は、木、花、草本、茂み、草、つる、シダ、苔などの植物界からのあらゆる種から得られるものであってもよい。
【0059】
特定の実施態様ではセルロース系材料は、モウズイカ、クローブ、ミント、茶、ユーカリまたはカモミールから得られるものであってもよい。
【0060】
好ましい実施態様ではセルロース系材料は、維管束植物から得られるものであり、最も好ましくは球果植物門(球果植物類)、ソテツ門(ソテツ類)、イチョウ門(イチョウ類)、グネツム門(グネツム類)および被子植物から得られるものである。被子植物門の下位にある植物の科は、アサ属(ホップ)を含むアサ科およびナス科植物またはジャガイモ科としても知られているナス科を含む。ナス科においてタバコは、特に好ましい属であり、本発明に使用するにあたって特に好ましいセルロース系材料は、タバコ植物または単にタバコと言われるタバコ種である。
【0061】
タバコは、繊維マトリックス、例えばセルロースなどの高分子量ポリマー化合物および例えばヘミセルロースおよびリグニンなどの多くが非揮発性である種々の中分子量の構成成分並びに芳香および風味化合物を含む低分子量構成成分など多岐に亘る3000を超える化合物を含む。
【0062】
タバコ成分の例としては、カロテノイド誘導体、アルカロイド類、ニトロサミン類、湿潤剤、金属、およびニコチン、ノルニコチン、アナバシン、ミオスミン、アナタビン、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、アンモニア、ニッケル、鉛、カドミウム、クロミウム、ヒ素、セレニウム、水銀、ベンゾピレン、硝酸塩、トリアセチン、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸およびオイゲノールなどによって例示される非高分子化合物などがある。
【0063】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の第1の態様による方法で抽出され、単離されるセルロース系材料の構成成分は、それらが単離されたセルロース系材料またはそれらがその後に添加されるセルロース系材料に風味または芳香を付与するという点で風味剤および/または芳香剤としての特性を有する。
【0064】
いくつかの実施態様においてその構成成分は、クマリン、プレゴン、フェニルアセトアルデヒド、ノナナール、センブレン、リナロール、イオノン、ゲラニルアセトン、3−メチルブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ベンゼンエタノール、メチルテトラデカノエート、ベンズアルデヒド、ピペロナール、トランス−アネトール、ソラノン、ジ−ヒドロアクチニジオリド、サフロール、メチルオイゲノール、ミリスチシンおよびアジュバントまたはその誘導体の内の1つ以上であってもよい。
【0065】
好ましい実施態様では、本発明の第1の態様による方法で抽出、単離されるセルロース系材料の構成成分は、ニコチン、1つ以上のニトロサミン類および/またはベンゾピレンを含まない。最も好ましい実施態様では、本発明の第1の態様による方法で抽出、単離されるセルロース系材料の構成成分は、実質的にニコチンを含まない。
【0066】
好ましい実施態様では、本発明によって単離される構成成分は、実質的に純粋な成分である。
【0067】
特定の実施態様では、本発明によって単離される構成成分の純度は、80〜100%、90〜100%、95〜100%、98〜100%、99〜100%または99.5〜100%である。いくつかの実施態様では単離された構成成分の純度は、75〜95%、75〜90%または85〜90%である。
【0068】
本明細書中で使用する「純粋」なる用語は、単離された成分が所望の構成成分のみからなり、セルロース系材料の他の構成成分に汚染されていないことを意味する。
【0069】
好ましい実施態様では、本発明の第1の態様による方法で使用されるセルロース系材料は、植物の葉柄または葉身からの材料を含むまたはこのような材料からなる。特に好ましい実施態様では、セルロース系材料は、タバコ葉柄またはタバコ葉身を含むまたはタバコ葉柄またはタバコ葉身からなる。最も好ましい実施態様では、セルロース系材料は、タバコ葉身を含むまたは葉身からなる。通常、風味化合物の大半は、植物の葉の葉身部分に保持されており、従って本発明による方法に葉身を使用することで風味/芳香化合物の収率を向上させることができる。しかしながら、葉身は糖類およびニコチンを多く含む。これに加えてニトロサミン類およびベンゾピレンの多くは、熱硬化されたヴァージニアタバコの葉身および空気硬化されたバーレイタバコの葉身および葉柄に見られる。従って葉身から抽出された構成成分は、ニコチンおよび/または1つ以上のニトロサミン類および/またはベンゾピレンに汚染されやすい。
【0070】
任意ではあるが、セルロース系材は、最適な抽出特性を得るために本発明の第1の態様の工程(a)に記載したような超臨界抽出の前に1つ以上の方法で処理することができる。例えばセルロース系材料を炭酸アンモニウムなどの化学塩基で予備処理してもよい。
【0071】
これとは別にまたは加えて、セルロース系材料を超臨界抽出の前に予備水和させてもよい。これは、例えば水分量が知られている(標準的な分析工程で設定された)セルロース系材料を所望の量の水が入った容器に所定の重量で入れる。セルロース系材料と水が混合され、容器を密閉し、約4°Cで約24時間放置し、平衡させる。水分量を標準的な分析法を使用しセルロース系材料のサンプルを試験し、水分量を定めることができる。
【0072】
セルロース系材料の水分量は、セルロース系材料の崩壊につながる水性スラリーが形成されるレベルを超えないことが好ましい。通常超臨界流体による抽出の前のセルロース系材料、特にタバコの水分量は、10〜約50重量%、好ましく約10〜約35重量%、より好ましくは約10〜約20重量%、さらに好ましくは1、2、3、4または5〜約10重量%である。
【0073】
例えば水によるセルロース系材料の予備処理は、本発明による方法で抽出されるセルロース系材料の構成成分の種類のバランスを変えるために利用することができる。その水を超臨界流体と混合すると、セルロース系の原料を水和することにより抽出される化合物のバランスに影響を与えることができる。このように混合することによって、水が最小限存在する場合の超臨界流体の極性および/またはpHと比較して超臨界流体/水抽出溶剤の極性および/またはpHが変わる。
【0074】
セルロース系材料をミリング、粉砕またはそのサイズを小さくすること(例えば切断されたくず状にするため)によって予備処理することは、抽出溶剤に晒されるセルロース系材料の表面積が大きくなるので抽出性能を高めることにつながる。これによって発明の第1の態様による方法の工程(a)の際に使用される抽出液をセルロース系材料と密に接触させることができる。
【0075】
流体が臨界点またはそれより高くなる限り、超臨界抽出中に加えられる圧力、温度には制限がない。二酸化炭素の場合、温度は、30°Cほどの低温であってもよく、好ましくは少なくとも約31.1°Cである。好適には温度は、少なくとも約35°Cであり、好ましくは約40°Cであり、少なくとも約100°Cであってもよい。温度は、約30〜約150°Cであってもよく、より好ましくは約35〜約100°Cであってもよく、さらに好ましくは約35〜約80°Cであってもよい。
【0076】
抽出の際に加えられる圧力は、本発明の方法で採用される超臨界流体の臨界圧力またはそれ以上の圧力であってもよい。二酸化炭素の場合、圧力は7.0MPa程度の低圧でもよく、好ましくは圧力は、少なくとも約7.38または7.382MPaである。好ましくは圧力は、少なくとも約15MPa、より好ましくは少なくとも約25MPa、より好ましくは少なくとも30MPaである。圧力は、好ましくは約7.382MPa〜約100MPaであり、より好ましくは約15MPa〜約80MPaであり、最も好ましくは約20MPa〜約60MPaである。
【0077】
二酸化炭素を超臨界流体として使用する場合、超臨界抽出の温度は、40°C、圧力は、30MPa(300バール)でありことが特に好ましい。
【0078】
特に好ましい実施態様では超臨界抽出は、セルロース系材料1kg当たり70kgの二酸化炭素を超臨界流体として使用し、約または正確に40°Cの温度そして約または正確に30MPaの圧力で行われる。
【0079】
40°Cの温度および30MPaの圧力で最適な溶解力が得られることが判っており、これにより多くのタバコ供給材料の揮発性成分が除去され、超臨界相内に分配される。
【0080】
セルロース系材料と超臨界流体との接触時間は、種々変更可能であるが、セルロース系材料から少なくとも20重量%の溶質が除去される長さが好適である。抽出時間は、使用される超臨界流体の種類、使用されるセルロース系材料の種類および形状、抽出条件および抽出容器の種類によって影響を受ける。通常、セルロース系材料は、超臨界流体と少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも20分間、最も好ましくは少なくとも60分間接触させる。
【0081】
本発明による超臨界抽出後の抽出機械の清掃は、セルロース系供給材量を含まない状態で溶媒を機械に通す「空運転」を1回以上行うことによって実施してもよい。二酸化炭素などの非毒性または不燃性/環境に優しい抽出超臨界媒体を利用する本発明の実施態様は、洗浄工程を簡単にする。これは特に機械がタバコなどの単一の種類のセルロース系供給材料用に使用される場合に顕著である。
【0082】
超臨界抽出後、セルロース系材料からの溶質を含む超臨界流体は、好ましくは超臨界を維持した状態でセルロース系材料から分離される。この分離によって抽出媒体/抽出液とも言われる抽出物および枯渇した(不溶性の)セルロース系材料であるラフィネートが発生する。抽出物からのラフィネートの分離は、ろ過、デカンテーション、沈降またはふるい分けなどの好適な分離手段によって実施することができる。
【0083】
抽出物内の溶質は、その後蒸留によって分離される。この蒸留工程において本発明を使用することによって、高感度の蒸留が可能であることが判っている。これにより5〜10°Cほどしか沸点が違わない極めて似た沸点を有する抽出物中の構成成分の分離が可能になり、従って芳香化合物を単離することができ、かつ、ニトロサミン類、ベンゾピレンおよび/またはニコチンなどの望ましくない物質による汚染を最小限にすることができる。このような高感度の蒸留は、蒸留工程に関わるパラメータ、特に蒸留中の温度および圧力並びに蒸留チャンバーへの抽出物の導入速度を慎重に選択することによって行われる。
【0084】
蒸留工程中の特定のパラメータを慎重に制御することによって、少量のセルロース系構成成分を抽出溶媒から単離することができる。抽出された構成成分は、高度に濃縮された形態にすることができ、これは極めて少量の構成成分をそれが組み入れられる製品の風味または芳香を高めるために必要とされるので、有益である。このことは、本発明の方法が効率よく、費用効率が高いことを意味する。
【0085】
本発明の好ましい実施態様では、蒸留は、減圧下(大気圧と比較して)で行われる。これは真空で蒸留工程を行うことによって実施される。減圧蒸留は、液体の蒸気圧が周囲圧を超えたときに沸騰が生じるという原理で作用する。例えばニコチンは、大気圧では247°Cで沸騰するが、0.022atm(17トール、22.6ミリバール)では124°Cで沸騰する。減圧を利用することによって、蒸留工程をより効率よく、高い費用効率で行うことができる。
【0086】
特定の実施態様では本発明の第1の態様による蒸留工程は、分子蒸留である。「分子蒸留」とは、極めて低い圧力、例えば5、2、1または0.5ミリバール未満の圧力を供するために減圧蒸留を使用することを意味する。
【0087】
使用される超臨界抽出条件によっては、本発明の方法による超臨界抽出工程による抽出物は、約80%というように多く水を含む。いくつかの場合においては抽出物の水分量は、最大で98%である。従って本発明のいくつかの実施態様では、第1蒸留工程は、過剰な水を除去することを含む。後続の蒸留段階を実施する前に抽出物から過剰な水を除去することは、抽出物から単離される構成成分が、より濃縮されることになるので、有利である。さらに蒸留工程の後段で使用されるような極めて低い圧力で水を濃縮することは不可能であり、過剰な水の存在は、使用するあらゆる真空ポンプの吸引力に影響を与える。初期の蒸留の一部として水を除去することは、さらなる蒸留工程の効率を向上させる助けとなる。従って特定の実施態様では、水を豊富に含む抽出物は、任意に100〜130ミリバールの減圧下で100〜110°Cまで加熱される。好ましい実施態様では100〜110°Cの温度および100ミリバールの圧力が使用される。
【0088】
蒸留工程は、通常、3つの留分、即ち「重い」留分(または残渣としても知られている)、「中間」留分(または蒸留物としても知られている)および「軽い」留分(またはコールドトラップとしても知られている)を発生させる。抽出物内の要素の種々の留分への分配は、揮発性によって決まり、ワックスなどは、通常、残渣に堆積し、より揮発性の高い物質は、通常、蒸留物にたまり、最も揮発性の高い物質は、コールドトラップにたまる。抽出物が水を豊富に含む場合、その蒸留物も水を豊富に含む。
【0089】
好ましい実施態様において抽出物は、好ましくは真空を利用して得られる減圧および加熱を継続して行う条件下で蒸留チャンバーに導入される。このような条件下そして適切な速度で抽出物を導入することによって、抽出物の薄膜がチャンバー内に形成される。揮発性成分がフィルムから蒸発し始め、そしてその系は、異なる揮発度の成分が、それらが取り除かれる装置内の特定の場所(コールドフィンガー(cold fingers)と呼ばれる)で、濃縮するのに充分な感度になり、抽出物内のこれら成分を効果的に分離する。真空度、温度、抽出物の導入速度および従ってチャンバー内に形成された薄膜の流量を調整することによって、抽出物に残る「軽い」および「重い」留分の相対的比率を調節することができる。
【0090】
コールドトラップは、通常、コールドフィンガー上で濃縮しないけれども使用する条件下で揮発性を維持するあるあらゆる超揮発性成分を収集するために使用される。いくつかの実施態様ではコールドトラップは、使用する真空ポンプを殆どの揮発性成分から単に守る役割を果たすために使用してもよい。
【0091】
好ましい実施態様では抽出物は、蒸留チャンバー内に薄膜が形成される程度にゆっくりとチャンバー内に導入される。
【0092】
好ましい実施態様では、第1の蒸留工程は、90〜130ミリバールの減圧下で抽出物を100〜110°Cの温度に加熱することを含む。より好ましくは温度は、100〜110°Cで、圧力は約100ミリバールである。蒸留物およびコールドトラップサンプルは、系から取り除かれ、その後蒸留パラメータを変更してさらに別の留分を得るようにしてもよい。
【0093】
従って特定の実施態様では、第1の蒸留工程から得られる残渣は、系内の圧力を1〜5ミリバール、より好ましくは1〜3ミリバール、最も好ましくは2ミリバールに変更し、110〜180°C、より好ましくは120〜160°C、さらに好ましくは135〜155°C、最も好ましくは150°Cの初期温度を110〜150°C、より好ましくは140°Cに減少させながら、さらに精留される。
【0094】
1つまたはさらなる蒸留を系の圧力および/または温度をさらに変えて行って、別の留分を発生させてもよい。例えば系の圧力を1〜5ミリバール、より好ましくは3ミリバール、最も好ましくは2ミリバールの圧力に維持しながら、系の温度を110〜180°C、より好ましくは120〜160°C、さらに好ましくは135〜155°C、最も好ましくは150°Cの初期温度から、110〜140°C、好ましくは130°Cに減少させてもよい。
【0095】
この蒸留工程から得られた留分は、例えば過剰な水を除去するために加熱することによって芳香化合物として使用するために濃縮することができる。
【0096】
得られた留分のニコチン、ベンゾピレンおよびTSNA類の量は、当業者であれば精通している下記実施例2および3に概略が示されているような標準的な作業工程を使用して測定することができる。
【0097】
セルロース系材料から構成成分を抽出するために超臨界抽出を使用し、その後、抽出物から1つ以上の成分を選択的に単離することを可能にする方法で蒸留を利用して抽出物の精留を行うことは、既に知られているセルロース系材料の構成成分を分離および単離する技術に対していくつかの利点を有する。
【0098】
第1に本発明による方法は、沸点および蒸気圧が類似している化合物を単離することができる。これはセルロース系材料内の化合物を正確に抽出、単離し、実質的に純粋なサンプルが得られることを意味する。
【0099】
場合によっては5未満の処理工程を含む本発明の方法は、従来の抽出/単離法と比較して、簡単である。
【0100】
本発明の方法は、抽出溶媒からセルロース系材料の構成成分を分離するためにシリカ類、アルミナ類またはビーズなどの汚染の原因になる分離マトリックスを必要としないので、比較的環境に優しい。
【0101】
さらに構成成分を単離するために行う抽出物の精留工程は、溶媒を必要としない。これは、多くの溶媒を使用することに関連する環境および健康上のリスクを防ぐことになる。また系からの溶媒の除去は、エネルギーを消費し、従ってコストが掛るので、溶媒を使用しないことは、コストを削減することにもなる。
【0102】
さらに加えて本発明の第1の態様による好ましい実施態様ではセルロース系材料からの可溶性成分を抽出する工程は、メタノールまたはヘキサンなどの潜在的に有毒で環境に優しくなく可燃性の抽出溶媒を必要としない。このこともこのような溶媒を使用することによる環境および健康上のリスクを避け、系からこのような溶媒を除去することに掛る費用を軽減する。
【0103】
本発明の方法は、抽出および/または蒸留装置を元の作業整備状態に戻すために過度な清掃サイクルを必要としないので、本発明の方法は、比較的きれいに行える。このことは、機械がセルロース系材料の処理、特にタバコを処理するだけに使用される場合に特に顕著である。
【0104】
本発明の方法は、その工程を行うために市販の機器および/または装置に対して高い制御性を有する。例えば市販の装置は、超臨界抽出工程における圧力および時間そして蒸留工程における温度、時間および圧力を細かく制御することができる。これにより本発明の方法を極めて正確な条件下で実施することが可能になる。またこのことは、抽出および分離が行われる条件を特定の化合物の分離に最適化するために大幅に変えることができることを意味する。
【0105】
従って本発明の第1の態様による方法は、セルロース系材料から構成成分を、これら構成成分が単離されたセルロース系材料または同等の濃縮および/または処理によってこれら構成成分が単離されたセルロース系材料と比較して、ニトロサミン類、特に1つ以上のタバコ特有ニトロサミン類(TSNAs)、ニコチンおよびベンゾピレン(B[a]P)の内の1つ以上を実質的に含まないか、またはこれら化合物の1つ以上の量を少なくなるように単離することを可能にする。
【0106】
本発明のさらなる態様において、本発明の第1の態様の方法によって得られるセルロース系材料の1つ以上の構成成分が提供される。
【0107】
好ましい実施態様では単離された構成成分は、それらが単離されたセルロース系材料またはそれらがその後に添加される別のセルロース系材料に風味または芳香を付与する。
【0108】
いくつかの実施態様では構成成分は、クマリン、プレゴン、フェニルアセトアルデヒド、ノナナール、センブレン、リナロール、イオノン、ゲラニルアセトン、3−メチルブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ベンゼンエタノール、メチルテトラデカノエート、ベンズアルデヒド、ピペロナール、トランス−アネトール、ソラノン、ジ−ヒドロアクチニジオリド、サフロール、メチルオイゲノール、ミリスチシンおよびアジュバントまたはその誘導体の内の1つ以上であってもよい
【0109】
本発明により単離された構成成分は、タバコ製品に使用されるタバコの風味を向上させるために使用することができる。これとは別にこのような構成成分をタバコまたはニコチン代替え製品などのタバコフリー製品またはその一部を作製するために使用することも可能である。例えば本発明によって単離された構成成分は、トローチまたはタバコを止めた人が使用するような吸引製品に組み入れることも可能である。
【0110】
これとは別に本発明により単離された構成成分は、ユーザーに特定の味または芳香を提供する製品を作製するために使用することができ、例えば単離された構成成分は、可溶性のストリップ片、フィルム、トローチ、カプセル、経鼻スプレー、経口スプレー、エアロゾルおよびチューイングガムなどに組み込むことも可能である。
【0111】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分は、これら構成成分が単離されたセルロース系材料と比較して、または同等の処理および/または濃縮処理によってこれら構成成分が単離されたセルロース系材料と比較して、ニトロサミン類、特にタバコ特有ニトロサミン類(TSNAs)、ニコチンおよび/またはベンゾピレン(B[a]P)の内の1つ以上を実質的に含まない、またはこれら化合物の1つ以上の量が減少している。
【0112】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分のニコチン含有量は、25mg/ml未満、より好ましくは20、19、18、17または16mg/ml未満である。
【0113】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分の総TSNA量は、8、7、6.9または6μg/ml未満、より好ましくは5、4、3、2または1μg/ml未満、より好ましくは0.5または0.1μg/ml未満である。
【0114】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分のニトロソノルニコチン(NNN)の量は、3.5μg/ml未満、好ましくは3μg/ml未満、より好ましくは2μg/mlまたは定量化量未満である。
【0115】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分の4−メチル−ニトロソアミノ−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)の量は、1.7μg/ml、好ましくは1.6μg/ml未満、より好ましくは1.5μg/ml未満または定量化量未満である。
【0116】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分のN−ニトロソアナタビン(NAT)の量は、2.4μg/ml未満、好ましくは2μg/ml未満、より好ましくは1.8μg/ml未満または定量化量未満である。
【0117】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分のN−ニトロソアナバシン(NAB)の量は、0.14μg/ml未満、好ましくは0.1μg/ml未満、または定量化量未満である。
【0118】
好ましい実施態様では本発明によって単離された構成成分のベンゾピレンの量は、40ng/未満、好ましくは30ng/g未満、より好ましくは25または20ng/g未満、さらに好ましくは10または5ng/g未満、最も好ましくは1、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1ng/g未満である。
【0119】
特定の実施態様において本発明によって単離された構成成分の純度は、80〜100%、90〜100%、95〜100%または98〜100%である。いくつかの実施態様では本発明によって単離された構成成分の純度は、75〜95%、75〜90%または85〜90%である。
【0120】
本発明のさらなる態様においてセルロース系材料から構成成分を抽出するための装置が提供され、この装置は、植物から1つ以上の溶質を抽出するのに十分な条件下でセルロース系材料を超臨界流体と接触させて、抽出物とラフィネートを形成するための手段と、ラフィネートろ抽出物を分離するための手段と、この抽出物内から1つ以上の構成成分を分離するための蒸留手段とを含む。
【0121】
抽出溶媒が超臨界状態で存在する条件下で作動可能な装置は、当業界で知られており、通常、1つ以上の耐圧容器とそれに関連する植物用部材を含む。
【0122】
特定の実施態様では本発明の装置は、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体が1つ以上のポンプを介して作業タンクから導入される抽出タンクを含む。その二酸化炭素は、熱交換器を介して熱が伝えられ、処理温度まで熱せられる。これは、植物を含む並列に繋がれた1つ以上の容器内を超臨界流体を案内することによって行ってもよい。
【0123】
ラフィネートから抽出物を分離する手段は、当業界で知られている。特定の実施態様ではその分離手段は、バッファータンクまたは分離容器を含み、これらは主な構成成分に対するトラップを含み、これにより粒状物および/または特定の溶解または懸濁したものを除去する。
【0124】
蒸留手段は、当業界で知られており、通常、蒸留フラスコと、蒸留ヘッドまたは精留コラムと、温度監視手段と、コンデンサーと1つ以上の収容容器とを含む。蒸留ヘッドまたは精留コラムは、コンデンサーを蒸留タンクに接続する。温度監視手段は、通常、蒸気相ガスの温度を測るために蒸留ヘッドの枝に位置している。コンデンサーは、通常、2層コラムであり、外層内を冷水が流れる。沸騰チップを蒸留フラスコに加えて、沸騰させてもよい。このシステムは、さらに分離された溶質を排出する手段を含む。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】一般的な蒸留工程における工程を示す略図である。
【図2】本発明の第1の態様による実施態様のための抽出および蒸留工程を説明するフローチャートである。
【図3】下記実施例1で使用されるような蒸留現象の順序を示すフローチャートである。ここで注目すべきことは、廃棄物の流れからの材料が、チャートで詳しく示している蒸留ユニットの開始および停止の間およびパラメータ(例えば温度および圧力)の変更時に収集されるということである。従って廃棄物は、ユニットが非安定状態にあるときに作動しているとき発生する。
【0126】
実施例1
(i)超臨界CO抽出
約5kgのタバコを超臨界COで抽出した。その刻まれたくず状タバコを表3に示す条件下でCO抽出プラントを使用して抽出した。
【0127】
【表3】

*注入(charge)6以外の注入からの抽出物は、蒸留のための中間貯蔵用にプールし、冷蔵保存した。注入6からの抽出物も分析用に冷蔵保存した。
【0128】
4941.8gの刻まれたくず状タバコの超臨界CO抽出による粗抽出物の収量は、443.2g(8.97%)であった。この一部をサンプルとして分析に送り、残りの量(307.9g)を蒸留を利用して精留した。
【0129】
(ii)蒸留
蒸留されるタバコ抽出物(416.65g)は、ろう状の固体を含む水を多く含む懸濁液であった。抽出物の水分量は、80%と見積もられた。蒸留工程を以下に説明する。
1.水の除去を含む第1段階は、130ミリバール、100°Cでシステムを作動させることによって行われた。粗タバコ抽出物の水の量の見積もりから予測されたように、61.4gの残渣が、246gの蒸留物(留分1)と共に、即ち20:80の比で得られた。
2.段階1からの残渣は、さらに2ミリバールの圧力、初期温度150°Cを140°Cに下げて精留し(留分2を得るために)、その際に残渣の炭化が発生し、そして温度を130°Cに下げた(留分3を得るために)。
【0130】
蒸留現象の順序およびサンプルがどのようにして収集されたかを図3に示す。分析に9つのサンプルを使用した。さらに蒸留の開始または停止段階の間、即ち蒸留ユニットが安定状態で作動していない間、4つの廃棄流を収集した。
【0131】
【表4】

【0132】
結果
第1蒸留工程によって246.0gの留分1(1613/01蒸留物、79.9%)が得られた。
【0133】
この段階で得られた残渣、「1613/01残渣」(収率=61.4g、19.9%)を分け、次の2つの異なる条件下での蒸留に使用した。1)10.7gの1613/01残渣を2ミリバールの圧力で初期温度150°C、その後140°Cに下げて蒸留することによって3.3gの留分2(蒸留物1613/02、30.8%)を得た、2)14.0gの1613/01残渣を2ミリバールの圧力、130°Cの温度で蒸留して、3.7gの留分3(蒸留物1613/03、26.4%)を得た。
【0134】
タバコ供給材、粗抽出物および蒸留留分1〜3のニコチン、ベンゾピレンおよびTSNA類の量を実施例2および3に詳細を示したように当業者には知られているであろう標準的な方法で測定した。結果を対応する収量に関する情報と共に下記表5に示す。
【0135】
【表5】

定量限界(LOQ):B[a]P=0.04ng/g、TSNA類:NAB=0.04μg/g、NAT=0.08μg/g、NNK=0.08μg/g、NNN=0.08μg/g
【0136】
比較として処理されたタバコ(即ち本実施例で使用したタバコと同程度に濃縮され、処理され、喫煙品に組み込まれる状態になっているタバコ)は、次のような量のタバコ特有ニトロサミン類、ニコチンおよびB[a]Pを有する。
【0137】
ニコチン(ブレンドタバコ基準):24mg/g
B[a]P:0.8ng/g
TSNA類
NAB:140.55ng/g(0.1405μg/g)
NAT:2473.78ng/g(2.474μg/g)
NNK:1791.49ng/g(1.791μg/g)
NNN:3539.25ng/g(3.539μg/g)
合計TSNA含有量:7945.07ng/g(7.945μg/ml)
【0138】
表5から判るように留分3は、タバコ供給材料より、B[a]Pの含有量が極めて少ない。
【0139】
さらに留分1の全てのTASNA類の量は、全て定量限界(LOQ)より少ない。さらに留分1のNAB、NAT、NNK、NNN、B[a]Pおよびニコチンの各量は、未処理のタバコ原料のこれら化合物の量より少ない。またさらに留分1のNAB、NAT、NNK、NNN、B[a]Pおよびニコチンの各量は、上記比較のための処理されたタバコのこれら各化合物の量より少ない。
【0140】
しかしながら留分1は、水性蒸留物である。留分1を濃縮(例えばフリーズドライによって水を除去することによって)して3.5gの蒸留物を得る場合、留分1のニコチン、TSNA(総量)およびB[a]Pの量は、おおよそ次のようになる。
ニコチン:1085.1mg/ml
B[a]P:<28.11ng/ml
総TSNA量:5.69μg/ml
【0141】
従って濃縮された形態の留分1は、未処理のタバコ原料より極めてB[a]P量が少なく、処理されたタバコよりTSNA含有量が少ない。
【0142】
実施例2
b[a]P(最大5ng/gの濃度まで)の量の測定方法
要約すると、2gのテストサンプルをメタノールKOHに抽出し、液/液分離を利用して洗浄する。このサンプルをガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)し、水分を補正し、乾式重量基準のng/gを測定する。
【0143】
試薬
抽出溶媒
約500mlのメタノールと100mlの水に60gのKOHを入れる。この混合物を冷えるまで撹拌し、容量の低下をメタノールを加えて補正する。
ジメチルホルムアミド(DMF)/HO溶液
水100mlと約500mlのDMFを使用。この混合物をよく振って、放冷する。放冷した後、量の低下をさらにDMFを加えて補正する。
飽和塩化ナトリウム溶媒
500mlのHOに塩化ナトリウムをすべて溶解しないように充分な量を加える。よく振る。
10%不活性シリカ
活性シリカ200gをPETE密閉キャップを有する1Lのショット瓶(schott bottle)に入れ、ガラスストッパーを挿入する。水20mlを5mlのアリコートで瓶に入れ、添加と添加の間は瓶を転がす。平衡になるように瓶を少なくとも2時間、放置する。
内部標準スパイキング溶液(Internal Standard Spiking Solution、ISTD)
10mlのISTD原液をシクロヘキサン(濃度10ng/ml)で希釈する。
【0144】
校正基準
原液A(B[a]P濃度=500ng/ml):シクロヘキサン中100ng/μlのB[a]P0.5mlをHPLCグレードのシクロヘキサンで100mlに希釈
原液B(B[a]P濃度=50ng/ml):10mlの原液AをHPLCメタノールで100mlに希釈
ISTD原液(B[a]P_D12濃度=500ng/ml):シクロヘキサン中100ng/μlの重水素化された0.5mlのB[a]Pを100mlのHPLグレードのシクロヘキサンで希釈する。
下記の表に示した量のISTD原液と原液BをHPLCグレードのシクロヘキサンで50mlに調製する。
【0145】

【0146】
サンプルの調製
各セットの抽出のために参照タバコ(2R4F;www.2r4f.com)のサンプルを対照タバコとして抽出しなければならない。
【0147】
抽出
2g(±0.01g)のサンプルを1mlの内部標準スパイキング溶液に添加する。60mlのメタノールKOHを加え、栓をする。さらにこれを振ってから、60°Cの水槽に2時間置き、時々振る。その後取り除いて、ドラフトに入れ、冷却する。
【0148】
メタノールからB[a]pをシクロヘキサンへ移す
約5mlのシクロヘキサンを分液漏斗に入れる。ガラスウールの栓を有する漏斗を分液漏斗の上部に置き、抽出物をガラスウールを通して分液漏斗内にろ過する。三角フラスコと漏斗を約100mlのシクロヘキサンですすぐ。分液漏斗に栓をし、激しく振る。2層分離させて、メタノール層(底層)を別の容器に移す。シクロヘキサン層を別の容器に移す。メタノール層を分液漏斗に戻し、さらに100mlのシクロヘキサンを加え、激しく振る。2つの層に分離させる。メタノール層を処分し、最初のシクロヘキサン層を漏斗に戻す。
【0149】
シクロヘキサンからKOHを取り除く
分液漏斗中のシクロヘキサンに約50mlの水を加え、よく振る。2層分離させ、底の方にある水層を処分する。これを3回繰り返す。振っている間にエマルジョンが形成され、これは分離させている際に処分することができる。水での洗浄がすべて終わった後、残りのシクロヘキサン層をターボヴァップ(turbovap)管に写し、この管を40°Cのターボヴァップに移し、抽出物を約50mlにブローダウンする。
【0150】
B[a]pをシクロヘキサンからDMF/HOへ移す
50mlのシクロヘキサンを分液漏斗に写し、同量のDMF/HOを分液漏斗に加え、激しく振る。2層分離させる。DMF/HO(底層)をフラスコに移す。さらに50mlのDMF/HOを分液漏斗に加え、よく振る。2層分離させ、DMF/HO(底層)を他の容器に移す。上のシクロヘキサン層を処分する。
【0151】
B[a]pをDMF/HOからシクロヘキサンに移す
分液漏斗をシクロヘキサンで数回すすぎ、すべての残留物を除去する。混合したDMF/HO抽出物を分液漏斗に移す。同量のシクロヘキサンと50mlの飽和塩化ナトリウム溶液を加える。よく振る。2層分離させ、これら2つの層の間に塩の層が形成され、DMF/HO層(底)層を処分する。ガラス漏斗にガラスウールの栓をゆっくりと置き、約2〜3cmの粒状無水硫酸ナトリウムを漏斗に入れる。漏斗をターボヴァップ管に入れ、硫酸ナトリウムを介してシクロヘキサン層をターボヴァップ管内にろ過する。40°Cのターボヴァップ内で約10mlにサンプルをブローダウンする。
【0152】
シリカコラムの清掃
10%の不活性シリカを5g(±0.05g)を秤量し、約10mlのシクロヘキサンを加えると、スラリーが形成される。これをガラスのコラムに移し、シリカが洗い流されるまでコラム内でビーカーをすすぐ。底から2cmになるまで粒状の硫酸ナトリウムを加える。コラムの下にターボヴァップ管を置く。サンプル10mlをコラム内に注ぎ、シクロヘキサンをコラムを介してターボヴァップ管内にろ過する。元のターボヴァップ管を約50mlのシクロヘキサンですすぎ、これをシリカに触れないように注意してコラムに移す。さらにシクロヘキサン100mlをゆっくり加え、コラムからB[a]Pを溶出させる。
【0153】
ガスクロマトグラフィー質量分析パラメータ


【0154】
分析
重水素化B[a]PとB[a]P応答領域(response area)の応答比を標準のB[a]P濃度に対してプロットすることによって校正曲線を作成することができ、傾きと切片が算出される。
【0155】
機器計算
(応答比−切片)x内部標準濃度 ng/ml=B[a]Png/ml
傾き
【0156】
ng/mlの乾燥基準でのng/gへの変換
最終サンプル量(ml)xB[a]P(ng/ml)=B[a]P湿重量基準
湿ったサンプルの重量(g)
【0157】
湿ったサンプルのng/gの乾燥サンプルのng/gへの変換
湿ったサンプルのB[a]Pのng/gx100=乾燥基準のB[a]Pのng/g
(100−水分%)
【0158】
実施例3:TSNA類の測定
タバコ中のTSNA類の定量を液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析計(LC−MS/MS)を使用して行うことができる。
【0159】
要約すると粉砕したタバコを約0.5g秤量し、遠心分離管に入れ、4種類の内部標準を含む混合物100μlを加える。
【0160】
これらの内部標準は、定量されている4つのTSNA類(NAB、NAT、NNKおよびNNN)の重水素化された同等物(NAB−d、NAT−d、NNK−dおよびNNN−d)である。その後サンプルを20mlのメタノールを加えて抽出する。それから懸濁液を30分間、超音波で分解し、5000rpmで5分間、遠心分離する。上澄みから約1.4mlをLC−MS/MSで分析するためにオートサンプラー瓶に移す。この系を一連の内部標準化されたTSNA標準で較正する。TSNA校正基準の内部標準のスパイクレベルは、サンプル中の内部標準のスパイクレベルと同等である。
【0161】
内部標準原液

内部標準原液は、中間の内部標準原液を調製するために使用される。
【0162】
中間内部標準原液

これら中間内部標準原液は、作業に使用する内部標準原液を調製するために使用される。
【0163】
使用する内部標準原液

これらの使用する標準は、標準原液を希釈することによって調製される。
【0164】
使用する標準原液の調製

内部標準化された標準原液と品質管理(QC)原液を内部標準液(IS_0.1)を使用する標準液および品質管理標準原液に加えて、調製する。
【0165】
内部標準化された標準および品質管理液の調製

従ってNAB−d、NAT−d、NNK−dおよびNNN−dの濃度は、全ての標準化された標準および品質管理液において、それぞれ5、10、10、10ng/mlである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0166】
【特許文献1】中国特許公開公報第1166753号
【特許文献2】国際公開公報WO01/65954号
【特許文献3】中国特許公開公報第1899442号
【特許文献4】欧州特許公報第0280817号
【特許文献5】中国特許公開公報第1459256号
【特許文献6】米国特許第6,637,438号
【特許文献7】日本特許公開公報第平09−10502号
【特許文献8】国際公開公報WO2007/053096号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系材料から構成成分を抽出し、単離する方法であって、該方法は、
(a)抽出物を得るための条件下でセルロース系材料を超臨界流体と接触させる工程と、
(b)得られた抽出物から不溶性材を取り除く工程と、
(c)蒸留によって抽出物を精留して1つ以上の分離された構成成分を供する工程とを含む方法。
【請求項2】
工程(a)で使用される超臨界流体が二酸化炭素であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(a)中の温度が約40°Cで、工程(a)中の圧力が約30MPaであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに工程(b)の前に水を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(c)が80〜150°C、好ましくは90〜120°C、より好ましくは100〜110°Cの温度で実施される第1の蒸留工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(c)が90〜130ミリバール、好ましくは100〜110ミリバール、より好ましくは100ミリバールの圧力で実施される第1の蒸留工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程(c)が1つ以上のさらなる蒸留工程を含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第1の追加の蒸留工程が1〜5ミリバール、好ましくは1〜3ミリバール、最も好ましくは2ミリバールの圧力および/または110〜180°C、より好ましくは120〜160°C、最も好ましくは135〜155°Cの初期温度で実施され、110〜150°C、好ましくは140°Cに初期温度を下げることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
第2の追加の蒸留工程が1〜5ミリバール、好ましくは1〜3ミリバール、最も好ましくは2ミリバールの圧力および/または110〜180°C、より好ましくは120〜160°C、最も好ましくは135〜155°Cの初期温度で実施され、110〜140°C、好ましくは130°Cに初期温度を下げることを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
セルロース系材料がモウズイカ、クローブ、ミント、茶、ユーカリまたはカモミールから得られることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
セルロース系材料がタバコ葉身であることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
単離された構成成分が、これら構成成分が単離されたセルロース系材料と比較して、または同等の濃縮および/または処理された際にこれら構成成分が単離されたセルロース系材料と比較して、ニコチン、1つ以上のニトロサミン類またはベンゾピレンの内の1つ以上を実質的に含まないか、またはこれら化合物の1つ以上の量が減少していることを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
抽出された構成成分が実質的にニコチン、1つ以上のニトロサミン類および/またはベンゾピレンを含まないことを特徴とする請求項1乃至12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
抽出された構成成分が0.1μg/ml未満の量のニトロサミン類および/または25mg/ml未満の量のニコチンおよび/または2ng/g未満の量のベンゾピレンを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
分離された構成成分がクマリン、プレゴン、ピペロナール、トランス−アネトール、サフロール、メチルオイゲノールまたはミリスチシンの内の1つ以上であることを特徴とする請求項1乃至14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
請求項1乃至15いずれか1項記載の方法で得られるセルロース系材料の1つ以上の構成成分。
【請求項17】
請求項16記載のセルロース系材料の1つ以上の構成成分であって、該構成成分がこれら構成成分が単離されたセルロース系材料と比較して、または同等の濃縮および/または処理された際にこれら構成成分が単離されたセルロース系材料と比較して、ニコチン、1つ以上のニトロサミン類またはベンゾピレンの内の1つ以上を実質的に含まないか、またはこれら化合物の1つ以上の量が減少していることを特徴とする構成成分。
【請求項18】
セルロース系材料から構成成分を抽出するための装置であって、該装置は、セルロース系材料から1つ以上の溶出を抽出するのに充分な条件下でセルロース系材料を超臨界流体と接触させて抽出物とラフィネートを形成するための手段と、抽出物をラフィネートから分離するための手段と、抽出物中の1つ以上の溶出を分離するための蒸留手段とを含む装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521007(P2013−521007A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556585(P2012−556585)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050455
【国際公開番号】WO2011/110843
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(500252844)ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド (111)
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
【Fターム(参考)】