説明

センサにおける過剰温度検知方法及び該方法を用いたセンサ

【目的】 外側からの観察のみにより、センサの異常昇温による特性劣化,破損の有無を検知し得るようにすること。
【構成】 所定温度以上で劣化又は破損する感知部材又は回路部材を備えたセンサにおいて、前記所定温度近辺で色が不可逆的に変化する示温塗料40a,40bを、周面に塗着した。これにより、示温塗料の色変化により、感知部材又は回路部材がその特性が劣化又は破損するような高温に曝されたかどうかを外側からの観察で検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は内燃機関のシリンダー内圧の変化を検出する圧力センサ等のように、高温雰囲気中で使用されるセンサにおける過剰温度検知方法及び該方法を用いたセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】内燃機関のシリンダーヘッドに装着されて、圧力の変動を検知する圧力センサは、種々提案されている。ところで、この種センサにあっては、その内部に圧電素子や、種々の回路部材が内蔵されており、これらの部材は、所定温度以上になると、特性が劣化したり、破損して、適正な作動を生じ得ない。しかるに、シリンダヘッドに装着されて使用されるため、高温に曝されやすく、特に水冷エンジンでの冷却水不足や、空冷エンジンでの放熱フィンの不良による冷却不足等の原因で、前記センサの使用温度上限を越えて異常高温となる場合がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のようにセンサが異常昇温に曝されて、不可逆的なセンサの劣化や破損を生じた場合にあっても、従来構成では、誤作動がセンサの特性劣化,破損に起因するものかどうかは、外側からは判定することができず、推測によるか、またはセンサを分解するよりほかはなかった。このため、誤作動の原因がセンサの品質劣化によらない場合には、不要な部品交換を招来したり、無用な分解作業を行なうこととなる等、保守管理上問題があった。
【0004】本発明は、外側からの観察のみにより、センサの異常昇温による特性劣化,破損の有無を検知し得るようにすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、所定温度以上で劣化又は破損する感知部材又は回路部材を備えたセンサにおいて、前記所定温度近辺で色が不可逆的に変化する示温塗料を、周面に塗着することを特徴とするセンサにおける過剰温度検知方法、及びかかる方法を適用したセンサである。
【0006】ここで、不可逆的に変化する示温塗料とは、Ni,Co,Pb,Ca,Ag,Mn,Fe等の重金属の有機無機塩,複塩が主成分で、これらの材料が規定温度でCO2 ,SO2 ,NH3 ,NO2 等のガスを放出したり、または顔料が酸化,分解する等の化学反応の結果、変色するという効果を利用したものである。また2〜4段変色をするものもあり、この場合には、その色により到達過剰温度を検知することが可能となる。
【0007】
【作用】示温塗料の色変化により、感知部材又は回路部材がその特性が劣化又は破損するような高温に曝されたかどうかが検知される。従って、センサが誤動作を生じた場合に、示温塗料が色変化していれば、異常昇温によるものであることが解り、そうでない場合には、他の原因によるものであることが判断され得る。
【0008】
【実施例】図1は本発明を適用したシリンダーヘッドに取付けられる圧力センサの一例を示す。
【0009】1は下端部1aの外周にシリンダーヘッドに螺合する雄螺子2と、上端部1bの外周にスパナ等の締付け工具と適合する六角部3とを形成したボルト構造をなす主体金具であって、その内部には、軸孔4が形成されている。この軸孔4は主体金具1の中心を上下方向に貫通してなり、小径装着孔4a,中径装着孔4b及び大径装着孔4cが連成して構成される。
【0010】径小側の装着孔4aには圧力伝達棒9が挿入され、その下端を主体金具1の下端部1aの端面を気密に封口するように接合された金属製ダイアフラム6に溶接している。さらに主体金具1の装着孔4a,4bの段差部分と圧力伝達棒9との間には円板バネ7を設けて圧力伝達棒9の径大部を支持するようにし、この円板バネ7により各構成体の熱膨張差及び熱伝達の差から生ずる歪、また雄螺子部での締付けトルクによる伸び等から生ずる応力を吸収している。
【0011】装着孔4bには、装着孔4aに近いほうから表裏面に電極が形成された圧電素子11,板パッキン12,電極板13,絶縁板14及び当て金16等が順次積層状に配設され、これら積層体8は絶縁パイプ18に囲繞されて主体金具1と絶縁されている。前記電極板13の上面からは接続片13aが突成されている。
【0012】前記当て金16上端には球面が形成されている。また、前記大径装着孔4cには当て金16の球面と整一に当接し得る円錐凹面21を備えた押え金具20が装着されている。
【0013】前記当て金16,押え金具20は夫々中心に孔が形成され、その組付け状態で電気絶縁環14と共に挿通孔24を生ずる。そして該挿通孔24内に絶縁チューブ25を嵌着し、該絶縁チューブ25内に前記接続片13aを挿通し、リード線27と接続片13aとの接続を該絶縁チューブ25内で行なっている。
【0014】さらに、前記押え金具20は当て金16の球面に圧接した状態でその下部主面を中径装着孔4bと大径装着孔4cとの間の段差部分に抵抗溶接して固定されている。
【0015】前記押え金具20の直上には、集積回路,抵抗体,コンデンサ等の種々の回路部材が実装された回路基板30が大径装着孔4cに形成された段部に嵌装されている。そして、前記回路基板30の通線孔31を介して、前記リード線27及び押え金具20に接続したアースリード線28が挿通し、該回路基板30上の所要導電路に接続している。
【0016】一方、装着孔4cの口部には、嘴状金属キャップ33が嵌着され、アルゴン溶接される。前記金属キャップ33の内部には、セラミック製のストッパ35が保持され、外部装置と接続された信号搬送用ケーブル36の各リード線37が該ストッパ35に挿通したピン端子38と接続し、該ピン端子38に接続した足杆状端子39を回路基板30上の所要電路と接続するようにしている。
【0017】かかる構成の圧力センサは、シリンダヘッドの取付け用螺子孔に螺合して取付けられ、燃焼時や、ノッキング時にシリンダ内で生ずる圧力変動により圧電素子11に歪を生じ、該歪により電荷信号が発生して、圧力変動を検知し得ることとなる。
【0018】次に本発明の要部につき説明する。
【0019】上述の圧力センサは、シリンダヘッドに装着されて使用されるため、水冷エンジンでの冷却水不足や、空冷エンジンでの放熱フィンの不良による冷却不足等の原因で、過剰な高温に曝される場合がある。ところが、圧力センサの内部には圧電素子11や、回路基板30が内蔵されている。この圧電素子11は、所定以上の高温に曝されると消極し、適正な出力を得ることができなくなる。また回路基板30上には、集積回路,抵抗体,コンデンサ等の回路部材が実装されており、これも高温に曝されると特性の劣化や、破損を生じて、適正な作動を生じ得ない。このように圧力センサは使用温度上限を越えて高温となると、誤作動を生ずる。ところが、その誤作動が異常昇温によるものかどうかを外から見極めるのは困難である。そこで、本発明にあっては、次のような構成が適用されている。
【0020】すなわち前記金属キャップ33の側面34と、圧電素子11側傍の主体金具1の円柱状座面43の平滑面には、示温塗料40a,40bが塗着される。この示温塗料40a,40bは、所定温度以上となると、色が不可逆的に変化するものであって、Ni,Co,Pb,Ca,Ag,Mn,Fe等の重金属の有機無機塩,複塩が主成分で、これらの材料が規定温度でCO2 ,SO2 ,NH3 ,NO2 等のガスを放出したり、または顔料が酸化,分解する等の化学反応の結果、温度に依存して変色する。
【0021】この場合に、前記示温塗料40a,40bは単一の塗料だけではなく、変色温度が異なる複数種類のものを適用することができる。例えば、示温塗料40aの場合には、100 ℃,120 ℃,150 ℃で色が夫々変色する三種類を用いる。すなわちこの回路基板30上の回路部材は、通常120 ℃程度で破損を生じることが予測され、その前後の温度を含めて閾値とし、三種の温度設定を行なっている。
【0022】同様に示温塗料40bも、例えば、150 ℃,200 ℃,250 ℃で色が夫々変色する三種類を用いる。この圧電素子11は、通常200 ℃程度で特性が劣化することが予測され、その前後の温度を含めて閾値とし、三種の温度設定を行なっている。
【0023】このように、示温塗料40a,40bを設けることにより、圧力センサが誤作用を生じた場合に、示温塗料40a,40bが色変化していれば、異常昇温によるものであることが解り、そうでない場合には、他の原因によるものであることが判断され得る。従って、圧力センサを分解して検査する必要が無い。
【0024】上述の構成にあって、図2のイで示すように、所要面に直接示温塗料40a,40bを塗着すると、ガソリン等の有機溶剤で洗浄した場合に、示温塗料40a,40bが直に溶けて除去される。
【0025】そこで、図2のロで示すように該所要面に孔部41を形成し、該孔部41内に示温塗料40a,40bを供給する。この場合には、機械的な擦過を生じた場合にも除去されない。
【0026】さらには図2ハのように孔部41に示温塗料40a,40bを供給してから、該示温塗料40a,40bが溶け出さないように、シリコン等の耐熱性透明樹脂42を供給して、シールしても良い。尚、示温塗料40a,40bと、耐熱性透明樹脂42をあらかじめ混合してから、前記孔部41内に供給するようにしても良い。この孔部41は、深さを0.5mm 〜1.5mm ,孔径を1φ〜2φとする。
【0027】本発明は、上述の圧力センサのみならず、高温雰囲気中で使用される各種のセンサに用いられる。
【0028】また示温塗料として、温度と共に数段階に色変化する材料を適用した場合には、上述のように複数の示温塗料を用いないでも、同様の作用を生じ得る。
【0029】
【発明の効果】本発明は、所定温度以上で劣化又は破損する感知部材又は回路部材を備えたセンサにおいて、前記所定温度近辺で色が不可逆的に変化する示温塗料を、周面に塗着するものであるから、示温塗料の色変化により、感知部材又は回路部材がその特性が劣化又は破損するような高温に曝されたかどうかを外側からの観察で検知することができる。このため、圧力センサの補修、交換の必要性をその分解を行なうことなく判断することができ、保守管理が容易となる等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す圧力センサの縦断側面図である。
【図2】示温塗料40a,40bの塗着態様を示す要部の縦断側面図である。
【符号の説明】
1 主体金具
9 圧力伝達棒
11 圧電素子
30 回路基板
33 金属キャップ
40a,40b 示温塗料
41 孔部
42 耐熱性透明樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定温度以上で劣化又は破損する感知部材又は回路部材を備えたセンサにおいて、前記所定温度近辺で色が不可逆的に変化する示温塗料を、周面に塗着することを特徴とするセンサにおける過剰温度検知方法。
【請求項2】 所定温度以上で劣化又は破損する感知部材又は回路部材を備えたセンサにおいて、前記所定温度近辺で色が不可逆的に変化する示温塗料が周面に塗着形成されていることを特徴とするセンサ。
【請求項3】 外面に孔部を形成し、該孔部に示温塗料を供給したことを特徴とする請求項2記載のセンサ。
【請求項4】 外面に孔部を形成し、該孔部に示温塗料を供給し、さらに耐熱製透明樹脂を供給してシールしたことを特徴とする請求項2記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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