説明

センサモジュールおよび力センサ

【課題】計測範囲の上限が、使用されている感圧式導電性センサの計測範囲の上限に制限されないセンサモジュールを提供することを課題とする。
【解決手段】外部より押圧される鋼板17と、作用した力に応じて導電率が変化する導電率変化部を有する感圧式導電性センサ11であって、鋼板17を介して作用した力に応じた導電率変化部における導電率の変化を検出する感圧式導電性センサ11と、鋼板17を介して感圧式導電性センサ11に作用し得る力の一部を受けることで、外部からの押圧の力のうち、感圧式導電性センサ11に作用する力を減らす弾性部材12と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力またはモーメントを計測する力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、力またはモーメントを計測する力センサとして、力の検出にひずみゲージを用いた力センサがある。
【0003】
また、外部からの圧力に応じて導電率が変化する性質を有する導電率変化部を有する感圧式導電性センサに関する技術があり(特許文献1〜4を参照)、このような感圧式導電性センサを用いて並進力およびモーメントを計測する6軸力センサに関する技術がある(特許文献5を参照)。
【特許文献1】特開2001−093707号公報
【特許文献2】特開2006−184098号公報
【特許文献3】特開平10−078357号公報
【特許文献4】特開昭54−057680号公報
【特許文献5】特開2007−108079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、力またはモーメントを計測する力センサとして、力の検出にひずみゲージを用いた力センサが広く用いられている。しかし、このひずみゲージを用いた力センサでは、ひずみ部を配置する必要があるため、ひずみ部を配置する空間が必要になり、センサの小型化が困難である。また、そのひずみ部において作用する力と生じるひずみの関係が線形となるように、ひずみ部の加工に高い加工精度が要求される。
【0005】
そこで、ひずみゲージを用いずに、外部からの圧力に応じて導電率が変化する性質を有する導電率変化部を内部に有した感圧式導電性センサを用いて外力を計測する6軸力センサに関する技術が公開されている(特許文献5を参照)。
【0006】
感圧式導電性センサは、外部からの圧力に応じて導電率が変化する導電率変化部をセンサ内部に有することで、力に応じた導電率の変化を検出するセンサである(図18を参照)。また、感圧式導電性センサは、電極で計測器と接続され、計測器は、導電率によって変化する電圧に基づいて、感圧式導電性センサに加えられた圧力を算出する。感圧式導電性センサは感圧面を有し、感圧面(センシングエリア)には、感圧面内に収まるように鋼板が両面テープあるいは接着剤で接着される(図19を参照)。
【0007】
このような構成を有する感圧式導電性センサを用いて力を計測すると、鋼板に作用する力は、すべてセンサの感圧面のみに負荷する(図20を参照)。このため、鋼板に作用する力を計測する際に、センサで計測可能な最大荷重までは計測出来るが、センサ性能を超える力が加わった時には精度が低下し、実質的には計測が困難になる。特に、市販されている感圧式導電性センサは、バリエーションが少なく、計測出来る荷重の上限に制限がある。このため、市販の感圧式導電性センサをそのまま用いて作成した力センサでは、計測出来る力に制限が加えられる。
【0008】
本発明は、上記した問題に鑑み、計測範囲の上限が、使用されている感圧式導電性センサの計測範囲の上限に制限されないセンサモジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するために、免荷手段を備え、この免荷手段と感圧式導電性センサとに力が分散される構造のセンサモジュールとすることで、計測範囲の上限が、使用されている感圧式導電性センサの計測範囲の上限に制限されないセンサモジュールを提供することを可能とした。
【0010】
詳細には、本発明は、外部より押圧される被押圧部と、作用した力に応じて導電率が変化する導電率変化部を有し、前記被押圧部を介して作用した力に応じた該導電率変化部における導電率の変化を検出する感圧式導電性センサと、前記被押圧部を介して前記感圧式導電性センサに作用し得る力の一部を受けることで、前記外部からの押圧の力のうち、前記感圧式導電性センサに作用する力を減らす免荷部と、を備える、センサモジュールである。
【0011】
ここで、センサモジュールとは、作用する力を計測するためのセンサを構成する要素であり、被押圧部にかかった力を計測するための装置である。センサモジュールの使用時には、感圧式導電性センサより出力されるセンサ信号に基づいて、このセンサ信号を受信したコンピュータ等によって被押圧部にかかった力が算出される。
【0012】
本発明に係るセンサモジュールでは、該センサモジュールが免荷部を備えることによって、実際の計測対象の力である被押圧部にかかった力よりも小さい力が感圧式導電性センサにかかることとなる。この実際の計測対象の力よりも小さい力に応じた導電率の変化に基づいて、実際の計測対象の力を算出することとしているため、本発明に係るセンサモジュールは、使用している感圧式導電性センサの計測範囲の上限を超える力を計測することが可能となる。
【0013】
換言すると、感圧式導電性センサへ掛かる荷重は、免荷部へ分散された分だけ減少するために、結果としてセンサモジュールへは感圧式導電性センサの計測範囲の上限を超える荷重をかけることが可能となる。本発明に拠れば、目的とする計測荷重に合わせて免荷部を選定することにより種々の計測範囲のセンサモジュールを製作することが出来る。
【0014】
また、本発明において、前記感圧式導電性センサは、前記被押圧部に接することで、前記押圧の力を受ける感圧面を有し、前記免荷部は、前記被押圧部のうち、前記感圧面が接していない部分に接していることで、前記被押圧部が押圧された場合に、前記感圧式導電性センサと共に圧縮される弾性部材を有してもよい。
【0015】
免荷部を弾性部材とし、感圧式導電性センサと弾性部材とが共に圧縮される構造とすることで、圧縮されることによって導電率を変化させる感圧式導電性センサの機能が免荷部によって妨害されることなく、力の分散を行い、計測範囲の上限を広げることが可能となる。
【0016】
また、本発明において、前記被押圧部における前記感圧面および前記弾性部材に接する面は平面であり、前記弾性部材は、前記感圧式導電性センサの周囲に、前記被押圧部に接する面が前記感圧面と同一平面上となるように設けられてもよい。
【0017】
力を感圧式導電性センサに伝達する面、および弾性部材に伝達する面が共に同一の平面を形成することで、被押圧部にかかった力の分散が均等となり、正確な計測結果を得やすくすることが可能である。
【0018】
また、本発明は、互いに重ならない複数の軸方向への力に応じた導電率の変化を夫々検出するように設けられた複数のセンサモジュールを備える、力センサである。
【0019】
本発明に拠れば、力センサの用途(必要な計測範囲)に応じて、適切なセンサモジュールを作成し、力センサに組み込むことにより、用途に合わせた力センサを製作することが可能となる。
【0020】
また、例えば、検出した力から3軸の並進力および3軸周りのモーメントを算出するための6軸センサに、本発明に係るセンサモジュールを備えることで、既存の感圧式導電性センサを用いて、用途に合わせた計測範囲の上限を有する6軸力センサを製作することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、計測範囲の上限が、使用されている感圧式導電性センサの計測範囲の上限に制限されないセンサモジュールを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るセンサモジュールおよび力センサの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
<センサモジュールの構成>
図1は、鋼板17が取り付けられていない状態のセンサモジュール10を示す平面概略図であり、図2は、本実施形態における、鋼板17が取り付けられた状態のセンサモジュール10を示す平面概略図である。また、図3は、本実施形態におけるセンサモジュール10の断面概略図である。感圧式導電性センサ11の周囲には、感圧式導電性センサ11と同じ厚みを有する弾性部材12が配置されている(図3を参照)。また、感圧面13以上の広さを有し、本発明の被押圧部に相当する鋼板17(JIS B0601による算術平均粗さが0.008〜25μmの鋼板。本実施形態では算術平均粗さ1.6μmの鋼板を使用)が、感圧面13および弾性部材12にかかるように感圧面13と弾性部材12に接着される。また、弾性部材12および感圧式導電性センサ11はセンサ取り付け板14に接着される。また、感圧式導電性センサは、電極15、16で計測器と接続される。なお、センサモジュール10に使用する弾性部材12は、鋼板17に沿った形状であってもよい(図4の符号12bを参照)。なお、本実施形態において、弾性部材12はPET(Polyethylene terephthalate)であるが、免荷手段として求められる特性(例えば、後述するヤング率)を有する弾性部材12であれば、その他の素材(例えば、高分子材料、ゴム、金属等)が採用されてもよい。
【0024】
図5は、本実施形態における感圧式導電性センサ11の構成を示す図である。感圧式導電性センサ11は、外表にポリエステルフィルム層、その内部に銅インクあるいは銀インクを該ポリエステルフィルム層にスクリーン印刷機を用いてスクリーンプリントして形成される電極層、更にその電極層に包まれるように位置し、該電極層の上から感圧インクをスクリーンプリントして形成される感圧インク層を有する。感圧式導電性センサ11の外部からの力Wfが加わると、その力が感圧インク層に伝わり、その導電率(抵抗値)が変
化する。従って、この感圧インク層が、導電率変化部として機能する。
【0025】
ここで、この感圧インク層の導電率の変化を検出することで、感圧式導電性センサ11に加えられた力が算出される。なお、力の算出に当たり、感圧インク層の導電率の変化と力との間に線形の相対関係があるのが好ましい。また、本実施形態において用いられる感圧式導電性センサ11は、0.05mm以上5.0mm以下の厚さを有することが、高い感度および強度を得る上で好ましく、0.1mm以上1.0mm以下の厚さを有することが更に好ましい。
【0026】
このようなセンサモジュール10の鋼板17に力Wfを作用させると、力は、感圧式導
電性センサ11の感圧面13だけでなく弾性部材12にも分散する。このため、感圧面13へ作用する力は弾性部材12に分散された分だけ減少する(図3を参照)。結果として、本センサモジュール10の鋼板17へは感圧式導電性センサ11の本来の計測範囲の上限を超える力をかけることが可能となる。
【0027】
即ち、本実施形態に係るセンサモジュール10によれば、センサモジュール10に感圧式導電性センサ11の計測範囲の上限を超える力が加わった場合でも、感圧式導電性センサ11の導電率は計測可能な範囲内にあるために、この導電率から、実際にセンサモジュール10に加わった力を算出することが可能となる。
【0028】
<計測理論>
本センサモジュール10の鋼板17に力Wfが加えられたとする。このとき、弾性部材
12に加わる力をFe、センサ感圧面13に掛かる力をFsとすると、次式が成り立つ。
【数1】

【0029】
図6は、本実施形態におけるセンサモジュール10の断面概略図である。以下の計算において、鋼板17は弾性部材12やセンサ感圧面13と比較して十分硬いため、剛体とみなすこととする。図6に示すように、鋼板17に力Wfが加えられたときに、鋼板17は
変形せず、弾性部材12およびセンサ感圧面13の厚さtがΔxだけ力Wf方向に弾性変
形したとすると、以下の式が成り立つ。
【数2】

【数3】

なお、ここで、keは弾性部材12の剛性係数、ksはセンサ感圧面13の剛性係数である。
【0030】
図7は、本実施形態における感圧面13および弾性部材12の面積を示す平面概略図である。弾性部材12のヤング率をEe、鋼板17と弾性部材12が接触している面積(以
下、「弾性部材12の面積」と称する。)をA、感圧式導電性センサ11本体のヤング率をEs、感圧式導電性センサ11本体の面積をB、弾性部材12および感圧式導電性セン
サ11本体の厚みをt(図6を参照)とすると、弾性部材12の剛性係数keとセンサ感
圧面13の剛性係数ksは、以下の式で表すことが出来る。
【数4】

【数5】

【0031】
ここで、式(4)、(5)を式(2)、(3)に代入すると、以下の式が得られる。
【数6】

【数7】

【0032】
そして、式(1)に式(6)、(7)を代入することで、以下の式が得られる。
【数8】

【0033】
即ち、力Wfと弾性変形の量Δxとは対応関係を有するため、Δxに伴って変化する導
電率からWfを算出することが可能である。
【0034】
<感圧式導電性センサ本体のヤング率の推定方法>
次に、感圧式導電性センサ11本体のヤング率Esの推定方法を説明する。図8は、本
実施形態において、荷重試験器を用いて感圧式導電性センサ11またはセンサモジュール10に作用する力と電圧との関係を計測する方法を示す図である。荷重試験器の可動部にはボール付きビスが取り付けられている。ボール付きビスの下方には検定を行う感圧式導電性センサ11が取り付けプレートに取り付けられており、その感圧式導電性センサ11の要部は、図9にセンサとして示されている。取り付けプレートは荷重試験器に取り付けられた力覚センサ(ニッタ株式会社製IFS−100M40A)に取り付けられている。荷重試験器の可動部は上下に移動し、検定する感圧式導電性センサ11に可動部先端のボールから鋼板を介して力が加えられる。加えられた力Wfは、力覚センサIFS−100
M40Aにより計測される。
【0035】
図9は、本実施形態において、感圧式導電性センサ11のセンサ信号に基づいて、感圧式導電性センサ11に掛けられた力を計測するためのシステム構成を示す図である。検定する感圧式導電性センサ11は、AD変換器を介してコンピュータに接続され、コンピュータは、感圧式導電性センサ11より出力されたセンサ信号(本実施形態では、電圧)に基づいて、感圧式導電性センサ11に掛けられた力を計測する。
【0036】
はじめに、感圧式導電性センサ11の感圧面13内に鋼板(感圧面13と同じサイズの鋼板)を両面テープで接着し、従来型のセンサモジュールを作成する(図19および図20を参照)。そして、鋼板に力Fs(感圧面13に作用する力)を掛けていき、出力され
るセンサ信号(出力電圧)を計測し、以下に示す力と電圧との関係式(出力電圧を力に換算する式)を最小2乗法を用いて求める。
【数9】

【0037】
次に、鋼板を取り外した前記と同じ感圧式導電性センサ11を使用し、そして本センサモジュール10の弾性部材12として、既知のヤング率Eeを有する弾性部材12を使用
して本発明に係るセンサモジュール10を作成する。次いでセンサモジュール10の鋼板
17に力Wfを掛けていくと、センサ感圧面13に作用している力Fsは、センサの出力電圧より式(9)を用いて求めることが出来る。そして、次式を用いることで、弾性部材12に作用する力Feを求めることが出来る。
【数10】

【0038】
ここで、式(6)、(7)より、Δxを消去して、Esについて求めると、次式が得ら
れる。
【数11】

【0039】
式(11)において、Ee(弾性部材12のヤング率)、A(弾性部材12の面積)、
B(感圧面13の面積)は既知である。また、センサ感圧面13に作用している力Fs
弾性部材12に作用する力Feは上記方法で求められる。このため、式(11)を用いて
感圧面13のヤング率を求めることが出来る。
【0040】
<所望の最大計測荷重まで計測するための弾性部材の選定方法>
次に、所望の最大計測荷重まで計測するための弾性部材の選定方法について説明する。所望の最大計測荷重をWmax、感圧式導電性センサ11で計測可能な荷重の上限値をWlimとすると、式(7)より、以下の式が導かれる。
【数12A】

【数12B】

【0041】
所望の最大計測荷重はWmaxであるので、Wmaxが作用したときのΔxを式(8)より求めると、以下の式が求められる。
【数13】

【0042】
そして、式(12B)、(13)より、所望の最大計測荷重Wmaxまで計測するための
弾性部材12のヤング率Eeが導かれる。
【数14A】

より、
【数14B】

【0043】
即ち、式(14B)を満たすヤング率の弾性部材12を用いた場合、所望の最大計測荷重Wmaxがセンサモジュール10の鋼板17に作用しても、センサ感圧面13にはセンサ
の計測可能な荷重の上限値Wlim以下の荷重が作用する。このため、所望の最大計測荷重
maxを計測することが出来る。
【0044】
<本モジュールを用いて力を計測する方法>
次に、本実施形態に係るセンサモジュール10を用いて力を計測する方法について説明する。予め、図8に示したような荷重試験器を用いて、本センサモジュール10の鋼板17に荷重Wfを掛けていき、センサ・センサ回路より得られたセンサ信号(出力電圧)と
、力覚センサIFS−100M40Aより得られた荷重を計測する。そして、得られたセンサ信号と荷重との関係を示す関係式を、最小2乗法等を用いて求める。
【数15】

【0045】
そして、センサ信号(出力電圧)を実際に力センサ等に組み入れて使用する際には、出力されたセンサ信号(出力電圧)を式(15)に代入して、センサモジュール10に掛けられた力を算出する。なお、本実施形態では、実測結果に基づいた関係式を予め用意し、この関係式を用いて力を算出しているが、センサ信号と荷重との関係を示すマップ等を用いて算出してもよいし、感圧式導電性センサ11自体から得られた荷重情報(即ち、免荷手段を用いない状態におけるセンサ信号と荷重の関係から算出された荷重情報)と、感圧式導電性センサ11、弾性部材12のヤング率および面積とから計算によって算出してもよい。
【0046】
<感圧面に掛かる荷重と弾性部材に掛かる荷重の分配>
上記の感圧式導電性センサ11本体のヤング率Esの推定方法を用いて、市販の感圧式
導電性センサ(ニッタ株式会社製Flexi Force ボタンセンサA201−100)の感圧面13におけるヤング率Esを求めた結果、617.6[kgf/mm2]であった。この感圧式導電性センサ11の最大計測荷重はWlim=440N(≒44.9kgf
)である。また、感圧面13は直径9.5mmの円形であるので、感圧面13の面積Bは70.9mm2となる。
【0047】
一例として、このセンサを用いて最大荷重Wmax=700Nまで計測出来るセンサモジ
ュール10を製作する場合を考える。ここで、調節可能な要素は、式(14B)より、弾性部材12のヤング率Eeと弾性部材12の面積Aである。
【0048】
センサモジュール10に使用する鋼板17を直径16mmの円板とし、その中心を円形感圧面13の中心に合わせて設置すると、弾性部材12の面積Aは、次式のように求められる。
A=π(8)2(鋼板17の面積)―70.9(感圧面13の面積)=130.1mm2
したがって、仮に、直径16mmの円形鋼板17を用いた場合において、最大計測荷重700Nのセンサモジュール10を作成するために必要な弾性部材12のヤング率は、式(14B)より、
【数16】

となる。
【0049】
式(16)より、例えば、ヤング率282.3[kgf/mm2]のPETを弾性部材1
2として選定することが出来る。
【0050】
厚み1mmで直径16mmの円形鋼板17、市販の感圧式導電性センサ(ニッタ株式会社製Flexi Force ボタンセンサA201−100)およびヤング率282.3[kgf/mm2]のPETを用いてセンサモジュール10を製作し、センサモジュール
10の鋼板17に荷重を掛けた場合に、感圧面13と弾性部材12に荷重が分散されているかを調べた結果を図10に示す。図10において縦軸と横軸はセンサモジュール10に掛けた力を示しており、各棒グラフの斜線部はセンサ感圧面13に作用した力Fs(セン
サからの出力電圧を式(9)に代入して求めた値)を、灰色部は弾性部材12に作用した力Fe(=Wf−Fs)を各々示している。図10より、700Nを本センサモジュール1
0に作用させたときでも、弾性部材12に力が分散され、センサ感圧面13には最大計測荷重440N以下の荷重が加わっていることがわかる。
【0051】
なお、本実験結果は、導電性センサのヒステリシス(荷重を増加させていった場合と荷重を減少させていった場合ではセンサから異なる信号が出力されてしまう現象)も含めて計測するために、荷重を100Nから700Nまで100Nずつ増加させていった後、700Nから100Nまで100Nずつ除荷していき、各荷重毎に感圧面13に作用した力を計測している。これを10回繰り返し行い、10回分のデータの平均値を図10に示している。
【0052】
<センサモジュールを用いて力を計測する方法>
上記実験で製作したセンサモジュール10を用いて、センサモジュール10の鋼板17に荷重を掛けていき、センサより出力される電圧と加えた力のデータから、最小2乗法を用いて、出力電圧と力との関係式(式(15))を求めた。この実験においても、導電性センサのヒステリシスも含めて計測するために、荷重を100Nから700Nまで100Nずつ増加させていった後、700Nから100Nまで100Nずつ除荷していき、各荷重毎に計測し、10回分のデータを収集した。図11は、上記実験の結果を示す図である。図11の横軸はセンサモジュール10に加えた力、縦軸はセンサモジュール10より得られた電圧値から式(15)を用いて換算した力を示している。センサモジュール10に加えた各力に対して、センサモジュール10より求められた10回分の力のデータの平均値を点でプロットしており、エラーバーは各力に対する10回分のデータの最大値と最小値を示している。
【0053】
図11より、センサモジュール10に加えた力とセンサモジュール10から出力された力はほぼ一致していることがわかる(最大誤差は±5%FS(フルスケールに対する誤差の%)以下であった)。なお、本発明の発明者は、同様のセンサモジュール10を8個作成し、同じ実験を行ったが、8個とも本結果と同じ結果が得られた。
【0054】
<センサモジュールを用いた6軸力センサ>
図12は、本実施形態に係るセンサモジュール10を備える6軸力センサを示す分解図であり、図13は、本実施形態に係るセンサモジュール10を備える6軸力センサを示す側面図である。6軸力センサ1は、任意に設定される互いに直交する3軸方向における並進力と、該3軸周りのモーメントを検出することが可能なセンサである。なお、本実施形
態において、6軸力センサ1に対応する3軸は、X軸、Y軸、およびZ軸であり、これらの3軸は互いに直交する。
【0055】
6軸力センサ1は、外力が作用する作用部としても機能する上板2と、下板3と、6軸力センサ1に対応する3軸の一部の軸方向における並進力(±X方向、±Y方向、および+Z方向の並進力)を電気的に検出する第一検出部4と、3軸のうち残りの軸方向における並進力(−Z方向の並進力)を電気的に検出する第二検出部5とを備える。上板2および下板3は、ほぼ同型の板材であり、本実施形態においては矩形体である。そして、上板2および下板3の辺は、X軸およびY軸に平行に設定される。また、第一検出部4は、上板2および下板3の各隅に四台設けられ、第二検出部5は上板2および下板3の各辺の中央部に設けられる。
【0056】
この第一検出部4と第二検出部5によって検出される並進力に対応する電気信号が、アンプとAD変換器を介してコンピュータに送られ、コンピュータの演算部によって、3軸方向の並進力および該3軸周りのモーメントが算出される(図示は省略する)。
【0057】
第一検出部4は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ設けられたセンサモジュール4a、4b、4cと、球体のボール4dと、上板2に固定された矩形部材であってその端面が上板2のX軸方向またはY軸方向の辺と平行なロッド4e、4fで構成される。ここで、Z軸方向に対応するセンサモジュール4cは下板3に直接設けられるが、X軸方向、Y軸方向に対応するセンサモジュール4a、4bは、下板3に設けられた金具4gを介して設けられる。
【0058】
ここで、ボール4dは、下板3の四隅に設けられた第一検出部4のそれぞれにおいて、各軸方向のセンサモジュールの被押圧部に接触するように配置される。第一検出部4の各構成要素の寸法や形状は、第一検出部4におけるボール4dが対応するX軸、Y軸、Z軸の三軸方向のセンサモジュールの被押圧部に接触するように設定されている。第一検出部4において、ボール4dは固定はされていないが、ロッド4e、4f、センサモジュール4a、4b、4cおよび上板2によって拘束された状態となっている。
【0059】
第二検出部5は、上板2に固定される下側ユニット5aと、下板3に固定される上側ユニット5bによって構成される。下側ユニット5aは、コの字型をした金具5a1と、金具5a1の凹部の中央に螺合されるネジであってその端部に球形部を有するボール付きネジ5a2から構成される。また、上側ユニット5bは、凹部形状を有する金具5b1と、金具5b1の凹部に固定されるセンサモジュール5b2とで構成される。
【0060】
ここで、上側ユニット5bは、下側ユニット5aの凹部(コの字の奥の部分)と上側ユニット5bの凹部とが組み合うように下板3に固定される。そして、ボール付きネジ5a2の球形部がセンサモジュール5b2と接触した状態となる。従って、第二検出部5においては、Z軸方向で、プラス側からボール付きネジ5a2の球形部を介して、マイナス側に位置する上側ユニット5bのセンサモジュール5b2に接触する。第二検出部5の各構成要素の寸法や形状は、第二検出部5におけるボール付きネジの球形部がZ軸方向のセンサモジュールの被押圧部に接触するように設定されている。但し、第二検出部5の下側ユニット5aは、コの字型をした金具5a1と、金具5a1の中央に設けられた半球状の窪み5a4と、半球状の窪み5a4に挿入されるボール5a3とから構成されてもよい(図14を参照)。この場合、下側ユニット5aの凹部と上側ユニット5bの凹部とが組み合うように下板3に固定されると、ボール5a3はセンサモジュール5b2に点接触する。
【0061】
本実施形態に係る6軸力センサに拠れば、所望の最大計測荷重に合わせて、弾性部材12あるいは鋼板17を上述した方法で適切に選定したセンサモジュールを用いることによ
り、用途にあった計測範囲を有する6軸力センサとすることが出来る。特に、この6軸力センサを人の足底に取り付け、足裏に作用する床反力およびその作用点を計測する場合(図15を参照)、鉛直下方向の力が他の方向と比較して大きいため、鉛直下方向の力を計測する感圧式導電性センサの計測範囲の上限が重要である。
【0062】
そこで、本発明の発明者は、鉛直下方向の力の計測部に本センサモジュールを適用し、6軸力センサを試作した。更に、荷重試験器を用い、6軸力センサを取り付けプレートに固定し、試作した6軸力センサの上板に荷重を加えて実験を行った(図16を参照)。なお、図16に示す荷重試験器の構成は図5に示す荷重試験器と概略同様であるため、説明を省略する。
【0063】
図17は、上記実験の結果の代表例を示す図である。図17の横軸は時間、縦軸は鉛直下向きの力を示している。図17において、実線は鉛直下方向の力の計測部に本センサモジュール組み込み試作した6軸力センサを用いて計測された力を示している。また、破線は力覚センサIFS−100M40Aを用いて計測された力を示している。図17より、試作した6軸力センサを用いて計測された力と力覚センサIFS−100M40Aを用いて計測された力は、ほぼ一致していることがわかる。このことから、本センサモジュールを6軸力センサに適用することは十分可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態における、鋼板が取り付けられていない状態のセンサモジュールを示す平面概略図である。
【図2】実施形態における、鋼板が取り付けられた状態のセンサモジュールを示す平面概略図である。
【図3】実施形態におけるセンサモジュールの断面概略図である。
【図4】鋼板が取り付けられていない状態のセンサモジュールのその他の実施形態を示す平面概略図である。
【図5】実施形態における感圧式導電性センサの構成を示す図である。
【図6】実施形態におけるセンサモジュールの断面概略図である。
【図7】実施形態における感圧面および弾性部材の面積を示す平面概略図である。
【図8】実施形態において、荷重試験器を用いて感圧式導電性センサまたはセンサモジュールに作用する力と電圧との関係を計測する方法を示す図である。
【図9】実施形態において、感圧式導電性センサのセンサ信号に基づいて、感圧式導電性センサに掛けられた力を計測するためのシステム構成を示す図である。
【図10】実施形態に係るセンサモジュールの鋼板に荷重を掛けた場合に、感圧面と弾性部材に荷重が分散されているかを調べた結果を示す図である。
【図11】実施形態において、センサモジュールによって計測された力と、力覚センサIFS−100M40Aを用いて計測した力との関係を調べた実験結果を示す図である。
【図12】実施形態に係るセンサモジュールを備える6軸力センサを示す分解図である。
【図13】実施形態に係るセンサモジュールを備える6軸力センサを示す側面図である。
【図14】実施形態に係る第二検出部のバリエーションを示す図である。
【図15】実施形態に係る6軸力センサの適用例を示す図である。
【図16】実施形態において、試作した6軸力センサを荷重試験器を用いて試験する方法を示す図である。
【図17】実施形態において、試作した6軸力センサを荷重試験器を用いて試験した実験の結果の代表例を示す図である。
【図18】鋼板が取り付けられていない状態の感圧式導電性センサを示す平面概略図である。
【図19】鋼板が取り付けられた状態の従来のセンサモジュールを示す平面概略図である。
【図20】従来のセンサモジュールの断面概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1 6軸力センサ
10 センサモジュール
11 感圧式導電性センサ
12 弾性部材(免荷部)
13 感圧面
14 センサ取り付け板
17 鋼板(被押圧部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より押圧される被押圧部と、
作用した力に応じて導電率が変化する導電率変化部を有し、前記被押圧部を介して作用した力に応じた該導電率変化部における導電率の変化を検出する感圧式導電性センサと、
前記被押圧部を介して前記感圧式導電性センサに作用し得る力の一部を受けることで、前記外部からの押圧の力のうち、前記感圧式導電性センサに作用する力を減らす免荷部と、
を備える、センサモジュール。
【請求項2】
前記感圧式導電性センサは、前記被押圧部に接することで、前記押圧の力を受ける感圧面を有し、
前記免荷部は、前記被押圧部のうち、前記感圧面が接していない部分に接していることで、前記被押圧部が押圧された場合に、前記感圧式導電性センサと共に圧縮される弾性部材を有する、
請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記被押圧部における前記感圧面および前記弾性部材に接する面は平面であり、
前記弾性部材は、前記感圧式導電性センサの周囲に、前記被押圧部に接する面が前記感圧面と同一平面上となるように設けられる、
請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のセンサモジュールであって、互いに重ならない複数の軸方向への力に応じた導電率の変化を夫々検出するように設けられた複数のセンサモジュールを備える、力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−42042(P2009−42042A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206717(P2007−206717)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)