説明

センサモジュール及びこれを用いた攪拌装置

【課題】伝送効率の高いセンサモジュールおよびこれを用いた攪拌装置を実現することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため本発明は、攪拌する物質の少なくとも一つの物質特性を感知するためのセンサ部と、このセンサ部からの測定情報を攪拌装置の受信部に無線で伝送する送信部と、この送信部の指向性パターンのピークが、受信部に近づくようにセンサモジュールの向きを調整する方向制御手段とを備えたセンサモジュールと、これを用いた攪拌装置とした。これにより本発明は、受信部の受信感度を高め、伝送効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を攪拌しながら濃度調整や化学反応等を行う攪拌装置で使用されるセンサモジュールおよびこれを用いた攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の理化学反応工程では、流体や粉体などを、攪拌装置で攪拌しながら濃度や温度、化学反応の均一化を図り、各種分析や化学合成などを行っている。
【0003】
この攪拌装置には、容器に被攪拌物質と共に磁性体を内蔵した回転子(マグネチックスターラー)を入れ、回転子を回転駆動させて攪拌させる装置(例えば、特許文献1参照。)や、容器自体を回動させたり、あるいは攪拌装置に取り付けた攪拌子を回転させて容器内を攪拌させたりする装置がある。
【0004】
そして例えば上記回転子に、攪拌する物質の温度やpH等の特性を感知するセンサ部と、このセンサ部からの測定情報を無線で伝送する送信部とを備えることで、回転子はセンサモジュールとして機能する。
【0005】
このようにセンサモジュールを攪拌する物質と共に容器に投入することで、温度計やpH計などを別途挿入する必要がない。したがって、容器が小型化しても、効率よく物質の特性を測定することができる(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−73034号公報
【特許文献2】特表2007−502709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のセンサモジュールを攪拌装置に用いると、センサモジュールの無線伝送効率が低くなることがある。
【0008】
その理由は、センサモジュールが攪拌装置内で回転し、ランダムな方向に向いてしまうからである。したがって、センサモジュールの送信部の指向性パターンのピークと受信部の配置された方向とが一致し難く、一時的に無線伝送が断絶されることがある。そしてその結果、受信部における平均受信電力が低下し、センサモジュールの無線伝送効率が低下するのである。
【0009】
そこで本発明は、無線伝送効率の高いセンサモジュールおよびこれを用いた攪拌装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そしてこの目的を達成するため本発明のセンサモジュールは、物質の特質特性を感知するセンサ部と、このセンサ部からの情報を無線で伝送する送信部と、センサモジュールの向きを調整する方向制御手段とを備え、この方向制御手段によってセンサモジュールの向きが安定状態になった時に、送信部の指向性パターンのピークは、センサモジュールの中心を通る水平軸に対して上方または下方に向いているものとした。
【0011】
また本発明の攪拌装置は、攪拌する物質の少なくとも一つの物質特性を感知するセンサ部と、このセンサ部からの情報を無線で伝送する送信部と、センサモジュールの向きを調整する方向制御手段とを有するセンサモジュールと、送信部からの信号を受信する受信部とを有し、方向制御手段によって、センサモジュールの向きが安定状態になった時に、送信部の指向性パターンのピークは、前記センサモジュールの中心を通る水平軸に対して受信部側に向いている攪拌装置とした。
【発明の効果】
【0012】
これにより本発明は、無線伝送効率の高いセンサモジュールおよびこれを用いた攪拌装置を実現できる。
【0013】
その理由は、センサモジュールに上述の方向制御手段を設けたからである。
【0014】
すなわち本発明は、攪拌装置内でセンサモジュールがランダムな方向に向いても、方向制御手段によって安定な方向に向きを変えることができる。したがって、この安定な状態の時に、指向性パターンのピークが所定の方向に向くように設計しておくことで、この方向に受信部を設ければよいため、平均受信電力を大きくすることができる。
【0015】
そしてその結果、センサモジュールの無線伝送効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1のセンサモジュールの断面図
【図2】本発明の実施の形態1の攪拌装置の模式断面図
【図3】本発明の実施の形態1のセンサモジュールの指向性を示す水平面パターン図
【図4】(a)本発明の実施の形態1のセンサモジュールの動作を示す断面図、(b)同断面図
【図5】本発明の実施の形態2のセンサモジュールの断面図
【図6】本発明の実施の形態2の攪拌装置の模式断面図
【図7】(a)本発明の実施の形態2のセンサモジュールの動作を示す断面図、(b)同断面図
【図8】(a)本発明の実施の形態2における別の例のセンサモジュールの動作を示す断面図、(b)同断面図
【図9】本発明の実施の形態2のセンサモジュールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
<回転子>
以下、本発明の実施の形態1では、センサモジュールとして、このセンサモジュール自体が回転手段を有する回転子6を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1における回転子6の断面図である。図1において、回転子6は、溶液特性を感知するセンサ部1と、センサ部1からの測定情報を無線で外部に伝送する送信部2と、センサ部1及び送信部2に電力を供給する電源部3と、外部から非接触で回転駆動力を得て回転する回転手段としての磁性体4と、を備える。また、回転子6の全体は外装部5で覆われている。
【0018】
以下に、回転子6の各構成部材について説明する。
【0019】
センサ部1では、溶液や粒子などの物質の物性を測定する。本実施の形態では、溶液8の溶液特性、例えば、温度あるいはpH値を測定する。温度を測定する場合にはサーミスタあるいは熱電対などの電気変換センサを用いることが好ましい。また、pH値を電気特性として測定する電気変換センサとしては、表面のイオン濃度に応じて出力電圧が変化するFET素子などがあり、例えば、pH値が下がるほど出力電圧が低下するFET素子が知られている。このように、センサ部1には、測定値が電気的出力として取り出せる小型のセンサ素子を用いることが好ましい。また、温度を測定する場合にはセンサ部1を回転子6の表層部に配置することが好ましく、pH濃度を測定する場合には、センサ部1の検知部が表出する構造とすることが好ましい。
【0020】
このセンサ部1は溶液8の状態変化を速やかに測定できることが好ましい。そこで、センサ部1の溶液特性を検知する領域の一部を回転子6の表層近傍に配置することが好ましい。これに対して、センサ部1を外部に表出させることができない場合には、回転子6の表層から内部のセンサ部1へ通じる少なくとも2つの流路を設け、回転子6の回転に伴って、この流路の内部に溶液8が進入・排出する構造とすることが好ましい。センサ部1をこの流路の内部に配置することで、流路の内部に流れる溶液8の状態変化を速やかに測定できる。
【0021】
次に、センサ部1にて測定された温度またはpH値などの測定情報の電気信号は送信部2に送られ、ここで伝送に適した高周波信号に変換されて送信される。このときの送信手段は近距離無線通信技術を応用することが可能であり、例えば、ブルートゥース(Bluetooth)通信技術、赤外線通信技術などを用いることができる。
【0022】
また、電源部3は、電気二重層コンデンサあるいは小型の充電電池などを用いることができる。これらのデバイスを用いた電源部3には非接触の充電装置を用いて充電できる。その他電源部3として発電素子を用い、回転子6の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して充電してもよい。発電素子としては、圧電素子やコイルなどが挙げられる。
【0023】
前記構成のように、回転子6の内部にセンサ部1を内蔵し、このセンサ部1によって測定したデータを、近距離無線通信技術を用いて伝送することによって、外部から測定器を挿入する必要がなく、小型容器あるいは少量の液体であっても効率良く攪拌または反応を行うことができる攪拌装置を実現できる。さらに、外部から測定器を挿入しなくてよいため、測定器が回転運動を阻害したり、回転部と測定器が衝突することによって測定器の一部を破損したりするなどの問題の発生を回避できる。
【0024】
また、外部から非接触で回転駆動力を受けるための磁性体4を設けている。この磁性体4には着磁した金属磁性体、あるいはバリウムフェライトなどの金属酸化物磁性体などを所定の形状に加工して内蔵させることが好ましい。
【0025】
また、回転子6は、これらの内蔵した各種部材を攪拌および/または反応を行う各種液体から保護するために、全体を外装部5にて被覆した構造としている。この外装部5に用いる材料としては、多くの化学反応に対して安定なフッ素系樹脂が好ましい。また、外装部5は、回転子6の全体をモールドすることが好ましい。
【0026】
<攪拌装置>
次に、この回転子6を用いた攪拌装置の詳細な図2を用いて説明をする。図2は本発明の実施の形態1における攪拌装置の概念を説明するための断面図である。この攪拌装置は、攪拌又は化学反応を行う溶液8を入れた容器7内に入れた回転子6と、回転子6に外部から非接触で回転駆動力を与える回転磁石10と、回転子6から溶液8の測定情報を受信するアンテナ部14及び受信部15と、受信したデータを処理するデータ処理部16と、制御部17とを備える。なお、図2に示すように、アンテナ部14、受信部15と、データ処理部16と、制御部17とは、一つの端末18を構成してもよい。
【0027】
攪拌あるいは化学反応等を行う容器7の内部には、攪拌等を行う溶液8を入れ、その中に図1の回転子6が入れられる。この容器7としては、通常、ガラスあるいは金属製の容器7が用いられる。また、この容器7の内部に入れられる溶液8としては、攪拌又は化学反応を行う溶液、例えば、薬品などを含んだ溶液8を入れる。容器7は、加熱あるいは保温のためのホットプレート9の上に載置される。このホットプレート9によって容器7の内部の溶液8を加熱又は保温する。なお、この加熱方法は一例であり、加熱の他に冷却手段を設けて、高精度な温度制御をすることも可能である。
【0028】
また、ホットプレート9を挟んで、回転子6に非接触で回転駆動力を伝えるための着磁した回転磁石10を設けている。この回転磁石10は、回転軸11を介して回転駆動力を有するモータ12に連結されている。モータ12を回転させることによって回転軸11を介して回転磁石10を所定の回転数に回転させ、回転磁石10による磁場変化によって、非接触で回転子6を回転させることができる。なお、このような構成からなる攪拌装置はマグネッティックスターラと広く呼ばれており、これらの原理を用いた攪拌装置に広く用いることができる。例えば、回転磁石10の代わりにマグネットにコイルを巻き付け、そのコイルに電流を流すことによって電磁石として用いる電磁コイルを用いることも可能である。
【0029】
また、回転子6の構造は円柱状、多角形あるいは楕円状の丸みを帯びた形状であっても良く、適宜、所定の形状の回転子6を設計して用いることができる。
【0030】
なお、容器7の内部に充填した溶液8の温度を測定したい場合には、図1にて説明した温度センサ1を回転子6に内蔵しておく。この場合、回転子6から送信された温度に関する測定データを受信側であるアンテナ部14にて受信し、受信された電気信号は受信部15を介してデータ処理部16へと伝送される。この伝送された温度に関する測定データを蓄積しておくために、例えばメモリ部(図示せず)を設けておき、このメモリ部に測定データを記憶させておくことも可能である。
【0031】
さらに、このメモリ部には測定のためのプログラムソフトなどを記憶させておき、自動計測のための制御部としても利用することが可能である。また、適宜メモリ部の内容について検討を加え最適なメモリ部を構成することによって、効率が良い、精度の高い測定を実現できる装置を提供できる。
【0032】
次に、測定された温度に関する信号は制御部17へ送られ、所定の温度に加熱したいときには制御部17からホットプレート9に電流を流すように指示することによって、溶液8を加熱できる。
【0033】
また、溶液8のpH値を測定あるいは制御する場合には、回転子6のセンサ部1にpHセンサを内蔵しておく。内蔵されたpHセンサを介して測定された測定値を回転子6から送信し、前記方法と同様の方法によって測定データを受信し、制御部17を介して溶液8のpH値を制御できる。
【0034】
また、近距離無線通信は、赤外線通信技術、ジグビー通信技術、ブルートゥース(Bluetooth)通信技術などを用いることによってデータ通信を行うことができる技術として、数メートルの距離であれば小型のモジュールを利用する技術が普及してきており、これらのモジュールを用いて小型の送受信システムを構築することが可能となっている。
【0035】
この近距離無線通信は、回転子6からの受信状態に適した箇所に配置することが好ましい。本実施の形態では、回転子6の送信部2は送信アンテナを備え、図3に示すように、送信アンテナの指向性パターンのピークは矢印T方向となるように設計した。さらに図1に示すように、回転子6を、その長軸を載置面に対して水平に置いた時に、磁性体4が回転子6内における上部または下部のいずれか一方に偏るように配置し、また他方には送信部2を配置した。
【0036】
この回転子6を容器7に投入すれば、当初は例えば磁性体4が図4(a)に示すように送信部2の上部に位置していても、図4(b)に示すように、磁性体4が回転磁石(図2の符号10)と引き合い、回転磁石10により近づくように向きを変え、その状態で回転子6は容器7の底に載置される。
【0037】
このようにして本実施の形態では、攪拌装置の動作時において、磁性体4が方向制御手段として機能し、この磁性体4が下部に位置したときに、回転子6は安定な状態となる。そしてこの安定な状態の時に、送信アンテナの指向性パターンのピークを、図4(b)の回転子6の中心Pを通る水平軸Xに対して上方に向くように設計している場合は、受信部15のアンテナ部14を図4(b)に示すように、容器の上方あるいは蓋の部分に配置しておくことで、無線伝送の断絶を抑制し、アンテナ部14の平均受信電力を高めることができる。
【0038】
また仮に磁性体4が回転子6の下部側に位置した時に、送信アンテナの指向性パターンのピークを水平軸Xに対して下方に向くように設計している場合は、アンテナ部14を容器7の下方あるいは底面に配置することで、T方向がアンテナ部14に近づくように回転子6の向きを制御することができ、アンテナ部14の平均受信電力を高めることができる。
【0039】
すなわち本実施の形態では、磁性体4と回転磁石10とが引き合う力を用いることで、攪拌装置の動作中における回転子6の向きが、所定方向で安定状態となる。そしてこの安定状態になった時に、送信アンテナの指向性パターンのピークが、少なくとも回転子6の水平軸Xよりもアンテナ部14側に向くことで、アンテナ部14の平均受信電力を高めることができる。
【0040】
なお、送信アンテナの指向性パターンのピークは、上方または下方に向くことが好ましい。横方向に指向性を有する場合は、容器7の側面の四方に受信用アンテナ部14を配置しなければならず、アンテナ部14が多数必要になるからである。
【0041】
なお、磁性体4の質量が大きい場合は、磁性体4は回転子6の内部で錘としても機能する。したがって、磁性体4を回転子6の一方に偏らせて配置することで、その重力によって図4(a)に示すように磁性体4が上部に位置する状態から図4(b)に示すように磁性体4が下部に位置する状態へと回転子6は向きを変える。このように磁性体4を錘として用いることでも、T方向を水平軸Xに対して上方または下方に向けることができ、アンテナ部14のある方向へ近づけることができる。
【0042】
また本実施の形態では、容器7内で、回転子6の回転中に送信部2が磁性体4の上部に位置するように回転子6の上下を合わせることで、送信波である電磁波が磁性体4に阻害されるのを回避することができる。
【0043】
また、回転磁石10に電磁誘導コイルを用い、この回転磁石10と、回転子6の磁性体4とでトランス機能を形成することによって、回転子6の電源部3を構成するコンデンサ素子に電力を供給することができる。これによって、外部から非接触で回転子6に電力を供給できるシステムを構成することが可能であり、小型の回転子6を実現することができる。さらに、攪拌中は常時電力を供給できることから、電池などを内蔵しなくとも良く、耐久性に優れた回転子6を実現できる。
【0044】
また、上記測定データを表示する表示部を端末18に設けることも可能である。この表示部は、液晶、ELなどの小型薄型ディスプレイなどを用いて構成することが好ましい。
【0045】
以上説明してきたように、本実施の形態1における回転子6およびこれを用いた攪拌装置によって、小さな容器であっても、あるいは少量の液体であっても効率良く攪拌あるいは化学反応を行うことができる回転子6およびこれを用いた攪拌装置を実現できる。
【0046】
(実施の形態2)
<センサモジュール>
以下、本実施の形態では、センサモジュール19を例に挙げ、説明する。このセンサモジュール19は、これ自体には回転手段が無く、攪拌装置の攪拌手段によって、容器内を回転するものである。
【0047】
図5に示すように、本実施の形態のセンサモジュール19は、温度を感知するセンサ部20と、送信部21、電源部22を備えて、外装体23で被覆されている。電源部22は電池素子を金属で封止したものである。電源部22への充電エネルギーは、外部から非接触で供給してもよく、また発電素子をさらに設けてもよい。
【0048】
そしてこの電源部22は、センサモジュール19内において、電源部22が配置されていない領域よりも単位体積あたりの平均質量が大きく、さらにセンサモジュール19の中心Pよりも一方に偏って配置されているため、このセンサモジュール19の重心は、中心Pよりも電源部22が配置された一方に偏っている。
【0049】
またこの送信部21は送信アンテナを備え、この送信アンテナは、指向性パターンのピークが矢印T方向になるように設計した。
【0050】
なお、本実施の形態では、センサ部20は温度センサとしたが、pHセンサやイオン濃度センサなど、種々の物性を測定するセンサに応用できる。
【0051】
その他実施の形態1と同様の構成については、説明を省略する。
【0052】
<攪拌装置>
本実施の形態の攪拌装置は、粒子を攪拌しながらこの粒子表面に液体をコーティングする攪拌装置である。
【0053】
以下、本実施の形態の攪拌装置の構造について説明する。
【0054】
図6に示すように、本実施の形態の攪拌装置24は、恒温槽25と、この恒温槽25の内部に配置され、粒子を収容する容器26と、容器26内の粒子およびコーティング材料を攪拌する攪拌手段(攪拌子27)と、恒温槽25内の温度を調整する温度調節機28と、容器26とパイプ29を介して接続されたコーティング材料の原料タンク30とを備えている。
【0055】
また本実施の形態では、受信アンテナを有する受信部31を、容器26の蓋の上面に配置した。受信部31で受信した電気信号は、実施の形態1と同様に、データ処理部へと入力され、さらに制御部に伝送される。制御部は温度調節機28と接続され、この温度調節機28を制御する。
【0056】
次に、本実施の形態の攪拌装置24の使用方法について、説明する。
【0057】
はじめに、恒温槽25内に水を入れ、水の温度を所定温度に調整し、次に、容器26内に基材となる粒子を充填する。この時、上述のセンサモジュール19も容器26にいれ、粒子と混在させておく。
【0058】
その後容器26の内部を攪拌子27で攪拌しながら原料タンク30内のコーティング材料を容器26に注入し、さらに攪拌する。
【0059】
この時、センサモジュール19のセンサ部20で容器26内の温度を感知し、その信号を送信部21から攪拌装置24の受信部31へと無線伝送することで、非接触で容器26内部の温度を測定することができる。
【0060】
そして図5に示すように本実施の形態のセンサモジュール19の電源部22は錘として機能し、この電源部22が配置された一方に重心が偏っている。したがってセンサモジュール19が図6の容器26内で図7(a)に示す向きになっても、錘の質量が方向制御手段として機能し、重心が下側に位置するように、センサモジュール19の向きが変わり安定状態となる(図7(b))。
【0061】
したがって、図7(b)に示すように、電源部22が下部に位置した場合に、センサモジュール19の送信アンテナの指向性パターンのピークが、中心Pを通る水平軸Xよりも上方へ向くように設計するとともに、受信部31の受信アンテナ32を容器26の上方に配置しておくことで、矢印T方向が受信アンテナ32の方へ近づくように、センサモジュール19の向きを変えることができる。そしてその結果、受信アンテナ32における平均受信電力を高めることができる。
【0062】
なお、攪拌動作時は、センサモジュール19は攪拌子27からの大きな外力を受けることから、必ずしも錘によってセンサモジュール19の向きを継続的に一定に維持できるものではないが、このような動作時においても、センサモジュール19の向きが所定方向に向く確率を高めることができ、結果として受信アンテナ32の平均受信電力を高めることができる。
【0063】
さらに本実施の形態では、電源部22は送信アンテナを有する送信部21に対して、T方向と逆方向に配置しているとともに、電源部22の外装を金属で構成したため、電源部22が反射板としても機能し、送信信号の放散を抑制し、より伝送効率を高めることができる。
【0064】
なお、図8(a)(b)に示すように、センサモジュール19は円錐状にしてもよい。この場合、センサモジュール19は断面積が広くなるに従って質量も増えるため、形状によって錘を構成することができる。図8(a)では、センサモジュール19の重心が中心Pから断面積の大きい方へ偏っているため、容器26内では図8(b)のように重心が下方に来るようにセンサモジュール19は向きを変える。したがって、例えば送信アンテナの指向性ピークを、中心Pを通る水平軸Xに対して上方に向くように設計し、受信アンテナ32を上方に配置すれば、受信感度を高めることができる。
【0065】
さらに図9に示すように、錘部(電源部22)がセンサモジュール19の左右いずれか一方に偏っている場合も、錘部によって安定な状態となった時に、中心Pを通る水平軸Xに対して上方または下方に送信アンテナの指向性パターンのピークを設計すればよい。
【0066】
なお本実施の形態では、電源部22を錘部として用いたが、電源部22とは別に錘部を設けてもよい。電源部22は充電電池や電気二重層コンデンサ、あるいは圧電素子やコイルなどの発電素子を用いることができる。
【0067】
また本実施の形態では、錘によってセンサモジュール19の向きを制御したが、磁性体によって向きを制御してもよい。すなわち、センサモジュール19と容器26とにそれぞれ磁性体を配置し、この磁性体同士が引き合う力によってセンサモジュール19の向きを変え、安定な状態にすることができる。そしてこれらの磁性体が引き合い安定な状態となった時に、センサモジュール19の送信アンテナの指向性パターンのピークが、センサモジュール19の中心Pを通る水平軸Xよりも受信アンテナ32側に向くように送信アンテナの指向性パターンと受信アンテナ32の位置を設定することで、無線伝送効率を高めることができる。なお、錘部を磁性体で構成すれば、磁性体を用いて容易に回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明に係るセンサモジュールおよびそれを用いた攪拌装置では、センサモジュールに測定したいセンサを内蔵させ、近距離無線通信にてその測定データを受信できる。これによって、小型あるいは少量の液体であっても高精度に物性をセンシングし、効率良く攪拌あるいは化学反応を行うことが可能となるので、広く理化学反応の攪拌あるいは反応装置等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 センサ部
2 送信部
3 電源部
4 磁性体
5 外装部
6 回転子
7 容器
8 溶液
9 ホットプレート
10 回転磁石
11 回転軸
12 モータ
14 アンテナ部
15 受信部
16 データ処理部
17 制御部
18 端末
19 センサモジュール
20 センサ部
21 送信部
22 電源部
23 外装体
24 攪拌装置
25 恒温槽
26 容器
27 攪拌子
28 温度調節機
29 パイプ
30 原料タンク
31 受信部
32 受信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を攪拌する攪拌装置に用いるセンサモジュールであって、
このセンサモジュールは、
物質の特質特性を感知するセンサ部と、
このセンサ部からの情報を無線で伝送する送信部と、
前記センサモジュールの向きを調整する方向制御手段とを備え、
この方向制御手段によって前記センサモジュールの向きが安定状態になった時に、前記送信部の指向性パターンのピークは、前記センサモジュールの中心を通る水平軸に対して上方または下方のいずれか一方に向いているセンサモジュール。
【請求項2】
前記方向制御手段は錘である請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記方向制御手段は磁性体からなる、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記センサモジュールは、発電素子を備える、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記センサモジュールは、
回転手段を有する回転子である請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記回転手段は、磁性体からなる請求項5に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記送信部は、アンテナ部を有し、
前記センサモジュールは、回転時に前記磁性体が前記アンテナ部より下方に位置するように、物質を攪拌する容器内に設置される、請求項6に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
物質を収容する容器を備え、前記物質を攪拌する攪拌装置であって、
攪拌する前記物質の少なくとも一つの物質特性を感知するセンサ部と、このセンサ部からの情報を無線で伝送する送信部と、センサモジュールの向きを調整する方向制御手段とを有するセンサモジュールと、
前記送信部からの信号を受信する受信部とを有し
前記方向制御手段によって、前記センサモジュールの向きが安定状態になった時に、前記送信部の指向性パターンのピークは、前記センサモジュールの中心を通る水平軸に対して前記受信部側に向いている攪拌装置。
【請求項9】
前記受信部は、容器の蓋またはその上方あるいは容器の底面またはその下方に配置されている請求項8に記載の攪拌装置。
【請求項10】
前記センサモジュールは、回転手段を有する回転子であって、
前記センサモジュールの回転手段に外部から非接触で回転駆動力を与えて前記センサモジュールを回転させる回転駆動部をさらに備えた請求項8に記載の攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−20024(P2011−20024A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165636(P2009−165636)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】