説明

センタリングが可能な溶出試験容器

【課題】容器支持構造に嵌め込む際の正確な同心性および垂直状態を実現可能な容器を提供する。
【解決手段】本容器は、円筒部216と、底部220と、下部リング208と、上部リング212とを備え、円筒部216は、容器内面、容器外面、容器開口を囲むリム228で終端する上端領域222、前記上端領域222において容器外面に形成された容器溝236、および前記上端領域222から軸方向に間隔を空けて配置された下端領域224を備える。底部220は、下端領域に配設されている。下部リング208は、容器溝236に配設され、容器内面と同心の側部外面を有する。環状側部240および容器内面と垂直なフランジ上面およびフランジ下面を有する環状フランジ部244を備える。上部リング208は、リム228の少なくとも一部を越えて延びる内部522と、フランジ上面と密に係合した外部524とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に被分析物含有媒体の溶出試験に関する。より具体的には、本発明は、溶出媒体収容容器を嵌め込む開口または容器に挿入される器具に対する当該容器のセンタリングおよび位置合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
溶出試験は、可溶性物質、特に、賦形剤で成形された、治療に有効な量の薬物から成る調合製剤(たとえば、錠剤、カプセル製剤等)の作製および評価の一部として行われることが多い。製剤は通常、所定の体積および化学成分の溶出媒体を収容した試験容器に投入される。この化学成分の一例としては、胃腸内環境を模擬するpH因子が挙げられる。溶出試験は、たとえば製剤の薬物放出特性に関する研究や製剤形成プロセスの品質管理の評価に役立つ。また、溶出試験は、溶出に関連する手順で生成されたデータの妥当性を確認するため、米国薬局方(USP:United States Pharmacopoeia)等の特定機関によって認証または指定されたガイドラインに従って行われることが多い。この場合の試験は、様々なパラメータ範囲において行う必要がある。このパラメータとしては、溶出媒体の温度、蒸発に関わる許容損失量、ならびに撹拌装置、調剤保持装置、および試験容器で動作するその他の器具類の使用、位置、および速度等が挙げられる。
【0003】
製剤が溶出システムの試験容器中で溶解している時には、分光光度計等の分析機器を動作させて、試料溶液の光学的測定を所定時間間隔で行ってもよい。この分析機器は、被分析物(たとえば、薬物等)の濃度および/またはその他の特性を測定するものであってもよい。評価中の製剤の溶出プロファイル、すなわち特定時点または特定経過時間における試験媒体中の被分析物の溶解度は、取得した試料中の被分析物濃度を測定することによって算出することができる。
【0004】
分光光度計を用いる特定の一手法(シッパー法と称することもある)では、溶出媒体試料が試験容器から分光光度計内の試料セルに投入され、試料セル内において走査される。その後、手順によっては、試験容器に戻される。
また、ごく最近開発された別の手法(その場法(in situ method)と称することもある)では、光ファイバーの「浸漬プローブ」が試験容器に直接挿入される。この浸漬プローブには、分光光度計と連通した1または複数の光ファイバーが含まれる。このように、その場法においては、浸漬プローブが試料セルと同様の機能を果たすため、分光光度計に試料セルを設ける必要がない。測定値は、試験容器中で直接得られるため、試験容器と分光光度計との間では、液体試料が搬送されるのではなく、光ファイバーを介して光信号が伝達される。
【0005】
溶出試験に用いる装置は通常、試験容器を嵌め込む開口を配列した容器プレートを具備する。試験手順において、容器に収容した媒体の加熱が必要な場合は、容器プレートの真下に水槽が設けられることが多く、各容器が少なくとも部分的に水槽に浸されて、加熱された水槽から容器媒体への熱伝達が可能となっている。あるいは、発熱体を容器に直接取り付けてもよい。
【0006】
試験構成の一例(たとえば、USP-NF Apparatus 1等)では、金属製の駆動軸に円筒状のバスケットが取り付けられ、このバスケットに薬剤試料が充填される。そして、駆動軸とバスケットとの各組み合わせが手動または自動で容器プレート上の各試験容器内へと降下され、駆動軸およびバスケットが回転される。
試験構成の別の例(たとえば、USP-NF Apparatus 2等)では、各軸に翼型パドルが取り付けられ、薬剤試料は、容器の底部へ到達するように各容器に投入される。なお、USP24-NF19の第<711>項(溶出)にある一般要求事項に従って進める場合、各軸は、その容器の垂直軸からの距離が任意の点で2mm以下となるように、各容器内での配置を行う必要がある。
【0007】
したがって、内側で器具類が動作する容器の特定使途においては、容器、特にその内面を当該器具に対して同軸に位置合わせすることが基準となる。この基準を満たすため、本出願の譲受人に譲渡された特許文献1、特許文献2、特許文献3、および、特許文献4等に開示されるように、様々な手法が採用されてきた。また、特許文献5には、容器の位置合わせを行うための別の手法が開示されている。容器の位置合わせを行うためのさらに別の手法としては、カリフォルニア州パロアルトのVarian社から市販されているEaseAlign(登録商標)容器センタリング用リングがある。
【0008】
さらに、器具類に対する容器の適正な位置合わせには、その同心性に加えて、垂直状態も影響を及ぼす。本明細書において、「垂直状態」とは一般に、容器の内面が真に垂直となる精度、または内面が容器の中心軸もしくは中心軸に沿って容器に挿入された細長い器具と真に平行となる程度を意味する。容器を嵌め込む容器プレートの開口内に容器を同軸に配置することを確実にするために採用した手段に関わらず、容器が正確に垂直でない場合は、正しく位置合わせされていないことになる。その結果、容器の内面は、容器の中心軸に沿って挿入される軸基準の器具と厳密に平行とはならず、軸と容器内面との間の半径方向距離は、中心軸方向の高さ位置および/または中心軸に対する円周方向位置によって変化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,403,090号
【特許文献2】米国特許第6,562,301号
【特許文献3】米国特許第6,673,319号
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0208377号
【特許文献5】米国特許第5,589,649号
【特許文献6】米国特許第6,962,674号
【特許文献7】米国特許第6,303,909号
【特許文献8】米国特許第6,727,480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上から、溶出試験装置等が具備する容器支持構造に嵌め込む際の正確な同心性および垂直状態を実現可能な容器が必要である。
上述の課題のすべてもしくは一部、および/または当業者であれば見出し得たその他の課題に対処するため、本発明は、以下の実施態様で例示するような方法、プロセス、システム、装置、器具、および/または機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の容器は、その中心軸周りで同軸上に配設された円筒部と、底部と、下部リングと、上部リングとを備える。円筒部は、容器内面、容器外面、容器開口を囲むリムで終端する上端領域、当該上端領域において容器外面に形成された容器溝、および当該上端領域から軸方向に間隔を空けて配置された下端領域を備える。底部は、下端領域に配設されている。下部リングは、環状側部および環状フランジ部を備える。側部は、容器溝に配設され、容器内面と同心の側部外面を有する。フランジ部は、容器内面と垂直なフランジ上面およびフランジ下面を有する。上部リングは、リムの少なくとも一部を越えて延びる内部と、フランジ上面と密に係合した外部とを備える。
【0012】
本発明の溶出試験装置は、容器支持部材および容器を備える。容器支持部材は、上面および開口を囲む内縁部を有する。また、この開口を通って容器が延びている。この容器は、その中心軸周りで同軸上に配設された円筒部と、底部と、下部リングと、上部リングとを備える。円筒部は、容器内面、容器外面、容器開口を囲むリムで終端する上端領域、当該上端領域において容器外面に形成された容器溝、および当該上端領域から軸方向に間隔を空けて配置された下端領域を備える。底部は、下端領域に配設されている。下部リングは、環状側部および環状フランジ部を備える。側部は、容器溝に配設され、容器内面と同心の側部外面を有する。この側部外面は、上記開口の内縁部と接している。フランジ部は、容器内面と垂直なフランジ上面およびフランジ下面を有する。上部リングは、リムの少なくとも一部を越えて延びる内部と、フランジ上面と密に係合した外部とを備える。そして、容器内面は、容器支持部材の内縁部と平行である。
【0013】
別の本発明によれば、容器の組立方法が提供される。この容器は、容器開口を囲むリムで終端する上端領域および下端領域を備え、容器の中心軸周りで同軸上に配設された円筒部と、当該下端領域に配設された底部とを備える。容器には、下部リングの環状側部が容器外面に形成された容器溝に配設されるように当該下部リングが実装される。この側部の外側面は、容器内面と同心である。下部リングは、容器内面と垂直なフランジ下面を有するフランジ部をさらに備える。そして、容器には、上部リングの内部がリムの少なくとも一部を越えて延びるとともに、当該上部リングの外部がフランジ部のフランジ上面と密に係合するように当該上部リングが実装される。
【0014】
本発明のその他の機器、装置、システム、方法、特徴、および利点については、以下の図面および詳細な説明を検討すれば、当業者には明らかとなるであろう。そのような付加的なシステム、方法、特徴、および利点のすべては、本明細書に包含され、本発明の範囲に存するとともに、添付の請求の範囲によって保護されているものとする。
本発明は、以下の図面を参照することによって、より理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を説明するために強調されている。また、異なる図面を通して対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の容器を利用する溶出試験装置の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施態様に係る、分解状態の容器を示す分解組立図である。
【図3】図2の容器を組み立てた状態の一例を示す斜視図である。
【図4】図3の容器の立面図である。
【図5】図4中に「A」で示した容器の一部を示す詳細な立面図である。
【図6】図3および図4の容器の上平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施態様に係る溶出試験装置100の一例を示す斜視図である。
溶出試験装置100は、主ハウジング、制御ユニットまたはヘッドアセンブリ104、ヘッドアセンブリ104下方の容器支持部材(たとえば、プレート、ラック等)106、および容器支持部材106下方の水槽コンテナ108等の様々な構成要素を支持するフレームアセンブリ102を具備している。
【0017】
容器支持部材106は、水槽コンテナ108の内部に延びた複数の容器110を支持する。図1では、一例として8個の容器110を示しているが、当然のことながら、容器110の数はこれより多くても少なくてもよい。容器110は、以下に詳述するように、複数の容器実装箇所112において、容器支持部材106上の位置にセンタリングされていている。
【0018】
また、蒸発や揮発等による容器110からの媒体の損失を防止するため、容器カバー(図示せず)を設けてもよい。さらに、本発明の譲受人に譲渡された特許文献6等に開示されるように、容器カバーは、ヘッドアセンブリ104に接続され、電動手段によって容器110の上部開口上に移動可能である。また、溶出試験装置100の一部として具備可能な外部ヒーターやポンプモジュール140等の手段により、水槽コンテナ108を介して、水またはその他の適当な伝熱用液状媒体を加熱・循環してもよい。あるいは、この溶出試験装置100は、無水加熱が可能な設計であってもよい。このような設計では、本発明の譲受人に譲渡された特許文献7および特許文献8等に開示されるように、容器110の壁と熱的に接触して配設された何らかの加熱要素によって各容器110が直接加熱される。
【0019】
ヘッドアセンブリ104は、容器110内で動作する様々な構成要素(その場動作要素)を作動または制御する機構を具備していてもよい。たとえば、ヘッドアセンブリ104は通常、それぞれ各容器110内で動作するモーター駆動スピンドルおよびパドルを備えた撹拌要素114を支持している。手動手段、プログラム化手段、または自動手段により各撹拌要素114への出力の接続および切断を交互に切り替えるために、個別のクラッチ116を設けてもよい。また、ヘッドアセンブリ104は、撹拌要素114の回転を駆動する機構を具備していてもよい。また、ヘッドアセンブリ104は、液体ラインと対応する容器110との間に液体流路を提供する媒体搬送管を作動または制御する機構を具備していてもよい。
【0020】
本文脈上、「間に」という用語は、液体ラインから容器110内に向かう液体流路または容器110から液体ライン内に向かう液体流路を包含する。したがって、媒体搬送管は、媒体を容器110に注入する媒体注入管118と、容器110から媒体を除去する媒体吸引管120とを具備していてもよい。さらに、ヘッドアセンブリ104は、被分析物濃度を測定する光ファイバープローブ、温度センサー、pH検出器、製剤ホルダー(たとえば、バスケット、ネット、シリンダ等のUSP型装置)、およびビデオカメラ等、異なる種類のその場動作要素122を作動または制御する機構を具備していてもよい。また、単位製剤(たとえば、錠剤、カプセル製剤等)を所定の時間および媒体温度で選択した容器110にプリロードおよび投入するために、製剤配送モジュール126を利用してもよい。様々なその場動作要素を作動または制御する機構のその他の付加的な例については、たとえば上掲の特許文献6等に開示されている。
【0021】
ヘッドアセンブリ104は、上述したような溶出試験装置100の様々な構成要素の動作を制御するため、プログラム可能なシステム制御モジュールを具備している。また、ヘッドアセンブリ104には、メニュー、ステータス、およびその他の情報を提供するLCDディスプレイ132、ユーザー入力動作とスピンドル速度、温度、試験開始時間、および試験継続時間等の制御を行うためのキーパッド134、ならびにRPM、温度、実行経過時間、容器重量および/または容器体積等の情報を表示する読み出し136等の周辺要素を配置してもよい。
【0022】
溶出試験装置100は、動作要素114,118,120および122の容器110内への降下および容器110内からの上昇を行う1または複数の可動要素をさらに具備している。この可動要素としては、ヘッドアセンブリ104がその機能を担っている。すなわち、ヘッドアセンブリ104全体を手動手段、自動手段、または半自動手段により作動させて、容器支持部材106に対して向かう方向および離れる方向の垂直運動を行わせる。ヘッドアセンブリ104の代替または追加として、被駆動プラットフォーム等の他の可動要素138を設け、動作要素114,118,120および122のうちの1または複数を支持するとともに、所望の時間に容器110に対して上下させるようにしてもよい。なお、1つのタイプの動作要素(たとえば、撹拌要素114等)を動作させるために1つのタイプの可動要素を設け、別のタイプの動作要素(たとえば、媒体注入管118および/または媒体吸引管120等)を動作させるために別のタイプの可動要素を設けるようにしてもよい。さらに、特定の可動要素は、特定の動作要素114,118,120および122を個別に作動させる手段を具備していてもよい。たとえば、各媒体注入管118または各媒体吸引管120は、別の管118または120とは独立して、対応する容器110に対して挿脱可能であってもよい。
【0023】
媒体注入管118および媒体吸引管120は、流体ライン(たとえば、導管、チューブ類等)を介してポンプアセンブリ(図示せず)と連通している。このポンプアセンブリは、ヘッドアセンブリ104内に設けてもよいし、または溶出試験装置100のフレーム102により別の場所で支持された個別のモジュールとして、またはフレーム102の外側に配置された個別のモジュールとして設けてもよい。また、ポンプアセンブリは、各媒体注入ライン用および/または各媒体吸引ライン用の個別のポンプを具備していてもよい。これらのポンプは、任意の適当な設計であってもよく、一例としては蠕動ポンプが挙げられる。また、媒体注入管118および媒体吸引管120は、対応する流体ラインの末端部を構成していてもよく、液体の注入または吸引を行うための任意の適当な形状(たとえば、チューブ、中空プローブ、ノズル等)であってもよい。本文脈上、「管」という用語は単に、容器110に挿入可能な任意形状の小さな液体導管を指す。
【0024】
通常の動作においては、媒体を適当な媒体タンクまたはその他の媒体源(図示せず)から媒体注入管118に送り込むことによって、各容器110が所定体積の溶出媒体で充填される。周知の溶出試験手順に従って、容器110のうちの1つは空容器として利用してもよく、別の容器は標準容器として利用してもよい。選択した1または複数の媒体収容容器110には、手動または自動のいずれかによって単位製剤が投入される。各撹拌要素114(または、その他の撹拌もしくはUSP型装置)は、単位製剤が溶解する際、所定速度および所定継続時間にわたって、容器110内の試験溶液中で回転される。別のタイプの試験では、単位製剤を充填した円筒状バスケットまたはシリンダ(図示せず)が各撹拌要素114の代わりとなって、試験溶液中で回転または往復運動する。任意の特定容器110について、特定のUSP溶出法を実施している場合は、媒体の温度を所定温度(たとえば、およそ37±0.5℃等)に維持してもよい。撹拌要素114の混合速度についても、同じ目的で維持してもよい。媒体の温度は、各容器110を水槽コンテナ108の水槽に浸すことによって、あるいは、前述したように直接加熱することによって維持される。試験の実行中、設けられた様々な動作要素114,118,120および122は、容器110内で継続的に動作してもよい。あるいは、手動または自動化アセンブリ104または138によって、対応する容器110内へと降下させ、決められた時間に試料の測定を行う間だけ容器110内に保持し、それ以外のすべての時間は容器110の媒体から出しておいてもよい。
【0025】
一部の実施態様においては、間隔を空けて動作要素114,118,120および122を容器の媒体に浸すと、動作要素114,118,120および122が容器110内に存在することに起因する悪影響が低減されることがある。溶出試験の間は、一定分量の試料を容器110から媒体吸引管120を介して送り込み、たとえば分光光度計等の分析装置(図示せず)に導入して、溶出速度データを生成可能な被分析物濃度を測定してもよい。一部の手順においては、媒体注入管118または個別の媒体戻り導管を介して、容器110から取得された試料が容器110に戻される。あるいは、当業者には当然のことながら、光ファイバープローブを設けることによって、試料濃度を容器110中で直接測定してもよい。溶出試験の完了後は、媒体吸引管120または個別の媒体除去導管を介して、容器110中の媒体を除去してもよい。
【0026】
図2は、本発明に係る自己センタリング機能を備えた容器200の分解組立図である。容器200は、図1に示すとともに上述した溶出試験装置内において動作するように組み込まれていてもよい。また、容器200は一般に、容器本体204、下部リング208、および上部リング212を具備する。容器本体204は、円筒部216、および隣接する底部220を具備する。円筒部216は一般に、上端領域222と、この上端領域222から軸方向に間隔を空けて配置された下端領域224とを具備する。上端領域222は、容器200の上部開口232を囲む容器リム228で終端している。また、円筒部216の外周には、溝236が形成されている。この溝236は、容器リム228と最近接または隣接して設けられていてもよい。底部220は、下端領域224で円筒部216と隣接している。この底部220は、図示のように略半球状であってもよいし、または、その他の形状であってもよい。たとえば、底部220は、平面状やディンプル形状であってもよいし、または、容器200の内部に向かって上方に延びる頂点を有していてもよい。
【0027】
下部リング208は、環状側部240および環状フランジ部244を具備している。また、下部リング208の直径は、側部が容器200の外部の容器溝236に嵌入する大きさとなっている。側部240は、容器溝236に組み込むと、容器内面と同心状態となる。環状フランジ部244は、側部240から半径方向外方に延びており、側部240と略垂直である。下部リング208は、その各側端面間に規定された空隙248を有していてもよい。この空隙248により、下部リング208が柔軟性を有するため、下部リング208の容器溝236への組み込みが容易となる。また、空隙248は、下部リング208の操作により大きくすることができるため、下部リング208を容器リム228の周囲(または近傍)で動かして容器溝236に嵌め込むことができる。上部リング212は、下部リング208の上面252に嵌合する大きさであって、下部リング208を容器200に固定するように構成されている。このため、上部リング212は、任意の適当な手段によって、下部リング208と密に係合されてもよい。
【0028】
一実施態様において、上部リング212は、下部リング208の上面252に接着されている。別の実施態様では、たとえばネジ、リベット、熱かしめ、超音波溶接、溶剤接着等の手段によって密な係合を実現してもよい。また、上部リング212は、容器プレートに実装された容器200の位置を示す手段を具備していてもよい。図示の例では、上部リング212から半径方向外方に延びたタブまたは突起256がこの手段を提供している。
【0029】
代表的な実施態様において、容器本体204は、当業者には当然のことながら、溶出試験またはその他の分析技術に適した組成のガラス材料で作製される。一実施態様において、容器本体204には、旋盤の切断要素が容器本体に対する所望の方向に移動できるように、旋盤またはその他の適当な工具を取り付けてもよい。旋盤は、ガラスの研磨または切断により、容器内面と垂直な容器溝236を形成するために使用する。代表的な実施態様において、下部リング208および上部リング212は、高分子材料で構成され、任意の適当なプロセス(たとえば、成形、押し出し等)で作製される。
【0030】
図3および図4はそれぞれ、下部リング208および上部リング212を容器本体204に組み付けた後の容器200の斜視図および立面図である。図3に示すように、組立状態の下部リング208および上部リング212は、容器200のフランジ302を一体的に形成する。また、図4に示すように、容器200は、中心軸402に関して対称である。このように、円筒部210、下部リング208、および上部リング212は、中心軸402周りで同軸上に配設されている。円筒部210は、容器200の内部に面する容器内面412と、それに対する容器外面414とを有する。容器本体204は、容器内面412が中心軸402と高い精度で平行となるように作製される。下部リング208の側部240は、容器溝236(図2)と接する側部240の内面の反対側に側部外面418を有する。また、下部リング208のフランジ部244は、下方を向くフランジ下面422を有する。下部リング208は、側部外面418が容器内面412と平行で、フランジ下面422が容器内面412および側部外面418と垂直な平坦面となるように作製される。フランジ下面422の平坦度および垂直度の精度が高いと、溶出試験装置またはその他の器具の一部として提供可能な容器支持構造の水平面上に下部リング208を置いた際に、容器200とその中心軸402および容器内面412が厳密に垂直となる。すなわち、フランジ下面422は、その全体が水平面内に存するように、非常に高い精度または正確性の平坦度を有する。
【0031】
一例として、中心軸402または容器内面412と厳密に垂直な水平面を考えると、フランジ下面422は、±0.020°の精度でこの水平面と同一平面上にある。このことは一般に、フランジ下面422の任意の部分が水平面から逸脱(たとえば、上方または下方に突出、傾斜等)する最大量が0.020°であることを意味する。
図5は、図4中にAで示した、上部リング212および下部リング208を含む容器200の領域の詳細な立面図である。また、図5は、容器200と、容器200を実装する容器支持部材506(または、容器実装部材、容器配置部材)との間のインターフェースも示している。上述の通り、容器支持部材506は、同じ数の容器を実装可能な1または複数の容器実装箇所を具備する。各容器実装箇所において、容器支持部材506の内縁部または内壁508は、容器200が延びる開口を規定する。下部リング208のフランジ部244は、この開口の周辺で、容器支持部材506の上面510上に延びている。下部リング208のフランジ下面422は、上面510上に直接置かれているため、容器支持部材506が容器200およびその任意の収容液体の重量を支えている。容器200の組み込み位置では、下部リング208の側部外面418が開口の内縁部508と接触している。側部外面418は、容器内面412、容器の中心(垂直)軸、および開口の内縁部508と平行であるため、組み込んだ容器200の垂直状態および同心性が確保される。もともと「フランジが無い」容器200に上部リング212および下部リング208を組み付けることの別の利点としては、容器支持部材506が容器200のガラス部に接触しないことが挙げられる。その結果、容器200の組み込みまたは取り外しに際して、ガラス部のカケ、ワレ、または破損の危険性が大幅に低下する。
【0032】
図示の例では、上部リング212の内部522が容器リム228の全体または少なくとも一部にわたって延び、上部リング212の外部524が下部リング208の全体または少なくとも一部にわたって延びている。このため、上部リング212が接着またはその他の固定手段もしくは係合手段により下部リング208と密に係合している場合は、容器リム228が上部リング212の内部522および下部リング208の側部240に囲まれた状態で、上部リング212および下部リング208が容器本体204と密に組み付けられて、容器200が完成する。あるいは、内部522も容器リム228に接着してもよい。また、図示の例では、上部リング212がその外径部分またはその外径部分の近傍で、下方に延びて下部リング208を囲む環状部526をさらに具備する。
【0033】
図6は、容器200の上平面図であって、側部外面418および容器内面412の同心度を示している。この同心度は、中心軸402に対して、すべての周縁点(または角度位置)で一様である。すなわち、基準となる円周(たとえば、側部外面418または容器内面412等)に沿って、一方が0°〜360°の極角θとなるように動いても、同心度は保たれる。同心度が一様または正確であると、適切に寸法取りした開口を有する容器プレートに容器200を実装する際、容器200は、任意の極角で完全にセンタリングが行われる。言い換えれば、容器内面412および側部外面418の両者は、容器200が容器プレートの開口に組み込まれた任意の円周位置で、中心軸402に対して同心である。容器200も同様に、容器プレートの開口に対してセンタリングが行われる。言い換えると、容器200の中心軸402は、開口の中心軸と同軸または同一直線上となる。さらに、容器200内で動作する器具(たとえば、パドル型またはバスケット型の器具等)のシャフト等の細長構造614を容器200の中心軸402に沿って挿入した場合も、この細長構造614に対する容器内面412および側部外面418の両者の同心度は一様となる。
【0034】
上述の同心度の一様性または正確性を表す1つの方法として、容器200の内径と下部リング208の側部240の外径との直径の差異を考慮することが挙げられる。図6においては、容器内面412により規定される容器200の内径を符号632で示す。また、下部リング208の側部240の外径は、側部外面418によって規定される。そして、これら直径の差異を符号634で示す。一例として、直径の差異634は、任意の基準円周上(すなわち、一方が0°〜360°の極角θに沿って動く場合)で、±0.05インチ(50ミル)だけ変化または逸脱する(すなわち、公差を有する)。別の例として、直径の差異634は、±0.01インチ(10ミル)だけ変化する。さらに別の例として、直径の差異634は、±0.005インチ(5ミル)だけ変化する。
【0035】
図6は、タブ256またはその他の容器配置手段もしくは容器指標手段を提供することの有用性も示している。一例として、容器200は、タブ256の角度位置がゼロ度となるように容器プレートに組み込んでもよい。これは、容器プレートまたは溶出試験装置のその他の近接要素上の基準点に対して、ユーザーが視覚可能である。そして、洗浄やその他の目的で容器200を取り外す必要がある場合でも、取り外した後、取り外す前と厳密に同じ角度位置(たとえば、ゼロ度位置等)で容器200を容器プレートに再組み込み可能である。この機能により、組み込みはさらに正確となって、高精度なデータの取得および実験の再現が可能となる。
【0036】
本明細書に開示した自己センタリング容器200は、あらゆるタイプの容器プレートに組み込み可能であって、市販されている代表的な容器プレートの開口を変更する必要もない。また、この容器200は、既知のタイプの容器保持装置と互換性がある。当業者には当然のことながら、容器支持部材開口の動作可能な実装位置で容器200を保持するために容器保持装置を利用して、容器200を適正に組み込んだ後に開口から垂直方向に抜け出すことを防止するようにしてもよい。したがって、容器保持装置は、浮力効果により容器200が開口から「飛び出す」ことを防止できるため、図1に示すとともに上述した水槽と併用する場合に特に有用である。既知の一例として、容器保持装置は、リング状部材を具備していてもよい。リング状部材は、容器支持部材の開口から容器200を降下させた後、容器200のフランジ302上に載置される。このリング状部材は、容器支持部材に取り付けられたポストまたはピンと相互作用して、容器実装箇所の適当な垂直方向位置で容器200を固定するように構成されている。
【0037】
容器200は、図2〜図5に関連して上述したように組み立ててもよい。通常、容器本体204はガラス材料で形成されており、下部リング208および上部リング212は高分子材料で形成されている。そして、下部リング208は容器溝236に嵌入され、上部リング212は下部リング208に固定される。このため、得られるフランジ302は、容器本体204と密に係合しており、このようにして、容器200全体が上述の通りに組み立てられる。図1に図示した溶出試験装置の各容器実装箇所には、1または複数の容器200を組み込んでもよい。また、これら容器200を利用して、上述のような溶出試験装置の動作により溶出データを得るようにしてもよい。
【0038】
当然のことながら、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々態様または詳細を変更してもよい。さらに、上記説明は、ほんの一例に過ぎず、これらに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内面、容器外面、容器開口を囲むリムで終端する上端領域、前記上端領域において容器外面に形成された容器溝、および前記上端領域から軸方向に間隔を空けて配置された下端領域を備えるとともに、容器の中心軸周りで同軸上に配設された円筒部と、
前記下端領域に配設された底部と、
前記容器溝に配設され、前記容器内面と同心の側部外面を有する環状側部、並びに前記容器内面と垂直なフランジ上面およびフランジ下面を有する環状フランジ部とを備えた下部リングと、
前記リムの少なくとも一部を越えて延びる内部と、前記フランジ上面と密に係合した外部とを備えた上部リングと、
を備えた容器。
【請求項2】
前記下部リングが、空隙で分離された一対の対向端面で終端していることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記上部リングが、前記中心軸に対する前記容器の角度位置を示す手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記上部リングが、前記フランジ部から半径方向に延びる突起を備えることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記中心軸が水平面を通る垂直軸であり、前記フランジ下面が±0.020°の精度で前記水平面と完全に同一平面上にあることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記容器内面が前記円筒部の容器内径を規定し、前記側部外面が前記側部の側部外径を規定し、前記容器内径と前記側部外径との直径の差異が、前記中心軸に対して任意の周縁点で一様であることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項7】
前記容器内面が前記円筒部の容器内径を規定し、前記側部外面が前記側部の側部外径を規定し、前記容器内径と前記側部外径との直径の差異が、前記中心軸に対して任意の周縁点で±0.05インチ以内で変化することを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
上面および開口を囲む内縁部を備えた容器支持部材と、
前記開口を通って延びる容器とを備え、前記容器は、
容器内面、容器外面、容器開口を囲むリムで終端する上端領域、前記上端領域において前記容器外面に形成された容器溝、および前記上端領域から軸方向に間隔を空けて配置された下端領域を備えるとともに、前記容器の中心軸周りで同軸上に配設された円筒部と、
前記下端領域に配設された底部と、
前記容器溝に配設され、前記容器内面と同心で前記開口の前記内縁部と接する側部外面を有する環状側部と、前記容器内面と垂直なフランジ上面およびフランジ下面を有する環状フランジ部とを備えた下部リングと、
前記リムの少なくとも一部を越えて延びる内部と、前記フランジ上面と密に係合した外部とを備えた上部リングと、
を有し、
前記容器内面が前記容器支持部材の前記内縁部と平行であることを特徴とする溶出試験装置。
【請求項9】
前記下部リングが、空隙で分離された一対の対向端面で終端していることを特徴とする、請求項8に記載の溶出試験装置。
【請求項10】
前記上部リングが、前記中心軸に対する前記容器の角度位置を示す手段を備えたことを特徴とする、請求項8に記載の溶出試験装置。
【請求項11】
前記容器内面が前記円筒部の容器内径を規定し、前記側部外面が前記側部の側部外径を規定し、前記容器内径と前記側部外径との直径の差異が、前記中心軸に対して任意の周縁点で一様であることを特徴とする、請求項8に記載の溶出試験装置。
【請求項12】
前記容器内に延びる細長構造をさらに備え、前記側部外面および前記容器内面が前記細長構造と同心であることを特徴とする、請求項8に記載の溶出試験装置。
【請求項13】
前記容器内に延びる細長構造をさらに備え、前記容器内面が前記細長構造と平行であることを特徴とする、請求項8に記載の溶出試験装置。
【請求項14】
容器開口を囲むリムで終端する上端領域および下端領域を備え、前記容器の中心軸周りで同軸上に配設された円筒部と、前記下端領域に配設された底部とを備えた容器を組み立てる方法であって、
容器内面と垂直なフランジ下面を有するフランジ部を備えた下部リングの前記容器への実装において、側部外面が前記容器の前記容器内面と同心である前記下部リングの環状部が前記容器の容器外面に形成された容器溝に配設されるように実装する工程と、
上部リングの内部が前記リムの少なくとも一部を越えて延びるとともに、前記上部リングの外部が前記フランジ部のフランジ上面と密に係合するように前記上部リングを前記容器へ実装する工程とを含む方法。
【請求項15】
前記下部リングが、空隙で分離された一対の対向端面で終端しており、前記下部リングの実装が、前記リムを通って前記容器溝内へ、前記下部リングが容易に移動するように前記空隙を広げながら実装する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−112645(P2011−112645A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228416(P2010−228416)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.