説明

ゼラノールを製造するためのプロセス

本発明は、一般に、高圧及び高温水素化をなくし、ゼラノールに対する高選択性を改善された収率で提供する、ゼラノール製造プロセスを対象にする。一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、酸を用いて還元をクエンチし、次いで最初の溶媒を代替溶媒と交換することによって更に続く。一部の実施形態においては、還元は6M HClを用いてクエンチされ、最初の溶媒である2−プロパノールはメタノールと交換される。一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、式VII及びVIIIの化合物中の二重結合を還元剤を用いて溶媒中で式IX及びXの化合物に還元することによって続く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウシにおける体重増加を促進するタンパク質同化剤である、式Iのゼラノール(CAS名称:(3S,7R)−3,4,5,6,7,8,9,10,11,12−デカヒドロ−7,14,16−トリヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1−オン、CAS番号:26538−44−3)を製造する新規プロセスに関する。本プロセスは、既知のどのゼラノールプロセスよりも化学的に効率的であり、所望の活性なゼラノール化合物を式IIのその不活性ジアステレオマータレラノール(CAS名称:(3S,7S)−3,4,5,6,7,8,9,10,11,12−デカヒドロ−7,14,16−トリヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1−オン、CAS番号:42422−68−4)に対して高い収率で生成する。本プロセスは、さらに、高圧水素を要する既知のプロセスの危険要素をなくす。
【背景技術】
【0002】
ゼラノールは、式Iのタンパク質同化剤である。ゼラノールは、反すう動物及び他の動物における体重増加を促進する獣医薬に広く使用される。
【0003】
【化1】

ゼラノールは、ウシ及び他の家畜の成長を促進させて、消費される平均飼料量あたりの体重増加率と絶対的体重増加量の両方を最大にし、飼育効率を高めるのに広く使用されてきた。
【0004】
ゼラノールは、Ralgro(登録商標)(Intervet Schering−Plough Animal HealthCorporation)として知られる製剤で市販されてきた。
【0005】
最初のゼラノール製造プロセス(非特許文献1参照)は、非特異的であり、2種類の触媒を使用したゼアラレノンの二段階還元を用いて、大気圧と高圧の両方で水素化を実施して開発された。この経路は、商業的に効率的でなく、生成したジアステレオマー混合物を分離する試みはなされなかった。
【0006】
ゼラノールは、Raneyニッケル触媒を用いた単一容器、高圧、高温水素化によって従来製造されてきた(GB1152678参照)。これらの条件下で、ケトン基とアルケン基がどちらも還元され、ゼラノールとタレラノールの両方を生成する。得られた生成物は、精製のために複数回の再結晶を必要とし、好ましいゼラノールの回収率が低い。
【0007】
ゼラノール製造プロセスは、典型的には、式IIIのゼアラレノン(CAS名称:(3S,11E)−3,4,5,6,9,10−ヘキサヒドロ−14,16−ジヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1,7(8H)−ジオン、CAS番号:17924−92−4)から出発する。
【0008】
【化2】

ゼアラレノン二重結合の還元とそれに続くケトンの還元は、ジアステレオマーアルコール:式Iのゼラノールと式IIのタレラノールの等量混合物を生成する。
【0009】
【化3】

次いで、ゼラノールとタレラノールを結晶化、クロマトグラフィー又は別の手段によって分離すると、所望のゼラノールジアステレオマーが単離される。The Merck Index,14th Ed.,Merck&Co.,Inc,NJ,2006,pp1745、Urry et al,Tetrahedron Letters,1966,27,3109−3114及び特許文献1を参照されたい。
【0010】
特許文献2は、ゼラノールとタレラノールの混合物を生成する、Raneyニッケルを用いたゼアラレノンの高圧水素化を教示している。次いで、水及び水/IPA混合物中での複数回の結晶化が必要であり、低収率のゼラノールが得られる。このプロセスは収率的に非効率であり、高圧での水素の使用を必要とする。
【0011】
特許文献3は、ゼアラレノンの還元によって生成するゼラノールとタレラノールのジアステレオマーの分離方法を教示している。この方法は、不要なタレラノールの選択的結晶化、続いて所望のゼラノールの希釈及び結晶化、次いで2回目の結晶化を含む。収率は低く、プロセスは手間がかかる。
【0012】
特許文献4は、ゼアラレノンをゼラノールとタレラノールのジアステレオマーの約55:45混合物にRaneyニッケルを用いて還元する方法を教示している。タレラノールからのゼラノールの分離は、脂肪族ヒドロキシル基のエステル化、選択的結晶化、及び脱エステル化によって実施される。この多段階プロセスは、ジアステレオマー還元選択性をほとんど示さず、総ゼラノール収率が低い。
【0013】
特許文献5は、その70%が低融点ジアステレオマーであるジアステレオマー混合物へのゼアラレノンの選択的還元方法、及びこのジアステレオマーを精製する基準方法を教示している。低融点ジアステレオマーは、高融点異性体よりも低活性である。この方法は、高融点ジアステレオマーの製造には役立たない。
【0014】
特許文献6は、アルミニウムアルコキシドを含めて、種々の還元剤を用いた、ゼアラレノン又は式IVのゼアララノン(CAS名称:(3S)−3,4,5,6,9,10,11,12−オクタヒドロ−14,16−ジヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1,7(8H)−ジオン、CAS番号:5975−78−0)の選択的還元を教示している。
【0015】
【化4】

好ましい方法は、ゼアラレノン又はゼアララノンの2,4ジエーテルをアルミニウムトリ−t−ブトキシドで還元することである。収率は報告されていない。選択性は不明である。
【0016】
特許文献7は、50psiで白金触媒を用いて弱酸の存在下で水素化することによって、ゼアラレノンを優先的にゼラノールのより活性なジアステレオマーに選択的に還元する方法を教示している。約75:25の選択性が示されているが、その選択性を超える結果は報告されておらず、水素化は高圧を必要とした。
【0017】
特許文献8は、Raneyニッケルを用いてイソプロパノール中でゼアラレノンを還元し、続いて水素を導入し、二重結合を更に還元する方法を教示している。この特許は、選択性を高める、溶媒の低速蒸留の概念を考察しているが、最大の増加は、ゼラノールとタレラノールの選択性が65:35に過ぎず、未反応ゼアララノンが混入している。
【0018】
Snatzke等は、ゼアラレノンのジベンジル誘導体をキラルボラン錯体を用いてジアステレオ選択的に還元し、続いてジアステレオマーをクロマトグラフィーによって分離し、Raneyニッケルを用いて更に水素化する方法を報告した。出発材料は、余分な合成ステップでゼアラレノンから調製しなければならない。キラルボラン錯体は、多段階プロセスで調製される。この多段階プロセスは、より直接的なプロセスほど効率的でない。(PECS Int.Conf.Chem.Biotechnol.Biol.Act.Nat.Prod.[Proc]3rd(1987),Meeting Date 1985,4,294−298)。より詳細は、Helv.Chim.Acta,1986,69,734−748に示されており、更に別のキラルボランが記述されているが、プロセスは上記制約を受ける。
【0019】
Sharkawy及びAbul−Hajj(J.Org.Chem.1988,515−519)は、ゼアラレノンをゼラノールに収率20%で微生物還元するプロセスを記載している。
【0020】
特許文献9(公開特許出願)は、ゼラノールのジアステレオマーをアセトニトリルからの結晶化によって分離する方法を開示している。
【0021】
特許文献10は、水素及びニッケル−アルミニウム触媒を使用してゼアラレノンをゼラノールに還元する経済的プロセスを教示している。これは、ジアステレオマーの50:50混合物をもたらし、更なる結晶化によって分離しなければならない。
【0022】
Sunjic et al.,Enzyme Microb.Technol.,1991,13,344−348は、ゼアラレノン及びゼアララノンをゼラノールとタレラノールの混合物にある程度の選択性で、ただし低収率で還元することを報告している。このプロセスは、収率が低く、還元後にジアステレオマーを分離する必要があるので、工業規模では実際的でない。
【0023】
特許文献11は、ゼアラレノンをRaneyニッケルを用いて接触還元し、続いてゼラノールとタレラノールのジアステレオマーの混合物を2回再結晶させるプロセスを教示している。各再結晶の母液は、ときには追加の化学ステップを用いて、再利用されて、材料から所望のゼラノールを全体的にハイスループットで生成する。
【0024】
Sunjic(Tetrahedron,1992,48,6511−6520)は、ゼラノールジアステレオマー混合物のアシルエステルをリパーゼを使用した酵素動力学的分離によって分離する方法を報告している。
【0025】
上記従来技術に鑑みて、本発明は、収率をほぼ3倍にし、タレラノールに対して85:15のゼラノール選択性を示す、新規ゼラノール製造プロセスを教示する。本発明は、安全で経済的で効率的なゼラノール商用製造プロセスを教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第3,239,345号明細書
【特許文献2】英国特許第1,152,677号明細書
【特許文献3】米国特許第3,574,235号明細書
【特許文献4】米国特許第3,687,982号明細書
【特許文献5】米国特許第3,704,248号明細書
【特許文献6】米国特許第3,704,249号明細書
【特許文献7】米国特許第3,808,233号明細書
【特許文献8】米国特許第4,148,808号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第332047号明細書
【特許文献10】仏国特許第2,668,487号明細書
【特許文献11】米国特許第5,136,056号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Urry et al,Tetrahedron Letters,1966,27,3109−3114
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の一目的は、従来技術プロセスの制約をなくし、式Vの化合物の選択性及び収率を改善する、式Vの化合物を製造するプロセスを得ることである。
【0029】
【化5】

式中、R及びRは独立に、水素、C1〜6アルキル、C3〜8シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6アラルキル、C2〜6アラルケニル、C3〜6複素環式、ベンジル、フェニル若しくはフェニルアルキル(ここで前記フェニル環は、1若しくは2個のハロゲン、1若しくは2個のニトロ基、C1〜6アルキル、又はC1〜6アルコキシで置換されていてもよい。);C1〜6アルキルカルボニル、C3〜8シクロアルキルカルボニル、C2〜6アルケニルカルボニル、C2〜6アルケニルカルボニル、C2〜6アルキニルカルボニル、C1〜6アルコキシカルボニル、C3〜6複素環式カルボニル、ベンジルカルボニル、フェニルカルボニル、フェニルアルキルカルボニル(ここで前記フェニル環は、1若しくは2個のハロゲン、1若しくは2個のニトロ基、C1〜6アルキル、又はC1〜6アルコキシで置換されていてもよい。);C1〜6アルコキシカルボニル、C3〜8シクロアルコキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル若しくはフェニルアルコキシカルボニル(ここで前記フェニル環は、1若しくは2個のハロゲン、1若しくは2個のニトロ基、C1〜6アルキル、又はC1〜6アルコキシで置換されていてもよい。);又はその酸付加塩である。
【0030】
一部の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式Vの化合物は式Iのゼラノールである。
【0031】
本発明のプロセスは、溶媒中で式Al(OR(式中、Rは、C1〜6アルキル、C3〜8シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6アラルキル、C2〜6アラルケニル、C3〜6複素環式、ベンジル又はフェニルである。)のMeerwein Ponndorf−Verley還元剤の存在下で、式VIの化合物のケトン基を最初に還元することを含む。
【0032】
【化6】

式中、R及びRは上で定義したとおりである。
【0033】
一部の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式VIの化合物は式IIIのゼアラレノンである。
【0034】
一部の実施形態においては、溶媒は2−プロパノールであり、Rはイソプロピルであり、Meerwein Ponndorf−Verley還元剤はアルミニウムイソプロポキシド(CAS番号555−31−7)である。
【0035】
式VIの化合物は、式VIIとVIIIの化合物の混合物に還元される。
【0036】
【化7】

式中、R及びRは、上で定義したとおりである。
【0037】
一部の実施形態においては、式VIIの化合物と式VIIIの化合物の比は少なくとも60:40である。一部の実施形態においては、比は少なくとも75:25である。一部の特定の実施形態においては、比は少なくとも85:15である。
【0038】
一部の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式VIIの化合物はα−ゼアラレノール(CAS名称:(3S,7R,11E)−3,4,5,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−7,14,16−トリヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1−オン、CAS番号:36455−72−8)であり、式VIIIの化合物はβ−ゼアラレノール(CAS名称:(3S,7S,11E)−3,4,5,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−7,14,16−トリヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1−オン、CAS番号:71030−11−0)である。
【0039】
【化8】

一部の実施形態においては、R及びRが各々水素ではない式VII及びVIIIの化合物は、当業者に既知の方法によってα−ゼアラレノール及びβ−ゼアラレノール(すなわち、R及びRは各々水素である。)に転化される。かかる方法は、Smith,M.B.;March,J.March’s Advanced Organic Chemistry,6th Ed.,Wiley,NY,2007,pp580−582に記載されており、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0040】
一部の実施形態においては、α−ゼアラレノールとβ−ゼアラレノールの比は少なくとも60:40である。一部の実施形態においては、比は少なくとも75:25である。一部の特定の実施形態においては、比は少なくとも85:15である。
【0041】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、酸を用いて還元をクエンチし、次いで最初の溶媒を代替溶媒と交換することによって更に続く。
【0042】
一部の実施形態においては、還元は6M HClを用いてクエンチされ、最初の溶媒である2−プロパノールはメタノールと交換される。
【0043】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、式VII及びVIIIの化合物中の二重結合を還元剤を用いて溶媒中で式IX及びXの化合物に還元することによって続く。
【0044】
【化9】

式中、R及びRは、上で定義したとおりである。
【0045】
一部の実施形態においては、還元剤は触媒及び水素である。
【0046】
一部の実施形態においては、触媒はパラジウム又はニッケルであり、溶媒はアルコールである。一部の実施形態においては、触媒はパラジウムであり、溶媒はメタノールである。
【0047】
一部の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式IXの化合物は式Iのゼラノールであり、式Xの化合物は式IIのタレラノールである。
【0048】
一部の実施形態においては、式IX及びXの化合物は、当業者に既知の前述の方法によってゼラノール及びタレラノールに転化される。
【0049】
一部の実施形態においては、式IXの化合物と式Xの化合物の比は少なくとも60:40である。一部の実施形態においては、比は少なくとも75:25である。特定の実施形態においては、比は少なくとも85:15である。
【0050】
一部の実施形態においては、ゼラノールとタレラノールの比は少なくとも60:40である。一部の実施形態においては、比は少なくとも75:25である。特定の実施形態においては、比は少なくとも85:15である。
【0051】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、式IX及びXの化合物を沈殿させることによって続く。一部の実施形態においては、沈殿は水添加によって実施される。
【0052】
一部の実施形態においては、少なくとも60:40の比の式IXの化合物と式Xの化合物は、水をメタノール溶媒に添加することによって沈殿する。一部の実施形態においては、少なくとも75:25の比の式IXの化合物と式Xの化合物は、水をメタノール溶媒に添加することによって沈殿する。一部の実施形態においては、少なくとも85:15の比の式IXの化合物と式Xの化合物は、水をメタノール溶媒に添加することによって沈殿する。
【0053】
一部の実施形態においては、少なくとも60:40の比のゼラノールとタレラノールは、水をメタノール溶媒に添加することによって沈殿する。
【0054】
一部の実施形態においては、少なくとも75:25の比のゼラノールとタレラノールは、水をメタノール溶媒に添加することによって沈殿する。
【0055】
一部の実施形態においては、少なくとも85:15の比のゼラノールとタレラノールは、水をメタノール溶媒に添加することによって沈殿する。
【0056】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、式IX及びXの沈殿化合物を炭化水素溶媒で洗浄して不要な不純物を除去することによって続く。炭化水素溶媒の非限定的リストは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、その幾何異性体及びその混合物を含む。一部の実施形態においては、炭化水素溶媒はヘプタンである。
【0057】
一部の実施形態においては、沈殿した少なくとも60:40の比の式IXの化合物と式Xの化合物をヘプタンで洗浄して、不要な不純物を除去する。
【0058】
一部の実施形態においては、少なくとも75:25の比の式IXの化合物と式Xの化合物をヘプタンで洗浄して、不要な不純物を除去する。一部の実施形態においては、少なくとも85:15の比の式IXの化合物と式Xの化合物をヘプタンで洗浄して、不要な不純物を除去する。
【0059】
一部の実施形態においては、沈殿した少なくとも60:40の比のゼラノールとタレラノールをヘプタンで洗浄して、不要な不純物を除去する。一部の実施形態においては、少なくとも75:25の比のゼラノールとタレラノールをヘプタンで洗浄して、不要な不純物を除去する。一部の実施形態においては、少なくとも85:15の比のゼラノールとタレラノールをヘプタンで洗浄して、不要な不純物を除去する。
【0060】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、炭化水素で洗浄された式IXとXの化合物の混合物中の式Xの化合物の量を削減して、式IXの純粋な化合物を製造することによって続く。
【0061】
一部の実施形態においては、式IXの純粋な化合物は、炭化水素で洗浄された式IXとXの化合物の混合物を溶媒又は溶媒混合物から結晶化させることによって得られる。一部の実施形態においては、結晶化は、メタノール及び水溶媒系中である。
【0062】
一部の実施形態においては、少なくとも60:40の比の式IXの化合物と式Xの化合物の精製は、メタノール及び水溶媒系からの結晶化によって達成される。一部の実施形態においては、少なくとも75:25比の式IXの化合物と式Xの化合物の精製は、メタノール及び水溶媒系からの結晶化によって達成される。一部の実施形態においては、少なくとも85:15比の式IXの化合物と式Xの化合物の精製は、メタノール及び水溶媒系からの結晶化によって達成される。
【0063】
一部の実施形態においては、少なくとも60:40の比のゼラノールとタレラノールの精製は、メタノール及び水溶媒系からの結晶化によって達成される。一部の実施形態においては、少なくとも75:25の比のゼラノールとタレラノールの精製は、メタノール及び水溶媒系からの結晶化によって達成される。一部の実施形態においては、少なくとも85:15の比のゼラノールとタレラノールの精製は、メタノール及び水溶媒系からの結晶化によって達成される。
【0064】
一部の実施形態においては、式IXの化合物の純度は少なくとも約98%である。一部の実施形態においては、式IXの化合物の純度は少なくとも約99%である。一部の実施形態においては、式IXの化合物の純度は少なくとも約99.5%である。
【0065】
一部の実施形態においては、式IXの化合物の収率は少なくとも約40%である。一部の実施形態においては、式IXの化合物の収率は少なくとも約43%である。一部の実施形態においては、式IXの化合物の収率は少なくとも約45%である。
【0066】
一部の実施形態においては、式IXの化合物は、当業者に既知の前述の方法によってゼラノールに転化される。
【0067】
一部の実施形態においては、ゼラノールの純度は少なくとも約98%である。一部の実施形態においては、ゼラノールの純度は少なくとも約99%である。一部の実施形態においては、ゼラノールの純度は少なくとも約99.5%である。
【0068】
一部の実施形態においては、ゼラノールの収率は少なくとも約40%である。一部の実施形態においては、ゼラノールの収率は少なくとも約43%である。一部の実施形態においては、ゼラノールの収率は少なくとも約45%である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、下記用語は、別段の記載がない限り、すぐ下に示したように使用され、定義されるものとする。他の用語の定義は、本明細書全体を通して生じ得る。使用されるすべての用語は、用語の複数、能動時制及び過去時制形態を含むことが意図される。
【0070】
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、若しくはsec−ブチルなどの飽和直鎖又は分枝アルキルを意味する。あるいは、アルキル中の炭素数を指定することができる。例えば、「C1〜6アルキル」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む上記「アルキル」を意味する。
【0071】
「C3〜8シクロアルキル」という用語は、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を含む飽和環状炭化水素基(すなわち、環化アルキル基)を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0072】
「C2〜6アルケニル」という用語は、少なくとも1個の二重炭素−炭素(−C=C−)結合と2、3、4、5又は6個の炭素原子とを有する、不飽和分枝又は非分枝炭化水素基を意味する。アルケニル基の例としては、エテニル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、3−ペンテニル、及び2−ヘキセニルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0073】
「C2〜6アルキニル」という用語は、少なくとも1個の三重炭素−炭素(−C≡C−)結合と2、3、4、5又は6個の炭素原子とを有する、不飽和分枝又は非分枝炭化水素基を意味する。アルキニル基の例としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、2−ペンテン−4−ニルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0074】
「C1〜6アラルキル」という用語は、水素原子の除去によって芳香族炭化水素から誘導される任意の基であるアリール基で置換された、本明細書に定義されたC1〜6アルキルを意味する。
【0075】
「C2〜6アラルケニル」という用語は、水素原子の除去によって芳香族炭化水素から誘導される任意の基であるアリール基で置換された、本明細書に定義されたC2〜6アルケニルを意味する。
【0076】
「C3〜6複素環式基」という用語は、環化炭素原子の1個以上が、酸素、窒素、硫黄原子などのヘテロ原子で置換された環式基を意味し、単環又は(例えば、2個以上の縮合環を有する)多環式環構造及びスピロ環構造を含む。環構造は3、4、5又は6個の炭素原子を含むことができ、芳香族でも非芳香族でもよい。
【0077】
「ベンジル」とは、メチルベンゼンの一価の基CCHを意味する。ここで、ベンゼンは芳香族炭化水素Cである。
【0078】
「置換ベンジル」とは、形式上トルエン(すなわち、メチルベンゼン)から誘導されるCからCアルキル又は「ハロ」で置換されたベンジルを意味する。ここで、ベンジルは一価の基CCHである。
【0079】
「フェニル」とは、芳香族炭化水素Cであるベンゼンの一価の基Cを意味する。
【0080】
「フェニルアルキル」という用語は、本明細書に定義されたフェニルで置換された本明細書に定義されたアルキルを意味する。
【0081】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
【0082】
「ニトロ」という用語は−NO基を意味する。
【0083】
「C1〜6アルコキシ」という用語は、アルキル−O−基を意味する。ここで、「アルキル」という用語は本明細書に定義されている。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n−プロポキシ及びイソプロポキシ)、t−ブトキシなどが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0084】
「C1〜6アルキルカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたC1〜6アルキルを意味する。
【0085】
「カルボニル」という用語は、二重結合によって酸素に結合した炭素(C=O)を意味する。
【0086】
「C3〜8シクロアルキルカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたC3〜8シクロアルキルを意味する。
【0087】
「C2〜6アルケニルカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたC2〜6アルケニルを意味する。
【0088】
「C2〜6アルキニルカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたC2〜6アルキニルを意味する。
【0089】
「C1〜6アルコキシカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたC1〜6アルコキシを意味する。
【0090】
「C3〜6複素環式カルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたC3〜6複素環式基を意味する。
【0091】
「ベンジルカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたベンジルを意味する。
【0092】
「フェニルカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたフェニルを意味する。
【0093】
「フェニルアルキルカルボニル」という用語は、カルボニルを介して結合した本明細書に定義されたフェニルアルキルを意味する。
【0094】
「C3〜8シクロアルコキシカルボニル」という用語は、オキシカルボニルの酸素を介して結合した本明細書に定義されたC3〜8シクロアルキルを意味する。
【0095】
「オキシカルボニル」という用語は、本明細書に定義されたカルボニルに結合した酸素原子を意味する。
【0096】
「ベンジルオキシカルボニル」という用語は、オキシカルボニルの酸素を介して結合した本明細書に定義されたベンジル基を意味する。
【0097】
「フェニルオキシカルボニル」という用語は、オキシカルボニルの酸素を介して結合した本明細書に定義されたフェニル基を意味する。
【0098】
「フェニルアルコキシカルボニル」という用語は、オキシカルボニルの酸素を介して結合した本明細書に定義されたフェニルアルキル基を意味する。
【0099】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、所与の化学式又は名称は、すべての薬学的に許容されるその塩、及び例えば水和物などのその溶媒和化合物を包含するものとする。
【0100】
本明細書に記載の反応は、反応段階を終了まで進行させる間、反応物を保持することができる当業者に既知の容器である適切な反応器中で実施することができる。容器の大きさ及びタイプは、例えば、選択したバッチサイズ及び具体的反応物に応じて決まる。
【0101】
一部の実施形態においては、本発明は、式Vの化合物を調製するプロセスを提供する。
【0102】
【化10】

式中、R及びRは独立に、水素、C1〜6アルキル、C3〜8シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6アラルキル、C2〜6アラルケニル、C3〜6複素環式、ベンジル、置換ベンジル、フェニル若しくはフェニルアルキル(ここで前記フェニル環は、1若しくは2個のハロゲン、1若しくは2個のニトロ基、C1〜6アルキル、又はC1〜6アルコキシで置換されていてもよい。);C1〜6アルキルカルボニル、C3〜8シクロアルキルカルボニル、C2〜6アルケニルカルボニル、C2〜6アルキニルカルボニル、C1〜6アルコキシカルボニル、C3〜6複素環式カルボニル、ベンジルカルボニル、フェニルカルボニル、フェニルアルキルカルボニル(ここで前記フェニル環は、1若しくは2個のハロゲン、1若しくは2個のニトロ基、C1〜6アルキル、又はC1〜6アルコキシで置換されていてもよい。);C3〜8シクロアルコキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル若しくはフェニルアルコキシカルボニル(ここで前記フェニル環は、1若しくは2個のハロゲン、1若しくは2個のニトロ基、C1〜6アルキル、又はC1〜6アルコキシで置換されていてもよい。);あるいはその酸付加塩である。
【0103】
一部の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式Vの化合物はゼラノールである。ゼラノールは、反すう動物及び他の動物における体重増加を促進する獣医薬中に使用される化合物である。
【0104】
【化11】

一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、アセトン、アセトニトリル、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ホルムアミド、ヘプタン、ヘキサン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メタノール、2−メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N−メチルピロリドン、プロパノール、2−プロパノール、テトラリン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、グリセリン、水、その混合物など、ただしそれだけに限定されない溶媒中で、式Al(OR(式中、Rは、C1〜6アルキル、C3〜8シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C1〜6アラルキル、C2〜6アラルケニル、C3〜6複素環式、ベンジル又はフェニルである。)のMeerwein Ponndorf−Verley還元剤の存在下で、式VIの化合物のケトン基を最初に還元することを含む:
【0105】
【化12】

(式中、R及びRは、上で定義したとおりである)。
【0106】
本発明の特定の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式VIの化合物はゼアラレノンである。
【0107】
【化13】

本発明の特定の実施形態においては、溶媒は2−プロパノールである。
【0108】
本発明の特定の実施形態においては、Rはイソプロピルであり、還元剤はアルミニウムイソプロポキシド(CAS番号555−31−7)である。
【0109】
溶媒と式VIの化合物の重量:重量比は、約5:1から約15:1の範囲とすることができる。本発明の特定の実施形態においては、イソプロパノールとゼアラレノンの重量:重量比は、約8:1から約12:1である。一部の実施形態においては、比は約10から11:1である。
【0110】
Meerwein Ponndorf−Verley還元剤と式VIの化合物の重量:重量比は、約1:1から約5:1の範囲とすることができる。本発明の特定の実施形態においては、Meerwein Ponndorf−Verley還元剤はアルミニウムイソプロポキシドであり、アルミニウムイソプロポキシドとゼアラレノンの比は約3:1から4:1である。
【0111】
還元温度は、約60℃から溶媒の沸点までの範囲とすることができる。圧力は、ほぼ大気圧から約30psiの範囲とすることができる。特定の実施形態においては、イソプロパノール溶媒の温度は約75℃であり、反応圧力は約5から10psiの範囲である。
【0112】
式VIの化合物は、式VIIとVIIIの化合物の混合物に還元される。
【0113】
【化14】

式中、R及びRは、上で定義したとおりである。
【0114】
式VIの化合物のMeerwein Ponndorf−Verley還元は、式VIIの生成化合物と式VIIIの化合物の比が少なくとも約60:40、より好ましくは75:25、最も好ましくは85:15になるまで続く。
【0115】
一部の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式VIIの化合物はα−ゼアラレノール(CAS名称:(3S,7R,11E)−3,4,5,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−7,14,16−トリヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1−オン、CAS番号:36455−72−8)であり、式VIIIの化合物はβ−ゼアラレノール(CAS名称:(3S,7S,11E)−3,4,5,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−7,14,16−トリヒドロキシ−3−メチル−1H−2−ベンゾオキサシクロテトラデシン−1−オン、CAS番号:71030−11−0)である。
【0116】
【化15】

一部の実施形態においては、ゼアラレノンのMeerwein Ponndorf−Verley還元は、α−ゼアラレノールとβ−ゼアラレノールの比が少なくとも60:40、より好ましくは75:25、最も好ましくは85:15になるまで続ける。
【0117】
一部の実施形態においては、R及びRが各々水素ではない式VII及びVIIIの化合物は、当業者に既知の方法によってα−ゼアラレノール及びβ−ゼアラレノール(すなわち、R及びRは各々水素である。)に転化される。かかる方法は、Smith,M.B.;March,J.March’s Advanced Organic Chemistry,6th Ed.,Wiley,NY,2007,pp580−582に記載されており、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0118】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、溶媒体積を蒸留によって減少させ、周囲温度に冷却し、水及び酸を添加して反応をクエンチする工程が更に続く。
【0119】
一部の実施形態においては、イソプロパノールは、蒸留によって最小体積に低減され、次いで周囲温度に冷却される。
【0120】
一部の実施形態においては、イソプロパノールは、約700から900Lに低減され、周囲温度に冷却される。
【0121】
一部の実施形態においては、次いで、式IIIの化合物に対して約4重量体積の水が添加される。
【0122】
一部の実施形態においては、添加される酸は、無機酸、有機酸及び/又はその混合物とすることができる。適切な無機酸の非限定的リストは、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など、及びその混合物を含む。同様に、適切な有機酸は、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸など、及びその混合物を含む。本発明の好ましい態様においては、酸は塩酸である。
【0123】
一部の実施形態においては、式IIIの化合物に対して約5.5重量体積の6M HClを添加し、温度が確実に約40℃未満のままであるようにする。
【0124】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、溶媒を添加して、水相が分離することができるように有機及び水相を誘導することによって続く。
【0125】
一部の実施形態においては、溶媒は酢酸エチルである。
【0126】
一部の実施形態においては、式IIIの化合物に対して約8から9重量体積の酢酸エチルを添加し、下層の水層を除去する。次いで、酢酸エチル層を追加の水で洗浄する。
【0127】
一部の実施形態においては、酢酸エチル層を水で3回洗浄する
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、酢酸エチル溶媒をメタノールと交換することによって更に続く。一部の実施形態においては、交換は、酢酸エチルを蒸留し、それをメタノールで置換することによって実施される。
【0128】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、式VII及びVIIIの化合物中の二重結合をパラジウム又はニッケル触媒及び水素を用いて式IX及びXの化合物に還元することによって続く。
【0129】
【化16】

一部の実施形態においては、触媒はパラジウムである。
【0130】
一部の実施形態においては、R及びRは各々水素であり、式IXの化合物はゼラノールであり、式Xの化合物はタレラノールである。一部の実施形態においては、ゼラノールとタレラノールの比は少なくとも60:40、より好ましくは少なくとも75:25、最も好ましくは少なくとも85:15である。
【0131】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、水を添加してゼラノールとタレラノールの混合物を沈殿させることによって続く。
【0132】
一部の実施形態においては、本発明のプロセスは、沈殿したゼラノールとタレラノールの混合物を炭化水素溶媒で洗浄して不要な不純物を除去することによって続く。炭化水素溶媒の非限定的リストは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、その幾何異性体及びその混合物を含む。一部の実施形態においては、炭化水素溶媒はヘプタンである。
【0133】
一部の実施形態においては、所望のゼラノールの精製、及び不要なタレラノールの除去は、アセトン、アセトニトリル、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ホルムアミド、ヘプタン、ヘキサン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メタノール、2−メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N−メチルピロリドン、プロパノール、2−プロパノール、テトラリン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、グリセリン、水、及びその混合物など、ただしそれだけに限定されない溶媒からの結晶化によって実施される。一部の実施形態においては、ゼラノール精製は、メタノールと水の混合物中で実施される。一部の実施形態においては、ゼラノールの純度は、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%である。一部の実施形態においては、ゼラノールの収率は、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも45%、最も好ましくは少なくとも50%である。
【0134】
一実施形態においては、本発明のプロセスはスキーム1で示される。
【0135】
【化17】

【実施例】
【0136】
(実施例1)
アルミニウムイソプロポキシド(300g、1.4688モル)をゼアラレノン(100g、0.3141モル)の2−プロパノール1000g(1270mL)溶液に添加する。混合物を75℃で24時間撹拌し、次いで混合物を体積約500mLに蒸留し、周囲室温に冷却し、水400mL及び6N HCl550mLを添加して、反応温度が確実に40℃未満に維持されるようにする。反応物を周囲室温に冷却し、酢酸エチル886g(990mL)を添加する。水層を分離し、酢酸エチル層を水2×325mL及びブライン1×325mLで抽出する。酢酸エチルを蒸留除去し、それをメタノール380g(480mL)で置換することによって、酢酸エチルをメタノールで置換する。メタノール混合物をろ過して、不溶物を除去し、炭素担持10%パラジウム(10g)、続いて水素(圧力1気圧)を周囲室温で添加する。反応物を8時間撹拌し、次いでCelite(20g)を添加し、反応物をさらに1時間撹拌する。反応混合物をろ過して不溶物を除去し、水(725mL)を添加する。混合物を周囲室温で4時間撹拌すると、その間に固体が沈殿する。固体は、ろ過によって単離され、ヘプタン(1000mL)で洗浄される。固体をメタノール(890mL)に溶解し、水(470mL)を周囲室温で添加すると、固体が溶液から結晶化し始める。混合物をさらに4時間撹拌し、固体をろ過によって単離し、含水量0.5%未満に減圧乾燥させて、純粋なゼラノール(45.6g、45%)を得る。
【0137】
(特許請求の範囲を含めた)本特許において「含む(comprise)」、「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。
【0138】
上記好ましい実施形態の詳細な説明は、他の当業者が、本発明をその多数の形態で改作及び適用することができるように、本発明、その原理及びその実用化を他の当業者に知らせることのみを意図するものであり、それらが、特定の使用の要件に最適である場合もある。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々改変することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼアラレノールの製造であって、
ゼアラレノンをイソプロパノールに溶解させる工程、
ゼアラレノンのイソプロパノール溶液を形成する工程、
ゼアラレノンの該イソプロパノール溶液とアルミニウムイソプロポキシドとを合わせて、反応混合物を形成する工程、及び
該反応混合物を加熱してゼアラレノンをゼアラレノールに還元する工程
を含む、方法。
【請求項2】
製造される前記ゼアラレノールが少なくとも60%α−ゼアラレノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
製造される前記ゼアラレノールが少なくとも75%α−ゼアラレノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
製造される前記ゼアラレノールが少なくとも85%α−ゼアラレノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼアラレノールが還元される、請求項1に記載の方法であって、
該ゼアラレノールを前記反応混合物から酢酸エチルを用いて抽出する工程、及び
抽出された該ゼアラレノールをメタノール中でパラジウム触媒の存在下で低圧水素と反応させて、ゼラノールを形成する工程
を含む、方法。
【請求項6】
ゼラノールの全収率が、最初に供給される前記ゼアラレノンに基づいて少なくとも40%である、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2012−523382(P2012−523382A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503875(P2012−503875)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064486
【国際公開番号】WO2010/115478
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(510000976)インターベット インターナショナル ベー. フェー. (6)
【Fターム(参考)】