説明

ソフトタッチ表面を有する成型品を製造するためのポリアミド成形化合物及びその成型品

【課題】ソフトタッチ表面を有する成型品を製造するためのポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アミン末端を有する非晶質ポリアミドと、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーと、無水マレイン酸グラフト化スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーとのポリマーブレンドに強化剤と添加剤を含むポリアミド樹脂組成物。また、さらに、前記成形化合物から製造された成型品及び該成形化合物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトタッチ表面を有する成型品を製造するためのポリアミド成形化合物であって、アミン末端を有する非晶質ポリアミドと、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーと、無水マレイン酸グラフト化スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーと、のブレンドを含むポリアミド成形化合物に関する。本発明は、さらに、前記成形化合物から製造された成型品及び該成形化合物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトタッチと言われる軟質材料表面を有する成型品は、当業界で知られている。熱可塑性物質とブロックコポリマーとからなるソフトタッチ層ブロックコポリマー組成物が、欧州特許第0771846B1号(特許文献1)に開示されている。ブロックコポリマーとして、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS)と無水マレイン酸グラフト化SEBS(SEBS−MAH)との混合物が提案されている。熱可塑性物質としては、特に、ポリアミド6及びポリアミド66が記述されている。前記特許文献1に記載の組成物は、いわゆる多層成型品を製造するために用いられている。特許文献1に記載の多層成型品では、前記ブロックコポリマー組成物を、硬質剛性な熱可塑性基体上にソフトタッチ層として付着させている。
【0003】
欧州特許第1474459B1号(特許文献2)には、ソフトタッチ表面を有するように作られた別の成型品が記載されている。該特許に記載の成型品は、特異的に調整し制御して配分した水和型ブロックコポリマーから構成されている。特許文献2によれば、このようなブロックコポリマー組成物は、例えばポリアミドからなる硬質の基体に対する接着性に特に優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
つまり、前記2つの公報には、いわゆるソフトタッチ表面を生じるブロックコポリマー組成物が記載されているが、これらポリマー組成物だけでは、ソフトタッチ表面に加えて、優れた物理的性質(特に、引張弾性率)を有する成型品を製造するのには不向きである。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ソフトタッチ表面を有する成型品の製造に役立つ、新規ポリアミド成形化合物を示唆することである。これによれば、成型品は、高い引張弾性率に加えて、優れた破断伸びも有するように作られる。また、本発明の目的は、こうして得られる成型品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、ポリアミド成形化合物に関する請求項1の特徴部分と、成型品に関する請求項12の特徴部分とによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明では、ソフトタッチ表面を有する成型品を製造するための成形化合物は、ポリアミドとしてのアミン末端を有する非晶質ポリアミドと、可塑剤としての少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーと、を含むことを特徴とする。前記可塑剤は、少なくとも1つのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS)と、少なくとも1つの無水マレイン酸(MAH)グラフト化SEBSと、から構成される。本発明の成形化合物は更に強化材及び添加剤も含む。
【0008】
したがって、本発明の必須要素は、アミン末端を有する非晶質ポリアミドを用いること、及びポリアミドと可塑剤との重量比を1.25:0.75〜0.75:1.25までの特別に定めた範囲内に保つことである。
【0009】
これらの条件を満たすならば、つまり、アミン末端を有する非晶質ポリアミドと前記特定の可塑剤混合物とを使用するのであれば、追加の組成成分、すなわち強化剤と添加剤により、感触や光学特性に関して優れたソフトタッチ表面を有するだけでなく、同時に引張弾性率や破断伸びに関して並はずれて良好な結果をも示す、成型品が得られる。
【0010】
本発明のポリアミド成形化合物では、アミン末端を有する非晶質ポリアミドとして、PA 6I/6T、PA 6I/10T、PA MACM14、PA MACM18及びこれらの混合物又はこれらのコポリアミドを用いることが特に好ましいと分かった。ここで、アミン末端を有するとは、非晶質ポリアミドが過剰のアミノ末端基を有していることを意味する。
【0011】
アミン末端を有する非晶質ポリアミドの相対粘度は、0.5重量%m−クレゾール溶液中で20℃において測定した場合、1.35〜1.95、好ましくは1.37〜1.80、特に好ましくは1.37〜1.70であり、1.40〜1.55が更に好ましい。
【0012】
アミン末端を有する非晶質ポリアミドのアミノ末端基含有量は、少なくとも150meq/kg、特に好ましくは160〜300meq/kgであり、180〜260meq/kgが更に好ましい。
【0013】
前記ポリアミドPA 6I/6T中のイソフタル酸の割合は、双方のジカルボン酸の合計を100モル%として、90〜57モル%、好ましくは85〜60モル%、特に好ましくは75〜60モル%であり、72〜63モル%が更に好ましい。
【0014】
前記ポリアミドPA 6I/10T中のイソフタル酸の割合は、双方のジカルボン酸の合計を100モル%として、少なくとも50モル%、好ましくは55〜85モル%、特に好ましくは60〜80モル%である。
【0015】
本発明のポリアミド成形化合物の別の実施態様では、非晶質ポリアミドを、少なくとも1つの部分結晶性ポリアミドとの混合物として使用する。該少なくとも1つの部分結晶性ポリアミドは、PA 6、PA 66、PA 69、PA 610、PA 612、PA 1010及びPA 66/6からなる群より選択される。非晶質ポリアミドと部分結晶性ポリアミドとの混合物中の部分結晶性ポリアミドの割合は、30重量%以下、好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは10〜15重量%である。
【0016】
部分結晶性ポリアミドの相対粘度は、0.5重量%m−クレゾール溶液中で20℃において測定した場合、1.4〜2.5、好ましくは1.45〜2.2、特に好ましくは1.5〜1.9であり、1.5〜1.8が更に好ましい。
【0017】
好ましくは、部分結晶性ポリアミドのアミノ末端基含有量は、少なくとも40meq/kg、特に好ましくは少なくとも45meq/kgであり、50〜90meq/kgが更に好ましい。
【0018】
とりわけ、このような非晶質ポリアミドを前述の通り含むポリアミド成形化合物は優れた性質を併せ持つことがわかっている。特に驚くことに、本発明のポリアミド成形化合物で製造した成型品は、2500MPaを超える引張弾性率を有し、しかも6%を超える極めて高い破断伸びをも示す。
【0019】
ポリアミドと可塑剤との好ましい重量比は、1.2:0.80〜0.80:1.2、特に好ましくは1.15:0.85〜0.85:1.15であり、重量比が1:1であることが更に好ましい。
【0020】
また、SEBS:SEBS−MAHの重量比が1:2〜2:1であると有益であり、好ましくは1:1.5〜1.5:1、特に好ましくは1:1.2〜1.2:1、更に好ましくは1:1であることが可塑剤自体に関して特に重要であることも判った。前記範囲を維持すれば、結果として表面の感触が極めて良好となり得る。
【0021】
スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS)及び無水マレイン酸(MAH)グラフト化スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS−MAH)はそれぞれ、スチレンを25〜35重量%含有している。
【0022】
SEBS−MAHのメルトボリュームフローレート(MVR)は、275℃において負荷5kgで、少なくとも80ml/10分、好ましくは90〜200ml/10分、特に好ましくは100〜160ml/10分である。SEBS−MAH中の無水マレイン酸含有量は、1〜2.2重量%、好ましくは1.3〜2.0重量%、特に好ましくは1.5〜1.9重量%である。
【0023】
本発明のポリアミド成形化合物には、少なくとも1つのポリアミド(PA)と少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーとのブレンドが55〜85重量%、好ましくは60〜80重量%、特に好ましくは65〜75重量%含まれていれば好ましいことが判った。
【0024】
また、強化剤は、15〜45重量%の量で、好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは25〜35重量%、更に好ましくは30重量%の量で含まれていれば好ましいことも判った。特に強調すべきは、強化剤としてガラス繊維が最適であることが判ったことである。
【0025】
使用するのは、ガラス短繊維(カットガラス)でも無端ガラス繊維(ロービング)でもよい。ガラス短繊維の場合、繊維長は0.2〜20mm、好ましくは2〜12mmである。ガラス繊維は、好適なサイズ系又は接着剤系で処理されていてもよい。
【0026】
ガラス繊維は、例えばA−、C−、D−、E−、M−、S−若しくはR−ガラス又はこれらの任意の混合物等のあらゆる種類のガラスから製造されたものが使用できる。E−ガラスから製造されたガラス繊維か、E−ガラスを含む混合物から製造されたガラス繊維か、又はE−ガラス繊維を含む混合物が好ましい。
【0027】
ガラス繊維の断面は、円形、卵形、楕円形、角張ったもの又は長方形である。非円形断面、つまり卵形若しくは楕円形の断面、角張った断面又は長方形の断面を有するガラス繊維は、偏平ガラス繊維ともいう。
【0028】
ガラス繊維の形状は、伸びていても、らせん状であってもよい。
【0029】
ガラス繊維の直径は、5〜20μm、好ましくは5〜15μmであり、5〜10μmが特に好ましい。
【0030】
偏平ガラス繊維の場合、アスペクト比、すなわち主断面軸と副断面軸との比は、1.5〜8、好ましくは2〜6であり、3〜5が特に好ましい。
【0031】
偏平ガラス繊維の断面軸の長さは、3〜40μmである。好ましくは、副断面軸の長さは、3〜20μm、特に好ましくは4〜10μmであり、主断面軸の長さは、6〜40μm、特に好ましくは12〜30μmである。
【0032】
本発明のポリアミド成形化合物は、更に、添加剤を0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%含んでいる。
【0033】
添加剤は、粉末若しくは液体又はマスターバッチとして、本発明のポリアミド成形化合物に添加することができる。1つ以上のマスターバッチの状態が好ましい。その場合、マスターバッチのキャリアは、ポリアミド、ポリオレフィン、官能性ポリオレフィン、アイオノマーからなる群より選択される。
【0034】
添加剤としては、例えば現状技術水準で既知のあらゆる添加剤を、ポリアミド成形化合物を製造するために混入できる。好ましくは、添加剤は、無機安定剤、有機安定剤、潤滑剤、着色剤、マーキング用物質、無機顔料、有機顔料、赤外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核生成剤、結晶化促進剤、結晶化抑制剤、縮合触媒、連鎖制御剤、消泡剤、鎖長延長添加剤、導電性添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、離型剤、剥離剤、蛍光増白剤、接着剤、金属顔料、金属薄片、金属被覆粒子、微粒子充填剤、特にナノスケール充填剤(例えば、粒径100nm以下の鉱物)、未変性の若しくは変性した天然若しくは合成フィロケイ酸塩又はこれらの混合物からなる群より選択される。
【0035】
本発明のブレンド中では、安定剤又は劣化防止剤として、例えば、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤又はUV遮断薬を用いてもよい。
【0036】
微粒子充填剤は、好ましくは、滑石、雲母、珪灰石、カオリン、重質炭酸カルシウム若しくは沈降炭酸カルシウム、ガラス玉、合成層状ケイ酸塩、天然層状ケイ酸塩及びこれらの混合物からなる群より選択される。これら微粒子充填剤は、表面処理済のものが好ましい。
【0037】
着色剤に関しては、特に好ましい着色剤はカーボンブラックであり、カラーブラックが極めて特に好ましい。その結果、着色法を問わず、優れた感触に加えて、良好な引張弾性率と高い破断伸びをも有する、黒色成型品が得られる。
【0038】
前記ポリアミド成形化合物から、以下の性質を持った成型品が得られる。
−ソフトタッチ
−高い表面品質
−高い引張弾性率及び高い破断伸び
−高いノッチ付き衝撃強さ及び/又は衝撃強さ
【0039】
本発明の成形化合物から作製した試験片において、引張弾性率は、2500〜7500MPa、好ましくは2800〜6000MPa、特に好ましくは3100〜6000MPaの範囲である。
【0040】
また、本発明は、前述のようにして成形化合物から製造した成型品も包含する。本発明の成型品は、特にそのもの自体の安定性が極めて高く、同時に表面がソフトタッチ表面であって良好な表面品質も有しているという特徴を示すことから、優れた光学特性と感触とが得られる。
【0041】
上述のように、ポリアミド成形化合物は、優れた機械的性質を有することで、単一素材としても多層複合材料における表面物質としても利用することができる。
【0042】
本発明の成形化合物は、優れた物理的性、特に高い引張弾性率と破断伸びとを併せ持つことから、ハウジング、鍵、手持ち工具のグリップ及び/若しくはグリップ表面、家庭用品、スポーツ用品、家具部品、電気若しくは電子部品、又は電気若しくは電子機器の製造に適している。前記機器は、特に、携帯用電気機器若しくは電子機器、例えば、ポンプ、手持ち工具、園芸用品、ヘアアイロン、ヘアドライヤー、散髪用具、髭そり器具、脱毛器具、計測装置、赤外線キー、携帯電話、プレーヤー、ラップトップ型コンピュータ、ノートブック型パソコン、ネットブック、ゲーム機、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、記憶媒体(例えば、USBメモリ)又はこれらの組み合わせに関する。
【0043】
前記ポリアミド成形化合物は、特に好ましくは、ハウジング、鍵、携帯式通信装置用のグリップ及び/若しくはグリップ表面、プレーヤー、記憶媒体又はこれらの組み合わせに用いられる。
【0044】
本発明のポリアミド成形化合物を製造する場合、成分を溶融状態で混合して、その溶融液に、通常は強化剤を重量計量スケール又はサイドフィーダーから計量供給する。この工程は、例えば、単軸若しくは二軸スクリュー押出機又はスクリュー式混練機などの典型的な複合製造装置で行う。これによって、成分は、それぞれを供給口に計量供給するか、又は乾式ブレンドとして供給する。ただし、ポリマー成分と強化剤は同時に供給口へ計量供給してもよい。
【0045】
乾式ブレンド製造では、乾燥顆粒を、場合によりさらに添加剤と混合する。この混合物をタンブルミキサー、ドラムフープミキサー又はタンブル乾燥機を用いて10〜40分間均質化する。この作業は、吸湿しないように乾性保護ガス下で行ってもよい。
【0046】
コンパウンド化は、230℃〜300℃に調整されたシリンダー温度で行う。ノズル手前を真空にしてもよく、また、大気圧下で脱気してもよい。溶融液をストランド状に放出して、10〜80℃の水浴で冷却した後、造粒する。得られた顆粒を、80〜120℃において窒素下又は真空下で12〜24時間乾燥させて、水分含有量を0.1重量%未満にする。
【0047】
以下の測定スペックを用いて、ポリアミド成形化合物を試験する。
【0048】
MVR(メルトボリュームフローレート又はメルトボリュームレート):
ISO1133
造粒
温度275℃
負荷5kg
引張弾性率:
ISO527、ただし、引張り速度1mm/分
ISO試験片、標準規格:ISO/CD3167、タイプA1
170×20/10×4mm、温度23℃
引張強度及び破断伸び:
ISO527、ただし、強化剤に関する引張り速度5mm/分
ISO試験片、標準規格:ISO/CD3167、タイプA1
170×20/10×4mm、温度23℃
シャルピーに基づく衝撃強さ:
ISO179/eU
ISO試験片、標準規格:ISO/CD3167、タイプB1
80×10×4mm、温度23℃
1=計器非搭載、2=計器搭載
シャルピーに基づくノッチ付き衝撃強さ:
ISO179/eA
ISO試験片、標準規格:ISO/CD3167、タイプB1
80×10×4mm、温度23℃
1=計器非搭載、2=計器搭載
相対粘度:
ISO307
0.5重量%m−クレゾール溶液
温度20℃
RV=t/tに基づいて相対粘度(RV)を算出
当該標準規格の第11章に準拠する
【0049】
末端基の判定
アミノ末端基を判定するために、ポリアミドを高温のm−クレゾールに溶解して、イソプロパノールと混合した。過塩素酸による電位差滴定によってアミノ末端基含有量を測定した。
カルボキシル末端基を判定するために、ポリアミドを高温のベンジルアルコールに溶解した。水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム溶液による電位差滴定によってカルボキシ末端基含有量を測定した。
【0050】
アーバーグ社(Arburg Company)製の射出成型機オーラウンダー(Allrounder)モデル420 C 1000−250で試験片を作製した。シリンダー温度は265〜280℃までとした。金型温度は80℃であった。
【0051】
乾燥した試験片を使用する場合は、射出成型後に、乾燥した環境下において(つまり、シリカゲル上に)室温で少なくとも48時間保存した。
【0052】
ポリアミド成形化合物の製造例
【0053】
成形化合物は、ワーナー・アンド・ファイダラー(Werner&Pfleiderer)社製二軸スクリュー押出機ZSK25型で製造した。乾式ブレンドの製造では、乾燥顆粒(ポリアミド、SEBS、SEBS−MAH、及び場合によりカーボンブラック・マスターバッチ)を合わせて混合した。この混合物をタンブラーミキサーで30分間均質化した。得られた乾式混合物をスケールから供給口へ計量供給した。このポリマー溶融物にガラス繊維を、サイドフィーダーから、ノズル前面にある6個のハウジングユニットに搬送した。
【0054】
第1ハウジングの温度は80℃に調節し、残りのハウジングは230〜280℃とした。回転速度200rpm及びスループット毎時12kgとして、大気圧下で脱気した。射出成型されたストランドを水浴で冷却して粉砕して、得られた顆粒を110℃で24時間乾燥することで、水分含有量を0.1重量%未満とした。
【0055】
次に、本発明を表1〜4を参照して詳述する。
【0056】
表1及び2には、使用した成分の正確な名称及び成分の組成の正確な説明、そしてメーカーの詳細を示す。表3には、本発明の実施例1〜4を、そして表4には比較例5〜9を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】



【0061】
表3からは、本発明のポリアミド成形化合物から作製した試験片(実施例1〜4)はそれぞれ、引張弾性率と優れた破断伸びとを併せ持つ、優れた特性を有していることが判る。基本的に、本発明のポリアミド成形化合物から作製した試験片はいずれも、平均を上回る表面品質と優れたソフトタッチを示していた。表3では、ソフトタッチを定性評価して、1〜5の段階で評価した。これにより、表3からは、本発明の成形化合物から作製した試験片が、表面品質とソフトタッチに関して優れた特性を示すことが判った。表面は全て4又は5の評価が得られた。これについて特に強調すべきは、表面品質とソフトタッチが良好であるにもかかわらず、平均を上回る破断伸びと高い引張弾性率を併せ持つことである。したがって、本発明のポリアミド成形化合物から作製した試験片は、高い引張弾性率や高い破断伸びなどの優れた物理的性質を有するだけでなく、必要とされる表面品質とソフトタッチをも同時に有することを特徴としている。
【0062】
比較例(表4)からは、比較例8及び9(特許文献1の実施例III又はIV参照)は実際には、極めて高い破断伸び(29又は23%)を示すが、これら試験片の引張弾性率はせいぜい790〜1050MPaの範囲であることが判った。本発明の試験片に比べて、表面品質もソフトタッチもかなり低い(すなわち、評価2)。別の比較例(比較例5〜7)も同様に、破断伸びがかなり低く、それぞれ高くとも5%以下であり、また、表面品質やソフトタッチに関しても満足のいく結果すら得られないという結果から、本発明の試験片とは相違する。
【0063】
したがって、比較例と本発明の実施例から、本発明のポリアミド成形化合物から製造した本発明の成型品が、優れた物理的性質と良好な表面品質を併せ持つことを特徴とすることが判った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】欧州特許第0771846B1号
【特許文献2】欧州特許第1474459B1号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトタッチ表面を有する成型品を製造するためのポリアミド成形化合物であって、
1)少なくとも1つのポリアミド(PA)と可塑剤としての少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーとのブレンドを55〜85重量%と、
2)強化剤を15〜45重量%と、
3)添加剤を0.1〜10重量%(ただし、前記成分1、2及び3の合計は100重量%とする)と、を含み、
1.1 前記ポリアミドが、アミン末端を有する非晶質ポリアミドであり、
1.2 前記少なくとも1つの可塑剤が、少なくとも1つのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー(SEBS)と少なくとも1つの無水マレイン酸グラフト化SEBS(SEBS−MAH)とを含み、
1.3 前記ポリアミドと前記可塑剤との重量比が、1.25:0.75〜0.75:1.25の範囲にあることを特徴とするポリアミド成形化合物。
【請求項2】
前記ポリアミドと前記可塑剤との重量比(1.3)が、1.2:0.8〜0.8:1.25、好ましくは1.15:0.85〜0.85:1.15、特に好ましくは1:1であることを特徴とする請求項1に記載のPA成形化合物。
【請求項3】
前記SEBSと前記SEBS−MAHとの重量比(1.2)が、1:2〜2:1、好ましくは1:1.5〜1.5:1、特に好ましくは1:1.2〜1.2:1、更に好ましくは1:1であることを特徴とする請求項1又は2に記載のPA成形化合物。
【請求項4】
前記強化剤が、20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%、特に好ましくは30重量%の量で含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のPA成形化合物。
【請求項5】
前記非晶質ポリアミドがアミン末端を有し、そのアミノ末端基含有量が少なくとも150meq/kgであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のPA成形化合物。
【請求項6】
前記非晶質ポリアミドが、PA 6I/6T、PA 6I/10T、PA MACM14、PA MACM18及びこれらの混合物又はこれらのコポリアミドからなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のPA成形化合物。
【請求項7】
前記強化剤がガラス繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のPA成形化合物。
【請求項8】
前記ガラス繊維が、円形及び/又は非円形断面を有することを特徴とする請求項7に記載のPA成形化合物。
【請求項9】
前記添加剤が、無機安定剤、有機安定剤、潤滑剤、着色剤、マーキング用物質、無機顔料、有機顔料、赤外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、核生成剤、結晶化促進剤、結晶化抑制剤、縮合触媒、連鎖制御剤、消泡剤、鎖長延長添加剤、導電性添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、離型剤、剥離剤、蛍光増白剤、接着剤、金属顔料、金属薄片、金属被覆粒子、微粒子充填剤、ナノスケール充填剤、天然フィロケイ酸塩、合成フィロケイ酸塩又はこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のPA成形化合物。
【請求項10】
前記着色剤がカーボンブラックであることを特徴とする請求項9に記載のPA成形化合物。
【請求項11】
製造される成型品は、ISO527に準拠して測定される引張弾性率が2500MPaを超え、そしてそれと同時に、ISO527に準拠した破断伸びが6%を超えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のPA成形化合物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のPA成形化合物から製造され得るソフトタッチ表面を有する成型品。
【請求項13】
前記成型品が、ハウジング、鍵、手持ち工具のグリップ及び/若しくはグリップ表面、家庭用品、スポーツ用品、家具部品、電気若しくは電子部品、又は電気若しくは電子機器から選択されることを特徴とする請求項11に記載の成型品。
【請求項14】
ソフトタッチ表面を有する成型品を製造するのに使用する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリアミド成形化合物の用途。

【公開番号】特開2012−31410(P2012−31410A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164900(P2011−164900)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(505343930)エムス−パテント アクチエンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】