説明

ソリッドケーブル

【課題】絶縁油の移動抑制の効果が高いソリッドケーブルを提供する。
【解決手段】ソリッドケーブル1は、導体10の外周に絶縁層12(主絶縁層12m)を具える。主絶縁層12mは、隣接するターンをつくる絶縁材の一部が重なるように絶縁材を巻回してなる油移動抑制部12mpを具え、抑制部12mp以外の箇所は、ギャップ巻きにより構成される。油移動抑制部12mpは、ギャップ巻きからなる部分と比較して油移動に対する抵抗を高められるため、絶縁層12の外周側及びケーブル1の長手方向に絶縁油が移動することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁油が含浸された絶縁層を有するソリッドケーブルに関する。特に、ケーブルの径方向及び長手方向に絶縁油が移動することを効果的に抑制できるソリッドケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
長距離大容量の電力ケーブルとして、比較的高粘度の絶縁油が含浸された絶縁層を具えるソリッドケーブルが利用されている。絶縁層は、クラフト紙やクラフト紙とプラスチックフィルムとからなる複合テープといった絶縁材を巻回して構成される(例えば、特許文献1,2参照)。通常、図6(II)に示すように隣接するターン(n,n+1)をつくる絶縁材In,In+1間に隙間gができるように絶縁材を巻回するギャップ巻きを行い、絶縁材を一様な巻き方向に所定数枚巻回するごとに絶縁材の巻き方向を逆転させて絶縁層を形成することで、所定の機械的特性(例えば、曲げ、捻りなど)や強度を有するケーブルとなるようにしている。
【0003】
複合テープを構成するプラスチック部分は、絶縁油をほとんど通過させないが、クラフト紙部分は、絶縁油を通過させるため、絶縁油の通路になる。また、突き合わされた複合テープ間につくられる隙間や、この隙間が上下に重ね合わされてできる隙間も絶縁油の通路になる。
【0004】
ソリッドケーブルに通電を開始すると、導体の温度がまず上がり、導体の温度上昇に伴って、絶縁層の内周側(導体側)が外周側(シース側)より先に温度が上昇する。温度上昇に伴い絶縁油は、膨張し、かつ粘度が低下する。温度上昇に伴い膨張した絶縁油は、絶縁層中の油圧が一様になるように絶縁層の内周側から外周側に向かってケーブルの径方向に移動する。この状態から負荷電流が遮断或いは低減されると、絶縁層の外周側よりも高温である導体は、温度が最初に低下する。その後、放熱によって絶縁層の内周側、外周側がそれぞれ徐々に温度が低下する。この温度の低下により絶縁油が収縮する。この収縮により絶縁油は絶縁層の外周側から内周側に戻ろうとするが、絶縁層の外周側は、温度が低くて絶縁油の粘度が高いため、絶縁油が内周側に戻り難い部分が生じる場合がある。また、上記絶縁層の内周側から外周側への絶縁油の移動は、絶縁油の通路(クラフト紙を構成する繊維中の孔や上述の隙間(油ギャップ))を広げる方向に圧力が働くが、外周側から内周側への絶縁油の移動は、同通路を狭める方向に圧力が働くため、絶縁油が移動し難い。この結果、絶縁層において特に導体直上近傍の油圧が負圧となり、この部分に油枯渇状態(代表的には、ボイド)が生じることがある。特に、ケーブルの径方向や長手方向に連続して絶縁油が枯渇した状態となると、放電により電気破壊を招く恐れがある。
【0005】
特許文献3に記載のソリッドケーブルは、負荷遮断時などで導体近傍が負圧とならないように中粘度の絶縁油を含浸した構成とし、ボイドの発生低減を図っている。
【0006】
【特許文献1】特開平11-149831号公報
【特許文献2】特開2001-23449号公報
【特許文献3】特開平11-224546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絶縁油の粘度を低下すれば、油枯渇状態を生じ難くすることができる。しかし、粘度を下げ過ぎると、製造中や布設中などでケーブルの端部や損傷箇所から絶縁油が漏洩したり、ケーブル同士を接続するにあたり金属シースを剥いだ際に絶縁油が流出するなどの問題がある。そのため、ボイドなどの油枯渇状態の発生を低減するには、油移動自体を抑制することが効果的である。しかし、従来は、油移動をより効果的に抑制する構成について十分に検討されていない。
【0008】
また、絶縁油は、絶縁層の径方向だけでなく、ケーブルの長手方向にも移動する。そのため、例えば、ケーブル布設箇所の地形上、ケーブルに高低差ができると、低所側に移動した絶縁油は、重力によって高所側に戻り難く、高所側に大きなボイドが生じ易くなる。
【0009】
そこで、本発明の目的の一つは、絶縁油の移動抑制の効果が高いソリッドケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ギャップ巻きにより絶縁層全体を構成するのではなく、図6(I)に示すように隣接するターン(n,n+1)をつくる絶縁材In,In+1の一部が重なるように絶縁材を巻回してなる部分を絶縁層の一部に具えた構成することで、上記目的を達成する。具体的には、本発明ソリッドケーブルは、導体の外周に絶縁材を巻回してなる絶縁層を具え、隣接するターンをつくる絶縁材の一部が重なるように絶縁材を巻回してなる第一の油移動抑制部を上記絶縁層に具えることを特徴とする。
【0011】
隣接するターンをつくる絶縁材の一部が重なるように絶縁材を巻回する方法としては、例えば、重ね巻きや共巻きが挙げられる。重ね巻きとは、一つの絶縁材を繰り出して順次ターンを形成するにあたり、図6(I)に示すように、あるターン(n)をつくる絶縁材Inの一部に、次のターン(n+1)をつくる絶縁材In+1を重ね合わせて巻回する方法である。共巻きとは、二つの絶縁材を交互に繰り出して交互にターンを形成するにあたり、あるターン(n)をつくる一方の絶縁材Inの一部に、次のターン(n+1)をつくる他方の絶縁材In+1を重ね合わせて巻回する方法である。隣接するターンをつくる絶縁材同士が重ね合わされる重ね代は、適宜選択することができ、絶縁材の幅の1/2以下で十分であると考えられる。
【0012】
図1は、複合テープを巻回してなる絶縁層を模式的に示す断面図であり、(I)は、重ね巻き又は共巻きとギャップ巻きとを組み合わせた例、(II)は、ギャップ巻きのみの例を示す。プラスチックフィルムPの両面にクラフト紙Cをラミネートしてなる複合テープTをギャップ巻きで複数枚巻いて積層すると、図1(II)に示すように任意の枚数目において突き合わされたテープT間、つまり隣接するターンTn,Tn+1間につくられる隙間gは、テープTの厚さ方向に一直線状に存在する。例えば、1枚目のターンT101,T102間の隙間g101を通過した絶縁油は、この1枚目のテープTの外周側のクラフト紙C部分を通ってケーブルの長手方向に移動する。具体的には、図1(II)において×印から黒矢印で示す方向に絶縁油が移動する。また、この移動により、絶縁油は、2枚目のテープTがつくる隙間g102-1,g102-2,g102-3…を通過して、3枚目へと移動する。絶縁油は、このように各テープのターン間の隙間g及びクラフト紙C部分を順次通過して内周側から外周側に(図1(II)において白矢印で示す方向)、かつケーブルの長手方向に移動していく。
【0013】
一方、テープTを重ね巻き又は共巻き(以下、重ね巻きなどと呼ぶ)してなる箇所は、図1(I)に示すように隣接するターンT1,T2間につくられる隙間が二つの隙間g1-1,g1-2に分断されて、階段状に油ギャップがつくられる。このように重ね巻きなどは、油ギャップを階段状にすることができ、油ギャップが一直線状であるギャップ巻きと比較して、油通路を長くして、油移動に対する抵抗を高められる。
【0014】
また、ギャップ巻きから構成される2枚目の隙間g101を通過した絶縁油は、上述のようにこの2枚目のテープTの外周側のクラフト紙C部分を通ってケーブルの長手方向に移動し、重ね巻きなどからなる3枚目の隙間g1-1に向かう。隙間g1-1を通過した絶縁油は、図1(I)において黒矢印で示すように長手方向の一方側(図1(I)において左側)に向かって移動し、クラフト紙C部分を介して隙間g1-2を通過しようとする。しかし、重ね巻きなどしてなる各ターンは、その一部が少なくとも次のターンのテープに押圧されるため、隣接するターンにおける接触箇所のクラフト紙C同士は密着しており、隙間g1-1から隙間g1-2に絶縁油が移動し難い。即ち、重ね巻きなどからなる部分では、絶縁油がケーブルの長手方向及び径方向に移動し難くなる。
【0015】
本発明ケーブルは、絶縁層の一部において絶縁材の巻き方を変えることで、油移動に対する抵抗が大きく、絶縁油が移動し難い部分(第一の油移動抑制部)を有することができる。従って、本発明ケーブルは、油移動抑制部よりも内周側の絶縁油が同抑制部を介して外周側に移動することを効果的に低減できる。つまり、本発明ケーブルでは、絶縁油が絶縁層の内周側から油移動抑制部までの範囲を主として移動することになる。このように絶縁油の移動範囲を規制することで、本発明ケーブルは、油移動に伴うボイドといった油枯渇状態の発生を抑制することができる。また、本発明ケーブルは、絶縁油がケーブルの径方向だけでなく長手方向に移動することをも低減するので、大きなボイドが形成されることを効果的に低減できる。
【0016】
絶縁層全体を重ね巻きなどで形成すると、油通路をより長く、油移動に対する抵抗をより高くすることができ、油移動抑制の観点から好ましい。しかし、この構成は、曲げなどの機械的特性が低下したり、絶縁層にしわが寄るなどの問題がある。従って、本発明ケーブルは、ギャップ巻きと重ね巻きなどとを組み合わせてなる構成とする。
【0017】
絶縁層において半導電層を除く主絶縁層は、絶縁紙、及び絶縁紙とプラスチックフィルムとからなる複合テープの少なくとも一方を用いて形成する。特に、複合テープはクラフト紙といった絶縁紙と比較して油移動に対する抵抗が大きいことから、複合テープからなる主絶縁層は、クラフト紙のみからなる主絶縁層と比較して、ケーブルの径方向及び長手方向に絶縁油を移動し難くできる。そのため、主絶縁層は、複合テープからなる部分を具えることが好ましく、主として複合テープからなることがより好ましい。主絶縁層全体を複合テープで構成すると、この主絶縁層の最内側や最外側は、電気的ストレスが高いことで電気破壊を起こす恐れがある。そのため、主絶縁層の少なくとも一部に、複合テープよりも抵抗率(ρ)が小さい材料、代表的にはクラフト紙からなる部分を有していてもよい。
【0018】
例えば、主絶縁層は、複合テープからなる部分と、低ρ材料からなる低ρ部とを組み合わせた構成とする。低ρ部は、複合テープ部分よりも内周側及び主絶縁層よりも外周側の少なくとも一方に具える。主絶縁層に低ρ部を具えることで、複合テープ部分においてストレスが高く、導体の影響を受け易い部分が受けるストレスを低減して、絶縁性能に優れるケーブルとすることができる。主絶縁層の内周側及び外周側の双方に低ρ部を具えると、絶縁性能により優れるケーブルとすることができる。或いは、複合テープ間にクラフト紙を適宜配置させた構成が挙げられる。比較的硬い複合テープの間にクラフト紙を配置することで、クラフト紙が緩衝材として機能することが期待できる。クラフト紙は、上述のように油通路となるため、油移動抑制効果の向上を考慮すると、できるだけ少ない方が好ましい。従って、緩衝材とするクラフト紙の巻回枚数は、3枚以下、特に、1〜2枚が好ましい。
【0019】
複合テープは、例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一面にクラフト紙を配したものが利用できる。ポリオレフィン系樹脂は、絶縁性能に優れるポリプロピレンが好ましい。複合テープの厚さは、50〜200μmが実用的であり、100〜150μmが好ましい。
【0020】
また、複合テープは、テープの厚さに対するプラスチック部分の厚さの割合kが種々の大きさのものが利用できる。例えば、割合kが異なる複数種の複合テープを用いて、絶縁層の厚さ方向に割合kが異なる構成としてもよい。即ち、割合kが同じ複合テープを巻回してなる纏まりを同一k値部とするとき、主絶縁層は、割合kが異なる複数の同一k値部が存在する構成としてもよい。
【0021】
主絶縁層は、重ね巻き又は共巻きからなる少なくとも一つの油移動抑制部(第一の油移動抑制部)を有しており、主絶縁層中に間隔をあけて複数の油移動抑制部を具えてもよい。主絶縁層において第一の油移動抑制部以外の部分は、ギャップ巻きから構成される。
【0022】
油移動抑制部は、複合テープ、特に、割合kが40〜80%のテープからなることが好ましい。割合kが高い複合テープは、絶縁油が含浸されるクラフト紙部分が少ないことから油移動に対する抵抗が大きく、このテープで第一の油移動抑制部を構成すると、絶縁材の巻回構造に加えて複合テープ自体の油移動に対する抵抗の高さと相俟って更に油移動抑制効果を高められる。また、割合kが高い複合テープは、テープにおける絶縁抵抗が高い傾向にある。従って、油移動抑制効果の向上や絶縁性能の向上を考慮すると、割合kは、60%以上、特に65%以上80%未満が好ましい。一方、割合kが低いテープは、比較的安価であり、このようなテープを用いることで製造コストを低減できる。また、割合kが低いテープは、絶縁紙部分が多くなることで絶縁油を含浸させ易く、ケーブルの製造性に優れる。従って、製造コストや製造性を考慮すると、割合kは、60%未満が好ましい。絶縁層中に複数の油移動抑制部を具える場合、各抑制部を構成する複合テープの割合kが異なっていてもよい。また、油移動抑制部を複合テープで構成する場合、隣接する絶縁材は、クラフト紙といった絶縁紙よりも、油移動抑制効果が高い複合テープであることが好ましい。
【0023】
一つの第一の油移動抑制部の径方向の厚さは、(絶縁材1枚の厚さ×2)×巻回枚数で表わされ、巻回枚数を調整することで、所望の厚さにすることができる。油移動抑制部の厚さが厚いほど油移動抑制効果が高くなる傾向にあるが、絶縁材を3枚以下巻回した大きさ、特に、1又は2枚巻回した大きさでも十分な効果を有すると考えられる。
【0024】
ここで、主絶縁層を構成する絶縁材の巻き方向は特に問わないが、一方向のみ、即ち右巻きのみ或いは左巻きのみで絶縁層全体を構成するよりも、二つの巻き方向を組み合わせて主絶縁層を構成することが好ましい。特に、一様な方向に所定数(例えば、五〜十数枚)巻回してなる纏まりを一方向巻回層とするとき、主絶縁層を複数の一方向巻回層で構成すると共に、隣接する巻回層は、絶縁材の巻き方向が互いに異なる構成とすることが好ましい。即ち、所定の間隔で右巻きの一方向巻回層(以下、右巻き層と呼ぶ)と左巻きの一方向巻回層(以下、左巻き層と呼ぶ)とが交互に現れる構成とすると、機械的特性に優れて好ましい。一つの一方向巻回層は、複合テープのみから構成されていてもよいし、複合テープからなる部分と上述した低ρ材料からなる部分とが混在する構成でもよい。油移動抑制部は、このような絶縁層の任意の位置に存在することができ、いずれの巻き方向でもよい。
【0025】
特に、主絶縁層が右巻き層と左巻き層とが交互に現れる構成である場合、第一の油移動抑制部は、絶縁材の巻き方向が変わる部分(層変わり部分)、つまり、右巻きから左巻き又は左巻きから右巻きに変わる部分に存在することが好ましい。図2は、巻き方向が異なる絶縁材を巻回した状態を模式的に示す説明図であり、(I)は、右巻き及び左巻きのいずれか一方の巻き方向でギャップ巻きしてなる一方向巻回層の上に、他方の巻き方向でギャップ巻きしてなる一方向巻回層を具える状態、(II)は、いずれか一方の巻き方向でギャップ巻きしてなる一方向巻回層の上に、同じ巻き方向で重ね巻きしてなる一方向巻回層を具える状態、(III)は、いずれか一方の巻き方向でギャップ巻きしてなる一方向巻回層の上に、他方の巻き方向で重ね巻きしてなる一方向巻回層を具える状態を示す。
【0026】
ギャップ巻きで一方向巻回層を構成する場合、突き合わされた絶縁材間の隙間を覆うように次の絶縁材を巻回することができる。しかし、隣接する巻回層の巻き方向が異なる場合、巻き方向が異なるこれら二つの巻回層が接する層変わり部分では、図2(I)に示すように下側の巻回層200uの最外側をつくる絶縁材(図2(I)において細い破線で示す)と、この上に設けられる上側の巻回層200oの最内側をつくる絶縁材(図2(I)において太い実線で示す)とが交差するように配置される。また、下側の巻回層200uの最外側に存在する油ギャップguと、上側の巻回層200oの最内側に存在する油ギャップgoとも交差するように設けられ、両油ギャップgu,goが部分的に連通する部分guoが存在する。従って、層変わり部分は、油移動が生じ易い。そのため、このような部分に重ね巻きなどからなる第一の油移動抑制部を設けると、油移動をより効果的に抑制できる。そこで、第一の油移動抑制部に隣接する内周側の一方向巻回層(以下、内側巻回層と呼ぶ)及び外周側の一方向巻回層(以下、外側巻回層と呼ぶ)の双方は、絶縁材の巻き方向が互いに異なる構成とすることが好ましい。このような構成にすることで、第一の油移動抑制部mp(図2(II)において太い実線及び太い破線で示す)は、図2(II)に示すように隣接する下側の巻回層(内側巻回層)200uと同じ巻き方向でも、図2(III)に示すように隣接する内側巻回層200uと異なる巻き方向(図示しない外側巻回層と同じ巻き方向)でも上述した連通部分が生じることがない。
【0027】
上記油移動抑制部は、絶縁層中に一つでもよいが、複数具えると、油移動抑制効果を高められる。複数とする場合、例えば、一つの一方向巻回層に対して、一つの第一の油移動抑制部を設けることが挙げられる。
【0028】
主絶縁層において油移動抑制部を除く部分は、割合kが小さい複合テープ、特に割合kが60%未満のテープで構成すると、比較的安価であり、コストを低減できて好ましい。また、上記油移動抑制部を除く部分は、割合kが順次異なる構成、いわゆるρグレーディングが施された構成としてもよい。ここで、割合kが一様なテープを巻回してなる纏まりを同一k値部とする場合、ρグレーディングを構成する各同一k値部の厚さは、実質的に等しいことが好ましい。例えば、油移動抑制部を除く主絶縁層全体にρグレーディングを施す場合、各同一k値部の厚さは、上記油移動抑制部を除く主絶縁層の厚さを均等に分割した厚さにする。
【0029】
上述のように主絶縁層において油移動抑制部を除く全ての部分を割合kが小さい複合テープで構成すると、製造コストを最も低減できるが、電気的特性を考慮して、割合kが高いテープで構成される領域を主絶縁層に部分的に別途設けてもよい。例えば、主絶縁層において導体(或いは内部半導電層)直上近傍の内周側領域や、シース(或いは外部半導電層)直下近傍の外周側領域を割合kが高いテープで構成してもよい。内周側領域は常温時(無負荷又は低負荷時)に、外周側領域は高温時(負荷時)に電気的ストレスが高くなる領域であり、これらの領域に絶縁性能に優れる割合kが高いテープからなる高k部を設けると、絶縁層が電気破壊し難くなる。油移動抑制部を割合kが高いテープで構成し、絶縁層の内周側、中間部、及び外周側に割合kが高いテープからなる部分(油移動抑制部や高k部)を具える構成とすると、絶縁油の移動抑制及び電気破壊の低減の効果が高い。高k部は、電気的特性を考慮して、例えば、割合kが高いテープを1〜2枚巻回して構成する。
【0030】
なお、絶縁性能の向上度合いや油移動抑制効果をより高めたい場合、割合kが高いテープに代えて、或いは割合kが高いテープと組み合わせて、プラスチックフィルムのみからなるプラスチックテープ、例えば、ポリプロピレンテープを利用して油移動抑制部や高k部を形成することが効果的である。プラスチックテープを利用することで、油移動抑制部や高k部におけるプラスチック部分の割合を高められる。
【0031】
割合kが異なる複数の複合テープで主絶縁層を構成する場合、即ち、主絶縁層に複数の同一k値部が存在する場合、主絶縁層中に重ね巻きなどからなる第一の油移動抑制部に加えて、割合kが高い複合テープからなる第二の油移動抑制部を別途具える構成としてもよい。具体的には、第二の油移動抑制部は、複数の同一k値部のうち、以下の同一k値部から構成される。第二の油移動抑制部を構成する同一k値部は、この同一k値部に隣り合う内周側の同一k値部(以下、内側k値部と呼ぶ)及び外周側の同一k値部(以下、外側k値部と呼ぶ)よりも割合kが高く、かつ隣り合う内側k値部及び外側k値部の少なくとも一方よりも厚さが薄い。なお、上記第二の油移動抑制部に隣り合う内側k値部及び外側k値部となる同一k値部は、第二の油移動抑制部に隣接する同一k値部の他、第二の油移動抑制部に上述した低ρ材料からなる部分が隣接しており、この低ρ材料からなる部分に隣接する同一k値部も含む。
【0032】
第二の油移動抑制部は、構成する複合テープの種類(割合kの大きさ)を主絶縁層の他の部分と異ならせるだけで形成することができる。このような第二の油移動抑制部も主絶縁層の任意の位置に存在することができるが、上述した重ね巻きなどによる第一の油移動抑制部と同様に層変わり部分に存在することが好ましい。また、第二の油移動抑制部を構成する複合テープは、割合kが60%以上、特に65%以上80%未満が好ましい。第二の油移動抑制部は、一つでもよいが、複数存在することで油移動抑制効果を高められる。一つの第二の油移動抑制部は、割合kが高い複合テープを3枚以下、特に、1〜2枚巻回することで構成できる。
【0033】
ギャップ巻きと重ね巻きとの混合構造を形成するには、例えば、重ね巻きに用いる絶縁材の幅をギャップ巻きに用いる絶縁材の幅よりも広くしたり、巻回時の絶縁材のピッチを調整することが挙げられる。例えば、絶縁材を自動的に巻回する巻回装置を利用して絶縁層を形成する場合、巻回装置を調整することで、ピッチなどの調整を行える。巻回装置は、導体の進行方向に沿って複数配置させた巻回機群を具えるものが挙げられる。各巻回機は、走行する導体(或いは内部半導電層)の外周に配される環状のヘッド部と、ヘッド部に保持される複数のパッドとを具えるものが挙げられる。ヘッド部は、その中心部に導体が挿通される貫通孔を具え、この貫通孔の外方に環状に並ぶように複数のパッドを間隔をあけて保持する。各パッドは、巻回された一つの絶縁材を支持しており、貫通孔を通過する導体に対して順次絶縁材を繰り出す。巻回装置は、各巻回機の貫通孔が同軸状に並ぶように巻回機を配置して構成される。これら巻回機間の距離を調整することでピッチを調整することができる。重ね巻きを行う巻回機とギャップ巻きを行う巻回機とを用意することで、混合構造を形成できる。或いは、一つの巻回機において二つ以上のパッド間隔を調整して、二つ以上の絶縁材のピッチを変えることでも、混合構造を形成できる。この場合、一つの巻回機において、重ね巻きを行うパッドとギャップ巻きを行うパッドが存在する。ギャップ巻きと共巻きとの混合構造を形成するには、一つの絶縁材を繰り出すパッドを具えてギャップ巻きを行う巻回機と、二つの絶縁材を交互に繰り出すパッドを具えて共巻きを行う巻回機とを用意することが挙げられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明ソリッドケーブルは、絶縁層における油移動を効果的に抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
図3は、本発明ソリッドケーブルの断面図である。以後の図において同一符号は同一物を示す。ソリッドケーブル1は、中心から順に、導体10、絶縁層12(内部半導電層11、主絶縁層12m、外部半導電層13)、金属シース14を具える。このケーブル1の最も特徴とするところは、主絶縁層12mの構成にある。以下、この点を中心に説明する。
【0036】
主絶縁層12mは、ポリプロピレン(PP)フィルムの両面にクラフト紙がラミネートされた複合テープ、具体的には、PPLP(住友電気工業株式会社の登録商標)を螺旋状に多層に巻回して構成される。この例では、PPLP(登録商標)の厚さにおけるPP部分の厚さの割合kが約40%のもの(厚さ125μm)を用いて主絶縁層12mを構成している。そして、主絶縁層12mは、PPLP(登録商標)を重ね巻きしてなる油移動抑制部(第一の油移動抑制部)12mpと、ギャップ巻きしてなる内側絶縁部12mi及び外側絶縁部12moとから構成される。絶縁層12には、例えば、60℃で10〜500cstの粘度を有する絶縁油が含浸される。
【0037】
油移動抑制部12mpは、主絶縁層12mの中間部に位置しており、内側絶縁部12miと外側絶縁部12moとに挟まれている。この例では、1枚のPPLP(登録商標)で重ね巻きを行って抑制部12mpを構成している。つまり、抑制部12mpは、その径方向の厚さがPPLP(登録商標)1枚の厚さ×2に等しい。なお、図3〜5は、油移動抑制部を誇張して示す。
【0038】
内側絶縁部12mi及び外側絶縁部12moはそれぞれ、主絶縁層12mにおいて油移動抑制部12mpを除く残部を構成し、PPLP(登録商標)を一様な方向に所定数巻回してなる纏まりを一方向巻回層とするとき、複数の一方向巻回層から構成される。また、両部12mi,12moはそれぞれ、隣接する巻回層の巻き方向が互いに異なるように構成される。そして、抑制部12mpは、両部12mi,12moを構成する複数の一方向巻回層のうち、抑制部12mpに隣接する二つの一方向巻回層の巻き方向が変わる部分(層変わり部分)に配置されている。抑制部12mpを構成するPPLP(登録商標)の巻き方向は、抑制部12mpに隣接する上記二つの一方向巻回層のいずれかと等しい。なお、両部12mi,12moを構成する各一方向巻回層は、PPLP(登録商標)を十数枚巻回してなる。
【0039】
上記構成を具えるソリッドケーブル1は、主絶縁層12mをPPLP(登録商標)といった複合テープで形成することで、クラフト紙で主絶縁層を形成した場合と比較して、絶縁性能に優れると共に油移動に対する抵抗が高い。特に、ケーブル1は、重ね巻きにより油移動に対する抵抗を高めた油移動抑制部12mpを主絶縁層12mに具えることで、内側絶縁部12miから抑制部12mpを介して外周側に絶縁油が移動することを効果的に抑制できる。更に、ケーブル1は、主絶縁層12mの層変わり部分に抑制部12mpを具えることで、絶縁油の移動をより効果的に抑制できる。従って、導体10の温度上昇により絶縁油が絶縁層12の外周側に移動しようとしても油移動抑制部12mpに規制され、内側絶縁部12miの絶縁油は、導体10から抑制部12mpまでの範囲、即ち、内側絶縁部12mi中を主として移動することになる。そのため、ケーブル1は、導体10の温度低下により絶縁油が収縮する場合、内周側、特に導体10近傍に絶縁油が戻り易く、導体10近傍にボイドといった油枯渇状態が生じることを低減できる。同様に外側絶縁部12mo中の絶縁油も同部12mo中を主として移動することになる。即ち、ケーブル1は、絶縁油がケーブル1の径方向に移動する距離を小さくすることができる。かつ、ケーブル1は、重ね巻きからなる抑制部12mpを具えることで、絶縁油がケーブル1の長手方向に移動することも低減することができる。このように絶縁層12中の絶縁油の移動を規制することで、ケーブル1は、油圧の変動を低減できる。
【0040】
なお、実施例1は、重ね巻きによる油移動抑制部を主絶縁層中に一つ具える構成であるが、主絶縁層中に適宜間隔をあけて複数具えてもよい。このとき、主絶縁層中に重ね巻きによる油移動抑制部が多段に存在することで、絶縁油が絶縁層のより外周側に移動することを効果的に抑えられる。複数の油移動抑制部を具える構成の場合、各抑制部を構成する複合テープの割合kは同一でもよいし、異なっていてもよい。また、重ね巻きに代えて、共巻きにより油移動抑制部を形成してもよい。これらの構成は、後述する実施例2,3についても同様に適用できる。
【0041】
また、実施例1は、絶縁層12全体を構成する複合テープとして、割合kが同じものを使用したが、油移動抑制部12mpと内側絶縁部12mi及び外側絶縁部12moとを割合kが異なるテープで構成してもよい。例えば、内側絶縁部12mi及び外側絶縁部12moの少なくとも一方を構成する複合テープよりも割合kが高いテープを用いて抑制部12mpを構成したり、割合kが異なる複数種の複合テープを用いて両部12mi,12moを構成してもよい。即ち、主絶縁層12mは、割合kが同じテープを巻回してなる纏まりを同一k値部とするとき、割合kが異なる複数の同一k値部からなる構成としてもよい。例えば、割合kをケーブルの径方向に順次異ならせて、主絶縁層12mにρグレーディングを施してもよい。ρグレーディングは、主絶縁層12mの内周側から外周側に向かって抵抗率が高くなるようにしてもよいし、外周側から内周側に向かって、抵抗率が高くなるようにしてもよい。利用する複合テープはいずれも、割合kが低いもの、例えば、60%未満のものとすると、製造コストを低減できる。この構成は、後述する実施例2,3についても同様に適用できる。
【0042】
更に、絶縁材を特定の巻き方で形成した油移動抑制部12mpとは別に、絶縁材として特定の種類のもので形成した油移動抑制部(第二の油移動抑制部)を具える構成としてもよい。第二の油移動抑制部は、割合kが異なる複数の複合テープで主絶縁層12mを構成するとき、割合kが高いテープをギャップ巻きして構成する。具体的には、同一k値部が主絶縁層12m中に複数存在するとき、これら複数の同一k値部のうち、以下のものを第二の油移動抑制部とする。第二の油移動抑制部を構成する同一k値部は、隣り合う内周側び外周側の同一k値部よりも割合kが高く、かつ上記隣り合う二つの同一k値部の少なくとも一方よりも厚さが薄いものとする。第二の油移動抑制部は、テープの種類(割合kの大きさ)を変化させるだけで簡単に構成することができる。第一の油移動抑制部12mpに加えて内側絶縁部12mi及び外側絶縁部12moの少なくとも一方に第二の油移動抑制部を存在させることで、油移動抑制効果をより高められる。第二の油移動抑制部も適宜間隔をあけて複数具えていてもよい。この構成は、後述する実施例2,3についても同様に適用できる。
【0043】
(実施例2)
次に、割合kが異なる複合テープからなる主絶縁層を具える構成を説明する。図4は、主絶縁層に重ね巻きによる油移動抑制部と二つの高k部とを具える本発明ソリッドケーブルの断面図である。ソリッドケーブル2の基本的構成は、実施例1のソリッドケーブル1と同様であり、中心から順に、導体10、絶縁層22(内部半導電層11、主絶縁層22m、外部半導電層13)、金属シース14を具える。主絶縁層22mは、重ね巻きによる油移動抑制部(第一の油移動抑制部)22mpと内側絶縁部22mi,外側絶縁部22moとからなり、PPLP(登録商標)により形成される。このケーブル2の最も特徴とするところは、主絶縁層22mを構成するPPLP(登録商標)の割合kが部分的に異なる点にある。以下、この点を説明し、他の点については実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
油移動抑制部22mpは、割合kが約40%のPPLP(登録商標)を重ね巻きして構成され、内側絶縁部22miと外側絶縁部22moとに挟まれている。各部22mi,22moはそれぞれ、割合kが約40%のPPLP(登録商標)をギャップ巻きしてなる低k部(内側低k部22mil,外側低k部22mol)と、割合kが約70%のPPLP(登録商標)をギャップ巻きしてなる高k部(内側高k部22mih,外側高k部22moh)とから構成される。
【0045】
二つの高k部22mih,22mohは、内側低k部22mil、油移動抑制部22mp、外側低k部22molからなる纏まりを挟むように存在する。内側高k部22mihは、割合kが約70%のPPLP(登録商標)を内部半導電層11上に巻回して構成され、外側高k部22mohは、同じく割合kが約70%のPPLP(登録商標)を外側低k部22mol上に巻回して構成される。高k部22mih,22mohはいずれも、PPLP(登録商標)を1〜2枚巻回して構成される。なお、図4は、高k部を誇張して示す。
【0046】
上記構成を具えるソリッドケーブル2は、油移動抑制部22mpを具えることで、実施例1と同様に油移動を抑制できる。加えて、ケーブル2は、主絶縁層22mの内周側及び外周側の双方に絶縁性能に優れる高k部22mih,22mohを具えることで、常温時にも高温時にも電気破壊が生じ難い。また、高k部22mih,22mohは、抑制部22mpと同様に油移動の抑制効果も期待できる。
【0047】
(実施例3)
次に、絶縁層が油移動抑制部(第一の油移動抑制部)と低ρ部とを具える構成を説明する。図5は、油移動抑制部と低ρ部とを具える絶縁層を有する本発明ソリッドケーブルの断面図である。ソリッドケーブル3の基本的構成は、実施例1のソリッドケーブル1と同様であり、中心から順に、導体10、絶縁層32(内部半導電層11、主絶縁層32m、外部半導電層13)、金属シース14を具える。このケーブル3の最も特徴とするところは、主絶縁層32mが、PPLP(登録商標)からなる複合テープ部32cと、クラフト紙からなる低ρ部(内側低ρ部32i,外側低ρ部32o)とから構成される点にある。以下、低ρ部を中心に説明し、他の点については実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
主絶縁層32mは、PPLP(登録商標)を重ね巻きしてなる油移動抑制部(第一の油移動抑制部)32mpと、ギャップ巻きしてなる内側絶縁部32mi,外側絶縁部32moとから構成される。
【0049】
低ρ部は、主絶縁層32mよりも内周側、及び外周側に設けられており、クラフト紙を巻回して構成される。内側低ρ部32iは内部半導電層11上に、外側低ρ部32oは主絶縁層32mの外側絶縁部32mo上に配置されている。なお、内側低ρ部32i上に複合テープ部32cの内側絶縁部32miが配置されている。内側低ρ部32i及び外側低ρ部32oの厚さはそれぞれ、絶縁層32の厚さの5%であり、主絶縁層32mの厚さは、絶縁層32の厚さの90%である。なお、図5は、低ρ部を誇張して示す。
【0050】
上記構成を具えるソリッドケーブル3は、油移動抑制部32mpを具えることで、実施例1と同様に油移動を抑制できる。加えて、ケーブル3は、複合テープから構成される複合テープ部32cよりも内周側及び外周側に低ρの低ρ部32i,32oを具えることで、主絶縁層32mにおいて特に電気的ストレスが高くなる箇所のストレスを低減して電気破壊を生じ難くすることができる。従って、ケーブル3は、絶縁性能に優れる。
【0051】
実施例3は、実施例1に示した主絶縁層12mの内周側及び外周側に低ρ部を具える構成としたが、実施例2に示した主絶縁層22mの内周側及び外内周側に低ρ部を具える構成としてもよい。高k部に加えて低ρ部を具えることで、このケーブルは、より絶縁性能に優れる。
【0052】
なお、上述した実施例は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、油移動抑制部は、複合テープを共巻きして構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明ソリッドケーブルは、電力供給、特に、長距離大容量の電力供給に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】複合テープを巻回してなる絶縁層を模式的に示す断面図であり、(I)は、重ね巻きとギャップ巻きとを組み合わせた例、(II)は、ギャップ巻きのみの例を示す。
【図2】巻き方向が異なる絶縁材を巻回した状態を模式的に示す説明図であり、(I)は、ギャップ巻きしてなる一方向巻回層の上に、異なる巻き方向でギャップ巻きしてなる一方向巻回層を具える構成、(II)は、ギャップ巻きしてなる一方向巻回層の上に、同じ巻き方向で重ね巻きしてなる一方向巻回層が巻回された状態、(III)は、ギャップ巻きしてなる一方向巻回層の上に、異なる巻き方向で重ね巻きしてなる一方向巻回層を具える構成を示す。
【図3】主絶縁層に重ね巻きによる油移動抑制部を一つ具える本発明ソリッドケーブルの断面図である。
【図4】主絶縁層に高k部と、重ね巻きによる油移動抑制部とを具える本発明ソリッドケーブルの断面図である。
【図5】主絶縁層に低ρ部と、重ね巻きによる油移動抑制部とを具える絶縁層を有する本発明ソリッドケーブルの断面図である。
【図6】絶縁材を巻回した状態を説明する断面模式図であり、(I)は、重ね巻き又は共巻き、(II)は、ギャップ巻きを示す。
【符号の説明】
【0055】
1,2,3 ソリッドケーブル 10 導体 11 内部半導電層
12,22,32 絶縁層 12m,22m,32m 主絶縁層 12mi,22mi,32mi 内側絶縁部
12mo,22mo,32mo 外側絶縁部 12mp,22mp,32mp 油移動抑制部
13 外部半導電層 14 金属シース
22mil 内側低k部 22mol 外側低k部 22mih 内側高k部
22moh 外側高k部 32i 内側低ρ部 32o 外側低ρ部 32c 複合テープ部
T 複合テープ C クラフト紙 P プラスチックフィルム In,In+1 絶縁材
T1,T2,T101,T102,Tn,Tn+1 ターン g,g1-1,g1-2,g101,g102-1,g102-2,g102-3 隙間
gu,go 油ギャップ guo 油ギャップが連通する部分 200u 下側の巻回層
200o 上側の巻回層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周に絶縁材を巻回してなる絶縁層を具えるソリッドケーブルであって、
前記絶縁層は、隣接するターンをつくる絶縁材の一部が重なるように絶縁材を巻回してなる第一の油移動抑制部を具えることを特徴とするソリッドケーブル。
【請求項2】
前記絶縁層は、隣接するターンをつくる絶縁材間に隙間を設けて絶縁材を一様な巻き方向に所定数枚巻回してなる纏まりを一方向巻回層とするとき、複数の一方向巻回層を具え、
前記複数の一方向巻回層のうち、前記第一の油移動抑制部に隣接する二つの一方向巻回層は、絶縁材の巻き方向が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載のソリッドケーブル。
【請求項3】
前記絶縁層は、
絶縁材として、絶縁紙とプラスチックフィルムとからなる複合テープを巻回してなる部分を含み、
複合テープの厚さに対するプラスチック部分の厚さの割合kが同じ複合テープを巻回してなる纏まりを同一k値部とするとき、割合kが異なる複数の同一k値部が存在し、
前記複数の同一k値部のうち、以下の同一k値部からなる第二の油移動抑制部を更に具えることを特徴とする請求項1に記載のソリッドケーブル。
前記第二の油移動抑制部を構成する同一k値部は、この同一k値部に隣り合う内周側の同一k値部及び外周側の同一k値部よりも割合kが高く、かつ隣り合う内周側の同一k値部及び外周側の同一k値部の少なくとも一方よりも厚さが薄い。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate