説明

ソーラシミュレータ

【課題】集光型太陽電池及び球状シリコン太陽電池の出力特性の測定精度を向上し、コスト低減を有効に実現し得るソーラシミュレータを提供する。
【解決手段】被測定物120に光を照射してその出力特性を測定する。凹状反射面31を有する反射板30と、反射板30の焦点と整合するように反射板30に沿って配置された光源20と、光源20と被測定物120との間に配置され、反射板30の光軸と平行な光を被測定物に誘導する導光部材40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等の被測定物に擬似太陽光を照射し、被測定物の出力特性を測定するソーラシミュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の温室効果ガス等の問題から、環境を汚さない太陽電池が注目されている。太陽電池は、照射される太陽光から光エネルギーを吸収し、これを電気エネルギーに変換して出力する。この太陽電池の製造あるいは使用段階で、太陽電池が光エネルギーを設計通りに電気エネルギーに変換・出力するかを検証する性能測定試験や、太陽電池が経年的に使用された場合にその劣化の程度を検証する加速劣化試験等が行なわれる。
【0003】
そのような検証を行うために太陽電池に擬似太陽光を照射して、太陽電池からの出力特性を測定する所謂、擬似太陽光照射装置(以下、ソーラシミュレータという)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。ソーラシミュレータでは、太陽光に近いキセノンランプ等を光源として、被測定物である太陽電池に照射し、そのときの太陽電池の出力特性(電圧及び電流等)を測定する。その出力特性は制御装置に送信され、適宜記憶され、ディスプレイ等に表示される。
【0004】
従来、この種のソーラシミュレータの開発において、実際の太陽光が照射された場合と同等の試験結果を得るために、いかに太陽光のスペクトル分布を再現するかが重要なテーマとなっている。例えば、図8に示すようにソーラシミュレータ100は、フレーム101とアクリル板102とキセノンランプ103とバッフル104と光学フィルタ105とを含んで構成される。また、測定対象となる太陽電池110は、照射面を下側にして、アクリル板102上に載置される。
【0005】
フレーム101は、ソーラシミュレータ100の筐体として構成され、上部開口が形成されている。アクリル板102は、フレーム101の上部開口を閉塞するように天板として取り付けられる。また、アクリル板102は、フレーム101の内部から照射された光を太陽電池120に照射できるように、光が透過できるようになっている。キセノンランプ103は、フレーム101内部の下部付近に取り付けられ、放射状に光を照射する。バッフル104は、キセノンランプ103の上方に取り付けられ、キセノンランプ103から照射された光をフレーム101内部に拡散させる。光学フィルタ105は、バッフル104の上方であってフレーム101の内部を上下に仕切るように水平状態で配置される。この光学フィルタ105は、凹凸レンズ等によって構成され、フレーム101の下側から照射された光を更に拡散させることができる。
【0006】
このようなソーラシミュレータ100では、キセノンランプ103から照射された光は、バッフル104により拡散され、更にフレーム101の下面によって反射された光が光学フィルタ105によって拡散される。従って、太陽電池110の照射面には、いずれの箇所においても拡散された光が照射されるので、照度むらがなく太陽光に近い均一な照度を得ることができる。なお、このように均一な照度を得るために光を拡散させる方式のソーラシミュレータを、以下では拡散式ソーラシミュレータという。
【0007】
【特許文献1】特開2002−48704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで近年、光入射角に依存して出力特性が大きく異なる新しいタイプの太陽電池モジュールが増えている。このような太陽電池モジュールとして、球状シリコン太陽電池、集光型太陽電池、あるいは曲面を有した太陽電池モジュール等が挙げられる。ここで特に、球状シリコン太陽電池について、図9を参照して説明する。
【0009】
図9(A)は、球状シリコン太陽電池の太陽電池モジュールの一部を示す図である。太陽電池モジュール200は、複数のセル201から構成されている。球状シリコン太陽電池のセル201は、内周を半球状に形成された反射鏡202と、反射鏡202の内部の中央に固定された光電変換素子である球状シリコン203と、から構成されている。
【0010】
球状シリコン太陽電池にあっては図9(B)に示すように、球状シリコン太陽電池のセル201に対して、図示のように直上から平行光が安定して入射される必要がある。この場合、球状シリコン203には、直接入射される光と反射鏡202によって反射されて間接的に入射される光とが集光される。
【0011】
しかしながら、かかる球状シリコン太陽電池に対して、上述した拡散式ソーラシミュレータを用いると太陽電池モジュールの照射面には、任意の光入射角を有する光が照射されることになる。結果的に精度の高い測定を行うことができないという問題がある。従って、拡散式ソーラシミュレータの場合、原理的に球状シリコン太陽電池に対して必ずしも有効な手段とは言えない。
【0012】
また、図9(C)に示すように、球状シリコン太陽電池のセル201に対して光入射角をθ度とする平行光が入射されるとする。この場合、球状シリコン203に向かって入射されようとする光であっても、反射鏡202の開口縁によって遮られ球状シリコン203まで照射されない。また、反射鏡202に入射された光は、球状シリコン203側とは異なる方向に向かって照射される。このように入射角が異なると球状シリコン203に集光される光は減少し、それに伴い、変換される電気エネルギーも減少してしまう。
【0013】
更に、近年この種の太陽電池は大型化の傾向にあり、それに伴いソーラシミュレータにおいても装置の複雑化や大型化等の影響を受ける。そのままでは製造コストや装置コストが上昇する等の問題が生じ得る。
【0014】
本発明は上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、集光型太陽電池及び球状シリコン太陽電池の出力特性の測定精度を向上し、コスト低減を有効に実現し得るソーラシミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のソーラシミュレータは、被測定物に光を照射してその出力特性を測定するソーラシミュレータであって、凹状反射面を有する反射板と、前記反射板の焦点と整合するように配置された光源と、前記光源と前記被測定物との間に配置され、前記反射板の光軸と平行な光を前記被測定物に誘導する導光部材とを有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のソーラシミュレータにおいて、前記反射板は放物面鏡として構成され、前記導光部材は薄隔板を介して、グリッド状に列設された前記反射板の光軸と平行な導光路を有することを特徴とする。
また、本発明のソーラシミュレータにおいて、相互に平行配置された複数の前記薄隔板同士が、各々に形成されたスリットを介して交差するように結合することにより前記導光部材が構成されることを特徴とする。
また、本発明のソーラシミュレータにおいて、複数の前記導光部材が、前記反射板の光軸の方向に多段構成されることを特徴とする。
また、本発明のソーラシミュレータにおいて、前記導光部材は、ハニカム状又は多角形状に形成された前記反射板の光軸と平行な導光路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、反射板と、反射板の焦点と整合するように配置された光源と、光源と被測定物との間に配置され反射板の光軸と平行な光を被測定物に誘導する導光部材とを含んで構成されているので、被測定物の照射面に対して平行光を照射することができる。従って、例えば光入射角に依存して出力特性が異なる太陽電池を測定対象としても、精度のよい測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本実施形態に係るソーラシミュレータについて図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るソーラシミュレータ1の内部構成を示す図である。図1Aはソーラシミュレータ1の正面図である。図1Bは、ソーラシミュレータ1の側面図である。図1Cは、ソーラシミュレータ1の平面図である。なお、図1A〜Cはそれぞれ、装置内部を部分的に示している。図2は、ソーラシミュレータ1の外観を示す図である。図3は、ソーラシミュレータ1の一部を分解した斜視図である。
【0019】
ソーラシミュレータ1は筐体10内に、凹状反射面を有する反射板と、反射板の焦点と整合するように反射板に沿って配置された光源と、光源と被測定物との間に配置され反射板の光軸と平行な光を被測定物に誘導する導光部材とを含んで構成される。
【0020】
筐体10は、装置の基本骨格構造を形成するフレーム材に天板、側板、地板等のパネル材15でなる外装材が組み合わされて構成される。筐体10の内部空間には、導光部材40を載置する載置板11が、空間を上下に仕切るように水平状態にして設けられている。載置板11によって仕切られた下部空間は、被測定物としての太陽電池120が配置される被測定物配置部12を構成している。被測定物配置部12には、太陽電池120を載置するための載置台14が設けられている。また、載置台14の下面には、載置台14の載置面を水平状態に調整できるように上下方向に可動なアジャスタが設けられている。太陽電池120の出力特性を測定するときは、太陽電池120の照射面を上方向に向けて載置台14上に載置する。(ここで、太陽電池120とは太陽電池モジュールを含むものである。)
【0021】
一方、載置板11によって仕切られた上部空間は、上述した光源としてのキセノンランプ20と、反射板としての放物面鏡30と、導光部材40とが配置される光源配置部13を構成している。
【0022】
ここで図3を参照して、光源配置部13に配置される各構成について説明する。キセノンランプ20は光源ランプであり、擬似太陽光を発する光源として機能する。キセノンランプ20は、導光部材40の幅寸法(図1A、載置板11と平行な方向)よりも長い寸法を有する棒状に形成され、光源配置部13の略中央に配置されている。そして、キセノンランプ20からの光は、キセノンランプ20の長手中心軸20Aから側面視(図1B)で放射線状に照射される。また、キセノンランプ20からは正面視(図1A)等で、その長手中心軸20Aの軸線に対して直交する方向をはじめとして傾斜角度を持つ方向に照射される。
【0023】
なお、擬似太陽光として用いる光源は、キセノンランプ20以外のランプであってもよい。また、1つのキセノンランプ20を用いる場合に限られず、長手方向に中心軸を一致させるように複数のキセノンランプ20を配置するようにしてもよい。
【0024】
放物面鏡30は、キセノンランプ20から照射された光を反射させる。放物面鏡30はアルミニウム製の平板を用いて、断面放物線状に湾曲成形された反射面31を有する(図1B参照)。この反射面31はキセノンランプ20の上方にて、下方向に向けて凹となるように配置される。具体的にはキセノンランプ20と放物面鏡30とは、図1Bに示すように側面視で、反射面31の焦点Fとキセノンランプ20の長手中心軸20Aとが一致するような位置関係で配置される。なお、放物面鏡30(もしくは反射面31)の光軸30Aは、焦点Fを通る。キセノンランプ20と放物面鏡30とが、かかる位置関係を有することにより、キセノンランプ20から放射状に照射された光のうち、放物面鏡30に照射された光は反射面31によって反射され、後述するように光軸30Aに平行な平行光が形成される(図5参照)。
【0025】
ここで、キセノンランプ20と放物面鏡30とは、両者の適正な位置関係が保持できるように1つの照射ユニット37として構成されている。照射ユニット37は図3に示すように、キセノンランプ20と放物面鏡30と放物面鏡支持体32とランプブラケット21とを含んで構成される。
【0026】
このうち放物面鏡支持体32は更に、それぞれ複数からなるリブ33と支柱34と取付部材35とを含んで構成される。リブ33は平板状であり、その下側が放物面鏡30の反射面31と整合するように放物線状に形成されている。支柱34は、放物面鏡支持体32の剛性を保つために、複数のリブ33を並列した状態で固定している。取付部材35は、複数のリブ33の下側の両端部に固定されている。また、取付部材35は、放物面鏡30の端部を保持して、放物面鏡30を放物面鏡支持体32に取り付けることができる。
【0027】
ランプブラケット21は、ブラケット本体22とランプ取付部材23とを含んで構成される。ブラケット本体22は、例えば平板を折曲成形してなり、最外側に配置されるリブ33に固定される。ランプ取付部材23は、ブラケット本体22の下側に設けられ、キセノンランプ20の両側端部を保持することで、キセノンランプ20をランプブラケット21に対して取り付けることができる。
【0028】
照射ユニット37は、筐体10を構成する天板24の下面に固定されている。天板24の上面には複数の角柱状のフレーム部材25が固着されており、天板24の剛性が保たれるようになっている。このようにキセノンランプ20と放物面鏡30とを1つの照射ユニット37として構成することで、反射面31の焦点Fとキセノンランプ20の長手中心軸20Aとを正確に一致させ、且つそれらの適正な位置関係に維持することができる。
【0029】
次に、導光部材40は、キセノンランプ20から照射される光及び放物面鏡30の反射面31によって下方に反射された光のうち、太陽電池120の照射面121(上面)に対して直交する方向の光(放物面鏡30の光軸30Aに対する平行光)を誘導する。導光部材40はその全体形状を略直方体状とし、太陽電池120へ光を透過させる透過領域46の面積は太陽電池120の照射面121よりも広く形成されている。また、導光部材40には、太陽電池120の照射面121に対して直交する方向、即ち上下方向に開口する導光路が複数並設されている。なお、導光部材40の具体的な説明については後述するものとする。
【0030】
上記の場合、導光部材40の透過領域46の直上には、キセノンランプ20から照射される光を太陽光のスペクトルに擬似させるための平板状のエアマスフィルタ50が設けられている(図1A及び図1B参照)。また、エアマスフィルタ50の直上には、太陽電池120の照射面121の何れにも均一な光量になるように光量調整部材60が設けられている。
【0031】
また、上述したソーラシミュレータ1の構成要素又は構成部材は筐体10によって、外部から光が入り込まないように囲まれて組み立てられている。即ち、図2を参照して説明すると、ソーラシミュレータ1の側面は平板状のパネル材15によって閉塞されている。また、側面のうち対向する2つの側面には、その中央部に複数の扉16が開閉可能に取り付けられている。扉16が、下端部のヒンジ17を中心として回転して開放されることによって、光源配置部13に配置された導光部材40等のメンテナンスを簡単に行うことができる。また、下側の側面の1つには、扉18が着脱自在に取り付けられている。扉18を開放することによって、太陽電池120を簡単に載置台14に搬出入することができる。
【0032】
さて、図4を参照して上述した導光部材40についてより具体的に説明する。図4(A)は、導光部材40の一部を拡大して示した図である。導光部材40は、平面視で縦方向及び横方向に一定の間隔で多数の導光路41が並列して設けられている。この実施形態では薄隔板42を介して、グリッド状に列設された導光路41を有する。複数の導光路41は、導光部材40の透過領域46において全体に亘って満遍なく設けられている。
【0033】
この実施形態の導光部材40は、所定の間隔で相互に平行に複数配設された一方の薄隔板42と、これらの薄隔板42と交差、典型的には直交するように所定の間隔で相互に平行に複数配設された他方の薄隔板42とを組み合わせて結合してなるグリッド体43により構成されている。それぞれ複数の薄隔板42同士を直交させて組み合わせることで、格子状の導光路41が形成される。また、本実施形態の導光部材40は、高さ寸法Lとするグリッド体43を上下方向に2段重ね合わせることで高さ寸法2Lとなるように構成されている。また、2つのグリッド体43は、導光路41が完全に一致、即ち整合するように重ね合わされている。
【0034】
グリッド体43の角部には、2つのグリッド体43を上下に固定するための固定柱44が設けられている。固定柱44は、グリッド体43の端部に配置され相互に直交する薄隔板42によって形成される角部空間に設けられている。固定柱44は各グリッド体43の4つの角部において、対応する薄隔板42と面接触し、それぞれのグリッド体43自体及び上下のグリッド体43相互間を位置決め保持するようになっている。
【0035】
図4(A)では2つのグリッド体43を上下2段に重ね合わせることにより、導光部材40が構成される。このように2段重ねする場合の他、必要に応じて複数段重ねにすることも可能であり、段数に応じて導光路41の長さを容易に調整することができる。導光路41を長くしたい場合、例えば1段のグリッド体43のみでは剛性確保が必ずしも容易でない場合がある。このような場合、グリッド体43を複数段重ねることで、各グリッド体43の剛性が確保し易くなり、平行度の高い導光路41を構成することができる。
【0036】
ここで、グリッド体43の組立て方法の例について図4(B)を参照して説明する。グリッド体43は図4(B)に示すように、例えば材質をアルミニウムもしくはアルミニウム合金とする短冊状の薄隔板42A及び薄隔板42Bを所定数だけ組合わせ結合することによって構成される。各薄隔板42A及び薄隔板42Bは高さ寸法Lとし、一方の薄隔板42Aは実質的にグリッド体43の奥行き寸法(その一辺側長さ)と同寸法の長さを有する。また、図示のように薄隔板42Aの下側には深さ寸法L/2のスリット45が、長手方向に沿って所定ピッチ間隔で形成されている。他方の薄隔板42Bは実質的にグリッド体43の幅寸法(その他辺側長さ)と同寸法の長さを有する。また、薄隔板42Bの上側には深さ寸法L/2とするスリット45が、長手方向に沿って所定ピッチ間隔で形成されている。
【0037】
そして、薄隔板42A及び薄隔板42Bを直交させる態様で順次、それぞれの対応するスリット45同士が相互に係合するように結合させる。上述のように各スリット45は深さ寸法L/2を有し、薄隔板42A及び薄隔板42Bのスリット45を係合させることにより、両者の結合により高さ寸法Lとするグリッド体43が構成される。
【0038】
なお、グリッド体43を上下2段にして構成する場合について説明したが、1段であってもよく、2段以上であってもよい。
【0039】
ここで、薄隔板42の材質としてアルミニウムもしくはアルミニウム合金を使用することにより、グリッド体43の軽量化を図ると共にその自重による負荷を軽減することができる。また、スリット45等の加工を簡単に行うことができ、加工性にも優れている。なお、薄隔板42の材質はアルミニウム等に限られるものでなく、樹脂や金属等を使用してもよい。
【0040】
薄隔板42の表面の色、即ち導光路41の内側面の色は、導光路41の内側面に照射された光を吸収できる色、例えば黒色になっている。この場合、導光路41の内側面が既に黒色に着色されているような部材を用いるのであれば、着色する必要はないが、着色されていないアルミニウムの薄隔板42を用いるのであれば、例えば艶消しの黒色耐熱性塗料を塗ったり、吹き付けたりすればよい。
【0041】
被測定物配置部12には、太陽電池120を扉18から搬入して、載置台14に載置する。更にキセノンランプ20の光量を制御するために、図示しない制御装置からキセノンランプ20へ制御信号を送信するケーブルを接続すると共に、太陽電池の出力特性を測定するために、太陽電池120から制御装置へその出力値を送信するケーブルを接続する。かくして、ソーラシミュレータ1の設定を行うことで、太陽電池120の測定を行う準備が完了する。
【0042】
さて、本発明のソーラシミュレータ1は上記のように構成されており、次にその作用を説明する。図5を参照してキセノンランプ20から放射された光が、太陽電池120の照射面121に照射されるまでについて説明する。図5は、ソーラシミュレータ1の内部側面視を示しており、図中上部から順に放物面鏡30、キセノンランプ20、光量調整部材60、エアマスフィルタ50、導光部材40及び太陽電池120が配置されている。
【0043】
先ず、前述したように反射面31の焦点Fとキセノンランプ20の長手中心軸20Aとが一致する位置関係を有している。キセノンランプ20の長手中心軸20Aから放射状に照射された光のうち、放物面鏡30の反射面31に照射される光は、図5に示すように光軸30Aと平行になるように反射される。即ち、太陽電池120の照射面121に対して直交する下方向の平行な光に変換される。放物面鏡30によって反射された平行な光は、光量調整部材60及びエアマスフィルタ50を通った後、導光部材40の透過領域46において導光路41に導入される。ここで、導光部材40の導光路41は光軸30Aと平行に配置されており、太陽電池120の照射面121に対して直交する方向に開口している。従って、放物面鏡30によって反射された平行な光は、図5に示すように導光路41を通過して導光部材40の下側から出射される。
【0044】
一方、キセノンランプ20から放射された光のうち、放物面鏡30の反射面31に照射されずに所定の角度で直接導光部材40に照射される光は、実質的に光軸30Aに対して傾斜する、即ち太陽電池120の照射面121に対して直交しない光である。例えば、図5において光路もしくは光線26,27で示されるように、これらの光線26,27は光軸30A、即ち導光路41に対して傾斜し、且つ相互に平行とはならない。
【0045】
このようにキセノンランプ20から導光部材40に照射された光は、導光路41には導入されず、導光路41の内側面に対して傾斜して照射される。そして、導光路41の内側面は光吸収性を有するため、導光路41の内側面に照射された光は、そのまま吸収され、導光部材40の下側からは出射されない。なお、導光路41に対して傾斜する光にはキセノンランプ20の長手中心軸20Aに直交せず、これに対して所定の角度を有して、導光部材40に指向される光も含まれる。
【0046】
上述したように導光部材40を有することにより、導光路41を通過して導光部材40の下側から出射される平行光のみが、図5に示すように太陽電池120の照射面121に到達照射される。太陽電池120はその照射面121に対して平行光が照射されることで、これによる出力値を制御装置に送信する。制御装置は、送信された出力値の出力特性を記憶し、あるいはディスプレイ等に表示したりすることで、性能測定試験や加速劣化試験等を行うことができる。なお、実際に測定対象とする太陽電池120の出力特性を測定する前に、既に出力特性が明らかな基準太陽電池を用い、導光部材40から出射される光量が測定を行う規格に合致しているかの確認を行う。
【0047】
以上説明したように光源及び太陽電池間に導光部材40を配置し、その導光路41を通過した平行光のみが図5に示すように太陽電池120の照射面121に照射される。従って、光入射角に依存して出力特性が異なる太陽電池を測定対象とする場合でも、その太陽電池の照射面に平行光のみを照射させることができるので、精度のよい測定を行うことができ、測定精度を大幅に向上することができる。そして、これらの効果を実現するための必要以上の構成や設備を要しないので、実質的な装置コストの低減を図ることができる。
【0048】
なお、導光路41を通過させる平行光の精度を調整・設定することができる。例えば、光軸30Aに対して精度の高い平行光のみを太陽電池120の照射面121に照射させたい場合には導光路41の大きさ(光路断面積)、即ちグリッド体43を構成する薄隔板42の間隔を狭く設定すればよい。このように設定することで、その設定範囲外の光を排除して、照射されるべき平行光の精度を高めることができる。
【0049】
更に、導光路41の長さ(上下方向)を長くするように導光部材40を構成することでも、精度の高い平行光のみを太陽電池120の照射面121に照射させることができる。導光路41を長くすることで、平行光に近い角度の光が導光路41に導入されたとしても、例えば導光路41の下側から出射される前に導光路41の内側面で吸収されるようになる。従って、精度が高い平行光のみを導光部材40から太陽電池120の照射面121に照射させることができる。なお、導光路41を長くするには、薄隔板42の高さを高くしたり、上述したようにグリッド体43を複数重ねたりすればよい。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明によるソーラシミュレータの第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なる導光部材40について、図6を参照して説明する。図6は、第2の実施形態に係る導光部材40の構成を示す図である。図6に示すように導光部材40は、放物面鏡30(反射面31)の光軸30Aと平行となるように角柱パイプ70の側面同士を接着し、あるいは角柱パイプ70の端部を溶接等することで構成される。各角柱パイプ70内には光軸30Aと平行な導光路41が構成される。例えば、角柱パイプ70を既存のものを使用することで、導光部材40を簡単に構成することができる。
【0051】
第2の実施形態においても導光部材40を有することで、実質的に平行光のみが太陽電池120の照射面121に照射される。
なお、第2の実施形態では、角柱パイプ70についてのみ説明したが、この場合に限られない。導光部材40は、断面を多角形状とする複数の中空部材を接合することにより構成されていればよい。なお、角柱パイプ70の内周面は、内側面に照射された光を吸収できるような色、例えば黒色になっている。
【0052】
(第3の実施形態)
更に、本発明によるソーラシミュレータの第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態とは異なる導光部材40について、図7を参照して説明する。図7は、第3の実施形態に係る導光部材40の構成を示す図である。図7に示すように導光部材40は、放物面鏡30の反射面31の光軸30Aと平行な所謂ハニカム材80により構成されている。
【0053】
第3の実施形態においてもハニカム材80内部に導光路41が形成された導光部材40を有することで、実質的に平行光のみが太陽電池120の照射面121に照射される。
例えばハニカム材80を既存のものを使用することで、導光部材40を簡単に構成することができる。なお、ハニカム材80の内周面は、内側面に照射された光を吸収できるような色、例えば黒色になっている。
【0054】
なお、上述した実施形態では、放物面鏡30の反射面31を、放物面鏡30の長手方向に形成する場合(例えば言わば「八橋」状)について説明したが、この場合の他に例えば内周面を椀状に形成するように放物面鏡を構成してもよい。この場合、放物面鏡の内周面は、その焦点を通る全ての方向の(縦)断面が放物線状になるように形成する。また、この場合、ランプは点光源のようなランプ又はボール状のランプとなる。また、上述した実施形態では、導光部材40の導光路41を多角形状に形成する場合について説明したが、この場合に限らない。例えば、導光路41の形状を円形状にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1A】本発明におけるソーラシミュレータの内部構成を示す正面図である。
【図1B】本発明におけるソーラシミュレータの内部構成を示す側面図である。
【図1C】本発明におけるソーラシミュレータの内部構成を示す平面図である。
【図2】本発明におけるソーラシミュレータの外観を示す図である。
【図3】本発明におけるソーラシミュレータの一部を分解した斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る導光部材の一部を拡大して模式的に示した図である。
【図5】本発明におけるソーラシミュレータの光の照射状態を示す側面図である。
【図6】第2の実施形態に係る導光部材の構成を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係る導光部材の構成を示す図である。
【図8】従来のソーラシミュレータの構成を示す図である。
【図9】球状シリコン太陽電池の太陽電池モジュールの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ソーラシミュレータ
12 被測定物配置部
13 光源配置部
20 キセノンランプ(光源ランプ)
30 放物面鏡
40 導光部材
41 導光路
42 薄隔板
43 グリッド体
70 角柱パイプ
80 ハニカム材
120 太陽電池(被測定物)
121 照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に光を照射してその出力特性を測定するソーラシミュレータであって、
凹状反射面を有する反射板と、
前記反射板の焦点と整合するように配置された光源と、
前記光源と前記被測定物との間に配置され、前記反射板の光軸と平行な光を前記被測定物に誘導する導光部材とを有することを特徴とするソーラシミュレータ。
【請求項2】
前記反射板は放物面鏡として構成され、前記導光部材は薄隔板を介して、グリッド状に列設された前記反射板の光軸と平行な導光路を有することを特徴とする請求項1に記載のソーラシミュレータ。
【請求項3】
相互に平行配置された複数の前記薄隔板同士が、各々に形成されたスリットを介して交差するように結合することにより前記導光部材が構成されることを特徴とする請求項2に記載のソーラシミュレータ。
【請求項4】
複数の前記導光部材が、前記反射板の光軸の方向に多段構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のソーラシミュレータ。
【請求項5】
前記導光部材は、ハニカム状又は多角形状に形成された前記反射板の光軸と平行な導光路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のソーラシミュレータ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−103535(P2009−103535A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274352(P2007−274352)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】