説明

タイヤのエア充填時用安全カバー

【課題】コンパクトに折りたたむことができて収納や移動・運搬に便利であり、場所を選ばず、どこでも安全かつ簡便に使用することができるタイヤのエア充填時用の安全カバーの提供。
【解決手段】柔軟で強靱なシート材1からなる筒状体6の両端開口部に紐挿通部2,3が設けられ、各紐挿通部2,3に紐7,8がそれぞれ挿通されており、一方の紐挿通部2に挿通した紐7をループ状に絞ることによって一端開口部が小径に形成され、他方の紐挿通部3に挿通した紐8の端部は該紐挿通部3から露出しており、その露出端部の紐8をループ状に絞った際に、その姿勢をロックし並びにロック解除する紐固定具10が該紐8に取り付けられている構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤにエアを充填する際に使用する安全カバーに関するものである。ここで、タイヤとは、トラックやバス等の大型車両に使用されるタイヤの他、乗用車用のタイヤも包含される。
【背景技術】
【0002】
我が国では、労働安全衛生法の規定により、タイヤの空気充填作業を行う際には安全囲の使用が義務づけられている(労働安全衛生規則第328条の2)。したがって、新品タイヤへの空気充填を含め、殊に、修理後のタイヤにエアを充填する際、パンク後の走行によるタイヤ内部のスチール部分の破損や、パンク後の走行によるタイヤ側面部分の損傷によってバーストが発生することがあり、作業者に大きな危険を及ぼす。このため、タイヤを安全囲に収納した状態でエアを充填する必要がある。この安全囲として、例えば特許文献1や非特許文献1で開示されているような構造のものが知られている。
【0003】
このような従来提案されている安全囲は、いずれの場合もタイヤの周囲を強固な鉄格子のように枠材で取り囲むような立体構造体を形成し、タイヤをこの立体構造体の内部に収納してエアを充填するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−213020号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】実公平7−21363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の安全囲は、タイヤショップやガソリンスタンド、整備工場等の所定箇所に組み付けられるものであるから、作業場所が限定されると共に、設置場所として広いエリアを必要とするといった課題がある。加えて、タイヤの周囲を格子のような枠材で囲ったものであるから、タイヤがバーストしたときに小さな破片が囲いから飛び出して危険であるとともに、装置自体が大型の立体構造体であり、複雑で重く、アンカーボルト等で固定する必要があるため設置場所が決まってしまい、移動や運搬ができずコストも高くつくといった問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、コンパクトに折りたたむことができて収納に際し大きな空間を必要とせず、移動・運搬が容易で便利であり、場所を選ばず、どこでも安全かつ簡便に使用することができるタイヤのエア充填時用の安全カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明にかかるタイヤのエア充填時用安全カバーにあっては、柔軟で強靱なシート材からなる筒状体の両端開口部に紐挿通部が設けられ、各紐挿通部に紐がそれぞれ挿通されており、一方の紐挿通部に挿通した紐をループ状に絞ることによって一端開口部が小径に形成され、他方の紐挿通部に挿通した紐の端部は該紐挿通部から露出しており、その露出端部の紐をループ状に絞った際に、その姿勢をロックし並びにロックを解除する紐固定具が該紐に取り付けられている構造とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の安全カバーによれば、筒状体の大きく開いた開口部からタイヤを収納し、この開口部に設けた紐で開口部を小径に絞ると共に、絞った紐の両端部を紐固定具でロックすることにより、簡単な操作で容易にタイヤを安全カバーで覆うことができる。また、これにより、万一エア充填中にタイヤが破裂しても、破片が外部に飛散することを防止することができ、作業者の安全を確保することができる。さらに、安全カバーは帆布等の柔軟で丈夫なシート材で形成されているため、軽量で持ち運びに便利であり、エア充填設備のある場所またはエアポンプと共に運搬することで、どこでも使用することができると共に、不使用時にはコンパクトに折りたたんで場所をとらずに格納することできる。加えて、構造が極めて簡単であるから、製造コストが縮小できるといった種々の効果がある。
【0010】
(その他の課題を解決すべき手段及び効果)
本発明において、紐固定具を設けた側の紐の露出先端部に、紐を外部のフック等に引掛けるための引掛け部が設けられている構成としてもよい。
これにより、エア充填作業時に、引掛け部を建物の壁面や自動車等の重量機器に設けられている車両牽引フック等に引掛けて係止しておけば、バーストしたときにタイヤが飛ばされることを防止して安全性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるタイヤのエア充填時用安全カバーの形成前を示すシート材部分の斜視図。
【図2】本発明にかかるタイヤのエア充填時用安全カバーの形成後の状態を示す斜視図。
【図3】上記タイヤのエア充填時用安全カバーの使用過程を示す説明図であって、タイヤをカバーに収納した第1の段階を示す。
【図4】図3同様の使用過程を示す説明図であって、タイヤをカバーに収納した第2過程を示す。
【図5】本発明における紐固定具の一例を示す斜視図。
【図6】上記紐固定具の解除状態を示す断面図。
【図7】上記紐固定具のロック状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の詳細をその実施の形態を示す図面に基づいて詳細に説明する。本発明にかかるタイヤのエア充填時用安全カバーは、図1に示すように、帆布やドンゴロス等の柔軟で強靱な素材で長方形状に裁断されたシート材1を使用し、その長さ方向に沿った側縁部に紐挿通部2,3を設け、このシート材1を、前記紐挿通部2,3が開口端側に位置するように筒状に巻回し、丸められたシート材1の互いに当接する端縁部4,5を縫合その他の手段で接合することによって筒状体6が形成されている。
【0013】
このようにして形成された筒状体6の両端の開口部にある紐挿通部2,3にそれぞれ紐7,8が挿通されており、一方の紐挿通部2に挿通した紐7を絞ってループ状に連結することによって紐挿通部2がある開口部が、図2に示すように予め小径に絞られている。また、他方の開口部にある紐挿通部3に挿通した紐8の端部には、紐8をループ状に絞ったときにその姿勢をロックし、並びにロック解除する紐固定具10が取り付けられている。また、紐8のいずれか一方の先端部には、紐8を建物の壁面や自動車等の重量機器に設けられているフック等に引掛けるための引掛け部9が形成されている。
【0014】
なお、図面では、構造を明瞭にするため、筒状体6を立体的に表示したが、非使用時の通常形態は、筒状体6の素材が柔軟なシート材で形成されているものであるから、一般の布製袋のように平面的で平坦な形態となっている。
【0015】
本実施例において使用される上記した紐固定具10は、図5〜図7に示すように、並行に貫通する貫通孔11,12を備えたボディ13と、ボディ内部に設けられたカム14と、このカム14を回動させるためのレバー15とを備え、紐8の両端部分を貫通孔11,12に挿入貫通させて、前記レバー15を回動させることによりカム14の大径部分を紐8,8に圧迫させてロックする構造となっている。なお、レバー15は、ロック位置でレバーに設けた係合突起16がボディ13に設けた嵌合凹部17に弾力的に係合してロック姿勢を保持できるようになっている。従って、この紐固定具10によれば、ワンタッチで紐8の両端部をロックすることが可能となる。また、ロックを解除する場合は、レバー15の係合突起16を嵌合凹部17から外せばよい。なお、この紐固定具10は、金属製であっても樹脂製であってもよい。
【0016】
上記の如く構成されたタイヤのエア充填時用安全カバーを使用してタイヤ16にエアを充填する場合、図3に示すように、タイヤ16を、筒状体6の紐8がある大きく開いた開口部側から挿入したあと、図4に示すように、タイヤ16のホイールを除くゴム質の円周部分が隠れるように、紐8を絞って紐8のある開口部を小径にし、そのあと、絞った紐8の両端を紐固定具10でロックしてその姿勢を保持させる。これにより、両端開口部が小径に絞られたドーナツ形の袋状の筒状体6によって、タイヤ16の少なくともホイールを除く円周部分が被覆され、エア充填中にタイヤ16が万一バーストしても破片が飛散することを防止することができ、作業者の安全を確保することができる。また作業時に、紐8の先端に設けた引掛け部9を建物の壁面や自動車等の重量機器に設けられているフック等に係止させておけば、バーストしたときにタイヤが飛ばされることを防止して安全性をより高めることができる。
【0017】
上記タイヤのエア充填時用安全カバーの素材となるシート材は、タイヤがバーストしたときに、タイヤの爆圧によって破れない程度の強度を備えた布材やネット材が使用される。また、安全カバーの寸法は使用される車両タイヤの大きさによって変更される。例えば大型トラック用のタイヤでは、図1のシート材1の平面仕様において、長手方向の寸法が約3600mm、巾寸法が約900mmとなる。またこの場合、筒状体6の一端開口部を小径にするためのループ状の紐7の円周長さは約1300mmが好ましく、他方の紐8はその両端が紐挿通部3から露出する長さとするのがよい。
【0018】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施例の構造のみに特定されるものではない。例えば、本発明において使用される紐固定具は、紐8の両端を絞った状態でロックし、タイヤを挿入したり取り出すときにロックを解除できる機構のものであればどのようなものであってもよいが、好ましくは、ロック並びにロック解除操作がワンタッチでできるものがよい。また、筒状体6の一端開口部を小径にするためのループ状の紐7は、適度な弾力を備えたゴム紐で構成することも可能である。その他本発明はその目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正したり変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、エア充填時にタイヤにかぶせて使用される安全カバーとして適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 シート材
2 紐挿通部
3 紐挿通部
6 筒状体
7 紐
8 紐
9 引掛け部
10 紐固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟で強靱なシート材(1)からなる筒状体(6)の両端開口部に紐挿通部(2,3)が設けられ、各紐挿通部(2,3)に紐(7,8)がそれぞれ挿通されており、一方の紐挿通部(2)に挿通した紐(7)をループ状に絞ることによって一端開口部が小径に形成され、他方の紐挿通部(3)に挿通した紐(8)の端部は該紐挿通部(3)から露出しており、その露出端部の紐(8)をループ状に絞った際に、その姿勢をロックし並びにロック解除する紐固定具(10)が該紐(8)に取り付けられているタイヤのエア充填時用安全カバー。
【請求項2】
前記紐固定具(10)を設けた側の紐(8)の露出先端部に、紐(8)を外部のフック等に引掛けるための引掛け部(9)を設けた構成としてある請求項1に記載のタイヤのエア充填時用安全カバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247803(P2010−247803A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102432(P2009−102432)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(590003021)東洋精器工業株式会社 (5)