説明

タイヤの滑り止め装置

【課題】 タイヤの滑り止め装置において、滑り止め体の内幅を増減可能にして各種のタイヤに使用可能にする。
【解決手段】 滑り止め体は、タイヤに嵌合するU形状断面の構造にし、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの内側面に沿う内側部と、タイヤの外側面に沿う外側部を備え、数個の滑り止め体をタイヤにその外周側から嵌め込んでタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、滑り止め体の外側部を隣の滑り止め体の外側部に連結する構成にした滑り止め装置において、滑り止め体1は、外側部に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材16、18を設け、内側部に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材17、19を設け、外側と内側の両側又は片側の当て部材の滑り止め体幅方向位置を調整可能にして、外側の当て部材と内側の当て部材との間の滑り止め体幅方向の距離、内幅Wを増減可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤに装着する滑り止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に例示される滑り止め装置は、自動車のタイヤにその外周側からU形状断面の滑り止め体を嵌め込む。滑り止め体は、数個、例えば2〜4個をタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、隣同士を連結する。数個の滑り止め体は、輪になってタイヤの外周に嵌合し、タイヤに装着される。滑り止め装置をタイヤから取り外すときには、滑り止め体の隣同士を分離し、滑り止め体をタイヤから抜き取る。
【0003】
U形状断面の滑り止め体は、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの内側面に沿う内側部と、タイヤの外側面に沿う外側部を備えている。滑り止め体の外側部は、タイヤの周方向の両端にそれぞれ連結部材を取り付けている。連結部材には、連結具を取り付けている。タイヤの周方向に配列した滑り止め体を連結する際、滑り止め体の片側の連結部材を、隣の滑り止め体の片側の連結部材に連結具で分離可能に連結する。
【0004】
【特許文献1】特許第3557464号公報
【特許文献2】特許第3718779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[背景技術の課題]
上記のような滑り止め装置においては、U形状断面の滑り止め体は、内幅がタイヤの外幅に対して広すぎると、タイヤに対してずれ易くなる。滑り止め体の位置ずれによって滑り止め効果が低下することがある。逆に、滑り止め体は、内幅がタイヤの外幅に対して狭すぎると、タイヤに嵌め込み難くなる。
【0006】
ところが、自動車のタイヤは、種類が多く、外径や外幅の異なるものが多くある。タイヤは、外径が同一でも、外幅の異なるものがある。また、自動車は、走行路面の状態やタイヤの消耗によってタイヤを交換し、外径や外幅の異なるタイヤを使用することがある。
【0007】
従って、上記のような滑り止め装置においては、各種のタイヤに使用可能にするため、滑り止め体は、内幅が調整可能、増減可能であることが望まれる。
【0008】
[課題を解決するための着想]
上記のような滑り止め装置において、滑り止め体は、タイヤの外側面に当る当て部材と、タイヤの内側面に当る当て部材を設け、当て部材の滑り止め体幅方向位置を調整可能にして、外側の当て部材と内側の当て部材との間の滑り止め体幅方向距離、即ち、内幅を増減可能にすることにした。
【0009】
また、外側の当て部材と内側の当て部材は、タイヤの外側面と内側面における外周側よりも、内周側に当てることにした。自動車のタイヤは、断面形状が接地によって扁平に変形してその後に復元し、外径や外幅が周期的に変動する。タイヤの外幅の変動量は、リム側の内周側の方が外周側より少ない。滑り止め体は、外側と内側の当て部材がタイヤの外側面と内側面の内周側に当っていると、タイヤに対して緩くなってずれたり、きつくなって大きな力を受けたりし難くなる。
【0010】
また、外側の当て部材と内側の当て部材は、滑り止め体の幅方向に対面する真正面位置よりも、斜め正面位置に配置し、外側と内側の当て部材の間の距離を内幅よりも長くすることにした。タイヤは、内周と外周の間の中央部の外幅が内周側の外幅より広いものが多い。滑り止め体は、外側と内側の当て部材の間の距離が内幅よりも長いと、タイヤに着脱し易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1)滑り止め体は、自動車のタイヤに嵌合するU形状断面の構造にし、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの内側面に沿う内側部と、タイヤの外側面に沿う外側部を備え、数個の滑り止め体をタイヤにその外周側から嵌め込んでタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、各滑り止め体の外側部をそれぞれ隣の滑り止め体の外側部に連結する構成にした滑り止め装置において、
滑り止め体は、外側部に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材を設け、内側部に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材を設け、外側と内側の両側の当て部材又は片側の当て部材の滑り止め体幅方向位置を調整可能にして、外側の当て部材と内側の当て部材との間の滑り止め体幅方向の距離、内幅を増減可能にしたことを特徴とする。
2)上記の滑り止め装置において、
外側の当て部材は、タイヤの外側面の内周側に当る位置に配置し、
内側の当て部材は、タイヤの内側面の内周側に当る位置に配置したことを特徴とする。
3)上記のタイヤの滑り止め装置において、
外側の当て部材と内側の当て部材は、滑り止め体の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置し、外側の当て部材と内側の当て部材の間の距離を内幅よりも長くしたことを特徴とする。
4)上記の滑り止め装置において、
滑り止め体の外側部又は内側部には、軸部材を滑り止め体の幅方向に沿って取り付けて滑り止め体幅方向位置を変更可能にし、軸部材の端に外側又は内側の当て部材を取り付け、外側又は内側の当て部材の滑り止め体幅方向位置を調整可能にしたことを特徴とする。
5)上記1)〜3)の滑り止め装置において、
滑り止め体の外側部又は内側部には、軸部材を滑り止め体の幅方向に沿って取り付け、軸部材に外側又は内側の当て部材を滑り止め体幅方向位置調整可能に取り付けたことを特徴とする。
6)上記の滑り止め装置において、
当て部材は、タイヤの外側面又は内側面に当ると、その当った位置の面に沿って姿勢が傾き、タイヤの外側面又は内側面との接触面積が広くなる構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
タイヤの滑り止め装置においては、滑り止め体は、内幅が増減可能であり、各種のタイヤに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1例(図1〜図14参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、自動車のタイヤTに装着した状態を自動車の外側から視た正面を図1に、自動車の内側から視た背面を図2に示す。この滑り止め装置は、第1、第2、第3滑り止め体1a、1b、1cをタイヤTの周方向にほぼ等間隔に連結している。3個の滑り止め体1a〜1c、1は、同一構造である。第1滑り止め体1aについて説明する。
【0014】
第1滑り止め体1、1aは、タイヤTの上部に装着した時の姿態で図3と図4に拡大して示す。図3は、自動車の外側から視た正面である。図4は、上側から視た平面である。図5は、図3のA−A線断面拡大図である。第1滑り止め体1、1aは、図1に矢印で示す自動車前進時のタイヤTの正回転方向の前側(図1、図3と図4の左側)のU形状部材2と、同正回転方向の後側(図1、図3と図4の右側)のU形状部材3、及び、自動車の内側の線状部材4を備えている。
【0015】
前側と後側のU形状部材2、3は、それぞれ、2本にし、前後に配列している。合計4本のU形状部材2、3は、同一構造であり、鋼棒を湾曲して構成している。U形状部材2、3は、タイヤTの外周側に嵌合するU形状に形成し、タイヤTの接地面を横断する横断部2a、3a、タイヤTの外側面に沿う外側部2b、3bとタイヤTの内側面に沿う内側部2c、3cを有している。
【0016】
前側の前列と後列の2本のU形状部材2は、それぞれ、外側部2bの端を連結片5にピンで回転可能に取り付け、内側部2cの端を連結片6にピンで回転可能に取り付けている。連結片5、6は、前側の2本のU形状部材2を連結している。後側の前列と後列の2本のU形状部材3は、それぞれ、外側部3bの端を連結片7に、内側部3cの端を連結片8にピンで回転可能に取り付けている。連結片7、8は、後側の2本のU形状部材3を連結している。前側と後側のU形状部材2、3は、タイヤTに60度位の中心角をなして嵌合する。
【0017】
また、前側の前列のU形状部材2は、外側部2bの端に連結板11をピンで回転可能に取り付けている。連結板11は、前側に突出し、前側連結部材用にしている。前側の後列のU形状部材2は、内側部2cの端に連結板12をピンで回転可能に取り付けている。連結板12は、後側に突出し、内側線状部材用にしている。また、後側の後列のU形状部材3は、外側部3bの端に連結板13をピンで回転可能に取り付けている。連結板13は、後側に突出し、後側連結部材用にしている。後側の前列のU形状部材3は、内側部3cの端に連結板14をピンで回転可能に取り付けている。連結板14は、前側に突出し、内側線状部材用にしている。
【0018】
内側の線状部材4は、鎖にしている。この鎖4は、多数の板状リンクをピンで回転可能に繋いで紐状にしている。鎖4は、前端を前側の内側線状部材用の連結板12にピンで回転可能に取り付け、後端を後側の内側線状部材用の連結板14にピンで回転可能に取り付けている。内側の線状部材4は、内側線状部材用の連結板12、14を介して、前側の後列のU形状部材2の内側部2cと後側の前列のU形状部材3の内側部3cを連結している。
【0019】
即ち、滑り止め体1は、タイヤTに嵌合するU形状断面の構造にしている。U形状断面の滑り止め体1は、前側と後側のU形状部材2、3の横断部2a、3aで、タイヤTの接地面を横断する横断部を構成し、前側と後側のU形状部材2、3の外側部2b、3b、外側の連結板5、7と外側の連結板11、13で、タイヤTの外側面に沿う外側部を構成し、前側と後側のU形状部材2、3の内側部2c、3c、内側の線状部材4、内側の連結板6、8と内側の連結板12、14で、タイヤTの内側面に沿う内側部を構成している。また、滑り止め体1は、前側のU形状部材2、前側の連結板5、6と前側の連結板11、12で、前部を構成し、後側のU形状部材3、後側の連結板7、8と後側の連結板13、14で、後部を構成している。
【0020】
滑り止め体1の前部は、図3〜図5に示すように、前側連結部材用の連結板11に、タイヤTの外側面に当る外側の当て部材16を設け、内側線状部材用の連結板12に、タイヤTの内側面に当る内側の当て部材17を設けている。外側の当て部材16は、タイヤTの外側面の内周側に当る位置に配置している。内側の当て部材17は、タイヤTの内側面の内周側に当る位置に配置している。外側と内側の当て部材16、17は、それぞれ、円盤状に形成している。
【0021】
前側連結部材用の連結板11と内側線状部材用の連結板12には、それぞれ、取付孔51を滑り止め体1の幅方向に貫通している。取付孔51には、軸部材52を滑り止め体1の幅方向に貫通している。取付孔51は螺孔に、軸部材52は螺軸にしている。取付孔51と軸部材52は、螺合している。この軸部材52は、内端に当て部材16、17を固定して取り付け、外端面に六角穴53を形成し、外端側部分にロックナット54を螺合している。
【0022】
ロックナット54を緩め、六角穴53を利用して軸部材52を正回転又は逆回転すると、軸部材52と当て部材16、17が前進又は後退する。軸部材52は、滑り止め体1幅方向位置が変更される。当て部材16、17は、滑り止め体1幅方向位置が調整される。ロックナット54を締めると、軸部材52と当て部材16、17の滑り止め体1幅方向位置が固定される。
【0023】
外側と内側の当て部材16、17の間の滑り止め体1幅方向の距離、滑り止め体1の内幅Wは、増減可能にしている。螺孔の取付孔51、螺軸の軸部材52、六角穴53とロックナット54で内幅増減機構を構成している。滑り止め体1の前部は、その内幅WをタイヤTの外幅に合わせて調整することができる。
【0024】
更に、外側と内側の当て部材16、17は、滑り止め体1の幅方向に対面する真正面位置よりタイヤTの周方向の前後にずれていて、滑り止め体1の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置している。外側と内側の当て部材16、17の間の距離Lは、内幅Wよりも長くなっている。滑り止め体1の前部は、タイヤTに着脱し易い。
【0025】
滑り止め体1の後部も、同様に、後側連結部材用の連結板13に、タイヤTの外側面に当る外側の当て部材18を設け、内側線状部材用の連結板14に、タイヤTの内側面に当る内側の当て部材19を設けている。外側の当て部材18は、タイヤTの外側面の内周側に当る位置に配置している。内側の当て部材19は、タイヤTの内側面の内周側に当る位置に配置している。外側と内側の当て部材18、19は、それぞれ、円盤状に形成している。連結板13と連結板14には、それぞれ、内幅増減機構51〜54を設けている。外側と内側の当て部材18、19の間の滑り止め体1幅方向の距離、内幅Wは、増減可能にしている。滑り止め体1の後部は、その内幅WをタイヤTの外幅に合わせて調整することができる。
【0026】
また、外側と内側の当て部材18、19は、滑り止め体1の幅方向に対面する真正面位置よりタイヤTの周方向の前後にずれていて、滑り止め体1の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置している。外側と内側の当て部材18、19の間の距離Lは、内幅Wよりも長くなっている。滑り止め体1の後部は、タイヤTに着脱し易い。
【0027】
滑り止め体1は、図3に示すように、外側部のタイヤTの周方向の前端と後端にそれぞれ連結部材21、22を取り付けている。前側と後側の連結部材21、22は、それぞれ、鎖にしている。この鎖21、22は、多数の板状リンクをピンで回転可能に繋いで紐状にしている。前側の連結部材21は、後端のリンクを前側連結部材用の連結板11にピンで回転可能に取り付けている。後側の連結部材22は、前端のリンクを後側連結部材用の連結板13にピンで回転可能に取り付けている。
【0028】
前側と後側の連結部材21、22は、雌型と雄型の連結具を設けている。雌型の連結具は、前側の連結部材21の前端、自由端のリンクに第1連結孔23を貫通している。また、前側の連結部材21には、連結用のリンクをピンで回転可能に取り付け、連結用リンクに第2連結孔24を貫通している。第1連結孔23と第2連結孔24は、前側の連結部材21の後端からの距離が異なる。雄型の連結具は、後側の連結部材22の後端、自由端のリンクに連結ピン26を外側に突出して設けている。雌型と雄型の連結具は、第1、第2の連結孔23、24のいずれかに連結ピン26を差し込んで連結する。その際、連結ピン26を差し込む連結孔23、24を選択して、滑り止め体1の連結長さを増減する。
【0029】
第2、第3滑り止め体1b、1cを図1に示すようにタイヤTの下部に装着したときの前側と後側の連結部材21、22を図6〜図14に拡大して示す。図6〜図8は、連結部材21、22の連結具の連結状態を示す。図13と図14は、連結具の分離状態を示す。図9〜図12は、それぞれ、連結具の連結又は分離の途中状態を示す。
【0030】
連結具は、連結孔23、24と連結ピン26の抜け止め機構を設けている。抜け止め機構は、図6〜図8に示すように、後側連結部材22の自由端のリンク30のピン31を連結ピン26の突出方向、外側に延長している。ピン31の延長外側部分には、抜け止め用リンク32の一端の馬鹿孔と螺旋ばね33の中心孔を貫通し、螺旋ばね33を抜け止め用リンク32とピン31の大径延長端、大径外端の間に嵌め込んでいる。
【0031】
抜け止め用リンク32は、抜け止め時に、自由端の馬鹿孔34を連結孔23(又は24)付きリンクから突出した連結ピン26の端に貫通し、自由端を連結孔23(又は24)付きリンクに螺旋ばね33の弾性力で押し付けている。連結孔23(又は24)付きリンクは、連結ピン26に貫通した状態で連結ピン26付きリンク30と抜け止め用リンク32に挟まれている。連結孔23(又は24)と連結ピン26は、抜け止めされている。
【0032】
抜け止めを解除する時には、抜け止め用リンク32は、図11に示すように、馬鹿孔34付き自由端を螺旋ばね33に抗して起こし、連結ピン26から抜き出す。次に、抜け止め用リンク32は、図12に示すように、馬鹿孔34付き自由端をピン31の周りに回転して、連結孔23(又は24)付きリンクと重なる位置から後退させる。すると、連結孔23(又は24)付きリンクは、連結ピン26の突出方向に移動可能となり、連結ピン26が連結孔23(又は24)から抜き出し可能になる。
【0033】
抜け止め機構31〜34付き連結具23、24、26は、連結状態に施錠する錠機構を設けている。錠機構は、図6〜図8に示すように、鋼板を折り曲げて可動部材36を構成している。可動部材36は、中央の長孔付き平板部37をピン31の延長外側部分に貫通して抜け止め用リンク32と螺旋ばね33の間に挟んでいる。そして、可動部材36は、一端の溝形断面形状の拘束部38をタイヤTの中心と反対側に、他端の引掛け孔付き引張部39をタイヤTの中心側に配置している。この可動部材36は、タイヤTの径方向、連結部材21、22の横断方向に移動可能にしている。
【0034】
雌型と雄型の連結具を連結して抜け止めした連結状態で、その連結状態に施錠するときには、可動部材36をタイヤTの中心側に移動させる。すると、可動部材36は、図6〜図8に示すように、拘束部38の溝が連結ピン26付きリンク30と抜け止め用リンク32に嵌まり、抜け止め用リンク32の馬鹿孔34付き自由端が起き上がり不可能になる。可動部材36が施錠位置になって、連結状態が維持される。
【0035】
逆に、解錠するときには、可動部材36をタイヤTの中心と反対側に移動させる。すると、可動部材36は、図9と図10に示すように、拘束部38の溝が連結ピン26付きリンク30と抜け止め用リンク32から抜け出し、抜け止め用リンク32の馬鹿孔34付き自由端が起き上がり可能になる。可動部材36が解錠位置になる。
【0036】
タイヤTの全周に配列して輪にした滑り止め体1a〜1cに取り付ける引張具を設けている。引張具は、図1に示すように、滑り止め体1a〜1cと同数の螺旋ばね41を放射状に結合し、3本の同長の螺旋ばね41の端をそれぞれフック状の引掛け部42にしている。この引張具41、42は、滑り止め体1a〜1cに取り付けるときに、各フック状引掛け部42をそれぞれ錠機構の引掛け孔付き引張部39に引っ掛け、3本の螺旋ばね41をタイヤTの中心位置から3個の錠機構36〜39に向けて放射状に伸ばす。
【0037】
滑り止め体1a〜1cに引張具41、42を取り付けると、各錠機構の可動部材36は、引張具41、42の弾性力でタイヤTの中心側に引っ張られ、施錠位置に維持される。また、同時に、前側と後側の連結部材21、22の中央位置は、引張具41、42の弾性力でタイヤTの中心側に引っ張られる。連結具23、24、26で連結した前側と後側の連結部材21、22は、緊張する。すると、輪に連結した滑り止め体1a〜1cは、輪が縮小する力を受け、タイヤTの外周に押し付けられる。
【0038】
また、同時に、各滑り止め体1a〜1cは、前部の外側部の連結板11が前側の連結部材21で前側に引っ張られる。すると、滑り止め体1の前部は、外側部が内側部より前側にずれて横断部2aがタイヤTの軸心方向から傾いたねじれ姿勢になろうとする。しかし、滑り止め体1の前部においては、外側部の連結板11に設けた外側の当て部材16がタイヤTの外側面に当ると共に、内側部の連結板12に設けた内側の当て部材17がタイヤTの内側面に当り、ねじれを防ごうとする。滑り止め体1の前部は、外側部が前側の連結部材21で前側に引っ張られても、ねじれ姿勢になり難い。なお、滑り止め体1の前部は、内側部が内側の線状部材4で後側に引っ張られても、同様に、ねじれ姿勢になり難い。横断部2aがタイヤTの軸心方向から傾いていると、滑り止め効果が低下する。
【0039】
更に、同時に、各滑り止め体1a〜1cは、後部の外側部の連結板13が後側の連結部材22で後側に引っ張られる。すると、滑り止め体1の後部は、外側部が内側部より後側にずれて横断部3aがタイヤTの軸心方向から傾いたねじれ姿勢になろうとする。しかし、滑り止め体1の後部においては、外側部の連結板13に設けた外側の当て部材18がタイヤTの外側面に当ると共に、内側部の連結板14に設けた内側の当て部材19がタイヤTの内側面に当り、ねじれを防ごうとする。滑り止め体1の後部は、外側部が後側の連結部材22で後側に引っ張られても、ねじれ姿勢になり難い。なお、滑り止め体1の後部は、内側部が内側の線状部材4で前側に引っ張られても、同様に、ねじれ姿勢になり難い。
【0040】
滑り止め装置をタイヤTに装着するときには、滑り止め体1a〜1cをタイヤTの外周側に嵌め込んでタイヤTの全周にほぼ等間隔に配列し、滑り止め体の後側の連結部材22を後隣の滑り止め体の前側の連結部材21に連結具で連結して抜け止めする。錠機構36〜39は、可動部材36を施錠位置に移動し、施錠する。滑り止め体1a〜1cを輪にした後、引張具は、各引掛け部42をそれぞれ錠機構の引張部39に引っ掛ける。すると、各錠機構36〜39は、可動部材36が施錠位置に維持される。また、滑り止め体1a〜1cは、横断部2a、3aがタイヤTの外周に押し付けられ、外側の当て部材16、18がタイヤTの外側面の内周側に、内側の当て部材17、19がタイヤTの内側面の内周側に押し付けられる。各滑り止め体1a〜1cは、タイヤTに安定して嵌合している。
【0041】
滑り止め装置をタイヤTから取り外すときには、引張具の各引掛け部42をそれぞれ錠機構の引張部39から外す。引張具41、42の取り外し後、各錠機構は、可動部材36を解錠位置に移動させる。解錠後、各連結具は、抜け止めを解除し、分離する。前側と後側の連結部材21、22の分離後、滑り止め体1a〜1cは、タイヤTから抜き取る。
【0042】
[第2例(図15、図16参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置においては、滑り止め体1、1a〜1cの前側のU形状部材2と後側のU形状部材3は、第1例における2本から1本に変更している。
【0043】
前側のU形状部材は、図15と図16に示すように、1本のU形状部材2にし、第1例における前側U形状部材用の連結板5、6をなくしている。後側のU形状部材は、1本のU形状部材3にし、第1例における後側U形状部材用の連結板7、8をなくしている。その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0044】
[第3例(図17参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置においては、当て部材は、第1例における姿勢不変構造16〜19から姿勢可変構造に変更している。姿勢可変構造の当て部材は、タイヤTの外側面又は内側面に当ると、その当った位置の面に沿って姿勢が傾き、タイヤの外側面又は内側面との接触面積が広くなる。当て部材とタイヤとの面圧力が低くなる。
【0045】
外側と内側の当て部材61、62は、それぞれ、図17に示すように、椀状に形成し、開口周縁をタイヤTの外側面、内側面に当てる側にし、その反対側の中心部に中心孔を貫通している。
【0046】
滑り止め体1の前部は、前側連結部材用の連結板11と内側線状部材用の連結板12に、それぞれ、取付孔66を滑り止め体1の幅方向に貫通している。取付孔66は、螺孔ではない。取付孔66には、軸部材67を滑り止め体1の幅方向に貫通している。軸部材67は、取付孔66に緩く嵌合し、連結板11、12に滑り止め体1の幅方向に移動可能に取り付けている。
【0047】
軸部材67は、連結板11、12の内側に突出した内端を大径部にしている。軸部材67の大径部と連結板11、12の間には、当て部材61、62と座金68を貫通している。当て部材61、62は、中心孔を軸部材67に緩く嵌合し、軸部材67に沿って移動可能にし、軸部材67に対してどの向きにも傾斜可能にしている。座金68は、当て部材61、62と連結板11、12の間に挟んでいる。この座金68は、厚さや枚数を変更して、当て部材61、62の滑り止め体1幅方向位置を調整する。即ち、当て部材61、62は、軸部材67に滑り止め体1幅方向位置を調整可能に、かつ、どの向きにも傾斜可能に取り付けている。
【0048】
また、軸部材67は、外端側部分を螺軸部にしている。この螺軸部には、座金69を貫通し、ダブルナットのロックナット70を螺合している。座金69は、連結板11、12とロックナット70の間に挟んでいる。この座金69は厚さや枚数を変更して、また、ロックナット70は固定位置を変更して、軸部材67の内側への最大突出量、当て部材61、62の内側への最大移動量を調整する。
【0049】
外側と内側の当て部材61、62の間の滑り止め体1幅方向の距離、滑り止め体1の内幅Wは、増減可能にしている。取付孔66、軸部材67、座金68、座金69とロックナット70で内幅増減機構を構成している。滑り止め体1の前部は、その内幅WをタイヤTの外幅に合わせて調整することができる。
【0050】
なお、軸部材67の大径部と当て部材61、62の間には、円錐筒形状の螺旋ばね71を嵌め込んでいる。螺旋ばね71は、当て部材61、62がタイヤTの側面に当っていないときに、当て部材61、62を後退させて傾きのない姿勢に弱く保持している。すると、滑り止め体1a〜1cをタイヤTに嵌め込み易くなる。
【0051】
滑り止め体1の後部も、同様に、後側連結部材用の連結板13に姿勢可変構造の外側の当て部材と内幅増減機構66〜70を設け、内側線状部材用の連結板14に姿勢可変構造の内側の当て部材と内幅増減機構66〜70を設けている。外側と内側の当て部材の間の滑り止め体1幅方向の距離、内幅Wは、増減可能にしている。滑り止め体1の後部は、その内幅WをタイヤTの外幅に合わせて調整することができる。
その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0052】
[変形例]
1)上記の実施形態において、内側の当て部材17、19、62は、滑り止め体1の幅方向位置を調整可能にしているが、その位置を固定する。外側の当て部材16、18、61のみを滑り止め体1の幅方向位置調整可能にする。又は、逆に、内側の当て部材17、19、62のみを滑り止め体1の幅方向位置調整可能にする。
2)上記の実施形態において、当て部材16〜19、61、62は、円盤状、椀状にしているが、角板状、棒状又はその他の形状にする。
3)上記の実施形態において、内幅増減機構51〜54、66〜70は、ねじ、座金を用いた機構にしているが、その他の機構にする。
4)上記の実施形態において、滑り止め体1、1a〜1cは、前後のU形状部材2、3を連結する部材が内側の線状部材4のみであるが、内側の線状部材4と外側の線状部材にする。外側の線状部材は、前側のU形状部材2と後側のU形状部材3の外側部同士を連結する。外側の線状部材は、例えば、内側の線状部材4と同様に、鎖の構成にする。
5)上記の実施形態において、滑り止め体1は、3個にしているが、2個又は4個にする。
6)上記の実施形態において、引張具は、螺旋ばね41を用いているが、ゴム紐又はその他の弾性紐を用いる。
7)上記の実施形態において、引張具は、数本の弾性紐41を放射状に結合した構成にしているが、弾性紐を輪にした構成にする。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のタイヤの滑り止め装置は、大型の貨物自動車や小型の乗用自動車などの各種の自動車に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態の第1例における滑り止め装置のタイヤ装着状態の正面図。
【図2】同装置のタイヤ装着状態の背面図。
【図3】図1中の第1滑り止め体の拡大正面図。
【図4】図1中の第1滑り止め体の拡大平面図
【図5】図3のA−A線断面拡大図。
【図6】図1中の第2滑り止め体の後側連結部材と第3滑り止め体の前側連結部材の連結施錠状態を示す拡大正面図。
【図7】図6のB−B線断面拡大図。
【図8】同連結施錠状態を示す拡大平面図。
【図9】同後側連結部材と同前側連結部材の連結解錠状態を示す拡大正面図。
【図10】図9のC−C線断面拡大図。
【図11】同後側連結部材と同前側連結部材の連結又は分離の途中状態を示す拡大平面図。
【図12】同後側連結部材と同前側連結部材の連結又は分離の途中状態を示す拡大正面図。
【図13】同後側連結部材と同前側連結部材の分離状態を示す拡大正面図。
【図14】同後側連結部材と同前側連結部材の分離状態を示す拡大平面図。
【図15】実施形態の第2例における滑り止め装置のタイヤ装着状態の正面図。
【図16】同装置のタイヤ装着状態の背面図。
【図17】第3例における滑り止め装置の当て部材部分を示す図で、図5と同様な断面図。
【符号の説明】
【0055】
T 自動車のタイヤ
1、1a〜1c 滑り止め体
1a 第1滑り止め体
1b 第2滑り止め体
1c 第3滑り止め体
2 前側のU形状部材
2a 横断部
2b 外側部
2c 内側部
3 後側のU形状部材
3a 横断部
3b 外側部
3c 内側部
4 内側の線状部材、鎖
5 前側U形状部材用の外側の連結板
6 前側U形状部材用の内側の連結板
7 後側U形状部材用の外側の連結板
8 後側U形状部材用の内側の連結板
11 前側連結部材用の連結板
12 内側線状部材用の連結板
13 後側連結部材用の連結板
14 内側線状部材用の連結板
2a、3a 滑り止め体の横断部
2b、3b、5、7、11、13 滑り止め体の外側部
2c、3c、4、6、8、12、14 滑り止め体の内側部
2、5、6、11、12 滑り止め体の前部
3、7、8、13、14 滑り止め体の後部
16 前側の外側の当て部材、姿勢不変構造
17 前側の内側の当て部材、姿勢不変構造
18 後側の外側の当て部材、姿勢不変構造
19 後側の外側の当て部材、姿勢不変構造
21 前側の連結部材
22 後側の連結部材
23 第1連結孔
24 第2連結孔
26 連結ピン
23、24、26 連結具
30 連結ピン付きリンク
31 ピン
32 抜け止め用リンク
33 螺旋ばね
34 抜け止め用リンクの馬鹿孔
31、32、33、34 抜け止め機構
36 可動部材
37 長孔付き平板部
38 溝形断面形状の拘束部
39 引掛け孔付き引張部
36、37、38、39 錠機構
41 螺旋ばね
42 フック状引掛け部
41、42 引張具
51 取付孔、螺孔
52 軸部材、螺軸
53 六角穴
54 ロックナット
51、52、53、54 内幅増減機構
61 前側の外側の当て部材、姿勢可変構造
62 前側の内側の当て部材、姿勢可変構造
66 取付孔
67 軸部材
68 座金
69 座金
70 ダブルナットのロックナット
66、67、68、69、70 内幅増減機構
71 螺旋ばね
W 外側と内側の当て部材の間の滑り止め体幅方向の距離、滑り止め体の内幅
L 外側と内側の当て部材の間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑り止め体は、自動車のタイヤに嵌合するU形状断面の構造にし、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの内側面に沿う内側部と、タイヤの外側面に沿う外側部を備え、数個の滑り止め体をタイヤにその外周側から嵌め込んでタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、各滑り止め体の外側部をそれぞれ隣の滑り止め体の外側部に連結する構成にした滑り止め装置において、
滑り止め体は、外側部に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材を設け、内側部に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材を設け、外側と内側の両側の当て部材又は片側の当て部材の滑り止め体幅方向位置を調整可能にして、外側の当て部材と内側の当て部材との間の滑り止め体幅方向の距離、内幅を増減可能にしたことを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
【請求項2】
外側の当て部材は、タイヤの外側面の内周側に当る位置に配置し、
内側の当て部材は、タイヤの内側面の内周側に当る位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項3】
外側の当て部材と内側の当て部材は、滑り止め体の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置し、外側の当て部材と内側の当て部材の間の距離を内幅よりも長くしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項4】
滑り止め体の外側部又は内側部には、軸部材を滑り止め体の幅方向に沿って取り付けて滑り止め体幅方向位置を変更可能にし、軸部材の端に外側又は内側の当て部材を取り付け、外側又は内側の当て部材の滑り止め体幅方向位置を調整可能にしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項5】
滑り止め体の外側部又は内側部には、軸部材を滑り止め体の幅方向に沿って取り付け、軸部材に外側又は内側の当て部材を滑り止め体幅方向位置調整可能に取り付けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項6】
当て部材は、タイヤの外側面又は内側面に当ると、その当った位置の面に沿って姿勢が傾き、タイヤの外側面又は内側面との接触面積が広くなる構成にしたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタイヤの滑り止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−308149(P2008−308149A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305277(P2007−305277)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(599038433)