説明

タイヤの滑り止め装置

【課題】 自動車のタイヤ下部が接地で扁平に変形したときにも、滑り止め体をタイヤに当て部材で支持する。
【解決手段】 U形状断面の滑り止め体をタイヤに嵌め込んでタイヤの全周に配列する滑り止め装置において、滑り止め体1は、前側と後側のU形状部材2、3、内側の線状部材4を備え、両U形状部材は、内側部を内側の線状部材で連結し、外側部に前側と後側の連結部材21、22を取り付け、滑り止め体の後側の連結部材を、後隣の滑り止め体の前側の連結部材に連結する構成にし、U形状部材の外側部と連結部材の間に連結板11、13を介在し、この連結板に外側の当て部材16、18を設け、U形状部材の内側部と内側の線状部材の間に連結板12、14を介在し、この連結板に内側の当て部材17、19を設け、連結板のタイヤ内周側への回転を規制する部材61を設け、当て部材のタイヤ内周側への移動を制限した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤに装着する滑り止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に例示される滑り止め装置は、自動車のタイヤにその外周側からU形状断面の滑り止め体を嵌め込む。滑り止め体は、数個、例えば2〜4個をタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、隣同士を連結する。数個の滑り止め体は、輪になってタイヤの外周に嵌合し、タイヤに装着される。滑り止め装置をタイヤから取り外すときには、滑り止め体の隣同士を分離し、滑り止め体をタイヤから抜き取る。
【0003】
U形状断面の滑り止め体は、自動車前進時のタイヤ回転方向の前側のU形状部材と後側のU形状部材、及び、タイヤの内側面に沿う内側の線状部材を備えている。前側と後側のU形状部材は、U形状に湾曲した棒にし、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの外側面に沿う外側部とタイヤの内側面に沿う内側部を有する。内側の線状部材は、鎖にし、前側のU形状部材と後側のU形状部材の内側部同士を連結している。
【0004】
滑り止め体の外側部は、タイヤの周方向の前端と後端にそれぞれ連結部材を取り付けている。連結部材は、鎖にし、連結具を取り付けている。タイヤの周方向に配列した滑り止め体を連結する際、滑り止め体の後側の連結部材を、後隣の滑り止め体の前側の連結部材に連結具で分離可能に連結する。
【0005】
【特許文献1】特許第3557464号公報
【特許文献2】特許第3718779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[背景技術の課題]
上記のような滑り止め装置において、U形状断面の滑り止め体は、自動車のタイヤの所定位置に安定に支持するため、タイヤの外側面に当る当て部材と、タイヤの内側面に当る当て部材を設けることが発明された。
【0007】
外側の当て部材と内側の当て部材は、タイヤの外側面、内側面における外周側よりも、内周側に当てる。タイヤは、断面形状が接地によって扁平に変形して接地後に復元し、外径や幅が周期的に変動する。その変動量は、リム側の内周側の方が外周側より少ない。
【0008】
外側の当て部材と内側の当て部材は、滑り止め体の前部と後部にそれぞれ設ける。具体的には、外側の当て部材は、前側のU形状部材の外側部と前側の連結部材の間に介在した連結板に設け、また、後側のU形状部材の外側部と後側の連結部材の間に介在した連結板に設ける。内側の当て部材は、前側のU形状部材の内側部と内側の線状部材の間に介在した連結板に設け、また、後側のU形状部材の内側部と内側の線状部材の間に介在した連結板に設ける。滑り止め体の前部と後部において、それぞれ、外側の当て部材と内側の当て部材は、滑り止め体の幅方向に対面する真正面位置よりも、斜め正面位置に配置し、外側と内側の当て部材の間の距離を長くする。タイヤは、内周側より内周と外周の間の中央部の方が広幅になっている。滑り止め体は、外側と内側の当て部材の間の距離が長いと、タイヤに着脱し易くなる。
【0009】
タイヤの下部が接地によって扁平に変形したときには、タイヤの下部に嵌合している滑り止め体は、タイヤの中心側にずれ、外側と内側の当て部材は、タイヤの内周側にずれる。外側と内側の当て部材が当るタイヤの外側面、内側面の新しい位置では、当て部材のタイヤ内周側へのずれによってタイヤ幅が減少するが、タイヤの扁平変形によってタイヤ幅が増加し、タイヤ幅の変動が非常に少ない。
【0010】
ところが、タイヤ下部の滑り止め体がタイヤの中心側にずれると、その隣の滑り止め体との間の距離が縮小し、その隣の滑り止め体との間に張り渡した連結部材と連結板が緩む。また、タイヤ下部の滑り止め体において、前側のU形状部材と後側のU形状部材との間の距離が縮小し、それらの間に張り渡した内側の線状部材と連結板が緩む。U形状部材に回転可能に取り付けた連結板は、連結部材、線状部材の緊張による拘束が緩み、拘束が緩んだ範囲で回転自在になる。
【0011】
すると、連結板がタイヤの内周側に回転することがある。そのように回転すると、連結板に取り付けた当て部材がタイヤの内周側に移動する。外側と内側の当て部材が当るタイヤの外側面、内側面の更に新しい位置では、タイヤ幅が更に減少する。すると、当て部材は、タイヤの外側面又は内側面との間に隙間が生じ、滑り止め体ないしU形状部材を所定位置に支持し難くなる。
【0012】
逆に、連結板がタイヤの外周側に回転することがある。そのように回転すると、連結板に取り付けた当て部材がタイヤの外周側に移動する。外側と内側の当て部材が当るタイヤの外側面、内側面の更に新しい位置では、タイヤ幅の変動量が多い。当て部材は、タイヤから大きな力を受ける。
【0013】
[課題を解決するための着想]
上記のような滑り止め装置の滑り止め体において、U形状部材に回転可能に取り付けた当て部材付の連結板は、連結部材、線状部材の緊張が緩んでも、タイヤの内周側に回転し難い構成にすることにした。当て部材をタイヤの内周側に移動し難くする。当て部材付の連結板のタイヤ内周側への回転を規制する部材を設けることにした。
【0014】
また、当て部材付の連結板は、タイヤの外周側に回転し難い構成にすることにした。当て部材をタイヤの外周側に移動し難くする。当て部材付の連結板のタイヤ外周側への回転を規制する部材を設けることにした。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1)数個のU形状断面の滑り止め体を自動車のタイヤに嵌め込んでタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、各滑り止め体の外側部をそれぞれ隣の滑り止め体の外側部に連結する構成にした滑り止め装置において、
滑り止め体は、自動車前進時のタイヤ回転方向の前側のU形状部材と後側のU形状部材、及び、タイヤの内側面に沿う内側の線状部材を備え、
前側のU形状部材と後側のU形状部材は、内側部同士を内側の線状部材で連結し、外側部に前側と後側の連結部材を取り付け、タイヤの周方向に配列した滑り止め体を連結する際、滑り止め体の後側の連結部材を、後隣の滑り止め体の前側の連結部材に連結する構成にし、
前側又は後側のU形状部材の外側部と前側又は後側の連結部材の間に連結板を介在し、この外側の連結板に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材を設け、
前側又は後側のU形状部材の内側部と内側の線状部材の間に連結板を介在し、この内側の連結板に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材を設け、
外側の連結板のタイヤ内周側への回転を規制する部材を設け、外側の当て部材のタイヤ内周側への移動を制限する構成にし、
内側の連結板のタイヤ内周側への回転を規制する部材を設け、内側の当て部材のタイヤ内周側への移動を制限する構成にしたことを特徴とする。
2)上記の滑り止め装置において、
外側の連結板のタイヤ外周側への回転を規制する部材を設け、外側の当て部材のタイヤ外周側への移動を制限する構成にし、
内側の連結板のタイヤ外周側への回転を規制する部材を設け、内側の当て部材のタイヤ外周側への移動を制限する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
タイヤの下部が接地によって扁平に変形したときにも、滑り止め体は、当て部材でタイヤに支持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1例(図1〜図7参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、自動車のタイヤTに装着した状態を自動車の外側から視た正面を図1に、自動車の内側から視た背面を図2に示す。この滑り止め装置は、第1、第2、第3滑り止め体1a、1b、1cをタイヤTの周方向にほぼ等間隔に連結している。3個の滑り止め体1a〜1c、1は、同一構造である。第1滑り止め体1aについて説明する。
【0018】
第1滑り止め体1、1aは、タイヤTの上部に装着した時の姿態で図3と図4に拡大して示す。図3は、自動車の外側から視た正面である。図4は、上側から視た平面である。図5は、図3のA−A線断面拡大図である。図6は、図3の左半分を拡大して一部破断した図である。第1滑り止め体1、1aは、図1に矢印で示す自動車前進時のタイヤTの正回転方向の前側(図1、図3と図4の左側)のU形状部材2と、同正回転方向の後側(図1、図3と図4の右側)のU形状部材3、及び、自動車の内側の線状部材4を備えている。
【0019】
前側と後側のU形状部材2、3は、それぞれ、2本にし、前後に配列している。4本のU形状部材2、3は、同一構造であり、鋼棒を湾曲して構成している。U形状部材2、3は、タイヤTの外周側に嵌合するU形状に形成し、タイヤTの接地面を横断する横断部2a、3a、タイヤTの外側面に沿う外側部2b、3bとタイヤTの内側面に沿う内側部2c、3cを有している。
【0020】
前側の前列と後列の2本のU形状部材2は、それぞれ、外側部2bの端を連結片5にピンで回転可能に取り付け、内側部2cの端を連結片6にピンで回転可能に取り付けている。前側U形状部材用の連結片5、6は、前側の2本のU形状部材2を連結している。後側の前列と後列の2本のU形状部材3は、それぞれ、外側部3bの端を連結片7に、内側部3cの端を連結片8にピンで回転可能に取り付けている。後側U形状部材用の連結片7、8は、後側の2本のU形状部材3を連結している。前側と後側のU形状部材2、3は、タイヤTに60度位の中心角をなして嵌合する。
【0021】
また、前側の前列のU形状部材2は、外側部2bの端に連結板11をピンで回転可能に取り付け、前側連結部材用の連結板11を前側に突出している。また、前側の後列のU形状部材2は、内側部2cの端に連結板12をピンで回転可能に取り付け、内側線状部材用の連結板12を後側に突出している。
後側の後列のU形状部材3は、外側部3bの端に連結板13をピンで回転可能に取り付け、後側連結部材用の連結板13を後側に突出している。また、後側の前列のU形状部材3は、内側部3cの端に連結板14をピンで回転可能に取り付け、内側線状部材用の連結板14を前側に突出している。
【0022】
内側の線状部材4は、多数の板状リンクをピンで回転可能に繋いで紐状にした鎖である。この鎖4は、前端を前側の内側線状部材用の連結板12にピンで回転可能に取り付け、後端を後側の内側線状部材用の連結板14にピンで回転可能に取り付けている。内側の線状部材4は、内側線状部材用の連結板12、14を介して、前側のU形状部材2の内側部2cと後側のU形状部材3の内側部3cを連結している。
【0023】
即ち、滑り止め体1は、タイヤTに嵌合するU形状断面の構造にしている。U形状断面の滑り止め体1は、前側と後側のU形状部材2、3の横断部2a、3aで、タイヤTの接地面を横断する横断部を構成し、前側と後側のU形状部材2、3の外側部2b、3b、外側の連結片5、7と外側の連結板11、13で、タイヤTの外側面に沿う外側部を構成し、前側と後側のU形状部材2、3の内側部2c、3c、内側の連結片6、8、内側の線状部材4と内側の連結板12、14で、タイヤTの内側面に沿う内側部を構成している。また、滑り止め体1は、前側のU形状部材2、前側の連結片5、6と前側の連結板11、12で、前部を構成し、後側のU形状部材3、後側の連結片7、8と後側の連結板13、14で、後部を構成している。
【0024】
滑り止め体1の前部は、図3〜図5に示すように、前側連結部材用の連結板11に、タイヤTの外側面に当る外側の当て部材16を設け、内側線状部材用の連結板12に、タイヤTの内側面に当る内側の当て部材17を設けている。外側と内側の当て部材16、17は、それぞれ、円盤状に形成し、タイヤTの外側面の内周側、内側面の内周側に当る位置に配置している。
【0025】
前側連結部材用の連結板11と内側線状部材用の連結板12には、それぞれ、取付孔51を滑り止め体1の幅方向に貫通し、螺孔の取付孔51に螺軸の軸部材52を螺合している。軸部材52は、連結板11、12を滑り止め体1の幅方向に貫通し、内端に当て部材16、17を取り付け、外端面に六角穴53を形成し、外端側部分にロックナット54を螺合している。ロックナット54を緩め、六角穴53を利用して軸部材52を正回転又は逆回転すると、軸部材52と当て部材16、17が前進又は後退し、軸部材52の滑り止め体1幅方向位置が変更され、当て部材16、17の滑り止め体1幅方向位置が調整される。ロックナット54を締めると、軸部材52と当て部材16、17の滑り止め体1幅方向位置が固定される。外側と内側の当て部材16、17の間の滑り止め体1幅方向の距離、滑り止め体1の内幅は、増減可能にしている。螺孔の取付孔51、螺軸の軸部材52、六角穴53とロックナット54で内幅増減機構を構成している。滑り止め体1の前部は、その内幅をタイヤTの外幅に合わせて調整することができる。
【0026】
更に、外側と内側の当て部材16、17は、滑り止め体1の幅方向に対面する真正面位置よりタイヤTの周方向の前後にずれていて、滑り止め体1の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置している。外側と内側の当て部材16、17の間の距離は、内幅よりも長くなっている。滑り止め体1の前部は、タイヤTに着脱し易い。
【0027】
滑り止め体1の後部も、同様に、後側連結部材用の連結板13に、タイヤTの外側面に当る外側の当て部材18を設け、内側線状部材用の連結板14に、タイヤTの内側面に当る内側の当て部材19を設けている。外側と内側の当て部材18、19は、それぞれ、円盤状に形成し、タイヤTの外側面の内周側、内側面の内周側に当る位置に配置している。後側連結部材用の連結板13と内側線状部材用の連結板14には、それぞれ、内幅増減機構51〜54を設けている。外側と内側の当て部材18、19の間の滑り止め体1幅方向の距離、内幅は、増減可能にしている。滑り止め体1の後部は、その内幅をタイヤTの外幅に合わせて調整することができる。
【0028】
また、外側と内側の当て部材18、19は、滑り止め体1の幅方向に対面する真正面位置よりタイヤTの周方向の前後にずれていて、滑り止め体1の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置している。外側と内側の当て部材18、19の間の距離は、内幅よりも長くなっている。滑り止め体1の後部は、タイヤTに着脱し易い。
【0029】
滑り止め体1は、図3に示すように、外側部のタイヤTの周方向の前端と後端にそれぞれ連結部材21、22を取り付けている。前側と後側の連結部材21、22は、それぞれ、多数の板状リンクをピンで回転可能に繋いで紐状にした鎖である。前側の連結部材21は、後端のリンクを前側連結部材用の連結板11にピンで回転可能に取り付けている。後側の連結部材22は、前端のリンクを後側連結部材用の連結板13にピンで回転可能に取り付けている。
【0030】
前側と後側の連結部材21、22は、雌型と雄型の連結具を設けている。雌型の連結具は、前側の連結部材21の前端、自由端のリンクに第1連結孔23を貫通している。また、前側の連結部材21には、連結用のリンクをピンで回転可能に取り付け、連結用リンクに第2連結孔24を貫通している。第1連結孔23と第2連結孔24は、前側の連結部材21の取り付け位置、後端からの距離が異なる。雄型の連結具は、後側の連結部材22の後端、自由端のリンクに連結ピン26を外側に突出して設けている。雌型と雄型の連結具は、第1、第2の連結孔23、24のいずれかに連結ピン26を差し込んで連結する。その際、連結ピン26を差し込む連結孔23、24を選択して、滑り止め体1の連結長さを増減する。
【0031】
滑り止め体1の前部において、外側の当て部材16を設けた連結板11とこれにピン結合した前列のU形状部材2の外側部2bには、連結板11の回転を規制する部材61を設け、外側の当て部材16をタイヤTの内周側に移動し難くしている。また、内側の当て部材17を設けた連結板12とこれにピン結合した後列のU形状部材2の内側部2cには、連結板12の回転を規制する部材61を設け、内側の当て部材17をタイヤTの内周側に移動し難くしている。更に、前列と後列のU形状部材2の横断部2a同士を接触し難くしている。
【0032】
外側と内側の回転規制部材61は、同一構造であり、ばね鋼の線材を湾曲して構成している。回転規制部材61は、図7に示すように、中央部に輪状部を形成し、輪状部の両側に棒状部を形成し、両側の棒状部の端を折り曲げている。
【0033】
外側の回転規制部材61は、図5と図6に示すように、輪状部を連結板11と前列のU形状部材2の外側部2bの結合ピンに貫通して取り付け、一方の棒状部の折り曲げ端を前列のU形状部材2の外側部2bの後側面に当て、他方の棒状部の折り曲げ端を連結板11のタイヤ内周側の面に当てている。この回転規制部材61で、連結板11は、タイヤ内周側への回転が規制される。前列のU形状部材2は、後側への回転が規制される。連結板11と前列のU形状部材2の外側部2bは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。外側の当て部材16は、タイヤ内周側への移動が制限される。
【0034】
内側の回転規制部材61は、輪状部を連結板12と後列のU形状部材2の内側部2cの結合ピンに貫通して取り付け、一方の棒状部の折り曲げ端を後列のU形状部材2の内側部2cの前側面に当て、他方の棒状部の折り曲げ端を連結板12のタイヤ内周側の面に当てている。この回転規制部材61で、連結板12は、タイヤ内周側への回転が規制される。後列のU形状部材2は、前側への回転が規制される。連結板12と後列のU形状部材2の内側部2cは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。内側の当て部材17は、タイヤ内周側への移動が制限される。
【0035】
滑り止め体1の後部においても、同様に、外側の当て部材18を設けた連結板13とこれにピン結合した後列のU形状部材3の外側部3bには、連結板13の回転を規制する部材61を設け、外側の当て部材18をタイヤTの内周側に移動し難くしている。また、内側の当て部材19を設けた連結板14とこれにピン結合した前列のU形状部材3の内側部3cには、連結板14の回転を規制する部材61を設け、内側の当て部材19をタイヤTの内周側に移動し難くしている。更に、前列と後列のU形状部材3の横断部3a同士を接触し難くしている。連結板13と後列のU形状部材3の外側部3bは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。外側の当て部材18は、タイヤ内周側への移動が制限される。また、連結板14と前列のU形状部材3の内側部3cは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。内側の当て部材19は、タイヤ内周側への移動が制限される。
【0036】
タイヤTの全周に配列して輪にした滑り止め体1a〜1cに取り付ける引張具を設けている。引張具は、図1に示すように、滑り止め体1a〜1cと同数の螺旋ばね41を放射状に結合し、3本の同長の螺旋ばね41の端をそれぞれフック状の引掛け部42にしている。この引張具41、42は、滑り止め体1a〜1cに取り付けるときに、各フック状引掛け部42を、それぞれ、連結した前側と後側の連結部材21、22の中央位置の引掛け部材39に引っ掛け、3本の螺旋ばね41をタイヤTの中心位置から3方に向けて放射状に伸ばす。
【0037】
滑り止め体1a〜1cに引張具41、42を取り付けると、連結した連結部材21、22と連結板11、13は、緊張する。また、内側の線状部材4と連結板12、14は、緊張する。輪に連結した滑り止め体1a〜1cは、輪が縮小する力を受け、タイヤTの外周に押し付けられる。
【0038】
滑り止め装置をタイヤTに装着するときには、滑り止め体1a〜1cをタイヤTの外周側に嵌め込んでタイヤTの全周にほぼ等間隔に配列し、滑り止め体の後側の連結部材22を後隣の滑り止め体の前側の連結部材21に連結具23、24、26で連結する。滑り止め体1a〜1cを輪にした後、引張具は、各引掛け部42をそれぞれ引掛け部材39に引っ掛ける。すると、滑り止め体1a〜1cは、横断部2a、3aがタイヤTの外周に押し付けられ、外側の当て部材16、18がタイヤTの外側面の内周側に、内側の当て部材17、19がタイヤTの内側面の内周側に押し付けられる。各滑り止め体1a〜1cは、タイヤTに安定して嵌合している。
【0039】
[第2例(図8、図9参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、滑り止め体1、1a〜1cの前側のU形状部材2と後側のU形状部材3を、第1例における2本から1本に変更している。
【0040】
前側のU形状部材は、図8と図9に示すように、1本のU形状部材2にし、第1例における前側U形状部材用の連結片5、6をなくしている。後側のU形状部材は、1本のU形状部材3にし、第1例における後側U形状部材用の連結片7、8をなくしている。
【0041】
滑り止め体1の前部において、外側の当て部材16を設けた連結板11とこれにピン結合したU形状部材2の外側部2bには、連結板11の回転を規制する部材61を設け、外側の当て部材16をタイヤTの内周側に移動し難くしている。また、内側の当て部材17を設けた連結板12とこれにピン結合したU形状部材2の内側部2cには、連結板12の回転を規制する部材61を設け、内側の当て部材17をタイヤTの内周側に移動し難くしている。回転規制部材61は、第1例におけるのと同一の構造であり、同一の取り付け方である。連結板11とU形状部材2の外側部2bは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。連結板12とU形状部材2の内側部2cは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。
【0042】
滑り止め体1の後部においても、同様に、外側の当て部材18を設けた連結板13とこれにピン結合したU形状部材3の外側部3bには、連結板13の回転を規制する部材61を設け、外側の当て部材18をタイヤTの内周側に移動し難くしている。また、内側の当て部材19を設けた連結板14とこれにピン結合したU形状部材3の内側部3cには、連結板14の回転を規制する部材61を設け、内側の当て部材19をタイヤTの内周側に移動し難くしている。連結板13とU形状部材3の外側部3bは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。また、連結板14とU形状部材3の内側部3cは、それらの間の角度が適正角度の120度を超え難い。
その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0043】
[第3例(図10、図11参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、当て部材を、第1例におけるようにタイヤTの内周側に移動し難くすると共に、タイヤTの外周側にも移動し難くしている。
【0044】
両方向の回転規制部材62は、第1例における一方向の回転規制部材61において、両側の棒状部の端を、図11に示すように、コの字状部にしている。その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0045】
外側の回転規制部材62は、図10に示すように、輪状部を連結板11と前列のU形状部材2の外側部2bの結合ピンに貫通して取り付け、一方の棒状部のコの字状部を前列のU形状部材2の外側部2bに嵌め込み、他方の棒状部のコの字状部を連結板11に嵌め込んでいる。この回転規制部材62で、連結板11は、タイヤ内周側への回転とタイヤ外周側への回転が規制される。前列のU形状部材2は、後側への回転と前側への回転が規制される。連結板11と前列のU形状部材2の外側部2bは、それらの間の角度が適正角度の120度から増え難く、かつ、減り難い。外側の当て部材16は、タイヤ内周側への移動とタイヤ外周側への移動が制限される。
【0046】
内側の回転規制部材62は、輪状部を連結板12と後列のU形状部材2の内側部2cの結合ピンに貫通して取り付け、一方の棒状部のコの字状部を後列のU形状部材2の内側部2cに嵌め込み、他方の棒状部のコの字状部を連結板12に嵌め込んでいる。この回転規制部材62で、連結板12は、タイヤの内周側への回転と外周側への回転が規制される。後列のU形状部材2は、前側への回転と後側への回転が規制される。連結板12と後列のU形状部材2の内側部2cは、それらの間の角度が適正角度の120度から増え難く、かつ、減り難い。内側の当て部材17は、タイヤの内周側への移動と外周側への移動が制限される。
滑り止め体1の後部においても、同様に、外側と内側の回転規制部材62を取り付けている。
【0047】
[第4例(図12、図13参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、回転規制部材を第1例における鋼線製から鋼板製に変更している。その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0048】
鋼板製の回転規制部材66は、図13に示すように、鋼板の中央部に孔を貫通し、孔の両側に折り曲げ部を形成している。この鋼板製の回転規制部材66は、第1例におけるばね鋼線製の回転規制部材61より規制力が強い。
【0049】
滑り止め体1の前部において、外側の回転規制部材66は、図12に示すように、孔付き中央部を連結板11と前列のU形状部材2の外側部2bの結合ピンに貫通して取り付け、一側の折り曲げ部を前列のU形状部材2の外側部2bの後側面に当て、他側の折り曲げ部を連結板11のタイヤ内周側の面に当てている。この回転規制部材66で、連結板11は、タイヤ内周側への回転が規制される。前列のU形状部材2は、後側への回転が規制される。連結板11と前列のU形状部材2の外側部2bは、それらの間の角度が適正角度の120度を超えない。
【0050】
内側の回転規制部材66は、孔付き中央部を連結板12と後列のU形状部材2の内側部2cの結合ピンに貫通して取り付け、一側の折り曲げ部を後列のU形状部材2の内側部2cの前側面に当て、他側の折り曲げ部を連結板12のタイヤ内周側の面に当てている。この回転規制部材66で、連結板12は、タイヤ内周側への回転が規制される。後列のU形状部材2は、前側への回転が規制される。連結板12と後列のU形状部材2の内側部2cは、それらの間の角度が適正角度の120度を超えない。
滑り止め体1の後部においても、同様に、外側と内側の回転規制部材66を取り付けている。
【0051】
[第5例(図14参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、回転規制部材を第1例における鋼線製から鎖製又は鋼索製に変更している。その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0052】
鎖製又は鋼索製の回転規制部材69は、所定長さの鎖又は鋼索の拘束条である。この回転規制部材69は、第1例におけるばね鋼線製の回転規制部材61より規制力が強い。
滑り止め体1の前部において、図14に示すように、外側の回転規制部材69は、前列のU形状部材2の外側部2bと連結板11の間に掛け渡して取り付けている。前列のU形状部材2の外側部2bと連結板11は、それらの間の角度が適正角度の120度を超えない。内側の回転規制部材69は、後列のU形状部材2の内側部2cと連結板12の間に掛け渡して取り付けている。後列のU形状部材2の内側部2cと連結板12は、それらの間の角度が適正角度の120度を超えない。
滑り止め体1の後部においても、同様に、外側と内側の回転規制部材69を取り付けている。
【0053】
[変形例]
1)上記の実施形態において、滑り止め体1は、3個にしているが、2個又は4個にする。
2)上記の実施形態において、滑り止め体1、1a〜1cは、前後のU形状部材2、3を連結する部材が内側の線状部材4のみであるが、内側の線状部材4と外側の線状部材にする。外側の線状部材は、前側のU形状部材2と後側のU形状部材3の外側部同士を連結する。外側の線状部材は、例えば、内側の線状部材4と同様に、鎖の構成にする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のタイヤの滑り止め装置は、大型の貨物自動車や小型の乗用自動車などの各種の自動車に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態の第1例における滑り止め装置のタイヤ装着状態の正面図。
【図2】同装置のタイヤ装着状態の背面図。
【図3】図1中の第1滑り止め体の拡大正面図。
【図4】図1中の第1滑り止め体の拡大平面図
【図5】図3のA−A線断面拡大図。
【図6】図3の左半分を拡大して一部破断した図。
【図7】図6中の回転規制部材を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図8】実施形態の第2例における滑り止め装置のタイヤ装着状態の正面図。
【図9】同装置のタイヤ装着状態の背面図。
【図10】第3例における滑り止め装置の第1滑り止め体の部分正面図。
【図11】図10中の回転規制部材を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図12】第4例における滑り止め装置の第1滑り止め体の部分正面図。
【図13】図12中の回転規制部材を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図14】第5例における滑り止め装置の第1滑り止め体の部分正面図。
【符号の説明】
【0056】
T 自動車のタイヤ
1、1a〜1c 滑り止め体
1a 第1滑り止め体
1b 第2滑り止め体
1c 第3滑り止め体
2 前側のU形状部材
2a 横断部
2b 外側部
2c 内側部
3 後側のU形状部材
3a 横断部
3b 外側部
3c 内側部
4 内側の線状部材、鎖
5 前側U形状部材用の外側の連結片
6 前側U形状部材用の内側の連結片
7 後側U形状部材用の外側の連結片
8 後側U形状部材用の内側の連結片
11 前側連結部材用の連結板
12 内側線状部材用の連結板
13 後側連結部材用の連結板
14 内側線状部材用の連結板
2a、3a 滑り止め体の横断部
2b、3b、5、7、11、13 滑り止め体の外側部
2c、3c、4、6、8、12、14 滑り止め体の内側部
2、5、6、11、12 滑り止め体の前部
3、7、8、13、14 滑り止め体の後部
16 前側の外側の当て部材
17 前側の内側の当て部材
18 後側の外側の当て部材
19 後側の外側の当て部材
21 前側の連結部材
22 後側の連結部材
23 第1連結孔
24 第2連結孔
26 連結ピン
23、24、26 連結具
39 引掛け部材
41 螺旋ばね
42 フック状引掛け部
41、42 引張具
51 螺孔の取付孔
52 螺軸の軸部材
53 六角穴
54 ロックナット
51、52、53、54 内幅増減機構
61 一方向の回転規制部材、鋼線製の回転規制部材
62 両方向の回転規制部材
66 鋼板製の回転規制部材
69 鎖製又は鋼索製の回転規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数個のU形状断面の滑り止め体を自動車のタイヤに嵌め込んでタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、各滑り止め体の外側部をそれぞれ隣の滑り止め体の外側部に連結する構成にした滑り止め装置において、
滑り止め体は、自動車前進時のタイヤ回転方向の前側のU形状部材と後側のU形状部材、及び、タイヤの内側面に沿う内側の線状部材を備え、
前側のU形状部材と後側のU形状部材は、内側部同士を内側の線状部材で連結し、外側部に前側と後側の連結部材を取り付け、タイヤの周方向に配列した滑り止め体を連結する際、滑り止め体の後側の連結部材を、後隣の滑り止め体の前側の連結部材に連結する構成にし、
前側又は後側のU形状部材の外側部と前側又は後側の連結部材の間に連結板を介在し、この外側の連結板に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材を設け、
前側又は後側のU形状部材の内側部と内側の線状部材の間に連結板を介在し、この内側の連結板に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材を設け、
外側の連結板のタイヤ内周側への回転を規制する部材を設け、外側の当て部材のタイヤ内周側への移動を制限する構成にし、
内側の連結板のタイヤ内周側への回転を規制する部材を設け、内側の当て部材のタイヤ内周側への移動を制限する構成にしたことを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
【請求項2】
外側の連結板のタイヤ外周側への回転を規制する部材を設け、外側の当て部材のタイヤ外周側への移動を制限する構成にし、
内側の連結板のタイヤ外周側への回転を規制する部材を設け、内側の当て部材のタイヤ外周側への移動を制限する構成にしたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの滑り止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−45973(P2009−45973A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212152(P2007−212152)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(599038433)