説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】優れた加工性を維持し、低燃費性、ゴム強度を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びタイヤの各部材に用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムと、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含み、前記変性ジエン系ゴムの含有量がゴム成分100質量%に対して5質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物であり、トレッド用ゴム組成物として用いられ、ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の低燃費化の要請に対応して、タイヤの転がり抵抗を低減して、発熱を抑えたタイヤの開発が進められている。特に、タイヤの部材のなかでもタイヤにおける占有比率の高いトレッドに対して、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。低燃費性を向上させるために、タイヤのトレッドに使用されるゴム組成物(トレッド用ゴム組成物)において、従来補強剤として使用されているカーボンブラックを、一部シリカに置換することがなされてきた。
【0003】
さらに低燃費性を満足させる方法として、補強用充填剤であるシリカの配合量を減量する方法や、補強性の小さい充填剤を用いる方法が知られているが、ゴム強度が大きく低下するという問題があった。
このように、低燃費性、ゴム強度をバランス良く得られるゴム組成物は、現在まで知られていなかった。
【0004】
一方、シリカの補強性をカーボンブラックと同程度にするために、シリカの分散性を向上させたり、ゴムとシリカを化学的に結合させたりすることを目的として、シリカと共にシランカップリング剤を配合する検討がなされてきた。シリカと共にメルカプト基を有するシランカップリング剤を用いると、低燃費性を向上できるが、加工性が非常に悪くなるという問題がある。一方、シリカと共にスルフィド系のシランカップリング剤を用いると、加工性は良好であるものの、低燃費性、ゴム強度を向上する点については、改善の余地がある。
【0005】
特許文献1では、シリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、シリル化剤を配合することにより、優れた加工性、低燃費性、耐摩耗性が得られることが開示されている。しかし、優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を向上する点については、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−263420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムと、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含み、上記変性ジエン系ゴムの含有量がゴム成分100質量%に対して5質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式(1)中、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、又は−O−(R−O)−R10(m個のRは、同一又は異なって、炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R10は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表し、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基である。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜30のアルキレン基を表す。p及びqは、同一若しくは異なって、整数を表し、p及びqの平均値はそれぞれ1〜5である。)
【0009】
上記タイヤ用ゴム組成物は、R、R及びRの少なくとも1つが−O−(R−O)−R10で表される基であり、R、R及びRの少なくとも1つが−O−(R−O)−R10で表される基であることが好ましい。
【0010】
上記タイヤ用ゴム組成物は、p及びqがそれぞれ1であることが好ましい。
【0011】
上記変性ジエン系ゴムが、下記式(2)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム又はスチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【化2】

(式中、R11、R12及びR13は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R14及びR15は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【0012】
上記タイヤ用ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定量の上記変性ジエン系ゴムと、シリカと、上記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を向上できる。よって、該ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、トレッド)に使用することにより、上記性能に優れた空気入りタイヤを生産性良く提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムと、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含み、前記変性ジエン系ゴムの含有量がゴム成分100質量%に対して5質量%以上である。
【化3】

(式(1)中、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、又は−O−(R−O)−R10(m個のRは、同一又は異なって、炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R10は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表し、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基である。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜30のアルキレン基を表す。p及びqは、同一若しくは異なって、整数を表し、p及びqの平均値はそれぞれ1〜5である。)
【0016】
上述のように、シリカと共に、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いると、低燃費性を向上できるが、加工性が非常に悪くなるという問題がある。また、シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムを用いた場合にも、低燃費性を向上できるが、加工性が非常に悪くなるという問題がある。一方、シリカと共にスルフィド系のシランカップリング剤を用いると、加工性は良好であるものの、低燃費性、ゴム強度を充分に向上できないという問題がある。
本発明では、シリカと共に、上記式(1)で表されるシランカップリング剤を配合することにより、スルフィド系のシランカップリング剤を用いた場合よりも優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を向上できる。更に、シリカ、上記式(1)で表されるシランカップリング剤に加えて、特定量の上記変性ジエン系ゴムを配合することにより、スルフィド系のシランカップリング剤を用いた場合よりも優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度をより向上でき、優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を相乗的に向上できる。
【0017】
本発明では、ゴム成分として、シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムを使用する。
【0018】
変性ジエン系ゴムとしては、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴムや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)等が挙げられる。
【0019】
上記官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、低燃費性、ゴム強度の向上効果が高いという理由から、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0020】
上記官能基が導入されるジエン系ゴム(変性ジエン系ゴムの骨格を構成するポリマー)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なかでも、IR、BR、SBRが好ましく、BR、SBRがより好ましい。
【0021】
上記変性剤としては、下記式(2)で表される化合物(特開2010−111753号公報に記載の化合物)が好ましい。これにより、ポリマーの分子量をコントロールし易く、tanδを増大させる低分子量成分を少なくすることができ、シリカとポリマー鎖の結合を強め、低燃費性、ゴム強度をより向上できる。
【化4】

(式中、R11、R12及びR13は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R14及びR15は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)又は環状エーテル基(好ましくはエーテル結合を1つ有する炭素数3〜5の環状エーテル基(例えば、オキセタン基))を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3)を表す。)
【0022】
11、R12及びR13としては、アルコキシ基が望ましく、R14及びR15としては、アルキル基が望ましい。これにより、優れた低燃費性、ゴム強度を得ることができる。
【0023】
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記式(2)で表される化合物(変性剤)によるジエン系ゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ジエン系ゴムと変性剤とを接触させればよく、調製したジエン系ゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0025】
また、主鎖変性ジエン系ゴムは、従来公知の手法を用いて重合できる。例えば、重合に使用するモノマーの一部として、上記官能基を有するモノマー(例えば、p−メトキシスチレン等の下記式(3)で表される化合物、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン等の窒素含有化合物等)を使用して重合することにより得られる。また、主鎖末端変性ジエン系ゴムは、例えば、主鎖変性ジエン系ゴムと変性剤とを接触させることにより得られる。
【化5】

(式中、R21は、炭素数が1〜10の炭化水素基を表す。)
【0026】
上記式(3)において、R21は、炭素数が1〜10の炭化水素基を表す。炭素数が10を超えると、高コストになる傾向がある。また、低燃費性及びゴム強度を充分に改善できない傾向がある。得られる重合体による低燃費性及びゴム強度の改善効果が高いという点から、炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3である。
【0027】
21で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基などの1価の脂肪族炭化水素基、アリール基などの1価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。得られる重合体による低燃費性及びゴム強度の改善効果が高いという点から、R21は、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0028】
また、得られる共重合体による低燃費性及びゴム強度の改善効果が高いという点から、式(3)で表される化合物のなかでも、下記式(3−1)で表される化合物が好ましい。
【化6】

(上記式(3−1)中のR21は、上記式(3)中のR21と同様である。)
【0029】
式(3)で表される化合物としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−(n−プロポキシ)スチレン、p−(tert−ブトキシ)スチレン、m−メトキシスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0030】
変性ジエン系ゴム100質量%中の上記式(3)で表される化合物の含有量(アルコキシスチレン成分含有量)は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。0.05質量%未満では、低燃費性及びゴム強度の改善効果が得られにくいおそれがある。該含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。30質量%を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
なお、アルコキシスチレン成分含有量は、NMR(例えば、日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズの装置)を用いて測定できる。
【0031】
上記窒素含有化合物としては、例えば、3−または4−(2−アゼチジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、シリカをより良好に分散できるという点から、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレンが好ましい。
【0032】
変性ジエン系ゴム100質量%中の上記窒素含有化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。0.05質量%未満では、低燃費性及びゴム強度の改善効果が得られにくい傾向がある。該含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。10質量%を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
なお、窒素含有化合物の含有量は、NMR(例えば、日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズの装置)を用いて測定できる。
【0033】
上記変性ジエン系ゴムのなかでも、低燃費性、ゴム強度の向上効果が高いという理由から、少なくとも一方の末端が上記式(2)で表される化合物で変性されたブタジエンゴム、少なくとも一方の末端が上記式(2)で表される化合物で変性されたスチレンブタジエンゴムが好ましく、1,3−ブタジエン、スチレン及び上記式(3)で表される化合物を共重合して得られ、少なくとも一方の末端が上記式(2)で表される化合物で変性されたスチレンブタジエンゴム、1,3−ブタジエン及び上記窒素含有化合物を共重合して得られ、少なくとも一方の末端が上記式(2)で表される化合物で変性されたブタジエンゴムがより好ましい。
【0034】
ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムの含有量は、5質量%以上であり、好ましくは15質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。5質量%未満であると、充分な低燃費性、ゴム強度、加工性が得られない。該変性ジエン系ゴムの含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0035】
変性ジエン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、上記ジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、耐摩耗性、ゴム強度をより向上できるという理由から、BRが好ましい。
【0036】
本発明では、シリカが使用される。上記変性ジエン系ゴム、上記式(1)で表されるシランカップリング剤とともに、シリカを配合することにより、良好な低燃費性及び高いゴム強度が得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0037】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。30m/g未満では、補強効果が小さく、ゴム強度が充分に向上できないおそれがある。また、シリカのNSAは、500m/g以下が好ましく、250m/g以下がより好ましい。500m/gを超えると、シリカの分散性が低下し、低発熱性、加工性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0038】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。5質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、加工性が低下する傾向がある。
【0039】
本発明では、上記式(1)で表されるシランカップリング剤が使用される。上記変性ジエン系ゴム、シリカと共に、上記式(1)で表されるシランカップリング剤を配合することにより、優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を向上できる。なお、上記式(1)で表されるシランカップリング剤と共に、メルカプト基を有するシランカップリング剤、スルフィド系のシランカップリング剤を使用してもよい。
【0040】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤において、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、又は−O−(R−O)−R10(m個のRは、同一又は異なって、炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R10は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表し、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基である。
また、優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度をより向上できるという理由から、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの少なくとも1つが−O−(R−O)−R10で表される基であることが好ましく、R、R及びRの1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの2つが−O−(R−O)−R10で表される基であることがより好ましい。同様に、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの少なくとも1つが−O−(R−O)−R10で表される基であることが好ましく、R、R及びRの1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの2つが−O−(R−O)−R10で表される基であることがより好ましい。
【0041】
、R、R、R、R及びRの炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0042】
、R、R、R、R及びRの炭素数1〜8(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0043】
、R、R、R、R及びRの炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0044】
−O−(R−O)−R10で表される基のRは、同一又は異なって、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。
該炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数2〜30のアルケニレン基、炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、上記アルキレン基が好ましい。
【0045】
上記Rの炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。
【0046】
上記Rの炭素数2〜30のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。
【0047】
上記Rの炭素数2〜30のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。
【0048】
上記Rの炭素数6〜30のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0049】
−O−(R−O)−R10で表される基のmは1〜30(好ましくは1〜10、より好ましくは3〜7)の整数を表す。
【0050】
−O−(R−O)−R10で表される基のR10は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。なかでも、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0051】
上記R10の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜18、更に好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0052】
上記R10の炭素数2〜30のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0053】
上記R10の炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0054】
上記R10の炭素数7〜30のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0055】
−O−(R−O)−R10で表される基の具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327等が挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327が好ましい。
【0056】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤において、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜30のアルキレン基を表す。
【0057】
及びRの炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、上記Rの炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基が挙げられる。
【0058】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤において、p及びqは、同一若しくは異なって、整数を表し、p及びqの平均値はそれぞれ1〜5(好ましくは1〜3)である。本発明の効果が好適に得られるという理由から、p及びqがそれぞれ1であることがより好ましい。
【0059】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤は、例えば、メルカプト基を有するケイ素化合物(下記式(4)で表される化合物)と、2価の亜鉛化合物とをアミン系化合物の存在下で反応させることにより製造できる。
【化7】

(式(4)中のR〜Rは、上記式(1)中のR〜Rと同一である。)
【0060】
2価の亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛を使用することができる。使用量としては、上記式(4)で表される化合物に対して0.1〜2.0当量の範囲で使用することが好ましい。
【0061】
アミン系化合物としては、ピリジン、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等などを使用することができる。使用量としては、上記式(4)で表される化合物に対して1.0当量以上使用することが好ましい。
【0062】
上記式(4)で表される化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトエチルトリエトキシシラン、EVONIK−DEGUSSA社製のSi363等が挙げられる。
【0063】
上記式(4)で表される化合物と、2価の亜鉛化合物との反応に使用できる溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0064】
反応温度は、通常、−100℃〜200℃の範囲であるが、反応の操作性、安全性などを考慮すると−10℃〜160℃の範囲、より好ましくは20℃〜140℃の範囲である。また、反応時間は、通常、上記式(4)で表される化合物と2価の亜鉛塩の溶液に塩基性物質を加えて0.1〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲である。
【0065】
反応は、通常大気圧下で攪拌することにより実施される。空気中で実施しても良いが、窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で実施することがより好ましい。
【0066】
得られた上記式(1)で表されるシランカップリング剤は、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーにより精製できる。さらに、ジメチルホルムアミド−メタノール、ジメチルホルムアミド−水、ジメチルスルホキシド−メタノール、ジメチルスルホキシド−水、THF−メタノール、1,4−ジオキサン−メタノールなどの極性溶媒の組み合わせを用いた溶媒から再結晶することによって精製することができる。得られた上記式(1)で表されるシランカップリング剤は、バンドドライヤーや押出型ドライヤーなどの公知の乾燥機で乾燥してもよい。
【0067】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、ビス(メチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)カルバモチオイルチオ)亜鉛、((3−(ジエトキシ(メトキシメチル)シリル)プロピル)(メチル)カルバモチオイルチオ)(メチル(3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモチオイルチオ)亜鉛、ビス(6−(トリメトキシシリル)ベンゾ[d]チアゾール−2−イルチオ)亜鉛、下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物等が挙げられ、なかでも、下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物が好ましい。
【化8】

【0068】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上、特に好ましくは8質量部以上である。1質量部未満であると、シリカと充分に反応できず、低燃費性、ゴム強度を充分に向上できないおそれがある。また、該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下である。20質量部を超えると、コストが高くなるだけで添加量に応じた効果が得られないおそれがある。
【0069】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、クレー等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0070】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0071】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(例えば、トレッド(特に、キャップトレッド))に好適に使用できる。
【0072】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤの各部材(例えば、トレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0073】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0074】
以下、製造例1、2で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
クロロホルム:関東化学(株)製
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン:東京化成工業(株)製
塩化亜鉛:和光純薬工業(株)製
ピリジン:関東化学(株)製
Si363:EVONIK−DEGUSSA社製のSi363(下記構造のシランカップリング剤)
【化9】

【0075】
(製造例1)
(シランカップリング剤Aの調製)
窒素雰囲気下、三つ口フラスコにクロロホルム200mL、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン24g、塩化亜鉛6.8g、ピリジン7.9gを加え、50℃で3時間撹拌した。その後、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーにより精製し、シランカップリング剤A(下記式で表される化合物)を得た。
【化10】

【0076】
(製造例2)
(シランカップリング剤Bの調製)
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン24gの代わりにSi363を120g用いた以外は製造例1と同様に行い、シランカップリング剤B(下記式で表される化合物)を得た。
【化11】

【0077】
以下、製造例3、4で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
p−メトキシスチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
変性剤:アヅマックス社製の3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(上記式(2)で表される化合物)
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
シクロへキサン:関東化学(株)製
ピロリジン:関東化学(株)製
ジビニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製
1.6M n−ブチルリチウムへキサン溶液:関東化学(株)製
イソプロパノール:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
【0078】
(製造例3)
(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの調製)
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500ml、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、p−メトキシスチレン5mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間撹拌した。その後、変性剤を0.15mmol加えて、0℃で1時間撹拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを得た。
【0079】
(製造例4)
(主鎖末端変性ブタジエンゴムの調製)
十分に窒素置換した100ml容器に、シクロヘキサン50ml、ピロリジン4.1ml(3.6g)、ジビニルベンゼン6.5gを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、抽出・精製を行うことでモノマー(4−(2−ピロリジノエチル)スチレン)を得た。
次に、充分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、1,3−ブタジエン71.0ml(41.0g)、モノマー0.29g、テトラメチルエチレンジアミン0.11mlを加え、40℃で1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.2mlを加えて撹拌した。3時間後、変性剤を0.5ml(0.49g)加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて主鎖末端変性ブタジエンゴムを得た。
【0080】
得られた変性ジエン系ゴム(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、主鎖末端変性ブタジエンゴム)について、以下の方法により分析を行った。
【0081】
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0082】
(変性ジエン系ゴム中のアルコキシスチレン成分含有量、スチレン成分含有量、窒素含有化合物の含有量の測定)
変性ジエン系ゴム中のアルコキシスチレン成分含有量、スチレン成分含有量、窒素含有化合物の含有量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて測定した。
【0083】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
変性BR:製造例4で合成した主鎖末端変性ブタジエンゴム(窒素含有化合物に由来する構成単位を主鎖中に有し、一方の末端が上記式(2)で表される化合物で変性されたブタジエンゴム)(ビニル含量:18モル%、Mw:30万、窒素含有化合物の含有量:2質量%)
SBR:JSR(株)製のNS116(ビニル含量:60モル%、スチレン含有量:20質量%)
変性SBR:製造例3で合成した主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(上記式(3)で表される化合物に由来する構成単位を主鎖中に有し、一方の末端が上記式(2)で表される化合物で変性されたスチレンブタジエンゴム)(アルコキシスチレン成分含有量:1.2質量%、スチレン成分含有量:19質量%、Mw:50万)
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のUltrasil VN3(NSA:175m/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
シランカップリング剤A、B:製造例1、2で合成したシランカップリング剤A、B
シランカップリング剤C:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製の椿
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0084】
実施例1〜15及び比較例1〜6
表1、2に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を約4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0085】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表1、2に示す。なお、表1、2の基準比較例をそれぞれ比較例1、6とした。なお、表1の実施例10については、基準比較例を比較例4とした。
【0086】
(低燃費性)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定し、各基準比較例の損失正接tanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)が優れる。
(転がり抵抗指数)=(基準比較例のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0087】
(加工性)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定した。各基準比較例のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムーニー粘度指数)=(基準比較例のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
【0088】
(ゴム強度)
得られた加硫ゴム組成物を用いて、3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)および破断時伸び(EB)を測定し、その積(TB×EB)を算出した。下記計算式により、各配合(加硫物)のゴム強度(TB×EB)を指数表示した。なお、ゴム強度指数が大きいほど、ゴム強度に優れることを示す。
(ゴム強度指数)=(各配合のTB×EB)/(基準比較例のTB×EB)×100
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
表1より、特定量の上記変性ジエン系ゴムと、シリカと、上記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含む実施例は、スルフィド系のシランカップリング剤を使用した比較例1、4よりも優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を向上できた。上記変性ジエン系ゴムを配合しなかった比較例2、3は、実施例に比べて、低燃費性、ゴム強度が大幅に劣っていた。
【0092】
比較例1、2、5、実施例2の比較により、上記変性ジエン系ゴムと、上記式(1)で表されるシランカップリング剤とを併用することにより、低燃費性、ゴム強度を相乗的に向上できることが分かった。
【0093】
同様に、表2より、特定量の上記変性ジエン系ゴムと、シリカと、上記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含む実施例は、スルフィド系のシランカップリング剤を使用した比較例6よりも優れた加工性を維持しつつ、低燃費性、ゴム強度を向上できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムと、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含み、
前記変性ジエン系ゴムの含有量がゴム成分100質量%に対して5質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式(1)中、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、又は−O−(R−O)−R10(m個のRは、同一又は異なって、炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R10は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表し、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基であり、R、R及びRの少なくとも1つが炭素数1〜8のアルコキシ基である。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜30のアルキレン基を表す。p及びqは、同一若しくは異なって、整数を表し、p及びqの平均値はそれぞれ1〜5である。)
【請求項2】
、R及びRの少なくとも1つが−O−(R−O)−R10で表される基であり、R、R及びRの少なくとも1つが−O−(R−O)−R10で表される基である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
p及びqがそれぞれ1である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記変性ジエン系ゴムが、下記式(2)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム又はスチレンブタジエンゴムである請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化2】

(式中、R11、R12及びR13は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R14及びR15は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【請求項5】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−57040(P2013−57040A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197485(P2011−197485)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】