説明

タイヤ

【課題】 製造、流通、メンテナンスの各段階において、タイヤごとの型式、製造番号、製品仕様、製造年月日、使用履歴等のデータを記録しかつ読み取ることができるタイヤを提供する。
【解決手段】 タイヤ1内に配設され無線交信で情報の書き込み・読み取り可能な第1の無線ICタグ3と、タイヤの製造段階及び流通段階における情報を無線交信で書き込むことができ、かつこの書き込まれた情報を無線交信で読み取り可能な製造管理及び流通管理のトレーサビリティ用の第2の無線ICタグ4と、同じくタイヤ内に配設されタイヤに加わる温度、回転、振動、応力、圧力のうち少なくとも一つを検出するタイヤ状態検出センサ4と、同じくタイヤ内に配設され前記タイヤ状態検出センサが検出したデータを第1の無線ICタグ3に記録すべく送信する制御部6をタイヤのカーカス構造体2に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に使用されるタイヤについて、製造、流通、メンテナンスの各段階において、タイヤごとの型式、製造番号、製品仕様、製造年月日、使用履歴等のデータを信頼性高く容易に確認することができるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用のタイヤにあっては、製造物責任法の点からもその製造、流通、メンテナンス等を管理するに際して、タイヤごとに型式、製造番号、製品仕様、使用履歴等のデータを記録する必要がある。そこで、タイヤメーカーにおいてタイヤ1本ごとに型式、製造番号、製品仕様等の固有情報を記録したバーコードラベルを取り付けること(例えば、特許文献1)が案出された。しかしながら、バーコードは記録することができる情報量が少ない上に、振動、変形、熱変化の多いタイヤにあっては過酷な使用環境でバーコードラベルが剥離する恐れがあった。また、流通、メンテナンス等の段階で追加的に情報を記録することもできなかった。
【0003】
そこで、バーコードラベルに代わってICタグを用い、メーカーにおいてタイヤの製造管理の情報をICタグに記録し、これをタイヤに配設する方法(例えば、特許文献2)が案出されている。
【特許文献1】特開平7−266811号公報
【特許文献2】特開2005−316596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この上述した従来のICタグを取り付けたタイヤにあっては、バーコードと比べ記録できる情報量が格段に増えるとともに、記録媒体がタイヤから剥離する恐れもないものである。しかしながら、この従来のICタグを取り付けたタイヤにあっては、タイヤの製造管理及び流通管理のトレーサビリティ用として利用することはできるものの、このタイヤがどのような使用環境にあったのか、例えば走行時間、走行距離、タイヤの回転数、衝撃、上昇温度等を記録することはできず、タイヤにとって重要な使用履歴を記録することによるメンテナンス管理をすることはできなかった。
【0005】
そこで本発明は、これらの問題を解決すべく、製造、流通、メンテナンスの各段階において、タイヤごとの型式、製造番号、製品仕様、製造年月日、使用履歴等のデータを記録しかつ読み取ることができるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するため、本発明のタイヤは、タイヤ内に配設され無線交信で情報の書き込み・読み取りが可能な無線ICタグと、同じく前記タイヤ内に配設されるタイヤ状態検出センサと、同じく前記タイヤ内に配設され前記タイヤ状態検出センサが検出したデータを前記無線ICタグに記録すべく送信する制御部を備えてなることを特徴とするものである。
【0007】
また、タイヤ状態検出センサは、タイヤに加わる温度、回転、振動、応力、圧力のうち少なくとも一つを検出する機能を備えてなることを特徴とするものである。
【0008】
また、無線ICタグとタイヤ状態検出センサと制御部は、タイヤを構成するカーカス構造体に配設されることを特徴とするものである。
【0009】
また、無線ICタグは、カーカス構造体を構成するコード内に配設することを特徴とするものである。
【0010】
また、無線ICタグはICタグ書き込み装置及びICタグ読み取り装置との間で暗号化された信号で無線交信することを特徴とするものである。
【0011】
また、無線ICタグは、半導体材料等よりなる不揮発性機能を有するメモリ装置を用いることを特徴とするものである。
【0012】
また、制御部は、タイヤ状態検出センサが検出した信号を時刻データとともに無線ICタグに送信して記録することを特徴とするものである。
【0013】
また、タイヤの製造段階及び流通段階における情報を無線交信で書き込むことができ、かつこの書き込まれた情報を無線交信で読み取り可能な製造管理及び流通管理のトレーサビリティ用の無線ICタグを別個に備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、タイヤ内に配設され無線交信で情報の書き込み・読み取りが可能な無線ICタグと、同じく前記タイヤ内に配設されるタイヤ状態検出センサと、同じく前記タイヤ内に配設され前記タイヤ状態検出センサが検出したデータを前記無線ICタグに記録すべく送信する制御部を備えてなることで、タイヤの使用履歴をタイヤ内の無線ICタグに自動的に記録することができ、また無線ICタグに記録された使用履歴を容易に読み取ることができ、これにより確実にタイヤのメンテナンス管理をすることができる。
【0015】
また、タイヤ状態検出センサは、タイヤに加わる温度、回転、振動、応力、圧力のうち少なくとも一つを検出する機能を備えてなることで、タイヤにとってメンテナンス上必要なデータが得られる。
【0016】
また、無線ICタグとタイヤ状態検出センサと制御部は、タイヤを構成するカーカス構造体に配設されることで、無線ICタグとタイヤ状態検出センサと制御部は強固なカーカス構造体と一体化して過酷な使用環境下のタイヤから離脱することなく長期に亘って使用することができる。
【0017】
また、無線ICタグは、カーカス構造体を構成するコード内に配設することで、タイヤが万が一破損するような事態にあっても情報を記録した状態のままタイヤから離脱する恐れがない。
【0018】
また、無線ICタグはICタグ書き込み装置及びICタグ読み取り装置との間で暗号化された信号で無線交信することで、予め定められた装置以外では書き込み・読み取りができないので、情報を安全に管理することができる。
【0019】
また、無線ICタグは、半導体材料等よりなる不揮発性機能を有するメモリ装置を用いることで、高速の読み書きが可能で、低電圧駆動、低消費電力の使いやすいものとすることができる。
【0020】
また、制御部は、タイヤ状態検出センサが検出した信号を時刻データとともに無線ICタグに送信して記録することで、記録する使用履歴を時刻と対応させることができる。
【0021】
また、タイヤの製造段階及び流通段階における情報を無線交信で書き込むことができ、かつこの書き込まれた情報を無線交信で読み取り可能な製造管理及び流通管理のトレーサビリティ用の無線ICタグを別個に備えることで、製造管理及び流通管理を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の無線ICタグを用いたタイヤを表し、ゴムで成形されるタイヤ1のトレッド1aの内側に、ポリエステル、レーヨン、アラミド、スチールなどのコードを成形したタイヤの骨格となるカーカス構造体2を配設するとともに、そのカーカス構造体2には第1の無線ICタグ3、第2の無線ICタグ4、1個又は複数個のタイヤ状態検出センサ5、及びこのタイヤ状態検出センサ5と接続する制御部6が配設されている。この第1の無線ICタグ3及び第2の無線ICタグ4は、およそ1ミリメートル又はそれ以下の大きさで、カーカス構造体2と一緒にゴム被覆される構造、若しくはカーカス構造体2を構成するコードの内部に一体的に配設される構造とする。
【0023】
第1の無線ICタグ3は、その小径な内部に、強誘電体を利用した不揮発メモリであるFeRAMと、駆動用の電池を内蔵する代わりに外部からの電波を受信しこれと共振して電流を発生する電源部と、外部と無線交信するためのアンテナ部を備えていて、同じくタイヤ1のカーカス構造体2に配置された温度、回転、振動、応力、圧力(タイヤ内の空気圧も含む)等のうち少なくとも一つを検出するタイヤ状態検出センサ5及び時刻データを備えた制御部6と無線又は配線により回路接続されている。そして制御部6は、タイヤ状態検出センサ5からの信号に時刻データを付して第1の無線ICタグ3に送信して記録させる機能を有している。このタイヤ状態検出センサ5のうち温度センサ、応力・圧力センサとしては、従来から存在しているセンサを利用することができるとともに、回転センサとしては、タイヤが回転する際に発生する遠心力を応力・圧力センサが検出し、これを制御部6で単位時間当たりの回転数に演算させることができ、また振動センサも応力・圧力センサを所望する方向にセットすることで検出することができるものである。
【0024】
この第1の無線ICタグ3は、前記制御部6から送られてくるタイヤ状態検出センサ5からの信号を記録する以外に、メガヘルツ帯域の電波を用いて外部の書き込み・読み取り装置(図示せず)と数メートル以下の範囲内で無線交信を可能としている(後述するトレーサビリティ用の第2の無線ICタグと異なり、記録された情報の読み取りは個別のタイヤについて行うことから、電波による交信可能範囲は近距離で構わない)。そして、この無線交信に用いる信号を暗号化することで、予め暗号を解読できるべく設定された装置以外では書き込み・読み取りができないので、情報を安全に管理することができる。また、FeRAMは、DC1.1Vという低電圧で書き込みすることができるので、第1の無線ICタグ3内部に電池を内蔵することなく、外部からの電波に共振して発電する電源部を備えたパッシブタイプでも十分足りるとともに、従来のICタグに用いられていたEEPROMと比較して5000倍もの書き込み速度を有している。そして、書き換え回数にあっても、EEPROMが10万回程度であるのに対し、FeRAMは10の12乗回と優れた性能を備えている。書き換えのアクセスにあっても、従来のEEPROMやフラッシュメモリーではほとんどがブロック単位であったのに対し、FeRAMはワード単位でランダムに行えるという利点がある。FeRAMへの書き込みを制御する制御部は、一旦書き込まれた情報が削除・変更されることがないように、追記はできるものの、上書きをできない設定とするものである。
【0025】
また、第2の無線ICタグ4は、前記タイヤ状態検出センサ5とは接続されずに、単独で外部と無線交信により情報の書き込み・読み取りが可能な構成とし、メーカー及び流通段階において製造管理及び流通管理を行うべくタイヤごとの型式、製造番号、製造年月日、製品仕様等をICタグ書き込み装置で記録し保存するトレーサビリティ用に用いられる。
【0026】
この第2の無線ICタグ4は、無線交信する電波の帯域をキロヘルツ帯域の低周波とすることで、第2の無線ICタグ4がICタグ書き込み装置及びICタグ読み取り装置と無線交信することができる距離を10メートル程度と、前記第1の無線ICタグ3よりも長距離に設定している。そして、この無線交信に用いる信号を暗号化することで、予め暗号を解読できるべく設定された装置以外では書き込み・読み取りができないので、情報を安全に管理することができる。この第2の無線ICタグ4の記録媒体としても、前述同様FeRAMを用いるものである。
【0027】
このような構成からなるタイヤ1にあっては、始めにメーカーにおいて、初期状態の第1の無線ICタグと第2の無線ICタグを用意し、これを例えばコード製造工程においてコード材料に混入させてコードを形成し、そしてこのコードでカーカス構造体2を形成する。そして、タイヤ状態検出センサ5及び制御部6も同時にカーカス構造体2と一体的に配設し、それからタイヤとして成形され、そのタイヤごとに製造工程の情報、タイヤごとの型式、製造番号、製品仕様、製造年月日などが適宜第2の無線ICタグ4に書き込み装置を用いて記録される。これらの第2の無線ICタグ4に書き込まれた製造情報は、同時にタイヤの品質管理システムを集中管理する集中管理サーバー(図示せず)にも記録され、データの連携を図る。
【0028】
このようにして製造されたタイヤ1は、タイヤ単独で市場に流通したり、メーカーで自動車等の車両に組み込まれたりし、その各流通段階では、第2の無線ICタグ4に対し入出庫情報等を記録することができる。
【0029】
そしてこのタイヤ1が搭載された車両をユーザーが走行させると、前記タイヤ状態検出センサ5がタイヤに加わる温度、回転、振動、応力、圧力等を適宜検出し、これを制御部6に送信し、制御部6はこのデータを、例えば一定時間ごとに自動的に時刻データとともに第1の無線ICタグ3に記録させたり、タイヤ状態検出センサ5がタイヤに加わる異状データを検出した場合にその検出した時刻データとともに記録させたりするものである。この第1の無線ICタグ3に記録された情報は、ICタグ読み取り装置を個別のタイヤに近づけることで読み取ることができる。
【0030】
尚、上述した実施例にあっては、本実施例に用いるメモリ装置の一例として強誘電体を利用した不揮発メモリのFeRAMについて説明したが、これに限られるものではなく、半導体材料等からなる不揮発性機能を有するメモリ装置であればよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のタイヤの一部分を切り欠いた説明斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 タイヤ
1a トレッド
2 カーカス構造体
3 第1の無線ICタグ
4 第2の無線ICタグ
5 タイヤ状態検出センサ
6 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内に配設され無線交信で情報の書き込み・読み取りが可能な無線ICタグと、同じく前記タイヤ内に配設されるタイヤ状態検出センサと、同じく前記タイヤ内に配設され前記タイヤ状態検出センサが検出したデータを前記無線ICタグに記録すべく送信する制御部を備えてなることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
タイヤ状態検出センサは、タイヤに加わる温度、回転、振動、応力、圧力のうち少なくとも一つを検出する機能を備えてなることを特徴とする請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
無線ICタグとタイヤ状態検出センサと制御部は、タイヤを構成するカーカス構造体に配設されることを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
無線ICタグは、カーカス構造体を構成するコード内に配設することを特徴とする請求項3記載のタイヤ。
【請求項5】
無線ICタグはICタグ書き込み装置及びICタグ読み取り装置との間で暗号化された信号で無線交信することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
無線ICタグは、半導体材料等よりなる不揮発性機能を有するメモリ装置を用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
制御部は、タイヤ状態検出センサが検出した信号を時刻データとともに無線ICタグに送信して記録することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
タイヤの製造段階及び流通段階における情報を無線交信で書き込むことができ、かつこの書き込まれた情報を無線交信で読み取り可能な製造管理及び流通管理のトレーサビリティ用の無線ICタグを別個に備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−195189(P2008−195189A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31774(P2007−31774)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(501415394)三智商事株式会社 (11)