説明

タイル押圧治具及びタイル押圧装置

【課題】タイルの接着性を向上しうる。
【解決手段】壁面Wに複数のタイルTを接着施工する際に、タイルTを壁面Wに押圧するために用いられるタイル押圧治具1である。このタイル押圧治具1は、治具本体2と、該治具本体2から突出しかつタイルTの表面Taに当接する端面12bを有した複数本のタイル押圧軸3とを含む。各タイル押圧軸3は、治具本体2から延びる向きに付勢されかつ治具本体2側への縮み移動に抵抗が与えられるとともに、各タイル押圧軸3は、それぞれ独立して縮み移動が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルの接着性を向上しうるタイル押圧治具及びタイル押圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅やビル等の外壁にタイルを接着して外観を高めることが行なわれている。このようなタイルの接着施工においては、接着剤が塗布された壁下地にタイルを貼り付けた後、タイルの表面を壁下地側へ押圧することが一般的に行なわれている。このような押圧は、タイルの裏面に接着剤を万遍なく付着させ、タイルの接着性を向上させるのに役立つ。
【0003】
また、タイルの表面を押圧する手段として、例えば、図9(a)に示されるように、本体bと、該本体bに固着されるスポンジ状の押圧層cとが設けられたタイル押圧治具aが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−231647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなタイル押圧治具aは、図9(b)に示されるように、例えば、厚さの異なるタイルdが混在する場合、押圧層cがそれらの表面eに追従して押圧することが難しく、タイルdの接着性を十分に向上できないという問題があった。特に、厚さの小さいタイルd1に対しては、押圧する力が不足しやすい傾向がある。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、各タイル押圧軸を、治具本体から延びる向きに付勢しかつ治具本体側への縮み移動に抵抗を与えるとともに、タイル押圧軸を、それぞれ独立して縮み移動可能とすることを基本として、タイルの接着性を向上しうるタイル押圧治具及びタイル押圧装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、壁面に複数のタイルを接着施工する際に、前記タイルを前記壁面に押圧するために用いられるタイル押圧治具であって、治具本体と、該治具本体から突出しかつタイルの表面に当接する端面を有した複数本のタイル押圧軸とを含み、前記各タイル押圧軸は、前記治具本体から延びる向きに付勢されかつ治具本体側への縮み移動に抵抗が与えられるとともに、各タイル押圧軸は、それぞれ独立して前記縮み移動が可能であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記各タイル押圧軸は、互いに平行に配列され、かつ、軸の長手方向にのみ縮み移動可能である請求項1に記載のタイル押圧治具である。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、各タイル押圧軸は、バネで付勢される請求項1又は2記載のタイル押圧治具である。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記各タイル押圧軸は、流体ダンパーで付勢される請求項1又は2記載のタイル押圧治具である。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、各タイル押圧軸は、バネで付勢された流体ダンパーのピストンロッドである請求項1又は2記載のタイル押圧治具である。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載されたタイル押圧治具と、この押圧治具に振動を与える振動工具とを一体に具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のタイル押圧治具は、治具本体と、該治具本体から突出しかつタイルの表面に当接する端面を有した複数本のタイル押圧軸とを含む。各タイル押圧軸は、治具本体から延びる向きに付勢されかつ治具本体側への縮み移動に抵抗が与えられるとともに、各タイル押圧軸は、それぞれ独立して縮み移動が可能である。
【0014】
このようなタイル押圧治具は、各タイル押圧軸が独立してタイルの表面を押圧することができるので、厚さの異なるタイルが混在する場合でも、それらの表面に追従して縮みつつ押圧することができる。従って、従来、押圧する力が不足しがちな厚さの小さいタイルに対しても十分な力で押圧することができるので、タイルの接着性を確実に向上しうる。
【0015】
また、請求項6記載のタイル押圧装置は、タイル押圧治具と、この押圧治具に振動を与える振動工具とを一体に具えるため、タイル押圧軸に伝達される振動により、タイルの裏面に接着剤を万遍なく付着させ、タイルの接着性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のタイル押圧治具及びタイル押圧装置を示す側面図である。
【図2】タイル押圧治具の斜視図である。
【図3】タイル押圧軸の断面図である。
【図4】図3の拡大図である。
【図5】縮み移動したタイル押圧軸を示す断面図である。
【図6】他の実施形態のタイル押圧軸の断面図である。
【図7】縮み移動したタイル押圧軸を示す断面図である。
【図8】他の実施形態のタイル押圧治具を示す部分断面図である。
【図9】(a)、(b)は従来のタイル押圧治具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、タイル押圧治具1及び及びタイル押圧装置Uは、例えば、住宅やビル等の壁面WにタイルTを接着施工する際に、タイルTを壁面Wに押圧するために用いられる。このような押圧は、タイルの裏面に接着剤を万遍なく付着させ、タイルの接着性を向上させるのに役立つ。本実施形態では、タイル押圧治具1と、この押圧治具に微振動を与える振動工具5とを一体に具えたタイル押圧装置Uが示される。
【0018】
本実施形態のタイル押圧治具1は、治具本体2と、該治具本体2から突出する複数のタイル押圧軸3とを含む。このタイル押圧軸3は、互いに平行に配列されている。
【0019】
前記治具本体2は、図2に示されるように、タイルT側を向く前面2a、該前面2aと反対側の裏面2b、及び前面2aと裏面2bとの間を継ぐ側面2cを有し、正面視において、略縦長矩形状に形成される。
【0020】
また、治具本体2は、正面視において、例えば、その長手方向の長さL1が100〜300mm程度、幅L2が100〜200mm程度、厚さL3が50〜100mm程度に設定される。この治具本体2は、金属材、木材、又は合成樹脂等から形成されるのが望ましい。
【0021】
治具本体2の前面2aには、厚さ方向に凹む複数の孔4が設けられる。この孔4は、図1に示されるように、例えば、直径L4が5〜10mm程度、深さL5が20〜50mm程度の円筒状に形成される。また、孔4の配列は、例えば、治具本体2の幅方向に3〜7個程度、長手方向に3〜7個程度設けられるとともに、隣り合う孔4との間隔L6が10〜20mm程度に設定される。
【0022】
また、治具本体2の裏面2bには、前記振動工具5が取付けられるアタッチメント6が設けられる。本実施形態のアタッチメント6は、図2に示されるように、裏面2b側において、治具本体2の孔4が設けられる領域7の大部分を覆う大きさを有している。
【0023】
前記振動工具5は、治具本体2のアタッチメント6に例えばネジによって固着される。この振動工具5は、該治具本体2を、該振動工具5の振動軸5Cの半径方向に振動させる。なお、振動工具5の振動数や振動量等は、適宜設定しうる。
【0024】
本実施形態のタイル押圧軸3は、図2及び図3に示されるように、治具本体2の孔4に挿入される第1の押圧軸11と、該第1の押圧軸11から突出しかつタイルT(図1に示す)側を向く一端側S1にのびる第2の押圧軸12と、該第2の押圧軸12を治具本体2から延びる向き(一端側S1)に付勢する付勢手段13とを含む。
【0025】
前記第1の押圧軸11は、円筒状の本体部11aと、該本体部11aの一端側S1で開口する孔部11bと、該孔部11bの一端側S1においてその内面から内側に突出する内鍔部11cとを有し、筒状に形成される。
【0026】
前記第1の押圧軸11の本体部11aは、前記治具本体2の孔4と略同一の外径に設定され、その大部分が治具本体2の孔4に挿入される。この本体部11aは、例えば、接着剤等を介して該孔4に固着されるのが望ましい。
【0027】
また、本実施形態の本体部11aには、その一端側S1において、その外面から外側に突出する鍔部17が設けられる。このような鍔部17は、図1に示されるように、治具本体2の孔4への挿入深さを一意に定め、隣り合うタイル押圧軸3の突出長さを容易に均一にしうる。
【0028】
前記第2の押圧軸12は、図3に示されるように、第1の押圧軸11の孔部11b内に少なくとも一部が配される略円柱状の本体部12aと、該本体部12aの一端側S1でタイルTの表面Ta(図1に示す)に当接する端面12bと、該本体部12aの他端側S2においてその外面から外側へ突出する外鍔部12cとを有する。
【0029】
第2の押圧軸12の前記本体部12aは、図4に拡大して示されるように、その直径L11が、第1の押圧軸11の孔部11bの内径L7、及び内鍔部11cの内径L8よりも小に形成される。
【0030】
また、第2の押圧軸12の前記外鍔部12cは、第1の押圧軸11の孔部11bの内部、かつ該第1の押圧軸11の内鍔部11cよりも他端側S2に配されるとともに、その外径L12が、第1の押圧軸11の孔部11bの内径L7よりも小、かつ内鍔部11cの内径L8よりも大に形成される。
【0031】
これにより、第2の押圧軸12は、第1の押圧軸11に、タイル押圧軸3の長手方向に移動可能に配されるとともに、一端側S1への移動により、外鍔部12cが第1の押圧軸11の内鍔部11cに当接して、第1の押圧軸11から抜け出るのが抑制される。
【0032】
また、第2の押圧軸12は、タイルTを押圧する際に、該タイルTの表面Taが損傷するのを防止するため、例えば、合成樹脂、ゴム等の比較的軟質なものから形成されるのが望ましい。
【0033】
図3に示されるように、本実施形態の付勢手段13は、コイル状のバネ13Aからなる。このバネ13Aは、第1の押圧軸11の孔部11b内に配されるとともに、該孔部11bの底部11dと第2の押圧軸12の他端側S2の底部12dとの間で、圧縮された状態で配される。これにより、第2の押圧軸12は、一端側S1に付勢される。
【0034】
このようなタイル押圧軸3は、第2の押圧軸12の端面12bに治具本体2側(他端側S2)への力F1を加えて、第2の押圧軸12を他端側S2へ移動させると、図5に示されるように、孔部11bの底部11dと第2の押圧軸12の底部12dとが近接し、バネ13Aが収縮する。これにより、タイル押圧軸3は、バネ13Aの復元力により、タイル押圧軸3の縮み移動に抵抗F2が与えられる。
【0035】
また、第2の押圧軸12の端面12bに加えられた力が解放されると、バネ13Aの復元力により、第2の押圧軸12が一端側S1に押し戻され、図3に示される状態に戻る。このように、各タイル押圧軸3は、その長手方向にのみ縮み移動可能に形成されるとともに、治具本体2に配される複数のタイル押圧軸3のそれぞれが、独立して縮み移動しうる。
【0036】
図1に示されるように、タイル押圧治具1は、各タイル押圧軸3の端面12bがタイルTの表面Taに押し当てられると、各タイル押圧軸3が独立して縮み移動し、タイルTを壁面Wに押圧することができる。従って、タイル押圧治具1は、例えば、厚さの異なるタイルT1、T2が混在する場合でも、それらの表面Taに追従して十分な力で押圧できるので、タイルTの接着性を確実に向上しうる。
【0037】
また、本実施形態では、タイル押圧治具1と、この押圧治具1に振動を与える振動工具5とを一体に具えたタイル押圧装置Uとして構成されるので、タイル押圧軸3に伝達される微振動により、タイルTの裏面に接着剤を万遍なく付着させ、タイルの接着性をさらに向上させることができる。
【0038】
さらに、振動工具5のアタッチメント6は、治具本体2の裏面2b側において、治具本体2の孔4が設けられる領域7の大部分を覆っているため、振動工具5が用いられる場合、その振動を各タイル押圧軸3に万遍なく伝達することができ、タイルTの接着性をさらに向上しうる。
【0039】
なお、本実施形態では、付勢手段13として、バネ13Aからなるものが示されたが、例えば、流体ダンパー(図示省略)からなるものでもよいのはいうまでもない。
【0040】
図6には、本発明の他の実施形態のタイル押圧軸3が示される。
この実施形態のタイル押圧軸3は、バネ13Aで付勢された流体ダンパーのピストンロッド16として形成される。
【0041】
第2の押圧軸12には、前実施形態の第2の押圧軸12の構成に、端面12bと底部12dとの間で、本体部12aの外面から半径方向外側へ突出する中鍔部12eと、外鍔部12cを第2の押圧軸12の長手方向に連通する貫通孔12fとが新たに設けられる。また、本体部12aは、第1の押圧軸11の内鍔部11cにシールされながら、一端側S1及び他端側S2へ移動可能に配される。
【0042】
また、この実施形態では、第1の押圧軸11の底部11dと第2の押圧軸12の底部12dとの間に、該第1の押圧軸11の孔部11bの内面にシールされながら一端側S1及び他端側S2へ移動するフリーピストン20が設けられる。
【0043】
さらに、本実施形態の付勢手段13は、第1の押圧軸11の内鍔部11cと第2の押圧軸12の中鍔部12eとの間に配されるバネ13A、第1の押圧軸11の内鍔部11cとフリーピストン20との間に配される流体13B、及びフリーピストン20と第1の押圧軸11の底部11dとの間に配される高圧ガス13Cを含む。
【0044】
前記バネ13Aは、第1の押圧軸11の内鍔部11cと第2の押圧軸12の中鍔部12eとの間で、圧縮された状態で配される。これにより、バネ13Aは、第2の押圧軸12を一端側S1に付勢しうる。
【0045】
前記流体13Bは、例えば、粘性抵抗を発生させるオイルからなり、第1の押圧軸11の内鍔部11cとフリーピストン20との間で保持される。
【0046】
このようなタイル押圧軸3は、第2の押圧軸12の端面12bに他端側S2へ力F1が加えられると、図7に示されるように、第2の押圧軸12が、その外鍔部12cの貫通孔12fから流体13Bを通過させながら他端側S2へ移動する。
【0047】
この第2の押圧軸12の移動に伴い、流体13Bは、第2の押圧軸12の浸入による体積増加分により、フリーピストン20を他端側S2へ移動させ、高圧ガス13Cをさらに圧縮する。これにより、タイル押圧軸3は、バネ13A及び高圧ガス13Cの復元力によって、他端側S2への縮み移動に抵抗F2が与えられる。
【0048】
また、第2の押圧軸12の端面12bに加えられた力が解放されると、バネ13A及び高圧ガス13Cの復元力により、第2の押圧軸12が、貫通孔12fから流体13Bを通過させながら一端側S1に押し戻され、図6に示される状態に戻る。
【0049】
従って、このようなタイル押圧軸3も、治具本体2に配されることにより、それぞれ独立して縮み移動できるので、タイルTの接着性を向上しうる。しかも、この実施形態のタイル押圧軸3は、流体13Bが、バネ13Aが伸び縮みを繰り返す周期振動を吸収しうるので、タイルT(図1に示す)の押圧作業をより安定して行いうる。
【0050】
図8には、本発明の他の実施形態のタイル押圧治具1が示される。
この実施形態のタイル押圧治具1は、複数のタイル押圧軸3の流体13Bが、第1の押圧軸11、11の他端側S2で連通される。また、第2の押圧軸12の外鍔部12cには、前実施形態のような貫通孔12f(図6に示す)が設けられないため、バネ13Aの復元力が、フリーピストン及び流体13Bを介して各第2の押圧軸12に伝達される。
【0051】
このようなタイル押圧治具1は、各第2の押圧軸12に、バネ13Aの復元力を均一に伝達することができるので、例えば、厚さが異なるタイルT1、T2(図1に示す)に対する押圧力を均一にでき、タイルTの接着性を確実に向上しうる。
【0052】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。例えば、流体ダンパーは、オイル等の液体のみを用いたものや、気体のみを用いたものでもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 タイル押圧治具
2 治具本体
3 タイル押圧軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に複数のタイルを接着施工する際に、前記タイルを前記壁面に押圧するために用いられるタイル押圧治具であって、
治具本体と、該治具本体から突出しかつタイルの表面に当接する端面を有した複数本のタイル押圧軸とを含み、
前記各タイル押圧軸は、前記治具本体から延びる向きに付勢されかつ治具本体側への縮み移動に抵抗が与えられるとともに、
各タイル押圧軸は、それぞれ独立して前記縮み移動が可能であることを特徴とするタイル押圧治具。
【請求項2】
前記各タイル押圧軸は、互いに平行に配列され、かつ、軸の長手方向にのみ縮み移動可能である請求項1に記載のタイル押圧治具。
【請求項3】
前記各タイル押圧軸は、バネで付勢される請求項1又は2記載のタイル押圧治具。
【請求項4】
前記各タイル押圧軸は、流体ダンパーで付勢される請求項1又は2記載のタイル押圧治具。
【請求項5】
前記各タイル押圧軸は、バネで付勢された流体ダンパーのピストンロッドである請求項1又は2記載のタイル押圧治具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたタイル押圧治具と、この押圧治具に振動を与える振動工具とを一体に具えることを特徴とするタイル押圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−172497(P2012−172497A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38840(P2011−38840)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)