説明

タクシーメータ

【課題】タクシーメータが運賃を加算するタイミングに近づいた時の乗客の心理的負担を解消することにある。
【解決手段】タクシー車輌の走行距離と走行時間とに基づいて運賃を計算する運賃計算部3と、前記タクシー車輌の運賃を表示する運賃表示部4と、前記計算した運賃を前記運賃表示部に表示させる表示制御部3と、前記タクシー車輌の乗客が操作可能な位置に配置され、乗客の操作に応じて運賃計算部3に対し運賃の加算を停止させる停車指示信号を出力する乗客用操作器9と、を具えてなるタクシーメータである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タクシー運賃を計算して表示するタクシーメータに関し、特には、乗客の利便性を高めたタクシーメータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタクシーメータは、タクシー車輌の車軸が所定角度回転する毎に検出器から出力される走行用パルス(距離パルス)を入力して走行距離を計測し、併せてその走行用パルスを入力した間隔をタイマーで計測して車速を求めて、所定低車速以下での走行時間が基準時間を経過する毎に所定距離走行したものとし、計測した走行距離が所定距離になる毎および所定低車速以下での走行時間が基準時間を経過する毎に、初回の運賃上昇までの基本距離あるいはその後の運賃上昇までの加算距離からその走行した距離および走行したものとした距離を減じて行き、残り距離が0になると運賃を加算している。
【0003】
ところで、タクシー運賃は上記のように加算されてステップ関数的に上昇するものであるため、乗客にはできれば運賃が上昇する前にタクシー車輌を停車させたいという要望がある。そこで従来のタクシーメータとして、運賃を加算するタイミングに近づくに従って基本タリフ表示部の表示状態を変化させて、運賃を加算するタイミングを乗客に知らせるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−316909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例え上記タクシーメータで運賃を加算するタイミングの表示を見た乗客が運転手にタクシー車輌を止めるように指示しても、運転手が実際に車輌の走行を止めるまでにある程度の距離を走ったり、所定低速走行速度以下の速度で走ったためにタイマーが進んだりしてしまえば運賃が加算されて運賃が上昇してしまうという問題があり、それゆえ従来のタクシーメータでは、運賃を加算するタイミングに近づいたときの乗客の心理的負担が充分には解消されないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のタクシーメータは、タクシー車輌の走行距離と走行時間とに基づいて運賃を計算する運賃計算部と、前記タクシー車輌の運賃を表示する運賃表示部と、前記計算した運賃を前記運賃表示部に表示させる表示制御部と、前記タクシー車輌の乗客が操作可能な位置に配置され、前記乗客の操作に応じて前記運賃計算部に対し運賃の加算を停止させる停車指示信号を出力する乗客用操作器と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
かかるこの発明のタクシーメータにあっては、運賃計算部がタクシー車輌の走行距離と走行時間とに基づいて運賃を計算し、その計算した運賃を表示制御部が運賃表示部に表示させる。そしてタクシー車輌の乗客が操作可能な位置に配置された乗客用操作器が、乗客の操作に応じて、運賃計算部に対し運賃の加算を停止させる停車指示信号を出力する。
【0008】
従って、この発明のタクシーメータによれば、乗客が乗客用操作器を操作することで、タクシー車輌が目的地に近づいた時や運賃加算直前まで走行した時に運賃計算部に運賃の加算を停止させることができるので、その運賃加算停止後に運転手が実際にタクシー車輌の走行を止めるまでにある程度の距離を走ったり所定低速走行速度以下の速度で走ったりしても運賃が上昇する心配がないため、運賃を加算するタイミングに近づいたときの乗客の心理的負担を充分に解消して、乗客の利便性を高めることができる。
【0009】
なお、この発明のタクシーメータにおいては、前記乗客用操作器は、前記停車指示信号として、前記タクシー車輌の運賃加算直前での停車を指示して前記運賃の加算を停止させる運賃加算前停車指示信号を出力する運賃加算前停車スイッチを有していても良く、このようにすれば、タクシー車輌が目的地に到着する前や運賃が加算される前に、乗客が乗客用操作器の運賃加算前停車スイッチを操作することで、停車指示信号として、タクシー車輌の運賃加算直前での停車を指示して運賃の加算を停止させる運賃加算前停車指示信号を出力させて、運賃計算部に対し運賃の加算を即時停止させ、運賃の上昇を回避しつつ、運賃の加算直前まで充分に乗車することができる。
【0010】
また、この発明のタクシーメータにおいては、前記乗客用操作器は、前記停車指示信号として、前記タクシー車輌の即時停車を指示して前記運賃の加算を停止させる即時停車指示信号を出力する停車スイッチを有していても良く、このようにすれば、タクシー車輌が目的地に充分近づいて乗客がタクシー車輌を停車させてもよいと思ったときに、乗客が乗客用操作器の停車スイッチを操作することで、停車指示信号として、タクシー車輌の即時停車を指示して運賃の加算を停止させる即時停車指示信号を出力させて、運賃計算部に対し運賃の加算を即時停止させ、運賃の上昇を回避することができる。
【0011】
さらに、この発明のタクシーメータにおいては、前記乗客用操作器は、セパレート型の前部座席の運転席と助手席との間に配置されていても良く、このようにすれば、乗客用操作器に乗客の手が届きやすいので乗客が乗客用操作器を容易に操作することができる。
【0012】
そして、この発明のタクシーメータにおいては、前記乗客用操作器は、セパレート型またはベンチ型の前部座席の背もたれの背面に配置されていても良く、このようにすれば、乗客用操作器に乗客の手が届きやすいので、乗客が乗客用操作器を容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明のタクシーメータの一実施例の構成を機能ブロックで示すブロック線図である。
【図2】上記実施例のタクシーメータにおける乗客用操作器の一変形例の構成を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のタクシーメータの一実施例の構成を機能ブロックで示すブロック線図であり、この実施例のタクシーメータは、図1に示すように、走行時間計測部1と、走行距離計測部2と、運賃計算部および表示制御部としての中央処理ユニット(CPU)3と、運賃表示部4とを具え、CPU3にはタリフの選択用に、支払スイッチ5と、空車スイッチ6と、賃走スイッチ7と、割引スイッチ8とが接続されており、これら走行時間計測部1と走行距離計測部2とCPU3と運賃表示部4と各スイッチ5〜8とは、タクシー車両の運転席脇等にタクシー運転手および乗客から視認可能なように配置されるメータ本体に設けられている。
【0015】
ここで、走行時間計測部1は、水晶発信式のタイマーにより計時を行い、走行距離計測部2は、タクシー車輌の車軸が所定角度回転する毎に検出器から出力される走行用パルス信号(距離パルス信号)を入力することでタクシー車輌の走行距離を計測し、上記走行用パルス信号を入力する度毎に、上記所定回転角度分の車軸の回転による単位走行距離を出力する。
【0016】
CPU3は、賃走スイッチ7または所定の場合の運賃割引に用いられる割引スイッチ8が入れられた後、支払スイッチ5が入れられるまで運賃計算部として、走行距離計測部2が単位走行距離を出力する度毎に上記単位走行距離を初回の運賃上昇までの基本距離あるいはその後の運賃上昇までの加算距離から減じるとともに、その単位走行距離が出力される時間間隔を走行時間計測部1のタイマーを用いて計測してその時間間隔から車速を求め、車速が例えば10km/hの所定低車速以下の場合はその所定低車速以下での走行時間を走行時間計測部1のタイマーを用いて計測し、所定低車速以下での走行時間が基準時間より長い場合はその基準時間を経過する毎に所定距離走行したものとしてその走行距離を上記基本距離あるいはその後の加算距離から減じて行き、残り距離が0になると運賃を加算するという運賃計算を行い、空車スイッチ6が入れられた後は、賃走スイッチ7または割引スイッチ8が入れられるまで運賃計算を行わない。
【0017】
そして運賃表示部4は、例えば液晶等からなる運賃表示画面を有し、CPU3はまた表示制御部として、その運賃表示部4の作動を制御して、上記運賃計算で求めた運賃をその運賃表示部4の運賃表示画面に逐次表示させる。
【0018】
ところでCPU3の上記のような通常の運賃計算においては、所定低車速での走行時間の計時中に走行速度が所定低車速を超えて上昇すると一旦計時を止めるが、その後また所定低車速以下に戻ると先に計時した時間をリセットせずに計時を再開し、再開後に計時した時間を先に計時した時間と合計して、所定低車速での走行時間が基準時間を越えるまで所定低車速での走行時間を累積的に計時している。このため所定低車速での走行時間が基準時間に達する直前で目的地に近づきと、停車前の低速走行で基準時間に達して運賃が上昇する場合があり、これが乗客の心理的負担になる。
【0019】
そこでこの実施例のタクシーメータは、かかる乗客の心理的負担をなくすため、図1に示すように、さらに乗客用操作器9を具えている。この乗客用操作器9は、タクシー車輌の乗客が手が届いて操作し易いように、タクシー車輌の前部座席がセパレート型の場合はその前部座席の運転席と助手席との間あるいはそれらの前部座席の背もたれの背面に配置され、タクシー車輌の前部座席がベンチ型の場合はその前部座席の背もたれの背面に配置されるもので、運賃加算前停車スイッチ10と、停車スイッチ11とを有し、これら運賃加算前停車スイッチ10と停車スイッチ11とは各々、CPU3に接続されている。
【0020】
運賃加算前停車スイッチ10は、乗客がその運賃加算前停車スイッチ10を入れると、タクシー車輌の運賃加算直前での停車を指示して運賃の加算を停止させる運賃加算前停車指示信号としてのON信号を出力し、CPU3は、運賃加算前停車スイッチ10からON信号を入力すると、以後の運賃の加算を停止するとともに、運賃表示部4の表示画面に、乗客からタクシー車輌の運賃加算直前での停車を指示されたことを運転手に知らせる表示を出力させる。これにより運転手は、走行距離の測定による運賃加算の直前の走行距離まで、乗客の要望に応じてタクシー車輌を走行させる。
【0021】
また停車スイッチ11は、乗客がその停車スイッチ11を入れると、タクシー車輌の即時停車を指示して運賃の加算を停止させる即時停車指示信号としてのON信号を出力し、CPU3は、停車スイッチ11からON信号を入力すると、以後の運賃の加算を停止するとともに、運賃表示部4の表示画面に、乗客からタクシー車輌の即時停車を指示されたことを運転手に知らせる表示を出力させる。これにより運転手は、安全を確保しつつ可能な限り迅速にタクシー車輌を停車させる。
【0022】
従って、この実施例のタクシーメータによれば、乗客が乗客用操作器5を操作することで、タクシー車輌が目的地に近づいた時や運賃加算直前まで走行した時にCPU3に運賃の加算を停止させることができるので、その運賃加算停止後に運転手が実際にタクシー車輌の走行を止めるまでにある程度の距離を走ったり所定低速走行速度以下の速度で走ったりしても運賃が上昇する心配がないため、運賃を加算するタイミングに近づいたときの乗客の心理的負担を充分に解消して、乗客の利便性を高めることができる。
【0023】
しかもこの実施例のタクシーメータによれば、乗客用操作器5は運賃加算前停車スイッチ10を有しているので、タクシー車輌が目的地に到着する前や運賃が加算される前に、乗客が乗客用操作器5の運賃加算前停車スイッチ10を操作することで、停車指示信号として、タクシー車輌の運賃加算直前での停車を指示して運賃の加算を停止させる運賃加算前停車指示信号を出力させて、CPU3に対し運賃の加算を即時停止させ、運賃の上昇を回避しつつ、運賃の加算直前まで充分に乗車することができる。
【0024】
また、この実施例のタクシーメータによれば、乗客用操作器5は停車スイッチ11を有しているので、タクシー車輌が目的地に充分近づいて乗客がタクシー車輌を停車させてもよいと思ったときに、乗客が乗客用操作器5の停車スイッチ11を操作することで、停車指示信号として、タクシー車輌の即時停車を指示して運賃の加算を停止させる即時停車指示信号を出力させて、CPU3に対し運賃の加算を即時停止させ、運賃の上昇を回避することができる。
【0025】
図2は、上記実施例のタクシーメータにおける乗客用操作器5の一変形例の構成を示すブロック線図であり、この変形例では、運賃加算前停車スイッチ10を省略するとともに停車スイッチ11を支払スイッチ5に並列にしてCPU3に接続している。
【0026】
この変形例によれば、簡易な構成で、タクシー車輌の即時停車を指示して運賃の加算を停止させる即時停車指示信号をCPU3に入力することができる。なお、停車スイッチ11を支払スイッチ5と並列に接続するのは、上記実施例のCPU3に限られず、通常のタクシーメータの運賃計算部であっても良い。
【0027】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更でき、例えば、CPU3は上記例以外の方法で、所定の規定に基づく運賃計算を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
かくしてこの発明のタクシーメータによれば、乗客が乗客用操作器を操作することで、タクシー車輌が目的地に近づいた時や運賃加算直前まで走行した時に運賃計算部に運賃の加算を停止させることができるので、その運賃加算停止後に運転手が実際にタクシー車輌の走行を止めるまでにある程度の距離を走ったり所定低速走行速度以下の速度で走ったりしても運賃が上昇する心配がないため、運賃を加算するタイミングに近づいたときの乗客の心理的負担を充分に解消して、乗客の利便性を高めることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 走行時間計測部
2 走行距離計測部
3 CPU(運賃計算部、表示制御部)
4 運賃表示部
5 支払スイッチ
6 空車スイッチ
7 賃走スイッチ
8 割引スイッチ
9 乗客用操作器
10 運賃加算前停車スイッチ
11 停車スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タクシー車輌の走行距離と走行時間とに基づいて運賃を計算する運賃計算部と、
前記タクシー車輌の運賃を表示する運賃表示部と、
前記計算した運賃を前記運賃表示部に表示させる表示制御部と、
前記タクシー車輌の乗客が操作可能な位置に配置され、前記乗客の操作に応じて前記運賃計算部に対し運賃の加算を停止させる停車指示信号を出力する乗客用操作器と、
を具えてなる、タクシーメータ。
【請求項2】
前記乗客用操作器は、前記停車指示信号として、前記タクシー車輌の運賃加算直前での停車を指示して前記運賃の加算を停止させる運賃加算前停車指示信号を出力する運賃加算前停車スイッチを有することを特徴とする、請求項1記載のタクシーメータ。
【請求項3】
前記乗客用操作器は、前記停車指示信号として、前記タクシー車輌の即時停車を指示して前記運賃の加算を停止させる即時停車指示信号を出力する停車スイッチを有することを特徴とする、請求項1または2記載のタクシーメータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−262348(P2010−262348A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110664(P2009−110664)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(592059448)原田電子工業株式会社 (20)