説明

タバコの処理におけるフェノール酸化酵素の利用

【課題】タバコの品質を改良し、且つタバコの風味を改変するため、タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理して改良されたタバコ材料を提供する。
【解決手段】タバコ製品のタンパク質及びフェノール系化合物、例えばポリフェノールのタバコからの除去調製のための方法であって、タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する工程を含んで成る方法であって、ここで当該フェノール酸化酵素がモノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC1,14,18,1)であることを除く、ルチン、スコポレチン及びクロロゲン酸などのフェノール酸化酵素を用いる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタバコの調製及び処理に関する。より詳しくは、本発明はタバコ材料をフェノール酸化酵素で処理して改良されたタバコ材料を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコの品質を改良し、且つタバコの風味を改変するための方法は常に切望されている。このような総括的な目標を念頭に置きながら、とりわけタンパク質及びフェノール系化合物、例えばポリフェノールのタバコからの除去に対する努力が現状払われている。タバコ材料のタンパク質及びポリフェノール含量を低下させるための方法に関連する米国特許第5,601,097号参照のこと。
タバコ葉の中に存在するポリフェノールのうちクロロゲン酸が主要であり、そしてタバコ葉の中の低レベルのクロロゲン酸はタバコの煙の中の所望されない成分カテコールのレベルの低下に結びつく。Schlotzhauer W.S.(1992), Journal of Analytical and Applied Pyrolysis. Vol22, 頁231−238参照のこと。
【0003】
固体吸着剤、例えばアルミナを利用するタバコからのフェノール化合物の除去のための方法は米国特許第3,561,451号に開示されている。米国特許第5,601,097号はかかる方法における別の不溶性吸着剤、即ち、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)の利用を開示する。しかしながら、これらの方法は比較的非選択的である点で不利である。
【0004】
GB2069814Bはタバコをオキシドリダクターゼ(例えばモノフェノールモノオキシゲナーゼ、EC 1.14.18.1)、リアーゼ、ヒドロラーゼから選ばれる酵素及びかかる酵素の起源を構成する微生物の作用に委ねることによりタバコの構造を改変し、その化学組成を改変し、そしてその官能的特徴を改変する方法に関する。
【発明の概要】
【0005】
第一の観点において、本発明はタバコ製品を調製するための方法を提供し、この方法はタバコ材料をフェノール改変酵素、好ましくはフェノール酸化酵素、そして最も好ましくはポリフェノール酸化酵素で処理することを含んで成る。
【0006】
一の観点において、本発明はタバコ材料中のフェノール系化合物の量を低下するための方法を提供し、その方法においてはタバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する。
【0007】
本発明を従うと、フェノール系化合物の含有量の低下した改良タバコ材料はタバコエキスをフェノール酸化酵素で処理することにより達せられる。
【0008】
更なる観点において、本発明はタバコ製品を調製するための方法に関連し、この方法はタバコ材料を溶媒で抽出してエキスとタバコ残渣とを供し;そしてこのエキスをフェノール酸化酵素で処理する工程を含んで成る。
【0009】
更なる観点において、本発明は顧客の要望事項の改善、例えば消費者の喫煙の楽しみを、例えば化学組成、フレーバー、芳香、味及び/又は色を改変することにより改善し、かくして市場でのタバコ製品の多様性を広げる方法に関連する。
【0010】
更なる観点において、本発明はタバコの調製又は処理におけるフェノール酸化酵素の利用に関する。一の態様において、本発明はタバコの処理におけるラッカーゼの利用に関する。
【0011】
別の観点において、本発明は本明細書に記載の任意の方法により得ることのできる、特に得られたタバコ材料に関連する。本発明の最終的なすぐに利用できるタバコ製品、並びに特許請求項の範囲に記載の任意の方法により処理されたタバコ材料の任意のエキスを包括する。このようなタバコ材料は軽減した量のフェノール系化合物を有する。
【0012】
発明の詳細な開示
本発明はタバコ製品を調製するための方法を提供し、この方法は(i)タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する工程を含んで成る。
本明細書において使用する表現「タバコ材料」とは、どのようなタイプ、ソース又は起源を問わず、また本発明の処理にかける前にどのようなその他の種類の処理にかけられているのかを問わず、本発明における様々な処理のためのタバコ出発材料を意味する。従って、「タバコ材料」には、限定することなく、ソース及び等級に関係なく、タバコ固形分及びタバコの任意の固形形態、例えば乾燥タバコ(例えばくんせいタバコ);乾燥、熟成、切断、粉砕、精製又は細断タバコ;タバコスクラップ;エキスパンドタバコ、発酵タバコ;再構築タバコ;並びにこのようなタバコ材料の任意の組合せが含まれる。また、タバコブレンドも含まれる。このタバコ材料はタバコ植物の任意の器官、例えば幹、葉脈、スクラップ及び廃棄タバコ、カッティング等、並びにホール葉及びその一部に由来しうる。好ましくは、本発明の出発材料として利用するタバコ材料はタバコの葉のラミナ部分である。好適な態様において、このタバコ材料は乾燥タバコの一部又は全部である。特に、この表現はタバコの調製又は処理工程にかけるタバコ原材料を包含する。本発明の特定の態様において、タバコ材料なる語はタバコエキス又は任意の固形タバコ形態のタバコ抽出混合物を含む。好ましくは、乾燥タバコのエキスを使用する。本発明の方法において利用されるタバコ材料は任意のタバコの種であって、それからタバコ製品を作ることが所望されるものに由来しうる。特に関心のもたれるのは亜族ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来のタバコである。
【0013】
「タバコ製品」なる語は本発明の任意の方法に由来する製品を意味する。これに含まれるのは、限定することなく、最終的なすぐに使用できるタバコ製品、並びにタバコ材料の任意のエキスであり、ここでこのエキスは特許請求の範囲に記載の任意の方法により処理されたものである。かくして、「タバコ製品」なる語には、本発明に係る方法が適用された最終製品が含まれ、特にこの語は喫煙のためのタバコ製品、例えば紙巻タバコ、葉巻、パイプタバコが含まれるが、その他の種類のタバコ製品、例えばタバコエキス及びかむためのタバコ、例えばかみタバコ及びタバコチューインガムも含まれる。
【0014】
本発明はタバコ製品を調製するための方法であって、(i)タバコ材料をフェノール改変酵素、好ましくはフェノール酸化酵素、そして最も好ましくはポリフェノール酸化酵素で処理する、即ち、それらと接触させる工程を含んで成る方法を包括する。一の態様において、この酵素はモノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.18.1)ではない。
【0015】
好適な態様において、本発明のこの方法は(ii)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;(iii)この抽出混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分ける;工程を含んで成り、ここで工程(i)、即ち、フェノール酸化酵素による処理を工程(ii)の最中又は後、且つ工程(iii)の前に実施するか、又は工程(iii)の後にこのエキスに対して実施する。
【0016】
一の態様において、本発明はタバコ製品を調製するための方法を提供し、この方法は(ii)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;(iii)この抽出混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分け;(i)このタバコエキスをフェノール酸化酵素で処理して1又は複数種の酸化フェノール系化合物を提供することを含んで成る。
【0017】
本発明はタバコ中のフェノール化合物の量を低下するための方法を提供し、これによるとタバコ材料の可溶性フェノール系化合物を抽出混合物の液体部分へと抽出し、かくしてフェノール酸化酵素の作用を促進する。
【0018】
この抽出工程のために用いる溶媒は好ましくは水性溶媒である。しかしながら、水及び有機溶媒の混合物も、水溶性ではない、又はほんのわずかに水溶性であるフェノール成分、例えばリグニン又はその他の疎水性化合物の抽出に使用してよい。
水性抽出により、タバコ材料の水溶性フェノール系化合物は、とりわけニコチン、可溶性タンパク質、糖、アミノ酸、ペクチン、無機塩、及び適宜使用した界面活性剤と共に水性エキスの中に分配されるであろう。
【0019】
かくして、一般に本発明の方法において、大量の水、即ち、30%超、例えば50%、好ましくは60%超、より好ましくは75%超、更により好ましくは90%超、そして最も好ましくは95%超の水、例えば99%超の水(%は重量パーセントを意味する)を含んで成る水性溶媒を使用してこのタバコ材料を抽出する。本発明の一の態様において、このタバコ材料の抽出は100%の水から成る水性溶媒で実施する。
【0020】
従って、この水性溶媒は水以外の追加の成分、例えばアルコール、例えばエタノールもしくはメタノール;又はその他の水混和性溶媒、例えばジメチルプロピレン尿素、N−メチルピロリドン、アセトン、プロパン−2−オール、プロパン−1−オール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1,4−ジオキサン、モルホリン、ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、スルホラン、グリセロール又はトリエタノールアミンを含んで成ってよい。
【0021】
この溶媒は追加の成分、例えば限定することなく、界面活性剤(アニオン系、例えばドデシル硫酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、カチオン系、又は非イオン系);酵素、例えばタンパク質分解酵素、例えばNovo Nordisk A/S,Denmark由来のSavinase(商標)を含んで成ってよい。
【0022】
このタバコ材料を有機溶媒及び水性溶媒の双方で2通りの異なる工程において抽出し、水又は水性溶媒において不溶性である又はほんのわずかにしか可溶性でない成分を抽出してよい。このタバコ材料の水性溶媒による抽出はこのタバコ材料の有機溶媒による抽出の前又は後に行ってよい。本発明の一の態様において、このタバコ材料の抽出は水性溶媒で行う。任意的に、このタバコ材料の有機溶媒による更なる抽出をタバコ材料の水性抽出の前又は後に実施する。この有機溶媒は純粋な水混和性有機溶媒、例えばアルコール、例えばエタノールもしくはメタノール、又はその他の水混和性溶媒、例えばジメチルプロピレン尿素、N−メチルピロリドン、アセトン、プロパン−2−オール、プロパン−1−オール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1,4−ジオキサン、モルホリン、ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、スルホラン、グリセロール、トリエタノールアミン、又は純粋な水非混合性有機溶媒、例えばアルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、アルカン、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ペンタン、ヘキサンもしくはジオキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、シクロヘキサン、リグロイン、石油エーテル、トルエン、キシレン、アニソールであってよい。
【0023】
フェノール酸化酵素による処理段階において、この抽出混合物又はエキスのみ、即ち、タバコ残渣の実質的にない環境は酵素が活性であることができる環境であるべきである。通常、これは酵素処理を有機溶媒相ではなく、水性溶媒相で実施することを要する。タバコ材料の抽出を有機溶媒を用いて実施するなら、水性抽出工程を有機エキスの液一液抽出として行い、水性相を提供する(この水性相はタバコ材料の水性エキスなる語の中に包括されるものと理解されるべきである)。水溶性有機溶媒と水との混合物を使用するなら、有機溶媒の含有量は有機溶媒の除去のための慣用の方法、例えばエバポレーション又は凍結(冷却)により減少させてよい。
【0024】
好適な態様において、タバコ材料をまず水性溶媒、好ましくは水で抽出する。次いでこのタバコ残渣を有機溶媒で処理して有機溶媒中では可溶性であるが、水性溶媒では可溶性でないフェノール系化合物を抽出してよい。得られる有機エキス(即ち、タバコ残渣から分離させた液体部分。このタバコ残渣は抽出混合物の団体部分である)は無視するか、又は好ましくは液一液抽出の後にタバコ材料との組合せのための水性相、例えばフェノール酸化酵素処理タバコエキスを供するために利用してよい。
【0025】
本発明に従うと、抽出工程は可溶性フェノール系化合物の抽出を最大限にする条件下で実施することが、必須ではないが好ましい。しかしながら、部分抽出でさえも、最後タバコ製品中のフェノール系化合物の濃度を究極的に低下させるのに有用である。適当な抽出条件のいくつかの例を以下に挙げる。一般に、これらの条件はいずれも条件のマトリックスを樹立し、そしてこのマトリックス中の様々な点を試験することによりルーチン実験だけで最適化が図れうる。
【0026】
適当な抽出工程条件は例えば10〜80℃、30〜80℃、例えば20〜70℃、30〜70℃、45〜70℃、例えば35〜60℃、例えば40〜55℃、約45〜50℃、典型的には約45℃の温度;3〜10のpH、例えば4〜9、4〜8、5〜8、5〜7、例えば5〜6のpH;5分〜24時間、1〜24時間、例えば5分〜10時間、1分〜5時間、5分〜5時間、5分〜1時間、5分〜1/2時間、典型的には約15分の抽出時間である。好ましくは水性である溶媒を好都合にはタバコ材料の量(乾燥重量)の5〜200倍、例えば5〜100倍、より好ましくは5〜50倍、最も好ましくは10〜50倍、典型的には約40倍の量で添加する。この抽出は好都合にはタバコ材料と溶媒とを撹拌しながら、又はその他の種類の混合を行いながら実施する。
【0027】
抽出のために用いる溶媒中の任意の界面活性剤は、限定することなく、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウムもしくはカリウム塩、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、又は以上の任意の混合物であってよい。特に8〜12個の炭素原子の炭素長を有する界面活性剤が考えられる。本発明の特定の態様において、この界面活性剤は1又は複数種のドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(Aerosol OT(商標))である。この界面活性剤は0.01%〜5%w/vの溶液の濃度範囲で溶媒に加える。
【0028】
本発明に従うと、抽出混合物を提供できたら、タバコ残渣を好ましくはフェノール酸化酵素による処理の前又は後(好ましくは前)にエキスから分離させる。この分離は任意の方法、例えば限定することなく、遠心分離、濾過、沈降、デカンテーションもしくはふるい分け又は任意のそれらの組合せを利用して実施してよい。特に好適な分離方法は濾過及び遠心分離である。
【0029】
任意的な界面活性剤はエキスから除去することが好ましく、このエキスは好ましくは水性エキスである。これは例えば4℃にまで冷却して界面活性剤を沈澱させる、及び/又は例えば無機カルシウムもしくはマグネシウム塩を利用して沈澱させ、しかる後例えば遠心分離を行うことにより実施してよい。
【0030】
本明細書で用いる語「タバコ残渣」とは「タバコ材料」の抽出(抽出液の種類は関係ない)、しかる後の液体画分(「タバコエキス」)から分離(例えば濾過又は遠心分離による)により得られる固体タバコ材料を意味する。このタバコ残渣はタバコの水不溶性部分を意味する。このタバコ残渣は更なる処理/加工、例えば乾燥にかけてよい。
【0031】
「タバコエキス」なる語は「タバコ材料」の抽出(抽出液の種類は関係ない)、しかる後の固体抽出材料(「タバコ残渣」)からの分離(例えば濾過又は遠心分離による)により得られる液体画分を意味する。従って、このタバコエキスはタバコの可溶性成分を含んで成り、そしてタバコ固形分を実質的に含まない。このタバコエキスはその他の添加剤による処理及び/又はその他の加工にかけてよい。
【0032】
本明細書で用いる語「抽出混合物」とはタバコ材料の抽出により得られる懸濁物を意味する。この懸濁物は固体画分及び液体画分を含んで成る。
【0033】
フェノール酸化酵素;工程(i)
本発明に従うと、好ましくは水性抽出混合物又は水性エキスの形態におけるタバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する。この工程(i)は以下に更に詳細に説明する。
【0034】
本明細書において、「フェノール酸化酵素」にはドナーとしてのフェノール及び近縁物質に対し、好ましくはアクセブターとしての分子性酸素又は過酸化水素と共に作用する任意のオキシドリダクターゼが含まれる。本発明のフェノール酸化酵素は少なくとも一種のフェノール系化合物を酸化することのできる任意の酵素である。
【0035】
酸化は2つの反応体間での電子遷移反応である:ドナーは電子(即ち、1又は複数個の電子)を失い、アクセプターは電子(即ち、1又は複数個の電子)が増加する;これらの反応体の一方は酸化され(電子ドナー)、他方の反応体は還元される(アクセプター)。かかる反応を触媒する酵素をオキシドリダクターゼと称する。
【0036】
フェノール酸化酵素は任意の起源のものであってよい。「フェノール酸化酵素」なる語は原核又は真核生物、例えば動物、植物又は微生物(例えば細菌又は真菌、例えば糸状菌及び酵母)に由来するフェノール酸化酵素を包括する。一の態様において、本発明の方法はタバコ由来のフェノール酸化酵素を利用する。
【0037】
本明細書における「由来」なる語は、酵素が、それが自然に存在する生物から単離されたものであってよいことを意味する。この場合、この酵素のアミノ酸配列は天然酵素に対応する。「由来」なる語は酵素が宿主生物において組換的に生産されたものであってもよい。この組換的に生産した酵素は天然酵素に対して同一性を有するか、又は改変アミノ酸配列を有してよく、例えば1又は複数個のアミノ酸が欠失、挿入及び/又は置換されていてよい。即ち、組換的に生産した酵素は天然アミノ酸配列の突然変異体及び/又はフラグメントである。天然酵素の意味の中には天然変異体が含まれる。更に、「由来」なる語には例えばペプチド合成により合成的に生産した酵素が含まれる。「由来」なる語は例えばin vivo 又はin vitroでのグリコシル化、リン酸化により改変された酵素も包含する。
【0038】
本明細書における「得られることができる」とは、酵素が天然酵素に対応するアミノ酸配列を有することを意味する。この語は、酵素が、それが天然に存在する生物から単離されたもの、又は同じもしくは別のタイプの生物において組換的に発現されたものを包含する。組換的に生産した酵素については、「得られることができる」又は「由来」なる語は酵素の同一性を意味し、それが組換的に生産された宿主生物の同一性は意味しない。
【0039】
「生物から得られることができる酵素」なる表現は、真核生物であろうと原核生物であろうと、それを天然に生産する生物から得られた酵素又は宿主生物中で組換的に生産された酵素を意味し、ここでこの組換酵素は天然酵素に対応するアミノ酸配列を有する。
【0040】
かくして、「フェノール酸化酵素」との関係での語「由来」は動物、植物又は微生物、例えば細菌又は真菌(糸状菌及び酵母等)から得られることのできるフェノール酸化酵素(例えば、ラッカーゼ)、フェノール酸化酵素活性を有するその突然変異体、フラグメント又は変異体を包括する。本発明の一の態様はタバコから得られることのできるフェノール酸化酵素の利用を含んで成る。
【0041】
従って、フェノール酸化酵素は任意の適当な技術の利用により微生物から入手できうる。例えば、フェノール酸化酵素調製品は適当な微生物の発酵、しかる後の当業界公知の方法による得られる発酵培養液又は微生物からのフェノール酸化酵素含有調製品の単離により得られうる。好ましくは、このフェノール酸化酵素調製品は組換DNA技術の利用により得られる。かかる方法は通常、注目のフェノール酸化酵素をコードし、且つその酵素の発現を可能にする条件下で培養培地の中にフェノール酸化酵素を発現させることをできるようにする適当な発現シグナルに作用可能式に連結されているDNA配列を含んで成る組換DNAベクターで形質転換された宿主細胞を培養し、そしてこの培養物からこの酵素を回収することを含んで成る。このDNA配列は宿主細胞のゲノムの中に組込んでもよい。このDNA配列はゲノム、cDNAもしくは合成起源、又はこれらの任意の組合せであってよく、そして当業界に公知の方法に従って単離又は合成されたものであってよい。
フェノール系化合物/フェノール類:
【0042】
本明細書において、「フェノール系化合物」及び「フェノール類」の概念は少なくとも1個のフェノール系環構造、即ち、芳香環構造、特にベンゼン環構造と、環C−原子にOH置換基とを含んで成る任意の化合物を意味し、その他の置換基及び縮合ベンゼン環の数は問わない。この定義には特に(モノ)フェノール類、並びにポリフェノール類、例えばジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−及びヘキサフェノール類が含まれる。
【0043】
「モノフェノール」なる語には芳香環系に付加された1又は複数個のヒドロキシ基を含んで成る化合物が包括される。
ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−及びヘキサフェノール類なる語はそれぞれ全部で2,3,4,5又は6個のヒドロキシ基と、1又は複数個の芳香環系とを含んで成る化合物を包括し、ここでこのヒドロキシ基は同一又は異なる芳香環に付加されている。
【0044】
本明細書で用いる「ポリフェノール」なる語は、1又は複数個の芳香環系に付加された2個以上のヒドロキシ基を含んで成る化合物を意味し、ここでこのような化合物を本明細書では「ポリヒドロキシフェノール類」とも呼ぶ。本明細書で用いる語「ポリフェノール」は少なくとも2個のヒドロキシ基が付加された1個の芳香環を含んで成る化合物も包括する。本明細書で用いる語「ポリフェノール」はまたフェノール系モノマーを基礎とするポリマー材料も含み、ここでこのような化合物を本明細書では「ポリマーフェノール類」とも呼ぶ。このポリマー材料はフェノール系化合物の重合反応に由来しうる。
【0045】
本発明に関連するフェノール類の非限定的な例にはフラバノイド、例えばルチン(またの名をルトシド)、クエルセチン(またの名を2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,5,7−トリヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン;及び3,3′,4′,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)、イソクエルシトリン(またの名を2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(β−D−グリコフラノシルオキシ)−5,7−ジヒドロキシ−4H−ベンゾピラン−4−オン;及び3,3′,4′,5,7−ペンタヒドロキシフラボン−3−グリコシド;及びクエルセチン−3−グリコシド)、ケムプフェロール(またの名を3,5,7−トリヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン;及び3,4′,5,7−テトラヒドロキシフラボン)、ロビニン(またの名を3−〔[6−0−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−D−ガラクトピラノシル]オキシ〕−7−〔(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル−)オキシ〕−5−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン);クマリン、例えばスコポレチン(またの名を、7−ヒドロキシ−6−メトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン)及びスコポリン(またの名をスコポレチンー7−グリコシド);及びカフェタニン、例えばカフェオイルキニン酸の異性体(3−、4−、5−0−カフェオイルキニン酸)が含まれる。本発明の方法に従うと、クロロゲン酸(またの名を3−0−カフェオイルキニン酸及び3−〔[3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−オキソ−2−プロペニル]オキシ〕1,4,5−トリヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸)、ルチン及びスコポレチンが特に注目される。ルチン、スコポレチン及びクロロゲン酸の化学構造は図11〜13に示す。
【0046】
本発明の課題はタバコ中の低分子量フェノール系化合物、特にタバコから抽出可能なフェノール系化合物の含有量を下げることにある。特に注目されるのは水性溶媒中で抽出可能なフェノール系化合物、例えば化合物スコポレチン、ルチン及びクロロゲン酸である。「抽出可能なフェノール系化合物」なる語は「可溶性フェノール系化合物」、即ち、溶媒によりタバコ材料から抽出できるフェノール系化合物を意味する。本発明の一の観点は水溶性フェノール系化合物、即ち、水性溶媒の利用によりタバコ材料から抽出することのできるフェノール系化合物を意味する。この水性溶媒は本明細書に定義の通りであり、例えば純水である。一の態様はタバコ材料中の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度を低下させるための本発明の方法に関連し、ここでこのフェノール系化合物は可溶性、好ましくは水溶性のフェノール系化合物である。
【0047】
「可溶性フェノール系化合物」の語には低分子量フェノール系化合物が含まれる。本発明の特定の態様において、低分子量とは約10,000Da未満、好ましくは、5,000Da未満、例えば2,000Da未満、より好ましくは1,000Da未満の分子量を有する化合物を意味する。本発明の一の態様において、この語はフェノール系「モノマー」、例えば低分子量化合物スコポレチン、ルチン及びクロロゲン酸、即ち、フェノール系モノマーのオリゴマー又はポリマーへと重合されうるフェノール系化合物を意味する。フェノール系モノマーの重合により、フェノール系化合物の分子量は増大する。本発明の好適な態様において、重合反応(フェノール酸化酵素による処理により生ずる)は例えば限外濾過により好ましくはエキスの形態でタバコ材料からの分離が可能となるであろう高分子量フェノール系化合物が作られるまで進行する。好適な態様において、このポリマー材料はとなり、そして沈澱する。
【0048】
本発明の一の態様は低分子量フェノール系化合物に関する。一の態様において、本発明のフェノール系化合物は溶媒、好ましくは水性溶媒に可溶性な低分子量フェノール系化合物である。
【0049】
好適なフェノール酸化酵素
適当なフェノール酸化酵素、即ちフェノール系化合物、例えばポリフェノール類の高分子量及び低分子量化合物に作用する酵素の例えば、限定することなく、ペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.7)、ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)、ビリルビンオキシダーゼ(EC 1.3.3.5)、モノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.18.1)及びカテコールオキシダーゼ(EC 1.10.3.1)が挙げられる。
好ましくは、このフェノール酸化酵素はフェノールオキシダーゼ又はペルオキシダーゼである。
【0050】
フェノールオキシダーゼの共通点はこのグループが、ドナー(ここではフェノール系化合物)が酸化され、分子性酸素がアクセプターとして働く酸化反応を触媒することにある。
【0051】
ペルオキシダーゼはドナー(ここではフェノール系化合物)が酸化され、過酸化水素がアクセプターとして働く反応を触媒することを特徴とする。
本発明のフェノールオキシダーゼ又はペルオキシダーゼは少なくとも一種のフェノール系化合物を酸化できるフェノールオキシダーゼ及びペルオキシダーゼである。このことを明確にするため、本発明のペルオキシダーゼは「フェノールオキシダーゼ」と呼ぶこともある。
【0052】
本発明の特定の態様において、フェノール酸化酵素はその基質と単一の電子遷移により反応する。ラッカーゼが1−電子酸化を実行するこの酵素グループに含まれる。これは2−電子酸化を実行するフェノール酸化酵素とは異なる。
【0053】
「1−電子酸化」及び「単一電子遷移」なる語は、酸化される化合物(この場合、フェノール系化合物)が1個の電子又は一電子電荷当量の遷移により酸化されることを意味するが、総合的な観点から化合物が更に酸化されることがある。1−電子酸化において、ラジカルが発生する。即ち、注目の酵素はラジカルの発生を介してフェノール系化合物を酸化するであろう。フェノール系化合物に関しては、これは、まず電子がフェノール系化合物から引き抜かれてフェノキシラジカルが生ずることを意味する。これは例えば Yaropolow A.Iら、(1994)、Applied Biochemistry and Biotechnology, 49, 頁257−280;及びThurston C.F (1994)、Microbiology, 140、頁19−26に記載されている。
【0054】
これらのラジカルは、フェノキシラジカル又はその他のラジカルであるかを問わず、EPR(電子強磁気共鳴)スペクトル(またの名を、ESR=電子スピン共鳴スペクトル)により検出されうる。EPRスペクトルは非常に高成度であり、且つ高度に特異的なラジカル検出方法であり、そして精製や濃縮の如き多労なサンプル予備処理抜きで複雑なマトリックスを分析するのに利用できる。かかる分析を実施することは当業者にとって日常的な作業である。ラジカル形成の検出のより簡単な方法はフェノール酸化酵素を簡単なUV/可視スペクトルにより検出できる安定なラジカルを形成することで知られる基質、例えばABTS(2,2′−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ニアンモニウム塩)、PPT(フェノチアジン−10−プロピオン酸)又はHEPO(10−(2−ヒドロキシエチル)フェノキサジン)とインキュベーションすることにある。
【0055】
1−電子酸化を実行できる酵素の例はペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.7)、ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)、ビリルビンオキシダーゼ(EC 1.3.3.5)及びカテコールオキシダーゼ(EC 1.10.3.1)である。
好適なフェノール系オキシダーゼはクラスEC 1,13,−、−;EC 1.14.−.−(例えばEC 1.14.18.1)及びEC 1.10.3.−の酵素、特にクラスEC 1.10.3.1−1.10.3.8、即ち、EC 1.10.3.1、EC 1.10.3.2、EC 1.10.3.3、EC 1.10.3.4、EC 1.10.3.5、EC 1.10.3.6、EC 1.10.3.7又はEC 1.10.3.8のいずれかである。
【0056】
ここに挙げる酵素クラス(EC)は Enzyme Nomenclature, 1992, Published for the International Union of Biochemistry and Molecular Biology(IUBMB)、Academic Press, Incに定義されている通りである。
【0057】
本発明の特定の態様において、フェノール系オキシダーゼはEC 1,10,3,−に対応する酵素であり、それはドナーとしてジフェノール類及び近縁物質に、アクセプターとしての酸素と共に作用する酵素を含んで成る。しかしながら、モノフェノール類も極めて良好な基質である。これらのクラスの好適な酵素はカテコールオキシダーゼ(EC 1.10.3.1);ラッカーゼ(別名、ウリシオールオキシダーゼ、EC 1.10.3.2);及び0−アミノフェノールオキシダーゼ(EC 1.10.3.4)である。
【0058】
グループEC 1.14.18.10モノフェノールモノオキシゲナーゼ(別名、チロシナーゼ、フェノラーゼ、モノフェノールオキシダーゼ、クレソラーゼ)を含んで成る。特異的な態様において、本発明に係る方法によるタバコエキスの処理のためのフェノール酸化酵素はEC 1.14.18.1である。
【0059】
好適なフェノール系オキシダーゼを以下に挙げ、ここに含まれるのは注目の生物から得られることができるフェノールオキシダーゼ及びそれらの任意のフェノール酸化酵素活性変異体、フラグメント又は突然変異体である。その活性は当業界公知の任意の方法により測定できる。
【0060】
微生物及び植物起源のラッカーゼ(EC 1.10.3.2)酵素が周知である。適当な微生物ラッカーゼ酵素は植物、細菌又は真菌(糸状菌及び酵母を含む)に由来してよく、そして適当な例にはアスペルギルス(Aspergillus)、ニューロスポラ(Neurospora)、例えばN.クラッサ(N.crassa)、ポドスポラ(Podospora)、ボツリチス(Botrytis)、コリビア(Collybia)、ホメス(Fomes)、レンチヌス(Lentinus)、プレウロツス(Pleurotus)、トラメテス(Trametes)、例えばT.ビロサ(T.villosa)(従来はポリポルス・ピンシトウス(Polyporus pinsitus)と呼ばれていた)及びT.バーシカラー(T.versicolor)、リゾクトニア(Rhizoctonia)、例えばR.ソラニ(R.solani)、コプリヌス(Coprinus)、例えばC.プリカチリス(C.plicatilis)及びC.シネレウス(C.cinereus)、サチレラ(Psatyrella)、マイセリオフソラ、例えばM.サーモフィラ(M.thermophila)、シタリジウム(Scytalidium)、例えばS.サーモフィルム、ポリポルス(Polyporus)、例えばP.ピンシトウス、フレビア(Phlebia)、例えばP.ラジタ(P.radita)(WO92/01046)、又はコリオルス(Coriolus)、例えばC.ハーストウス(C.hirsutus)(JP2−238885)、ルス(Rhus)、例えばR.バーニシフェラ(R.vernicifera)、ピクノポルス、例えばピクノポルス・シンナバリアスの株に由来するラッカーゼ、特にトラメテス、マイセリオフソラ、シタリジウム又はポリポルス由来のラッカーゼが含まれる。好適な態様において、フェノール酸化酵素はタバコ由来のラッカーゼである。
【0061】
適当なカテコールオキシダーゼ又はモノフェノールモノオキシダーゼは動物、植物又は微生物、例えば細菌又は真菌(糸状菌及び酵母を含む)に由来しうる。特に注目されるのはタバコ由来のカテコールオキシダーゼ又はモノフェノールモノオキシダーゼである。カテコールオキシダーゼの例にはソラヌム・メロンゲナ(Phytochemistry,1980,19(8),1597−1600)又は茶(Phytochemistry,1973,12(8),1947−1955)由来のカテコールオキシダーゼが含まれる。ポリフェノールオキシダーゼはカビに由来しうる(Hakko Kogaku Zasshi,1970,48(3),154−160)。哺乳動物モノフェノールモノオキシダーゼ(チロシナーゼ)が発表されている(Methods Enzymol.,1987,142,154−165)。その他の適用なモノフェノールモノオキシゲナーゼは茶葉(Prikl.Biokhim.Mikrobiol.,1997,33(1),53−56)、クロレラ(Chlorella)(Ukr.Bot.Zh.,1986,43(5),56−59)、又はニューロスポラ・クラッサ(Methods Enzymol.,1987,142,165−169)に由来しうる。
【0062】
本発明の特定の態様において、フェノール酸化酵素はモノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.18.1)ではない。
適当なペルオキシダーゼはクラスEC 1.11.1.−、例えばEC 1.11.1.7、EC 1.11.1.13及びEC 1.11.1.14のものであってよい。好適なペルオキシダーゼはクラスEC 1.11.1.7の酵素である。グループEC 1.11.1.7は、ドナーが酸化され、過酸化水素がアクセプターとして働く酸化反応を触媒するペルオキシダーゼを含んで成る。
【0063】
好適なペルオキシダーゼを以下に挙げ、ここに含まれるのは注目の生物から得られることができるペルオキシダーゼ及びその任意のフェノール酸化酵素活性変異体、フラグメント又は突然変異体である。それらの活性は当業界公知の任意の方法により測定できる。
【0064】
ペルオキシダーゼは任意の生物に由来しうる。好ましくは、ペルオキシダーゼは植物(例えば西洋ワサビ、ダイズ又はタバコ)又は微生物、例えば真菌(糸状菌及び酵母を含む)又は細菌に由来する。いくつかの好適な真菌には、亜門(subdivision)不完全菌類、クラス線菌綱に属する株、例えばフサリウム(Fusarium)、ヒュミコラ(Humicola)、トリコデルマ(Trichoderma)、マイロセシウム(Myrothecium)、バーチシルム(Verticillum)、アルトロマイセス(Arthromyces)、カルダリオマイセス(Caldariomyces)、ウロクラジウム(Ulocladium)、アンベリシア(Embellisia)、クラドスポリウム(Cladosporium)又はドレシュレラ(Dreschlera)、特にフサリウム・オキシスポルム(F.oxysporum)(DSM 2672)、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・リーシイ(T.resii)、マイロセシウム・バルカナ(M.verrucana)(IFO 6113)、バーチシリウム・アルボアトルム(V.alboatrum)、バーチシリウム・ダリー(V.dahlie)、アルソロマイセス・ラモスス(A.ramosus)(FERM P−7754)、カルダリオマイセス・フマゴ(C.fumago)、ウロクラジウム・チャータルム(U.chartarum)、アンベリシア・アリ(A.alli)又はドレシュレラ・ハロデス(D.halodes)が含まれる。その他の好適な真菌には亜門担子菌類(Basidiomycotina)、クラス担子菌綱に属する株、例えばコプリヌス、ファネロシエテ(Phanerochaete)、コリオルス(Coriolus)又はトラメテス、特にコプリヌス・シネレウス f・マイクロスポルス(microsporus)(IFO 8371)、コプリヌス・マクロリズス(C.macrorhizus)、ファネロシェテ・クリソスポリウム(P.chrysosporium)(例えばNA−12)又はトラメテス(従来はポリオポルスと称されていた)、例えばT.バーシカラー(例えばPR4 28−A)の株が挙げられる。更なる好適な真菌には、亜門接合真菌類、クラスマイコラセア綱に属する株、例えばリゾプス(Rhizopus)又はムコール(Mucor)、特にムコール・ヒエマリス(M.hiemalis)が挙げられる。いくつかの細菌にはアクチノマイセタレス(Actinomycetales)目の株、例えばストレプトマイセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATCC 23965)、ストレプトマイセス・サーモビオラセウス(S.thermoviolacens)(IFO 12382)又はストレプトバーチシルム・バーチシリウム(S.verticillum)種バーチシリウムが挙げられる。その他の好適な細菌にはバチルス・プミルス(ATCC 12905)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(R.palustri)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、シュードモナス・プロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC 15958)又はシュードモナス・フロレセンス(P.fluorescens)(NRRL B−11)が挙げられる。更なる好適な細菌にはマイキソコッカスに属する株、例えばM.ビレセンスが挙げられる。
【0065】
詳しくは、組換生産したペルオキシダーゼ、例えばコプリヌス種、特にWO 92/16634及びWO 94/12621に係るC.マクロリジス又はC.シネレウス由来のペルオキシダーゼが好ましい。
【0066】
フェノール酸化酵素は精製されていてよく、即ち、ごく微量のその他のタンパク質しか存在しなくてよい。この「その他のタンパク質」は特にその他の酵素を意味する。本明細書で言う「精製」とは、その他の成分、特にその他のタンパク質、そして最も特にその他の酵素であって、このフェノール酸化酵素の起源細胞の中に存在しているものが除かれていることを意味する。好ましくは、この酵素は純度75%(w/w)以上、より好ましくは純度80,85,90又は更には95%以上である。更なる好適な態様において、このフェノール酸化酵素は純度98%以上の酵素タンパク質調製品である。
【0067】
「フェノール酸化酵素」なる語には、酵素触媒活性のために必要でありうる何らかの補助化合物、例えば適当なアクセプター又は補酵素であって反応系にもとから存在しているもの又は存在していないものが含まれる。
【0068】
「フェノール酸化酵素」なる語には、酵素が実際の条件下で最適に働くことができるようにする安定化剤、アクチベーター、保存剤、金属イオン、緩衝剤、界面活性剤、凝集剤、キレート化剤及び分散剤等の成分が含まれる。酵素触媒化反応の最適化は当業者にとって日常的な作業である。「フェノール酸化酵素」なる語には酵素反応を促進及び/又は加速させるエンハンサー又はメディエーテーも含まれる。例えば、Faure ら(1995)、Applied and Enviromental Microbiology, 61(3), 頁1144−1146及びShannon and Pratt(1967), Journal of Food Science, 32, 頁479−483、並びにWO94/12619,WO95/01426及びWO96/00179等に記載。
【0069】
好ましくはタバコエキスの形態のタバコ材料のフェノール酸化酵素による処理が行われる適当な条件は選定した酵素の特徴との関係で選定され、いくつかの典型的な条件を以下に挙げる。むろん、一般に任意のこれらの条件は当業界に一般的な簡単な試行錯誤実験を利用して最適化できる。
【0070】
一般に好適なpHはpH3〜11、例えば4〜9、4〜8、例えば4〜7、又は5〜6、例えば約5.5である。一般に好適な温度は10〜90℃、例えば10〜80℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは15〜60℃、20〜60℃、20〜50℃、例えば30〜60℃である。一般に好適な処理時間は1分〜5時間、例えば5分〜5時間、好ましくは1分〜4時間、好ましくは1分〜3時間、例えば15分〜3時間、1分〜1時間、更により好ましくは5〜30分である。
【0071】
アクセプターとしての酸素の濃度(フェノールオキシダーゼのみ、例えばラッカーゼの利用との関連で)は一般に反応のために重要ではないが、高用量の酵素では酸素の供給量、従って液体中の酸素の濃度は律連となりうる。しかしながら、大気からの分子性酸素が通常十分な量で存在し、かくして酸素は表面通気又は大気による強力な浸水通気により本方法に供給することができる。
【0072】
フェノール酸化酵素が過酸化水素起源を必要とするなら、この起源は過酸化水素であるか、又は過酸化水素の現場生産のための過酸化水素前駆体であってよい。従って、本発明の一の態様において、ペルオキシダーゼによる処理は過酸化水素起源の存在下で実施する。ペルオキシダーゼとの関係で本明細書の中で用いる語「処理」は、かかる起源が必要である場合、過酸化水素起源の存在を包含する。「過酸化水素起源」なる語は過酸化水素の起源を意味し、それは過酸化水素自体であるか、又は過酸化水素の現場生産のための過酸化水素前駆体である。
【0073】
以降の非限定的な実施例において、ペルオキシダーゼによる処理は(1)過酸化水素、(2)過酸化水素前駆体、例えばパーカーボネート又はパーボレート、(3)過酸化水素発生酵素系、例えばオキシダーゼとその基質、例えばグルコースオキシダーゼとグルコース、並びに(4)ペルオキシカルボン酸又はその塩から成る群から選ばれる過酸化水素起源の存在下で実施する。この過酸化水素起源はこの方法の最初又は最中において、例えば0.001〜25mMのHに相当する濃度で加えてよい。この過酸化水素起源は過酸化水素の実質的に一定な濃度を保つために連続的に添加してよい。
【0074】
アクセプターとしての過酸化水素の濃度(ペルオキシダーゼのみの使用との関係で)は一般に重要ではない。しかしながら、選定のペルオキシダーゼ酵素は過酸化水素に対して成受性でありうる(活性を失う)。好ましくは、過酸化水素の濃度範囲は0.010〜10mM、例えば0.020〜8mM、0.05〜5mM、又は0.100〜2.5mMである。適当な範囲は注目の酵素に依存することがあり、そして当業者により決定されうる。
【0075】
一般に、フェノール酸化酵素の好適な用量はエキス1リットル(飽和液)当り0.001〜1000mgの酵素タンパク質、例えば0.001〜500mg、0.001〜200mg、0.001〜100mg、0.001〜50mg、好ましくは0.01〜100mg、例えば0.01〜80mg、0.01〜50mg、0.01〜30mg、0.01〜20mg、より好ましくは0.1〜20mg/リットルである。タバコの乾燥重量当りのフェノール改変酵素タンパク質の用量の限定でない例は1〜1000μg/g、例えば10〜500μg/g、例えば150μm/gである。このような用量値は好ましくは上述の通りの純度の精製酵素タンパク質を基準とする。
【0076】
フェノール酸化酵素は注目の利用に適する任意の形態、例えば乾燥粉末又は顆粒、無塵顆粒、液体、安定化液体、又は保護酵素の形態であってよい。顆粒は例えば米国特許第4,106,991号及び米国特許第4,661,452号(共に、Novo Industry AIS)に開示の通りに製造でき、そして任意的に当業界公知の方法により被覆されていてよい。液体酵素調製品は例えば安定化剤、例えば糖、糖アルコール又はその他のポリオール、乳酸又はその他の有機酸を樹立された方法に従って添加することにより安定化できうる。保護酵素はEP238,216号に開示の方法に従って調製できうる。
【0077】
本発明に従うと、好ましくは水性エキスの形態のタバコ材料をフェノール酸化酵素で処理することが本質的である。「フェノール酸化酵素」との関係での「処理」とは、好ましくは水性エキス形態のタバコ材料に有効量のフェノール酸化酵素を、この酵素がその酸化活性を発揮する、即ち、タバコ材料由来のフェノール系化合物を酸化して「酸化フェノール系化合物」を供与する条件下で添加することを意味する。
【0078】
「フェノール酸化酵素」及び「タバコ材料」との関係での「処理」なる語は、タバコ材料をフェノール酸化酵素と、当該材料中の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度の低下をもたらす条件下で接触させることを包含する。「タバコ材料をフェノール酸化酵素と接触させる」との関係での「接触」とは、フェノール酸化酵素をタバコ材料に添加することを意味する。
【0079】
本発明の範囲に属するのはタバコ製品を調製するための方法であり、それは(a)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;そして(b)この混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分け、このタバコエキスをフェノール酸化酵素、例えばフェノールオキシダーゼ又はペルオキシダーゼと、当該エキス中の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度が低下する条件下で接触させることを含んで成る。一の態様において、この接触は抽出の最中又は後、且つ分離の前に実施する。
【0080】
「有効な量」とは、特定のフェノール系化合物の減少した含有量、例えば特定の化合物の量が10%以上、20%以上、50%以上、75%以上、好ましくは95%、又は更により好ましくは98%以上例えば100%低下したタバコ製品を提供するために有効な酵素の量である。%低下は下記の通りに計算する。「特定のフェノール系化合物」なる語は、タバコ材料の酵素処理により、当該材料中のフェノール系化合物の量の低下が得られるものを包括する。フェノール系化合物によって%低下は変動しうる。本発明の好適な態様において、各フェノール系化合物の低下は上述の通り%低下に相当する。本発明によれば、タバコ材料の酵素処理は当該タバコ材料の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度の低下を供し、例えば当該タバコ材料中の少なくとも2種類のフェノール系化合物又は少なくとも3種類のフェノール系化合物の濃度の低下を供する。
【0081】
特定の態様において、本発明に係る方法により得られたタバコ製品は、処理前のタバコ材料と比較して、クロロゲン酸、ルチン又はスコポレチンのうちの少なくとも一種の含有量が低下、例えばクロロゲン酸、ルチン又はスコポレチンのそれぞれの含有量が5%以上低下、例えば10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、75%以上、80%以上、90%以上、好ましくは95%以上、又は更により好ましくは98%以上、例えば100%低下している。この低下は例えばフェノール酸化酵素による処理の前後でのタバコ材料のエキスのHPLC分析によりモニターできうる。%低下は下記の通りに計算する。
【0082】
更なる態様において、本発明に係る方法により(1)フェノール酸化酵素で処理して前記タバコ材料中の少なくとも一種のフェノール系化合物の酸化を供し、2)更にこのタバコ材料からの酸化フェノール系化合物を分離する工程、を含んで成る)はフェノール系化合物の総含有量の低下したタバコ製品に結びつく。この低下は5%以上の低下、10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、75%以上、80%以上の低下、例えば2〜95%、5〜80%、5〜50%、5〜40%、5〜30%の範囲の低下である。
【0083】
フェノール系化合物を分析するためのいくつかの方法が当業界において公知である。いくつかの方法は総フェノール含有量を測定し、一方でその他の方法は異なる分子量を有するフェノール系化合物間で区別し、そして更にその他の方法は個別の(低分子量)フェノール系化合物の分離、しかる後の定量を可能にする。好ましくは、個別のフェノール系化合物の分離、しかる後の例えばHPLC(高圧液体クロマトグラフィー、別名高性能液体クロマトグラフィー)、GLC(気液クロマトグラフィー、別名ガスクロマトグラフィー)、又はキャピラリー電気泳動による定量を可能にする分析方法を利用するが、その他の方法も同様に利用されうる。かかる方法は当業者により、注目の分析課題の要件に合うよう、即ち、注目のフェノール系化合物を分析するために設計、実施及び最適化できる。
【0084】
一般に、注目の化合物の含有量の展開を追跡するのに二通りの手段がある;1)得られるシグナル(例えばピーク面積又はピーク高、その他)と既知の絶対濃度の標準から得られるシグナルとの対比による絶対定量、又は2)酵素処理前、最中及び後の個別のフェノール系化合物により生成される得られるシグナルのサイズを比較し、そして個別のフェノール系化合物の相対的(即ち、パーセンテージ)低下を計算するためのシグナルのサイズの展開の利用による相対定量。得られるシグナルのサイズは通常、適当な範囲の濃度を調べたなら、サンプル中において認められる濃度と相関するであろう(通常、これは利用する濃度範囲が、シグナルが濃度と直線状の関係にある範囲であることを意味する)。従って、分析方法が個別のフェノール系化合物の分離を可能にし、そしてシグナルがその濃度と相関するなら、任意の標準品を利用することなく酵素処理の効率を計算することが、処理の前後のシグナルのサイズを比較して%残留フェノール系化合物及び/又は除去された%フェノール系化合物(%低下)を下記の式を利用して計算することにより求めることが可能である:
【数1】

【0085】
特定の態様において、フェノール酸化酵素による処理を含んで成る本発明の方法は、タバコ材料であって、酵素処理の前後でのタバコ材料のHPLC分析により、フェノール系化合物に対応するシグナルビークのHPLC分析を介するモニターに従い低下を示す材料を提供する。これは好ましくは5%以上、例えば10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、75%以上、80%以上、90%以上、好ましくは95%以上、又は更により好ましくは98%以上、例えば100%の低下である。これは「実施例」の章において説明の通りに測定できうる。好適な態様において、少なくとも一のシグナル(即ち、少なくとも一種のフェノール系化合物)、例えば少なくとも二のシグナル(即ち、少なくとも二種のフェノール系化合物)の低下がある。
【0086】
更なる観点において、本発明はタバコ材料中の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度を低下するための方法に関連し、この方法はタバコ材料をフェノール改変酵素で処理することを含んで成り、ここでこのタバコ材料は好ましくはタバコ材料のエキスの形態にある。好ましくは、この酵素の修飾が改変フェノール系化合物の除去を促進し、それ故タバコ材料中のフェノール系化合物の総含有量の低下に結びつく。本発明の一の態様において、このフェノール改変酵素はフェノール酸化酵素である。
【0087】
(iv)酸化フェノール系化合物の分離
フェノール酸化酵素による処理(工程(i))の後、本発明に係る方法は好ましくはタバコエキスから酸化フェノール系化合物を分離する工程(iv)を含んで成る。この「酸化フェノール系化合物」は本発明に従う酵素による処理により酸化されたフェノール系化合物を包括する。この酸化フェノール系化合物は好ましくは重合形態にある。この酸化フェノール系化合物は好ましくは1又は複数種の形態において、沈澱物、曇り物、溶解又は分散物である。従って、沈澱物/曇り物がフェノール酸化酵素によるタバコエキスの処理の際に生ずる。酸化重合フェノール系化合物を含んで成るこの沈澱物は好ましくはエキスから分離させる。
【0088】
この沈澱物/曇り物は当業界の任意の適当な方法、例えば限定することなく、遠心分離、濾過、限外濾過、沈降、凝集、逆浸透、デカンテーション又はふるい分けにより除去できうる。異なる方法及び/又は1又は複数の方法の反復の組合せも利用してよい。本発明の特定の態様において、吸着はFuller土鉱物、例えばアタプルジト又はベントナイト、ヒドロキアパタイト(リン酸三カルシウム)、PVPP、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、疎水性樹脂及び活性炭素、又は任意のそれらの組合せから成る群から選ばれる吸着手段により実施する。一の態様において、本発明の方法はまずベントナイトを利用し、次いでヒドロキシアパタイト(リン酸三カルシウム)を利用する工程を含む。好ましくは、特に溶解又は分散重合酸化フェノール系化合物のため、限外濾過を利用する。
【0089】
任意的に、このエキスを更に不溶性吸着体、好ましくは水不溶性吸着体で処理する(工程(vii))。適当な不溶性吸着体の例はヒドロキシアパタイト(リン酸三カルシウム)及びFuller土鉱物、例えばアタプルジト又はベントナイトである。この工程はとりわけ可溶性ポリペプチド、例えば酵素等のタンパク質、及び工程(i)の重合フェノール系反応生成物の除去を提供する。好適な不溶性吸着体はベントナイト及びヒドロキシアパタイトである。この吸着体はエキスの中に簡単に懸濁させることができ、そして例えば遠心分離により分離させるか、又はエキスを流すカラムの中に含ませてよい。
【0090】
特定の態様において、このエキスはポリビニルポリピロリドン(PVPP)で処理する(工程(viii))。別の態様において、PVPPによる処理を省く。
【0091】
吸着体との関係での処理とは、エキスを吸着体と、吸着を促進する条件下で接触させ、次いで必要なら吸着体を除去することを意味し、この吸着体は不溶性吸着体であることが好ましい。
【0092】
本発明の一の態様は改変フェノール系化合物の除去に関連し、この改変フェノール系化合物は本明細書に記載の通りフェノール改変酵素による処理により供されたものである。
本発明の一の態様において、酵素処理を抽出混合物に対して実施する。この酸化フェノール系化合物は好ましくは抽出混合物、即ち、タバコ固形分(「タバコ残渣」)及び液体部(「タバコエキス」)から分離させる。この分離はまず粗分離を例えば濾過により行って、沈澱物及び/又は曇り物を形成しうる溶媒及び酸化フェノール系化合物をタバコ残渣から分離することにより行う。分離のための方法の選定は溶媒の中に懸濁したタバコ残渣と酸化フェノール系化合物により形成されうる固形沈澱物/曇り物との区別ができる限り重要ではない。このようにして分離されたタバコ残渣を水ですすいで更なる酸化フェノール系化合物を除去する。おそらくは微細な沈殿物及び/又は曇り物として、及び/又はコロイド溶液中の酸化フェノール系化合物として存在するであろう酸化フェノール系化合物を含む濾液を更に処理してエキスから酸化フェノール系化合物を除去してよい。これは前述の如き濾過、遠心分離、限外濾過、沈降、等の分離手段により行ってよい。
【0093】
酵素の不活性及び/又は除去、工程(v)
フェノール酸化酵素による処理に続いて、フェノール酸化酵素は注目の特定の酵素の不活化及び/又は変性及び/又は沈澱及び/又は除去に適切な任意の方法により任意的に不活化(例えば、100℃に加熱し、そしてこの温度に例えば10分保つことで)及び/又は除去(例えば、吸着又は沈澱により)してよい。酵素は例えば酸化フェノール系化合物の除去について説明した通り例えば吸着により沈澱酸化フェノール系化合物と一緒に除去してよい。本発明の一の態様において、酵素の除去のために限外濾過を利用する。従って、一の態様における本発明の方法はフェノール酸化酵素の不活化及び/又は酵素処理タバコ材料からのその除去の工程を含んで成り、このタバコ材料は例えばタバコエキスの形態にある。
【0094】
一の態様において、使用する酵素を固定し、そして容易に且つ定量的に除去し、これにより本発明の製品が追加のフェノール酸化酵素を実質的に含まないことを促進する。酵素の固定のための一般的な技術は当業界において公知であり、そして限定することなく、担体材料、例えばイオン交換樹脂、人工ポリマー、例えばナイロン、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、メタクリレート、天然バイオポリマー、及びそれらの誘導体、例えばキチン、キトサン、グリセリルキトサン、セルロース及びその誘導体、例えばDEAE−セルロース、(破砕/粉砕)卵穀、無機材料、例えばSiO 、ガラスビーズ、ベントナイト及びその他の不溶性支持体への吸着、共有結合及び架橋、並びにゲル又はポリマーから作った(マイクロ)カプセルへのカプセル化が挙げられる。典型的には、固定化酵素は使用中に酵素をほとんど又は全く漏らさず、固定化酵素、粒子から分離したときに酵素が全く又はほとんどない液体画分をもたらす。漏出酵素の量の定量のための高度に特異的且つ高成度な方法は、固定化の前に例えば14C−ホルムアミドとの反応によるタンパク質骨格内のリジン残基のメチル化により放射能ラベルした固定化酵素の利用である。酵素の固定化のいくつかの例がPialis, P.ら(1996), Biotechnology and Bioengineering, 51, 頁141−147; Bhosale S.H.ら(1996), Microbiological Reviews, 60(2), 頁280−300; Spagna Gら(1993) Journal of Chemical Technology and Biotechnology, 57, 頁379−385;Spagna G.ら(1998), Process Biochemistry, 33(1), 頁57−62;Martino Aら、(1996), Process Biochemistry, 31(3), 頁281−285;及びMartino Aら(1996), Process Biochemistry, 31(3)頁287−293に開示されている。
【0095】
タバコエキスの酵素処理を固定化酵素を用いて行うなら、沈澱物/曇り物を供しうる酸化フェノール系化合物を固定化酵素固体及び溶媒から分離する好適な手段はまず粗分離を例えば濾過により行い、沈殿物及び/又は曇り物を形成しうる溶媒及び酸化フェノール系化合物を固定化酵素から分離させる。分離のための方法の選定は溶媒中に懸濁された固定化酵素と酸化フェノール系化合物により形成されうる固形沈澱物/曇り物との区別ができる限り重要ではない。このようにして分離した固定化酵素はその可能な再利用の前に水ですすいで追加の酸化フェノール系化合物を除去してよい。おそらくは微細な沈殿物、曇り物として、及び/又はコロイド状溶液中に酸化フェノール系化合物として存在するであろう酸化フェノール系化合物を含む濾液を更に処理してエキスを酸化フェノール系化合物から分離させてよい。これは既に本明細書に記載の如き濾過、遠心分離、限外濾過、沈降、等の分離手段により行ってよい。
【0096】
一の態様において、このタバコエキスの固定化酵素による処理は固定化酵素を含んで成るカラムの中で、このタバコエキスをこのカラムに好ましくは下方流を利用して通すことにより行う。可能な形成沈澱物によるカラムの詰まりを防ぐため、流れの方向を間隔を置いて上方流に変え、任意の形成沈殿物/曇り物を流動化させ、それを又すすいで除去してよい。別の態様において、固定化酵素を含むカラム中でのタバコエキスのフェノール酸化酵素処理は固定化酵素粒子及び形成沈澱物/曇り物の粒径及び密度の相違を利用した流動床の原理を利用して行い、連続的にエキスを処理し、そして酵素から沈澱物/曇り物形成酸化フェノール系化合物を分離する。
【0097】
エキスの濃縮、工程(vi)
任意的に、酵素処理エキスを10〜70%、例えば20〜50%、典型的には50%(乾燥質)の固形分含有量にまで濃縮する。このためには、本質的に液体のみ、好ましくは水溶液を除去する任意の慣用の方法、例えば逆浸透、低分子量カットオフ値の限外濾過、エバポレーション又は凍結乾燥を利用してよい。しかしながら、この方法のために所望されるなら、タバコエキスを慣用の乾燥処理、例えば凍結乾燥、スプレードライ又はエバポレーションにより固体となるまで(例えば90%〜100%の固形分含有量、例えば100%の乾燥重量を有するまで)乾燥させてよい。任意的に、まず濃縮工程を液体の濃縮のための通常の手順により行い、しかる後乾燥工程を通常の手順により行う。
【0098】
タバコ材料とのエキスの組合せ
好ましくは、エキスの処理のための上記の方法のいずれかの任意の結果は、例えば乾燥又は有機溶媒による抽出により更に加工又は処理されていることのある又はないタバコ残渣との最終的な再組合せであり(工程(ix))、これにより改良タバコ製品が得られる。事実、処理エキスを任意のタバコ固形分と組合せてよいが、好都合にはそれは低含有量のフェノール系化合物を有するタバコ固形分、例えば本明細書に記載の抽出工程により得られるタバコ残渣とする。
【0099】
かくして、酵素処理タバコエキスはタバコ固形分、例えばタバコ残渣と、典型的にはタバコ残渣にエキスを戻しスプレーすることにより再度組合せてよいが、エキスとタバコ固形分とを再度組合せるのに適当な任意の方法を利用することができるため、この方法の選定は重要ではない。任意的に、タバコ固形分、例えばタバコ残渣とタバコエキスとを再度組合せたら、この再組合せタバコを慣用の方法により乾燥させる。
【0100】
本発明の特定の方法において、処理タバコエキスをグリーンタバコ、即ち、未乾燥タバコ(これはタバコチューインガムのために利用されうる)と組合せるか、又は処理エキスはグリーンタバコの風味を濃厚にするためグリーンタバコ業にタバコエキスをスプレーすることにより利用してよい。米国特許第5,845,647号を参照のこと。
【0101】
他方、酵素処理エキスはその他の材料、例えばタバコ紙、タバコフィルター、タバコカバーシート、又はタバコ残渣以外の任意のその他の材料であって、後にタバコ残渣と組合されて最終的なタバコ製品を構成する材料と再度組合せてよい。他方、もしこのタバコエキスを例えば90〜100%、例えば100%(乾燥重量)の固体含有量にまで乾燥し、それ故本質的に固体とするなら、乾燥タバコエキスをタバコ残渣又はその他の材料、例えばタバコ紙、タバコフィルター、タバコカバーシートと、この乾燥タバコエキスと注目の材料との直接配合/混合により、必要ならばこの乾燥エキスを上記材料に付着させるための更なる結合剤、例えばデンプンと混合しながら、再度組合せてよい。
【0102】
タンパク質分解処理、工程(x)
本発明の好適な態様において、タバコをタンパク質分解酵素によって処理もする。工程(x)。
本発明の一の態様において、タバコ材料をまず水性溶媒で酵素抜き(フェノール酸化酵素であろうとタンパク質分解酵素であろうと問わない)、且つ好ましくは界面活性剤抜きで抽出する。この抽出混合物を分離し、そして水性エキスはフェノール酸化酵素で処理し、一方その残渣はプロテアーゼ及び任意的に界面活性剤を含んで成る溶媒による更なる抽出にかける。この酵素処理エキス及び残渣を次に組合せてよい。従って、本発明の方法はタバコ材料又はタバコ残渣を、プロテアーゼで処理し、それからフェノール酸化酵素で処理したエキスと組合せる工程を含んで成りうる。
【0103】
別の態様において、フェノール酸化酵素で処理するタバコ材料はプロテアーゼ処理タバコ材料であり、従ってタンパク質含有量の低下したタバコ材料である。本発明の更なる態様において、抽出のための溶媒はプロテアーゼを含んで成ってよい。
タンパク質分解処理の工程(x)を含ませるなら、本発明の方法は更に注目のプロテアーゼを実質的に含まないタバコ製品を供するためにプロテアーゼの除去工程を更に含んで成る。本発明の好適な態様において、ラッカーゼ及びプロテアーゼを共にタバコ製品の調製に利用する。
【0104】
このタンパク質分解酵素は、使用するなら、細菌及び真菌酵素を含んで成る群から選ぶのが好ましい。本発明の目的のために最も注目されるのは低価格で購入できる食品及び洗剤産業における商業的に利用されている酵素である。従って、Novo Inc.より入手できるSavinase(商標)、Neutrase(商標)、Enzobake(商標)又はAlcalase(商標)がタバコからのタンパク質除去に有効であることが認められた。このタンパク質分解酵素は0.0001%〜5%w/wの濃度範囲、例えばタバコ材料の重量を基準に0.1%〜5%w/wで溶液に加える。
【0105】
工程の順番
本発明の好適な態様において、工程(ii)は下記の工程のいずれかの前に実施する。特に好適な態様において、工程(ii)、しかる後に工程(iii)を下記の工程のいずれかの前に行う。
【0106】
しかしながら、工程(i)は工程(ii)の直後、又は例えば工程(iii)、(vii)、(viii)もしくは(vi)の後に実施してよい。
工程(v)、(vi)、(vii)又は(viii)のいずれかをこの方法に含ませてよく、順番は問わない。それらは1回又は反復して数回で含ませてよい。しかしながら、それらは好ましくは常に工程(ii)及び(iii)に続く。
【0107】
好適な態様において、工程(vii)は工程(i)に続く。更なる好適な態様において、工程(viii)は含ませない。含ませるなら、工程(viii)は工程(i)及び(vii)に続くのが好ましい。別の好適な態様において、工程(v)は含ませない。含ませるなら、工程(v)は常に工程(i)に続き、且つ好ましくは工程(vii)に続く。更なる好ましい態様において、工程(vi)を最終工程にする。
【0108】
本発明の方法の態様は以下の工程を表示の順序で含む:
A: (ii)、(iii)、(i)、(vii)及び(vi);又は
B: (ii)、(iii)、(i)、(vii)、(v)及び(vi);又は
C: (ii)、(iii)、(i)、(vii)、(viii)、(v)及び(vi);又は
D: (ii)、(iii)、(i)、(iv);又は
E: (ii)、(iii)、(i)、(iv)、(vi);又は
F: (ii)、(i)、(iv)、(v)、(vi);又は
G: (ii)、(iii)、(i)、(iv)、(v)、(vi);又は
H: (ii)、(iii)、(i)、(v)、(vi)
【0109】
特に好適な態様において、本発明に係る方法は喫煙用のタバコの製造工程を更に含んで成る。
従って、好適な態様において、本発明の方法は以下の工程を表示の順序で含む:(ii)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;(iii)この抽出混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分け;(i)このエキスをフェノール酸化酵素で処理し;(iv)この酸化フェノール系化合物をタバコエキスから分け;(vi)このエキスを濃縮し;このようにして処理したエキスをタバコ残渣と組合せ;そしてこの組合せた残渣とエキスとから喫煙用タバコ製品を作る。特定の態様において、この方法は(v)酵素の除去の工程も、例えば工程(vi)の前に含んで成る。
【0110】
本発明の方法に従うと、フェノール系化合物の量の減少したタバコ製品を調製するための方法を提供し、この方法はタバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する工程を含んで成る。特に、タバコ材料中のフェノール系化合物の量を減少させるための方法を提供し、それはタバコ材料のエキスをフェノール酸化酵素で処理することを含んで成る。
【0111】
本発明は更にタバコエキスの処理におけるフェノール酸化酵素の利用に関する。本発明の特定の態様はタバコ製品の調製におけるフェノール酸化酵素の利用であって、このフェノール酸化酵素がモノフェノールモノオキシダーゼ(EC 1,14,18,1)ではない利用に関する。
【0112】
特に注目されるのはタバコ製品の調製におけるラッカーゼの利用である。本発明の更により好ましい態様はフェノール酸化酵素、好ましくはラッカーゼと、プロテアーゼとの双方のタバコ製品の調製における利用である。
【0113】
本発明は本明細書に記載の任意の方法により得られることができる、特に得られたタバコ材料に関する。従って、本発明は最終的なすぐに利用できるタバコ製品、並びに本発明の任意の方法により処理されたタバコ材料の任意のエキスを包括する。
【0114】
本発明の範囲内にあるのはもととなるタバコ材料と比べて少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度が低下した改良タバコ製品であり、ここでこの製品はタバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する、即ちそれと接触させる工程を含んで成る本明細書に記載の任意の方法により製造されたものである。
【0115】
更なる観点において、本発明は顧客要望事項の改善されたタバコ製品、例えば消費者に改善された喫煙の楽しみを供する本発明に係るタバコ製品を製造するための方法に関連する。従って、本発明は例えば改変された化学組成、風味、芳香、味及び/又は色を有するタバコ製品を供するための本発明に係る方法の利用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】フェノール類のHPLC分析の二重勾配プロファイル。実施例の方法及び手順を参照のこと。
【図2】ラッカーゼ処理前後のニコチンのスペクトル。実施例1参照。
【図3】ラッカーゼ処理前後のクロロゲン酸のスペクトル。実施例1参照。
【図4】ラッカーゼ処理前後のルチンのスペクトル。実施例1参照。
【図5】ラッカーゼ処理前後のスコポレチンのスペクトル。実施例1参照。
【図6】フェノール標準品、ルチン、スコポレチン及びクロロゲン酸の混合物のHPLCクロマトグラフィー図。2枚のクロマトグラフィー図はスケールを除き同じである。実施例2参照。
【図7】タバコエキスのHPLCクロマトグラフィー図。2枚のクロマトグラフィー図はスケールを除き同じである。実施例2参照。
【図8】ルチン、スコポレチン及びクロロゲン酸でスパイクしたタバコエキスのHPLCクロマトグラフィー図。2枚のクロマトグラフィー図はスケールを除き同じである。実施例2参照。
【図9a】1.6μg/mlで処理したときの時間の関数としてのタバコエキスのサンプルの一連のHPLCクロマトグラフィー図。2組のクロマトグラフィー図はスケールを除き同じである。実施例2参照。
【図9b】1.6μg/mlで処理したときの時間の関数としてのタバコエキスのサンプルの一連のHPLCクロマトグラフィー図。2組のクロマトグラフィー図はスケールを除き同じである。実施例2参照。
【図10a】プロセスフローを示し、且つどのサンプルを調製したかを表示するフローチャート。実施例8参照。
【図10b】プロセスフローを示し、且つどのサンプルを調製したかを表示するフローチャート。実施例8参照。
【図11】ルチンの化学構造。
【図12】スコポレチンの化学構造。
【図13】クロロゲン酸の化学構造。
【0117】
以下の実施例を、限定することなく、本発明の更なる説明のために提供する。
【0118】
実施例
材料
タバコ材料:Virginiaくんせいタバコ(flue−cured tobacco)(Imperial Tobacco Ltd.より入手可能)。乾燥質約85%、4℃に保存。
ラッカーゼ:トラメテス・ビロサ・ラッカーゼ(TvL)(従来はポリポルス・ピンシトウス(Polyporus Pinsitus)ラッカーゼ(PpL)と呼ばれていた)の液状調整品(Novo Nordisk A/Sより入手可能)。このラッカーゼはWO96/00290に開示の通りにして調製できる(pDSY10を有する株からのラッカーゼ酵素、いわゆるlac1)。マイセリオフソラ・サーモフィララッカーゼの液状調整品(MtL)(Novo Nordisk A/Sより入手可能)。酵素は全て純粋な形態のものとした。
標準品:スコポレチン(Aldrich #24,658−1)、クロロゲン酸(Merck #820319)、ルチン(Aldrich #R230−3)及びニコチン(Aldrich 24,658−1)。
【0119】
方法及び手順:
タバコエキス中及び固形タバコ中のフェノール化合物のHPLC分析(後者は「サンプルの予備処理−固形タバコ」に表記の特別な抽出手順を介する)
フェノール化合物の含有量は下記の手順に従ってHPLCにより分析した:
液体クロマトグラフィーシステム:例えば、Shimadzu SCL−6Bシステムコントローラー及び2個のLC−6A液体クロマトグラフィーポンプ又はWatersモデル600E
インジケーター:Shimadzu SIL 6Bオートインジェクター又はWaters 715 Ultra Wisp。
UVディテクター:Shimadzu SPD−6AフォトダイオードアレーUV−VISディテクター又はWaters Model481。
ソフトウェア:CLASS LC10/CLASS−MXA又はMaxima820。
カラム:Supelcosil(商標)LC−18 25cm×4.6mm(Supelco,#5−8298)又はμ Bondpack C198ステンレススチールカラム、30cm×4mm(内径)、10μmの粒径。
ガードカラム:なし、又は同じ材料の充填されたWatersのGuard−Pak。
温度:周囲
移動相流速:1.3ml/min
インジェクション容量:20μl
波長:350nm
溶出液:A:KHPO(2000mlの脱鉱水中28.4g)及びB:メタノールの二重勾配(線形)混合物(表1及び図1参照のこと)。溶出液は使用前に0.45μmのフィルターで濾過し、そして脱気しておいた。
【表1】

【0120】
HPLCのためのサンプルの予備処理−タバコエキス:
HPLC分析の前に、サンプルを0.45μmのフィルター又はそれより小さいフィルター、例えば除菌Sartorius Minisart 0.45μmフィルター(#16555)又はMillipore Millex−GS0.22μm(#SBGS 0 25 SB)で濾過して、酵素処理中に通常生成される濁り/沈殿物を除去した。通常、エキス/サンプルの希釈はHPLC分析前に行わなかった。
【0121】
HPLCのためのサンプルの予備処理−固形タバコ:
タバコを乾燥させ、そしてふるいにかけてから分析した。タバコを65℃で15時間乾燥させ、そして40−80メッシュスクリーンでふるった。100〜200mgのタバコを隔壁付きの50mlのフラスコの中に正確に秤量した。水及びメタノールの1:1の混合物5mlを添加し、そして超音波槽の中で時折撹拌しながら20分抽出した。この超音波槽内の水温をチェックし、そして必要ならば水温を室温に保つために氷を加えた。その抽出液を0.45μm又はそれより小さいフィルターで濾過し、これによりフェノール系化合物の分析の用意ができる。
【0122】
HPLCに使用する標準品:
スコポレチン、クロロゲン酸、ルチン及びニコチン
定量及び半定量測定のため、各々の標準品を96%のエタノールに溶かし、そしてタバコエキス中の範囲内の比及び濃度で混合した。タバコエキス中のフェノール化合物の半定量化のため、及びこのエキスに含まれる様々な化合物の濃度の展開の尺度として、酵素添加前のピーク面積に対するピーク面積の減少を利用した。この方法の総合的な効率性の尺度として、保持時間Rt>3minでのHPLCクロマトグラフィーにおける全ピーク(主要ピークだけでなく)の総ピーク面積の減少度を利用した(「全ピーク」と称する)。
定量測定の場合、下記の標準品を抽出溶液中で作った:クロロゲン酸:20mg/ml;スコポレチン:1mg/ml;ルチン:0.75mg/ml。
【0123】
タバコ中の糖及びニコチンの測定:
タバコサンプル及びフリーズドライタバコエキスの還元糖及びニコチン含有量をCORESTA (France, Cooperation Centre for Scientific Research Relative to Tobacco)推奨の方法 No.35及び No.37に似かよった連続フロー分析法を利用して測定した。総糖は加水分解工程を経て得られるが、この方法は還元糖法と似かよっている。
【0124】
酵素処理のためのタバコエキスの調製
何らかのことわりのない限り、タバコは下記の手順に従って水で実験室スケールにて抽出した:
1000mlの脱鉱水を45℃に加熱する。30gのタバコ(約25g d.m.(乾燥質))を加え、そしてこの混合物をマグネチックバー及び時折り棒で撹拌する。15分後、このタバコ残渣を真空濾過(Whatman ガラスマイクロファイバー GF/F 11cm)によりタバコエキスから分離した。その濾過エキスを少なくとももう1回、又はそれが完全に透明となるまで真空濾過する。収量は約900mlのタバコエキスである。水性タバコエキスは赤茶液として、タバコ独特の臭いを伴って出現する。タバコエキスのpHは5.4〜5.5の範囲にあり、そしてそれは良好な緩衝能を有し、なぜならpHはこの処理の際及びその後の酵素処理の間非常に安定であるからである。従って、どの実験でもバッファーは含ませない。エキスのd.m.含量は約2.1%であった。
【0125】
酵素処理
何らかのことわりのない限り、タバコエキスの酵素処理は下記の手順に従って実験室スケールで実施した:
タバコエキス(典型的には50〜100ml)をガラスビーカーに注ぎ入れ、そしてマグネチックバーを入れた。PH調整は行わず、バッファーも加えなかった。このタバコエキスは加熱プレート及びサーモスタットにより酵素処理の間ずっと55℃に加熱して管理しておいた。金属シンター(HPLCに通常利用される金属吸引フィルター)によりこのエキスの中に外気を吹き込むことによって大量の水中通気を適用した。注目の酵素(TvL又はPpL)を所望の濃度で加えた。ラッカーゼを添加してからすぐに、タバコエキスの色はこげ茶から黒となり、そして経時的に液体は曇りはじめ、沈殿物が形成しはじめた。この液体をHPLC分析のために間隔を置いてサンプリングした。
【0126】
実施例1 スコポレチン、ルチン、クロロゲン酸及びニコチンに対するラッカーゼの作用
材料
タバコ構成成分:ニコチン、クロロゲン酸、ルチン及びスコポレチン。
酵素:トラメテス・ビロサ由来の精製ラッカーゼTvL。
装置:HP8452 UV/Visダイオードアレー光度計、1cm石英キュベット。
バッファー:酢酸ナトリウム(Merck)。
方法
10mMの酢酸バッファーを酢酸ナトリウムから調製し、硫酸でpH5.0に調整した。96%エタノール中の0.50mg/mlのストック溶液をニコチン、クロロゲン酸、ルチン及びスコポレチンから調製した。0.31mgの酵素タンパク質/mlのラッカーゼ脱鉱水溶液のストック溶液を調製した。HPダイオードアレー光度計を製造者の仕様書に従って作動させた。1cmの石英キュベットを使用した。ブランクとして50μlの96%のエタノールと混合した950μlのバッファーを使用した。1cmの石英キュベットの中で900μlの10mMの酢酸バッファーと50μlの注目の化合物のストック溶液を混合した。「天然」化合物のスペクトルを190〜700nmの範囲で記録した。50μlのTvLストック溶液を加え、そして慎重に混合し、そして190〜700nmの範囲におけるスペクトルを5分間、20秒毎に記録した。これは下記の測定条件をもたらす:9mMのNa−酢酸バッファーpH5.0;4.8%のエタノール;0.025mg/mlのタバコ構成成分;0.016mg/mlのラッカーゼ。
【0127】
結果
図2〜5参照。ニコチンをラッカーゼで処理したときにはスペクトル変化(ピーク位置及びピーク相対高)は認められず、クロロゲン酸、ルチン及びスコポレチンをラッカーゼで処理すると有意なスペクトル変化が認められた。これは後者の化合物がラッカーゼのための基質であることを意味する。
【0128】
実施例2 タバコエキスのラッカーゼTvL処理
酵素処理:表層通気を利用した。TvL酵素をタバコエキスに約1.6μg/mlの濃度で加えた。酵素処理の前、最中及び後のタバコエキスのHPLC分析は、フェノール系化合物ルチン、スコポレチン及びクロロゲン酸がタバコエキスの中に、表2に記載の様々なその他の化合物に加えて存在することを示した。酵素処理の前、最中及び後のタバコエキスのHPLCクロマトグラフィー図、並びにHPLC標準品の混合物のクロマトグラフィー図を図6,7,8及び9に示す。
【0129】
更に、フェノール系化合物ルチン、スコポレチン及びクロロゲン酸を含む酵素処理でピーク数及びピーク面積の有意な減少が認められ、即ち、これらの化合物の含有量の減少が起きている。
【表2】

実施例3 様々なphでのタバコエキスのラッカーゼTvL処理
酵素処理:エキスのpHをHSO又はNaOHでpH4,5,6又は7に調整した。このエキスを周囲温度(約20℃)に酵素処理の間ずっと保った。TvL酵素を約1.6μg/mlの濃度で加えた。PH7に調整したタバコエキスを除き、液体は酵素を添加してから経時的に曇り、そして沈殿物が形成されはじめた。その結果を表3に示す。表3から、全てのピークについてピーク面積の有意な減少が得られることが明らかである。総合的な観点から、利用した条件での至適pHはpH5〜6の範囲内にある。
【0130】
くんせいタバコの「自然pH」は5.4〜5.5であり、それはこの至適pHに非常に良く合う。タバコ原材料の緩衝能はかなり良好と思われ、なぜならpHは全試験中0.1単位超で変化することがなかったからである。
【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
実施例4 2通りの酵素濃度及び異なる処理時間でのタバコエキスのラッカーゼTvL処理
酵素処理:TvL酵素を約1.6μg/mlの濃度又は約7.8μg/mlの濃度で添加した。結果を表4及び5に示す。1.6μg/mlのTvLの投与量を利用すると、7.8μg/mlの投与量を利用した場合に比べ、フェノール化合物の同程度の減少を得るにはより長い処理時間を要することが明らかである。
【0135】
【表6】

【0136】
【表7】

【0137】
実施例5 2通りの酵素濃度及び異なる処理時間でのタバコエキスのラッカーゼMtL処理
酵素処理:MtL酵素を約0.63μg/ml又は約6.3μg/mlの濃度で加えた。結果を表6及び7に示す。MtLもフェノール系化合物を除去するのに使用できることが明らかである。0.63μg/mlの投与量を利用すると、6.3μg/mlの投与量を利用した場合に比べ、フェノール系化合物の同程度の減少を得るにはより長い処理時間を要すること、そして約0.63μg/mlの投与量でほぼ完全な除去が得られうることが明らかである。
【0138】
【表8】

【0139】
【表9】

【0140】
実施例6 様々な酵素濃度によるタバコエキスのラッカーゼMtL処理
酵素処理:MtL酵素を2.5μg/ml〜6.3μg/mlの範囲における様々な濃度で加えた。20分という固定の処理時間を利用した。ラッカーゼの添加後、時間と共に液体は曇り、そして沈殿物が生成した(但し、適用した投与量で異なる)。結果を表8に示す。MtLの投与量を増やすとフェノール系化合物を除去するのに必要な処理時間が短くなり、そして20分未満でほぼ完全な除去が得られることが明らかである。
【0141】
【表10】

【0142】
実施例7 様々なpO でのエキスのラッカーゼ処理
酵素処理:酵素電極を液体に浸し、そしてpO (100%=外気で飽和)を測定し、そして金属シンター(HPLCのために通常利用される金属吸引フィルター)を介してエキスに大気及び/又はN を吹き込むことにより所望のレベルに管理した。MtL酵素を約3.8μg/mlの濃度で加えた。20分という固定の処理時間を利用した。ラッカーゼの添加後、液体は曇り、そして沈澱物が生成した(但し、pO のレベルに依存して)。結果を表9に示す。利用条件で、pO の上昇に伴い効率も上昇することが明らかである。利用条件では、酸素はpO <90%のとき律速となる。
【0143】
【表11】

【0144】
実施例8 タバコのラッカーゼ及びベントナイト処理
遠心分離:JS−4.2ローターの装備したBeckman J−6B遠心機を使用した。1Lの容器を使用した。4200rpm (約5000g)で10分、室温で作動させた。
凍結乾燥:Heto SICC CD40。エキスを−45℃で凍結し、そして温度を3mbarでの乾燥中に徐々に20℃に上昇させた。
手順:どのサンプルが調製されたかを示すフローチャートを図10に示す。
【0145】
タバコの抽出:
タバコは下記の手順に従い、水で実験室スケールで抽出した。15リットルの脱鉱水を45〜46℃に加熱する。450gのタバコ(約380g d.m.)を加え、そしてこの混合物を棒で手動撹拌する。15分後、タバコ残渣を真空濾過により水性タバコエキスから分離させる。タバコ残渣を凍結乾燥し、そして「2:フリードライズ抽出タバコ残渣」と表示する。
【0146】
このタバコエキスを約5000gで10分遠心分離して、浮遊した粒子/曇り物を除く。収量は約13.5リットルとなる。水性タバコエキスは赤茶液であり、タバコ独特の臭いを有する。タバコエキスのpHは5.5であり、そしてそれはかなり良好な緩衝能を有し、なぜならそのpHはこの処理の最中及びその後の酵素処理の後極めて安定だからである。酵素処理前にpH調整は行わず、ハッファーも添加しなかった。タバコエキスのd.m.含量は約1.4%であった(少なくとも120s、一定の重量となるまで約10gのタバコエキスを120℃で乾燥)、タバコエキスのサンプルをHPLCにより分析した。1.5Lのタバコエキスを凍結乾燥し、そして「3:タバコエキス」と表示した。
【0147】
酵素処理:
6Lのタバコエキスを加熱プレート及びサーモスタッットにより53〜56℃に加熱して管理した。外気を液体にシリコーンチューブ(直径12mm)を介して吹き込んだ。そのシリコーンチューブには多数の小穴を、設けるよう針で穴が開けられている。通気は、液体に吹き込まれる空気が効率的な混合へと結びついて更なる混合を要しないよう十分な量とした。MtLを約7.5μg/mlの最終濃度にて加えた。30分後、サンプルを集め、そしてHPLCにより分析した。
【0148】
30分後、3Lの「酵素処理タバコエキス」を約5000gで10分遠心分離した。その上清液をデカンテーションにより集め、そして完全に透明となった。サンプルをHPLCにより分析した。d.m.含量は約1.5%であった(少なくとも120s、一定の重量となるまで約10gのエキスを120℃で乾燥)、その上清液を凍結乾燥し、そして「4:沈澱物から分離した酵素処理タバコエキス」と表示した。
【0149】
「酵素処理タバコエキスからの沈殿物」(少量のエキスを含む固形材料)を脱鉱水に浮遊させ、そして容器から回収し、そして凍結乾燥し、そして「5:酵素処理タバコエキスからの沈殿物」と表示した。
【0150】
ベントナイト処理:
6Lの「酵素処理エキス」の残り3Lをベントナイト(Aldrich #28,523−4)で処理した。3gのベントナイトを約200mlの「酵素処理エキス」に懸濁させた。このエキス/ベントナイトスラリーを残留酵素処理エキスと再度組合せ、そして撹拌しながら50〜55℃で15分インキュベーションした。15分後、サンプルをHPLCにより分析した。
【0151】
15分後、酵素処理及びベントナイト処理したエキスを約5000gで10分遠心分離した。その上清液をデカンテーションにより回収し、そして完全に透明であった。上清液のサンプルをHPLCにより分析した。上清液のd.m.含量は約1.5%であった(少なくとも120s、一定の重量となるまで約10gのエキスを120℃で乾燥)。この上清液を凍結乾燥し、そして「6:沈殿物及びベントナイトから分離した酵素−及びベントナイト処理タバコエキス」と表示した。
【0152】
この沈殿物(酵素発生沈澱物並びにベントナイト及び少量のエキスを含む固形材料)を脱鉱水に懸濁し、そして容器から回収し、凍結乾燥し、そして「7:酵素−及びベントナイト処理タバコエキスからの沈殿物」と表示した。
【0153】
表10には様々なエキスのフェノール化合物のHPLC分析由来の結果を示す。
【0154】
表11は様々な固形タバコ画分の還元糖及び全糖、並びにニコチンのオートアナライザー分析の結果を示す。
【0155】
表12は様々なタバコエキス及びその画分の還元糖及び全糖、並びにニコチンのオートアナライザー分析の結果を示す。
【0156】
タバコエキスからのフェノール化合物の極めて高い度合いの除去が得られることが明らかである。更に、還元糖、全糖及びニコチンの大半は抽出手順によりタバコから抽出され、それ故タバコエキスの中にあることが明らかである。しかしながら、これらの化合物のいずれもエキスの酵素処理及び/又はベントナイト処理によっては有意な影響を受けず、それ故処理エキスの中で完全なままであり続け、そして再度組合せることでタバコにもどすことができる。
【0157】
【表12】

【0158】
【表13】

【0159】
【表14】

【0160】
実施例9 大量スケールタバコ処理
3.0kgのタバコ(くんせいVirginiaタバコ、35カット/インチ(cpi)で切断)を100リットルの水に60〜65℃で15分抽出した。このエキスを「タバコ残渣」から分離し、そして大型タンクに集めた。抽出温度は55℃とし、そして処理の間に40℃にまでゆっくりと下降させた。MtLを4.1μg/mlの最終濃度で加えた。この混合物に反応時間中大量に通気せしめた。サンプルを間隔を置いて回収し、そしてHPLCによりクロロゲン酸(CA)、ルチン(R)及びスコポレチン(S)について分析した。各サンプルの一部を凍結乾燥し、そして固形残渣をオートアナライザーにより糖及びニコチンについて分析した。その結果を表13に示す。
【0161】
タバコエキスに対する同じ分析を水抽出の前及び後のタバコで実施した。その結果を表14に示す。
タバコエキスのフェノール含量は20分間の処理を経て最小値にまで減少することが明らかである。更に、還元糖及び全糖並びにニコチンの大半がこの抽出手順によりタバコから抽出され、それ故タバコエキスの中にあることが明らかである。しかしながら、これらの化合物のいずれもエキスの酵素処理により有意な影響を受けず、そして「酵素処理タバコエキス」の中で完全なままであり続け、そして再度組合せることでタバコ残渣にもどすことができる。
この実験を6.0kgのタバコ及び200リットルの水で60〜65℃で繰り返した。似たような結果が200リットルのバッチと100リットルのバッチとで得られた。この結果を表15及び16に示す。
【0162】
【表15】

【0163】
【表16】

【0164】
【表17】

【0165】
【表18】

【0166】
実施例10
「原タバコ」を実施例8に記載の手順に従って抽出した。「タバコエキス」はMtLで20分、55℃にて大量通気及び4.1μg/mlに相当するMtL濃度で処理した。酵素処理後、ベントナイトを1g/Lの濃度にて、ラッカーゼ処理した後のエキスの温度(50℃)で10分加えておいた。スラリーを連続遠心分離を利用して1L/min の流速で浄化した。この酵素処理した浄化エキスを逆浸透及びエバポレーションにより40倍に濃縮した。次いでこの濃縮物を「タバコ残渣」と、そのエキスをタバコ残渣の上にスプレーすることにより再度組合せ、そして最後に乾燥し、「再組合せタバコ材料」を得た。
【0167】
抽出前後のタバコ及びタバコエキスと再度組合せたタバコを前述の方法に従ってオートアナライザーによりニコチン、還元糖及び全糖について分析し、そして前述の方法に従ってHPLCによりクロロゲン酸、ルチン及びスコポレチンについて分析した。MtL及びベントナイト処理前後のタバコエキスを前述の方法に従ってHPLCによりクロロゲン酸、ルチン及びスコポレチンについて分析した。得られた結果を表17及び18に示す。
【0168】
再組合せタバコ材料中のフェノール化合物の量は原タバコと比べて有意に減少していることが明らかである。更に、還元糖及び全糖含有量は影響されておらず、そしてニコチン含有量が若干減少していることが明らかである。
【0169】
【表19】

【0170】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ製品の調製のための方法であって、
(i)タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する工程;
を含んで成る方法であって、ここで当該フェノール酸化酵素がモノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1,14,18,1)であることを除く、方法。
【請求項2】
更に、
(ii)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;そして
(iii)この抽出混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分ける;
工程を含んで成り、前記工程(i)を工程(ii)の間又はその後に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タバコ製品の調製のための方法であって、
(ii)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;
(iii)この抽出混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分け;
(i)このタバコエキスをフェノール酸化酵素で処理して1又は複数の酸化フェノール系化合物を生成する;
工程を含んで成る方法。
【請求項4】
(iv)前記酸化フェノール系化合物を前記タバコエキスから分離する工程を更に含んで成る請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記分離が遠心分離、濾過、限外濾過、沈降、逆浸透、沈降、吸着、デカンテーションもしくはふるい分け、又は上記の任意の組合せにより達成される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記フェノール酸化酵素を不活性及び/又は除去する工程を更に含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
(vi)前記エキスを濃縮する工程を更に含んで成る、請求項2〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
更に
(vii)前記エキスを不溶性吸着体で処理する;及び/又は
(viii)前記エキスをポリビニルポリピロリドン(PVPP)で処理する;
ことを含んで成る、請求項2〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
下記の工程を下記の順序で含んで成る請求項3記載の方法:
(ii)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;
(iii)この抽出混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分け;
(i)このエキスをフェノール酸化酵素で処理し;
(vii)このエキスを不溶性吸着体で処理し;そして
(vi)このエキスを濃縮する。
【請求項10】
下記の工程を下記の順序で含んで成る請求項3記載の方法:
(ii)タバコ材料を溶媒で抽出して抽出混合物を供し;
(iii)この抽出混合物をタバコエキスとタバコ残渣とに分け;
(i)このエキスをフェノール酸化酵素で処理して1又は複数の酸化フェノール系化合物を生成し;
(iv)この酸化フェノール系化合物をこのタバコエキスから分離し;そして
(vi)このエキスを濃縮する。
【請求項11】
更に前記酵素処理したタバコエキスをタバコ材料と組合せる工程を含んで成る、請求項2〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
更に(ix)前記酵素処理したタバコエキスを前記タバコ残渣と再度組合せる工程を含んで成る、請求項2〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
更にタンパク質分解酵素により処理する工程を含んで成る、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
タバコ材料又はタバコ残渣をプロテアーゼで処理してから前記エキスの組合せを行う、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記タバコ製品が喫煙用タバコ製品である、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が水性溶媒である、請求項2〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒がプロテアーゼを含んで成る、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒が界面活性剤を含んで成る、請求項2〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記フェノール酸化酵素がフェノールオキシダーゼである、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記フェノールオキシダーゼがカテコールオキシダーゼ、ラッカーゼ及びO−アミノフェノールオキシダーゼから成る群から選ばれる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記フェノールオキシダーゼがラッカーゼ、例えばタバコに由来するラッカーゼである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記ラッカーゼがトラメテス(Trametes)、例えばトラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、マイセリオフソラ(Myceliophthora)、例えばマイセリオフソラ・サーモフィラ(M.thermophila)、コプリヌス(Coprinus)、例えばコプリヌス・シネレウス(C.cinereus)、リゾクトニア(Rhizoctonia)、例えばリゾクトニア・ソラニ(R.solani)、ピクノポルス(Pycnoporus)、例えばピクノポルス・シンナバリアス(P.cinnabarious)、又はタバコ種に由来する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記フェノール酸化酵素がペルオキシダーゼである、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼ、ダイズペルオキシダーゼ、タバコペルオキシダーゼ、又はコプリヌス、例えばコプリヌス・シネレウス、コプリヌス・マクロリズス(C.macrorhizus)、バチルス(Bacillus)、例えばバチルス・プミルス(B.pumilus)、又はマイキソコッカス(Myxococcus)、例えばマイキソコッカス・ビレセンス(M.virescens)由来のペルオキシダーゼである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記フェノール酸化酵素がその基質と単一の電子遷移により反応する、請求項1〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記フェノール酸化酵素がタバコに由来する、請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記フェノール酸化酵素がモノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.18.1)ではない、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度が低下したタバコ製品を調製する方法であって、タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理する工程を含んで成る方法。
【請求項29】
タバコ製品を調製するための方法であって、タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理したフェノール系化合物の濃度が低下したタバコ製品を供する工程を含んで成り、この低下が当該タバコ材料中の当該フェノール系化合物の濃度の5%以上、10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、75%以上、80%以上、95%以上、98%以上又は100%の低下である、方法。
【請求項30】
前記フェノール系化合物がクロロゲン酸である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記フェノール系化合物がルチンである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記フェノール系化合物がスコポレチンである、請求項29記載の方法。
【請求項33】
タバコ製品を調製するための方法であって、タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理することで酵素処理工程前のタバコ材料と比較してHPLC分析によりシグナル(ピーク)の低下を示すタバコ製品を供することを含んで成り、ここで当該シグナルはフェノール系化合物に対応し、ここで当該低下は5%以上、10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、75%以上、80%以上、95%以上、98%以上、又は100%の低下である、方法。
【請求項34】
請求項1〜27に規定の1又は複数の工程を含んで成る、請求項28〜33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記タバコ材料がタバコエキスである、請求項28〜33のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
タバコ材料中の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度を低下するための方法であって、タバコ材料のエキスをフェノール酸化酵素で処理することを含んで成る方法。
【請求項37】
請求項1〜36のいずれか1項に記載のタバコ材料中の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度を低下するための方法であって、前記フェノール系化合物が低分子量フェノール系化合物である、方法。
【請求項38】
タバコ材料中の少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度を低下するための方法であって、タバコ材料のエキスをフェノール改変酵素で処理することを含んで成る方法。
【請求項39】
タバコエキスの処理におけるフェノール酸化酵素の利用。
【請求項40】
タバコ製品の調製におけるフェノール酸化酵素の利用であって、当該フェノール酸化酵素がモノフェノールモノオキシゲナーゼ(EC 1,14,18,1)ではない、利用。
【請求項41】
タバコ製品の調製におけるラッカーゼの利用。
【請求項42】
タバコ製品の調製におけるラッカーゼ及びプロテアーゼの利用。
【請求項43】
請求項1〜38のいずれか1項記載の方法により得られることのできるタバコ材料。
【請求項44】
少なくとも一種のフェノール系化合物の濃度がそれの由来するタバコ材料のそれと比較して低下した改変タバコ製品であって、タバコ材料をフェノール酸化酵素で処理することにより製造されるタバコ製品。
【請求項45】
前記製品が請求項1〜27のいずれかに規定の1又は複数の工程を更に含んで成る方法により製造されたものである、請求項44記載の改変タバコ製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−10656(P2011−10656A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172149(P2010−172149)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2000−558734(P2000−558734)の分割
【原出願日】平成11年7月7日(1999.7.7)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【出願人】(310024044)インペリアル タバコ カナダ リミティド (1)
【Fターム(参考)】