説明

タワー型POSレジスタ

【課題】スキャナ部を釣銭機の略垂直上方に近接させて配置しても、スキャナ部が邪魔にならず、オペレータの作業空間を無駄に広げることなく、釣銭機を容易にメンテナンスできるタワー型POSレジスタを提供することを課題とする。
【解決手段】釣銭を払いだす自動釣銭釣札機7と、前記自動釣銭釣札機7の略垂直上方に位置し、顧客が購入する商品に付されたコード情報を読み取る固定スキャナ部4と、前記スキャナ部をレジ操作可能な初期位置と前記自動釣銭釣札機7の上蓋を開ける際に障害にならない退避位置との間で移動させる移動機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワー型POSレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタワー型POSレジスタ(縦一体型)に配置させる釣銭機とスキャナ部は、オペレータの操作性と作業効率とを考慮してその配置が決められる。前記釣銭機は、顧客からの預かり金の受け取りや顧客への釣銭の手渡しを考慮して、その配置が決められており、具体的には、オペレータの作業効率の観点から、釣銭機の配置は、タワー型POSレジスタを操作するオペレータの正面位置で、かつ表示部、操作部、スキャナ部等の下方に位置するのが良い。また、釣銭機の配置は、POSレジスタのカウンタ台の上部に配置させることで、オペレータは、金銭授受の操作性が良くなり、その結果、客捌きが良くなる。
【0003】
また、タワー型POSレジスタに備えるスキャナ部は、商品に付されたバーコードを効率良く、かつ正しく読み取る必要があるため、オペレータがスキャン操作しやすく、バーコードを正しく読み取る高さおよび位置に配置させる必要がある。そのため、タワー型POSレジスタに配置させるスキャナ部は釣銭機の上方に配置させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−180350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、前記タワー型POSレジスタ(縦一体型)において、オペレータの操作性と作業効率を考慮して釣銭機とスキャナ部を配置させると、釣銭機の略垂直上方にスキャナ部を近接させて配置させることになる。しかしながら、前記釣銭機で貨幣詰まり等の不具合が生じた場合は、オペレータが前記釣銭機をオペレータ側へ略水平に引き出してから釣銭機の上蓋を開け、当該釣銭機内に詰まった貨幣を取り除く作業(メンテナンス)を行なわなければならない。その場合、開けた上蓋が前記スキャナ部にぶつかり破損させてしまうという問題があった。また、釣銭機の略垂直上方にスキャナ部を近接させて配置したので、釣銭機をオペレータ側へ略水平に引き出すその距離は、当該釣銭機の上蓋を確実に開けられる距離分引き出す必要があり、釣銭機をオペレータ側へ略水平に引き出す距離が不十分であった場合は、スキャナ部が邪魔で釣銭機の蓋が開けられないという問題があった。また、釣銭機の入出金時に硬貨や紙幣を搬送する搬送路を定期的に清掃するなどのメンテナンスを行う際にも、前記問題によりスキャナ部が邪魔になる。
さらに、釣銭機の上蓋を確実に開けるためには、前記釣銭機が略水平に引き出される距離分の空間をオペレータ側の作業空間に追加し、当該作業空間を予め設けておく必要があるので、オペレータの作業空間を広く確保するため、POSレジスタの設置できる台数を減少させてしまうという問題があった。そのため、タワー型POSレジスタで使用するスキャナ部を釣銭機の略垂直上方に近接させて配置させることは困難であった。
【0006】
そこで本発明は、上記2つの問題に鑑みてなされたものであり、スキャナ部を釣銭機の略垂直上方に近接させて配置しても、スキャナ部が邪魔にならず、オペレータの作業空間を余計に広げることなく、釣銭機を容易にメンテナンスできるタワー型POSレジスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下[1]−[5]を提供するものである。
[1]釣銭を払いだす釣銭機と、前記釣銭機の略垂直上方に位置し、顧客が購入する商品に付されたコード情報を読み取るスキャナ部と、前記スキャナ部をレジ操作可能な初期位置と前記釣銭機の上蓋を開ける際に障害にならない退避位置との間で移動させる移動機構と、を備えることを特徴とするタワー型POSレジスタ。
第1の発明によれば、スキャナ部を釣銭機の略垂直上方に近接配置させても、スキャナ部をレジ操作可能な初期位置と前記釣銭機の上蓋を開ける際に障害にならない退避位置との間で移動させる移動機構により、スキャナ部を初期位置と退避位置に自在に移動させることができる。これによって、前記釣銭機をオペレータ側へ略水平に引き出す距離を短くすることができ、釣銭機の開けた蓋がスキャナ部にぶつからず、オペレータの作業空間を無駄に広げることなく容易に釣銭機の蓋を開けることができる。
【0008】
[2]前記釣銭機は、前記顧客に手渡す釣銭を払いだす釣銭機であって、エラー発生信号およびエラー解消信号を出力し、前記釣銭機からエラー発生信号が出力された場合に前記スキャナ部が前記退避位置へ移動し、前記釣銭機からエラー解消信号が出力された場合に前記スキャナ部が前記初期位置へ復帰するよう、前記スキャナ部の移動を制御する制御部と、を備えることを特徴とする上記[1]に記載のタワー型POSレジスタ。
第2の発明によれば、釣銭機に不具合が発生した場合にスキャナ部が後方に退避するようスキャナ部の移動を制御することができるので、オペレータは、スキャナ部の移動操作を間違えることがない。また、前記釣銭機をオペレータ側へ略水平に引き出す距離を短くすることができ、釣銭機の開けた蓋がスキャナ部にぶつからず、オペレータの作業空間を無駄に広げることなく容易に釣銭機の蓋を開けることができ、釣銭機の不具合が解消した場合には、スキャナ部が元の位置に戻るようスキャナ部の移動を制御することができる。
【0009】
[3]前記スキャナ部を前記退避位置への移動が可能な状態または前記初期位置からの移動を禁止する状態とする機構部を備え、前記制御部は、前記釣銭機からエラー発生信号が出力された場合に前記機構部により前記スキャナ部を前記移動可能状態とし、前記釣銭機からエラー解消信号が出力された場合に前記機構部により前記スキャナ部を前記移動禁止状態とすることを特徴とする上記[1] または上記[2]に記載のPOSレジスタ。
第3の発明によれば、オペレータが会計操作あるいはスキャン操作時等にスキャナ部に触れることによって不用意にスキャナ部が動いてしまうことを避けることができる。
【0010】
[4]前記釣銭機からエラー発生信号が出力された場合に退避ボタンを表示し、前記釣銭機からエラー解消信号が出力された場合に復帰ボタンを表示する表示手段を備え、前記制御部は、前記退避ボタンが操作された場合に前記スキャナ部が前記退避位置へ移動し、前記復帰ボタンが操作された場合に前記スキャナ部が前記初期位置へ復帰するよう、前記スキャナ部の移動を制御することを特徴とする上記[1]から上記[3]のいずれかに記載のPOSレジスタ。
第4の発明によれば、オペレータが表示部に表示された退避ボタンを操作することによりスキャナ部が退避位置へ移動するようスキャナ部の移動を制御することができる。また、オペレータは復帰ボタンを押すことにより、スキャナ部が初期位置へ復帰するようスキャナ部の移動を制御することができる。
【0011】
[5]前記スキャナ部の側方にレシートを印字する印字部を備え、前記印字部は、前記スキャナ部と共に移動することを特徴とする上記[1]から上記[4]のいずれかに記載のPOSレジスタ。
第5の発明によれば、印字部もスキャナ部と共に移動することより、釣銭機の上蓋を開ける際に開けた上蓋が印字部にぶつからず、容易に釣銭機の蓋を開けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スキャナ部を釣銭機の略垂直上方に近接させて配置しても、スキャナ部が邪魔にならず、釣銭機を引き出す距離を短くし、オペレータの作業空間を余計に広げることなく釣銭機を容易にメンテナンスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による、タワー型POSレジスタの外観構造を示す斜視図である。
【図2】本実施形態におけるタワー型POSレジスタの電気的なブロック構成図である。
【図3】本実施形態における固定スキャナ部の設置形態について説明する図である。
【図4】本実施形態における固定スキャナ部の移動方法について説明する図である。
【図5】固定スキャナ部の退避位置に移動する処理の流れについて説明するためのフローチャートである。
【図6】固定スキャナ部を手動で初期位置に復帰する処理の流れについて説明するためのフローチャートである。
【図7】固定スキャナ部を半手動で初期位置に復帰する処理の流れについて説明するためのフローチャートである。
【図8】固定スキャナ部を全自動で初期位置に復帰する処理の流れについて説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態における、タワー型POSレジスタの外観構造を示す斜視図である。図1において、タワー型POSレジスタ1は、カウンタ台15の中央部の奥側に設けられている。タッチパネル付表示部2は、表示部とタッチパネルとからなる液晶タッチパネルであり、タワー部1の最上位に位置する。該タッチパネル付表示部2は、プリセットキーを有し、商品登録した商品に関する情報(商品名称や値段など)、買い上げ点数及び合計金額などを表示する。
【0015】
入力部3は、タッチパネル付表示部2の下側に設けられている。該入力部3には、テンキー、預/現計キー、小計キー、取消キーなど、頻繁に操作されるキーが設けられている。固定スキャナ部4は、商品に付されているバーコード(商品コード)の読取部であり、入力部3の下側に設けられている。また、タワー部1の右側面には、店員がレジ台へ持ち上げられない重たい商品や大型商品などに付されているバーコード(商品コード)を店員が手操作で読み取らせるウォンドスキャナ部5が配置されている。印字部6は、固定スキャナ部4の左側に位置し、顧客へ手渡すレシート等を発行する。
【0016】
自動釣銭釣札機7は、固定スキャナ部4と印字部6の下側に設けられており、硬貨出金口7−1、硬貨入金口7−2、紙幣入出金口7−3からなり、硬貨、紙幣を扱う。硬貨出金口7−1は、前面左側に配置され、凹部から硬貨の釣銭が排出される。硬貨入金口7−2は、前面中央部に配置され、凹部から硬貨が投入される。紙幣入出金口7−3は、前面右側に配置され、紙幣が水平に投入/排出される。
【0017】
図2は、本実施形態におけるタワー型POSレジスタの電気的なブロック構成図である。
タワー型POSレジスタ1は、CPU(Central Processing Unit、制御部)21と、タッチパネル付表示部2と、入力部3と、固定スキャナ部4と、ウォンドスキャナ部5と、印字部6と、自動釣銭釣札機7と、フォトセンサ部22と、ROM(Read Only Memory)23と、RAM(Random Access Memory)24と、電磁ソレノイド32と、板金33と、移動レール34と、を有している。また、電磁ソレノイド32と板金33を合わせて、機構部と称す。
【0018】
CPU21と、タッチパネル付表字部2と、入力部3と、固定スキャナ部4と、ウォンドスキャナ部5と、印字部6と、自動釣銭釣札機7と、フォトセンサ部22と、ROM22と、RAM24と、電磁ソレノイド32と、移動レール34とはバスを介して接続されており、相互に通信可能である。
【0019】
CPU21は、ROM23に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、タワー型POSレジスタ1の動作を制御する。
ROM23は、CPU21によって実行される制御プログラムやタッチパネル付表示部14に表示させるGUI(Graphical User Interface)データ等を記憶する。
RAM24は、顧客が購入する商品の商品ファイル(部門、バーコード情報、商品名称、産地・メーカー名、値段など)、会員ファイル(会員コード、顧客名称及び特典など)、顧客が購入する商品の買い上げデータ(商品明細、買い上げ点数及び合計金額など)、前記買い上げデータを集計し売上情報として記憶する実績ファイルなどを保存記憶するメモリである。
【0020】
固定スキャナ部4は、顧客が購入する商品に付されたバーコード情報を読み取り、そのバーコード情報をCPU21に出力する。本実施形態における固定スキャナ部4の設置形態について、図3を用いて説明する。固定スキャナ部4は、固定スキャナ部4の上方よりアームが突出しており、該アーム先端には回動可能なローラーが組付けられている。そして該固定スキャナ部4の上方に位置し、当該固定スキャナ部4が有するローラーと噛合い摺動可能な移動レール34を壁面に備えたスキャナ吊下台31を配置させている。前記固定スキャナ部4は、前記移動レール34と噛合うローラーにより、オペレータと対面する前後方向(図3の固定スキャナ部の移動方向35を参照)へ移動させることができる。なお、固定スキャナ部4の移動は、手動及び機械的な制御の何れであってもよく、CPU21の判定により、固定スキャナ部4を移動させる。
【0021】
次に、本実施形態におけるスキャナ部の移動方法について、図4を用いて説明する。固定スキャナ部4を吊り下げるスキャナ吊下台31の内部に、板金33が付いた二つの電磁ソレノイド32が取り付けられている。固定スキャナ部4と接する壁面に二つの穴が設けられており、CPU21は、前記電磁ソレノイド32に電流を流すことにより、電磁ソレノイド32の可動芯に結合した板金33をスキャナ吊下台31の穴から突出させる制御、或いは没入させる制御の何れかの制御を行なう。これによって、図4(a)に示すように、固定スキャナ部4をオペレータと対面する後方へ移動させたり、或いは、移動禁止にさせたりする。
図3と図4では図示されていない反射型のフォトセンサ部22は、スキャナ吊下台31に設置されており、固定スキャナ部4が初期位置に位置しているときに、固定スキャナ部4を感知することができる。
フォトセンサ部22は、固定スキャナ部4が初期位置41に存在するときに、初期位置に存在することを示す情報をCPU21に出力する。
また、フォトセンサ部22は、スキャナ部4が摺動可能な移動レール34に沿って、後方の退避位置42に移動し、スキャナ部4がスキャナ部の初期位置41に存在していないことを示す情報をCPU21に出力する。
【0022】
このように、固定スキャナ部4を吊り下げるスキャナ吊下台31の内部に電磁ソレノイド等により、板金33が上下する仕組みが組み込まれており、図3に示すように、スキャナ部の後方上部側において、固定スキャナ部4のストッパーの役割を果たすことになる。
【0023】
なお、図4(c)に示すように、印字部6は、固定スキャナ部4と共に移動するようにしてもよい。その場合、オペレータは固定スキャナ部4を移動させると印字部6も初期位置41から退避位置42へ一緒に移動(以後、退避と称す)させることができる。これによって、自動釣銭釣札機7を引き出す距離を短くし、自動釣銭釣札機7の開けた上蓋(図は省略)が固定スキャナ部4または印字部6にぶつかるのを防ぐことができ、容易に自動釣銭釣札機7の蓋を開けメンテナンスを行うことができる。
【0024】
自動釣銭釣札機7は、内部で硬貨や紙幣が詰まるなどの不具合が発生すると、CPU21にエラー信号(例えば、エラーステータス値:1)を出力する。
また、自動釣銭釣札機7は、内部で硬貨や紙幣が詰まるなどの不具合が解消すると、CPU21に正常信号(例えば、エラーステータス値:0)を出力する。
また、自動釣銭釣札機7は、CPU21から入力される問い合わせ信号に基づいて、エラー信号または正常信号(例えば、それぞれエラーステータス値1または0)を出力する。
また、自動釣銭釣札機7は載置台に載置されており、当該自動釣銭釣札機7が内部で硬貨や紙幣が詰まるなどの不具合が発生したとき、オペレータは載置台に載置された自動釣銭釣札機7を載置台とともにオペレータ方向手前へ引き出してメンテナンスを行う。
また、自動釣銭釣札機7は硬貨入金口7−2、紙幣入出金口7−3から入金された貨幣の入金情報をCPU21に出力する。
また、自動釣銭釣札機7は、CPU21から入力された出金する紙幣および硬貨の種類と数に従って、紙幣および硬貨をそれぞれ紙幣入出金口7−3、硬貨出金口7−1から出金する。
【0025】
次に、CPU21の会計処理について説明する。CPU21は、固定スキャナ部4またはウォンドスキャナ部5で読取られた商品に付されたコード情報に基づいて、該当する商品情報(商品名称や単価など)を呼出し、当該商品情報と入力部3から入力された顧客が購入する商品の個数とから、当該顧客の取引明細を集計し会計の合計金額を算出し、該取引明細と合計金額とをRAM24に保存し、タッチパネル付表示部2と客側表示部へ表示する。
そして、CPU21は、自動釣銭釣札機7から入力された顧客から預かった預かり金(入金情報)と、RAM24より読み出した一取引の合計金額から、当該顧客のお釣りを計算する。次に、CPU21は、入力部3の現計キーが押されると、前記計算したお釣りの金額から、硬貨出金口7−1、紙幣入出金口7−3より出金し顧客へ手渡すための紙幣および硬貨(釣銭)の種類と数(以下、問い合わせ信号と称す)を自動釣銭釣札機7へ出力する。
それから、CPU21は、自動釣銭釣札機7から顧客へ手渡すための釣銭が正しく出金されると、RAM24に記憶する当該顧客の買い上げ明細、一取引の合計金額、当該顧客からの預かり金、顧客へ手渡した釣銭金額等を印字部6によりレシート印字し発行した後、当該顧客の取引情報を当日の実績データとしてRAM24の実績ファイルエリアに記憶する。
【0026】
次に、本発明における実施例を以下の通り説明する。
CPU21は、以下に示す3つの実施方法(それぞれ、手動、半自動、全自動と称す)で固定スキャナ部4を移動するよう制御する。実施例1(手動)とは、オペレータが手動で固定スキャナ部4を移動させ、固定スキャナ部4を退避位置42から初期位置41に移動する(以下、復帰と称す)時の板金33の上下動の開始時間をタッチパネル付表字部2に表示されたボタンを操作することで固定スキャナ部4を移動するよう制御する方法である。実施例2(半自動)とは、固定スキャナ部4を手動で移動させるが、復帰時の板金33の上下動の開始時間はCPU21が制御する方法である。実施例3(全自動)とは、オペレータがタッチパネル付表示部2に表示されたボタンを押すことにより、CPU21が固定スキャナ部4の移動と復帰時の板金33の上下動の開始時間を制御する方法である。以下、それぞれの実施例について説明する。
【0027】
[実施例1]
まず、実施例1として、手動で固定スキャナ部4を移動する時の、CPU21による制御方法について説明する。CPU21が固定スキャナ部4を初期位置41から退避位置42へ移動するよう制御する処理の流れについて、図5のフローチャートを参照して説明する。CPU21は、入力部3の現計キーが押されると、計算したお釣りの金額から、自動釣銭釣札機7に釣銭釣札を払い出すための信号を出力し、自動釣銭釣札機7からの払出の結果を待つ。その際、自動釣銭釣札機7の内部で硬貨や紙幣が詰まるなどの不具合が発生していた場合、自動釣銭釣札機7からCPU21にエラー信号(例えば、エラーステータス値1)が入力される(ステップS51 YES)。CPU21は、自動釣銭釣札機7から入力されたエラー信号に基づいて、タッチパネル付表示部2に、「退避」ボタンを表示させる(ステップS52)。なお、POSレジスタがメンテナンスモードの時に、タッチパネル付表示部2に「退避」ボタンを表示させるようにしてもよい。これにより、オペレータへ固定スキャナ部4を移動操作しなければならないことを知らしめることができる。
【0028】
「退避」ボタンが押された場合(ステップS53 YES)、タッチパネル付表示部2は、退避ボタンが押されたという情報をCPU21に出力する。CPU21は、当該情報が入力されると、電磁ソレノイド32に電流を流し、電磁ソレノイド32を引くことによって、電磁ソレノイド32の可動芯に結合した板金33を上昇させる(ステップS54)。次に、CPU21は、タッチパネル付表示部2の「退避」ボタンを消去させる。その後、オペレータが固定スキャナ部4を手で押して、移動レール34に沿って固定スキャナ部4を初期位置41から退避位置42へ移動させる。
【0029】
なお、ステップS51は、CPU21による自動釣銭釣札機7への問い合わせがなくても、自動釣銭釣札機7の内部で硬貨や紙幣が詰まるなどの不具合が発生した時点で、自動釣銭釣札機7がエラー信号をCPU21に出力してもよい。
【0030】
次に、CPU21が固定スキャナ部4を退避位置42から前方の初期位置41まで手動で移動(復帰)するよう制御する処理の流れについて、図6のフローチャートを参照して説明する。まず、自動釣銭釣札機7の不具合が解消した場合(ステップS61 YES)、自動釣銭釣札機7は正常信号(例えば、エラーステータス値が0)をCPU21に出力し、CPU21はタッチパネル付表示部2上に「復帰」ボタンを表示させる(ステップS62)。次に、オペレータは、固定スキャナ部4を初期位置まで手動で移動させる(ステップS63)。
【0031】
次に、オペレータが「復帰」ボタンを押すと(ステップS64 YES)、タッチパネル付表示部2は、CPU21に復帰ボタンが押されたという情報を出力する。CPU21は、入力された情報に基づいて、自動釣銭釣札機7に問い合わせ信号を出力する。問い合わせ信号が入力された自動釣銭釣札機7は、正常信号(例えば、エラーステータス値:0)をCPU21に出力する。次に、自動釣銭釣札機7から入力された正常信号に基づいて、CPU21は、電磁ソレノイド32に電流を流し、板金33を下降させる(ステップS65)。
【0032】
[実施例2]
次に、固定スキャナ部4を手動で移動させるが、復帰時の板金33の上下動の開始時間をCPU21が制御するという実施例2について説明する。CPU21が固定スキャナ部4を初期位置41から退避位置42へ移動(退避)するよう制御する処理の流れについては、図5のステップS51からステップS55までの処理は実施例1(手動)と同じである。
【0033】
次に、固定スキャナ部4を半手動で初期位置41に復帰する処理の流れについて、図7のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS71からステップS73までの処理は、図6のステップS61からステップS63までの処理と同一である。次に、固定スキャナ部4が初期位置に存在することをフォトセンサ部22が感受すると(ステップS74 YES)、フォトセンサ部22は、CPU21に固定スキャナ部4が初期位置に存在することを示す情報を出力する。フォトセンサ部22から入力された当該情報に基づいて、CPU21は、自動釣銭釣札機7に問い合わせ信号を出力する。CPU21から入力された問い合わせ信号に基づいて、自動釣銭釣札機7は、正常信号(例えば、エラーステータス値が0)をCPU21に出力する。次に、自動釣銭釣札機7から入力された正常信号に基づいて、CPU21は電磁ソレノイドに電流を流し、板金33を下降させる(ステップS75)。次に、CPU21は、タッチパネル付表示部2上に表示された「復帰」ボタンを消去する(ステップS76)。
なお、本実施例では、固定スキャナ部4が退避位置、或いは、初期位置に存在することをフォトセンサ部22からの出力値に基づき、CPU21が判定しているがこれに限らず、フォトセンサ部22の代わりに接点スイッチを用いて、当該接点スイッチのON/OFFの信号に基づいて、CPU21が退避位置或いは初期位置に存在することを判定するようにしても良い。
【0034】
[実施例3]
次に、実施例3として、CPU21が機械的に固定スキャナ部4を移動するよう制御する時の、CPU21による制御方法について説明する。CPU21が固定スキャナ部4を初期位置41から退避位置42へ移動(退避)するよう制御する処理の流れについて、図5を用いて説明する。ステップS51からステップS54までの処理は実施例1(手動)と同じである。
【0035】
なお、前記固定スキャナ部4を機械的に移動させる構造(不図示)としては、下記に示すものでもよい。当該構造は、固定スキャナ部4の上面に上面より突出するアームと、当該のアーム先端に回動可能なピニオンギアと駆動モータとかなる駆動部と、スキャナ吊下台31の移動レール34に取付けられた前記ピニオンギアと噛合うラックギアとから構成されている。これによって、前記ラックギアと噛合う固定スキャナ部4に取り付けられたピニオンギアが駆動部の回動に伴い、固定スキャナ部4を退避位置42へ移動させたり、或いは固定スキャナ部4を初期位置41に移動させたりすることができる。
また、前記ラックギアとピニオンギアの構造に限らず、波状の平ベルトを駆動歯車へ巻回させ、固定スキャナ部4を退避位置42等へ移動させるようにしても良い。
また、前記固定スキャナ部4が退避位置42へ移動する最後端部には、接点スイッチが設けられており、この最後端部に設けられた接点スイッチが繋がる(ONする)ことにより、固定スキャナ部4が退避位置42に位置したことを示す信号を接点スイッチがCPU21へ出力し、CPU21がこの信号を受け取ると、前記駆動部へ固定スキャナ部4の移動を停止させるよう指令する指令信号を出力する。
ステップS55において、CPU21は、前記駆動部に固定スキャナ部4を移動させる指令信号を出力し、固定スキャナ部4を機械的に退避位置42へ移動させる(ステップS55)。固定スキャナ部4が退避位置42へ移動完了後、前記最後端部に設けられた接点スイッチは、退避位置に移動したという情報をCPU21に出力する。前記接点スイッチから入力された当該情報に基づき、CPU21は、タッチパネル付表示部2の「退避」ボタンを消去させる。
【0036】
次に、CPU21が固定スキャナ部4を退避位置42から初期位置41へ移動(復帰)するよう制御する処理の流れについて、図8のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS81からステップS82までの処理は、図6のステップS61からステップS62までの処理と同一である。次に、オペレータが「復帰」ボタンを押すと(ステップS83 YES)、タッチパネル付表示部2はCPU21に復帰ボタンが押されたという情報を出力する。CPU21は、入力された情報に基づいて、自動釣銭釣札機7へ問い合わせ信号を出力し、自動釣銭釣札機7から受け取った信号が、自動釣銭釣札機7の内部で硬貨や紙幣が詰まるなどの不具合が解消した旨の信号(例えば、正常信号、エラーステータス値が0)である場合は、前記駆動部に固定スキャナ部4を初期位置に移動させるよう指令する指令信号を出力し、固定スキャナ部4を初期位置に移動させる(ステップS84)。しかし、自動釣銭釣札機7の内部で硬貨や紙幣が詰まるなどの不具合が解消されていない(例えば、異常信号、エラーステータス値が1)の場合は、CPU21は、エラーが解消していない旨をタッチパネル付表示部2に出力する。この場合、前記固定スキャナ部4を初期位置に移動させない。
次に、固定スキャナ部4の初期位置への移動完了について説明する。前記フォトセンサ部22は固定スキャナ部4が初期位置に存在するという情報をCPU21に出力する。当該情報が入力されたCPU21は、固定スキャナ部4が初期位置に移動(移動完了)したという判定を行う。
なお、上記の判定の処理は、下記に示す処理であってもよい。前記固定スキャナ部4が初期位置41の最前端部には、接点スイッチが設けられていることとする。この最前端部に設けられた接点スイッチが繋がる(ONする)ことにより、固定スキャナ部4が初期位置41に位置したことを示す信号を接点スイッチがCPU21へ出力する。当該信号が入力されたCPU21は、固定スキャナ部4が初期位置41に移動したという判定を行う。
【0037】
次に、前記判定に基づいて、CPU21は電磁ソレノイド32に電流を流し、板金33を下降させる(ステップS85)。
【0038】
以上のように、板金33が下降することによって、オペレータが会計操作あるいはスキャン操作時等に固定スキャナ部4に触れてしまった時でも、固定スキャナ部4が不用意に後方に動かなくすることができる。
【0039】
本実施例では、電磁ソレノイド32により板金33が上下するものを示したが、これに限らず、伸縮や屈伸といった運動をするアクチュエータを用いて、固定スキャナ部4のストッパーとなるものを機械的機構、油空圧的機構またはばねの弾力などによって、上下させてもよい。
【0040】
また、本実施例では、電磁ソレノイド32により板金が上下するものを示したが、これに限らず、摩擦係数の高い素材からなるストッパー(例えば、ゴム板等)を固定スキャナ部4の両端より挟み込み移動しないように保持させ、移動させる時には、当該ストッパーを固定スキャナ部4より離間させる方式でもよい。また、本実施例では、自動釣銭釣札機7を例示したが、自動でなくてもよい。また、釣銭機で貨幣詰まり等の不具合が生じた場合に、オペレータの指示なしでスキャナ部の板金や摩擦係数の高い素材などのストッパーを解除するようにしてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 タワー型POSレジスタ
2 タッチパネル付表示部
3 入力部
4 固定スキャナ部
5 ウォンドスキャナ部
6 印字部
7 自動釣銭釣札機
7−1 硬貨出金口
7−2 硬貨入金口
7−3 紙幣入出金口
15 カウンタ台
21 CPU
22 フォトセンサ部
23 ROM
24 RAM
31 スキャナ吊下台
32 電磁ソレノイド
33 板金
34 移動レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣銭を払いだす釣銭機と、
前記釣銭機の略垂直上方に位置し、顧客が購入する商品に付されたコード情報を読み取るスキャナ部と、
前記スキャナ部をレジ操作可能な初期位置と前記釣銭機の上蓋を開ける際に障害にならない退避位置との間で移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とするタワー型POSレジスタ。
【請求項2】
前記釣銭機は、前記顧客に手渡す釣銭を払いだす釣銭機であって、エラー発生信号およびエラー解消信号を出力し、
前記釣銭機からエラー発生信号が出力された場合に前記スキャナ部が前記退避位置へ移動し、前記釣銭機からエラー解消信号が出力された場合に前記スキャナ部が前記初期位置へ復帰するよう、前記スキャナ部の移動を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のタワー型POSレジスタ。
【請求項3】
前記スキャナ部を前記退避位置への移動が可能な状態または前記初期位置からの移動を禁止する状態とする機構部を備え、
前記制御部は、前記釣銭機からエラー発生信号が出力された場合に前記機構部により前記スキャナ部を前記移動可能状態とし、前記釣銭機からエラー解消信号が出力された場合に前記機構部により前記スキャナ部を前記移動禁止状態とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタワー型POSレジスタ。
【請求項4】
前記釣銭機からエラー発生信号が出力された場合に退避ボタンを表示し、前記釣銭機からエラー解消信号が出力された場合に復帰ボタンを表示する表示手段を備え、
前記制御部は、前記退避ボタンが操作された場合に前記スキャナ部が前記退避位置へ移動し、前記復帰ボタンが操作された場合に前記スキャナ部が前記初期位置へ復帰するよう、前記スキャナ部の移動を制御することを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載のタワー型POSレジスタ。
【請求項5】
前記スキャナ部の側方にレシートを印字する印字部を備え、
前記印字部は、前記スキャナ部と共に移動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のタワー型POSレジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−158992(P2011−158992A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18359(P2010−18359)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【Fターム(参考)】