説明

タンカーの排気管用オイルミストセパレータ

【課題】 本発明は、ミスト状のベーパーから含有されるオイルミストを回収し、オイルミストを除去したベーパーを排気弁から噴き出させるタンカーの排気管用オイルミストセパレータを得ることを目的とする。
【解決手段】 タンカーの排気管用オイルミストセパレータであって、主風路内にじゃま板を設け、主風路の外周に、前記じゃま板の高さで上下に仕切られた円形風路を設けると共に、上下の円形風路内に、少なくとも180度位相をずらせた位置に縦仕切板を設け、上下の円形風路に沿って旋回流が得られるように主風路と下円形風路間、上下の円形風路間、上円形風路と主風路間に流通開口を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンカーの排気管用オイルミストセパレータに係わるものであり、特に、積荷タンク(以下単にタンクとする)内上部の気体が噴出する際、積荷の一部がミスト状のベーパーとなって噴き出すのを防止するオイルミストセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にタンカーにおいては、ローディング時または航海中の温度上昇や荒天によるタンクの動揺などによりタンク内圧力が上昇するので、タンク内圧が過圧になってタンクの構造上、強度上のトラブルが発生することがある。このトラブルを防止するため、所定圧以上になったら開く過圧排気弁(以下単に排気弁とする)を用いてタンク内上部の気体を開放するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、図4に示すように、先部に排気弁1を備え、タンク2内に開口する排気管3を上甲板4上に設け、タンク2内圧力が所定値を超えると排気弁1が開き、タンク2内上部の気体を排出するようになっている。このとき、タンク2内の圧力が高くなって排気弁1が開き、タンク2内上部の気体は高速で噴出するので、積荷の一部がミスト状のベーパーとなって噴き出すトラブルが生じている。なお、5は船体を示す。
【0004】
図5は、タンク2が満載時に、荒天で船体5が傾いたときの状態を示しているが、このとき、排気弁1を取り付けている排気管3内に積荷が入り込むと、タンク2の内圧は設定圧力以下であっても、排気管3内が部分的に設定圧力を超えて排気弁1が開くことがあり、このようなときに、積荷の噴き出しが多くなり、トラブルの発生が問題となる。
このように、積荷が噴き出すことは上甲板4上を汚すことになるし、火災を起こす危険性も生じる。また、オイルガスを吸うこともあり、安全、衛生管理上問題である。
【0005】
このような積荷の噴き出しを防止するため、図6に示すように排気管3と排気弁1との間に、じゃま板7を内蔵したバッファーボックス6を設け、噴き出す気体をじゃま板7に衝突させてから、排出することも考えられている。
しかし、この構成では積荷が噴き上げてくるのを抑える効果はあるが、ミスト状のベーパーはそのまま迂回して通過するので、排気弁1からミスト状の積荷がでるのを防止する効果は期待できない。
【0006】
図6に排気弁1の構成例を示している。ボディ11は下部開口によりバッファーボックス6に連通して取り付けられている。該ボディ11の上面には、放射状にアームを有する円環状のシート12が装着され、シート12のアームにはガイドロッド13が支持されている。バルブディスク14はガイドロッド13にガイドされて、上下動可能にシート12上に載置されている。したがって、タンク2内の圧が上がり、バルブディスク14を持上げる状態になると、シート12とバルブディスク14との間に隙間が生じ、該隙間からベーパーが高速で噴き出すことになる。
【0007】
なお、15は、バルブディスク14の抜け止めナットであり、ガイドロッド13にねじ止めされている。また、16はハンドルによってバルブディスク14を上下動させ、排気弁1を手動で開閉するための手段である。17はバルブカバー、18はバルブフード、19はガイドロッド13のキャップである。
【0008】
【特許文献1】特許第2959163号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ミスト状のベーパーから含有されるオイルミストを回収し、オイルミストを除去したベーパーを排気弁から噴き出させるタンカーの排気管用オイルミストセパレータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
タンカーの排気管用オイルミストセパレータであって、主風路内にじゃま板を設け、主風路の外周に、前記じゃま板の高さで上下に仕切られた円形風路を設けると共に、上下の円形風路内に、少なくとも180度位相をずらせた位置に縦仕切板を設け、上下の円形風路に沿って旋回流が得られるように主風路と下円形風路間、上下の円形風路間、上円形風路と主風路間に流通開口を設けた。また、上下の円形風路の断面積を主風路の断面積と比べて同等以下としたこと、下円形風路の底板を主風路に向かって下がるように傾斜させ、上円形風路の底板の外周側にドレンホールを設けたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
排気管より高速で流入するオイルミストを、主風路内から下円形風路、上円形風路に通して旋回させ、上部に抜けさせるようにしたので、オイルミストはサイクロン現象を受け、ベーパー中で比重の大きいオイルミストは遠心力により上下の円形風路の外周壁内面に捕集されることになり、オイルミストを除去されたベーパーが排気弁より外気に噴出することになる。
また、捕集されたオイル分は上円形風路のドレンホール、下円形風路の傾斜底板を伝って排気管から積荷タンクに戻ることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図示した本発明の最良の形態について説明する。図1は本発明によるオイルミストセパレータの断面図であり、図2は図1のA−A線に沿った平面図、図3は図1のB−B線に沿った平面図である。
図において、21は排気管3上部に取り付けられたオイルミストセパレータであり、該オイルミストセパレータ21の上に排気弁1が取り付けられている。
【0013】
オイルミストセパレータ21は、上下に取付けフランジ部を有し、中央部でじゃま板23により区切られ、排気管3と同内径の主風路22と、主風路22の外面に固定され、じゃま板23と同じ高さ位置で上下に区切られた上下の円形風路24、25とで構成されている。主風路22には、下円形風路24と連通する連通開口26および上円形風路25と連通する連通開口27とが設けられている。この例において、連通開口26と27は上下で180度の位相をずらせた位置に設けられている。
【0014】
また、下円形風路24と上円形風路25との区切り板には連通開口28が設けられており、上下の円形風路24と25を連通している。
さらに、下円形風路24の風路内を仕切る縦仕切板29と、上円形風路25の風路内を仕切る縦仕切板30とが設けられている。この例において縦仕切板29と30は上下で連通開口28を挟むようにして270度の位相をずらせた位置に設けられている。したがって、図2に示すごとく、連通開口26から下円形風路24に入ったベーパーが3/4周して連通開口28に達するようなり、また、図3に示すごとく、連通開口28から上円形風路25に入ったベーパーが3/4周して連通開口27に達するようになる。
【0015】
上円形風路25の底板には、捕集オイルミストを下円形風路24にまとめるため外周よりの位置にドレンホール31が設けられており、下円形風路24の底板は、捕集オイルミストを連通開口26より主風路22に流れ込ませるため主風路22に向かって下がる傾斜を付けている。
また、上下の円形風路24、25の断面積および主風路22の断面積は、流れの速度を落とさないようにするため、排気管3の断面積より同等かまたはそれ以下としている。
【0016】
本発明は上述のごとき構成としたものである。したがって、タンク2内あるいは排気管3内の内圧が設定圧力(例えば、1400mmAq)を超えると、排気弁1のバルブディスク14の下面にかかる圧力が、バルブディスク14の重量に打ち勝って、バルブディスク14が持上げられて、シート12との間に隙間を生じ、この隙間よりベーパーを噴き出すことになるが、このとき、オイルミストセパレータ21に入るベーパーは主風路22から下円形風路24、上円形風路25を通って風路内を1.5周旋回して排気弁1に出て行くことになる。
【0017】
また、ベーパーは排気管3から高速(例えば、30〜60m/sec)で噴き上げてくるが、積荷のオイルを噴き上げてくる場合は、じゃま板23がオイルの噴き上げを防止する。上下の円形風路24、25に入ったベーパーは高速で1.5周旋回して排気弁1に出て行くが、サイクロン作用によりベーパー中のオイルミスト(例えば、径100μ程度の粒子)は遠心力を受け、上下の円形風路24、25の外壁内面に捕集され、オイルミストが除去されたベーパーがオイルミストセパレータ21から出て行くことになる。
上下の円形風路24、25の外壁内面に捕捉されたオイルミストは壁面を伝って滴下し、ドレンホール31、下円形風路24の底板を伝って排気管3からタンク2内に戻る。
【0018】
なお、上記の説明において、オイルミストセパレータ21を排気弁1と排気管3の間に取り付けるように説明したが、上甲板4にオイルミストセパレータ21を設置し、オイルミストセパレータ21の上に排気管3と排気弁1を取り付けるようにしてもよい。
また、上記の例ではオイルミストセパレータ21内をベーパーが1.5周旋回するようにしているが、上下の円形風路24、25を合わせて少なくとも1.0周以上旋回する構成とすることも可能であり、相当の効果が得られることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるオイルミストセパレータの断面図。
【図2】図1のA−A線に沿った平面図。
【図3】図1のB−B線に沿った平面図。
【図4】排気弁と排気管の全体概略を示す図。
【図5】船体が傾いたときのベーパーの噴き出し状態を示す図。
【図6】排気弁とバッファーボックスの断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 排気弁 2 タンク
3 排気管 4 上甲板
5 船体 6 バッファーボックス
7 じゃま板
11 ボディ 12 シート
13 ガイドロッド 14 バルブディスク
15 ナット 16 手動開閉手段
17 バルブカバー 18 バルブフード
19 キャップ
21 オイルミストセパレータ 22 主風路
23 じゃま板 24 下円形風路
25 上円形風路 26 連通開口
27 連通開口 28 連通開口
29 縦仕切板 30 縦仕切板
31 ドレンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主風路内にじゃま板を設け、主風路の外周に、前記じゃま板の高さで上下に仕切られた円形風路を設けると共に、上下の円形風路内に、少なくとも180度位相をずらせた位置に縦仕切板を設け、上下の円形風路に沿って旋回流が得られるように主風路と下円形風路間、上下の円形風路間、上円形風路と主風路間に流通開口を設けたことを特徴とするタンカーの排気管用オイルミストセパレータ。
【請求項2】
上下の円形風路に設ける縦仕切板を270度位相をずらせて配置したことを特徴とする請求項1記載のタンカーの排気管用オイルミストセパレータ。
【請求項3】
下円形風路の底板を主風路に向かって下がるように傾斜させ、上円形風路の底板の外周側にドレンホールを設けたことを特徴とする請求項1、請求項2記載のタンカーの排気管用オイルミストセパレータ。
【請求項4】
上下の円形風路の断面積を排気管の断面積と比較して同等以下としたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3記載のタンカーの排気管用オイルミストセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−314022(P2007−314022A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145290(P2006−145290)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(503218067)住友重機械マリンエンジニアリング株式会社 (55)