説明

タンパク質の産生方法

【課題】細菌宿主細胞において封入体としてポリペプチドを産生する方法の提供。
【解決手段】E.coliチオレドキシンまたは改変E.coliチオレドキシンのような封入パートナータンパク質の遺伝的配列に作動可能に連結された、ポリペプチドをコードする遺伝的配列を含む遺伝子構築物を形成することにより、遺伝子構築物を含む宿主細胞は細胞内封入体としてポリペプチドを産生する。該方法は、組換えタンパク質の迅速な単離および精製を容易にし、小さくそして代表的には発現させることが困難なポリペプチドまたはタンパク質、またE.coliのような宿主細胞に毒性のタンパク質の産生に有用であり得る。該方法はタンパク質分子量ラダーを産生し、タンパク質ゲル電気泳動で使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学およびタンパク質工学の分野にある。本発明は、組換えタンパク質の産生のための方法に関する。より詳細には、本発明は、細菌、特にEscherichia coliにおいて封入体として組換えタンパク質を産生するための方法に関する。本発明はまた、組換えタンパク質の産生のために本発明で使用されるプラスミド、ベクター、および宿主細胞、ならびにこれらの方法によって産生されるタンパク質の精製方法を提供する。本発明はまた、これらの方法によって産生されるタンパク質に関する。本発明はまた、タンパク質分子量マーカーラダーの産生のための方法、およびこれらの方法によって産生されるラダーに関する。
【背景技術】
【0002】
組換えDNA技術の出現によって、市販および基礎研究目的のために、形質転換された宿主細胞のような異種発現系において大量のタンパク質を産生することが、ほぼ日常的になっている。発現宿主系の中で、E. coliは操作され易いため、最も一般的な系である。しかし、宿主細胞における異種タンパク質の発現は、いくつかの制限を有する。これらには、以下が挙げられる:稀にしか使用されないコドンの存在によるmRNAの非効率的な翻訳(Kane, J. Current Opin. Biotech 6:494-500 (1995))、E. coli中でのmRNAの不安定性(Bachmair, A.ら, Science 234:179-186 (1986);Olins, P.およびLee, S., Current Opin. Biotech 6:501-506 (1993))、発現されているタンパク質の毒性効果(Brosius, J., Gene 27:161-172 (1984);Studier, W.およびMofatt, B., J. Mol Biol. 189:113-130 (1986))、およびタンパク質の不適切な折り畳みのための封入体の形成(Schein, C., Bio/Technology 7:1141-1149 (1989);Mitraki, A.およびKing, J., Bio/Technology 7:690-697 (1989))。これらの問題を解決するために、種々の技術が開発されている。
【0003】
遺伝子融合は、目的のタンパク質を発現させるための最も一般的なストラテジーの1つである。この特定の技術は、目的のタンパク質を融合パートナーのカルボキシ末端に融合することによって大量の異種タンパク質を産生するために使用される(LaVallie, E.およびMcCoy, J., Curr. Opin. Biotech 6:501-506)。このアプローチの例として、プロテインAをコードするDNA配列に作動可能に連結される所望のタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA配列を含む組換えベクターを構築することにより、所望のタンパク質またはポリペプチドの選択的単離のための方法が、開発された(WO 84/03103)。次いで、発現された融合タンパク質は、プロテインAを結合するIgG支持キャリア上への吸着、次いで融合タンパク質の脱着によって選択的に単離される。次いで、融合タンパク質は、プロテアーゼ、ヒドロキシルアミン、臭化シアン、またはギ酸を含み得る切断剤を用いて、独特の切断部位で切断されて、精製されたタンパク質を得る。
【0004】
組換えポリペプチドの製造に使用されるほとんどの系は、発現する宿主細胞における封入体中のポリペプチドの産生を最小にするように試みる。これらの試みの1つの重要な理由は、封入体中でのポリペプチドの産生では、しばしば、標準的溶解技術による封入体からのその放出の際に、生化学的に不活性な、変性した、または他の機能的もしくは構造的に損なわれたポリペプチドが生じることである。種々の方法は、封入体形成を最小にするいくらかの見込みを示しているが、遺伝子融合技術は、特の場合では、他に封入体として産生されている可溶性タンパク質を産生するために利用されている。
【0005】
しかし、宿主細胞内の封入体の形成はまた、有利であり得る。例えば、封入体は、所望のポリペプチドの非常に密集したおよび濃縮された「パケット(packet)」を構成し、そこから、夾雑宿主細胞タンパク質が、遠心分離と同じくらい簡単な方法によって除去され得る。その単離後、封入体の可溶性形態への制御された変換は、純粋な、生物学的に活性な、または構造的にインタクトな形態で、所望のポリペプチドの豊富なソースを提供し得る。しかし、このようなアプローチに伴う困難は、組換えポリペプチドが宿主細胞で発現される場合に封入体を形成するか否かを予測することが、通常ほぼ不可能であることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、封入体の制御された形態が、所望のポリペプチドを産生するために使用される系を提供する。封入体のこの制御された形態によって、所望のポリペプチドの精製は、より速くそしてより完全になり、そして封入体のその後の制御された可溶化は、その活性形態での純粋なポリペプチドの高収率を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な要旨
本発明は、第1のポリペプチドをコードする遺伝的配列が、チオレドキシンまたは改変されたチオレドキシンのような封入パートナータンパク質をコードする遺伝的配列に、作動可能に連結または融合され、発現時に宿主細胞中で封入体を形成し得る系を提供する。詳細には、本発明は、封入体の形態でポリペプチドを産生するための方法を提供し、この方法は、(a)封入パートナータンパク質をコードする第2の核酸分子に作動可能に連結される組換えポリペプチドをコードする第1の核酸分子を含む宿主細胞を得る工程であって、それによって遺伝子融合構築物を形成する、工程;および(b)宿主細胞中での封入体としてのポリペプチドの産生に好都合な条件下で、上記の宿主細胞を培養する工程、を包含する。本発明はまた、(c)宿主細胞から封入体を単離する工程;および(d)封入体からポリペプチドを放出する工程、をさらに包含する上記方法を提供する。本発明によれば、ポリペプチドをコードする第1の核酸分子は、原核生物細胞、詳細には細菌細胞、および最も詳細にはEscherichia coli細胞から、または真核生物細胞、詳細には動物細胞、植物細胞、もしくは酵母細胞、より詳細には哺乳動物細胞、および最も詳細にはヒト細胞から得られ得、そして封入パートナータンパク質をコードする第2の核酸分子は、細菌細胞、最も好ましくはEscherichia coli細胞から得られ得る。封入パートナータンパク質は、宿主細胞での発現の際に封入体を形成する任意のタンパク質であり得、そして好ましくは細菌タンパク質、より好ましくは細菌チオレドキシンまたは改変された細菌チオレドキシン、および最も好ましくはカルボキシ末端短縮型形態のE. coliチオレドキシンである。好ましくは、遺伝子融合構築物は、宿主細胞に導入される前にベクターに挿入される。本発明の1つの局面によれば、目的のポリペプチドは、遺伝子融合構築物によって形成される封入体から、臭化シアンのような化学薬品で、またはより好ましくはトロンビンもしくはエンテロキナーゼのような酵素での切断によって放出され得る。他の局面によれば、タンパク質特異的切断部位をコードする核酸配列は、遺伝子融合構築物中の封入パートナータンパク質と組換えポリペプチドとをコードする核酸配列の間に配置され得;宿主細胞において封入体としての融合タンパク質の発現時に、次いで、組換えポリペプチドは、タンパク質特異的切断部位で特異的に認識しそしてそこで切断する酵素または他の化学薬品で封入体を処理することによって、そこから放出され得る。本発明はまた、遺伝子融合構築物がプラスミドpTrcprl-モノマーを含む上記の方法を提供し、そしてプラスミドpTrcprl-モノマーを提供する。本発明はまた、宿主細胞が、細菌細胞、最も好ましくはEscherichia coli細胞であり、そして使用されるベクターが、発現ベクター、最も好ましくはプラスミドpTrc99AまたはpTrxfusである、上記の方法に関する。本発明はまた、これらのベクター、ならびにこれらのベクターを含む宿主細胞、詳細には細菌細胞、および最も詳細にはEscherichia coli細胞を提供する。本発明は、最も詳細には、バクテリオファージT4の遺伝子32タンパク質のフラグメント、KpnIメチラーゼのフラグメント、およびDead-Boxタンパク質のフラグメントの産生のための方法に関するが、任意の組換えポリペプチドが、本発明の方法によって産生され得る。本発明はまた、上記の方法によって産生される組換えポリペプチドを提供する。したがって、本発明の系は、宿主細胞において封入体として任意の異種タンパク質を産生するための信頼できる方法を提供し、それによって細菌宿主細胞中で産生される組換えタンパク質の迅速な単離および精製を容易にする。さらに、本発明によって提供される方法を用いて、小さいかまたは発現することが困難であるポリペプチド、ならびに宿主細胞(例えば、E. coli)に毒性であるポリペプチドを産生し得る。
【0008】
本発明はまた、タンパク質分子量マーカーラダーを産生するための方法を提供し、この方法は、(a)1つ以上の核酸分子を得る工程であって、核酸分子のそれぞれが、分子量ラダーの異なる分子量の1つ以上のポリペプチドをコードする、工程;(b)1つ以上の核酸分子で1つ以上の宿主細胞を形質転換する工程;(c)分子量ラダーのポリペプチドのそれぞれの産生に好都合な条件下で、宿主細胞を培養する工程;および(d)ポリペプチドのそれぞれを単離する工程、を包含する。本発明は、特に、少なくとも1つの核酸分子が、分子量ラダーの異なる分子量の複数のポリペプチドをコードし、そして核酸分子それぞれが、分子量ラダーの異なるポリペプチドをコードする、このような方法に関する。本発明はまた、宿主細胞が、分子量ラダーの複数のポリペプチドをコードする核酸分子を含み、そして宿主細胞のそれぞれが、分子量ラダーの異なるポリペプチドをそれぞれコードする異なる核酸分子を含む、このような方法に関する。本発明はまた、宿主細胞が、分子量ラダーの異なるポリペプチドをそれぞれコードする核酸分子の2つ以上を含み、そしてこのような方法が、異なるポリペプチドのそれぞれを混合して分子量ラダーを形成する工程をさらに包含する、このような方法を提供する。本発明は、特に、分子量ラダーのポリペプチドが、封入体として産生され、そしてポリペプチドをコードする核酸分子が、宿主細胞を形質転換する前に、ベクターに、最も好ましくは発現ベクターに挿入される、このような方法に関する。本発明の方法によって産生されるタンパク質分子量ラダーは、好ましくは予備染色され、そして本発明は、これらの分子量ラダーを産生するためのタンパク質の予備染色のための最適条件を提供する。本発明はまた、これらの方法によって産生される、好ましくは予備染色される、タンパク質分子量マーカーラダーを提供する。
【0009】
本発明はまた、一般的に、染色されたタンパク質およびより詳細には予備染色されたタンパク質ラダーを産生するための方法に関する。本発明のこのような方法は、タンパク質分子に染料を、完全にまたは実質的に完全に、標識するかまたは複合体化するために十分な条件下で、目的の1つ以上のタンパク質またはポリペプチドを、1つ以上の染料と接触させる工程を包含する。好ましくは、本発明の染色方法は、例えば、ゲル電気泳動によるサイズ分離の前に、タンパク質またはタンパク質試料で行われる。したがって、本発明のタンパク質またはポリペプチド染色方法の使用は、試料中のすべてまたは実質的にすべてのタンパク質またはポリペプチドが、目的の染料で染色または複合体化されている均質またはほぼ均質の試料を提供する。このような均一染色は、少なくとも一部は、より多くの染料がタンパク質またはポリペプチドと複合体化されていること(例えば、目的のタンパク質の増加した染色)によって、染色したタンパク質の実験の際に、増加した着色強度を提供する。さらに、染色の均一性および/または完全性のため、染色されたタンパク質の特徴は、その後の分析と、より一致するようである。したがって、本発明の染色されたタンパク質またはポリペプチドでのサイズ分析を行う場合、タンパク質またはポリペプチドは、同じまたは実質的に同じサイズである。本発明の染色されたタンパク質またはポリペプチドのこのような特徴は、未知タンパク質またはポリペプチドのより正確なサイズ決定を可能にする優れたタンパク質分子量マーカーを提供する。
【0010】
したがって、本発明は、以下の工程を包含する1つ以上のポリペプチドまたはタンパク質を染色する方法に関する:
(a)1つ以上のポリペプチドまたはタンパク質を含む試料を、1つ以上の染料と混合または接触させる工程;および
(b)同じまたは実質的に同じサイズを有する染色されたタンパク質またはポリペプチドを産生するために十分な条件下で、混合物をインキュベートする工程。このような方法は、染色されたタンパク質をサイズによって分離する工程をさらに包含し得る。サイズ分離は、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、ゲル濾過クロマトグラフィーなどを含む、任意の公知の技術によって達成され得る。
【0011】
本発明はまた、以下の工程を包含する1つ以上のポリペプチドまたはタンパク質を染色するための方法に関する:
(a)1つ以上のポリペプチドまたはタンパク質を含む試料を、1つ以上の染料と混合または接触させる工程;および
(b)染色されたタンパク質またはポリペプチドを産生するために十分な条件下で、混合物をインキュベートする工程であって、ここで実質的にすべてのタンパク質またはポリペプチドが染料と複合体化される、工程。このような方法は、染色されたタンパク質を上記のような標準的技術を使用してサイズによって分離する工程を、さらに包含し得る。
【0012】
任意の条件は、本発明によって所望の結果を生じるために利用され得る。特に、タンパク質濃度、染料濃度、pH、イオン状態、温度、および曝露の期間、またはこれらのパラメータの組み合わせは、本発明の染色されたタンパク質または予備染色された分子量マーカーを産生するために変更され得る。本発明によれば、タンパク質および染料が添加される溶液のpHは、約7〜12で変更され得、インキュベーション温度は、約20℃〜80℃(より好ましくは約37℃〜70℃、およびなおより好ましくは約50℃〜70℃)の間で変更され得、そしてインキュベーション期間は、約1〜200時間(好ましくは約2〜200時間、約2〜100時間、約6〜100時間、約6〜72時間、約6〜48時間、より好ましくは約12〜48時間、およびなおより好ましくは約12〜24時間)で変更され得る。
【0013】
任意の1つまたは多くのタンパク質またはペプチドは、本発明によって染色され得る。このような染色方法は、同時にまたは別々に異なるタンパク質(異なるサイズおよび/またはタイプ)で達成され得る。所望であれば、別々に染色されたタンパク質は、例えば、本発明のタンパク質分子量ラダーを産生するために異なるサイズを有する染色されたタンパク質の混合物を提供するために、染色後に混合され得る。好ましくは、本発明の分子量ラダーは、少なくとも2つおよび好ましくは少なくとも3つの異なるサイズのタンパク質を含む。より好ましくは、本発明のラダーは、3〜20、なおより好ましくは3〜15、およびなおより好ましくは3〜10の異なるサイズのタンパク質を含む。
【0014】
本発明はまた、以下の工程を包含する、未知のサイズまたは分子量の1つ以上のタンパク質またはポリペプチドをサイズ決定するための方法に関する:
(a)本発明のタンパク質分子量ラダー、および未知のサイズの1つ以上のタンパク質またはポリペプチドを、サイズによって分離する工程;および
(b)タンパク質またはポリペプチドのサイズおよび/または分子量を決定する工程。このような決定は、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動などのような標準的技術による未知のタンパク質またはポリペプチドの移動度の、本発明の分子量ラダーの移動度との比較によって行われ得る。
【0015】
本発明はまた、本発明の方法によって産生される染色されたポリペプチドおよび染色された分子量マーカーを提供し、そしてそれらを含むキットを提供する。このようなキットは、箱、カートンなどのようなキャリア手段を含み、チューブ、バイアル、アンプル、ビンなどのような1つ以上の容器手段が密着して閉じ込められるように仕切られており、ここで第1の容器手段は、本発明の1つ以上の染色されたポリペプチド、または本発明の1つ以上の染色された分子量マーカーラダーを含む。本発明の1つのこのような局面では、多くの個々の容器は、キットで提供され得、各容器は、異なるサイズ(および/またはタイプ)の染色されたポリペプチドを含み、そのため、末端ユーザーは、異なるサイズのタンパク質の異なる組み合わせを有する種々の分子量マーカーを選択的に調製し得る。したがって、本発明は、末端ユーザーに、必要に応じて適切なマーカーラダーを作製することに柔軟性を提供する。さらに、本発明のキットはまた、別々に染色されたポリペプチド(例えば、異なる染料で染色された)を含む別々の容器を提供し得、そのため、分子量ラダーのサイズまたはパターンの変更だけでなく、このラダーにおける個々のペプチドまたはバンドに帰する色彩の変更においても柔軟性を、末端ユーザーに提供する。本発明のキットは、アクリルアミド、SDS、ゲル、またはキャピラリー電気泳動試薬および/または装置などのような、タンパク質のサイズ分析を容易にする成分を含む、1つ以上のさらなる容器手段をさらに含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の他の好ましい実施態様は、本発明の以下の図面および説明、ならびに請求の範囲を考慮して、当業者に明らかである。
【0017】
図面の簡単な説明
本特許の出願は、カラーで作製された少なくとも1枚の図面を含む。カラー図面を有する本特許のコピーは、請求書および必要な手数料の支払いによって、米国特許商標庁によって提供される。各図面の簡単な説明については後述する。
【0018】
発明の詳細な説明
定義
以下に続く説明では、分子生物学およびタンパク質工学の分野で従来使用されている多くの用語が、広く利用される。明細書および請求の範囲、ならびにこのような用語で与えられるべき範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0019】
用語「ポリペプチド」は、任意の長さの連続したアミノ酸の配列を意味するために、本明細書で使用される。本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」または「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」と交換可能に使用され得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「核酸分子」とは、全長ポリペプチドまたはその任意の長さのフラグメントをコードし得るか、あるいは非コードであり得る連続したヌクレオチドの配列をいう。
【0021】
用語「封入パートナータンパク質」は、宿主細胞における発現の際に封入体を形成する任意のタンパク質、またはそのフラグメント、部分、誘導体、もしくは改変体を意味するために本明細書中で使用される;封入パートナータンパク質をコードする核酸分子は、目的のポリペプチドを宿主細胞中での封入体の形態で同時発現させるために、目的のポリペプチドをコードする核酸分子に融合され得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子融合構築物」とは、目的のポリペプチドをコードする核酸分子の、封入パートナータンパク質をコードする核酸分子への、作動可能な連結または融合の産物である核酸分子を意味する。本明細書で定義される場合、遺伝子融合構築物は、宿主細胞によって認識され、そして目的のポリペプチドを産生するように遺伝子融合構築物の発現を指示する、発現シグナル(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)を含む、追加の核酸配列を含み得る。
【0023】
成句「実質的にすべてのポリペプチドが染料と複合体化される」または「実質的にすべてのポリペプチドが染料で染色される」または「実質的にすべてのポリペプチドが染料で標識される」は、交換可能に使用され得、そして本明細書で使用される場合、試料中の実質的にすべてのポリペプチドまたはタンパク質が、1つ以上の染料で、完全にまたは実質的に完全に複合体化されるか、染色されるか、または標識されていることを意味する。このような染色の完了は、任意の数の分析技術によって決定され得るが、ゲル電気泳動による移動度および染色強度の分析が好ましい(以下の実施例を参照のこと)。例えば、タンパク質試料の不完全または部分染色は、タンパク質の不均質集団を生じ、そのそれぞれは、ゲル電気泳動中に異なる移動度を有し得る。しかし、完全な染色または実質的に完全な染色において、移動度は、さらなる染色(すなわち、染料とのさらなるインキュベーション)においてでさえも実質的に未変化のままである。したがって、完全または実質的に完全な染色は、このような移動度変化、またはそれがないこともしくは実質的にないことによって測定され得る。代わりにまたはこのような移動度変化の他に、染色の完了は、染色の強度の変化によって決定され得る。したがって、本発明による完全または実質的に完全な染色において、例えば、ゲル電気泳動によって決定された目的のタンパク質試料の染色強度は、さらなる染色(すなわち、染料とのさらなるインキュベーション)において実質的に変化しない。
【0024】
概略
本発明は、宿主細胞から組換えポリペプチドを産生および単離するための方法を提供し、ここで、組換えポリペプチドは、宿主細胞において封入体として産生される。詳細には、この方法は、(a)封入パートナータンパク質をコードする第2の核酸分子に作動可能に連結される組換えポリペプチドをコードする第1の核酸分子を含む宿主細胞を得る工程であって、それによって遺伝子融合構築物を形成する、工程;および(b)宿主細胞中での封入体としてのポリペプチドの産生に好都合な条件下で、上記の宿主細胞を培養する工程、を包含する。本発明はまた、(c)最も好ましくは遠心分離によって、宿主細胞から封入体を単離する工程;および(d)封入体からポリペプチドを放出させる工程、をさらに包含する上記の方法を提供する。本発明によれば、ポリペプチドをコードする第1の核酸分子は、原核生物細胞、特定には細菌細胞、および最も特定にはEscherichia coli細胞から、あるいは真核生物細胞、特定には動物細胞、植物細胞、または酵母細胞、より特定には哺乳動物細胞、および最も特定にはヒト細胞から得られ得、そして封入パートナータンパク質をコードする第2の核酸分子は、任意の細胞、好ましくは細菌細胞、および最も好ましくはEscherichia coli細胞から得られ得る。本発明で使用される封入パートナータンパク質は、宿主細胞での発現の際に封入体を形成する任意のタンパク質であり得、そして好ましくは細菌タンパク質、より好ましくは細菌チオレドキシンまたは改変された細菌チオレドキシン、および最も好ましくは以下でより詳細に記載するようなカルボキシ末端短縮型のE. coliチオレドキシンである。好ましくは、遺伝子融合構築物は、宿主細胞に導入される前にベクターに挿入される。本発明の1つの局面によれば、目的のポリペプチドは、遺伝子融合構築物によって形成される封入体から、臭化シアンのような化学薬品で、またはより好ましくはトロンビンもしくはエンテロキナーゼのような酵素での切断によって放出され得る。別の局面によれば、タンパク質特異的切断部位をコードする核酸配列は、遺伝子融合構築物中の封入パートナータンパク質と組換えポリペプチドとをコードする核酸配列の間に配置され得;宿主細胞における封入体としての融合タンパク質の発現時に、組換えポリペプチドは、次いで、タンパク質特異的切断部位を特異的に認識しそしてそこで切断する酵素または他の化学薬品で封入体を処理することによって、そこから放出され得る。本発明はまた、遺伝子融合構築物がプラスミドpTrcprl-モノマーを含む上記の方法を提供し、そしてプラスミドpTrcprl-モノマーを提供する。本発明はまた、宿主細胞が、細菌細胞、最も好ましくはEscherichia coli細胞であり、そして使用されるベクターが、発現ベクター、最も好ましくはプラスミドpTrc99AまたはpTrxfusである、上記の方法に関する。本発明はまた、これらのベクター、ならびにこれらのベクターを含む宿主細胞、特定には細菌細胞、および最も特定にはEscherichia coli細胞を提供する。本発明は、さらに、上記の方法によって作製される組換えポリペプチド、プラスミドpTrcprl-モノマー、およびプラスミドpTrxA-concatを提供する。
【0025】
別の好ましい実施態様では、本発明は、好ましくは予備染色されるタンパク質分子量ラダーを作製するための方法、およびこれらの方法によって産生されるタンパク質分子量ラダーを提供する。
【0026】
本発明は、最も特定には、バクテリオファージT4の遺伝子32タンパク質、KpnIメチラーゼ、またはDead-Boxタンパク質のフラグメントの産生のための方法に関するが、本発明の方法を使用して、任意の長さの連続したアミノ酸の配列を含む任意のポリペプチドが、宿主細胞中で封入体として産生され、そしてそれから単離され得ることは、当業者に容易に理解される。
【0027】
遺伝子融合
本発明の方法は、封入パートナータンパク質をコードする第2の核酸分子に作動可能に連結された、第1のポリペプチドをコードする核酸分子を含む遺伝子融合構築物を産生するために、遺伝子融合技術を利用する。第1のポリペプチドをコードする核酸分子は、細菌細胞、特定にはE. coli細胞から;動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、および最も好ましくはヒト細胞から;植物細胞から;または酵母細胞から得られ得る。以下でより詳細に記載されるように、封入パートナータンパク質をコードする核酸分子は、任意の細胞から、好ましくは細菌細胞から、および最も好ましくはEscherichia coli細胞から得られ得る。
【0028】
原核生物DNA配列に融合された、所望されるポリペプチドをコードするDNA配列を含む遺伝子融合構築物の構築のための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook, J.ら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 17.2-17.9頁 (1989);Ausubel, F.M.ら編, Current Protocols in Molecular Biology, New York: John Wiley & Sons, Inc., 16.4.1-16.8.14頁 (1994)を参照のこと)。当業者に日常的である他の適切な方法はまた、本発明の方法で等しく使用され得る。
【0029】
ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明の単離されたDNA分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作された宿主、ならびにこれらのベクターおよび宿主細胞を使用する組換えポリペプチドの産生のための方法に関する。
【0030】
本発明で使用されるベクターは、例えば、ファージまたはプラスミドであり得、そして好ましくはプラスミドである。目的のポリペプチドをコードする核酸へのシス作用制御領域を含むベクターが好ましい。適切なトランス作用因子は、宿主によって供給され得るか、相補的ベクターによって供給され得るか、または宿主への導入においてベクター自体によって供給され得る。
【0031】
これに関してある好ましい実施態様では、特異的発現についてのベクターが提供され、これは誘導性および/または細胞タイプ特異的であり得る。このようなベクターの中で、温度および栄養添加物のような、操作することが容易な環境因子による誘導性のベクターが、特に好ましい。
【0032】
本発明に有用な発現ベクターとしては、染色体由来ベクター、エピソーム由来ベクター、およびウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミドまたはバクテリオファージに由来するベクター、ならびにコスミドおよびファージミドのようなそれらの組み合わせに由来するベクターが挙げられる。
【0033】
DNAインサートは、ファージラムダPLプロモーター、E. coli lac、trp、およびtacプロモーターのような、適切なプロモーターに作動可能に連結されるべきである。他の適切なプロモーターは、当業者に公知である。遺伝子融合構築物は、さらに、転写開始、終結のための部位、および転写された領域中に翻訳のためのリボソーム結合部位を含む。構築物によって発現される成熟転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリヌクレオチドの最初に翻訳開始コドン、および最後に適切に配置される終止コドン(UAA、UGA、またはUAG)を含む。
【0034】
発現ベクターは、好ましくは、少なくとも1つの選択可能マーカーを含む。このようなマーカーとしては、E. coliおよび他の細菌中で培養するためのテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0035】
本発明での使用に好ましいベクターの中には、Qiagenから入手可能な、pQE70、pQE60、およびpQE-9;Stratageneから入手可能な、pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;Invitrogenから入手可能なpcDNA3;およびPharmaciaから入手可能な、pGEX、pTrxfus、pTrc99a、pET-5、pET-9、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5が含まれる。他の適切なベクターは、当業者に容易に理解される。
【0036】
適切な宿主細胞の代表的な例としては、E. coli、Streptomyces spp.、Erwinia spp.、Klebsiella spp.、およびSalmonella typhimuriumのような細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞としてE. coliが好ましく、そしてE. coli株DH10BおよびStbl2が特に好ましく、これらは市販されている(Life Technologies, Inc.; Rockville, Maryland)。
【0037】
封入パートナー
封入パートナータンパク質をコードする改変型の遺伝子の使用により、細胞内封入体として、目的のポリペプチドを含む融合タンパク質を産生するように、宿主細胞が誘導されることが、本発明で思いがけずに発見された。本明細書で使用される場合、用語「改変型の遺伝子」とは、遺伝子の正常または最も普通に見いだされる配列の変更を含む遺伝子の型を意味し、これにより、融合または非融合状態で、宿主細胞における封入体中に、コードされたタンパク質が発現される。このような変更としては、欠失、置換、挿入、点変異などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明での使用に好ましい封入パートナータンパク質としては、E. coliマルトース結合タンパク質(BettonおよびHofnug, J. Biol. Chem. 271:8046-8052 (1996))、E. coli RNAse II(CoburnおよびMackie, J. Biol. Chem. 271:1048-1053 (1996))、E. coliアルカリホスファターゼ(DermanおよびBeckwith, J. Bacteriol. 177:3764-3770 (1995);Georgiouら, Appl. Env. Microbiol. 52:1157-1161 (1986))、E. coliホスホリパーゼA(Dekkerら, Eur.J. Bichem. 232:214-219 (1995))、E. coli β-ラクタマーゼ(RinasおよびBailey, Appl. Env. Microbiol. 59:561-566 (1993);Georgiouら, Appl. Env. Microbiol 52:1157-1161 (1986))、Salmonella typhimurium MalKタンパク質(Schneiderら, Prot. Exp. Purif. 6:10-14 (1995))、Clostridium thermocellumエンドグルカナーゼD(Tokatlidisら, FEBS Lett. 282:205-208 (1991))、Bacillus thuringiensis subsp. aizawai IPL7殺虫タンパク質(Oedaら, J. Bacteriol. 171:3568-3571 (1989))、ヒトプロカテプシンB(Kuheljら, Eur. J. Biochem. 229:533-539 (1995))、ブタインターフェロン-γ(Vandenbroeckら, Eur. J. Biochem. 215:481-486 (1993))、T5 DNAポリメラーゼ(Chatterjeeら, Gene 97:13-19 (1991))、およびE. coliチオレドキシン(Hoogら, BioSci. Rep. 4:917-923 (1984))の改変型が挙げられるが、これらに限定されない。改変されたE. coliチオレドキシンが本発明での使用により好ましく、これは、本明細書で使用される場合、宿主細胞での発現時に(融合または非融合構築物で)封入体を形成する能力を有するチオレドキシンタンパク質である。特に好ましくは、trxA遺伝子によってコードされるE. coliチオレドキシンの欠失変異体であり、そして最も特定には配列番号8に記載のようなヌクレオチド配列を有するカルボキシ末端短縮型のE. coli trxAであり、以下pTrxA-concatと命名する。pTrxA-concatを含む組換え宿主細胞、E. coli DH10B(pTrxA-concat)を、1997年1月6日に、Collection, Agricultural Research Culture Collection (NRRL), 1815 North University Street, Peoria, Illinois 61604 USAに、受託番号NRRL B-21653として寄託した。
【0039】
本発明で使用され得る短縮型のtrxAとしては、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50アミノ酸が、チオレドキシンのカルボキシ末端から欠失される型が挙げられ、好ましくは23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または33アミノ酸が欠失される型、そして最も好ましくは23アミノ酸が欠失される型(pTrxfusprl10A)である。
【0040】
改変または短縮チオレドキシンをコードする構築物のような、改変された遺伝子融合構築物を作製および発現するための方法は、当業者に周知であり、そして文献(例えば、Winnacker, From Genes to Clones, New York: VCH Publishers, 451-481頁 (1987)を参照のこと)および以下の実施例で詳細に十分に記載される。特定の改変された遺伝子融合構築物が、宿主細胞において封入体の産生を誘導するかどうかを決定するために、構築物は、宿主細胞に移入され、そして以下に記載のように発現され得る。次いで、宿主細胞の懸濁液は、個々の宿主細胞内の封入体の存在の検出に適切な、顕微鏡法(例えば、位相差、Nomarski干渉、電子または蛍光顕微鏡法)のような任意の手段によって、封入体の存在について検査され得る。
【0041】
本発明での使用のために、封入パートナー核酸配列は、宿主細胞の染色体に挿入され得るか、または好ましくは発現ベクターであるベクター中にあり得る。pAR(lacZについて)、pATH(trpEについて)、pMAL(malEについて)、pGEX(GSTについて)、またはpTrxfus(trxAについて)のような、周知の発現ベクターが、本発明での発現ベクターとして特に好ましい。これらのベクターおよび適切でもあり得る他のベクターは、例えば、Pharmacia(Piscataway, New Jersey)から市販される。あるいは、当該技術分野で公知の他の十分に特徴づけられたベクターは、本発明の方法を実行するために使用され得る。
【0042】
上記のように、本発明の方法は、任意の長さの任意のポリペプチドの産生に適切であり、そして別の方法では顕著な量で宿主細胞によって発現されない短いポリペプチド、または宿主細胞に毒性であるポリペプチドを産生するために特に適切である。目的のポリペプチドをコードする核酸配列の、種々の供給源からの単離のための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook, J.ら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)を参照のこと)。一旦、目的のポリペプチドをコードする核酸配列が単離されると、上記からの改変された封入パートナー核酸に作動可能に連結または融合され、宿主細胞を形質転換することに使用される遺伝子融合構築物を含む、ベクター(好ましくは発現ベクター)を形成する。遺伝子融合構築物として特に好ましくは、プラスミドptcprl-モノマーである。短縮型封入パートナー核酸配列へ目的のポリペプチドをコードする核酸配列を融合するための方法、および発現ベクターへの挿入のための方法は、当業者には日常的である(例えば、Ausubel, F.M.ら編, Current Protocols in Molecular Biology, New York: John Wiley & Sons, Inc., 16.4.1-16.8.14頁 (1994)を参照のこと)。
【0043】
封入体としての組換えタンパク質の発現
本発明での使用のために、遺伝子融合構築物は、宿主細胞の染色体に挿入され得るか、または好ましくは発現ベクターであるベクター中に存在し得る。形質転換された宿主細胞を産生するための宿主細胞への遺伝子融合構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、または他の方法によって行われ得る。このような方法は、Davisら, Basic Methods In Molecular Biology (1986)のような、多くの標準的実験室マニュアルに記載される。一旦形質転換された宿主細胞が得られると、細胞は、宿主細胞増殖を支持する炭素、窒素、および必須ミネラルの吸収可能供給源を含む任意の適切な栄養培地中で、pHおよび温度の任意の生理学的に適合可能な条件下で培養され得る。組換えタンパク質産生培養条件は、宿主細胞を形質転換するために使用されるベクターの型に従って変化する。例えば、特定の発現ベクターは、組換えポリペプチドの産生を生じる遺伝子発現を開始するために、特定の温度での細胞増殖、または特定の化学薬品もしくは誘導剤の細胞増殖培地への添加を必要とする調節領域を含む。したがって、本明細書で使用される場合、用語「組換えポリペプチド産生条件」は、培養条件の任意の1セットに限定されることを意味しない。上記の宿主細胞およびベクターに適切な培養培地および条件は、当該技術分野で周知である。
【0044】
本明細書で提供される遺伝子融合構築物で形質転換された宿主細胞を培養することにより、封入体として目的の組換えポリペプチドが産生されることが、本発明で思いがけずに見いだされた。したがって、そのため、日常的な組換えポリペプチド産生条件は、宿主細胞において封入体としての組換えポリペプチドの産生に好都合であると考えられ得、そして本発明に従って封入体として組換えポリペプチドを産生するために使用され得;普通でない培養条件の使用または過度の実験は必要とされない。
【0045】
組換えポリペプチドの単離および精製
当業者に周知であるように、組換えDNA技術によるポリペプチドの産生のための方法は、代表的には、封入体からのポリペプチドの単離における認識されたおよび実際の困難性のため、宿主細胞において封入体中のポリペプチドの産生を最小にするように設計される。しかし、本発明によれば、封入体中の組換えポリペプチドの産生は、ポリペプチドの迅速な単離および精製を提供するために有利に使用され得る。
【0046】
宿主細胞における封入体としての産生の後、目的のポリペプチドを含む遺伝子融合産物は、いくつかの技術によって単離され得る。宿主細胞から封入体を解放するために、細胞は、溶解または破裂されなければならない。この溶解は、細胞を低張溶液と接触させることによって、リゾチームのような細胞壁破壊酵素での処理によって、超音波処理によって、高圧での処理によって、または上記の方法の組み合わせによって、達成され得る。当業者に公知である細菌細胞破壊および溶解の他の方法も使用され得る。好ましくは、細菌細胞は、リゾチームでの処理、次いで超音波処理によって破裂され;このような処理から、封入体を含む細胞細片の混合物を得る。封入体は、この処理によって破壊されない。
【0047】
破壊後、封入体は、複合混合物中の粒子の分離に適切な任意の技術によって細胞細片から分離される。好ましいこのような技術は、遠心分離、または例えば、Coulter Electronics (Hialeah, Florida)から市販される自動化粒子セパレーターのような自動化粒子セパレーターの使用を含む。封入体を単離するために最も好ましいのは、遠心分離である。本発明によって、封入体は、約1〜25,000×gで、好ましくは約100〜20,000×gで、より好ましくは約5,000〜15,000×gで、および最も好ましくは約10,000×gで、上記からの細胞細片混合物を遠心分離することによって単離され得る。好ましくは、遠心分離は、約4℃〜10℃にて約15〜60分間、最も好ましくは約4℃にて約30分間行われる。遠心分離後、上清に含まれる細胞細片は、ペレットにされた封入体から除去され、そしてペレットは、目的の組換えポリペプチドの精製に使用される。
【0048】
精製のための調製において、組換えポリペプチドを含む封入体に含まれる遺伝子融合産物は、可溶化される。可溶化は、好ましくは、変性剤、好ましくは塩酸グアニジニウムまたは尿素、および最も好ましくは約8M尿素での処理によって行われる。
【0049】
封入体の可溶化の前、可溶化中、または可溶化後、目的の組換えポリペプチドは、必要に応じて、当該分野で十分に記載される技術によって、封入パートナータンパク質から切断され得る(例えば、Ausubel, F.M.ら編, Current Protocols in Molecular Biology, New York: John Wiley & Sons, Inc., 16.4.5-16.4.17頁 (1994)を参照のこと)。しかし、本発明による組換えポリペプチドの産生が、必ずしもこのような切断を必要としないことは、当業者に理解される。この切断は、化学的切断方法によって、例えば、封入体からのポリペプチドの放出に好都合な条件下で、化学的切断剤のポリペプチド放出量と封入体とを接触させることによって達成され得る。好ましい化学的切断剤としては、臭化シアン、ヒドロキシルアミン、または低pH溶液(酸加水分解)が挙げられる。あるいは、およびより好ましくは、封入パートナータンパク質の切断は、酵素的切断方法によって、好ましくは、封入体からのポリペプチドの放出に好都合な条件下で、酵素的切断剤のポリペプチド放出量と封入体とを接触させることによって、行われる。好ましい酵素的切断剤としては、第Xa因子(malEまたはGST封入パートナーを含む遺伝子融合産物について)、またはトロンビン(GST封入パートナーを含む遺伝子融合産物について)が挙げられ、そして特に好ましくは、エンテロキナーゼ(trxA封入パートナーを含む遺伝子融合産物について)が挙げられる。これらの化学的および酵素的切断方法は、好ましくは、当業者に周知である、封入体からのポリペプチドの放出に好都合な条件下で行われる(例えば、Ausubel, F.M.ら編, Current Protocols in Molecular Biology, New York: John Wiley & Sons, Inc., 16.4.5-16.4.17頁 (1994)を参照のこと)。このような放出は、目的のペプチドの可溶化を生じ得、したがってさらなる可溶化は不必要であり得る。あるいは、ポリペプチドからの封入パートナータンパク質の切断は、遺伝子融合構築物の形成中に容易にされ得る。このようなスキームでは、タンパク質特異的切断部位をコードする核酸配列は、遺伝子構築物中の封入パートナータンパク質(例えば、改変されたチオレドキシン)をコードする核酸配列と、組換えポリペプチドをコードする核酸配列との間に配置され得;宿主細胞における封入体としての融合タンパク質の発現の際に、組換えポリペプチドは、次いで、タンパク質特異的切断部位で特異的に認識しそしてそこを切断する酵素(例えば、トロンビンまたはエンテロキナーゼ)または化学薬品(例えば、臭化シアン)で封入体を処理することによって、単離され得る。封入パートナータンパク質の切断は、あるいは、以下に記載のその後の工程のいずれか中にまたはその後に行われ得る。
【0050】
可溶化後、遺伝子融合産物または切断された組換えポリペプチドは、透析によって再折り畳みされて変性剤が除去され得る。透析は、好ましくは、等張緩衝化塩溶液に対して約4℃で約18〜48時間行われる。
【0051】
可溶化および任意の再折り畳み後、遺伝子融合産物または切断された組換えポリペプチドは、当業者に周知である種々のタンパク質精製技術のいずれかによって精製され得る。精製に適切な技術としては、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、電気泳動、免疫吸着、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー(LC)、高性能LC(HPLC)、高速LC(FPLC)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましくは、LC、HPLC、またはFPLCが、精製に用いられる。
【0052】
上記のように、任意の組換えポリペプチドが、本発明の方法によって産生され、そして宿主細胞から単離され得る。特に、これらの方法によって組換えチオレドキシンを産生することが可能である。このようなスキームでは、チオレドキシンまたはそのフラグメントは、以下を包含する一連の工程によって産生され得る:(a)チオレドキシン遺伝子を改変する工程、(b)改変されたチオレドキシン遺伝子を宿主細胞に移入する工程、および(c)宿主細胞において封入体としてのチオレドキシンの産生に好都合な条件下で宿主細胞を培養する工程。これらの改変、移入、および培養工程は、任意のポリペプチドの産生についての上記のように、および以下の実施例により詳細に記載されるように、チオレドキシンについて行われ得る。
【0053】
タンパク質分子量ラダーの産生
別の局面では、本発明の方法は、電気泳動のようなタンパク質分析技術において分子量または分子サイジングスタンダードとして使用されるタンパク質分子量ラダーを調製するために使用され得る。実施例3〜9で以下により詳細に記載されるこの実施態様では、一連の融合タンパク質が作製され得、ここで封入パートナータンパク質は、1つ以上の組換えポリペプチドまたはそのフラグメントに連結される。例えば、改変されたチオレドキシン封入パートナータンパク質をコードする核酸分子は、プラスミドpTrxA-concatのような融合ベクターを形成するために、ベクター(好ましくは、発現ベクター)に挿入され得る(図4;配列番号8)。次いで、このベクターは、それぞれ選択されたサイズ(例えば、5kDまたは10kD)のチオレドキシン(図5;配列番号11)、E. coli Dead-Boxタンパク質(図6;配列番号14)、KpnIメチラーゼ(図7;配列番号17)、または264-bp改変T4遺伝子32タンパク質(図1;配列番号1)のような組換えポリペプチドの単一または複数のフラグメントに連結され得る。核酸分子またはベクターの宿主細胞への挿入(すなわち、宿主細胞の形質転換)後、次いで、ポリペプチドは、宿主細胞における核酸分子の発現によって産生され得る。いくつかの発現シナリオが可能であることは、当業者に明らかである。例えば、本発明の方法は、分子量ラダーを形成する複数のポリペプチドをコードする核酸分子を産生するために、またはそれぞれがラダーの種々の分子量のポリペプチドをコードする多数の核酸分子を産生するために使用され得る。次いで、宿主細胞は、複数のこのようなポリペプチドをコードする核酸で、または種々の分子量のポリペプチドをそれぞれコードする多数の核酸分子で、形質転換され得る。あるいは、多数の宿主細胞は、分子量ラダーの種々のポリペプチドをコードする単一の核酸分子でそれぞれ形質転換され得;このシナリオでは、宿主細胞によって産生されるポリペプチドは、分子量ラダーを形成するために混合される。これらのシナリオのそれぞれでは、これらの構築物の発現は、好ましくは、5〜10kDほどの小ささから250〜330kDほどの大きさまでのポリペプチドを含む宿主細胞において封入体を産生する。さらに、本発明の方法によって産生されるラダーの分子量の増分は、封入パートナータンパク質遺伝子融合構築物に連結された組換えポリペプチド遺伝子の長さまたはコピー数を単に変化させることによって規定され得る。したがって、例えば、5kD、10kD、20kD、25kD、50kD、100kD、またはそれより大きなkDずつ増加する、例えば、約5kD〜約300kD、好ましくは約5kD〜約250kD、およびより好ましくは約10kD〜約220kDの範囲のタンパク質の収集物を含むタンパク質ラダーを産生することは、本発明によって可能である。もちろん、他の分子量またはサイズ増加が、特定の適用により適切であり得、そして本発明の方法のほんのマイナーな改変によって(例えば、上記のように融合された組換えポリペプチドをコードする遺伝子の長さを増加または減少させることによって)調製され得ることは、当業者に理解され;したがって、このような方法および組成物は、本発明の範囲またはその任意の実施態様から逸脱せずに提供され得る。
【0054】
好ましい実施態様では、上記のように調製されたタンパク質分子量ラダーは、未染色であり得るか、またはウェスタンブロッティングのような予備染色タンパク質ラダーを必要とする技術におけるラダーの使用を容易にするために、1つ以上のタンパク質結合染料で予備染色され得る。本発明によれば、任意の多くのタンパク質結合染料が、本発明の予備染色ラダーを産生するために、本発明のタンパク質または分子量ラダーを染色するために使用され得る。1つ以上のラダータンパク質に共有結合する任意の染料が使用され得、可視染料(発色団)、蛍光染料(発蛍光団)、リン光染料(リン光体)などが挙げられる。これに関して好ましい染料としては、レマゾールブリリアントブルーR(RBBR)、エオシンイソチオシアネート、マラカイトグリーンイソチオシアネート、リアクティブ(reactive)オレンジ(プロシオンイエローとしても公知)、プロシオンレッド、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンイソチオシアネート、エオシンヨードアセトアミド、リアクティブブラック5、レマゾールブリリアントバイオレット5R、リアクティブオレンジ14などが挙げられるが、これらに限定されない。RBBR、エオシンイソチオシアネート、およびマラカイトグリーンイソチオシアネートが、本発明の方法における使用に特に好ましい。本発明の方法に使用され得るこれらおよび他の染料は、例えば、Sigma/Aldrich (St. Louis, MO)およびMolecular Probes (Eugene, OR)から市販される。
【0055】
本発明によれば、予備染色された分子量ラダーは、天然に存在するかまたは上記のように組換え産生され得る1つ以上のラダータンパク質を、制御された温度、時間、および溶液pHの条件下で、緩衝化水溶液中で1つ以上の上記の染料とともにインキュベートすることによって生成され得る。好ましくは、ラダータンパク質は、約0.1〜約25、約0.1〜10、または約0.5〜10A280単位/mlの濃度で、より好ましくは約1〜10、約1〜5、または約1〜4A280単位/mlの濃度で、緩衝化水溶液(例えば、約10〜300mM、好ましくは約50〜200mMでNaClを含む、Tris-、リン酸-、炭酸-、またはHEPES-緩衝化生理食塩溶液)中に懸濁される。タンパク質の溶液に、1つ以上の上記の染料は、各染料に特異的な濃度範囲で、代表的には、約0.2mg/ml〜約1000mg/ml、約0.2mg/ml〜約500mg/ml、約0.2mg/ml〜約100mg/ml、約5mg/ml〜約200mg/ml、約10mg/ml〜約200mg/ml、または約10mg/ml〜約100mg/mlの範囲で、添加され得る。例えば、RBBRは、約0.3〜50mg/ml、好ましくは約5〜40mg/mlで、およびより好ましくは約10〜30mg/mlの最終濃度でタンパク質溶液に添加され得る。エオシンイソチオシアネートは、約1〜30mg/ml、およびより好ましくは約7〜10mg/mlの最終濃度でタンパク質溶液に添加され得る。マラカイトグリーンイソチオシアネートは、約5〜30mg/ml、より好ましくは約20〜30mg/mlの最終濃度でタンパク質溶液に添加され得る。本発明の方法によってタンパク質および分子量ラダーを染色するために使用され得る他の染料の最適濃度は、上記の濃度範囲をガイドラインとして使用して、過度の実験をせずに当業者に決定され得る。
【0056】
タンパク質ラダーの染色はまた、制御された溶液pHおよび/または温度の条件下で行われるべきである。好ましくは、溶液は、約7〜12、約7〜11、約8〜11、または約8.5〜10.5、好ましくは約7.2〜9.7、より好ましくは約8.2〜9.7、および最も好ましくは約9.2〜9.7のpH(タンパク質、ラダー、および染料の添加前にほぼ室温(すなわち、約20℃〜25℃)で測定される)に緩衝化される。染色反応中、溶液は、約4℃〜約90℃、約4℃〜約80℃の温度で、好ましくはほぼ室温(すなわち、約20℃〜25℃)〜約80℃、約35℃〜約80℃、約40℃〜約75℃、約45℃〜約70℃、約45℃〜約70℃、約50℃〜約70℃、約45℃〜約65℃で、より好ましくは約50℃〜約60℃の温度で、および最も好ましくは約50℃の温度でインキュベートされるべきである。染色されたタンパク質またはラダーの産生については、タンパク質-染料溶液は、上記の条件下で、約4〜48時間、好ましくは約6〜48時間、より好ましくは約4〜24時間、約6〜24時間、約8〜24時間、約10〜24時間、約12〜24時間、および最も好ましくは約12〜18時間(すなわち、「一晩」、この用語は当業者によって理解される)インキュベートされるべきである。インキュベーション後、染色されたタンパク質または分子量ラダーは、種々の当該技術分野で公知の方法(例えば、透析、クロマトグラフィー、ゲル拡散など)によって、結合されていない染料および任意の他の不純物から単離され得、そして−70℃〜4℃で溶液中に保存され得るか、あるいはこれらは凍結乾燥して使用まで−70℃〜室温(すなわち、約20℃〜25℃)で保存され得る。
【0057】
特に好ましいこのような実施態様では、予備染色したタンパク質ラダーは、SDS-PAGEで均等に間隔をあけられ、そしてゲル上のバンドのすべての容易な位置決めを可能にするための、他のバンドとは異なる色で染色された参照タンパク質バンドをさらに含む、タンパク質分子量マーカーの収集物を含み得る。例えば、このような予備染色されたラダー調製物は、バンドの収集物を含み得、ここで1つのバンド(参照バンド)は、エオシンイソチオシアネートで染色され、そして残りのバンドはRBBRで染色される。このようなアプローチは、以下の実施例4で十分に詳細に記載される。
【0058】
本明細書に記載の方法および適用への他の適切な改変および適応は明らかであり、そして本発明またはその任意の実施態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連分野の当業者には容易に明らかである。本発明をここで詳細に記載すると、本発明は、以下の実施例を参照することによってより明確に理解される。以下の実施例は例示のみの目的のために本明細書に含まれ、そして本発明を限定することは意図しない。
【実施例】
【0059】
材料および方法
特定の実施例で他に明記されなければ、以下の材料および方法を、実施例で一般的に使用した。
【0060】
材料
制限酵素、T4 DNAリガーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、および熱感受性アルカリホスファターゼを含むすべての酵素を、他に記載がなければ、Life Technologies, Inc. (LTI; Rockville, Maryland)から得た。E. coli発現ベクターpTrc99Aを、Pharmacia (Piscataway, New Jersey)から得た;pTrxfusを、Genetics Institute (Cambridge, Massachusetts)またはInvitrogen (San Diego, California)から得、pRE1を、McKenney博士(Reddyら, Nucl. Acids Res. 17:10473-10488 (1989))から得た。Toyo-Pearl AF キレート-650M樹脂を、TosoHaas (Montgomeryville, Pennsylvania)から購入した。pRK248cl(テトラサイクリンr)およびStbl2を含むかまたは含まないE. coli発現宿主DH10Bを、Life Technologies, Inc. (Rockville, Maryland)から得た。
【0061】
レマゾールブリリアントブルーR(RBBR)およびマラカイトグリーンを、Aldrichから得、そしてエオシンイソチオシアネートを、Molecular Probesから得た。ウシアプロチニンを、Bayerから得た。クローニングされたタンパク質を、以下の十分に記載のように、10kDa〜160kDaのサイズの範囲の8タンパク質をコードするプラスミドを含むE. coli株から精製した。緩衝剤成分は、すべて試薬グレード以上であった。ダイアフィルトレーションユニットは、Omega 3000分子量カットオフメンブレンを装着したFiltron Mini Ultrasetteであった。G-25 medium樹脂を、Pharmaciaから得た。他の試薬および成分を、当業者が熟知する市販の実験室供給源から得た。
【0062】
組換えDNA構築
264bp(配列番号1)AvaIフラグメントは、pPrL2107(米国特許第5,449,758号)に由来した。このフラグメントは、非常に改変されているT4遺伝子32タンパク質の一部である。このAvaIフラグメントを使用して、pPrL2001中にマルチマー(米国特許第5,449,758号を参照のこと)を作製した。12インサートを有するクローンを選択し、そしてpPrL2738と命名した。クローニングされたフラグメントを、以下のようにpTrc99Aに再クローニングした:組換えプラスミドを、EcoRIで切断し、そしてdNTPの存在下でクレノウフラグメントで平滑末端にし;NcoIで切断し、そしてこのフラグメントをGENE CLEANTM(Bio101)によって精製した。ベクターpTrc99Aを、SalIで切断し、クレノウフラグメントで平滑末端にし、そしてNcoIで切断した。ゲル精製したベクターを、ゲル精製したフラグメントと連結し、そしてDH10Bに形質転換した。クローンを、pTrcprlと命名した。
【0063】
モノマーを作製するために、pTrcprlを、AvaIで完全に切断して、マルチマーを除去し、そしてベクターを自己連結した。この構築物は、単一のAvaI部位を有する261bp(配列番号2)フラグメントを含み、そして10kDタンパク質を産生すると予測された。このプラスミドを、pTrcprl-モノマーと命名した。
【0064】
20kD〜220kDの個々のタンパク質を産生するためのクローンを生成するために、pPrL2107からの264bp AvaIフラグメントを使用して、AvaI部位でpTrcprl-モノマー中にマルチマーを作製した。264bpフラグメント(配列番号1)が内部メチオニン残基を含むので、何らかの内部開始を停止するために、メチオニン残基を、部位特異的変異誘発によってリジン残基へ変更した。連結を、100:1pmol比のインサートおよびベクターを使用して室温(22℃)にて行った。正確なインサート(2、3、4など)を有する個々のクローンを、NcoIおよびHindIIIでの切断後のインサートのサイズによって選択した。プラスミドを、それぞれ、20kD、30kD、40kDなどのタンパク質を産生する、pTrcprl20、pTrcprl30、pTrcprl40などと命名した。
【0065】
10kDタンパク質を産生するためのラムダpLプロモーターの制御下でE. coliチオレドキシン(短縮型)の一部を含むクローンも生成した。この構築物は、チオレドキシンの108アミノ酸のうちの86アミノ酸およびカルボキシ末端に6ヒスチジン残基を含んでいた。6ヒスチジン残基は発現したタンパク質の精製を容易にするためのHisタグを提供した。代替のアプローチでは、最大33アミノ酸を、チオレドキシンタンパク質から欠失し、チオレドキシンの108アミノ酸のうちの75アミノ酸およびHisタグを含む構築物を産生した。フラグメントをクローニングするために使用されるオリゴヌクレオチドは、

であった。オリゴヌクレオチドを、テンプレートとしてpTrxfusを使用して、PCRについて使用した。PCR産物を、NdeIおよびPstI(下線を引いたオリゴヌクレオチドに組み入れられる)で切断し、そしてNdeIおよびPstIで切断されたpTrxfusにクローニングした。このプラスミドを、pTrxfusprl10A(配列番号5)と命名した。
【0066】
NcoI(太字、下線、および斜体)、NdeI(太字斜体)、およびAvaI(太字下線)を有するオリゴヌクレオチド

を使用して、以下のようにマルチマーを作製するために代わりのベクターを生成した:オリゴヌクレオチドを使用して、テンプレートとしてpTrxfusを使用してPCR産物を生成した。PCR産物を、NcoIおよびAvaIで切断し、そしてpTrcprl-モノマーにクローニングして、改変されたT4遺伝子32遺伝子のNcoI-AvaIフラグメントを置換した。このプラスミドを、pTrxA-concat(配列番号8)と命名した。この構築物は、チオレドキシンからのアミノ酸1〜75、76番目のアミノ酸としてのグリシン、および6カルボキシ末端ヒスチジン残基を含むpTrcprl-モノマーからのアミノ酸77〜90を含んだ。この構築物を、上記のようにAvaIフラグメントまたはAvaIフラグメントのマルチマーのインフレーム連結によって融合タンパク質を生成するために作製した。マルチマーを作製するために、本発明者らは、チオレドキシン、DEAD-box、またはKpnIメチラーゼのようないくつかのテスト遺伝子から、PCRによって生成したAvaIフラグメントを使用した。チオレドキシン遺伝子(Hoogら, Bioscience Reports 4:917-923 (1984))からAvaIフラグメントを生成するために使用したオリゴヌクレオチドは、

であった。PCR産物(配列番号11)を、AvaIで切断し、そして100pmolのインサートおよび1pmolのベクターを使用してAvaI切断して脱リン酸化したpTrxA-concatに連結した。単一または複数のインサートを有するクローンを、NcoIおよびPstIでの切断後のインサートのサイズを見積もることによって選択した。最終的に、所望のインサートを、NdeI-PstIフラグメントとしてpTrxfusにクローニングした。したがって、これらのクローンは、20kD、30kD、40kDなどとして、チオレドキシン-(チオレドキシン)融合タンパク質を産生する。DEAD-box遺伝子(Tooneら, J. Bacteriol. 173(11):3291-3302 (1991))からAvaIフラグメントを生成するために使用されたオリゴヌクレオチドは、

であった。PCR産物(配列番号14)を、テンプレートとしてE. coli染色体を使用して生成した。PCR産物をAvaIで切断し、そして上記のようにpTrxA-concatで連結した。種々のインサートを有するクローンを選択し、そして上記のようにpTrxfusに再クローニングした。これらのクローンを、15kD、20kD、25kDなどとしてチオレドキシン-(DEAD-box)融合タンパク質を産生するように設計した。チオレドキシン-KpnIメチラーゼ融合タンパク質を作製するために、使用されたオリゴヌクレオチドは、

であった。PCRに使用したテンプレートは、KpnIメチラーゼクローンであった(Chatterjeeら, Nucleic Acids Res. 19:6505-6509 (1991))。PCR産物(配列番号17)をAvaIで切断し、そしてpTrxA-concatに連結し、そして最終的にNdeI-PstIフラグメントを、pTrxfusプラスミドにサブクローニングした。このプラスミドを、40kDチオレドキシン-KpnIメチラーゼ融合タンパク質を産生するために生成した。
【0067】
タンパク質の発現
pTrcprl構築物を含むE. coli DH10BまたはStbl2(LTI; Rockville, Maryland)を、100μg/mlでアンピシリンを含む緩衝剤リッチ培地中で37℃にて増殖させた。クローンを、OD590=1.0まで増殖させ、そして1mMの最終濃度までのIPTGで3時間誘導した。クローンを、37℃にて3時間インキュベートした。pTrxfus構築物を、100μg/mlのアンピシリンおよび15μg/mlのテトラサイクリンを含む緩衝剤リッチ培地中で30℃にて増殖させた。クローンを、OD590=1.0まで増殖させ、そして42℃にて30分間加熱によって誘導し、続いて37℃にて3時間増殖させた。細胞を、1mlの超音波処理緩衝液(10mM Tris-HCl 7.5、1mM EDTA、および10mMβ-メルカプトエタノール)に再懸濁し、続いて3×10秒間超音波処理した。全細胞抽出物について100μlを取り出した。アリコートを取り出して、総タンパク質としてタンパク質を分析した。超音波処理した試料を、4℃にて10分間回転させ、そして上清をエッペンドルフチューブに移した(可溶性)。
【0068】
試料(総画分および可溶性画分)を、4〜20%tris-グリシンゲルにアプライして、タンパク質を検査した。
【0069】
タンパク質の精製
細胞を、1g:2mL比の20mM Tris-HCl、2mM MgCl2, pH 8.0緩衝液でスラリーにした。American International Chemicalからの組換えエンドヌクレアーゼであるベンゾナーゼ(benzonase)を、1mLのスラリー当たり25ユニットの比で添加した。細胞を、高圧実験室ホモジナイザーModel MINI-LAB,7.30VH mm型(APV Rannieから)を、12,000psiで2回通して破砕した。次いで、試料を、RC-5遠心分離機で10,000×gにて30分間回転して、封入体をペレットにし、一方、細胞破片のほとんどを上清液体中に残した。次いで、封入体ペレットを、TekmarからのUltra Torrax Tissuemizerを使用して滅菌水で約20〜25℃にて2回洗浄して、ペレットを十分に懸濁した。次いで、ペレットを、8M尿素、100mM H2NaPO4、4mMイミダゾール、pH8.4緩衝液で可溶にし、そしてTosoHaasからのToyopearl AF Chelate-650M樹脂にロードした。試料をロードする前に、樹脂を、3カラム容量の1M 硫酸ニッケル溶液でチャージし、3カラム容量の水で洗浄し、次いで3カラム容量の8M尿素、100mM H2NaPO4、4mMイミダゾール、pH8.4(緩衝液)で平衡化した。試料をロードした後、カラムを、10カラム容量の緩衝液で洗浄し、次いでタンパク質を、8M尿素、100mM H2NaPO4、pH3.5で単一の画分に溶出させ、そして5mM EDTAを含む水に対する透析によって沈殿させた;EDTAは、長期保存時にタンパク質を変性させる遊離のニッケルイオンをキレート化するために含まれた。沈殿物を、RC-5遠心分離機で10,000×gにて遠心分離し、次いで1%SDS/水に可溶化した。
【0070】
レマゾールブリリアントブルーR標識
10、15、20、25、30、40、70、100、および160kDaタンパク質を、1%SDS H2Oで8A280ユニット/mlまで希釈した。各タンパク質溶液を、緩衝液280mMリン酸ナトリウム、160mM塩化ナトリウム、1%(w/v)SDS、pH9.2の等容量と合わせ、そして50℃にて15分間加温した。RBBRのストック溶液(20mg/mlおよび60mg/ml)を、140mMリン酸ナトリウム、80mM塩化ナトリウム、1%(w/v)SDS、pH9.2中で調製し、ボルテックスし、そして50℃にて15分間インキュベートした。次いで、10、15、20、30、70、および160kDaタンパク質溶液を、等容量の加温した60mg/ml RBBRストックと個々に混合し、ボルテックスし、そして50℃にて14〜18時間インキュベートした。40および100kDaタンパク質溶液を、等容量の加温した20mg/ml RBBRストックと個々に混合し、ボルテックスし、そして50℃にて14〜18時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、溶液を水浴から取り出し、室温まで平衡にし、0.8μm cameoフィルターを通して濾過して、あらゆる残りの粒子を除去し、そして使用まで4℃にて保存した。
【0071】
低分子量スタンダードを提供するために、アプロチニンを、140mMリン酸ナトリウム、80mM塩化ナトリウム、3%(w/v)SDS中で11mg/mlの濃度で調製した。溶液を、穏やかにボルテックスし、そして50℃にて15分加温した。加温後、5.7mgのRBBR/mlを溶液に添加し、次いで、溶液を混合し、そして70℃にて40分間インキュベートした。次いで、β-メルカプトエタノールを添加し(6.9μl/ml)、そして溶液を再度混合し、そして70℃にてさらに10分間インキュベートし、その後9.1μl/mlのアクリロニトリルを添加した。溶液を混合し、室温にて30分間インキュベートし、次いで0.8μm cameoフィルターカートリッジを通して濾過し、そして4℃にて保存した。
【0072】
50kDaタンパク質のエオシンイソチオシアネート標識
1%SDS/H2O中の8A280/ml 50kDaストックを、等容量の280mMリン酸ナトリウム、160mM塩化ナトリウム、1%(w/v)SDS、pH9.7緩衝液と合わせ、混合し、そして50℃にて15分間加温した。エオシンイソチオシアネート(EITC)の70mg/mlストックを、使用の直前にジメチルホルムアミド中で調製し、そしてこの溶液の十分量を50kDaタンパク質溶液に添加して、7mg/ml EITCの最終濃度を達成した。次いで、溶液を混合し、暗中で14〜18時間50℃にてインキュベートし、室温まで平衡にし、0.8μm cameoフィルターカートリッジを通して濾過し、そして4℃にて暗中で保存した。
【0073】
最終混合物の調製
標識の質を、SDS-PAGE(Laemmli, E.K., Nature 227:680-685 (1970))上に各タンパク質ストックを流すことによって評価し、次いで、等しい強度を有することが可視的に明らかであるバンドを生じるようなタンパク質の量で、タンパク質のすべての混合物を調製した。次いで、混合物を、3,000分子量カットオフミニウルトラセットユニットを使用して、10%グリセロール、50mM TRIS、5mM EDTA(保存の際の調製物の安定性を増強するため)、pH6.8緩衝液で、ダイアフィルトレートした。Sephadex G-25カラムを使用して、ダイアフィルトレーション後に残った少量の未反応染料を除去した。Sephadexカラムを50mM Tris、1%(w/v)SDS、5mM EDTA、pH6.8で平衡化し、そしてカラムサイズは、試料の容量の15倍であった。SDS-PAGEを、混合物の質を評価するために、最終混合物で行った。
【0074】
実施例1:10kDタンパク質のクローニングおよび発現
最初の目的は、10kDずつの増分の10kD〜250kDの範囲のタンパク質分子量スタンダードを作製することであった。それゆえ、カルボキシ末端に6ヒスチジン残基を含む87アミノ酸(261bp)を含むT4遺伝子32タンパク質の改変された部分(図1;配列番号1)(米国特許第5,449,758号を参照のこと)を使用した。フラグメントをクローニングし、そして発現させて10kDタンパク質を産生した。このクローンを、プラスミドpTrcprl-モノマーと命名した。この構築物は、CTCGGG配列を有する任意の所定のAvaIフラグメントのマルチマーを生成するために、独特のAvaI部位(CTCGGG)を含む。AvaIで切断した場合、クローンは、TCGG突出を生じる。したがって、両末端にTCGG突出を有するDNAフラグメントを、AvaI切断したpTrcprl-モノマーと連結する場合、フラグメントは、1方向のみに(頭から尾へ)連結される。適切な連結条件を使用して、所望のフラグメントのマルチマーを生成することが可能であった。例えば、単一のAvaIフラグメント(264bp)がpTrcprl-モノマーに連結される場合、20kDタンパク質を産生する;2つのフラグメントが連結される場合、30kDタンパク質を産生するなどである。
【0075】
上記のように、pTrcprl-モノマーを、10kDタンパク質を産生するように設計した。しかし、誘導または非誘導培養物は、10kDタンパク質を全く産生しなかった。興味深いことに、多数のインサートを含む、より大きなクローンは、予測されたサイズのタンパク質を産生した。しかし、発現のレベルは、インサートの数に依存してクローンの間で変化した。種々のタンパク質の発現のレベル(kDで)は、以下の通りであった:20<30<40<50<60<70≒80≒90≒100≒120>160>180>200>220>250。
【0076】
分子量スタンダードの産生における使用のための低分子量のタンパク質を得るために、E. coliでよく発現される10kDのサイズに近い天然のタンパク質を捜した。このようなタンパク質の1つはチオレドキシンであり、これは108アミノ酸からなり、そして12kDの分子量を有する(Lunnら, J. Biol. Chem. 259:10469-10474 (1984);Hoogら, BioSci Rep. 4:917-923 (1984))。チオレドキシンは、遍在して分布し、そして細胞当たり異常に高い濃度で存在する(10,000〜20,000分子/細胞)。さらに、過剰発現した場合、これは総可溶性細胞タンパク質のほぼ40%を表すことも示されている(Lunnら, 同上)。したがって、2kD部分がそのカルボキシ末端から欠失される場合、チオレドキシンが10kDタンパク質の産生に適切な候補であり得ることが明らかであった。10kDタンパク質を産生したこのような構築物の1つ(pTrxfusprl10A)は、以下を含んでいた:a)チオレドキシンからのアミノ酸1〜85;b)アミノ酸86位でのバリンについてグルタミン酸の置換;およびc)87〜92位でのヒスチジン残基。この短縮型チオレドキシン構築物は、総細胞タンパク質の約20〜30%を産生した。しかし、全長チオレドキシンとは異なり、この構築物は、封入体として誘導されたタンパク質のほぼすべてを産生した。他の実験では、108アミノ酸のうちの33を、チオレドキシンカルボキシ末端から欠失した;このような構築物はまた、宿主細胞における発現の際に封入体として誘導されたタンパク質のほぼすべてを産生した。2〜22アミノ酸がカルボキシ末端から欠失されているか、または33〜50アミノ酸が欠失されている、短縮型チオレドキシンを使用して、上記のように本発明の方法によってポリペプチドを産生することも可能であり得る。宿主細胞におけるタンパク質の発現に続いて、封入体は、遠心分離によって宿主細胞から容易に単離された。
【0077】
実施例2:10kDより大きい融合タンパク質のクローニング
短縮型チオレドキシンとの融合タンパク質を作製するために、コンカテマーを作製するために使用される、独特のAvaI部位を含むベクターを開発し;このベクターを、pTrxA-concatと命名した(図4;配列番号8)。このベクターを使用して、一連の融合タンパク質を、チオレドキシン(図5;配列番号11)(チオレドキシン-チオレドキシン融合体)、E. coli DEAD-boxタンパク質(図6;配列番号14)、KpnIメチラーゼ(図7;配列番号17)、または264-bpの改変されたT4遺伝子32タンパク質(図1;配列番号1)の単一または多数のフラグメントにベクターを連結して作製した(米国特許5,449,758を参照のこと)。
【0078】
詳細には、示された分子量の融合タンパク質を、表1に示すような、短縮型E. coliチオレドキシン(ΔtrxA)またはT4遺伝子32タンパク質の10kDフラグメント、あるいはE. coli Dead-Boxタンパク質またはKpnIメチラーゼの5kDフラグメントをコードする核酸分子の1つ以上のコピーに、pTrxA-concatを連結することによって作製した。すべての場合に、融合タンパク質は、封入体として発現した。したがって、本発明の方法を使用して、5〜10kDずつの増加での10kD〜220kDのサイズ範囲のポリペプチドを、封入体として効率的に産生した。
【表1】

【0079】
実施例3:染色されていないタンパク質分子量ラダーの産生
その有用性を証明するために、本発明の系を使用して、染色されていないタンパク質分子量ラダーを作製した。実施例2に記載のように作製された、種々のサイズの精製されたタンパク質を混合し、SDS-PAGEによって分離し、そして種々のアクリルアミド濃度でのバンド分離パターンを観察した。
【0080】
これらの実験の結果は、ある範囲のアクリルアミド濃度で最良の解像度を可能にするタンパク質の組み合わせが、10kD、15kD、20kD、25kD、30kD、40kD、50kD、60kD、70kD、80kD、90kD、100kD、120kD、160kD、および220kDのタンパク質の混合物であることを示した。これらの結果は、本発明の方法が種々のサイズ範囲のタンパク質を作製することに有用であり、そしてタンパク質分子量ラダーを含む組成物を産生するために使用され得ることを示す。
【0081】
実施例4:予備染色したタンパク質分子量ラダーの産生
予備染色したタンパク質分子量ラダーは、2つの異なる形態で10年より長く市販されている。1つの形態では、タンパク質のすべてが単一の染料で染色され、そして第2の形態では、各タンパク質は異なる染料で染色される(多色型)。これらの2つの異なる形態は、いくつかの有利点および不利点を有する。単色マーカーは、例えば、代表的には、多色マーカーと比較してSDS-PAGEにおいて比較的鮮明なバンドを生じるように調製されるが、対応する分子量に各バンドを直接関連させることは、困難であり得る。なぜなら、単色に予備染色されたマーカーにおける唯一の評価基準は、最大または最小の分子量のバンドであるからである。これらの参照バンドのいずれかが保存中に消失するか、またはゲル上で分離されないならば、評価基準がないことにより、残りのバンドの同定が困難になる。同様に、多色マーカーでのバンドの同一性の決定は、各バンドが異なる色であるので容易であるが、バンドのいくつかはSDS-PAGEにおいて非常に幅広であり、そして色のいくつかは視覚的に検出することが困難である。
【0082】
本発明では、予備染色したタンパク質分子量マーカーの新しいセットが開発されている。これらのマーカーは、SDS-PAGEで均等に間隔をあけられ、そして他のバンドとは異なる色の参照バンドを含んでおり、すべてのマーカーバンドの容易な位置決定を可能にする。単一の染料を使用して、1つ(参照タンパク質)(これは第2の染料で染色した)を除くすべてのタンパク質を染色した。染色プロトコルを開発して、多色マーカーで普通のバンドの鮮明さの広い変化とは対照的に、両方の染料を使用してSDS-PAGEで鮮明なバンドを与える予備染色したタンパク質を産生した。第2の染料で染色したタンパク質は、予備染色されたマーカーバンドの同定を容易にするマーカー内の参照の点として役立つ。レマゾールブリリアントブルーR(RBBR)、エオシンイソチオシアネート、プロシオンレッド、リアクティブオレンジ(プロシオンイエローとしても公知)、エオシンヨードアセトアミド、リアクティブブラック5、レマゾールブリリアントバイオレット5R、リアクティブオレンジ14、ローダミンイソチオシアネート、およびマラカイトグリーンイソチオシアネートを含む、多くの染料をテストした。各タンパク質成分の標識および保存条件を、材料および方法の項で上で詳細に記載のように、緩衝液pHおよびイオン組成、染料濃度、タンパク質濃度、標識の温度、および標識中のインキュベーション時間に関して最適にした。
【0083】
多くの異なるクローニングされたタンパク質を、RBBRで標識し、次いでSDS-PAGEに流して、標識手順の有効度を決定しそして標識されたタンパク質の見かけの分子量を決定した。図8に示すように、SDS-PAGEでの最も強烈な染色および最も均等な間隔は、10、15、20、30、40、50、70、100、および160kDaタンパク質の組み合わせで達成された。50kDaタンパク質を、エオシンイソチオシアネートで標識し、そのため最も明るい部分または参照バンドを、マーカーラダーに組込み得た。この明るいピンクのバンドは、上から4番目のバンドおよび下から6番目のバンドとして配置され(ラダー組成物の一部ではないアプロチニン標準を含まない)、特定のバンドの分子量を決定するための容易な評価基準を提供した。これらの結果は、本発明の方法が、容易に予備染色される分子量マーカーセットを産生するために使用され得ることを示す。
【0084】
実施例5:ブロッティングにおける使用のための分子量マーカーの産生
ゲルにおけるクーマシーブルー染色後に分子量を決定するために使用され得るだけでなく、ウェスタンブロッティングのようなメンブレントランスファー技術後の分子量マーカーとしても使用され得る、分子量マーカーを有することは有用である。本発明の方法によって産生される分子量マーカーは、これらの適用の両方について使用され得る。上記のように、染色されていない分子量マーカー混合物中のタンパク質成分のそれぞれは、カルボキシ末端に6ヒスチジン残基を含む。これらの6ヒスチジン残基は、Ni++と相互作用するので(Hochuli,E.およびPiesecki, S., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 4:68-72 (1992))、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート p-トルイジン塩(BCIP)とともにNi-NTA-アルカリホスファターゼ結合体を使用して、ウエスタンブロットにおいてタンパク質成分を検出および同定し得る。
【0085】
実施例6:小さいまたは毒性タンパク質の産生
本発明の系は、この困難性が、(1) タンパク質のサイズがより小さいこと(一般的に、より小さいタンパク質は、E. coliにおいてより低いレベルで発現される);(2)E. coli宿主に対する異種タンパク質の毒性;(3)E. coliにおける翻訳の効率の悪さ;または(4)mRNAの不安定性のためであるかどうかにかかわらず、E. coliにおいて発現させることが困難であるタンパク質を発現させるために特に有用である。上記の実施例で示されるように、本発明の方法は、封入体としての異種タンパク質の効率的な産生を可能にする。封入体は発現されたタンパク質の単離された形態であるので、この系は、そうでなければE. coliまたは他の細菌宿主細胞で産生されないかもしれない毒性タンパク質または小ペプチドを産生するために使用され得る。この系を使用して、5kDおよびより小さいペプチドが産生されている。この系はまた、250kDのサイズまたはそれより大きいポリペプチドを産生するために使用され得る。
【0086】
実施例7:レマゾールブリリアントブルーR(RBBR)でタンパク質ラダーを標識するための条件の最適化
一般的に、タンパク質の化学的改変または結合(例えば、染料でタンパク質を標識すること)には、タンパク質上の官能性反応性基の、標識上の対応する官能性反応性基との反応が含まれる。リジン残基を含むタンパク質のような、アミン含有分子とカップリングし得る反応性基は、染料のような架橋試薬上に存在する断然最も普通の官能基である。したがって、アミンカップリングプロセスは、ほぼすべてのタンパク質またはペプチドを他の分子と結合するために使用され得る。
【0087】
本発明では、レマゾールブリリアントブルーR(RBBR)およびエオシンイソチオシアネートを含む、種々の染料が、分子量ラダータンパク質の標識のためのカップリング試薬として使用されている。これらの染料は、主として、タンパク質上の求核性アミン基と反応して、安定なタンパク質-染料複合体を生じる。染料はまた、チロシン側鎖のスルフヒドリル基およびフェノレートイオンのような、標的タンパク質上の他の求核基と、ある程度まで反応し得る。
【0088】
最も有用な(すなわち、最高の着色強度およびバンド鮮明さ)および一貫した(すなわち、バッチ間でのバンド移動度の最低の変動)予備染色したタンパク質ラダーを産生するために、染色プロトコルを最適化することが必須である。バンド強度は、染料と結合しているタンパク質に存在する一級アミン基の量に依存するが、バンド鮮明さは、標的タンパク質において利用可能な一級アミンのうちのいくつが染料と結合しているかに依存する。これらの変数の各々は、結合の最中にタンパク質および染料が供された環境条件に依存する。したがって、標的マーカータンパク質と染料との結合の程度は、溶液中のタンパク質および染料の濃度、溶液のpH、イオン状態、温度、および染料とタンパク質とのインキュベーションの期間を含む、染色中の多くの条件に依存する。
【0089】
したがって、本発明の1つの目的は、できるだけ強く、均質で、および一貫して分離するバンドを有する分子量ラダーを提供するタンパク質分子量マーカーを染色するための条件を開発することである。この目的を満たすために、溶液中のタンパク質および染料の濃度、溶液のpH(タンパク質および染料の添加前に調整される)、ならびにインキュベーションの温度および時間に関する標識条件を、最適化した。
【0090】
反応を行う容量を最少にするために、種々の濃度のタンパク質を検査した。上記のように産生されたタンパク質を、1、2、および4のA280ユニット/mlで溶液中で調製し、そして材料および方法の項で上で一般的に記載のようにRBBRで標識し、次いで実施例4で上記のように4〜20%SDS-PAGEグラジエントゲル上で分離した。次いで、染色の強度を、デンシトメトリーによっておよび視覚によって決定した。一般的に、1および2のA280ユニット/mlのタンパク質濃度は、類似の強度のシグナルを生じたが、標識強度は、4A280ユニット/mlでは、より低かった。
【0091】
類似の実験において、RBBRの最適濃度を、0.3〜30mg/mlの濃度の範囲でのRBBRでタンパク質を染色することによって決定した。一般的に、40kDおよび100kDのタンパク質を標識した場合に、10mg/ml RBBRが、もっとも強く染まった均質な産物を提供することが見いだされたが、10kD、15kD、20kD、30kD、45kD、50kD、60kD、70kD、および160kDのタンパク質は、30mg/mlのRBBRによって最適に標識された。これらの結果は、RBBRの約5〜50mg/mlまたは10〜30mg/mlの範囲が、種々の分子量のタンパク質からなるタンパク質分子量ラダーの標識に最適であり得ることを示唆する。
【0092】
標識のための最適温度および時間を決定するために設計された予備実験では、染料を含まない溶液でのタンパク質のインキュベーションは、タンパク質が、700℃にて0.5〜1時間インキュベートされた場合、および60℃にて約2〜5時間インキュベートされた場合に、分解される傾向があることを示した。しかし、約50℃以下で一晩(12〜24時間)インキュベートした場合、タンパク質は安定である(すなわち、溶液中での分解に抵抗性である)ようであった。上記の濃度範囲でRBBRでタンパク質溶液を染色する際に、最も均質および強いバンド(すなわち、最も鮮明および最も明るいバンド分離パターン)は、50℃にて一晩RBBRで染色したタンパク質調製物で観察された。インキュベーション期間が短ければ短いほど(例えば、4〜8時間)、特により低分子量のタンパク質(10kD〜60kD)で、より不均一な(すなわち、より拡散したおよび強度が低い)バンド分離パターンを生じた。室温(約20℃〜25℃)および37℃での一晩のインキュベーションは、満足な結果を生じなかった;これらの条件下でRBBRで染色したタンパク質ラダー調製物は、さらにより拡散したおよび強度がより低いバンド分離パターンを示すラダーを生じた。これらの結果は、50℃でのタンパク質の一晩染色が、RBBRで予備染色したタンパク質分子量ラダーを産生するために最適であることを示す。
【0093】
最後に、RBBRでのラダー調製物の染色のために最適なpHを決定するために、タンパク質を、約7.2〜約9.7の範囲のpHに緩衝化した溶液中で、上記のようにRBBRで標識した。理想的結果(すなわち、最高の強度の染色および最少の拡散のバンド分離パターン)は、pH9.2に緩衝化した溶液中で観察された。しかし、最終染色混合物のpHが約8.3であるが(タンパク質および染料の添加後)、タンパク質および染料が添加される緩衝液の最適初期pHが約9.2であったことに、注目すべきである。
【0094】
まとめて考慮すると、これらの結果は、RBBRで予備染色されたタンパク質分子量ラダーを産生するための最適条件が、約1〜2のA280ユニット/mlのタンパク質濃度、約5〜約50mg/mlの染料濃度、約9.0〜9.5のpH、ならびに約50℃の温度での約12〜24時間のタンパク質および染料のインキュベーションを含むことを示唆する。
【0095】
実施例8:エオシンイソチオシアネートでタンパク質ラダーを標識するための条件の最適化
上の実施例4に記載のように、複合タンパク質分子量ラダーにおける単一タンパク質バンド、特にRBBR標識した40kDバンドと70kDバンドとの間のバンドの、エオシン標識は、ラダーにおける他のタンパク質バンドのすべての迅速かつ正確な同定を可能にする、価値のある参照バンドを提供する。したがって、本発明のラダーにおける使用のために、30kD、40kD、50kD、および60kDのタンパク質をエオシンイソチオシアネートで標識するための最適条件を決定した。
【0096】
実施例1および2で上記のように調製した、30kD、40kD、50kD、および60kDの組換えタンパク質の種々の調製物を、実施例7におけるRBBRでの研究について使用した、タンパク質濃度、染料濃度、温度、時間、およびpHの条件下で、エオシンイソチオシアネートとともにインキュベートした。エオシンイソチオシアネートでの標識後、タンパク質調製物を、4〜20%SDS-PAGEにかけた。
【0097】
図9〜12に示すように、30kD、40kD、50kD、および60kDの参照タンパク質のエオシン標識中に使用されたpHおよび温度条件は、SDS-PAGE上のバンドの染色の強度および解像度の鮮明さに、劇的に影響を及ぼした。約2A280ユニットの50kDタンパク質を、pH9.2で約7mg/mlのエオシンイソチオシアネートの最終濃度で50℃にて一晩(理想的には約4〜16時間)インキュベートした場合(図9、レーン5;図10、レーン13;図11、レーン14;および図12、レーン8を参照のこと)、および60kDタンパク質を、pH9.2〜9.7である以外は同じ条件下で標識した場合(図9、レーン13、および図12、レーン6を参照のこと)、最適な結果が得られた。しかし、これらの同じ条件下で、普通使用される染料のプロシオンレッドとのタンパク質のインキュベーションは、ラダーバンドの染色をほとんどまたは全く生じなかった(図12、レーン1〜4を参照のこと)。
【0098】
実施例9:マラカイトグリーンイソチオシアネートでタンパク質ラダーを標識するための条件の最適化
種々の色で染色した参照バンドおよびタンパク質ラダーを提供するために、本発明のタンパク質ラダーを、RBBRおよびエオシンとは異なる色の染料(例えば、マラカイトグリーン)で染色することが有利である。したがって、30kD、40kD、50kD、および60kDのタンパク質をマラカイトグリーンイソチオシアネートで標識するための最適条件を決定した。
【0099】
実施例1および2で上記のように調製した、30kD、40kD、50kD、および60kDの組換えタンパク質の種々の調製物を、実施例7におけるRBBRでのおよび実施例8におけるエオシンイソチオシアネートでの研究について使用した、タンパク質濃度、染料濃度、温度、時間、およびpHの条件下で、マラカイトグリーンイソチオシアネートとともにインキュベートした。マラカイトグリーンイソチオシアネートでの標識後、タンパク質調製物を、4〜20%SDS-PAGEにかけた。
【0100】
図13に示すように、40kD、50kD、および60kDの参照タンパク質のマラカイトグリーン標識中に使用されたpH条件は、SDS-PAGE上のバンドの染色の強度および解像度の鮮明さに、劇的に影響を及ぼした。約1〜2のA280ユニットのタンパク質を、pH9.2で約20〜30mg/mlのマラカイトグリーンイソチオシアネートの最終濃度で室温にて一晩(理想的には約16時間)インキュベートした場合、最適な結果が得られた(図13、レーン2、4、6、および8を参照のこと)。
【0101】
理解の明確性の目的のための例示および実施例によっていくらか詳細に本発明をここで完全に記載したが、本発明の範囲またはその任意の特定の実施態様に影響を及ぼさずに、広くかつ等価な範囲の条件、処方、および他のパラメータ内で本発明を改変または変化させることによって、同じことが行われ得ること、ならびにこのような改変または変化が、添付の請求の範囲内に包含されるべきことを意図することは、当業者には明らかである。
【0102】
本明細書に記載のすべての刊行物、特許、および特許出願は、本発明に関係する当業者の技術レベルを示し、そして各個々の刊行物、特許、および特許出願が、特別におよび個々に参考として援用されることが示されたのと同じ程度まで、参考として本明細書に援用される。
【0103】








【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1(配列番号1)は、pPrL2001でマルチマーを生成するために使用されるpPrL2107に由来する264bp(遺伝子32)AvaIフラグメントの図である。
【図2】図2(配列番号2)は、プラスミドptcprl-モノマーを調製するために使用される単一のAvaI部位を有する261bpフラグメントの図である。
【図3】図3(配列番号5)は、10kDタンパク質を生成するために使用される、デルタチオレドキシン配列、プラスミドpTrxfusprl10Aの図である。
【図4】図4(配列番号8)は、コンカテマーを生成するために使用されるNcoIおよびNdeI部位を有するtrxA-concat配列の図である。pTrxA-Concatと称されるこのプラスミドは、封入パートナーとして役立った。
【図5】図5(配列番号11)は、trxAtrxAコンカテマーを生成するために使用されるデルタチオレドキシン配列の図である。
【図6】図6(配列番号14)は、pTrxA-concatとの融合によって分子量ラダーを生じるために使用される138bp Dead-box融合パートナーフラグメントの図である。
【図7】図7(配列番号17)は、pTrxA-concatとの融合によって分子量ラダーを生じるために使用される15kD KpnIメチラーゼ融合パートナーフラグメントの図である。
【図8】図8は、予備染色した分子量マーカーの4つの異なるロード容量の4〜20%SDS-PAGEグラジエントゲルのカラー写真であり、エオシンイソチオシアネートで染色した50 kD参照バンド(ピンク色のバンド)およびRBBRで染色したラダーにおける残りのバンド(青色のバンド)を示す。
【図9】図9は、示したpHで、室温(レーン1〜4および9〜12)または50℃(レーン5〜8および13)にて、エオシンイソチオシアネートで一晩予備染色した50 kD(レーン1〜8)および60 kD(レーン9〜13)の参照タンパク質の4〜20%SDS-PAGEグラジエントゲルの写真である。M:分子量スタンダードラダー(2つの異なる調製物)。
【図10】図10は、示したpHで、室温(レーン1〜3、7〜9)または50℃(レーン4〜6、10〜14)にて、エオシンイソチオシアネートで一晩予備染色した40 kD(レーン1〜12)および50 kD(レーン13、14)の分子量マーカーの4〜20%SDS-PAGEグラジエントゲルの写真である。M:分子量スタンダードラダー。
【図11】図11は、示したpHで、室温(レーン1〜3、7〜9)または50℃(レーン4〜6、10〜14)にて、エオシンイソチオシアネートで一晩予備染色した50 kD分子量マーカーの4〜20%SDS-PAGEグラジエントゲルの写真である。M:分子量スタンダードラダー。
【図12】図12は、示したpHで、プロシオンレッド(Procion Red))(レーン1〜4)でまたはエオシンイソチオシアネート(レーン5〜12)で予備染色した30 kD(レーン1、5、12)、40 kD(レーン2、7、10)、50 kD(レーン3、8、11)、および60 kD(レーン4、6、9)の分子量マーカーの4〜20%SDS-PAGEグラジエントゲルの写真である。M:分子量スタンダードラダー(2つの異なる調製物)。
【図13】図13は、示したpHで、マラカイトグリーンイソチオシアネートで予備染色した30 kD(レーン1〜2)、40 kD(レーン3〜4)、50 kD(レーン5〜6)、および60 kD(レーン7〜8)の分子量マーカーの4〜20%SDS-PAGEグラジエントゲルの写真である。M:分子量スタンダードラダー(2つの異なる調製物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入体の形態でポリペプチドを作製する方法であって、
(a)封入パートナータンパク質をコードする第2の核酸分子に作動可能に連結された該ポリペプチドをコードする第1の核酸分子を含む宿主細胞を得る工程であって、それによって遺伝子融合構築物を形成する、工程;および
(b)該宿主細胞中における封入体としての該ポリペプチドの産生に好都合な条件下で、該宿主細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
(c)前記宿主細胞から前記封入体を単離する工程;および
(d)該封入体から前記ポリペプチドを放出させる工程、
をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の核酸分子が細菌細胞から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の核酸分子が、動物細胞、植物細胞、または酵母細胞から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動物細胞が哺乳動物細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の核酸分子が細菌細胞から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細菌細胞がEscherichia coli細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記封入パートナータンパク質がチオレドキシンまたは改変されたチオレドキシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記改変されたチオレドキシンが短縮型チオレドキシンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記短縮型チオレドキシンが、配列番号8に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、カルボキシ末端短縮型のEscherichia coliチオレドキシンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記宿主細胞が細菌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌細胞がEscherichia coli細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドが前記宿主に対して毒性である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、バクテリオファージT4の遺伝子32タンパク質のフラグメント、KpnIメチラーゼのフラグメント、Escherichia coli Dead-Boxタンパク質のフラグメント、またはEscherichia coliチオレドキシンタンパク質のフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記バクテリオファージT4の遺伝子32タンパク質のフラグメントが、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記KpnIメチラーゼのフラグメントが、配列番号17に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記Escherichia coli Dead-Boxタンパク質のフラグメントが、配列番号14に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記Escherichia coliチオレドキシンタンパク質のフラグメントが、配列番号11に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記遺伝子融合構築物が、pTrcprl-モノマーまたはpTrxA-concatを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
遺伝子融合構築物を含むベクターであって、該遺伝子融合構築物において、ポリペプチドをコードする第1の核酸分子が、封入パートナータンパク質をコードする第2の核酸分子に作動可能に連結され、ここで、該遺伝子融合構築物が、宿主細胞に導入され、該宿主細胞が、封入体として該ポリペプチドを産生する、ベクター。
【請求項22】
前記封入パートナータンパク質がチオレドキシンまたは改変されたチオレドキシンである、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記改変されたチオレドキシンが短縮型チオレドキシンである、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
前記短縮型チオレドキシンが、配列番号8に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる、カルボキシ末端短縮型のEscherichia coliチオレドキシンである、請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項21に記載のベクター。
【請求項26】
前記発現ベクターがpTrc99AまたはpTrxfusである、請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
請求項21に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項28】
前記宿主細胞が細菌細胞である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記細菌細胞がEscherichia coli細胞である、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
ポリペプチドを産生する方法であって、請求項27に記載の宿主細胞を、該宿主細胞における封入体としての該ポリペプチドの産生に好都合な条件下で培養する工程を包含する、方法。
【請求項31】
(b)前記宿主細胞から前記封入体を単離する工程;および
(c)該封入体から前記ポリペプチドを放出させる工程、
をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記封入体から前記ポリペプチドを放出させる工程が、化学的切断方法によって達成される、請求項2または31に記載の方法。
【請求項33】
前記封入体から前記ポリペプチドを放出させる工程が、酵素的切断方法によって達成される、請求項2または31に記載の方法。
【請求項34】
前記化学的切断方法が、前記封入体を、前記封入体からの前記ポリペプチドの放出に好都合な条件下でポリペプチド放出量の化学的切断剤と接触させる工程を包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記化学的切断剤が、臭化シアンまたはヒドロキシルアミンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記酵素的切断方法が、前記封入体を、前記封入体からの前記ポリペプチドの放出に好都合な条件下でポリペプチド放出量の酵素的切断剤と接触させる工程を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記酵素的切断剤が、第Xa因子、トロンビン、またはエンテロキナーゼである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記酵素的切断剤がエンテロキナーゼである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1または請求項30に記載の方法によって産生されるポリペプチド。
【請求項40】
プラスミドpTrcprl-モノマー。
【請求項41】
プラスミドpTrxA-concat。
【請求項42】
異なる分子量の複数のポリペプチドを含むタンパク質分子量ラダー組成物を作製する方法であって、
(a)1つ以上の核酸分子を得る工程であって、該核酸分子のそれぞれが、該分子量ラダーの異なる分子量の1つ以上のポリペプチドをコードする、工程;
(b)1つ以上の宿主細胞を1つ以上の該核酸分子で形質転換する工程;
(c)該分子量ラダーの該ポリペプチドのそれぞれの産生に好都合な条件下で、該宿主細胞を培養する工程;および
(d)該ポリペプチドのそれぞれを単離する工程、
を包含する、方法。
【請求項43】
少なくとも1つの前記核酸分子が、前記分子量ラダーの異なる分子量の複数の前記ポリペプチドをコードする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記核酸分子が、それぞれ、前記分子量ラダーの異なるポリペプチドをコードする、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記宿主細胞が、前記分子量ラダーの前記複数のポリペプチドをコードする前記核酸分子を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記宿主細胞のそれぞれが、前記分子量ラダーの異なるポリペプチドをそれぞれコードする異なる核酸分子を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記宿主細胞が、前記分子量ラダーの異なるポリペプチドをそれぞれコードする2つ以上の前記核酸分子を含む。請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、前記異なるポリペプチドのそれぞれを混合して分子量ラダーを形成する工程をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記ポリペプチドが封入体として産生される、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
前記核酸分子が、前記宿主細胞を形質転換する前にベクターに挿入される、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
1つ以上の染色されたポリペプチドを作製する方法であって、該ポリペプチドを、該ポリペプチドを1つ以上のタンパク質結合染料と実質的に完全に複合体化するために十分なインキュベーション条件下で該染料とともにインキュベーションする工程を含む、方法。
【請求項53】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、約7〜約12のpHを有する溶液中で前記1つ以上の染料とともにインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、約7〜約10のpHを有する溶液中で前記1つ以上の染料とともにインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、約8〜約10のpHを有する溶液中で前記1つ以上の染料とともにインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、前記1つ以上の染料とともに約20℃〜約90℃の温度でインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、前記1つ以上の染料とともに約40℃〜約80℃の温度でインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、前記1つ以上の染料とともに約45℃〜約70℃の温度でインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、前記1つ以上の染料とともに約50℃の温度でインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、前記1つ以上の染料とともに約4〜約200時間インキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、前記1つ以上の染料とともに約12〜約24時間インキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
前記インキュベーション条件が、前記ポリペプチドを、約12〜約18時間または一晩、前記1つ以上の染料とともにインキュベートする工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記ポリペプチドが、分子量ラダー組成物を提供する、請求項52に記載の方法。
【請求項64】
前記分子量ラダー組成物が、第1のタンパク質染色染料で染色した第1のポリペプチド、ならびに前記第1のポリペプチドとは異なり、かつ第2のタンパク質染色染料で染色した相互に異なる分子量の複数のポリペプチドを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記第1のタンパク質染色染料が、レマゾールブリリアントブルーR、エオシンイソチオシアネート、およびマラカイトグリーンイソチオシアネートからなる群より選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記第1のタンパク質染色染料が、エオシンイソチオシアネートである、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
請求項52に記載の方法によって作製される、染色されたタンパク質。
【請求項68】
請求項63に記載の方法によって作製される、染色されたタンパク質分子量ラダー組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−119000(P2008−119000A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308538(P2007−308538)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【分割の表示】特願平10−531177の分割
【原出願日】平成10年1月8日(1998.1.8)
【出願人】(502221282)インヴィトロジェン コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】