説明

タンパク質安定化溶液

【課題】微小環境におけるタンパク質の安定化溶液の提供。
【解決手段】本発明は、糖類を含む、微小環境におけるタンパク質の安定化溶液、前記安定化溶液に含有させたタンパク質が支持体に固定されたタンパク質固定化支持体、および、前記支持体を含むマイクロアレイを提供する。また、本発明は、前記支持体または前記マイクロアレイを加温することを特徴とする、支持体またはマイクロアレイ上のタンパク質を安定化する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小環境中のタンパク質を長期にわたって安定に保存するための安定化溶液に関する。特に、基板を含む支持体に固定するタンパク質の活性を長期間保持するための安定化溶液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2003年のヒトゲノム解読完了に伴って、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現プロフィールの解析が可能となり、遺伝子発現という側面から生命現象を解析しようとする試みが盛んに行われているが、それだけでは生命現象の解析に不十分であることが明らかとなってきた。例えば、細胞内でのRNAの発現量とタンパク質の発現量は必ずしも一致しないことが挙げられる。これは、タンパク質の発現制御が翻訳レベル(リン酸化、糖鎖付加等の翻訳後修飾)や分解ステップ(ユビキチン化等)でも行われていることを反映している。生体内で機能を担っているのは主としてタンパク質であり、その点からもタンパク質の解析を直接行うことが生命現象の理解には必要である。
【0003】
一般的に、核酸の検出には相補的な配列を持つ核酸が特異的に結合するという性質を利用して、核酸プローブが用いられている。しかし、タンパク質の検出には、その構造や化学的な性質が多岐にわたることから、核酸の場合ほど容易ではない。抗体にはペプチド配列そのものを認識するものから、リン酸化や糖鎖の付加等の修飾だけでなく、タンパク質の立体構造を認識するものまで多岐に渡る種類が存在する。したがって、多数のタンパク質を同時に検出できる抗体マイクロアレイは、生命現象に関与する多数のタンパク質の複雑な相互作用の結果として生じる、生命現象そのものを解明するための手段として、重要な役割を持つことが期待される。
【0004】
一方では、アレルギー診断や自己免疫疾患など、多項目の抗体を一度に検査するためのアレルゲンあるいは抗原タンパク質がマイクロアレイになっている診断チップや、創薬標的探索などでレセプターとリガンドとの結合を多項目同時に検出するためのパワースクリーニングなどの開発が着手されており、抗体とは異なるタンパク質やペプチドなどの分子が集積搭載されたマイクロアレイも、将来的な需要が期待される。
【0005】
しかしながら、現在のプロテインマイクロアレイは、マイクロアレイのスポッティング方法をはじめとして検出方法まで、まだ特定の方式が標準になっているとはいえない。さらに現存するプロテインマイクロアレイの品質は、保存安定性、検出感度、精度、定量性の点において問題がある。特に、プロテインマイクロアレイに搭載されるタンパク質の保存安定性は、測定時の検出感度、精度、定量性に多大な影響を与えるため、長期的な活性の保持が求められている。
【0006】
一般的に抗体やアレルゲン、酵素等のタンパク質の場合、タンパク質分解酵素を除去しても温度や湿度といった環境要因に強く影響されて、その構造変化をおこしたり蛋白質の乖離が生じたり、活性を失ったりする。そのため、抗体などのタンパク質を安定に保つ技術として、糖類を安定化剤として含有する方法が開示されているが(例えば、特許文献1〜4)、これらのいずれにおいても、マイクロアレイのような微小環境で、長期間、タンパク質の活性を安定に保つための技術は開示されていない。
タンパク質をマイクロアレイ状に支持体に固定すると、非常に微小な環境(10μL以下)におかれるために、さらに温度や湿度等の環境の影響を受けやすくなり、タンパク質の構造がより不安定な状態にさらされて変性し、失活する。特に、タンパク質が低濃度で存在すると、それらの影響は著しい。そのため、マイクロアレイの製造後は、品質の劣化が激しく、使用するまでの保存期間によって結果がばらつき、半年程度の保存が限度であった。こうした状況から、抗体マイクロアレイの製造は、殆どが受注生産の形をとっている。
【0007】
さらに、タンパク質活性の安定性に加えて、マイクロアレイの品質には、スポットの均一性も求められている。一般的に、支持体にタンパク質を固定する際には、スポットの中心に近い部分の濃度が高くなるか、あるいは乾燥によりスポットの周辺部位の濃度が高くなったドーナツ現象になるなど、一つのスポットの内部のタンパク質濃度が不均一になりやすい。さらに、スポットの形状が歪になることも多く、スポットごとに形状や大きさに差が生じやすい。そのため、同一条件のスポットにおいても、シグナル強度にばらつきが生じている。
これまでに、スポットの形状を均一に保つ技術としては、グリセロール及びトレハロースを含む抗体溶液を、マイクロアレイスライドへのスポッティング溶液として使用する方法が開示されている(非特許文献1)。グリセロール濃度の上昇によりスポットの形状が真円に近くなるが、抗体活性の長期安定化については評価されていない。
【0008】
また、プロテインマイクロアレイで試料中の目的タンパク質を定量的に検出する場合、測定対象試料の反応・洗浄操作のほか、検量線作成用に、既知濃度の標準試料を段階希釈して調製し、細かくブロックで仕切られたエリアごとに反応・洗浄操作が必要である。そのため操作が煩雑であり、ユーザー間はもちろんのこと、同一ユーザーであっても、アレイ間で測定結果に差が生じている。さらに、検量線作成用標準試料の調製には1時間程度を要する。従って、前述したようなタンパク質活性の長期安定性およびスポットの均一性保持に加え、操作の簡便性や時間の短縮が求められていた。
【特許文献1】再表03/068260
【特許文献2】特表2004−532262
【特許文献3】特開平10−38883
【特許文献4】特開2005−300401
【非特許文献1】Eric W. Olle et al.,Experimental and Molecular Pathology 79(2005)206−209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、微小環境におけるタンパク質の活性を長期にわたって安定に保存するような、安定化溶液を提供することを目的とする。とりわけマイクロアレイ等の微小環境において、支持体上のタンパク質の活性を長期間安定に保ち、加えてスポットの形状と内部の均一性を保つような、安定化溶液を提供することを目的とする。
また、そのような溶液を利用した、支持体上のタンパク質の安定化方法を提供することを目的とする。
さらに、そのような安定化溶液や安定化方法を利用した、操作の簡便性および迅速さを有するマイクロアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、グルコース、スクロース、ソルビトールをはじめとする糖類を安定化溶液に用いることにより、微小環境におけるタンパク質を安定化させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、糖類を含む、微小環境におけるタンパク質の安定化溶液である。
糖類としては、例えば単糖類、二糖類、三糖類、多糖類および糖アルコールならびにそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。本発明においては、糖類としてソルビトール、グルコース、スクロースおよびトレハロースからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、ソルビトール、グルコースおよびスクロースからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
また、本発明の溶液において、糖類は1〜40%w/vの濃度で存在する。
さらに、本発明の溶液は、グリセロールをさらに含むものである。この場合、グリセロールは1〜40%w/vの濃度で存在することが好ましい。
本発明において、微小環境はマイクロアレイ上の環境であることが好ましい。
さらに、本発明は、上記溶液を含有する、タンパク質固定化溶液を提供する。
さらに、本発明は上記溶液に含有させたタンパク質が支持体に固定された、タンパク質固定化支持体である。
本発明の支持体は、タンパク質が複合体を形成していることを特徴とする。複合体としては、例えば抗原−抗体複合体が挙げられる。
さらに、本発明は、上記支持体を含むマイクロアレイである。このマイクロアレイは、加温処理されたものであることが好ましい。
さらに、本発明は、以下の工程を含む、生理活性物質を検出する方法を提供する。
(a)上記支持体またはマイクロアレイに測定対象試料を接触させ、
(b)上記支持体またはマイクロアレイ上のタンパク質と上記試料中の生理活性物質とを反応させ、
(c)上記生理活性物質を検出する工程。
さらに、本発明は、上記支持体またはマイクロアレイを含有する、生理活性物質の検出キットを提供する。
さらに、本発明は、上記支持体またはマイクロアレイを加温することを特徴とする、支持体またはマイクロアレイ上のタンパク質を安定化する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の安定化溶液を用いれば、微小な環境であっても、そして、タンパク質濃度が低濃度であっても、タンパク質の活性を、長期にわたって安定に保存することができる。
本発明の安定化溶液を用いて得たマイクロアレイは、長期間保存後も、支持体上のタンパク質の残存活性が高く、スポット間のシグナル強度のばらつきが小さい。そのような利点に加え、シグナル強度が増強し、検出感度および定量性が保持される。さらに、非特異的反応が抑えられるため、判定精度が向上し、かつ再現性の高いデータを得ることができる。このような均一で長期間一定の品質を保つマイクロアレイを、大量に生産し保存しておくことが出来るため、必要時に迅速に供給することが可能である。
【0013】
また、本発明の安定化方法を用いることで、支持体またはマイクロアレイ上のタンパク質をさらに安定化することができる。
そして本発明のマイクロアレイを用いれば、実験操作が簡便になるため、アレイ間のばらつきを軽減することができ、データの信頼性が向上する。また、検量線作成用試料の調製が不要になるため、測定までの時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の安定化溶液および固定化溶液ならびに安定化方法について、詳細に説明する。
【0015】
本発明における「微小環境」とは、容積が10μl以下、または固体支持体に平面状に固定された場合、その直径が1mm以下である環境をいう。代表的な微小環境は、液滴中や、マイクロアレイのスポットである。1つのスポットは、概ね0.1〜1000nlの溶液をスポッティングすることにより形成され、直径は概ね1μm〜1mmである。
【0016】
本発明において、安定化の対象となるタンパク質は特に限定されるものではなく任意のものを使用することができる。例えば、抗体、抗原、酵素などが挙げられる。また、安定化の対象となるタンパク質は、生体組織や培養細胞より抽出されるタンパク質のほか、遺伝子組み換え体の発現産物であってもよい。さらに、上記タンパク質のうち、活性部位を含むポリペプチドも安定化の対象となる。
タンパク質の種類は複数であってもよい。タンパク質の濃度は特に限定されず、低濃度で存在する場合でも有効である。
【0017】
本発明の安定化溶液に含まれる糖類は、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、およびそれらの誘導体から1又は複数種を任意に選択することができる。
単糖類としてジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトースなどが挙げられる。二糖類は、同一種からなるホモ二糖(例えばキシロビオース、トレハロース、レバンビオース、キトビオロース、2−β−グルクロノシルグルクロン酸、マルトース等)、および異種単糖からなるヘテロ二糖(ビシアノース、リンビオース、メリビオース、スクロース、ラクトース等)のどちらを使用することもできる。三糖類は、単糖が3分子結合したものであれば特に限定されるものではなく、例えばシアリルラクトース、フコシルラクトース、ラフィノース、ウンベリフェロース、マルトトリオースなどが挙げられる。多糖類は、単糖類が10個以上脱水結合して生じたもの、あるいは加水分解により1〜2分子以上の単糖類を生じるものであれば特に限定されるものではない。また、ホモ多糖類であってもヘテロ多糖類であってもよい。糖アルコールは、アルドースやケトースが還元されて得たものであれば、特に限定されるものではない。「誘導体」とは、官能基の導入、酸化、還元、原子の置き換え、エステル化、重合等により、糖類の一部に改変がなされた化合物を意味し、例えば、デオキシ糖、アミノ糖、ウロン酸、糖酸、硫黄糖、糖エステルなどが挙げられ、糖アルコールも誘導体の一種に含まれうる。
【0018】
これらの糖類としては、例えばグルコース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、Ficoll PM400(商品名)、Dextran Sulfateが挙げられる。好ましくは、ソルビトール、グルコース、スクロースもしくはトレハロース、またはこれらの組合せを使用する。より好ましくは、ソルビトール、グルコースもしくはスクロース、またはこれらの組合せを使用する。
糖類の含有量(濃度)は、緩衝液中で少なくとも1%w/vあれば良く、好ましくは1〜40%w/v、より好ましくは5〜10%w/vである。
【0019】
さらに、前記の糖類に加えグリセロールを含むことによって、より高い効果が得られる。その場合、緩衝液中で糖類を少なくとも1%w/vおよびグリセロールを少なくとも1%w/v用いればよく、好ましくは糖類を1〜40%w/vおよびグリセロールを1〜40%w/v、より好ましくは、糖類を5〜10%w/vおよびグリセロールを5〜10%w/v用いる。
【0020】
本発明の安定化溶液を用いれば、微小環境におけるタンパク質の活性が、長期間安定である。具体的には、37℃、4週間の加速安定性試験後も80%以上の残存活性がある。このことは、4℃で2年間保存後も、80%以上の活性があることを示している。それに対し、本発明の安定化溶液を用いない場合は、同条件において活性が8%以下に低下する。
【0021】
本発明においては、このような安定化溶液を、タンパク質を支持体に固定するためのタンパク質固定化溶液として使用することが出来る。具体的には、マイクロアレイの製造において、スポッティング溶液として利用される。本発明の一態様として、本発明の安定化溶液にタンパク質を溶解し、当該タンパク質含有溶液を支持体に添加すると、溶液中のタンパク質が支持体に付着する。これにより、タンパク質が固定化される。タンパク質を付着させる方法は、特に限定されず、ピンスポットによる方法でもよく、インクジェット法であっても良い。また、本発明は、このように安定化溶液中のタンパク質が支持体に固定された、タンパク質固定化支持体をも提供する。
【0022】
支持体の種類は、特に限定されるものではなく、例えばガラス、プラスティック、樹脂、メンブレン、シリコン、石英、金属、セラミックなどが挙げられる。支持体の形状は、平面状であることが好ましいが、ビーズ状であっても良く、特に限定されるものではない。支持体表面には、ニトロセルロースをはじめとするセルロースや、アミノシランなどのシランカップリング剤など、任意のコーティングが施されていても良い。支持体は、そのものをマイクロアレイとして使用することができるが、支持体を適当なホルダーに組み込んで使用することもできる。マイクロアレイ用の支持体としては様々な種類の基板が市販されており、材質および表面の化学修飾は多様である。最適なスポッティング溶液の組成はしばしば基板の種類により異なるが、本発明の安定化溶液は、いずれの基板においても使用可能で、汎用性が高いものである。
【0023】
固定化するタンパク質の濃度は、特に限定されるものではない。本発明の安定化溶液は、タンパク質が希薄な状態であっても有効である。一般的には、タンパク質の安定性および検出感度を維持するためには0.5mg/ml程度の濃度が必要とされているが、本発明の安定化溶液を用いれば、0.1mg/ml程度であっても、活性が安定に保たれる。
【0024】
さらに、本発明では、前記安定化溶液を用いて支持体にタンパク質を固定し、その後加温することを特徴とする、支持体上のタンパク質を安定化する方法を提供する。加温処理を加えることで、支持体にタンパク質が安定に固定され、活性が加温未処理のものと比較して1.3倍以上に上昇する。加温処理は、具体的には、25〜50℃で1日以上、好ましくは37℃で1日〜1週間インキュベートすればよい。加温後は、使用直前まで4℃にて保存しておく。
【0025】
本発明の安定化溶液を用いたマイクロアレイのスポットは、その形状が真円に近く、内部のシグナル強度が均一である。そのため、同一条件のスポット間におけるスポットの大きさおよびシグナル強度のばらつきが小さく、シグナル強度のCV値は15%以下と低い。そして長期保存後(例えば2年以上保存後)も、そのCV値は低く保たれる。
【0026】
また、本発明の安定化溶液が使用されたマイクロアレイ(以下「本発明のマイクロアレイ」ともいう)は、シグナルが増強され、長期保存後もそのシグナルが減衰せず、バックグランドの上昇が抑制される。そのため、4℃で2年間保存後も、安定化溶液を用いない場合に比べて、S/N比が5倍以上の高い値を示し、初期値の75%以上の高さでS/N比が維持される。本発明の安定化溶液を用いれば、マイクロアレイの検出感度が保持され、長期間品質が安定である。
【0027】
本発明のマイクロアレイは、定量性をも有する。具体的には、試料中の目的タンパク質の濃度に比例したシグナル強度が得られる。そのため、高い精度で、検量線を基準としたタンパク質の定量が可能となる。そして、そのような定量性は長期保存後も劣化することなく、安定である。具体的には、検量線の傾度を保存前と長期保存後において算出すると、そのCV値は15%以下である。
【0028】
本発明のマイクロアレイは、1ng/mlという非常に微量なタンパク質までも検出できる。一般に、疾患の診断で測定対象としているマーカータンパク質の血中濃度は数百〜数十ng/mlであり、正常とされる基準値は数ng/mlである。このため、例えば、本発明を用いて各種疾患に関わるマーカータンパク質に対する抗体をマイクロアレイに搭載すれば、微量に存在する多種類の目的タンパク質の量を、一度に調べることができる。その検査は複合的であるがゆえに、信頼性の高い診断に繋がる。
【0029】
本発明のマイクロアレイは、非特異的反応が抑制され、判定精度が向上する。例えば、アレルゲンマイクロアレイにてアレルゲンに対する特異的IgEを検出する場合、非特異的IgEの結合が抑えられる。そのため、擬陽性の確率が減少し、高い精度でアレルギー診断が行える。
【0030】
前記安定化溶液を用いれば、タンパク質複合体における相互作用も、微小環境で長期間安定に保持できる。そこで、本発明は、前記安定化溶液中のタンパク質が複合体を形成し固定している支持体を提供する。
具体的には、タンパク質複合体(例えば抗原−抗体複合体)のスポットを有する、抗体マイクロアレイを挙げる。抗体マイクロアレイ内の、目的タンパク質(抗原)を定量するための検量線に供するスポット(以下、「検量線用標準スポット」と称する)において、基板上の抗体に予め既知濃度の目的タンパク質(抗原)を結合させておく。検量線用標準スポットの調製は、本発明の安定化溶液を用いて基板に抗体を固定し、その上に、同様の方法で抗原を固定すればよい。その後、マイクロアレイを、25〜50℃で1日以上、好ましくは37℃程度で1日〜1週間加温することが好ましい。
【0031】
このように同一スポットに異なるタンパク質を重ねる操作は、従来、物理的に可能であったが、それらの活性およびタンパク質相互作用を安定に保つことは困難であった。これに対し、本発明の安定化溶液または安定化方法を用いれば、タンパク質ごとにスポットした場合であっても、複合体の相互作用を長期間安定に保つことが出来るため、前記のような検量線用標準スポットを有するマイクロアレイを製造することができる。
このような検量線用標準スポットを有するマイクロアレイは、検量線作成用試料の調製および反応が不要であり、目的タンパク質の種類または希釈段階ごとにエリアを仕切ることなく洗浄可能であるため、操作が簡便になる。従って、異なるアレイにおける測定結果のばらつきが軽減される。また、測定時間も短縮されるため、臨床現場などで試料を迅速に目的の測定に持ち込むことができる。
【0032】
加えて、本発明のタンパク質固定化支持体またはマイクロアレイを用いた生理活性物質の検出方法を提供する。生理活性物質は、支持体に固定したタンパク質と結合するものであれば特に限定されず、例えば、タンパク質、抗体、抗原、糖質、脂質、核酸、ホルモン、アプタマー、細胞、細胞小器官などが挙げられる。その結合の態様は、上述のような抗原−抗体反応をはじめとして、タンパク質相互作用(例えば微小管とMAPSなど)や、リガンドとレセプター、レクチンと糖鎖、アプタマーとターゲットの関係により生じる結合などが挙げられるが、これに限られない。検出は、発明のタンパク質固定化支持体またはマイクロアレイに検出対象の生理活性物質を含む試料を、例えば添加又は滴下により接触させて反応を行い、任意の方法により検出することができる。検出は、具体的には、検出対象物質や結合の特性に応じて、発色、発光、蛍光、RIなどを利用すればよい。抗原−抗体反応の場合は、検出対象の抗体あるいは抗原を標識する直接法、標識された二次抗体などを使用する間接法のいずれも適用できる。本発明の検出方法は、疾患マーカータンパク質の測定やアレルギー検査の他、蛋白質機能解析、薬物動態の評価、転写因子抗体を用いた転写因子とDNAのプロモーター部位の結合解析、リン酸化、アセチル化、メチル化等の翻訳後修飾の解析など、様々な用途に利用されうる。
さらに、本発明のタンパク質固定化支持体またはマイクロアレイを含む、タンパク質等の生理活性物質検出キットをも提供する。検出試薬と共にキット化することで、本発明の検出方法をより簡便に行うことができる。本発明のキットには、反応又は測定試薬(例えば緩衝液、免疫反応を行うための標識された分子(抗体、アビジン等)、あるいは発色試薬、発光試薬または蛍光試薬など)、使用説明書などを含めることができる。
【0033】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
糖及びGlycerolの添加による抗体の安定化に関する評価
《抗体マイクロアレイ作製方法》
タンパク質を微小環境下でも長期間、安定に保つために、糖およびGlycerolなどの安定化剤を抗体含有溶液に添加し、それらの安定化効果を検証した。まず抗体マイクロアレイを作製するために、ヒトIgM、ヒトフィブリノーゲン、およびヒトα−2−マクログロブリンに対するマウスモノクローナル抗体(BMR社製)を、0.01〜1.0mg/mlの濃度でGlycerolおよび糖(Sucrose,Glucose,Trehalose,Sorbitol)を適当量(0〜10%)含有した5mM EDTA添加100mMのリン酸緩衝液(pH7.4)(以下PBSと表記)に懸濁した。
【0035】
抗体は、BioRobotics社製コンタクトマイクロアレイヤー、MicroGrid IIを用いて薄層ニトロセルロース膜コートPATHスライド(Gentel)にスポッティングした(図1A)。スポット間隔は約400μm、スポットの直径は約120μmの設定で行った。1スポットは約10nlの溶液からなる。検出用の抗体は1.0mg/mlの濃度で0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液に懸濁し、10mM 過ヨウ素酸と冷暗所で30分間反応させた。ゲルろ過精製後10mM Biotin Hydrazide(PIERCE)と室温で二時間反応させ、さらにゲルろ過精製した。標識されたビオチンの量はHABA法により測定した。
【0036】
《加速安定性試験》
抗体力価の安定性を確認するために、作製した抗体マイクロアレイは、スポッティングした翌日から37℃に0〜4週間静置して加速安定性試験を行った。反応条件を同一にするために37℃で一定期間静置後、4℃で保存し、全ての加速安定性試験が終了した後に同条件下で抗原サンプルと抗体マイクロアレイの反応を行った。
【0037】
抗体マイクロアレイの比較サンプルとして、容量1.0mlのチューブ保存の抗ヒトα−2−マクログロブリン抗体に関しても上記と同様の方法で加速安定性試験を行った。抗体濃度1.0mg/mlで、PBS、5%Glycerol添加PBS、3.5%糖(Sucrose,Glucose,Trehalose,Sorbitol)と5%Glycerol添加PBSに懸濁して、4℃あるいは37℃に4週間静置した。その後37℃加温処理前後のサンプルの抗体力価をELISAで確認した。
【0038】
《抗体マイクロアレイ反応方法》
図1Bに抗体マイクロアレイの反応様式の模式図を示した。抗体マイクロアレイは3%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBSで室温30分間ブロッキング後、100ng/mlの濃度にPBSで希釈した各抗原と室温で2時間反応した。0.1%Tween−20含有PBSで3回洗浄した後に、ブロッキング溶液で5μg/mlの濃度に稀釈したビオチン化検出用抗体と室温で2時間反応した。
【0039】
さらに0.1%Tween−20含有PBSで3回洗浄した後に、Streptavidin−Biotinylated Horseradish Peroxidase Complex(GE)と室温で1時間反応した。0.1%Tween−20含有PBSで3回洗浄した後に、ECL Detection Reagent(GE)あるいはSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(PIRCE)と反応させ、すぐに化学発光をLAS 3000(Fujifilm)のイメージングシステムを用いて撮影露光時間、撮影モード等の条件を検討しながら撮影した。撮影したイメージは画像解析ソフトであるMulti Guage V3.0(Fujifilm)を用いて解析し、シグナル強度を数値化した。
【0040】
《ELISAの方法》
(i)抗原ELISA
ELISA用96ウェルプレート(Nunc社製)にヒトα−2−マクログロブリンを1.6ng/mlから1μg/mlの濃度でコートし、3%ウシ血清アルブミン含有PBSでブロッキング後、37℃加温処理前後の抗体と100ng/mlの濃度で反応した。HRP標識抗マウスIgG抗体と反応後、HRPの発色基質であるABTSを加えて発色させ、波長405nmと450nmをマイクロプレートリーダーで測定した。
【0041】
(ii)サンドイッチELISA
ELISA用96ウェルプレートに37℃加温処理前後の抗体をそれぞれ20μg/mlの濃度でコートし、3%ウシ血清アルブミン含有PBSでブロッキングした。ヒトα−2−マクログロブリンと1.6ng/mlから1μg/mlの濃度の希釈系列で反応させ、検出用のビオチン化抗ヒトα−2−マクログロブリン抗体と反応後、Streptavidin−Biotinylated Horseradish Peroxidase Complex(GE)とさらに反応させた。検出はHRPの発色基質であるABTSを加えて発色させ、波長405nmと450nmをマイクロプレートリーダーで測定した。
【0042】
実施例1−1;糖の添加による安定化効果
抗体の活性及び構造を安定化するための安定化剤としてSucrose、Glucose、Sorbitolをスポッティング溶液に添加し、0.01,0.1,1.0mg/mlの抗体濃度でヒトα−2−マクログロブリン抗体をスポッティングした抗体マイクロアレイを作製し、37℃に加温して加速安定性試験を行った。
【0043】
図2に示したように、抗原蛋白質と反応後検出されたスポットの形状は丸く均一であった。0.1,1.0mg/mlの抗体濃度では、糖を10%添加した方がスポットの形状が真円に近く37℃加温処理4週間後のシグナルが強いため、高い糖濃度の方がスポット形状および長期保存に対する安定化効果の高いことが示された。
【0044】
抗体濃度0.01mg/mlでスポッティングしたスポットはほとんどシグナルが検出できなかったが、1.0mg/mlと0.1mg/mlは同程度の強さのシグナルが検出された。Sucroseを3.5%添加したサンプルは、37℃加温処理4週間後も抗体の活性が加温未処理の半分以上保たれた。Glucose、Sorbitolを3.5%添加したサンプルは、加温処理後も加温未処理の70%〜96%の活性が保持された(図3、表1)。
【0045】
【表1】

【0046】
糖を10%添加したサンプルでは、Sucrose、Glucose、Sorbitol全てにおいて、37℃加温処理4週間後もシグナルが加温未処理の80%以上(83〜197%)保持されており、加速安定性試験後も抗体の活性が十分保持されることが示された。
【0047】
しかしながら、糖無添加サンプルは加速安定性試験を行うとシグナルが顕著に減少し、4週間加温処理したサンプルのシグナル強度は加温未処理の7.6%以下であった。
以上の様に、抗体濃度が0.1、1.0mg/mlのときに、糖の添加により抗体活性の長期安定化効果が得られることが示された。さらに、加速安定性試験における加温処理により、抗体の活性が上昇することも示された。
【0048】
実施例1−2;安定化効果の経時的変化
糖添加による抗体活性の長期安定化効果を経時的に調べた結果を図4、表2に示した。
【0049】
【表2】

抗体濃度が1.0mg/mlのとき、糖無添加サンプルでは37℃加温処理1週間後にはほとんど抗体活性が失われてしまったのに対し、糖添加サンプルでは80%以上の活性が保持されており、特にSucrose、Sorbitolを添加したサンプルは、活性が130%以上に上昇した。3.5%の糖添加サンプルでは、37℃加温処理2週目以降から抗体活性の減少が観察されたものの、糖無添加と比較すると4週間後も十分活性を維持していることが示された(図4A)。また10%の糖添加サンプルでは37℃加温処理期間中に抗体活性の顕著な減少は観察されず、抗体活性の安定化効果が十分得られた(図4B)。従って、糖の添加により抗体の活性が長期間安定に保持されることが示された。
【0050】
実施例1−3;Glycerolの添加による効果
Glycerolの濃度が与える影響を調べるために、添加するGlycerolの濃度を0、5、10%と変化させて37℃加速安定性試験により評価した(図5〜6、表3)。図5〜6は、抗体濃度が1.0mg/mlのときの結果である。糖あるいはGlycerolの濃度が高い方がスポットの形状がより真円に近く、集束し、大きさが均一になることが示された(図5)。
【0051】
Glycerolのみを5あるいは10%添加したサンプルでは、37℃加温処理4週間後のシグナルが加温未処理の3%未満まで減少し、Glycerolだけでは微小環境下における抗体活性の長期安定化に不十分であることが示された(表3)。3.5%あるいは10%の糖に加えGlycerolを添加することにより、シグナル強度が上がることが示された(図6)。3.5%のSucrose、Glucose、あるいはSorbitolを添加したサンプルでは、Glycerolを5%添加したときに、最も加速安定性試験前後のシグナル値が高く保たれ、抗体活性の安定化効果が示された(図6A)。
【0052】
10%のSucrose、Glucose、あるいはSorbitolを添加したサンプルでは、Glycerolの存在に関わらず抗体の活性は長期にわたって安定であったが、10%のGlycerol添加により最も加速安定性試験前後のシグナル値が高く保たれ、91%以上の活性が保持された(図6B)。糖に加えGlycerolを添加することで、検出感度向上と抗体活性の長期安定化に効果があることが判った(図6B、表3)。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例1−4;糖の添加によるS/N比への影響
糖を添加したときのシグナルのS/N比に関して比較した結果を表4〜5に示した。37℃加温未処理のサンプルでは、糖を添加したものと添加しないものとでS/N比は同程度であった(表4)。加速安定性試験後、糖を添加しなかったものはS/Nが著しく低下したのに対し、糖を添加したサンプルではS/N比が75%以上保たれていた(表4、5)。したがって、糖を添加することによりシグナルの減衰およびバックグランドの上昇が抑制され、マイクロアレイの検出感度が保たれ、品質が長期間安定であることが示された。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
実施例1−5;シグナル強度のCV値に関して
同一の条件でスポッティングした9つのスポット間でのシグナル強度のばらつきを評価するために各条件におけるCV値(%)を比較した。糖およびGlycerolの添加によるシグナル強度のばらつきを、加速安定性試験前後で評価した。
結果を表6と表7に示した。加温未処理のサンプルでは、糖を添加することでCV値が低く抑えられた傾向がある。抗体濃度の高い方がCV値は低く、またGlycerol濃度の高い方が比較的CV値は低い傾向であることが示された(表6)。
【0058】
【表6】

【0059】
37℃加温処理4週間後のサンプルでは、糖を添加しないものは49%以上と非常に高いが、糖を添加したサンプルのCV値は低く保たれ、糖濃度の高い方がCV値は低いことが示された(表7)。抗体濃度が低い0.1mg/mlのサンプルでは、Glycerol濃度が高い方がCV値は低いことが示された(表7)。糖、さらにはGlycerolの添加によりスポット間でのシグナル強度のばらつきが抑制され、その均一性が長期間保たれ、精度および再現性の高い結果が得られることが示された。
【0060】
【表7】

【0061】
実施例1−6;糖の濃度による影響
糖の濃度が抗体活性安定化へ与える影響を調べるために、Glycerol濃度を5%に固定し、添加する糖濃度を0〜10%まで変化させて37℃の加速安定性試験により評価した(図7、表8)。加速安定性試験の結果、Glycerolのみ添加したサンプルの活性は1%以下と著しく低下した。いずれの糖を添加したサンプルも、抗体濃度が1.0mg/ml(図7A、C、E)でも0.1mg/ml(図7B、D、F)でも同様に糖を1%以上添加することによりシグナル強度が高くなり、抗体の活性の長期安定化効果が得られることが示された。
【0062】
添加する糖濃度は高い方が長期安定化効果は高く、抗体濃度1.0mg/mlでは5%のSucroseおよびSorbitolを添加したサンプルのシグナルは加温未処理の約90%以上を保持しており、10%の添加では100%以上の抗体活性が保持されることが示された(表8)。また、抗体濃度が低い0.1mg/mlのサンプルでも、5%の糖を添加したサンプルのシグナルは加温未処理の約72%以上を保持しており、10%の添加では80%以上の抗体活性が保持されることが示された(表8)。
【0063】
【表8】

【0064】
実施例1−7;1.0ml容量保存における抗体力価の安定性に関する評価
抗体濃度1.0mg/mlの抗体を容量1.0mlで密閉チューブに保存して37℃加速安定性試験を行った後に、抗体力価をELISAで測定した結果を表9と表10に示した。
【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
表9は、抗原をコートしたプレートを用いて37℃加温処理した抗体を検出用抗体として使用したときの力価を示しており、表10は、37℃加温処理した抗体をコートしたプレートを用いて抗原のキャプチャー能力を評価した結果を示す。なお、測定結果は、加温未処理の抗体の測定値を100%として換算した。検出抗体としての力価を評価した表9に示したように、糖無添加であっても、抗体は加温未処理のものと比較して活性が30%以上保持されており、Glycerolを添加することにより70%以上に保持されることが示された。糖を添加することにより、抗体の活性はさらに安定になり、37℃加温処理後も80%以上の活性が維持された。また、抗原のキャプチャー能力を評価した表10に示したように、糖無添加の抗体でも活性は80%以上保たれた。
【0068】
実施例1−3および1−6でGlycerolのみ添加した場合は、加速安定性試験後の抗体活性は3%以下に低下していたが、以上のように容量1.0ml以上で保存する場合には、微小環境(10μl以下)とは異なり、糖がなくても抗体活性が著しく減衰することはなく、Glycerolのみでも比較的活性が維持されることが確認された。したがって、微小環境では抗体の安定化要件が異なることがわかった。
【実施例2】
【0069】
糖の添加による検量線作成への影響に関する評価
【0070】
《検量線作成方法》
抗体マイクロアレイを用いてターゲットタンパク質の濃度を定量するためには、検量線の作成が必須である。そこで本実施例では、糖の添加が検量線作成に与える影響に関して検証した。
ヒトIgM、ヒトフィブリノーゲン抗体を1.0mg/mlの濃度で5%Glycerolおよび5%糖(Sucrose,Glucose,Trehalose,Sorbitol)を含有したPBSに懸濁し、MicroGrid IIを用いて薄層ニトロセルロース膜コートPATHスライド(Gentel)にスポッティングした(図1A)。検出抗体のビオチン化、加速安定性試験、および抗体マイクロアレイとの反応に関しては実施例1と同様の方法で行った。ただし抗原濃度は、1.0ng/ml〜1.0μg/mlの範囲の1/10希釈系列で調整した。
【0071】
実施例2−1:糖の添加による検量線作成への影響
検量線作成に関して糖の添加の影響を調べるために、5%の糖と5%のGlycerolが添加された抗体をスポッティングした抗体マイクロアレイを用いて、1.0ng/ml〜1.0μg/mlまで1/10希釈系列で調整した抗原と反応させて検量線作成を行った(図8)。その結果、糖を添加したサンプルでも、IgM、Fibrinogenいずれの抗体に関して抗原濃度に比例したシグナル強度が得られ、検量線作成を行うことが可能であった。さらに、加速安定性試験後も抗原蛋白質の検出限界が変わらず、高いシグナル強度を維持していることが示された。特に、TrehaloseとSorbitolを添加したサンプルは検量線の傾きが一定であった。また、特にSorbitolを添加したサンプルは、最も低濃度の抗原を検出することが可能であり、検出感度が高いことが示された。
【0072】
実施例2−2:糖の添加による検量線の傾きへの影響
さらに加速安定性試験によって検量線の傾きに影響が現れるかどうかを調べた結果を表11〜表12に示した。SorbitolとTrehaloseを添加したサンプルでは加速安定性試験を行ってもほとんど検量線の傾きは変化しなかった。特にSorbitolを添加したサンプルでは、傾きのCV値が10%程度であり、長期間にわたって検出感度が高い状態で抗原濃度に比例した反応が得られることが示され、微小環境における抗体の保存安定化効果が得られることが判った。
【0073】
【表11】

【0074】
【表12】

【実施例3】
【0075】
糖の添加によるタンパク質の基板への結合親和性への影響に関する評価
一般に、基板の種類と添加剤の組み合わせによって、タンパク質の基板への結合親和性は顕著に影響を受ける。そこで本実施例では、糖の添加が抗体の基板への結合親和性に与える影響を検証した。
【0076】
《抗体マイクロアレイの作製》
ヒトフィブリノーゲン、あるいはヒトα−2−マクログロブリンに対するマウスモノクローナル抗体を1.0mg/mlの濃度で3.5%または10%の糖(Sucrose,Glucose,Trehalose,Sorbitol)を含有したPBSに懸濁し、MicroGrid IIを用いて薄層ニトロセルロース膜コートPATHスライド(Gentel)、ニトロセルロースコートFASTスライド(Whatman)、あるいはアミノ基コートGAPIIスライド(Corning)にスポッティングした。
【0077】
《基板結合抗体の定量》
抗体マイクロアレイは、3%ウシ血清アルブミン含有PBSで室温30分間ブロッキング後、適当濃度にブロッキング溶液で稀釈したAnti−Mouse Ig、HRP−Linked Whole Ab Sheep(GE)と室温で1時間反応した。0.1%Tween−20含有PBSで3回洗浄した後に、ECL Detection Reagent(GE)あるいはSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(PIRCE)と反応させ、すぐに化学発光をLAS 3000(Fujifilm)のイメージングシステムを用いて撮影露光時間、撮影モード等の条件を検討しながら撮影した。撮影したイメージは画像解析ソフトであるMulti Guage V3.0を用いて解析し、シグナル強度を数値化した。
【0078】
実施例3−1;基板への抗体の結合親和性に関して
本実施例では、抗体が基板へ結合する際の結合親和性に与える糖の効果を調べた(図9A)。FASTスライドはニトロセルロースがコートされており、スポッティングした抗体はすぐにニトロセルロースに浸透するため、溶媒の影響をほとんど受けなかった。PATHスライドは薄層ニトロセルロースがコートされているが、スポッティングした抗体が浸透することはない。Solbitolを添加したサンプルで結合量が最も高く、次いでTrehalose、Glucose、Sucroseの順で結合親和性が高いことが示された。
【0079】
アミノ基がコートされているGAPIIスライドでは、PATHスライドとは逆に、Glucoseを添加したサンプルで結合量が最も高く、次いでTrehalose、Sorbitol、Sucroseの順で結合親和性が高いことが示された。以上の結果から、タンパク質の基板への結合親和性は、基板のコート方法や添加する糖の組み合わせによる影響を大きく受けないことが示され、いずれの基板にも糖を使用可能であることがわかった。
【0080】
実施例3−2;37℃加温処理による影響に関して
糖の添加による基板への抗体結合に関する影響を調べた結果を表13に示した。
【0081】
【表13】

37℃加温処理を行わなかったサンプルは、スポッティング後4℃で保存した。37℃加温処理サンプルの方が加温未処理のサンプルよりもシグナル値が高く、加温処理により基板への抗体結合量が増加することが示された。糖添加サンプルでは、37℃加温処理が1時間以下の場合では抗体結合量が糖無添加サンプルの半分程度であることが判った。37℃加温処理を1日以上行うことにより、基板への抗体結合量はほぼ飽和量に達することが示された。糖無添加サンプルでは2週間以上の加温処理後に抗体が変性し、その影響により抗マウスIgG二次抗体が反応しなくなったため、結果的に測定値(結合量)が加温未処理の20〜30%に低下した。したがって、1日以上の37℃加温処理により基板への結合親和性が増加し、抗体活性が安定状態に保たれることがわかった。
【実施例4】
【0082】
抗原マイクロアレイに関する評価
本実施例では、糖やGlycerolの添加が、抗体以外のタンパク質に与える効果を検証した。
【0083】
《抗原マイクロアレイの作製》
スギアレルゲン、ヒノキアレルゲンおよびダニアレルゲンを0、5あるいは10%Glycerolと3.5%あるいは10%の糖を含有したPBSに懸濁した。各種アレルゲンはBioRobotics社製コンタクトマイクロアレイヤー、MicroGrid IIを用いて薄層ニトロセルロース膜コートPATHスライド(Gentel)にスポッティングした。スポット間隔は約400μm、スポットの直径は約120μmの設定で行った。
【0084】
《アレルゲンマイクロアレイとの反応》
アレルゲンマイクロアレイは3%ウシ血清アルブミン含有PBSで室温30分間ブロッキング後、PBSで1/10稀釈したヒト血漿と室温で2時間反応した。0.1%Tween−20含有PBSで3回洗浄した後に、ブロッキング溶液で5μg/mlの濃度に稀釈したビオチン化抗ヒトIgE抗体と室温で2時間反応した。さらに0.1%Tween−20含有PBSで3回洗浄した後に、Streptavidin−Biotinylated Horseradish Peroxidase Complex(GE)と室温で1時間反応した。0.1%Tween−20含有PBSで3回洗浄した後に、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(PIRCE)と反応させた(図10)。
【0085】
すぐに化学発光をLAS 3000(Fujifilm)のイメージングシステムを用いて撮影露光時間、撮影モード等の条件を検討しながら撮影した。撮影したイメージは画像解析ソフトであるMulti Guage V3.0を用いて解析し、シグナル強度を数値化した。
【0086】
実施例4−1:アレルゲンマイクロアレイへの糖の影響
本実施例では、アレルゲンを糖およびGlycerolを添加した溶媒でスポッティングしアレルゲンマイクロアレイを作製し、効果に関して検証した。被検者Aと被検者Bの血漿中のアレルゲン特異IgEを検出した結果をそれぞれ図11のAとBに示した。被検者Aからはスギアレルゲンに反応する特異IgEが、被検者Bからはダニアレルゲンと若干のヒノキアレルゲンに反応する特異IgEが検出された。被検者Bはスギアレルギーがないため、被検者Bのコントロールでのみ検出されたスギアレルゲンに反応する特異IgEは非特異的反応である。
【0087】
その結果、アレルゲンにより反応性は異なるが、GlucoseやSorbitolを添加したアレルゲンマイクロアレイを用いた方がシグナル強度は高いことが示された。アレルゲンの安定化にも利用可能である他、またこれらの糖を添加することにより非特異的反応が抑えられ、判定精度が向上することが示された。
【実施例5】
【0088】
検量線用標準スポットを有する抗体マイクロアレイ
本実施例では、糖およびGlycerolの安定化効果を利用して、あらかじめ標準サンプルと反応させた検量線作成用のスポットを有する抗体アレイを作製する。
【0089】
《検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイの作製》
ヒトα−フェトプロテイン、ヒトIgM、およびヒトトランスフェリンに対する抗体を1mg/mlで3.5%Trehalose、5%Glycerol含有PBSに懸濁し、図12Aに示したレイアウトのようにMicroGrid IIを用いて薄層ニトロセルロース膜コートPATHスライド(Gentel)にスポッティングした(図12A)。作製した抗体マイクロアレイには検量線作成用のエリア5とサンプル用のエリア6があり、検量線用エリアには各抗体が5(横)×9(縦)個のスポットが、またサンプルエリアには各抗体4個(横)ずつのスポットとネガティブコントロールとしてBSA(最下段、横に4個)とポジティブコントロールとしてビオチン化BSA(各抗体の右側、縦に5スポット)が、スポット間隔を約400μm、スポットの直径を約120μmの設定でスポッティングされている。
【0090】
図12のBに示したスキームに従って作製した抗体マイクロアレイを、3%BSA含有PBSでブロッキングし、その後検量線作成用スポットを作製するために、MicroGrid IIを用いてスポッティングした抗体の上にそれぞれの抗原を100pg/ml〜100μg/mlの濃度で重ねてスポッティングする。このようにして作製した検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイは、使用直前まで4℃で保管した。その後の抗体マイクロアレイとの反応および検出抗体のビオチン化に関しては、実施例1と同様の方法で行った(図13)。
【0091】
実施例5−1:検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイの非特異的反応に関して
検量線作成用の抗原を重ね打ちする際に、抗原の基板への非特異的吸着に関してブロッキング前後で抗原のみをスポッティングして確かめた。その結果を図14のAとBに示した。ブロッキングせずに抗原をスポットすると、図14のAに示したように抗原由来のスポットが検出されるが、ブロッキング後に抗原をスポットした場合にはシグナルが全く検出されない(図14B)ことが示された。したがってブロッキング後の抗原の基板への非特異的吸着は生じないことが確認された。
【0092】
実施例5−2:検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイの非特異的反応に関して
検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイを抗原サンプルと反応させた結果を図14のCに示した。検量線用エリアのスポットのシグナルは各抗体エリアの下側が強く、抗原濃度比例的に上側に向かって弱くなっていることが分かる。それぞれの抗原に対する検量線を作成した結果を図14のD〜Fに示した。ヒトα−フェトプロテイン、ヒトIgM、およびヒトトランスフェリン全ての抗原に対して、抗原濃度比例的にシグナル強度は変化し、検量線が作成可能であることが示された。
【0093】
またサンプルエリアの左上は肝がん細胞抽出液と反応した結果であり、最上段のヒトα−フェトプロテインおよび3段目のヒトトランスフェリンのシグナルが検出された。また、サンプルエリアの右上、左下はそれぞれ精製したIgMおよびトランスフェリンと反応した結果であり、それぞれに対応したシグナルが得られた。さらに、サンプルエリアの右下は正常なヒトの血漿と反応させた結果であり、IgM(2段目)とトランスフェリン(3段目)のシグナルが得られ、試料中の含有量を測定することができた。このように、検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイは、定量性を持ちつつ、サンプル中の各抗原との特異的な反応を得られることが示された。
【0094】
以上の結果は、糖とグリセロールの安定化効果により検量線を作成するためのスポットを構成している抗原−抗体コンプレックスをも安定に保つことが可能であることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明により、微小環境であっても、抗体をはじめとするタンパク質を長期間安定に保存可能である。また、従来のものに比して均一で品質の優れたマイクロアレイを製造でき、かつ、そのようなアレイを大量に生産することができる。大量生産が可能になるため、同一ロットの提供が可能になり、精度・再現性の高いデータ取得が可能になる。必要に応じた迅速な供給が実現するため、ヒトを始めとする生体内で変動し、変質する多くの生体物質の動態に関する、多項目の同時解析が盛んに行われることが見込まれる。
【0096】
実際の臨床現場では様々な疾患マーカータンパク質を同定する方法として、ELISAやRIA、ECLIAといった抗体を用いた検出方法に依存している臨床検査が多い。例えば癌の臨床検査に用いられる腫瘍マーカータンパク質は40以上あり、ほとんどの検査が血清中に含まれる抗原を抗体により検出および定量する方法がとられている。検査には血清又は血しょうを0.2〜10ml程使用するため、患者から採取する血液は数十mlが必要とされる。腫瘍マーカータンパク質のほとんどは組織特異性がないため、腫瘍組織を同定するためには度重なる検査が必要であり、それゆえ患者への負担、検査時間の長期化につながっている。
【0097】
対して、プロテインマイクロアレイでは10〜50μlの血しょうで検査が可能であり、必要な血液量は1mlに満たない。本発明のようにプロテインマイクロアレイの品質が向上し、現存する腫瘍マーカーのほとんどを網羅するような抗体を搭載することで、少量の血液検査だけで腫瘍組織を発見可能な検査方法を確立できるようになり、検査の容易さゆえに普及し、早期発見、早期治療に貢献できると期待される。
【0098】
本発明は、以上のような病態の判断における測定の他、学習効果の測定、老化の測定、個体差の測定など、医療や農業をはじめとする、生体の動態を測定し評価することで成り立つ、多くの産業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、抗体マイクロアレイのレイアウトと反応様式を示した模式図である。A:抗体マイクロアレイのレイアウトを示す。B:抗体マイクロアレイの反応様式の模式図を示す。1:抗原の添加 2:抗原―抗体の結合 3:ビオチン化抗体添加 4:抗原―ビオチン化抗体の結合 5:ビオチン−酵素架橋ストレプトアビジンの結合、および基質の添加による発光
【図2】図2は、抗体濃度0.01〜1.0mg/mlで糖をスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った際の各スポットを示す。
【図3】図3は、0.01〜1.0mg/ml濃度の抗体を糖とGlycerolを添加したスポッティング溶液でスポッティングし、加速安定性試験を行った結果を示す。A:0.01〜1.0mg/ml濃度の抗体を3.5%の糖添加スポッティング溶液でスポッティングし、加速安定性試験を行った際のシグナル強度を示したグラフである。B:0.01〜1.0mg/ml濃度の抗体を10%の糖添加スポッティング溶液でスポッティングし、加速安定性試験を行った際のシグナル強度を示したグラフである。
【図4】図4は、抗体濃度1.0mg/mlで糖をスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った際のシグナル強度の経時的変化を示す。A:3.5%の糖をスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った際のシグナル強度の経時的変化を示したグラフである。B:10%の糖をスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った際のシグナル強度の経時的変化を示したグラフである。
【図5】図5は、抗体濃度1.0mg/mlで0、5、10%のGlycerolをスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った際の各スポットを示す。
【図6】図6は、抗体濃度1.0mg/mlで様々な濃度のGlycerolをスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った結果を示す。A:3.5%の糖をスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った際のシグナル強度を示したグラフである。B:10%の糖をスポッティング溶液に添加し、加速安定性試験を行った際のシグナル強度を示したグラフである。
【図7】図7は、抗体濃度1.0および0.1mg/mlで0〜10%の糖と5%のGlycerolを添加し加速安定性試験を行った結果を示す。A:抗体濃度1.0mg/mlで0〜10%のSorbitolをスポッティング溶液に添加した結果を示す。B:抗体濃度0.1mg/mlで0〜10%のSorbitolをスポッティング溶液に添加した結果を示す。C:抗体濃度1.0mg/mlで0〜10%のSucroseをスポッティング溶液に添加した結果を示す。D:抗体濃度0.1mg/mlで0〜10%のSucroseをスポッティング溶液に添加した結果を示す。E:抗体濃度1.0mg/mlで0〜10%のGlucoseをスポッティング溶液に添加した結果を示す。F:抗体濃度0.1mg/mlで0〜10%のGlucoseをスポッティング溶液に添加した結果を示す。
【図8】図8は5%Glycerolおよび3.5%の糖を添加したスポッティング溶液で作製したIgM抗体とFibrinogen抗体の抗体マイクロアレイを用いて加速安定性試験を行った際の検量線を示す。
【図9】図9は、3.5%および10%の糖をスポッティング溶液に添加したスポッティング溶液を用いて基板にスポッティングし、Sucroseの測定値を100%として基板に結合した抗体量を換算したグラフを示す。
【図10】図10はアレルゲンマイクロアレイの反応様式の模式図である。1:酵素の基質 2:発光 3:酵素架橋ストレプトアビジン 4:ビオチン化抗体 5:血漿中のIgE抗体 6:アレルゲン
【図11】図11はアレルゲンマイクロアレイを用いた実験結果を示す。A:アレルゲンマイクロアレイを用いて被検者Aの血漿中のアレルゲン特異IgEを測定した結果を示す。B:アレルゲンマイクロアレイを用いて被検者Bの血漿中のアレルゲン特異IgEを測定した結果を示す。
【図12】図12は検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイの作製方法を簡単に示した図である。A:スライドガラス上のレイアウト図を示す。1:α−フェトプロテイン抗体スポッティングエリア 2:IgM抗体スポッティングエリア 3:トランスフェリン抗体スポッティングエリア 4:ネガティブコントロール 5:検量線作成用エリア 6:サンプル反応用エリア B:検量線用標準スポットの作製方法を示す。1:検量線作成用エリア 2:サンプル反応用エリア 3:キャプチャー抗体のスポット 4:標準抗原の添加
【図13】図13は検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイの反応および検出方法を簡単に示した図である。1:検量線作成用エリア 2:サンプル反応用エリア 3:サンプルの添加 4:ビオチン化抗体の添加 5:サンプル中の抗原―抗体の結合 6:抗原―ビオチン化抗体の結合 7:基質の添加による発光 8:ビオチン−酵素架橋ストレプトアビジンの結合
【図14】図14は検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイを用いた結果を示した図である。A:ブロッキング前に抗原をスポッティングして検出した結果を示す。B:ブロッキング後に抗原をスポッティングして検出した結果を示す。C:検量線用標準スポット付随抗体マイクロアレイと抗原を反応した結果を示す。D:ヒトα−フェトプロテインに対する検量線を示す。E:ヒトIgMに対する検量線を示す。F:ヒトトランスフェリンに対する検量線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類を含む、微小環境におけるタンパク質の安定化溶液。
【請求項2】
糖類が、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類および糖アルコールならびにそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
糖類が、ソルビトール、グルコース、スクロースおよびトレハロースからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
糖類が、ソルビトール、グルコースおよびスクロースからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の溶液。
【請求項5】
糖類が、1〜40%w/vの濃度で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項6】
グリセロールをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項7】
グリセロールが、1〜40%w/vの濃度で存在する、請求項6に記載の溶液。
【請求項8】
微小環境がマイクロアレイ上の環境である請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の溶液を含有する、タンパク質固定化溶液。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の溶液に含有させたタンパク質が支持体に固定された、タンパク質固定化支持体。
【請求項11】
タンパク質が複合体を形成していることを特徴とする、請求項10に記載の支持体。
【請求項12】
複合体が、抗原―抗体複合体であることを特徴とする、請求項11に記載の支持体。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の支持体を含むマイクロアレイ。
【請求項14】
加温処理されたことを特徴とする、請求項13に記載のマイクロアレイ。
【請求項15】
以下の工程:
(a)請求項10〜12のいずれか1項に記載の支持体または請求項13〜14のいずれか1項に記載のマイクロアレイに試料を接触させ、
(b)前記支持体またはマイクロアレイ上のタンパク質と前記試料中の生理活性物質とを反応させ、
(c)前記生理活性物質を検出する工程、
を含む、生理活性物質を検出する方法。
【請求項16】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の支持体または請求項13〜14のいずれか1項に記載のマイクロアレイを含有する、生理活性物質の検出キット。
【請求項17】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の支持体または請求項13に記載のマイクロアレイを加温することを特徴とする、支持体またはマイクロアレイ上のタンパク質を安定化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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