ダイクッション装置とそのクッション力制御方法
【課題】スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができるダイクッション装置とそのクッション力制御方法を提供する。
【解決手段】クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構10と、クッション機構を制御する予測制御装置20とを備え、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構10を制御する。
【解決手段】クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構10と、クッション機構を制御する予測制御装置20とを備え、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構10を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械用のダイクッション装置とそのクッション力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス機械では、スライドを機械的に昇降し、スライドの下降時にスライドの下面に固定された上金型と、スライドの下方に配置された下金型との間に被加工物(ワーク)を挟み込んでプレス加工を行う。
ダイクッション装置は、プレス機械においてプレス加工時に上金型とブランクホルダの間にワークを挟み、ワークにしわ押さえ力(クッション力)を付加する装置である。
【0003】
従来から、プレス機械のダイクッション装置として、種々の方式のものが提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0004】
【特許文献1】特許第3591807号公報、「油圧ダイクッション装置の制御方法」
【特許文献2】特開2007−7716号公報、「ダイクッション機構の衝突判定装置および衝突判定システム」
【特許文献3】特開2007−222926号公報、「ダイクッション荷重制御装置およびクッション荷重制御装置を備えたプレス機械」
【特許文献4】特開2008−149346号公報、「プレス機械のダイクッション装置及びダイクッションの動作制御方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来のダイクッション装置のクッション力の応答特性図である。この図において、上金型が下降し下金型と上金型との間で被加工材(ワーク)のプレス成形を開始した瞬間を「スライド接触時」という。
この図において(A)はクッション力が必要時(スライド接触時)に高速応答する方式、(B)はクッション力がスライド接触前から圧を張って待機する方式を示している。ダイクッション装置のクッション力は、(A)ではクッション力が高速応答すること、(B)ではスライド接触時にクッション力がオーバーシュートしない(過大にならない)ことが望まれる。
【0006】
従来のダイクッション装置の機構は、(1)エアクッション方式、(2)電動モータ方式、(3)サーボ弁方式、(4)油圧ポンプ方式に大別することができる。
【0007】
エアクッション方式のクッション力制御は、スライド接触前に圧を張って待機しているため、スライド接触後の加圧力に優れているが、圧力制御は困難である。
電動モータ方式のクッション力制御は応答性が良いが、機構に負荷が大きく、寿命に問題がある。また電動モータ方式のクッション力制御は応答性を重視すると、クッション力のオーバーシュートが過大となる傾向があった。
サーボ弁方式や油圧ポンプ方式のクッション力制御は圧力制御が可能であり、エアクッションのように圧を張って待機することができるが、接触後のクッション力のオーバーシュートが過大になり、正確な圧力制御を行う事が困難であった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができるダイクッション装置とそのクッション力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のクッション装置であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測してクッション機構を制御する予測制御装置とを備える、ことを特徴とするプレス機械のダイクッション装置が提供される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記予測制御装置は、スライド位置を予測するスライドモデルと、
スライド位置から前記予測クッション力を予測するクッションモデルと、
前記予測時間経過後に前記予測クッション力になる指令値をクッション機構に出力するレギュレータとを有する。
【0011】
また、前記予測制御装置は、前記指令値を所定のリミット値以下に制限するリミッタを有し、該リミッタの出力値によりクッション機構を制御する。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するサーボ弁とからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びサーボ弁のスプール位置から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、サーボ弁指令値を計算する。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するポンプモータとからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びポンプモータの回転数から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するボールネジと、
該ボールネジを回転駆動するサーボモータとからなり、
前記クッションモデルは、ボールネジのストローク位置及びサーボモータの回転数およびトルク値から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する。
【0015】
また本発明によれば、下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のダイクッション装置のクッション力制御方法であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
クッション機構を制御する予測制御装置とを備え、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御する、ことを特徴とするダイクッション装置のクッション力制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の装置及び方法によれば、予測制御装置により、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御するので、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができる。
【0017】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、スライドモデルにより、例えばスライドのメインギア角度からスライド位置を予測することができる。
また、クッションモデルにより、スライド位置から予測クッション力を計算することができる。
また、レギュレータにより、予測時間経過後に予測クッション力になる指令値をクッション機構に出力することができる。
従って、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御することができる。
【0018】
従って、クッション機構により、予測時間経過後にクッション機構は予測クッション力を発生するので、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができる。
【0019】
さらに、リミッタにより、前記指令値を所定のリミット値以下に制限し、該リミッタの出力値によりクッション機構を制御するので、クッション力の最大上昇値を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のダイクッション装置のクッション力の応答特性図である。
【図2】本発明によるダイクッション装置の第1実施形態図である。
【図3】図2のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図4】第1実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【図5】第1実施形態のダイクッション装置の作動説明図である。
【図6】本発明によるダイクッション装置の第2実施形態図である。
【図7】図6のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図8】第2実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【図9】本発明によるダイクッション装置の第3実施形態図である。
【図10】図9のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図11】第3実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【図12】本発明によるダイクッション装置の第4実施形態図である。
【図13】図12のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図14】第4実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
図2は、本発明によるダイクッション装置の第1実施形態図である。
プレス装置1は、クッションパッド2の上面にクッションピン3を介して支持された下金型4に対し、上下動するスライド5の下面に固定された上金型6を下降させ、下金型4と上金型6との間で被加工材(ワーク)7を加圧して所定の形状にプレス成形するようになっている。
【0023】
図2において、本発明のダイクッション装置10は、上金型6および下金型4によりワーク7をプレス成形する際に、クッションパッド2又はクッションピン3により、上金型6との間でワーク下面の周縁部を支持してワーク7のしわ押さえを行う。
すなわち、本発明のダイクッション装置10は、プレス機械の上金型6とクッションパッド2又はクッションピン3の間にワーク7を挟み、クッションパッド2に上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるようになっている。
【0024】
図2において、本発明のダイクッション装置は、クッション機構10および予測制御装置20を備える。
【0025】
クッション機構10は、クッションパッド2に上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させる装置である。クッション機構10は、後述する例では、(1)油圧シリンダ+サーボ弁、(2)油圧シリンダ+ポンプモータ(3)ボールネジ+サーボモータであるが、本発明はこれらの機構に限定されず、その他の機構であってもよい。
【0026】
予測制御装置20は、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測してクッション機構10を制御する。
【0027】
また、クッションパッド2の位置を検出するクッション位置センサ8と、スライド5を検出するスライド位置センサ9が設けられ、その検出値はそれぞれ予測制御装置20に入力される。
スライド位置センサ9は後述する例では、プレス装置1のメインギア角度を検出する角度センサであるが、本発明は角度センサに限定されず、その他のセンサであってもよい。また、クッション位置センサ8は、この例では、クッションパッド2の位置を検出するように配置されているが、その他の構成でもよい。
【0028】
図3は、図2の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。予測制御装置20は、例えばコンピュータ(PC)であり、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26は、コンピュータにインストールされたコンピュータプログラムである。なお、本発明はこの構成に限定されず、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26をそれぞれ別個の制御コントローラ又は一体の制御コントローラとして構成してもよい。
なお、コンピュータの代わりにプログラマブルロジックコントローラ(PLC)やその他の制御機器を用いても良い。
【0029】
スライドモデル21は、スライド位置センサ9(例えばメインギア角度の角度センサ)の検出値からスライド位置xを予測する。
【0030】
クッションモデル22は、スライド位置xから所定の予測時間経過後の予測クッション力Fcを予測する。
【0031】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力になる指令値Icをクッション機構に出力する。
【0032】
リミッタ26は、前記指令値Icを所定のリミット値以下に制限する。
すなわち、指令値Icがリミット値以下の場合には、指令値Icをそのままクッション機構10に出力し、指令値Icが所定のリミット値を超える場合には、リミット値を指令値としてクッション機構10に出力する。
【0033】
図4は、第1実施形態のダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S1〜S4の各ステップ(行程)からなる。
【0034】
ステップS1では、スライド位置センサ9(例えばメインギア角度の角度センサ)の検出値から所定の経過時間t経過後のスライド位置xを予測する。
ステップS2では、スライド位置xから所定の予測時間tの経過後の予測クッション力Fcを予測する。
ステップS3では、予測時間tの経過後に予測クッション力Fcになる指令値Icをクッション機構10に出力する。
ステップS4では、指令値Icがリミット値以下の場合には、指令値Icをクッション機構10に出力し、指令値Icがリミット値を超える場合には、リミット値を指令値Icとしてクッション機構10に出力する。
【0035】
図5は、従来と本発明のダイクッション装置の作動説明図である。この図において、(A)は従来例、(B)は本発明の例である。なお、各図において、横軸は経過時間である。
【0036】
予測制御を行わない従来例では、図5(A)に示すように、上金型が下降し下金型4と上金型6との間で被加工材(ワーク)7のプレス成形を開始した瞬間(以下、「スライド接触時」という)までは指令値は一定でありクッション力は所定の設定値を維持するが、スライド接触によりクッション力が急増してオーバーシュートすると、これを抑えるように指令値が急減し、次いで指令値の急減によりクッション力が下がり過ぎると、これを回復するように指令値が急増する。従って、予測制御を行わない従来例では、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートは回避が困難であった。
これに対して予測制御を行う本発明では、図5(B)に示すように、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0037】
図6は、本発明によるダイクッション装置の第2実施形態図である。
この図において、本発明のクッション機構10は、油圧シリンダ12、サーボ弁14、および予測制御装置20を備える。
【0038】
油圧シリンダ12は、クッションパッド2を上下動するピストンロッド11を有する。
この例で、油圧シリンダ12は、上向きかつ鉛直に配置され、ピストンロッド11の先端(上端)にクッションパッド2が固定され一体的に昇降するようになっている。
【0039】
また図6において、油圧シリンダ12のロッド側(上側)とピストン側(下側)にはそれぞれ圧力計15,16が設けられ、油圧シリンダ12の上室圧Pu(t0)と下室圧Pd(t0)を検出する。この検出値Pu(t0),Pd(t0)はそれぞれ予測制御装置20及び図7のレギュレータ24に入力される。なお、以下()内のt0は、現在の値を示す。
以下、油圧シリンダ12のシリンダ位置x(t0)を単に「シリンダ位置」という。
【0040】
サーボ弁14は、油圧シリンダ12と油圧ユニット13を連結する油圧配管の途中に設けられた流路方向を切換え可能なサーボ弁であり、油圧シリンダ12に油圧ユニット13から作動油を供給し、かつ油圧ユニット13に作動油を排出する。
サーボ弁14から油圧シリンダ12に供給される作動油の流量Qは、サーボ弁の開度Isv(t0)に比例する。この開度Isv(t0)は予測制御装置20に入力される。開度Isv(t0)は、例えば−100〜100%である。
【0041】
予測制御装置20は、所定の予測時間tの経過後のサーボ弁位置Isv(t)を予測してサーボ弁14を制御する。ここで予測時間tは、制御装置のスキャンタイムの1倍から10倍程度の時間(例えば、0.1sec)である。
予測制御装置20から出力されるサーボ弁指令値Icmdは、例えば−100〜100%であり、サーボ弁の開度Isvはサーボ弁指令値Icmdに応じてその位置まで移動する。
【0042】
図7は、図6の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。この構成は第1実施形態と同様である。
【0043】
スライドモデル21は、スライド位置センサ9(メインギア角度の角度センサ)の検出値から現在のスライド位置xslide(t0)と予測時間経過後のスライド位置xslide(t)を予測する。スライドの位置変化量Δxslideは、Δxslide=xslide(t)−xslide(t0)である。
【0044】
クッションモデル22は、スライド位置xslide(t0)とxslide(t)から所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測する。
【0045】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力Fc(t)になる指令値Icmdをクッション機構10に出力する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0046】
図7のクッションモデル22において、予測時間t経過後のサーボ弁位置Isv(t)、下室シリンダ力Fd(t)、上室シリンダ力Fu(t)、及びシリンダ移動量Δx(t)は、数1の式(1)〜(4)で表せる。
ここで、式(1)はサーボ弁位置Isv(t)の予測式、式(2)(3)は下室シリンダ力Fd(t)と上室シリンダ力Fu(t)、式(4)はシリンダ力Fc(t)、式(5)はシリンダ移動量Δx(t)をそれぞれ表す式である。
また、Kqdは下室シリンダの体積弾性率、Kquは上室シリンダの体積弾性率、Ksはサーボ弁の流量特性ゲイン、Sdは下室受圧面積、Suは上室受圧面積、Δxslideは、スライドの位置変化量、Mcはクッション自重、τはサーボ系一次遅れの時定数、Ksvはサーボ弁一次遅れモデルのゲイン、t0は現在時刻、tは予測未来時間である。
【0047】
【数1】
【0048】
図8は、本発明によるダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S11〜S16の各ステップ(行程)からなる。
【0049】
ステップS11では、スライドモデル22にメインギア角度を入力し、スライドの予測位置xslide(t)を計算する。ここで、スライド位置xslide(t0)は、近似式(メインギア角度の多項式)で計算する。またスライドの予測位置は、現在の角速度から未来の角度を求めて、近似的に使用する。
ステップS12では、式(4)からサーボ弁スプールの予測位置Isv(t)を計算する。
ステップS13では、シリンダ力の予測値Fc(t)(予測クッション力)を計算する。サーボ弁スプール予測位置Isv(t)、スライド予測位置xslide(t)、および各センサ現在値を式(1)(2)に代入する。その結果を式(3)に入力し、シリンダ力の予測値Fc(t)を求める。
ステップS14では、シリンダ力予測値Fc(t)の関数に予測時間tを代入する。予測時間tは、スキャンタイムの1〜10倍程度である。
ステップS15では、シリンダ力の予測値Fc(t)=目標値となるようにサーボ弁指令値Icmdを計算する。
ステップS16では、サーボ弁指令値Icmdがリミット値を超える場合は、リミット値を出力する。
【0050】
上述した第2実施形態の装置及び方法によれば、クッションモデル22により、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びサーボ弁のスプール位置から前記予測クッション力Fc(t)を計算し、レギュレータ24により、予測時間経過後に前記予測クッション力Fc(t)となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、サーボ弁指令値Icmdを計算するので、所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測することができる。
従って、第1実施形態と同様に、予測制御を行う本発明では、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0051】
図9は、本発明によるダイクッション装置の第3実施形態図である。
この図において、本発明のクッション機構10は、油圧シリンダ12、ポンプモータ32、および予測制御装置20を備える。
【0052】
ポンプモータ32は、油圧シリンダ12と油圧ユニット13を連結する油圧配管の途中に設けられた流路方向を切換え可能なポンプモータであり、油圧シリンダ12に油圧ユニット13から作動油を供給し、かつ油圧ユニット13に作動油を排出する。
ポンプモータ32から油圧シリンダ12に供給される作動油の流量Qは、ポンプモータ32の回転数Rvsvに比例する。この回転数Rvsv(t0)は予測制御装置20に入力される。
その他の構成は、図6と同様である。
【0053】
図10は、図9の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。この構成は第1、2実施形態と同様である。
【0054】
クッションモデル22は、スライド位置xslide(t0)とRvsv(t0)から所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測する。
【0055】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力Fc(t)になる回転数指令値Rvcmdをクッション機構10に出力する。なお、ここでは回転数指令値RVcmdはポンプモータに対する回転数指令値である。
その他の構成は、図7と同様である。
【0056】
図9、図10において、予測時間t経過後の下室シリンダ力Fd(t)、上室シリンダ力Fu(t)、シリンダ力Fc(t)、及びモータ回転数Rvsv(t)は、数2の式(5)〜(8)で表せる。
ここで、式(5)(6)は下室シリンダ力Fd(t)と上室シリンダ力Fu(t)、式(7)はシリンダ力Fc(t)、式(8)はモータ回転数Rvsv(t)をそれぞれ表す式である。
また、Smはポンプモータの流量特性ゲイン、τはモータ一次遅れの時定数、Ksvはモータ一次遅れモデルのゲインである。
その他は、実施形態1,2と同様である。
【0057】
【数2】
【0058】
図11は、本発明によるダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S21〜S26の各ステップ(行程)からなる。
【0059】
ステップS21は、ステップS11と同一である。
ステップS22では、式(8)からポンプモータの予測回転数Rvsv(t)を計算する。
ステップS23では、シリンダ力の予測値(予測クッション力)Fc(t)を計算する。予測回転数Rvsv(t)、スライド予測位置xslide(t)、および各センサ現在値を式(5)(6)に代入する。その結果を式(7)に入力し、シリンダ力の予測値Fc(t)を求める。
ステップ24では、シリンダ力予測値Fc(t)の関数に予測時間tを代入する。予測時間tは、スキャンタイムの1〜10倍程度である。
ステップ25では、シリンダ力の予測値Fc(t)=目標値となるように回転数指令値Rvcmdを計算する。
ステップ26では、回転数指令値Rvcmdがリミット値を超える場合は、リミット値を出力する。
【0060】
上述した第3実施形態の装置及び方法によれば、クッションモデル22により、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びポンプモータの回転数から前記予測クッション力Fc(t)を計算し、レギュレータ24により、予測時間経過後に予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値Rvcmdを計算するので、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測することができる。
従って、第1、2実施形態と同様に、予測制御を行う本発明では、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0061】
図12は、本発明によるダイクッション装置の第4実施形態図である。
この図において、本発明のクッション機構10は、ボールネジ34、サーボモータ36、および予測制御装置20を備える。
【0062】
ボールネジ34は、クッションパッド2を上下動する。
この例で、ボールネジ34は、上向きかつ鉛直に配置され、クッションパッド2の下方に設けられたボールナット(図示せず)と螺合し、ボールネジ34の回転によりクッションパッド2を昇降するようになっている。なお、この例では、2本のボールネジ34と2台のサーボモータ36を同期させてクッションパッド2の水平を維持するようになっている。しかし、本発明はこの構成に限定させず、クッションパッド2の水平保持ガイドを別に設けて、ボールネジ34とサーボモータ36をそれぞれ1台にしてもよい。
【0063】
サーボモータ36は、ボールネジ32を回転駆動する。クッションパッド2の移動量はサーボモータ36の回転数Rvsvに比例する。この回転数Rvsv(t0)は予測制御装置20に入力される。
その他の構成は、図9と同様である。
【0064】
図13は、図12の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。この構成は第1〜3実施形態と同様である。
【0065】
クッションモデル22は、スライド位置xslide(t0)とサーボモータ36の回転数Rvsv(t0)から所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測する。
【0066】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力Fc(t)になる回転数指令値Rvcmdをクッション機構10に出力する。なお、ここでは回転数指令値RVcmdはサーボモータに対する回転数指令値である。
その他の構成は、図10と同様である。
【0067】
図13のクッションモデル22において、予測時間t経過後の下室シリンダ力Fd(t)、上室シリンダ力Fu(t)、シリンダ力Fc(t)、及びモータ回転数Rvsv(t)は、数3の式(9)〜(12)で表せる。
ここで、式(9)(10)は、下室シリンダ力Fd(t)と上室シリンダ力Fu(t)、式(11)はシリンダ力Fc(t)、式(12)はモータ回転数Rvsv(t)をそれぞれ表す式である。
また、Kcはクッション機構のバネ定数、Ksは回転数→クッションストロークの変換ゲインである。
その他は、実施形態1〜3と同様である。
【0068】
【数3】
【0069】
図14は、本発明によるダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S31〜S36の各ステップ(行程)からなる。
【0070】
ステップS31は、ステップS11、S21と同一である。
ステップS32では、式(12)からサーボモータの予測回転数Rvsv(t)を計算する。
ステップS33では、クッション力の予測値(予測クッション力)Fc(t)を計算する。予測回転数Rvsv(t)、スライド予測位置xslide(t)、および各センサ現在値を式(9)(10)に代入する。その結果を式(11)に入力し、シリンダ力の予測値Fc(t)を求める。
ステップ34では、クッション力予測値Fc(t)の関数に予測時間tを代入する。予測時間tは、スキャンタイムの1〜10倍程度である。
ステップ35では、クッション力の予測値Fc(t)=目標値となるように回転数指令値Rvcmdを計算する。
ステップ36では、回転数指令値Rvcmdがリミット値を超える場合は、リミット値を出力する。
【0071】
上述した第4実施形態の装置及び方法によれば、クッションモデル21により、ボールネジのストローク位置及びサーボモータの回転数およびトルク値から前記予測クッション力Fc(t)を計算し、レギュレータ24により、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値Rvcmdを計算するので、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測することができる。
従って、第1〜3実施形態と同様に、予測制御を行う本発明では、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0072】
上記本発明の装置及び方法によれば、予測制御装置により、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御するので、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0074】
1 プレス装置、2 クッションパッド、3 クッションピン、
4 下金型、5 スライド、6 上金型、7 被加工材(ワーク)、
8 クッション位置センサ、9 スライド位置センサ、
10 クッション機構、11 ピストンロッド、
12 油圧シリンダ、13 油圧ユニット、14 サーボ弁、
15,16 圧力計、17 位置検出器、
20 予測制御装置、21 スライドモデル、
22 クッションモデル、24 レギュレータ、26 リミッタ、
32 ポンプモータ、34 ボールネジ、36 サーボモータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械用のダイクッション装置とそのクッション力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス機械では、スライドを機械的に昇降し、スライドの下降時にスライドの下面に固定された上金型と、スライドの下方に配置された下金型との間に被加工物(ワーク)を挟み込んでプレス加工を行う。
ダイクッション装置は、プレス機械においてプレス加工時に上金型とブランクホルダの間にワークを挟み、ワークにしわ押さえ力(クッション力)を付加する装置である。
【0003】
従来から、プレス機械のダイクッション装置として、種々の方式のものが提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0004】
【特許文献1】特許第3591807号公報、「油圧ダイクッション装置の制御方法」
【特許文献2】特開2007−7716号公報、「ダイクッション機構の衝突判定装置および衝突判定システム」
【特許文献3】特開2007−222926号公報、「ダイクッション荷重制御装置およびクッション荷重制御装置を備えたプレス機械」
【特許文献4】特開2008−149346号公報、「プレス機械のダイクッション装置及びダイクッションの動作制御方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来のダイクッション装置のクッション力の応答特性図である。この図において、上金型が下降し下金型と上金型との間で被加工材(ワーク)のプレス成形を開始した瞬間を「スライド接触時」という。
この図において(A)はクッション力が必要時(スライド接触時)に高速応答する方式、(B)はクッション力がスライド接触前から圧を張って待機する方式を示している。ダイクッション装置のクッション力は、(A)ではクッション力が高速応答すること、(B)ではスライド接触時にクッション力がオーバーシュートしない(過大にならない)ことが望まれる。
【0006】
従来のダイクッション装置の機構は、(1)エアクッション方式、(2)電動モータ方式、(3)サーボ弁方式、(4)油圧ポンプ方式に大別することができる。
【0007】
エアクッション方式のクッション力制御は、スライド接触前に圧を張って待機しているため、スライド接触後の加圧力に優れているが、圧力制御は困難である。
電動モータ方式のクッション力制御は応答性が良いが、機構に負荷が大きく、寿命に問題がある。また電動モータ方式のクッション力制御は応答性を重視すると、クッション力のオーバーシュートが過大となる傾向があった。
サーボ弁方式や油圧ポンプ方式のクッション力制御は圧力制御が可能であり、エアクッションのように圧を張って待機することができるが、接触後のクッション力のオーバーシュートが過大になり、正確な圧力制御を行う事が困難であった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができるダイクッション装置とそのクッション力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のクッション装置であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測してクッション機構を制御する予測制御装置とを備える、ことを特徴とするプレス機械のダイクッション装置が提供される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記予測制御装置は、スライド位置を予測するスライドモデルと、
スライド位置から前記予測クッション力を予測するクッションモデルと、
前記予測時間経過後に前記予測クッション力になる指令値をクッション機構に出力するレギュレータとを有する。
【0011】
また、前記予測制御装置は、前記指令値を所定のリミット値以下に制限するリミッタを有し、該リミッタの出力値によりクッション機構を制御する。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するサーボ弁とからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びサーボ弁のスプール位置から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、サーボ弁指令値を計算する。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するポンプモータとからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びポンプモータの回転数から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するボールネジと、
該ボールネジを回転駆動するサーボモータとからなり、
前記クッションモデルは、ボールネジのストローク位置及びサーボモータの回転数およびトルク値から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する。
【0015】
また本発明によれば、下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のダイクッション装置のクッション力制御方法であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
クッション機構を制御する予測制御装置とを備え、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御する、ことを特徴とするダイクッション装置のクッション力制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の装置及び方法によれば、予測制御装置により、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御するので、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができる。
【0017】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、スライドモデルにより、例えばスライドのメインギア角度からスライド位置を予測することができる。
また、クッションモデルにより、スライド位置から予測クッション力を計算することができる。
また、レギュレータにより、予測時間経過後に予測クッション力になる指令値をクッション機構に出力することができる。
従って、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御することができる。
【0018】
従って、クッション機構により、予測時間経過後にクッション機構は予測クッション力を発生するので、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができる。
【0019】
さらに、リミッタにより、前記指令値を所定のリミット値以下に制限し、該リミッタの出力値によりクッション機構を制御するので、クッション力の最大上昇値を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のダイクッション装置のクッション力の応答特性図である。
【図2】本発明によるダイクッション装置の第1実施形態図である。
【図3】図2のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図4】第1実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【図5】第1実施形態のダイクッション装置の作動説明図である。
【図6】本発明によるダイクッション装置の第2実施形態図である。
【図7】図6のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図8】第2実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【図9】本発明によるダイクッション装置の第3実施形態図である。
【図10】図9のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図11】第3実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【図12】本発明によるダイクッション装置の第4実施形態図である。
【図13】図12のサーボ弁制御装置の構成図である。
【図14】第4実施形態のダイクッション方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
図2は、本発明によるダイクッション装置の第1実施形態図である。
プレス装置1は、クッションパッド2の上面にクッションピン3を介して支持された下金型4に対し、上下動するスライド5の下面に固定された上金型6を下降させ、下金型4と上金型6との間で被加工材(ワーク)7を加圧して所定の形状にプレス成形するようになっている。
【0023】
図2において、本発明のダイクッション装置10は、上金型6および下金型4によりワーク7をプレス成形する際に、クッションパッド2又はクッションピン3により、上金型6との間でワーク下面の周縁部を支持してワーク7のしわ押さえを行う。
すなわち、本発明のダイクッション装置10は、プレス機械の上金型6とクッションパッド2又はクッションピン3の間にワーク7を挟み、クッションパッド2に上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるようになっている。
【0024】
図2において、本発明のダイクッション装置は、クッション機構10および予測制御装置20を備える。
【0025】
クッション機構10は、クッションパッド2に上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させる装置である。クッション機構10は、後述する例では、(1)油圧シリンダ+サーボ弁、(2)油圧シリンダ+ポンプモータ(3)ボールネジ+サーボモータであるが、本発明はこれらの機構に限定されず、その他の機構であってもよい。
【0026】
予測制御装置20は、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測してクッション機構10を制御する。
【0027】
また、クッションパッド2の位置を検出するクッション位置センサ8と、スライド5を検出するスライド位置センサ9が設けられ、その検出値はそれぞれ予測制御装置20に入力される。
スライド位置センサ9は後述する例では、プレス装置1のメインギア角度を検出する角度センサであるが、本発明は角度センサに限定されず、その他のセンサであってもよい。また、クッション位置センサ8は、この例では、クッションパッド2の位置を検出するように配置されているが、その他の構成でもよい。
【0028】
図3は、図2の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。予測制御装置20は、例えばコンピュータ(PC)であり、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26は、コンピュータにインストールされたコンピュータプログラムである。なお、本発明はこの構成に限定されず、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26をそれぞれ別個の制御コントローラ又は一体の制御コントローラとして構成してもよい。
なお、コンピュータの代わりにプログラマブルロジックコントローラ(PLC)やその他の制御機器を用いても良い。
【0029】
スライドモデル21は、スライド位置センサ9(例えばメインギア角度の角度センサ)の検出値からスライド位置xを予測する。
【0030】
クッションモデル22は、スライド位置xから所定の予測時間経過後の予測クッション力Fcを予測する。
【0031】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力になる指令値Icをクッション機構に出力する。
【0032】
リミッタ26は、前記指令値Icを所定のリミット値以下に制限する。
すなわち、指令値Icがリミット値以下の場合には、指令値Icをそのままクッション機構10に出力し、指令値Icが所定のリミット値を超える場合には、リミット値を指令値としてクッション機構10に出力する。
【0033】
図4は、第1実施形態のダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S1〜S4の各ステップ(行程)からなる。
【0034】
ステップS1では、スライド位置センサ9(例えばメインギア角度の角度センサ)の検出値から所定の経過時間t経過後のスライド位置xを予測する。
ステップS2では、スライド位置xから所定の予測時間tの経過後の予測クッション力Fcを予測する。
ステップS3では、予測時間tの経過後に予測クッション力Fcになる指令値Icをクッション機構10に出力する。
ステップS4では、指令値Icがリミット値以下の場合には、指令値Icをクッション機構10に出力し、指令値Icがリミット値を超える場合には、リミット値を指令値Icとしてクッション機構10に出力する。
【0035】
図5は、従来と本発明のダイクッション装置の作動説明図である。この図において、(A)は従来例、(B)は本発明の例である。なお、各図において、横軸は経過時間である。
【0036】
予測制御を行わない従来例では、図5(A)に示すように、上金型が下降し下金型4と上金型6との間で被加工材(ワーク)7のプレス成形を開始した瞬間(以下、「スライド接触時」という)までは指令値は一定でありクッション力は所定の設定値を維持するが、スライド接触によりクッション力が急増してオーバーシュートすると、これを抑えるように指令値が急減し、次いで指令値の急減によりクッション力が下がり過ぎると、これを回復するように指令値が急増する。従って、予測制御を行わない従来例では、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートは回避が困難であった。
これに対して予測制御を行う本発明では、図5(B)に示すように、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0037】
図6は、本発明によるダイクッション装置の第2実施形態図である。
この図において、本発明のクッション機構10は、油圧シリンダ12、サーボ弁14、および予測制御装置20を備える。
【0038】
油圧シリンダ12は、クッションパッド2を上下動するピストンロッド11を有する。
この例で、油圧シリンダ12は、上向きかつ鉛直に配置され、ピストンロッド11の先端(上端)にクッションパッド2が固定され一体的に昇降するようになっている。
【0039】
また図6において、油圧シリンダ12のロッド側(上側)とピストン側(下側)にはそれぞれ圧力計15,16が設けられ、油圧シリンダ12の上室圧Pu(t0)と下室圧Pd(t0)を検出する。この検出値Pu(t0),Pd(t0)はそれぞれ予測制御装置20及び図7のレギュレータ24に入力される。なお、以下()内のt0は、現在の値を示す。
以下、油圧シリンダ12のシリンダ位置x(t0)を単に「シリンダ位置」という。
【0040】
サーボ弁14は、油圧シリンダ12と油圧ユニット13を連結する油圧配管の途中に設けられた流路方向を切換え可能なサーボ弁であり、油圧シリンダ12に油圧ユニット13から作動油を供給し、かつ油圧ユニット13に作動油を排出する。
サーボ弁14から油圧シリンダ12に供給される作動油の流量Qは、サーボ弁の開度Isv(t0)に比例する。この開度Isv(t0)は予測制御装置20に入力される。開度Isv(t0)は、例えば−100〜100%である。
【0041】
予測制御装置20は、所定の予測時間tの経過後のサーボ弁位置Isv(t)を予測してサーボ弁14を制御する。ここで予測時間tは、制御装置のスキャンタイムの1倍から10倍程度の時間(例えば、0.1sec)である。
予測制御装置20から出力されるサーボ弁指令値Icmdは、例えば−100〜100%であり、サーボ弁の開度Isvはサーボ弁指令値Icmdに応じてその位置まで移動する。
【0042】
図7は、図6の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。この構成は第1実施形態と同様である。
【0043】
スライドモデル21は、スライド位置センサ9(メインギア角度の角度センサ)の検出値から現在のスライド位置xslide(t0)と予測時間経過後のスライド位置xslide(t)を予測する。スライドの位置変化量Δxslideは、Δxslide=xslide(t)−xslide(t0)である。
【0044】
クッションモデル22は、スライド位置xslide(t0)とxslide(t)から所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測する。
【0045】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力Fc(t)になる指令値Icmdをクッション機構10に出力する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0046】
図7のクッションモデル22において、予測時間t経過後のサーボ弁位置Isv(t)、下室シリンダ力Fd(t)、上室シリンダ力Fu(t)、及びシリンダ移動量Δx(t)は、数1の式(1)〜(4)で表せる。
ここで、式(1)はサーボ弁位置Isv(t)の予測式、式(2)(3)は下室シリンダ力Fd(t)と上室シリンダ力Fu(t)、式(4)はシリンダ力Fc(t)、式(5)はシリンダ移動量Δx(t)をそれぞれ表す式である。
また、Kqdは下室シリンダの体積弾性率、Kquは上室シリンダの体積弾性率、Ksはサーボ弁の流量特性ゲイン、Sdは下室受圧面積、Suは上室受圧面積、Δxslideは、スライドの位置変化量、Mcはクッション自重、τはサーボ系一次遅れの時定数、Ksvはサーボ弁一次遅れモデルのゲイン、t0は現在時刻、tは予測未来時間である。
【0047】
【数1】
【0048】
図8は、本発明によるダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S11〜S16の各ステップ(行程)からなる。
【0049】
ステップS11では、スライドモデル22にメインギア角度を入力し、スライドの予測位置xslide(t)を計算する。ここで、スライド位置xslide(t0)は、近似式(メインギア角度の多項式)で計算する。またスライドの予測位置は、現在の角速度から未来の角度を求めて、近似的に使用する。
ステップS12では、式(4)からサーボ弁スプールの予測位置Isv(t)を計算する。
ステップS13では、シリンダ力の予測値Fc(t)(予測クッション力)を計算する。サーボ弁スプール予測位置Isv(t)、スライド予測位置xslide(t)、および各センサ現在値を式(1)(2)に代入する。その結果を式(3)に入力し、シリンダ力の予測値Fc(t)を求める。
ステップS14では、シリンダ力予測値Fc(t)の関数に予測時間tを代入する。予測時間tは、スキャンタイムの1〜10倍程度である。
ステップS15では、シリンダ力の予測値Fc(t)=目標値となるようにサーボ弁指令値Icmdを計算する。
ステップS16では、サーボ弁指令値Icmdがリミット値を超える場合は、リミット値を出力する。
【0050】
上述した第2実施形態の装置及び方法によれば、クッションモデル22により、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びサーボ弁のスプール位置から前記予測クッション力Fc(t)を計算し、レギュレータ24により、予測時間経過後に前記予測クッション力Fc(t)となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、サーボ弁指令値Icmdを計算するので、所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測することができる。
従って、第1実施形態と同様に、予測制御を行う本発明では、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0051】
図9は、本発明によるダイクッション装置の第3実施形態図である。
この図において、本発明のクッション機構10は、油圧シリンダ12、ポンプモータ32、および予測制御装置20を備える。
【0052】
ポンプモータ32は、油圧シリンダ12と油圧ユニット13を連結する油圧配管の途中に設けられた流路方向を切換え可能なポンプモータであり、油圧シリンダ12に油圧ユニット13から作動油を供給し、かつ油圧ユニット13に作動油を排出する。
ポンプモータ32から油圧シリンダ12に供給される作動油の流量Qは、ポンプモータ32の回転数Rvsvに比例する。この回転数Rvsv(t0)は予測制御装置20に入力される。
その他の構成は、図6と同様である。
【0053】
図10は、図9の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。この構成は第1、2実施形態と同様である。
【0054】
クッションモデル22は、スライド位置xslide(t0)とRvsv(t0)から所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測する。
【0055】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力Fc(t)になる回転数指令値Rvcmdをクッション機構10に出力する。なお、ここでは回転数指令値RVcmdはポンプモータに対する回転数指令値である。
その他の構成は、図7と同様である。
【0056】
図9、図10において、予測時間t経過後の下室シリンダ力Fd(t)、上室シリンダ力Fu(t)、シリンダ力Fc(t)、及びモータ回転数Rvsv(t)は、数2の式(5)〜(8)で表せる。
ここで、式(5)(6)は下室シリンダ力Fd(t)と上室シリンダ力Fu(t)、式(7)はシリンダ力Fc(t)、式(8)はモータ回転数Rvsv(t)をそれぞれ表す式である。
また、Smはポンプモータの流量特性ゲイン、τはモータ一次遅れの時定数、Ksvはモータ一次遅れモデルのゲインである。
その他は、実施形態1,2と同様である。
【0057】
【数2】
【0058】
図11は、本発明によるダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S21〜S26の各ステップ(行程)からなる。
【0059】
ステップS21は、ステップS11と同一である。
ステップS22では、式(8)からポンプモータの予測回転数Rvsv(t)を計算する。
ステップS23では、シリンダ力の予測値(予測クッション力)Fc(t)を計算する。予測回転数Rvsv(t)、スライド予測位置xslide(t)、および各センサ現在値を式(5)(6)に代入する。その結果を式(7)に入力し、シリンダ力の予測値Fc(t)を求める。
ステップ24では、シリンダ力予測値Fc(t)の関数に予測時間tを代入する。予測時間tは、スキャンタイムの1〜10倍程度である。
ステップ25では、シリンダ力の予測値Fc(t)=目標値となるように回転数指令値Rvcmdを計算する。
ステップ26では、回転数指令値Rvcmdがリミット値を超える場合は、リミット値を出力する。
【0060】
上述した第3実施形態の装置及び方法によれば、クッションモデル22により、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びポンプモータの回転数から前記予測クッション力Fc(t)を計算し、レギュレータ24により、予測時間経過後に予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値Rvcmdを計算するので、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測することができる。
従って、第1、2実施形態と同様に、予測制御を行う本発明では、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0061】
図12は、本発明によるダイクッション装置の第4実施形態図である。
この図において、本発明のクッション機構10は、ボールネジ34、サーボモータ36、および予測制御装置20を備える。
【0062】
ボールネジ34は、クッションパッド2を上下動する。
この例で、ボールネジ34は、上向きかつ鉛直に配置され、クッションパッド2の下方に設けられたボールナット(図示せず)と螺合し、ボールネジ34の回転によりクッションパッド2を昇降するようになっている。なお、この例では、2本のボールネジ34と2台のサーボモータ36を同期させてクッションパッド2の水平を維持するようになっている。しかし、本発明はこの構成に限定させず、クッションパッド2の水平保持ガイドを別に設けて、ボールネジ34とサーボモータ36をそれぞれ1台にしてもよい。
【0063】
サーボモータ36は、ボールネジ32を回転駆動する。クッションパッド2の移動量はサーボモータ36の回転数Rvsvに比例する。この回転数Rvsv(t0)は予測制御装置20に入力される。
その他の構成は、図9と同様である。
【0064】
図13は、図12の予測制御装置の構成図である。
この図において、本発明の予測制御装置20は、スライドモデル21、クッションモデル22、レギュレータ24及びリミッタ26を有する。この構成は第1〜3実施形態と同様である。
【0065】
クッションモデル22は、スライド位置xslide(t0)とサーボモータ36の回転数Rvsv(t0)から所定の予測時間経過後の予測クッション力Fc(t)を予測する。
【0066】
レギュレータ24は、予測時間経過後に予測クッション力Fc(t)になる回転数指令値Rvcmdをクッション機構10に出力する。なお、ここでは回転数指令値RVcmdはサーボモータに対する回転数指令値である。
その他の構成は、図10と同様である。
【0067】
図13のクッションモデル22において、予測時間t経過後の下室シリンダ力Fd(t)、上室シリンダ力Fu(t)、シリンダ力Fc(t)、及びモータ回転数Rvsv(t)は、数3の式(9)〜(12)で表せる。
ここで、式(9)(10)は、下室シリンダ力Fd(t)と上室シリンダ力Fu(t)、式(11)はシリンダ力Fc(t)、式(12)はモータ回転数Rvsv(t)をそれぞれ表す式である。
また、Kcはクッション機構のバネ定数、Ksは回転数→クッションストロークの変換ゲインである。
その他は、実施形態1〜3と同様である。
【0068】
【数3】
【0069】
図14は、本発明によるダイクッション方法のフロー図である。この図において、本発明の方法は、S31〜S36の各ステップ(行程)からなる。
【0070】
ステップS31は、ステップS11、S21と同一である。
ステップS32では、式(12)からサーボモータの予測回転数Rvsv(t)を計算する。
ステップS33では、クッション力の予測値(予測クッション力)Fc(t)を計算する。予測回転数Rvsv(t)、スライド予測位置xslide(t)、および各センサ現在値を式(9)(10)に代入する。その結果を式(11)に入力し、シリンダ力の予測値Fc(t)を求める。
ステップ34では、クッション力予測値Fc(t)の関数に予測時間tを代入する。予測時間tは、スキャンタイムの1〜10倍程度である。
ステップ35では、クッション力の予測値Fc(t)=目標値となるように回転数指令値Rvcmdを計算する。
ステップ36では、回転数指令値Rvcmdがリミット値を超える場合は、リミット値を出力する。
【0071】
上述した第4実施形態の装置及び方法によれば、クッションモデル21により、ボールネジのストローク位置及びサーボモータの回転数およびトルク値から前記予測クッション力Fc(t)を計算し、レギュレータ24により、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値Rvcmdを計算するので、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測することができる。
従って、第1〜3実施形態と同様に、予測制御を行う本発明では、プレス開始によるクッション力の急増を予測してその直前に指令値を下げるので、スライド接触直後のクッション力のオーバーシュートを大幅に低減、又は皆無にすることができる。
【0072】
上記本発明の装置及び方法によれば、予測制御装置により、所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御するので、スライド接触時に応答性が高く、かつスライド接触直後に過大なオーバーシュートが発生せず、正確なクッション力制御ができる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0074】
1 プレス装置、2 クッションパッド、3 クッションピン、
4 下金型、5 スライド、6 上金型、7 被加工材(ワーク)、
8 クッション位置センサ、9 スライド位置センサ、
10 クッション機構、11 ピストンロッド、
12 油圧シリンダ、13 油圧ユニット、14 サーボ弁、
15,16 圧力計、17 位置検出器、
20 予測制御装置、21 スライドモデル、
22 クッションモデル、24 レギュレータ、26 リミッタ、
32 ポンプモータ、34 ボールネジ、36 サーボモータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のクッション装置であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測してクッション機構を制御する予測制御装置とを備える、ことを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項2】
前記予測制御装置は、スライド位置を予測するスライドモデルと、
スライド位置から前記予測クッション力を予測するクッションモデルと、
前記予測時間経過後に前記予測クッション力になる指令値をクッション機構に出力するレギュレータとを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項3】
前記予測制御装置は、前記指令値を所定のリミット値以下に制限するリミッタを有し、該リミッタの出力値によりクッション機構を制御する、ことを特徴とする請求項2に記載のダイクッション装置。
【請求項4】
前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するサーボ弁とからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びサーボ弁のスプール位置から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、サーボ弁指令値を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項5】
前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するポンプモータとからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びポンプモータの回転数から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項6】
前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するボールネジと、
該ボールネジを回転駆動するサーボモータとからなり、
前記クッションモデルは、ボールネジのストローク位置及びサーボモータの回転数およびトルク値から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項7】
下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のダイクッション装置のクッション力制御方法であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
クッション機構を制御する予測制御装置とを備え、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御する、ことを特徴とするダイクッション装置のクッション力制御方法。
【請求項1】
下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のクッション装置であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測してクッション機構を制御する予測制御装置とを備える、ことを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項2】
前記予測制御装置は、スライド位置を予測するスライドモデルと、
スライド位置から前記予測クッション力を予測するクッションモデルと、
前記予測時間経過後に前記予測クッション力になる指令値をクッション機構に出力するレギュレータとを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項3】
前記予測制御装置は、前記指令値を所定のリミット値以下に制限するリミッタを有し、該リミッタの出力値によりクッション機構を制御する、ことを特徴とする請求項2に記載のダイクッション装置。
【請求項4】
前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するサーボ弁とからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びサーボ弁のスプール位置から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、サーボ弁指令値を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項5】
前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するピストンロッドを有する油圧シリンダと、
該油圧シリンダに作動油を供給又は排出するポンプモータとからなり、
前記クッションモデルは、油圧シリンダのシリンダ位置、上室圧、下室圧、及びポンプモータの回転数から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項6】
前記クッション機構は、クッションパッドを上下動するボールネジと、
該ボールネジを回転駆動するサーボモータとからなり、
前記クッションモデルは、ボールネジのストローク位置及びサーボモータの回転数およびトルク値から前記予測クッション力を計算し、
前記レギュレータは、前記予測時間経過後に前記予測クッション力となるように、クッション力の目標値、現在値、及び前記予測クッション力から、回転数指令値を計算する、ことを特徴とする請求項1に記載のダイクッション装置。
【請求項7】
下金型を支持するクッションパッドに対し、上下動するスライドの下面に固定された上金型を下降させ、下金型と上金型との間で被加工材を加圧して所定の形状にプレス成形するプレス機械のダイクッション装置のクッション力制御方法であって、
クッションパッドに上向きのクッション力を付加しながらこれを上下動させるクッション機構と、
クッション機構を制御する予測制御装置とを備え、
所定の予測時間経過後の予測クッション力を予測して、クッション機構を制御する、ことを特徴とするダイクッション装置のクッション力制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−253540(P2010−253540A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109600(P2009−109600)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
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