説明

ダイレクト教示データの編集方法とパラレルリンクロボット

【課題】直感的で分かりやすいダイレクト教示の特徴を活かしながら、動作確認と再教示との繰り返しを減らすことが可能なダイレクト教示データの編集方法を提供することを目的とする。
【解決手段】パラレルリンクロボットの姿勢に関する教示データのうちの編集領域(21)の教示データを、前記パラレルリンクロボットを動かしてダイレクト教示された再教示データに更新して編集するに際し、前記再教示データ(p1,p2,〜,pn−1)を、前記編集領域(21)の直前の教示データ(P)で決定される位置および姿勢に応じたオフセット量(Δ)だけオフセット(p1−Δ,p2−Δ,〜,pn−1−Δ)させた後に前記編集領域(21)の教示データとして編集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルメカニズムを用いた産業用ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パラレルメカニズムを用いた産業用ロボットの1つであるパラレルリンクロボット (parallel link robot)の概略構成を図7に示す。
図7に示すように、パラレルリンクロボット1は、固定プレート2と、対象物を把持するためのエンドエフェクタ8などの作用部材が取り付けられる可動プレート3と、固定プレート2と可動プレート3の間を連結する複数のアーム4及びロッド7で構成されている。
【0003】
複数のアーム4は、固定プレート2に対して固有の1軸周りに固有の面内を旋回するよう取り付けられている。アーム4の先端とロッド7の基端との連結箇所、ならびにロッド7の先端と可動プレート3との連結箇所は、空間内を自由旋回するボールジョイントなどの軸受9で結合されている。各々のアーム4およびロッド7は、可動プレート3で結合および拘束されながら、空間内で位置および姿勢を変えることができる。
【0004】
このパラレルリンクロボット1は、各々のアーム4を各モータ5などの駆動源でプレート6を介して回転駆動させるとともに、各モータ5に取り付けられたエンコーダ14によって各々のアーム4の回転位置を検出して、可動プレート3の位置や姿勢を制御している。
【0005】
このようなパラレルリンクロボット1の可動プレート3は、駆動源等の重量物がなく、極めて軽量な構造で、高速動作に適している。そのため、可動プレート3が軽量な構造であることを利用し、教示者が可動プレート3を直接に移動させてロボットの動作位置や姿勢を教示する、ダイレクト教示方法が既に提案されている。
【0006】
パラレルリンクロボットではないが、ロボットのダイレクト教示に関する先行技術としては、特許文献1に示すものがある。これは、ロボットの自重を検知し、これを能動的にキャンセルするよう制御する方法によって、教示者がロボットを動かす力を軽減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−38877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、自重をキャンセルするために制御し続けるため、ロボットが制御不能な状態に陥った場合に、教示者に危害を与えるリスクが大きく、安全上の懸念が払拭できない可能性がある。
【0009】
一方、パラレルリンクロボット1は、アーム4およびロッド7によって上部から可動プレート3を支える構造である。そのため、駆動源の電源を遮断すれば、教示者が可動プレート3を容易に支えることが可能で、かつ安全上の懸念が無い。
【0010】
しかしながら、パラレルリンクロボット1では、ダイレクト教示に際し、駆動源の電源を遮断することでアーム4およびロッド7の位置および姿勢を固定しておいても、わずかにアーム4およびロッド7の位置または姿勢が変化してしまうことがある。そのため、例えば精密な作業をパラレルリンクロボット1に行わせる場合には、ダイレクト教示の教示データによるロボットの運転の動作確認と、この動作確認で判明した不具合を再教示して修正する作業とを、繰り返し行って、使用可能な状態に追い込んでいるのが現状である。
【0011】
本発明は、これら従来の課題を解決し、動作確認と再教示との繰り返しを減らすことが可能なダイレクト教示データの編集方法およびパラレルリンクロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のダイレクト教示データの編集方法は、パラレルリンクロボットの姿勢に関する教示データのうちの編集領域の教示データを、前記パラレルリンクロボットを動かしてダイレクト教示された再教示データに更新して編集するに際し、前記再教示データを、前記編集領域の直前の教示データで決定される位置および姿勢に応じたオフセット量だけオフセットさせた後に前記編集領域の教示データとして編集することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のパラレルリンクロボットは、位置および姿勢に関する教示データのうちの編集領域の教示データを、ダイレクト教示により教示された再教示データに更新する機能を備えたパラレルリンクロボットであって、前記再教示データを、前記編集領域の直前の教示データで決定される位置および姿勢に応じたオフセット量だけオフセットして前記編集領域の教示データとして編集する編集処理部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダイレクト教示の直感的で分かりやすいという特徴を活かしながら、動作確認と再教示との繰り返しを減らすことが可能なダイレクト教示データの編集方法およびパラレルリンクロボットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のパラレルリンクロボットの概略構成図
【図2】本発明のパラレルリンクロボットのタッチパネル付きディスプレイの表示画面の説明図
【図3】本発明のパラレルリンクロボットのダイレクト教示データ編集のフローチャート
【図4】(a)本発明のパラレルリンクロボットの編集前の教示データとダイレクト教示中にロボットが誤認識する再教示内容の説明図、(b)本発明のパラレルリンクロボットのダイレクト教示中の実際の再教示内容の説明図
【図5】(a)本発明のパラレルリンクロボットの編集前の教示データの説明図、(b)本発明のパラレルリンクロボットの編集後の再教示内容の説明図
【図6】本発明のパラレルリンクロボットの元軌跡近似性判定部の説明図
【図7】従来のパラレルリンクロボットの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のパラレルリンクロボットのダイレクト教示データの編集方法を、具体的な実施の形態を示す図1〜図6に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態のパラレルリンクロボット41の概略構成を示す図である。
【0017】
パラレルリンクロボット41において、固定プレート2と可動プレート3の間は、複数のアーム4と、ボールジョイントなど空間内を自由旋回する複数の軸受9と、複数のロッド7とで結合されている。各アーム4は、それぞれのモータ5の出力軸に接続されている。各モータ5のフランジ面がプレート6に固定され、プレート6が固定プレート2に結合されている。つまり、各アーム4の位置や姿勢を制御することで、可動プレート3の自動動作を制御することができる。
【0018】
可動プレート3が、空間内で位置及び姿勢を自由に定義できるようにするためには、6つの自由度(可動軸)が必要である。本発明では、6組のアーム4およびモータ5を用い、それらの回転位置を独立に制御することによって、可動プレート3の位置及び姿勢を自在に設定する。各モータ5には、それぞれエンコーダ14が取り付けられている。エンコーダ14は、入力部15を介して制御部10に接続されている。
【0019】
なお、図1では、モータ5およびプレート6およびエンコーダ14を1つのみ図示しているが、実際は、アーム4毎に設けられて、それぞれ6つ存在する。また、図示しない各エンコーダも、それぞれ入力部15を介して制御部10に接続されている。
【0020】
各アーム4は、固有の1軸周りに固有の面内を旋回するように、固定プレート2に取り付けられている。ロッド7の両端は、空間内を自由旋回する軸受9で、アーム4または可動プレート3に結合されている。このように、各アーム4、各ロッド7は、可動プレート3で結合および拘束されながら、空間内で位置および姿勢を変えることができる。
【0021】
したがって、アーム4の回転位置をモータ5などの駆動源で制御することによって、可動プレート3の位置や姿勢を制御することができる。可動プレート3には、例えば対象物を把持するためのエンドエフェクタ8が、取り付けられる。なお、可動プレート3に取り付けられるエンドエフェクタ8は、対象物を把持するためのものに限らず、パラレルリンクロボット41の目的に応じて、様々なものを選択することが可能である。
【0022】
可動プレート3は、駆動源等の重量物がなく、極めて軽量な構造で、高速動作やダイレクト教示に利用価値がある。ダイレクト教示とは、可動プレート3を教示者が直接に手に取り、これを直接移動させることにより、パラレルリンクロボット41の動作軌跡を教示する方法である。
【0023】
本発明では、パラレルリンクロボット41の現物を見ながら教示動作位置や教示動作姿勢を再教示可能とし、再教示前の位置および姿勢との関連性を教示者が認知可能としている。これらを可能とすることで、本発明のパラレルリンクロボット41は、従来のダイレクト教示では困難であった簡易なオペレーションを提案する。
【0024】
各エンコーダ14の出力に基づく教示データは、入力部15を介して制御部10に入力されている。制御部10は、教示データに基づいて各モータ5を駆動して設定された軌跡を倣うようにパラレルリンクロボット41を駆動させる駆動制御機能と、記憶している教示データの一部をその後に指定された再教示データに差し替える編集機能とを有している。
【0025】
制御部10において編集機能を司る編集処理部27は、ロボット先端姿勢演算部11と、元軌跡近似性判定部12と、修正軌跡記録部13と、テーブル28を有している。
なお、テーブル28には、パラレルリンクロボット41の様々な姿勢での動作点で駆動電源を遮断した場合における、各軸のオフセット量Δ(詳細は後述する)が予め書き込まれている。テーブル28は、様々な姿勢においてパラレルリンクロボット41の駆動電源を遮断した場合のオフセット量Δを実測することで、予め作成することができる。オフセット量Δは、各アーム4全てが水平状態となるロボットの原点位置において、駆動電源を遮断する前後のモータのエンコーダ値の差分量として求めることができるが、使用環境により、任意の値を設定することもできる。
【0026】
6つのエンコーダ14からのモータ回転位置情報が入力部15を介して制御部10に入力されると、ロボット先端姿勢演算部11によって、可動プレート3の位置および姿勢が計算される。これらの計算結果は、タッチパネルディスプレイ29の表示部16に引き渡され、図2に示すように、動作軌跡の時系列座標値としてグラフ表示される。表示部16の画面上には、タッチ入力位置を認識するタッチパネル30が設けられている。タッチパネル30の出力は制御部10に接続されている。
【0027】
パラレルリンクロボット41の動作教示において、位置または姿勢の再教示の際には、再教示後の開始点と終了点の近傍での可動プレート3の状態(位置および姿勢)が、再教示前の可動プレート3の状態と比べて近いか否かが重要になる。本発明では、これを判定するために、元軌跡近似性判定部12を備えている。また、パラレルリンクロボット41の動作教示において、位置または姿勢の再教示の際には、その位置および姿勢を記録しておく必要がある。本発明では、位置および姿勢を記憶するために、修正軌跡記録部13を備えている。なお、再教示後の動作軌跡は、表示部16における前述のグラフ表示(図2参照)にて、確認および補正が可能である。
【0028】
図2は、本発明のパラレルリンクロボット41のタッチパネル付きディスプレイの表示画面を説明するための図である。また、図2は、前述の動作軌跡の編集時の表示画面のグラフイメージである。図2では、画面左側のグラフ表示部26に、パラレルリンクロボットの教示動作軌跡を、軸ごとに時系列にグラフ化して表示している。図2の各グラフは、横軸が時間軸であり、縦軸が各軸の座標値である。
【0029】
図2において、パラレルリンクロボット41の現在の位置(現在位置)および姿勢(現在姿勢)は、現在位置ポインタ20によって示されている。本発明では、パラレルリンクロボット41の位置は、6軸(X軸、Y軸、Z軸、θx軸、θy軸、θz軸)で管理している。ここで、パラレルリンクロボット41の現在位置とは、現在の可動プレート3の中央の仮想点座標と、この点を含む可動プレート3の面のx軸、y軸、z軸の各軸周りの回転量とで表現している。本発明では、この現在位置を用いて、可動プレート3の位置および姿勢を数値管理している。また、現在位置ポインタ20の時々の位置の情報は、画面右上の各表示欄25に、数値で表示される。
【0030】
グラフ表示部26には、パラレルリンクロボット41の現在位置とは別に、軌道情報の再教示対象となる編集領域21を設けることができる。編集領域21は、編集開始点22および編集終了点23を含み、これらの点間の領域として定義される。編集開始点22は、編集終了点23と同一か、編集終了点23よりも左側(時刻の早い側)に設定する。
【0031】
画面の右側で表示欄25の下側には、再教示に必要な指示を入力する機能ボタンA1〜A6のアイコンが表示されている。
「開始点へ移動」ボタンA1は、設定した編集開始点22へパラレルリンクロボット41の各軸を自動的に移動させることを指示するためのアイコンである。表示部16のディスプレイパネルの画面上のボタンA1のアイコンの表示位置に教示者がタッチすることによって、タッチパネル30を介して制御部10が入力指示を認識する。
【0032】
なお、機能ボタンA2〜A6についても、タッチパネル30と制御部10との関係は、ボタンA1と同じであって、表示部16のディスプレイパネルの画面上の各アイコンの表示位置に教示者がタッチすることによって、タッチパネル30を介して制御部10が各機能の入力操作を認識する。
【0033】
再教示を行う場合、教示者は、「再教示を開始」ボタンA2のアイコンにタッチして、再教示の開始を制御部10に知らせる。これによって制御部10が、再教示モードを開始して再教示軌跡を読み込む。再教示モード中に、「中断」ボタンA3のアイコンにタッチされたことを検出した制御部10は、再教示モードを中止して各モータ5にブレーキロックをかける。
【0034】
図3は、教示データの部分変更方法、すなわち再教示を行うための手順である。
まず、ステップS1では、図2のグラフ上で編集開始点22及び編集終了点23を設定する。
【0035】
ステップS2では、「開始点へ移動」ボタンA1にタッチすることによって、パラレルリンクロボット41の各軸が編集開始点へ移動し、モータ5のパワー系を遮断する。
ステップS3では、「再教示を開始」ボタンA2にタッチすることによって、モータ5のブレーキが解除され、パラレルリンクロボット41を完全にフリーな状態にする。このとき、パラレルリンクロボット41の可動プレート3が落下しないように、可動プレート3を教示者が手で支えておくなどの処置が必要である。
【0036】
ステップS4では、この状態から教示者が可動プレート3を直接に手に持って動かして、再教示を行う。再教示の終了は、「再教示を終了」ボタンA4を操作して行う。
再教示の終了後のステップS5では、編集領域21の再教示前の軌道をステップS4で再教示された軌道に部分置換する。
【0037】
「再教示を終了」ボタンA4のアイコンにタッチされたことを検出した制御部10は、再教示モードを終了する。
「再教示データの再生」ボタンA5のアイコンにタッチされたことを検出した制御部10は、パラレルリンクロボット41の各軸を編集開始点22へ一旦移動させた後、再教示した軌跡をトレースして、編集終了点23へ移動させる。
【0038】
ステップS3〜S5において実行される再教示と再教示データでの編集領域のデータ置換を、図4と図5を用いて詳述する。
図4(a)は編集前の教示データのイメージ図で、任意の1軸について編集前の教示データを模式的に示している。
【0039】
編集前の教示データが、連続する動作点P,P,・・・・,Pn−1,Pである場合、編集開始点22と編集終了点23によって設定される編集領域21に含まれる点群は、P〜Pn−1となる。
【0040】
パラレルリンクロボット41は、多数の軸受9を使用していると共に、ダイレクト教示に際してはステップS4でのダイレクト教示に先立ってステップS3において駆動電源を遮断して可動プレート3をフリーに動かせるようにする必要がある。そのため、「再教示を開始」ボタンA2にタッチして教示開始状態に切り換えた時に、教示者自身が可動プレート3を上手に支持しなければ、再教示によって編集しようとしている編集区間の教示データと編集区間の直前の教示データとの差が大きくなって、編集後に可動プレート3のスムーズな動きを期待できない場合がある。さらに、ダイレクト教示に際して駆動源の電源を遮断した直後の可動プレート3を教示者自身が上手に支持しても、図4(b)に示すように、編集領域21の最初の仮想線の動作点Pであるべきものが、実際には動作点p1*となり、可動プレート3の微小な位置や姿勢の変動(以下、この変動をオフセット量Δと称す)が発生する。このようなオフセット量Δは、各軸の僅かな寸法マージンにより発生するため、各エンコーダ14などによって検出することが難しい。
【0041】
このため、教示者がステップS4において図4(b)に破線C1で示す軌跡(p1*,・・・・,pn−1*)のダイレクト教示を実施しても、パラレルリンクロボット41は、図4(a)に破線C2で示す軌跡が再教示されたものと認識し、実際とは異なる軌跡が再教示されてしまうことがある。
【0042】
このオフセット量Δが原因で、再教示を受ける編集領域21の全域において、教示者による実際の再教示内容とパラレルリンクロボット41が各エンコーダ14から読み取って認識する再教示内容との間にズレが発生することがある。このズレが原因で、特に精密な作業をパラレルリンクロボット41に行わせる使用形態の場合には、ダイレクト教示による再教示後の再生運転による動作確認と、この動作確認で判明した不具合を再教示して修正する作業を繰り返し行っているのが現状である。また、教示者の手によるパラレルリンクロボット41の動作教示で例えば部品挿入動作の教示を行う場合、教示時のパラレルリンクロボット41のエンドエフェクタ8の位置が重要である。なぜなら、部品挿入動作などの教示を行う場合は、実際に挿入する部品などを置いて動作教示することが多いため、パラレルリンクロボット41の教示時と自動動作時との僅かなズレにより、挿入失敗になる場合があるためである。
【0043】
そこで、この実施の形態では、これらの問題点を次のようにして回避している。
編集処理部27は、ステップS4の開始の直前に各エンコーダ14から読み取った可動プレート3の位置や姿勢の動作点Pを検索キーとしてテーブル28から適切なオフセット量Δを読み取る。そして、本実施の形態1の編集処理部27は、各エンコーダ14から読み取った可動プレート3の位置や姿勢の動作点“p1,p2,〜,pn−1”に対し、図5(b)に示すように各エンコーダ14から読み取った可動プレート3の位置や姿勢の動作点をオフセット量Δで処理した“p1−Δ,p2−Δ,〜,pn−1−Δ”を再教示データとして修正軌跡記録部13に書き込む。
【0044】
ステップS4でのダイレクト教示が終了すると、ステップS5では、図5(b)のように、再教示された最初の動作点p1−Δが編集開始点22の直前の点Pに連結され、再教示された最後の動作点pn−1−Δが編集終了点23の直後の点Pnに連結されて、部分置換される。
【0045】
なお、編集領域21に含まれる点群の数は、再教示の際の点群取得の時間間隔や、再教示に要した時間に伴って増加するため、必ずしも再教示の前後で、同数になるとは限らない。時間間隔が同じで再教示後の点数が少ないと、データ置換後の編集領域21が短くなり、時間間隔が同じで再教示後の点数が多いと、データ置換後の編集領域21が長くなる。
【0046】
このようにして、編集領域21の再教示は完了するが、編集開始点22の前後の点Pと点p1−Δの座標値や、編集終了点23の前後の点pn−1−Δと点Pnの座標値に大きな隔たりがあると、パラレルリンクロボット41の動作に無理が生じ、パラレルリンクロボット41の軸受9などに負荷がかかり過ぎる場合がある。本実施の形態1では、このような無理な動作を防止するために、元軌跡近似性判定部12を設けている。
【0047】
元軌跡近似性判定部12には、編集開始点22の直前の点Pの座標値に許容幅±dが予め設定されている。ステップS5が完了したとき、再教示された動作点p1−Δがこの許容範囲内に存在する場合、編集領域21の編集開始部分において、パラレルリンクロボット41はスムーズに動作することができる。
【0048】
再教示された動作点p1−Δが許容範囲P±dの範囲に存在しない場合、制御部10は、表示部16の画面の右下の近傍位置マーカー24の「開始位置XYZ」マーカーB1、または「開始姿勢θxθyθz」マーカーB2を点灯させる。対象とする軸が可動プレート3の平行移動軸、すなわちX,Y,Z軸に該当する場合には、「開始位置XYZ」マーカーB1を点灯させる。対象とする軸が可動プレート3の回転移動軸、すなわちθx,θy,θz軸に該当する場合には、「開始姿勢θxθyθz」マーカーB2を点灯させる。
【0049】
同様に、元軌跡近似性判定部12には、編集終了点23の直後の点Pの座標値の許容幅±dが予め設定されている。再教示された動作点pn−1−Δがこの許容範囲内にあった場合、編集領域21の編集終了部分において、パラレルリンクロボット41はスムーズに動作することができる。
【0050】
なお、元軌跡近似性判定部12において、編集開始点22の近傍と、編集終了点23の近傍で許容幅±dが同一の値である必要はなく、個別に設定しても構わない。
再教示された動作点pn−1−ΔがP±dの範囲になかった場合、制御部10が表示部16の画面の右下の「終了位置XYZ」マーカーB3、または「終了姿勢θxθyθz」マーカーB4を点灯させる。対象とする軸が可動プレート3の平行移動軸、すなわちX,Y,Z軸に該当する場合には、「終了位置XYZ」マーカーB3を点灯させる。対象とする軸が可動プレート3の回転移動軸、すなわちθx,θy,θz軸に該当する場合には、「開始姿勢θxθyθz」マーカーB2を点灯させる。
【0051】
再教示の終了の直後に、マーカーB1〜B4が点灯している場合に、「再教示データの再生」ボタンA5のアイコンにタッチすると、制御部10は、パラレルリンクロボット41の姿勢を編集開始点22へ一旦移動させた後、再教示した軌跡をトレースして、編集終了点23へ移動させて、編集後の教示データに基づいてパラレルリンクロボット41を動作させる。そのため、前述の再教示を行うことにより、教示者は、パラレルリンクロボット41の動きを目視にて確認できる。
【0052】
ここで、パラレルリンクロボット41の動きがスムーズでないと教示者が判断した場合には、「開始終了点近傍をスムージング」ボタンA6のアイコンにタッチすると、制御部10が、パラレルリンクロボット41がスムーズに移動できるように編集領域21の開始部分の数点および終了部分の数点(編集領域21の境界近傍)の教示データを近似修正してスムージング処理する。
【0053】
このスムージング処理の直後にも、スムージング処理後の教示データによってパラレルリンクロボット41がスムーズに動くことができるか元軌跡近似性判定部12によって判定され、スムーズに動けないと判定された場合には、マーカーB1〜B4によって表示される。
【0054】
この実施の形態では、再教示の終了直後のタイミング、またはスムージング処理後のタイミングに、元軌跡近似性判定部12とマーカーB1〜B4によって、パラレルリンクロボット41がスムーズに動けないエラーが報知された場合には、教示者が直ちに「再教示を開始」ボタンA2にタッチしてステップS2に戻って再教示と編集を繰り返すことで、適正な編集処理を実現できる。
【0055】
このように、本実施の形態1のパラレルリンクロボット41は、元軌跡近似性判定部12が編集後の教示データが許容範囲内の適正なものであるかを判定して近傍位置マーカー24によって教示者に報知するため、操作性が良好である。更に、ステップS3〜S5では、エンコーダ14からパラレルリンクロボット41が読み取っている可動プレート3の位置や姿勢を、テーブル28から読み出したオフセット量Δによって実際の教示内容に近付くようにオフセットしたものを編集領域21の教示データとして編集処理部27が編集処理を実施する。そのため、本実施の形態1のパラレルリンクロボット41は、直感的で分かりやすいというダイレクト教示の特徴を活かしながら、パラレルリンクロボットの正確な動作を、短時間のダイレクト教示の実施で実現できる。
【0056】
なお、この実施の形態では、マーカーB1〜B4によってエラー表示を行ったが、再教示中には、モニタ画面を見ることがやりづらいこともあるため、表示と共に音声などでガイダンスを流すことも有効である。
【0057】
このようにマーカーを2種類に分けているのは、可動プレート3の位置が編集開始点22の前後で極力近いようにすることに意味がある場合と、可動プレート3の姿勢が極力近いようにすることに意味がある場合があるためである。
【0058】
なお、6軸個別に、マーカーを用意しても良いし、6軸のAND条件をとることによって、1つのマーカーで賄っても構わない。
また、上記の実施の形態では、「開始終了点近傍をスムージング」ボタンA6のアイコンにタッチされたことを検出してから制御部10がスムージング処理を実施したが、再教示を終了したステップS5の直後に自動的にスムージング処理を実施するようにも構成できる。
【0059】
上記の実施の形態では編集に使用するオフセット量を編集領域21の直前の教示データPに応じてテーブル28から読み出すものとして説明したが、テーブル28に代わって図1に仮想線で示すように、編集領域21の直前の教示データPで決定される位置と姿勢に応じたオフセット量を出力する計算式が設定されたオフセット演算部31を設け、オフセット演算部31に編集領域21の直前の教示データPを代入して編集に使用するオフセット量を算出するよう構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、パラレルリンクメカニズムを用いた産業用ロボットを採用した各種の生産ラインなどにおいて、ロボットの動作教示を迅速、容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
41 パラレルリンクロボット
2 固定プレート
3 可動プレート
4 アーム
5 モータ
6 プレート
7 ロッド
8 エンドエフェクタ
9 軸受
10 制御部
11 ロボット先端姿勢演算部
12 元軌跡近似性判定部
13 修正軌跡記録部
20 現在位置ポインタ
21 編集領域
22 編集開始点
23 編集終了点
24 近傍位置マーカー
25 表示欄
26 グラフ表示部
27 編集処理部
28 テーブル
29 タッチパネルディスプレイ
30 タッチパネル
31 オフセット演算部
A1〜A6 機能ボタン
Δ オフセット量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラレルリンクロボットの姿勢に関する教示データのうちの編集領域の教示データを、前記パラレルリンクロボットを動かしてダイレクト教示された再教示データに更新して編集するに際し、
前記再教示データを、前記編集領域の直前の教示データで決定される位置および姿勢に応じたオフセット量だけオフセットさせた後に前記編集領域の教示データとして編集する、
ダイレクト教示データの編集方法。
【請求項2】
前記編集領域の直前の教示データで決定される位置および姿勢に応じたオフセット量を、前記パラレルリンクロボットの位置および姿勢とオフセット量との関係を予め算出したテーブルから、前記教示データに応じて読み出す、
請求項1記載のダイレクト教示データの編集方法。
【請求項3】
前記編集領域の直前の教示データで決定される位置および姿勢に応じたオフセット量を、オフセット演算部に前記教示データを代入して算出する、
請求項1記載のダイレクト教示データの編集方法。
【請求項4】
前記再教示データを前記編集領域の教示データとして編集した後に、前記編集領域の境界近傍の教示データを近似修正してスムージング処理する、
請求項1記載のダイレクト教示データの編集方法。
【請求項5】
前記再教示データを前記編集領域の教示データとして編集した後に、前記編集領域の直前の教示データと前記編集領域の開始部分の再教示データとの差、または、前記編集領域の直後の教示データと前記編集領域の終了部分の再教示データとの差が、許容範囲であるか否かを判定し、その判定結果を教示者に報知する、
請求項1記載のダイレクト教示データの編集方法。
【請求項6】
位置および姿勢に関する教示データのうちの編集領域の教示データを、ダイレクト教示により教示された再教示データに更新する機能を備えたパラレルリンクロボットであって、
前記再教示データを、前記編集領域の直前の教示データで決定される位置および姿勢に応じたオフセット量だけオフセットして前記編集領域の教示データとして編集する編集処理部を設けた、
パラレルリンクロボット。
【請求項7】
前記編集処理部は、前記パラレルリンクロボットの位置および姿勢とオフセット量との関係を予め算出したテーブルを有する、
請求項6記載のパラレルリンクロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107179(P2013−107179A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255651(P2011−255651)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】