説明

ダブルレンズ

【課題】本発明により、ダブルレンズ内に曇りの発生しにくい、ガスケットの剥離しにくい、フロントレンズのフロントカーブ側の傷がつきにくいゴーグルやシールドなどの眼用保護具ができるようにする。
【解決手段】フロントレンズ1のバックカーブ側とバックレンズ2のフロントカーブ側を
平行的に対置した状態でガスケットによって固着されるダブルレンズの、少なくともフ
ロントレンズ1のバックカーブ側か、バックレンズ2のフロントカーブ側のいずれかに防曇膜が形成されているダブルレンズであって、ガスケット3を固着する部分をさけて防曇膜が形成されているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用保護具、とくに、スキー、スノーボード、アイススケート、サイクリング、モトクロスなどで使用するスポーツ用ゴーグルやシールド、および、建築や土木工事などで使用する産業用ゴーグルやシールドなど眼用保護具に適するダブルレンズにかかわる。
【0002】
なかでも、打撲や雨、雪、塵埃などから眼を保護する機能にすぐれ、かつ発汗や環境温度変化があっても曇りにくいゴーグルやシールドなど眼用保護具に適するダブルレンズにかかわる。
【背景技術】
【0003】
スキー、スノーボード、アイススケート、サイクリング、モトクロスなどスピードのつくスポーツでは、転倒や衝突など不測の事故から眼を保護するため、また、雨や雪などの異物から眼を保護するため、両眼をおおうゴーグルやシールドがひろく着用される。
【0004】
また、建物の解体、土石の採取や砕石、トンネル掘削、鉱山、セメント製造や製鉄など、いわゆる塵埃職場においても、異物から眼を保護するためにゴーグルやシールドがひろく着用される。
【0005】
これらのゴーグルやシールドは、シングルレンズとよばれる一重のレンズであることが基本形になっている。
【0006】
ゴーグルやシールドには、打撃防止機能と異物遮断機能が不可欠である。現在では、その構造と樹脂などの使用材料を適切に工夫・選択することによって、おおむね満足できる性能をだせるようになった。
【0007】
異物遮断機能は、両眼をおおう構造そのものに基づくため、レンズに使用する樹脂の性質にあまりかかわらないが、打撃防止機能は、レンズ基材の曲げ剛性や耐衝撃強度などにかかわり、腰が強くて曲がりにくい、かつ強靭性のある樹脂が一般に使われてきた。
【0008】
ただ、ゴーグルやシールドは、着用中の発汗や環境温度変化をうけて、曇りやすいという欠陥がある。
【0009】
ゴーグルやシールドの防曇機能付与については、レンズの内側、つまり接眼側に防曇コーティングをする方法がとられている。ただ、いかなる防曇剤も、吸湿量に限界があり、一定量以上を吸水すると防曇膜に水滴がつき、レンズが曇る問題があった。
【0010】
しかも、ゴーグルやシールドの接眼側は、人体との間に一種の密閉的空間をつくるので、皮膚からつねに供給される汗などの水分がこもる構造になっている。そのため、ゴーグルやシールドを着用しつづけると、遅かれ早かれ曇りが発生するのは避けがたく、半永久的に防曇性を付与することは困難であった。
【0011】
こうした防曇機能の限界にたいし、ほぼ平行的に配置した2枚のレンズを、レンズの周縁部に置いたガスケットで固定する二重レンズ構造、つまりダブルレンズが提案されている。
【0012】
ダブルレンズを構成する2枚のレンズのうち、外側に面するレンズ、つまりフロントレンズは、打撃防止機能付与のため、おおむねポリカーボネート樹脂がつかわれてきた。
【0013】
これに対し、接眼側となる内側のレンズ、つまりバックレンズは、吸湿性があり、防曇性能のあるアシルセルロース樹脂、なかんずくプロピルセルロースが好ましく使われている。
【0014】
ダブルレンズは、2枚のレンズとガスケットによって作られる空間が温度緩衝ゾーンになるため、寒冷な外気と接触しても、ゴーグル内部の冷却が緩和される。
【0015】
したがって、人体に接する側に閉じこめられた水蒸気が、バックレンズへ結露しにくくなるとともに、たとえ結露しても、アシルセルロース樹脂に吸収されるため、ダブルレンズのゴーグルやシールドは、シングルレンズにくらべると、接眼側の曇りが生じにくくなった。
【0016】
しかし、アシルセルロース樹脂は一般に透湿性が高く、バックレンズをとおして、人体に接する側に閉じこめられた水蒸気が、フロントレンズとバックレンズとガスケットによって作られるダブルレンズの内部へ透過しやすく、暖かい部屋から、−5℃を下回るスキーゲレンデのような寒冷環境にでると、フロントレンズの内側、つまり、フロントレンズのバックカーブ側に曇りが生じる問題があった。
【0017】
この問題にたいし、フロントレンズのバックカーブ側に防曇性能のある被膜を付与することが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特表2002−505157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、射出成形したポリカーボネート樹脂のフロントレンズのバックカーブ側にだけ防曇膜を付与するのは、製造技術的に容易でない。
【0019】
たとえば、簡便なディッピング法でおこなうと、バックカーブ側と同時にフロントカーブ側にも防曇コーティングされることになる。そうすると、防曇膜は一般に硬度がひくいので、ゴーグルやシールドの表面を拭ったりすると防曇膜に傷がつき、それが重なると、やがてスリガラスのようになって視界不良になる。
【0020】
また、難しい技術を駆使して、フロントレンズのバックカーブ側にだけ防曇コーティングをしたとしても、防曇膜は一般に、それ自体の強度や、基材への密着性が低いため、ガスケットとの固着個所がすぐに剥離をおこし、耐久性のあるダブルレンズを造れない問題があった。
【0021】
密着性の低下する問題には、ガスケットの固着する部分の防曇膜を未処理にする思想が提案されているが、具体的な手法の提案はない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、次のような手段を講ずるに至った。
【0023】
フロントレンズのバックカーブ側とバックレンズのフロントカーブ側を平行的に対置した状態でガスケットによって固着されるダブルレンズの、少なくともフロントレンズのバックカーブ側か、バックレンズのフロントカーブ側のいずれかに防曇膜が形成されているダブルレンズの、ガスケットを固着する部分をさけて防曇膜が形成されているダブルレンズにおいて、防曇膜形成予定面にガスケットを固着してから、または、それ相当形状のマスキング体で被覆してから防曇膜が形成されていることを特徴とするダブルレンズにした。
【0024】
さらには、ガスケットの相当形状をのこして印刷法によって防曇膜が形成されていることを特徴とするダブルレンズにした。
【0025】
さらには、防曇膜を形成する前にダブルレンズをガスケットで固着し、レンズあるいはガスケットに設けられた空孔からダブルレンズ内に防曇液を注入して防曇膜が形成されていることを特徴とするダブルレンズにした。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、打撃や、雨、雪、塵埃などから眼を保護する機能にすぐれ、かつ、発汗や環境温度変化があっても曇りにくく、かつ、耐久性があり、スキー、スノーボード、アイススケート、サイクリング、モトクロスなどのスポーツ用途や、建築や土木工事などの産業用途において好適に使用できるゴーグルやシールドに適するダブルレンズを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のダブルレンズは、例えば図1〜3に示した眼用光学構造物であるスキー用ゴーグルに使用するフロントレンズ1とバックレンズ2の2枚の樹脂レンズからなり、かつ、平行的に対置した両レンズがガスケット3によって固着され、その結果、フロントレンズ1とバックレンズ2とガスケット3で囲まれた空間をそなえている。
【0028】
本発明のフロントレンズ1に用いる樹脂は、塩ビ樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢ビ樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アセチルセルロース樹脂など透明性の高い樹脂が好ましいが、なかでも、透明、かつ、硬さや曲げ強度、強靭性をそなえるポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
【0029】
ポリカーボネート樹脂には、ビスフェノールA系など芳香族ポリカーボネート樹脂、脂環族ポリカーボネート樹脂、および、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のポリマーアロイが含まれる。
【0030】
なかでも、硬さや強度、強靭性から、ビスフェノールAなど芳香環をふくむポリカーボネート樹脂、ならびに、同ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とのポリマーアロイが好ましい。
【0031】
ポリウレタン樹脂は、芳香族イソシアネートや脂環族イソシアネートをイソシアネート成分の主成分にしたポリウレタン樹脂のうち、結晶化の起こりにくい、透明性の高いポリウレタン樹脂が好ましい。
【0032】
ポリエステル樹脂は、テレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸成分の主成分にしたポリエステル樹脂のうち、透明性の高いポリエステル樹脂が好ましい。
【0033】
ポリアミド樹脂は、脂環族あるいは脂肪族ジカルボン酸、および、脂環族あるいは脂肪族ジアミンを分子内にふくむ非晶性で透明度のたかいポリアミド樹脂が好ましい。
【0034】
上記のポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のうち、樹脂の硬さ、曲げ強度、強靭性において優れるポリカーボネート樹脂が、とくに好ましく使われる。
【0035】
なかでも、ビスフェノールAなど芳香環をふくむポリカーボネート樹脂、あるいは、同ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のポリマーアロイであって、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が15000以上、好ましくは18000以上のものが、曲げ強度と靭性においてすぐれ、本発明のダブルレンズを使用したゴーグルやシールドの着用者を打撃から守る機能がたかいので、とくに推奨される。
【0036】
フロントレンズ1は、一般に、射出成形法、押し出し成形法、プレス成形法、キャスト成形法で作ることができる。
【0037】
本発明のポリカーボネート樹脂、あるいはポリウレタン樹脂、あるいはポリエステル樹脂、あるいはポリアミド樹脂をフロントレンズ1にする場合は、円筒形状、あるいは非球面形状、あるいは球面形状の金型をもちい、円筒形状、あるいは非球面形状、あるいは球面形状のフロントレンズ1にすることが好ましい。
【0038】
なかでも、非球面形状、あるいは球面形状であることが、デザイン的にも、あるいは、全方位的に屈折力補正するうえでも好ましいことがある。
【0039】
ここで非球面形状というのは、魅力的外観をねらったデザイン上の要請、あるいは、ゴーグルやシールドを着用したときに、レンズのどの部位においても、できるだけ歪んで見えないようにする光学的な要請から、真性の球面をいくぶんか逸脱する非球面形状をさす。
【0040】
また、球面形状というのは、レンズのどの横断面をとっても、フロントカーブとバックカーブが円弧の一部になる、真性の球面をさす。
【0041】
なお、ここでいうフロントカーブは、レンズの対物側のカーブをさし、バックカーブは、レンズの接眼側のカーブをさす。
【0042】
厚みを均一に設計したレンズをプラノレンズというが、とくに一眼ゴーグルあるいは一眼シールドのように横長のプラノレンズの場合は、レンズ中央部から左右の端部にいくほど、入射角の鋭角化とレンズ基材内の行路長の増加はさけられず、その結果、レンズ端部になるほど屈折力が発生し、視覚的歪みが大きくなりやすい。すなわち、横長レンズのゴーグルやシールドの着用者にとり、レンズを左右端視するほど歪んで見えやすい欠陥がある。
【0043】
こうした厚み均一レンズの屈折力は、射出成形法であれば、レンズ端部に行くほどレンズ厚みを薄くして補正する手法がある。
【0044】
すなわち、屈折力を補正する光学理論にもとづき、レンズ中心から端部へいくほど、レンズ厚みをうすく設計した非球面金型をもちい、視覚的歪みを補正した非球面形状レンズにする。
【0045】
また、同様に、フロントカーブ度数にたいしバックカーブ度数を調整した金型をもちい、端部にいくほどレンズの厚みを薄くして視覚的歪みを補正した球面形状レンズにする。
【0046】
なお、ここでいうカーブ度数とは、ガラスの屈折率を1.523、曲率半径をR(m)とすれば、(1.523−1)/Rをさす。
【0047】
なお、屈折力を補正する理屈は、円筒形状レンズの場合でもおなじである。
【0048】
こうした、屈折力補正は、金型を用いる射出成形法やキャスト成形法の場合に、とくに有利である。
【0049】
フロントレンズ1のうち、屈折力を補正しないレンズの場合は、レンズ厚み0.3〜3mmが好ましく、なかでも、0.4〜2.6mmの範囲が推奨される。
【0050】
厚みが0.3mmを下回ると、レンズが曲がったり折れたりしやすく、物理的強度がよわくなり、また3mmを上回ると、レンズ端部の屈折力がおおきくなりやすく、好ましくない。
【0051】
屈折力を補正する場合は、レンズ中心厚み0.8〜4mmが好ましく、なかでも1〜3.6mmの範囲が推奨される。
【0052】
中心厚みが0.8mmを下回ると、レンズ端部において物理的強度がよわくなりやすく、また4mmを上回ると、レンズが重くなりやすく好ましくない。
【0053】
また、フロントレンズ1には、樹脂シートを用いることができる。この場合は、樹脂をスリットからシート状に押し出すか、プレス成形するか、キャスト成形して、厚み0.3〜3mm、より好ましくは0.4〜2.6mmの樹脂シートをつくり、それを非球面形状、あるいは球面形状、あるいは円筒形状に賦形する方法をとりうる。
【0054】
シート厚みが0.3mmを下回ると、ゴーグルやシールドレンズにした場合、曲がったり折れたりしやすく、また、3mmを上回ると、レンズ端部の屈折力がおおきくなりやすく、好ましくない。
【0055】
樹脂シートを非球面形状あるいは球面形状あるいは円筒形状へ賦形する方法はとくに限定しないが、上記の樹脂シートを適切な大きさに切りとり、切りとった樹脂シートを賦形用の型にセットし、熱風や熱コテなどによって、一定形状に熱賦形する方法が一般的である。
【0056】
フロントレンズ1を射出成形やキャスト成形するときに、あらかじめフロントレンズ1と同じ非球面形状あるいは球面形状あるいは円筒形状に賦形してある偏光板や調光性樹脂板を金型内にセットしておき、偏光板や調光性樹脂板をレンズ表面にインサート成形することも可能である。
【0057】
また、フロントレンズ1は、その表面を、ハードコートしたり、反射防止加工したり、撥水加工したりして、付加価値を高めることができる。
【0058】
また、真空蒸着技術などにより、メタリック、あるいはハーフミラー的、あるいは特殊色相の超薄膜を付与することもできる。
【0059】
また、基材となる樹脂にあらかじめ染料や顔料をいれたり、レンズや樹脂シートにしてから染料で染色したりして、着色することができる。
【0060】
本発明のバックレンズ2に用いる樹脂は、フロントレンズ1に用いる樹脂であれば一般に使用可能である。
【0061】
なかでも、透明かつ硬さや曲げ強度、強靭性をそなえるポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
【0062】
また、透明性と防曇性とある程度の物理強度をもつアシルセルロース樹脂も好ましく用いられる。
【0063】
すなわち、ポリカーボネート樹脂には、ビスフェノールAなど芳香環をふくむ芳香族ポリカーボネート樹脂、脂環族ポリカーボネート樹脂、および、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のポリマーアロイが含まれる。
【0064】
なかでも、樹脂の硬さや曲げ強度、強靭性から、ビスフェノールAなど芳香環をふくむポリカーボネート樹脂、ならびに、同ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のポリマーアロイが好ましい。
【0065】
また、ポリウレタン樹脂は、芳香族イソシアネートや脂環族イソシアネートをイソシアネート成分の主成分にしたポリウレタン樹脂のうち、結晶化の起こりにくい、透明性の高いポリウレタン樹脂が好ましい。
【0066】
また、ポリエステル樹脂は、テレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸成分の主成分にしたポリエステル樹脂のうち、透明性の高いポリエステル樹脂が好ましい。
【0067】
また、ポリアミド樹脂は、脂環族あるいは脂肪族ジカルボン酸、および、脂環族あるいは脂肪族ジアミンを分子内に含む、非晶性で透明度のたかいポリアミド樹脂が好ましい。
【0068】
また、アシルセルロース樹脂は、アセチルセルロースやプロピルセルロースなどセルロースのアルキルカルボン酸(モノ、ジ、トリ)エステル、あるいはその混合体、あるいはエステル混合体が好ましいが、とくに、防曇性と成形性のよいプロピルセルロース系樹脂が好ましい。
【0069】
アシルセルロース樹脂は、可塑性をあげるために、可塑剤を添加したものであってもよい。
【0070】
また、アシルセルロース樹脂は、防曇性をあげるために、レンズ表面をアルカリ処理することが好ましい。
【0071】
上記のポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アシルセルロース樹脂のうち、樹脂の硬さ、曲げ強度、強靭性からは、とくにポリカーボネート樹脂が、また樹脂の防曇性能からは、とくにプロピルセルロース系樹脂が好ましく使われる。
【0072】
なかでも、好ましいポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAなど芳香環をふくむポリカーボネート樹脂、あるいは、同ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のポリマーアロイであって、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が15000以上、好ましくは18000以上のものが、強度と靭性においてすぐれ、ゴーグルやシールドの着用者を打撃から守る機能がたかいので、とくに推奨される。
【0073】
また、好ましいプロピルセルロース系樹脂は、(ジまたはトリ)プロピルセルロース、あるいは(モノ、ジ、トリ)プロピルセルロースの混合物、あるいは、プロピルセルロース主体の、アセチルセルロースなど他のアシルセルロースとの混合物である。
【0074】
本発明のバックレンズ2は、フロントレンズ1と同様、射出成形法やプレス成形法やキャスト成形法や押し出し成形法でつくることができる。
【0075】
射出成形法やキャスト成形法のように金型を使う場合は、厚み均一レンズのほか、端部
ほど薄くする屈折力補正レンズを作ることができる。
【0076】
なかんずく、本発明で好ましく使われるバックレンズ2は、製造の容易性やコスト面から、樹脂シートからつくる厚みが均一なバックレンズ2である。
【0077】
バックレンズ2は、厚み0.3〜3mm、好ましくは0.4〜2.6mmであることが推奨される。
【0078】
レンズ厚みが0.3mmを下回ると、レンズが曲がったり折れたりしやすい。
【0079】
また、レンズ厚みが3mmを超えると、フロントレンズ1と同様、屈折力によるレンズ端部の視覚的歪みが大きくなりやすい。
【0080】
本発明のバックレンズ2は、フロントレンズ1にちかい非球面形状あるいは球面形状あるいは円筒形状であることが好ましい。フロントレンズ1とほぼ同形状にすることによって、両レンズをほぼ平行的に対面配置することができ、ダブルレンズの厚みをほぼ一定にできて、ダブルレンズの見栄えがよくなる。
【0081】
バックレンズ2をフロントレンズ1とほぼ同形状にする方法、すなわち、バックレンズ2を非球面形状あるいは球面形状あるいは円筒形状にする方法はとくに限定しないが、フロントレンズ1の金型にちかい形状の金型をもちいる方法、あるいは、樹脂シートを適切な大きさに切りとり、切りとったシートを賦形用の型にセットし、熱風や熱コテなどによって、フロントレンズ1にちかい形状に熱賦形するのが一般的である。
【0082】
あるいは、樹脂シートのフロントレンズ1と樹脂シートのバックレンズ2を、ガスケット3で固着するときに、円筒形状に曲げながら固着する方法、あるいは、樹脂シートのフロントレンズ1と樹脂シートのバックレンズ2を、事前に賦形することなくガスケット3で固着してダブルレンズにし、レンズ嵌合孔が円筒形状にカーブしたゴーグルフレームあるいはシールドフレームへ、ダブルレンズを曲げながらセットする方法などがある。
【0083】
とくにバックレンズ2が、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のような合成樹脂でできている場合は、バックレンズ2のバックカーブ側が、人体から発生する水分の影響をうけて結露しすいので、防曇処理されていることが好ましい。
【0084】
このための方法として、防曇液を塗布し、防曇膜を形成することが推奨される。バックレンズ2がアシルセルロース樹脂である場合は、先述のとおり、アルカリ処理による加水分解処理によって、レンズ表面に防曇性能を付与することが推奨される。
【0085】
また、バックレンズ2は、ハードコートや蒸着膜など、フロントレンズ1と同様に機能性膜を付与してもよい。
【0086】
フロントレンズ1とバックレンズ2とガスケット3によって囲われた内部の空間は、人体から発生する水分や大気の水分がフロントレンズ1やバックレンズ2をとおして透過する可能性があるので、スキーゲレンデのような低温環境で結露をおこす可能性がある。
【0087】
本発明では、こうした結露を防止する目的で、少なくともフロントレンズ1のバックカーブ側か、バックレンズ2のフロントカーブ側のいずれかに防曇膜を形成する。
【0088】
とくに、外気温に直接さらされるフロントレンズ1のバックカーブ側が結露しやすいので、その部分に防曇膜を形成することが推奨される。
【0089】
しかし、ディッピング法やスピンコート法で防曇液をぬると、全面的にコーティングされ、レンズの全面に防曇膜が形成されることになる。そのため、ガスケット3でレンズを固着するさい、防曇膜を介して接着剤あるいは粘着剤で固着することになる。
【0090】
防曇膜は、一般にレンズ基材との密着性がよわい。また、とくに吸湿時の膜強度がよわい。そのため、ダブルレンズとガスケット3を粘着剤や接着剤で固着しても、レンズと防曇膜の界面、あるいは防曇膜内部で剥離する問題があり、耐久性のあるダブルレンズ、すなわち、耐久性のあるゴーグルやシールドが作れない問題が生じる。
【0091】
こうしたダブルレンズの剥離をふせぐために、本発明では、ガスケット3を固着する部分をのぞいて防曇膜を形成し、ガスケット3を固着する部分に防曇膜のないダブルレンズにする。
【0092】
そのための方法として、防曇膜形成予定面にガスケット3を固着してから、または、それ相当形状のマスキング体で被覆してから防曇膜を形成する方法がある。ここで、マスキング体とは、マスキングシートやマスキング用パッキングをさす。
【0093】
すなわち、ガスケット3やガスケット3相当形状のマスキング体で固着あるいは被覆してから、ディッピング法やスピンコーティング法、印刷法、あるいは蒸着法によって防曇液を塗布するか、防曇膜を蒸着形成し、ガスケット3を固着する部分だけに防曇膜を形成しない方法である。
【0094】
また、マスキング体で被覆せず、ガスケット3の相当形状をのこして印刷法によって防曇液を塗布し、ガスケット3を固着する部分だけに防曇膜を形成しない方法がある。
【0095】
印刷法には、いわゆるタコ印刷法などのスタンプ方式、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などがある。
【0096】
また、ダブルレンズにしてから、たとえば、後述する気圧調整孔やガスケット3の孔をつうじてダブルレンズ内に防曇液を注入し、注入した防曇液をダブルレンズ内でリンシングして防曇液をコーティングし、余分の防曇液は、気圧調整孔やガスケット3の孔をつうじて排出して、ガスケット3を固着する部分だけに防曇膜を形成しない方法がある。
【0097】
なお、バックレンズ2がアシルセルロース樹脂である場合は、バックレンズ2を事前にアルカリ処理することによって防曇性能を付与できるので、とくに防曇膜を形成する必要はなく、かつ、防曇性を付与しても、ガスケット3の固着性を妨げないので、とくに推奨される。
【0098】
本発明で用いる防曇液は、界面活性剤系、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カンテン、ゼラチンのような親水性ポリマー系、親水性モノマー主体の熱や活性光線硬化系、あるいはこれらの混合系などが考えられる。
【0099】
これらの化合物は、必要におうじて水やアルコールなどの溶剤に溶解し、必要におうじてレベリング剤や重合開始剤をくわえ、コーティング後に乾燥、あるいは硬化して防曇膜にするのが普通である。
【0100】
また、蒸着する場合は、Si02などの酸化ケイ素系膜が代表的であり、形成した蒸着膜へ、さらに界面活性剤などの親水性化合物を付与する方法もある。
【0101】
本発明において、ガスケット3を固着する部分をのぞいて防曇膜を形成する方法にもよるが、本発明のダブルレンズは、フロントレンズ1とバックレンズ2を、ほぼ平行的に対置する形でガスケット3を介して粘着、または接着固着して作ることができる。
【0102】
ガスケット3の基材樹脂は、ポリウレタン樹脂や合成ゴムやエラストマー類などが適し、なかでも、指で押して変形可能、かつ元の形に自然復元するくらいの弾力性があり、破断伸度が40%以上ある樹脂あるいは多孔性樹脂が好ましい。
【0103】
とくに、弾力性や伸度を好ましい大きさに調整しやすく、かつ、重量を軽くできる多孔性ガスケットが推奨される。
【0104】
多孔性ガスケットの場合は、汗や雪、雨などの濡れがダブルレンズ内部へ浸透しにくくするために、独立気泡性であることが好ましい。
【0105】
ガスケット3は、ゴーグルの美観上、顔料や染料によって着色されていることがのぞましく、とくに黒あるいは白など無彩色系の色相が好ましい傾向がある。
【0106】
ガスケット3の形態としては、上記基材樹脂を相当直径1〜8mm、好ましくは3〜6mmのひも状に成形した、ひも状ガスケットであってもよい。
【0107】
ひも状ガスケットの相当直径が1mmを下回ると、フロントレンズ1とバックレンズ2の間隙が十分でなくなり、両レンズが接触する可能性や、接着力不足が生じやすい。また、8mmを上回ると、ゴーグルの美観にさしさわる可能性がある。
【0108】
ひも状ガスケットをもちいてダブルレンズをつくる場合は、粘着剤、あるいは接着剤を塗布したひも状ガスケットを、フロントレンズ1のバックカーブ側、あるいはバックレンズ2のフロントカーブ側の、防曇膜のない部分におき、防曇膜を形成後、あるいは形成以前に、フロントレンズ1とバックレンズ2を重ねあわせ、両レンズをほぼ平行的に対置し、必要におうじて熱や圧力を加えて貼付、固定してダブルレンズをつくる方法がある。
【0109】
また、ガスケット3は、シート状ガスケットであってもよく、ひも状ガスケットと同じ方法、プロセスをへて、ダブルレンズをつくる方法がある。
【0110】
この場合は、上記した基材樹脂でつくった厚み0.5〜7mm、好ましくは1〜5mmのシートを、ダブルレンズの接着形状にあわせ、幅2〜10mm程度、好ましくは3〜8mm程度に打ちぬき、あるいは切断し、粘着剤または接着剤で、フロントレンズ1とバックレンズ2を貼付する方法をとるのが一般的である。
【0111】
ガスケット3の厚みが0.5mmを下回ると、フロントレンズ1とバックレンズ2の間隙が十分でなくなり、両レンズが接触しやすくなる。また、厚みが7mmを超えると、ゴーグルの見栄えをそこなう傾向がある。
【0112】
ガスケット3の幅が2mmを下回ると、粘着剤や接着剤の接着力が不十分になりやすく、また、10mmを上回ると、ゴーグルの見栄えをそこなう傾向がある。
【0113】
なお、ガスケット3の幅は、必ずしも一定である必要はなく、意匠性や構造的な必要性を勘案して、適宜変更しうるものである。ガスケット3の幅に、たとえば、幅2〜10mm “程度”とあるのは、そうした意味合いがこめられる。
【0114】
本発明でもっとも好ましいガスケット3は、作りやすさや作業性から、シート状ガスケットである。シートの両面に粘着剤または接着剤を塗布し、さらにリリースシートでカバーしたガスケット3シートを、ダブルレンズの接着形状にあわせ、打ちぬき、あるいは切断し、環状あるいはそれに近いガスケット3を作り、リリースシートを剥離してから、フロントレンズ1のバックカーブ側、あるいはバックレンズ2のフロントカーブ側の防曇膜のない部分におき、防曇膜を形成後、あるいは形成以前に、フロントレンズ1とバックレンズ2を重ねあわせ、両レンズをほぼ平行的に対置し、必要におうじて熱や圧力を加えて貼付、固定してダブルレンズ部分をつくる方法が、作業性や接着の確実性からもっとも好ましい。
【0115】
ガスケット3の粘着剤にはアクリル系や合成ゴム系などがあり、また、接着剤には酢酸ビニル系、シアノアクリレート系、ポリウレタン系、エラストマー系などがある。作業性や接着の確実性から、粘着剤の方が好ましい。
【0116】
以上のようにして、フロントレンズ1とバックレンズ2とガスケット3によって、フロントレンズ1とバックレンズ2とガスケット3で囲まれた空間をもつ1個のダブルレンズができあがる。
【0117】
この空間は、スポーツ中や仕事のさいちゅうに雨や汗が入りこまないよう密閉空間にすることが好ましい。
【0118】
しかし、スキーやスノーボードのように、リフトやゴンドラによって、一日のうちに何度も標高変化のあるスポーツの場合は、この空間が密閉空間であると、気圧変動によって、ダブルレンズが膨れあがったり、へこんだりする。その結果、気圧変動に耐えられず、ガスケット3の固着面が剥離するおそれがある。
【0119】
かかる不都合を防止するため、本発明では、フロントレンズ1とバックレンズ2とガスケット3で囲まれた空間に気圧調整孔をそなえたダブルレンズにすることが推奨される。
【0120】
気圧調整孔を設ける方法として、レンズに設ける場合とガスケット3に設ける場合がある。
【0121】
レンズに設ける場合は、孔やスリットなどをレンズに設ける。なかでも、着用中の外観をそこないにくいバックレンズ2に設ける方法が推奨される。
【0122】
この場合は、バックレンズ2に少なくとも1つの気圧調整孔を設ける。美観上、気圧調整孔は1つであることが望まれる。
【0123】
気圧調整孔の形状はとくに限定しないが、円形や楕円形状であることが、レンズの物理的強度をそこないにくく、美観のうえでも好ましい。
【0124】
また、気圧調整孔の大きさは、相当直径0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2.5mmであることが推奨される。相当直径が0.5mmを下回ると、気圧調整孔が1つの場合は、気圧調整の機能が不十分になりやすく、3mmを上回ると、ゴーグルなどの美観をそこなう傾向がある。
【0125】
本気圧調整孔は、なんらかの防水処置をしてあることが好ましい。防水処置として、水を通しにくいが、水蒸気は透過する機能をもつシートを孔の上に貼付する方法が推奨される。
【0126】
このようなシートとして、ジャパンゴアテックス株式会社製のゴアテックスのようなフッ素系微多孔性シート、ポリウレタン系シート、撥水剤処理をした、あるいはしない連続気泡性の微多孔性シート、撥水剤を吹き付けたり塗ったりした防水布、撥水処理をした繊維を織ったり、編んだりした繊維製品などがある。
【0127】
これらのシート状物は、粘着剤や接着剤によってレンズの気圧調整孔に貼付される。
【0128】
また、気圧調整孔をガスケット3に設ける場合は、ガスケット3に少なくとも1つの気圧調整孔を設ける。
【0129】
かかる気圧調整孔として、ガスケット3に、小さな切れ目をつくることが推奨される。多孔性ガスケットの場合は、連続気泡のガスケット3にする方法がある。
【0130】
ガスケット3に、小さな切れ目をつくる方法も、多孔性ガスケットの方法も、外部からの雨や汗の侵入をふせぐために、前者では、水を通しにくいが、水蒸気は透過する機能をもつ上記のようなシートを貼付することが好ましい。また、後者では、撥水剤を吹き付けるか塗るかして、表面を防水処置することが好ましい。
【0131】
本発明を限定するものでないが、本発明のダブルレンズは、ゴーグルであれば、通常、射出成形された構造体であり、ダブルレンズを嵌合する孔と、顔面へ軟らかくフィットするクッション作用のある顔面装着体のついたゴーグルフレームに装着される。
【0132】
また、ゴーグルフレームは、ゴーグル内の換気ができるよう外気との通気孔をもうけることが好ましい。
【0133】
ゴーグルフレームに使用する樹脂は、ダブルレンズの嵌合作業性や、顔面フィット性から、適度の軟らかさをもった樹脂が推奨される。
【0134】
ダブルレンズは、ゴーグルフレームの嵌合孔に嵌合され、通常は該嵌合孔にそなわる溝に固定される。場合によっては、粘着剤や接着剤で接着することもある。
【0135】
ゴーグルフレームにもうける外気との通気孔は、着用中のゴーグルに、人体から発生する水分がこもらないよう換気する役割をもつ。すなわち、バックレンズ2のバックカーブ側の曇りや、水蒸気がバックレンズ2をとおし、ダブルレンズ部分へ侵入するのを防ぐ役割をする。
【0136】
通気孔は、通常、ゴーグルフレームの上辺、側面、あるいは下辺にもうける。
【0137】
孔の大きさや数はとくに限定しないが、通気性をたかめるために、その面積が1cm2 以上であることが好ましい。
【0138】
また、通気孔が開放系の孔であると、雨や雪や汗が入りこむ恐れがあるので、通常、通気孔になんらかの防水処置をすることが好ましい。防水処置として、水を通しにくいが、水蒸気は透過する機能をもつシートを孔の上に貼付する方法が推奨される。
【0139】
このようなシートとして、ジャパンゴアテックス株式会社製のゴアテックスのようなフッ素系微多孔性シート、ポリウレタン系シート、撥水剤処理をした、あるいはしない連続気泡性の微多孔性シートまたは多孔体またはメッシュ体、撥水剤を吹き付けたり塗ったりした防水布、撥水処理をした繊維を織ったり、編んだりした繊維製品などがある。
【0140】
これらのシート状物、あるいは多孔体またはメッシュ体は、粘着剤や接着剤によってゴーグルフレームの通気孔に貼付する。
【0141】
また、ゴーグルフレームは、顔面フィット性をよくするために、通常は顔面構造にあわせ、おおむね円筒形状に設計される。
【0142】
これに加え、ゴーグルフレームは、顔面とのフィット性およびクッション性をたかめ、顔面に痛痒などの不快感を与えないよう、通常は、顔と接触する部分に顔面装着体がつけられる。
【0143】
顔面装着体は、ゴーグルフレームよりも軟らかい樹脂でつくられた一種のクッション材である。感触のよさから、多孔性の樹脂であることが好ましい。連続気泡、独立気泡のいずれも用いられるが、通気性のある連続気泡が好ましい。
【0144】
ゴーグルフレームと顔面装着体とは、一般に異なった樹脂が用いられ、両者を粘着剤や接着剤で貼付したり、面ファスナーで固定したりする。
【0145】
本発明のダブルレンズは、シールドとして、あるいはシールドの一部に組みこんで使用することがある。
【0146】
ゴーグルフレームとシールドは、顔面やヘルメットへ固定するためのベルトや金具がとりつけられる。
【0147】
[実施例1]
(ゴーグルの調製)
(1) フロントレンズの調製:粘度平均分子量が22000程度のビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂をつかい、フロントカーブが6C、バックカーブが6.1C、中心厚みが1.8mmのフロントレンズを射出成形した。
フロントレンズのフロントカーブ側に、真空蒸着法でミラー加工した。
【0148】
(2) フロントレンズのバックカーブ側の防曇膜形成:フロントレンズのフロントカーブ側とバックカーブ側のガスケット固着部分にマスキングシートを貼付したものを、ポリビニルアルコールと界面活性剤を主成分にする防曇膜形成用水溶液にディッピングし、フロントカーブ側とバックカーブ側のガスケット固着部分をさけて防曇液をぬり、乾燥して、バックカーブ側に、ガスケット固着部分をさけて防曇膜を形成した。
そのあと、マスキングシートを剥離した。
【0149】
(3) バックレンズの調製:アルカリ液へディッピング処理してシート表面に防曇性能を付与した厚み0.8mmのトリプロピルセルロース主体のプロピルセルロースシートを、フロントレンズにほぼ近い大きさに打ちぬいた。
バックレンズのガスケットにできるだけ近い位置に、直径1mmの円形孔を打ちぬいて、気圧調整孔をつくった。
つづいて、上記プロピルセルロースシートを型にはめ、フロントレンズのバックカーブに近い形状に熱賦形して、バックレンズをつくった。
【0150】
(4) ガスケットの調製:厚み3mmのクロロプレンでできた独立気泡性シートの両面に粘着剤をぬり、さらにリリースシートでおおったものを、ダブルレンズの固着形状に打ちぬき、幅5mmのリング状ガスケットをつくった。
【0151】
(5) ダブルレンズの調製:上記リング状ガスケットの片側のリリースシートをはぎ、バックレンズのフロントカーブ側に固着する。
もう片側のリリースシートをはぎ、ガスケット固着部分をさけて防曇膜を形成したフロントレンズを平行的に対置させ、フロントレンズを押し付けて、両レンズを固着した。
【0152】
(6) ダブルレンズの気圧調整孔の防水:バックレンズに設けた直径1mmの気圧調製孔に、直径3mmの粘着剤つきフッ素系多孔膜(“ゴアテックス”、ジャパンゴアテックス株式会社製)を貼付して、気圧調整孔の防水をした。
【0153】
(7) ゴーグルフレームの調製:ダブルレンズ部分を嵌合する孔と、上辺に1つあたり1cm2 の通気孔を4つそなえ、かつ、顔面へフィットしやすいように円筒形状に設計された金型を用い、ポリウレタン樹脂を射出成形して、ゴーグルフレームを調製した。
【0154】
(8) ゴーグルフレームの通気孔の防水:各通気孔に、厚み2mmの連続気泡性ポリウレタンシートを粘着剤で貼付した。
【0155】
(9) ゴーグルフレームの顔面装着体取りつけとゴーグルフレームの完成:厚み15mmの連続気泡性ポリウレタンシートを、ゴーグルフレームの接顔部分の形状にあわせ15mm幅で切りとり、リング状の顔面装着体をつくり、粘着剤でゴーグルフレームの周囲に貼付して、ゴーグルフレームを完成した。
【0156】
(10)ゴーグルフレームにダブルレンズの取りつけ:ゴーグルフレームのダブルレンズを嵌合する孔にダブルレンズを嵌合し、嵌合孔周囲の溝にはめて、ダブルレンズを固定した。
【0157】
(11)顔面固定用のベルトの調製とゴーグルの完成:ゴム糸のまわりを合成繊維で巻いた伸縮性の糸でつくったベルトと留め金でできた顔面固定用ベルトをつくり、ゴーグルフレームに固定して、ゴーグルを完成した。
【0158】
(防曇テスト)
上記ゴーグルを室温で顔面に装着してから−5℃の環境試験室に入った。1時間たっても、ダブルレンズのどのレンズ部位にも曇りが発生しなかった。
また、ダブルレンズをねじっても、フロントレンズとバックレンズとガスケットのあいだの固着部分に剥離が見られなかった。
【0159】
[実施例2] - (ゴーグルの調製)
(1) フロントレンズの調製:透明ナイロン樹脂(“ダイアミド”ZC7500、ダイセル・デグッサ社製)をつかい、フロントカーブが6C、バックカーブが6.1C、中心厚みが1.8mmのフロントレンズを射出成形した。
フロントレンズのフロントカーブ側に、真空蒸着法でミラー加工した。
【0160】
(2) バックレンズの調製:アルカリ液へディッピング処理してシート表面に防曇性能を付与した厚み0.8mmのプロピルセルロースシートを、フロントレンズにほぼ近い大きさに打ちぬいた。
バックレンズのガスケットにできるだけ近い位置に、直径2mmの円形孔を打ちぬいて、気圧調整孔をつくった。
つづいて、上記プロピルセルロースシートを型にはめ、フロントレンズのバックカーブに近い形状に熱賦形して、バックレンズをつくった。
【0161】
(3) ガスケットの調製:厚み3mmのクロロプレンでできた独立気泡性シートの両面に粘着剤をぬり、さらにリリースシートでおおったものを、ダブルレンズの固着形状に打ちぬき、幅5mmのリング状ガスケットをつくった。
【0162】
(4) ダブルレンズの調製:上記リング状ガスケットの片側のリリースシートをはぎ、バックレンズのフロントレンズ側に固着する。もう片側のリリースシートをはぎ、フロントレンズのバックカーブ側を平行的に対置させ、押し付けて、両レンズを固着した。
【0163】
(5) フロントレンズのバックカーブ側とバックレンズのフロントカーブ側の防曇膜形成:バックレンズの直径2mmの気圧調整孔に、ポリビニルピロリドンと界面活性剤を主成分にする防曇膜形成用エチルアルコール系水溶液を注入した。
ダブルレンズを満遍なくゆすり、防曇膜形成用エチルアルコール系水溶液をくまなく行き渡らせてから、遠心機にかけて、遠心法によって余剰の防曇膜形成用エチルアルコール系水溶液を気圧調整孔から抜き取った。
その後、ダブルレンズを減圧乾燥機にいれ、防曇膜形成用エチルアルコール系水溶液を乾燥して防曇膜にした。
【0164】
(6) ダブルレンズの気圧調整孔の防水とダブルレンズの完成:バックレンズに設けた直径2mmの気圧調製孔に、直径4mmの粘着剤つきフッ素系多孔膜(“ゴアテックス”、ジャパンゴアテックス株式会社製)を貼付して、ダブルレンズを完成した。
【0165】
(7) ゴーグルフレームの調製:ダブルレンズを嵌合する孔と、ゴーグルフレームの上辺に1つあたり2cm2 の通気孔を2つ、ゴーグルフレームの下部に1つあたり2cm2 の通気孔を2つそなえ、かつ、顔面へフィットしやすいように円筒形状に設計した金型を用い、ポリウレタン樹脂を射出成形して、ゴーグルフレームを調製した。
【0166】
(8) ゴーグルフレームの通気孔の防水:各通気孔に、厚み2mmの連続気泡性ポリウレタンシートを粘着剤で貼付した。
【0167】
(9) ゴーグルフレームの顔面装着体取りつけとゴーグルフレームの完成:厚み15mmの連続気泡性ポリウレタンシートを、ゴーグルフレームの接顔部分の形状にあわせ15mm幅で切りとり、リング状の顔面装着体をつくり、粘着剤でゴーグルフレームに貼付して、ゴーグルフレームを完成した。
【0168】
(10)ゴーグルフレームにダブルレンズの取りつけ:ゴーグルフレームの嵌合孔にダブルレンズ部分を嵌合し、嵌合孔周囲の溝にはめて、ダブルレンズを固定した。
【0169】
(11)顔面固定用のベルト部分の調製とゴーグルの完成:ゴム糸のまわりを合成繊維で巻いた伸縮性の糸でつくったベルトと留め金でできた顔面固定用のベルトをつくり、ゴーグルフレームに固定して、ゴーグルを完成した。
【0170】
(防曇テスト)
上記ゴーグルを室温で顔面に装着してから−5℃の環境試験室に入った。1時間たっても、ダブルレンズのどのレンズ部位にも曇りが発生しなかった。
また、ダブルレンズをねじっても、フロントレンズとバックレンズとガスケットのあいだの固着部分に剥離が見られなかった。
【0171】
[比較例1]
実施例1において、フロントレンズのバックカーブ側に防曇膜を形成するにあたり、マスキングシートを貼付せずに、実施例1で用いた防曇膜形成用水溶液にディッピングし、フロントレンズのフロントカーブ側およびバックカーブ側へ全面的に防曇膜を形成する以外は実施例1と同様にしてゴーグルを調製した。
【0172】
実施例1と同様の方法で、−5℃における防曇テストをしたところ、1時間たっても、ダブルレンズのどのレンズ部位にも曇りが発生しなかった。
しかし、ダブルレンズをねじると、フロントレンズとガスケットのあいだの固着部分が簡単にはがれた。
また、付着異物をとるため、フロントレンズのフロントカーブ側をタオルで拭くと、防曇膜に傷がついた。
【0173】
[比較例2]
実施例2において、気圧調整孔に防曇膜形成用エチルアルコール系水溶液を注入しないで、フロントレンズのバックカーブ側とバックレンズのフロントカーブ側に防曇膜を形成しない以外は、実施例2と同様にしてゴーグルを調製した。
【0174】
完成したダブルレンズをねじっても、ダブルレンズのどの部位においても、ガスケットの固着部分の剥離はみられなかったが、実施例1と同様の方法で、−5℃における防曇テストをしたところ、20分後にフロントレンズのバックカーブ側に曇りが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明のダブルレンズを実施した眼用光学構造物であるスキー用ゴーグルの外観斜視図である。
【図2】図1のスキー用ゴーグルの断面図である。
【図3】図1のスキー用ゴーグルに実施されている本発明のダブルレンズのバックレンズ側から見た説明図である。
【符号の説明】
【0176】
1 フロントレンズ
2 バックレンズ
3 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントレンズのバックカーブ側とバックレンズのフロントカーブ側を平行的に対置した状態でガスケットによって固着されるダブルレンズの、少なくともフロントレンズのバックカーブ側か、バックレンズのフロントカーブ側のいずれかに防曇膜が形成されているダブルレンズの、ガスケットを固着する部分をさけて防曇膜が形成されているダブルレンズにおいて、防曇膜形成予定面にガスケットを固着してから、または、それ相当形状のマスキング体で被覆してから防曇膜が形成されていることを特徴とするダブルレンズ。
【請求項2】
ガスケットの相当形状をのこして印刷法によって防曇膜が形成されていることを特徴とする請求項1のダブルレンズ。
【請求項3】
防曇膜を形成する前にダブルレンズをガスケットで固着し、レンズあるいはガスケットに設けられた空孔からダブルレンズ内に防曇液を注入して防曇膜が形成されていることを特徴とする請求項1のダブルレンズ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−82641(P2009−82641A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259534(P2007−259534)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)