説明

ダム計測データ評価方法、およびダム計測データ評価システム

【課題】ダムの変化が補修工事等の対策を必要とするものであるか否かを、より早期に、より確実に検知することが可能なダム計測データ評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のダム計測データ評価方法においては、解析対象となるダムにおいて、健全性を評価するにあたり、蓄積された過去の計測データから解析対象となる日と貯水位、気温、水温または堤体温度が類似する日のデータのみを取り出し、気温、水温、気温および水温から算出される温度変数または堤体温度を説明変数とし、漏水量、たわみ量または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出し、この回帰式から漏水量、たわみ量または揚圧力の予測値を算出し、解析当日の漏水量、たわみ量または揚圧力の実測値との比較により評価を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム計測データ評価方法、およびダム計測データ評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日常的なダムの維持管理においては、ダムの漏水量、たわみ量、揚圧力等を日々計測し、ダムの健全性を損なうような変化が生じていないか否かを判断し、異常が発見されれば必要な補修工事等の対策が取られることが通常である(例えば、特許文献1参照)。ここで、異常判断においては、当日の計測データが過去の計測データ群の最大値を超えるか否か、あるいは、当日の計測データが過去の計測データ群の標準偏差から3σ以内であるか否か、等が判断基準となることが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−140608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際には、計測データは気象条件やダムの水位等の、ダムの健全性を損なうような変化とは関係のない因子によっても変動する。したがって、計測データの変化を単に捕捉するだけでは、その変化がダムの健全性を損なうような変化であるのか、許容可能な変化であるのかについて的確な判断が難しい場合がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ダムの変化が補修工事等の対策を必要とするものであるか否かを、より早期に、より確実に検知することが可能なダム計測データ評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の第1のダム計測データ評価方法は、ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価方法であって、解析対象となる日における以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)気温および水温、または堤体温度
(C)漏水量、たわみ量、または揚圧力
を取得するデータ取得処理と、あらかじめ収集された、前記解析対象となる日以前の期間における計測日ごとの前記計測データ(A)、(B)および(C)が記憶された記憶手段から、前記解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出処理と、前記第1の抽出処理で抽出された計測データから、前記解析対象となる日の気温、水温、気温および水温に基づいて定められる温度変数、または堤体温度を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある気温、水温、温度変数または堤体温度が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出処理と、前記第2の抽出処理で抽出された計測データに基づき、気温、水温、温度変数または堤体温度を説明変数とし、漏水量、たわみ量または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出処理と、前記解析対象となる日の気温、水温、温度変数または堤体温度と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量または揚圧力の予測値を算出する予測値算出処理と、前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量または揚圧力の実測値が前記予測値算出処理において算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定処理と、を実行するものである。
【0006】
また、本発明の第2のダム計測データ評価方法は、ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価方法であって、解析対象となる日における以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)たわみ量
(C)漏水量または揚圧力
を取得するデータ取得処理と、あらかじめ収集された、前記解析対象となる日以前の期間における計測日ごとの前記計測データ(A)、(B)および(C)が記憶された記憶手段から、前記解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出処理と、前記第1の抽出処理で抽出された計測データから、前記解析対象となる日のたわみ量を基準としてあらかじめ設定された範囲内にあるたわみ量が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出処理と、前記第2の抽出処理で抽出された計測データに基づき、たわみ量を説明変数とし、漏水量または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出処理と、前記解析対象となる日のたわみ量と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の予測値を算出する予測値算出処理と、前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の実測値が前記予測値算出処理において算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定処理と、を実行するものである。
【0007】
また、本発明の第1のダム計測データ評価システムは、ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価システムであって、以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)気温および水温、または堤体温度
(C)漏水量、たわみ量、または揚圧力
を取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段によって取得された計測データ(A)、(B)、および(C)を記憶する記憶手段と、前記記憶手段から、解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出手段と、前記第1の抽出ステップで抽出された計測データから、前記解析対象となる日の気温、水温、気温および水温に基づいて定められる温度変数または堤体温度を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある気温、水温、温度変数または堤体温度が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出手段と、前記第2の抽出ステップで抽出された計測データに基づき、気温、水温、温度変数または堤体温度を説明変数とし、漏水量、たわみ量、または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出手段と、前記解析対象となる日の気温、水温、温度変数または堤体温度と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量、または揚圧力の予測値を算出する予測値算出手段と、前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量、または揚圧力の実測値が前記予測値算出ステップにおいて算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定手段と、を含むものである。
【0008】
また、本発明の第2のダム計測データ評価システムは、ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価システムであって、以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)たわみ量
(C)漏水量または揚圧力
を取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段によって取得された計測データ(A)、(B)、および(C)を記憶する記憶手段と、前記記憶手段から、解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出手段と、前記第1の抽出ステップで抽出された計測データから、前記解析対象となる日のたわみ量を基準としてあらかじめ設定された範囲内にあるたわみ量が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出手段と、前記第2の抽出ステップで抽出された計測データに基づき、たわみ量を説明変数とし、漏水量または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出手段と、前記解析対象となる日のたわみ量と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の予測値を算出する予測値算出手段と、前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の実測値が前記予測値算出ステップにおいて算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定手段と、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のダム計測データ評価方法およびダム計測データ評価システムによれば、過去の計測データから、気象条件やダムの貯水位等が解析当日のそれと類似している日の計測データを抽出し、この抽出データを用いて回帰分析を行い、求められた回帰式と解析当日の計測データに基づいて漏水量、たわみ量または揚圧力の予測値を算出する。そして、解析当日の漏水量、たわみ量または揚圧力の実測値が算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによってダムの健全性を判定する。このようにすれば、漏水量、たわみ量または揚圧力を変動させる因子から、気象条件やダムの貯水位等という、周囲環境により変動する因子であってダムの健全性を損なうような変化とは関係が薄いと思われる因子をあらかじめ相殺し、補修工事等の対策を必要とするようなダムの変化をより早期に、的確に検知することができる。これにより、ダムの健全性の維持をより容易に、より的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態のダム計測データ評価システムのブロック図
【図2】第1実施形態の近傍探索回帰評価プログラムによる処理内容を示すフローチャート
【図3】温度変数の概念を示す概念図
【図4】近傍範囲の概念を示すグラフ
【図5】実存するダムAにおいて、2000年の漏水量の実測値および予測値の推移を示すチャート
【図6】実存するダムAにおいて、2001年の漏水量の実測値および予測値の推移を示すチャート
【図7】実存するダムAにおいて、2002年の漏水量の実測値および予測値の推移を示すチャート
【図8】実存するダムAにおいて、2003年の漏水量の実測値および予測値の推移を示すチャート
【図9】実存するダムAにおいて、2004年の漏水量の実測値および予測値の推移を示すチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1〜図4によって説明する。本実施形態のダム計測データ評価方法およびダム計測データ評価システムは、解析対象となるダムにおいて、健全性を評価するにあたり、蓄積された過去の計測データから解析対象となる日と貯水位および気象条件が類似する日のデータのみを取り出して回帰分析を行い、解析当日の実測データとの比較により評価を行う(以下、「近傍探索回帰評価」と称する)ところに特徴を有する。
【0012】
図1には、本実施形態のダム計測データ評価システム1のブロック図を示す。ダム計測データ評価システム1は、ダムに設置される計測装置である水位計2、気温およびダムに貯留されている水の水温を測定するための温度センサ3、4、漏水量測定装置5と、計測データの解析を行うコンピュータ6とで構成されている。これらの水位計2、温度センサ3、4、および漏水量測定装置5が本発明のデータ取得手段に該当する。水位計2、温度センサ3、4、および漏水量測定装置5としては、ダムでの計測に一般的に使用されるものを適用可能である。
【0013】
コンピュータ6は、計測データを解析するための近傍探索回帰評価プログラムを実行するCPU7、およびハードディスク8(本発明の記憶手段に該当する)を備えている。ハードディスク8には、計測データを記憶し、蓄積する実測データベース記憶領域、近傍探索回帰評価プログラムが格納されたプログラム記憶領域がそれぞれ確保されている。
【0014】
ハードディスク8の実測データベース記憶領域には、ダムの供用開始後、現在に至るまでの計測日tごとの貯水位h(t)、気温T(t)、水温T(t)、漏水量L(t)の計測データが記憶されている。これらの計測データは、通常1日1回程度、水位計2、温度センサ3、4、漏水量測定装置5によって計測され、計測日tごとに1組とされてハードディスク8に保存され、蓄積されていく。
【0015】
次に、図2のフローチャートを参照しつつ、コンピュータ6によって実行される近傍探索回帰評価プログラムによる処理内容について説明する。
【0016】
まず、ステップS1で、解析対象となる日tの貯水位h(t)、気温T(t)、水温T(t)、漏水量L(t)が水位計2、温度センサ3、4、漏水量測定装置5によって計測される。計測データはコンピュータ6のハードディスク8に記憶される。このときの処理が本発明の「データ取得処理」に相当する。
【0017】
次に、ステップS2で、あらかじめ収集され、ハードディスク8に蓄積されている計測データから、解析対象となる日tの貯水位h(t)を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータh(t)が属する計測日tの計測データをすべて抽出する。このときの処理が本発明の「第1の抽出処理」に相当し、CPU7が本発明の「第1の抽出手段」として機能する。
【0018】
ここで、「解析対象となる日tの貯水位h(t)を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータh(t)が属する計測日tの計測データを抽出する」処理の例としては、例えば以下のようなものが挙げられる。すなわち、計測日tごとに1組とされている貯水位h(t)、気温T(t)、水温T(t)、漏水量L(t)の計測データの複数組を、あらかじめ貯水位の高さに基づいて複数の区分に分類しておく。そして、当日の貯水位h(t)を含む区分を指定してその区分に分類されている計測データの組を抽出する。例えば、貯水位4mごとの区分とする場合、各計測日tごとの計測データの組は、その計測日tの貯水位をもとにして、貯水位0〜4mの区分、貯水位4〜8mの区分、貯水位8〜12mの区分...のように分類される。そして、当日の貯水位が10mであれば、この10mを含む8〜12mの区分に分類されている計測データの組を全て抽出する。貯水位を何mごとに区分するかについては、解析対象となるダムの特性を考慮して設定することが好ましい。
【0019】
また、他の例として、例えば以下のようなものを挙げることができる。すなわち、解析対象となる日の貯水位h(t)から±Δhの範囲内にある貯水位h(t)のデータが属する日の計測データを全て抽出することとしてもよい。例えば、Δh=±5mとする場合、当日の貯水位が10mであれば、10m±5m、すなわち5〜15mの範囲に含まれる貯水位のデータh(t)が属する計測日tの計測データを全て抽出する。Δhの値については、解析対象となるダムの特性を考慮して設定することが好ましい。
【0020】
次に、ステップS2において抽出された計測データから、解析対象となる日tの温度変数ET(t)を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある温度変数ET(t)が属する計測日tの計測データを抽出する。このときの処理が本発明の「第2の抽出処理」に相当し、CPU7が本発明の「第2の抽出手段」として機能する。
第2の抽出処理は、具体的には、例えば以下のステップS3〜ステップS5の処理によって行うことができる。
【0021】
まず、ステップS3で、ハードディスク8に蓄積されている計測データから、解析対象となる日tからN日前までに計測された気温T(t−N)と水温T(t−N)のデータを抽出し、このデータに基づいて、解析対象となる日tの温度変数ET(t)を算出する。
【0022】
温度変数ET(t)は、堤体温度に代わる数値として利用しうるものである。図3には、ダムの堤体を上流側から見た図を示した。堤体9の温度は、貯水位h以深、すなわち水に漬かっている部分では水温Tからの影響、貯水位hよりも上部、すなわち水に漬かっていない部分では気温Tの影響を受ける。これらの影響がN日間累積することで堤体9に熱量が蓄積されて堤体温度を形成すると考えることができる。温度変数ET(t)は下記式(1)〜(3)により算出される。
【0023】
【数1】

但し、ET(t)は計測日tにおけるN日平均温度変数、E(t)は貯水位と気温に関する変数、E(t)は貯水位と水温に関する変数、T(t)は計測日tにおける気温、T(t)は計測日tにおける貯留水の水温、A(t)は計測日tにおける堤体の気中面積、W(t)は計測日tにおける堤体の水中面積を表す。
なお、気中面積とは、堤体の上流側の壁面において、貯水位hよりも上部、すなわち水に漬かっていない部分の面積を意味する。また、水中面積とは、堤体の上流側の壁面において、貯水位h以深、すなわち水に漬かっている部分の面積を意味する。
なお、Nの値は、概ね30日を目安とし、測定対象となるダムのタイプや建設場所の気象条件等によりダム毎に決定されるべきものである。
【0024】
加えて、ステップS2において抽出された計測日tごとに、その計測日tにおける温度変数ET(t)を算出する。算出は、解析対象となる日tの温度変数ET(t)を算出する場合と同様に、その計測日tからN日前までの期間に計測された気温T(t−N)と水温T(t−N)の計測データに基づき、上記式(1)〜(3)によって行う。
【0025】
次に、ステップS4で、温度変数ETを横軸、漏水量Lを縦軸としたグラフに、ステップS2で抽出された各計測日tにおける温度変数と漏水量のデータ(ET(t),L(t))をプロットする。図4には、データをグラフ上にプロットした例を示した。なお、グラフ中で、各計測日tにおける温度変数と漏水量のデータ(ET(t),L(t))のプロットを×印にて示した。
なお、温度変数ET(t)および漏水量L(t)のデータは、あらかじめ平均0、標準偏差1となるように標準化しておくことが好ましい。
【0026】
次に、ステップS5で、ステップS4において作成したグラフ上で、解析対象となる日tの温度変数と漏水量のプロット(ET(t),L(t))(図4中に●印で示す)を中心として、全てのデータのプロットを包含する円Rを描く。次いで、この円Rと同心で、かつ、円Rに対して一定の割合(例えば0.5%)の面積を有する円Rで囲まれる範囲を近傍範囲とし、この近傍範囲内に入る温度変数と漏水量のデータ(ET(t),L(t))をすべて抽出する。
【0027】
なお、抽出されるデータの数が少なすぎると、次の回帰分析のステップにおいて回帰分析の精度が低下するおそれがある。よって、抽出データ数を一定数以上確保できるようにすることが好ましい。具体的には、例えば、あらかじめ最低データ個数(例えば10個)を決めておき、近傍範囲内に入るデータの数がこの最低データ個数に満たない場合には、近傍範囲を決定する円Rの面積を、この円R内に最低データ個数以上のデータが含まれるようになるまで広げる。
【0028】
次に、ステップS6で、上記近傍範囲を決定する円R内に入る一群のデータを用いて、最小二乗法により、温度変数ET(t)を説明変数とし、漏水量L(t)を目的変数とする回帰式を求める。このときの処理が本発明の「回帰式算出処理」に相当し、CPU7が本発明の「回帰式算出手段」として機能する。
【0029】
次に、ステップS7で、得られた回帰式に解析対象となる日の温度変数ET(t)を代入して当日の漏水量の予測値L(t)を算出する。このときの処理が本発明の「予測値算出処理」に該当し、CPU7が本発明の「予測値算出手段」として機能する。なお、上記のステップで温度変数と漏水量とを標準化している場合には、得られる予測値も標準化された値となるため、これを標準化しない値に変換することを要する。
【0030】
次に、ステップS8で、解析対象となる日tにおける漏水量の実測値L(t)がステップS7で算出された予測値L(t)を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって、ダムの健全性を判定する。このときの処理が本発明の「判定処理」に相当し、CPU7が本発明の「判定手段」として機能する。
判定は、具体的には、例えば予測値L(t)と回帰誤差標準偏差σから、当日の漏水量の実測値L(t)がL(t)±3σの範囲内である場合には異常なし、範囲外である場合には異常が生じている可能性ありと判断することによって行うことができる。異常の可能性ありと判定された場合には、さらに詳しい計測や現地での観測等により原因を特定し、必要に応じて補修等の対策を講じることができる。
【0031】
このような本実施形態のダム計測データ評価方法およびダム計測データ評価システムによれば、過去の計測データから、気象条件やダムの貯水位が当日と類似している日の計測データを抽出し、この抽出データを用いて回帰分析を行い、求められた回帰式と解析当日の計測データに基づいて漏水量の予測値を算出する。そして、解析当日の漏水量の実測値が予測値算出ステップにおいて算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによってダムの健全性を判定する。このようにすれば、漏水量を変動させる因子から、気象条件やダムの貯水位といった、周囲環境により変動する因子であってダムの健全性を損なうような変化とは関係が薄いと思われる因子をあらかじめ相殺し、補修工事等の対策を必要とするようなダムの変化をより早期に、的確に検知することができる。これにより、ダムの健全性の維持をより容易に、的確に行うことができる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、本実施形態の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態における温度変数に代えて、堤体温度を使用する。本実施形態のダム計測データ評価システムは、気温、水温を測定するための温度センサ3,4に代えて、ダムの建設時に堤体中に埋め込まれる堤体温度の測定のための温度センサを使用すること以外は、上記実施形態のものと同様である。
【0033】
本実施形態のダム計測データ評価方法においては、データ取得処理(ステップS1)において、解析対象となる日tの気温T(t)、水温T(t)、に代えて、堤体中に埋め込まれた温度センサにより堤体温度T(t)が計測され、ハードディスク8に保存される。
【0034】
次に、第1の抽出処理(ステップS2)で、上記実施形態と同様に、あらかじめ収集され、ハードディスク8に蓄積されている計測データから、解析対象となる日tの貯水位h(t)を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータh(t)が属する計測日tの計測データをすべて抽出する。
【0035】
次に、第2の抽出処理において、温度変数を算出するステップ3は不要となる。そして、ステップ4およびステップ5において、解析対象となる日の堤体温度T(t)を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある堤体温度T(t)が属する計測日tの計測データを抽出する。
【0036】
具体的には、ステップS4で、堤体温度Tを横軸、漏水量Lを縦軸としたグラフに、ステップS2で抽出された各計測日tにおける堤体温度と漏水量のデータ(T(t),L(t))をプロットする。なお、堤体温度T(t)および漏水量L(t)のデータは、あらかじめ平均0、標準偏差1となるように標準化しておくことが好ましい。
【0037】
次に、ステップS5で、ステップS4において作成したグラフ上で、解析対象となる日tの堤体温度と漏水量のプロット(T(t),L(t))を中心として、全てのデータのプロットを包含する円Rを描く。次いで、この円Rと同心で、かつ、円Rに対して一定の割合(例えば0.5%)の面積を有する円Rで囲まれる範囲を近傍範囲とし、この近傍範囲内に入る温度変数と漏水量のデータ(T(t),L(t))をすべて抽出する。ここで、上記実施形態と同様の方法で、抽出データ数を一定数以上確保できるようにすることが好ましい。
【0038】
次に、回帰式算出処理(ステップS6)においては、上記近傍範囲を決定する円R内に入る一群のデータを用いて、最小二乗法により、堤体温度T(t)を説明変数とし、漏水量L(t)を目的変数とする回帰式を求める。
【0039】
次に、予測値算出処理(ステップS7)で、得られた回帰式に解析対象となる日の堤体温度T(t)を代入して当日の漏水量の予測値L(t)を算出する。なお、上記実施形態と同様、ステップS4で堤体温度と漏水量とを標準化している場合には、得られる予測値も標準化された値となるため、これを標準化しない値に変換することを要する。
【0040】
次に、判定処理(ステップS8)で、解析対象となる日tにおける漏水量の実測値L(t)がステップS7で算出された予測値L(t)を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって、ダムの健全性を判定する。判定は、上記実施形態と同様に、例えば予測値L(t)と回帰誤差標準偏差σから、当日の漏水量の実測値L(t)がL(t)±3σの範囲内である場合には異常なし、範囲外である場合には異常が生じている可能性ありと判断することによって行うことができる。
【0041】
以上のように、本実施形態においても、漏水量を変動させる因子から、気象条件やダムの貯水位等といった、周囲環境により変動する因子であってダムの健全性を損なうような変化とは関係が薄いと思われる因子をあらかじめ相殺し、補修工事等の対策を必要とするようなダムの変化をより早期に、的確に検知することができる。これにより、ダムの健全性の維持をより容易に、的確に行うことができる。
【0042】
なお、堤体温度を測定するための温度センサは、堤体に埋め込まれているため、劣化して測定不能となった場合、交換して測定を継続することができない。よって、堤体に埋め込まれているセンサが劣化するまでは、堤体温度を使用して、本実施形態に記載したシステムおよび方法によって評価を行い、センサが劣化して堤体温度が測定不能となった後は、気温および水温を使用して、第1実施形態に記載したシステムおよび方法によって評価を行うこととしても良い。
【0043】
<第3実施形態>
次に、本実施形態の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態における温度変数に代えて、たわみ量を使用する。本実施形態のダム計測データ評価システムは、気温、水温を測定するための温度センサ3,4に代えて、たわみ量を測定するためのたわみ測定装置を使用すること以外は、上記実施形態のものと同様である。
【0044】
本実施形態のダム計測データ評価方法においては、データ取得処理(ステップS1)において、解析対象となる日tの気温T(t)、水温T(t)、に代えて、たわみ測定装置によりたわみ量F(t)が計測され、ハードディスク8に保存される。
【0045】
次に、第1の抽出処理(ステップS2)で、上記実施形態と同様に、あらかじめ収集され、ハードディスク8に蓄積されている計測データから、解析対象となる日tの貯水位h(t)を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータh(t)が属する計測日tの計測データをすべて抽出する。
【0046】
次に、第2の抽出処理において、温度変数を算出するステップ3は不要となる。そして、ステップ4およびステップ5において、解析対象となる日の堤体温度たわみ量F(t)を基準としてあらかじめ設定された範囲内にあるたわみ量F(t)が属する計測日tの計測データを抽出する。
【0047】
具体的には、ステップS4で、たわみ量Fを横軸、漏水量Lを縦軸としたグラフに、ステップS2で抽出された各計測日tにおけるたわみ量と漏水量のデータ(F(t),L(t))をプロットする。なお、たわみ量F(t)および漏水量L(t)のデータは、あらかじめ平均0、標準偏差1となるように標準化しておくことが好ましい。
【0048】
次に、ステップS5で、ステップS4において作成したグラフ上で、解析対象となる日tの堤体温度と漏水量のプロット(F(t),L(t))を中心として、全てのデータのプロットを包含する円Rを描く。次いで、この円Rと同心で、かつ、円Rに対して一定の割合(例えば0.5%)の面積を有する円Rで囲まれる範囲を近傍範囲とし、この近傍範囲内に入る温度変数と漏水量のデータ(F(t),L(t))をすべて抽出する。ここで、上記実施形態と同様の方法で、抽出データ数を一定数以上確保できるようにすることが好ましい。
【0049】
また、回帰式算出処理(ステップS6)においては、上記近傍範囲を決定する円R内に入る一群のデータを用いて、最小二乗法により、たわみ量F(t)を説明変数とし、漏水量L(t)を目的変数とする回帰式を求める。
【0050】
次に、予測値算出処理(ステップS7)で、得られた回帰式に解析対象となる日のたわみ量F(t)を代入して当日の漏水量の予測値L(t)を算出する。なお、上記実施形態と同様、ステップS4でたわみ量と漏水量とを標準化している場合には、得られる予測値も標準化された値となるため、これを標準化しない値に変換することを要する。
【0051】
次に、判定処理(ステップS8)で、解析対象となる日tにおける漏水量の実測値L(t)がステップS7で算出された予測値L(t)を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって、ダムの健全性を判定する。判定は、上記実施形態と同様に、例えば予測値L(t)と回帰誤差標準偏差σから、当日の漏水量の実測値L(t)がL(t)±3σの範囲内である場合には異常なし、範囲外である場合には異常が生じている可能性ありと判断することによって行うことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態においても、漏水量を変動させる因子から、周囲環境により変動する因子であってダムの健全性を損なうような変化とは関係が薄いと思われる因子をあらかじめ相殺し、補修工事等の対策を必要とするようなダムの変化をより早期に、的確に検知することができる。これにより、ダムの健全性の維持をより容易に、的確に行うことができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
1953年に供用開始された実存するダムAにおいて、1963年〜1999年まで(ただし、機器の変更期間であった1994年〜1997年を除く)の間に実際に計測された貯水位、気温、水温のデータを用いて、第1実施形態に記載した近傍探索回帰評価プログラムによって、2000年〜2004年における1日ごとの漏水量の予測値を算出した。この予測値を、同じくダムAにおいて、2000年〜2004年の間に実際に計測された漏水量の実測値と比較し、漏水量増加の兆候と異常状態を検知可能であるか否かの検証を行った。
なお、1963年以降の計測データを使用することとしたのは、ダムの建設後、ダムが安定化するまでの数年間は計測値が不安定となりがちで、この間のデータを含めて使用すると予測値の誤差が大きくなる可能性があるためである。
【0054】
図5〜図9には、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年の漏水量の実測値、近傍探索回帰評価プログラムにより算出した予測値を示すチャートをそれぞれ示した。図中、実測値を破線で、予測値を実線で示している。また、漏水量の実測値が予測値±3σの範囲外となり、異常の可能性有りと検知された日を、図中に星印で示している。
【0055】
図5〜図9に表された漏水量の実測値より、2000年の年末に僅かな漏水量の増加が観測され、2001年から2003年にかけては数ヶ月のサイクルで漏水量の増大が観測される不安定な時期が続き、2004年の前半には漏水量の大幅な増大に至っていることが分かる。
【0056】
近傍探索回帰評価プログラムによって算出された漏水量の予測値は、2000年の前半のようにダムが安定な時期においては実測値によく追従している。一方、2000年の年末に僅かな漏水量の増加が観測された時期においては、異常の可能性有りと検知された日が連続しており、ダムの変化の兆候を捉えることが出来ていることがわかる。また、2001年から2003年にかけては、異常の可能性ありとの検知が恒常化していることがわかる。また、2004年の前半には、実測値が予測値から大幅に乖離しており、漏水量の大幅な増大を検知できていることが分かる。
【0057】
以上のように、本発明のダム計測データ評価システムおよびダム計測データ評価方法によれば、ダムの変化を的確に捉えることが出来ることが実証された。
【0058】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)第1実施形態では、第2の抽出処理、回帰式算出処理および予測値算出処理において温度係数を使用したが、例えば、第2の抽出処理において、抽出された計測日tごとの気温、水温および漏水量のデータ(T(t),T(t),L(t))を3次元のグラフにプロットし、解析対象となる日tの気温、水温および漏水量のプロット(T(t),T(t),L(t))を中心として全てのデータのプロットを包含する球Gを描き、次いでこの球Gと同心で、かつ、球Gに対して一定の割合(例えば0.5%)の体積を有する球Gで囲まれる範囲を近傍範囲とし、この近傍範囲内に入るデータを抽出することとしてもよい。その場合、次の回帰式算出処理においては、気温および水温を説明変数、漏水量を目的変数として重回帰分析を行い、予測値算出処理では得られた重回帰式と解析したい日の気温および水温に基づいて予測値を算出することとなる。
【0059】
(2)第1実施形態、第2実施形態および他の実施形態(1)において、漏水量に代えてたわみ量または揚圧力を指標としても構わない。この場合、漏水量をたわみ量または揚圧力に置き換えて、第1実施形態、第2実施形態および他の実施形態(1)と同様にして評価を行えばよい。
【0060】
(3)第3実施形態において、漏水量に代えて揚圧力を指標としても構わない。この場合、漏水量を揚圧力に置き換えて、第3実施形態と同様にして評価を行えばよい。
【0061】
(4)上記各実施形態では、判定処理においてあらかじめ定められた設定許容範囲を予測値±3σの範囲としたが、設定許容範囲は上記実施形態の限りではなく、例えばより厳しく判定したい場合には予測値±2σの範囲であっても構わない。
【符号の説明】
【0062】
1...ダム計測データ評価システム
2...水位計(データ取得手段)
3、4...温度センサ(データ取得手段)
5...漏水量測定装置(データ取得手段)
7...CPU(第1の抽出手段、第2の抽出手段、回帰式算出手段、予測値算出手段、判定手段)
8...ハードディスク(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価方法であって、
解析対象となる日における以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)気温および水温、または堤体温度
(C)漏水量、たわみ量、または揚圧力
を取得するデータ取得処理と、
あらかじめ収集された、前記解析対象となる日以前の期間における計測日ごとの前記計測データ(A)、(B)および(C)が記憶された記憶手段から、前記解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出処理と、
前記第1の抽出処理で抽出された計測データから、前記解析対象となる日の気温、水温、気温および水温に基づいて定められる温度変数、または堤体温度を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある気温、水温、温度変数または堤体温度が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出処理と、
前記第2の抽出処理で抽出された計測データに基づき、気温、水温、温度変数または堤体温度を説明変数とし、漏水量、たわみ量または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出処理と、
前記解析対象となる日の気温、水温、温度変数または堤体温度と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量または揚圧力の予測値を算出する予測値算出処理と、
前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量または揚圧力の実測値が前記予測値算出処理において算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定処理と、
を実行するダム計測データ評価方法。
【請求項2】
前記第2の抽出処理が、前記解析対象となる日の気温および水温に基づいて定められる温度変数を基準としてあらかじめ定められた範囲内にある温度変数が属する計測日の計測データを抽出するものであって、
前記温度変数が下記式(1)〜式(3)により算出されるものである、請求項1に記載のダム計測データ評価方法。
【数1】

(但し、ET(t)は計測日tにおけるN日平均温度変数、E(t)は貯水位と気温に関する変数、E(t)は貯水位と水温に関する変数、T(t)は計測日tにおける気温、T(t)は計測日tにおける貯留水の水温、A(t)は計測日tにおける堤体の気中面積、W(t)は計測日tにおける堤体の水中面積を表す。)
【請求項3】
ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価方法であって、
解析対象となる日における以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)たわみ量
(C)漏水量または揚圧力
を取得するデータ取得処理と、
あらかじめ収集された、前記解析対象となる日以前の期間における計測日ごとの前記計測データ(A)、(B)および(C)が記憶された記憶手段から、前記解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出処理と、
前記第1の抽出処理で抽出された計測データから、前記解析対象となる日のたわみ量を基準としてあらかじめ設定された範囲内にあるたわみ量が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出処理と、
前記第2の抽出処理で抽出された計測データに基づき、たわみ量を説明変数とし、漏水量または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出処理と、
前記解析対象となる日のたわみ量と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の予測値を算出する予測値算出処理と、
前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の実測値が前記予測値算出処理において算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定処理と、
を実行するダム計測データ評価方法。
【請求項4】
ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価システムであって、
以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)気温および水温、または堤体温度
(C)漏水量、たわみ量、または揚圧力
を取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段によって取得された計測データ(A)、(B)、および(C)を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から、解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出手段と、
前記第1の抽出ステップで抽出された計測データから、前記解析対象となる日の気温、水温、気温および水温に基づいて定められる温度変数または堤体温度を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある気温、水温、温度変数または堤体温度が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出手段と、
前記第2の抽出ステップで抽出された計測データに基づき、気温、水温、温度変数または堤体温度を説明変数とし、漏水量、たわみ量、または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出手段と、
前記解析対象となる日の気温、水温、温度変数または堤体温度と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量、または揚圧力の予測値を算出する予測値算出手段と、
前記解析対象となる日における漏水量、たわみ量、または揚圧力の実測値が前記予測値算出ステップにおいて算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定手段と、
を含むダム計測データ評価システム。
【請求項5】
ダムの計測データに基づきそのダムの健全性を判定するためのダム計測データ評価システムであって、
以下の計測データ(A)、(B)、および(C)
(A)貯水位
(B)たわみ量
(C)漏水量または揚圧力
を取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段によって取得された計測データ(A)、(B)、および(C)を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から、解析対象となる日の貯水位を基準としてあらかじめ設定された範囲内にある貯水位のデータが属する計測日の計測データを抽出する第1の抽出手段と、
前記第1の抽出ステップで抽出された計測データから、前記解析対象となる日のたわみ量を基準としてあらかじめ設定された範囲内にあるたわみ量が属する計測日の計測データを抽出する第2の抽出手段と、
前記第2の抽出ステップで抽出された計測データに基づき、たわみ量を説明変数とし、漏水量または揚圧力を目的変数とする回帰式を算出する回帰式算出手段と、
前記解析対象となる日のたわみ量と前記回帰式とに基づき前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の予測値を算出する予測値算出手段と、
前記解析対象となる日における漏水量または揚圧力の実測値が前記予測値算出ステップにおいて算出された予測値を基準としてあらかじめ定められた設定許容範囲内にあるか否かによって前記ダムの健全性を判定する判定手段と、
を含むダム計測データ評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12907(P2012−12907A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153116(P2010−153116)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)