説明

チェアリフトの滑り止めを備えた椅子

【課題】利用客が、自分のサイズと座り位置とに関わりなく、チェアリフトのための椅子の外に滑り又は落下することを防止すること。
【解決手段】座席面は、向上した滑り止めの複数の領域を有している。この座席面は、その前方端(4)の領域で後方端(3)の領域よりも高いレベルの滑り止めを有しているか、又は座席面の領域は、背もたれ(2)よりも高いレベルの滑り止めを有している。特に、座席面の前方端(4)の領域内に滑る比較的小さい人が安全に保持されることが保障される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席面を有する座席クッションと、背もたれと、を備えた少なくとも1つの座席を有するチェアリフトの椅子に関する。座席面は、背もたれに隣接する後方端とこの後方端に対向して位置している前方端とを有している。
【背景技術】
【0002】
チェアリフトのための椅子は、通常、互いに並んで位置している4つ乃至8つの座席を有している。利用客が、この椅子から外に落下し又は滑ることを防止するために、これらの椅子は、椅子の幅全体にわたって延びる閉鎖バーを有している。これらの閉鎖バーは、利用客の上方に位置している位置から、横棒が利用客の前方で利用客の腿の上方を延びる位置へと回動することができる。座席の数に対応する数のフットレストも通常、閉鎖バーに設けられている。
【0003】
比較的小さな人、特に子供には、背中全体が背もたれで支持される正しい座り位置を想定することができない。したがって、これらの人は、閉鎖バー、特に横棒につかまりたがる。この結果として、これらの人の臀部は、座席面の前方端の領域に動く。横棒と座席面との間の間隔は、複数の規則により規定されているように、比較的長い脚の背の高い利用客が横棒の下方に快適に収まることも可能であるように寸法が取られているため、この間隔は、通常、比較的小さな人にとっては大きすぎる。この場合、これらの小さな人は、特に、これらの人の脚が比較的短い結果、これらの人が自分をフットレスト上で支持できないならば、横棒の下方を滑りぬけてしまう可能性がある。
【0004】
特に、正しくない座り位置が想定されるならば、外に滑る危険は、通常、滑らかで、ぬれている場合に滑りやすい座席面により増加する。外に滑ることがほとんど防止される程度まで横棒と座席面との間の間隔を減少させるために設計上の対策を提供することができるのは、主に子供を輸送するために設けられた特別な設備だけである。
【0005】
既知のように、この危険を低減するために、例えば、特許文献1と特許文献2とから提案がなされた。これらの従来の刊行物から知られている対策は、本質的に、それぞれの使用者の腿の間に保護ブラケット又はカムを配置するという旨に要約されることができる。しかしながら、このことは、もし、小さな利用客がこの保護ブラケット又はカムがこの利用客の脚の間よりはむしろこの利用客に平行して位置するように座っているならば、なんらの保護も提供しない。
【特許文献1】AT 411 523 B号公報
【特許文献2】AT 411 046 B号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、本発明の目的は、各人が、その人のサイズと椅子上での座り位置に関わりなく、座席面と横棒との間を通って滑ることを信頼性高く防止する、導入部で述べた一般的なタイプの椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の態様を有する椅子により、本発明により達成される。
この目的は、また、請求項2の態様を有する椅子により、達成される。
本発明によるこの椅子の好ましく、有利な実施形態は、下位クレームの対象を形成している。
【0008】
本発明によると、もし、前記座席面が前記前方端の領域で、前記後方端の領域よりも高いレベルの滑り止めを有しているならば、このことにより、特に、正しくない座り位置が想定される場合であっても、利用客が前記座席の外に滑ることが防止される。これは、前記前方端の領域は、子供のような比較的小さな利用客が滑り出すことにとって特に重要であるからである。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、向上した滑り止めの領域では、前記座席面が、向上した滑り止めの素材から構成されているか、向上された滑り止めの追加的な層から形成されており、これら両方の場合に、各人は、その人のサイズに関わりなく信頼性高く保持されることが保障される。
【0010】
本発明によれば、前記座席面の領域は、前記背もたれよりも高いレベルの滑り止めを有していることが提供されてもよく、このことにより、特に、正しくない座り位置が想定されても、利用客が滑り出ることが防止される。
【0011】
特に信頼性のある実施形態では、前記向上した滑り止めの領域は、前記座席面の表面領域全体にわたって延びており、このことにより、前記前方端から滑ることだけでなく、この前方端の方向に滑ることも防止される。
【0012】
現存するチェアリフト設備には、容易に、費用効果的に、本発明による座席面を後から取り付けることも可能である。
【0013】
本発明の他の態様と有利な効果とを、好ましい実施形態を示す添付されている図面を参照した以下の説明から明らかとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
利用客が、その人のサイズと椅子上での座り位置に関わりなく、座席面と横棒との間を通って滑ることが信頼性高く防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明に関連のある部分だけを示している。椅子の残りの部分を、従来技術から既知の方法で構成してもよい。このように、この椅子が座席ベンチと、上端にこの椅子を支持並びに/もしくは牽引ケーブルに固定又は結合するためのクランプ装置が取り付けられている負荷支持バーに、場合によっては関節接続を介して接続されている負荷支持フレームに固定されている閉鎖バーとを有することが一般的な用語で述べられるだろう。必要ならば、負荷支持バーの上端に駆動装置機構を設けることも可能である。この機構は、一旦、椅子が支持並びに/もしくは牽引ケーブルから結合が解除されると、ステーション内に設けられているレールに沿って、搭乗と、降機との領域を介して、この椅子を移動させる役割を果たす。
【0016】
図1は、座席ベンチを備え、そのうち4つの座席が示されている、本発明による椅子の複数の部分を示している。各座席は、座席クッション1と、この座席クッションに角度を付けて配置されている背もたれ2とを有している。この座席クッション1は、背もたれに隣接している後方端3とこの後方端3に対向して位置している前方端4とを有する座席面を有し、この前方端は、通常、丸みを帯びている。閉鎖バーが、座席の列に平行に延びており、この閉鎖バーは、横棒(クロスバー)5と、前記座席に割り当てられているフットレスト6とを有している。
【0017】
図1では、左側の3つの座席面は、それらの前方端4の領域で後方端3の領域よりも高いレベルの滑り止めを有している。これら向上した滑り止めの領域を連続的なシート状の素材(左側の座席面)、例えば滑らかなフィルム又は滑り止め付の織布、から形成してもよい。代わりとして、又は、加えて、特定の複数の点で並びに/もしくは直線的に適用され、特に射出成形された、向上した滑り止めの素材を設けることも可能である。
【0018】
本発明の状況では、この結果、前記座席面は、座席クッション1の面を形成し、この座席クッション1は、部分的にチェアリフトの座席面のための従来の素材からなり、部分的に向上した滑り止めの素材からなっている。また、この座席クッション1は、前記椅子とこの椅子に腰掛ける各人との間の接触面を形成している。
【0019】
向上した滑り止めの、滑らかで、プロファイルが設けられた座席面領域に加えて、これらの領域が、本発明の背景では、他の種類の面、例えば粗い面を有することも可能である。
【0020】
例えば、左側の3つの座席により示されているように、向上した滑り止めの領域は、座席面の、ほぼ半分(左側の座席)、ほぼ3分の1(左から2番目の座席)、又はほぼ4分の1(右から2番目の座席)に対応していてもよい。また、この領域が、さらに小さく、例えば、座席面の8分の1又は10分の1だけに対応することも可能である。他の実施形態(図示されていない)では、この領域を、座席面にわたって所望のように分配することができ、この領域は、座席面の表面領域全体にわたって延びていることもできる(右側の座席)。最後に述べた場合では、座席面は、背もたれ2よりも高いレベルの滑り止めを有している。
【0021】
本発明の本質的な要素は、滑り止め付きの部分が、前方端4の領域内を、又はこの領域内に延びていることである。これは、この前方端4の領域が滑り出てしまう各人にとって最も重要な領域だからである。
【0022】
向上した滑り止めの素材と、この素材の座席面にわたる範囲とによって、この素材を座席クッション1に半永久的に、又は取外し可能に接続するために、適当な手段と方法とを提供することができる。この結果、この素材が、例えば、タッチアンドクローズ留具(Klettverschluss)又は接着ボンド並びに/もしくは裁縫並びに/もしくは溶接並びに/もしくはリベット留め並びに/もしくはねじ接続により、座席クッション1に、座席面の前方端4の領域で、又は、この座席面の表面領域全体にわたっても接続されることが可能である。
【0023】
また、向上した滑り止めの素材が、関連のある領域で座席面の残りの素材に置き換わることができる。
【0024】
要約すると、本発明の例示的な実施形態を以下のように述べることができる。
各人がチェアリフトのための椅子から滑り又は外に落下することを防止するために、各人のサイズと座り位置とに依存しないで、座席面は、向上した滑り止めの複数の領域を有している。この目的のために、この座席面が、座席面の前方端4の領域で後方端3の領域よりも高いレベルの滑り止めを有するか、この座席面が、背もたれ2よりも高いレベルの滑り止めを有している。
【0025】
特に、座席面の前方端4の領域内に滑る、比較的背の小さな人が安全に保持されることも保障される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態に係わるチェアリフトの概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…座席クッション、 2…背もたれ、 3…後方端、 4…前方端、 5…横棒(クロスバー)、 6…フットレスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席面を備えている座席クッション(1)と、背もたれ(2)とを有する少なくとも1つの座席を具備し、前記座席面は、この背もたれ(2)に隣接している後方端(3)と、この後方端(3)に対向して位置している前方端(4)とを有している、チェアリフトの椅子において、前記座席面は、前記後方端(3)の領域よりも前記前方端(4)の領域で高いレベルの滑り止めを有することを特徴とする椅子。
【請求項2】
座席面を備えている座席クッション(1)と、背もたれ(2)とを有する少なくとも1つの座席を具備し、前記座席面は、この背もたれ(2)に隣接している後方端(3)と、この後方端(3)に対向して位置している前方端(4)とを有している、チェアリフトの椅子において、前記座席面は、前記背もたれ(2)よりも高いレベルの滑り止めを備えた領域を有することを特徴とする椅子。
【請求項3】
向上した滑り止めの領域が、前記座席面の表面領域全体にわたって延びていることを特徴とする請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記向上した滑り止めの領域内で、前記座席面は、前記後方端(3)の領域の素材よりも高いレベルの滑り止めを有する素材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の椅子。
【請求項5】
前記向上した滑り止めの領域内で、前記座席面は、前記後方端(3)の領域の素材よりも高いレベルの追加的な層から形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の椅子。
【請求項6】
前記向上した滑り止めの領域内で、前記座席面は、向上した滑り止めの連続的なシート状の素材から形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の椅子。
【請求項7】
前記向上した滑り止めの領域内で、前記座席面は、特定の点で並びに/もしくは直線状に適用されている向上された滑り止めの素材を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の椅子。
【請求項8】
前記向上された滑り止めを備えた前記座席面の領域は、前記座席クッション(1)に半永久的に接続されていることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1に記載の椅子。
【請求項9】
前記向上された滑り止めを備えた前記座席面の領域は、前記座席クッション(1)に取外しできるように接続されていることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1に記載の椅子。
【請求項10】
前記向上された滑り止めを備えた前記座席面の領域は、滑らかであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の椅子。
【請求項11】
前記向上された滑り止めを備えた前記座席面の領域は、粗いことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の椅子。
【請求項12】
前記向上された滑り止めを備えた前記座席面の領域は、プロファイルが設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の椅子。
【請求項13】
前記向上した滑り止めの領域は、前記座席面の表面領域の1/2、1/3、1/4、1/8又は1/10の範囲にほぼ対応することを特徴とする請求項1、2、又は4乃至12のいずれか1に記載の椅子。

【図1】
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【公開番号】特開2007−284055(P2007−284055A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105659(P2007−105659)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(505343882)インノワ・パテント・ゲーエムベーハー (7)