説明

チェーンカバー及びそれを用いたスラットコンベヤ

【課題】並列に配置された複数条のローラチェーンに装着して各ローラチェーンの上部と両側部を一括して覆い、同時にこの複数条のローラチェーン間にフラットな荷搬送面を作り出してローラコンベヤよりも安価で搬送の安定性にも優れるスラットコンベヤを形成することを可能にしたチェーンカバーを提供する。
【解決手段】ローラチェーン21の連結ピン22の端部を係止させる軸穴5を備えたサイドカバー3と、各々の長さLをチェーンピッチと略等しくした2個のトップカバー2と、隣り合うトップカバー2、2を互いに連結する連結プレート4とを有するチェーンカバー1を提供する。このチェーンカバー1は、両端のサイドカバー3が軸穴5と同心の凸形円弧の前縁7とその前縁に対応させた凹形円弧の後縁8を有し、連結プレート4と2個のトップカバー2、2が一体になってスラットを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、並列配置の複数条のローラチェーンに装着して各ローラチェーンの上部と両側部を一括して覆い、同時にこの複数条のローラチェーン間にフラットな荷搬送面を作り出すチェーンカバーと、そのチェーンカバーを用いて形成したスラットコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
首記のチェーンカバーの従来例として、例えば、下記特許文献1に示されるものなどがある。特許文献1が開示しているチェーンカバーは、長さがチェーンピッチと略等しい平板のトップカバーと、そのトップカバーの両側部に垂下して設けるサイドカバーとからなる。サイドカバーは、ローラチェーンの両側部を覆うカバーであり、ローラチェーンの連結ピンの端部を係止させる軸穴と、その軸穴と同心の凸形円弧の前縁と、その前縁に対応させた凹形円弧の後縁と、軸穴よりも下側の内面を裾拡がりの方向に傾斜させるテーパガイド面を備えている。
【0003】
このチェーンカバーは、ローラチェーンの上部を覆うトップカバーをチェーンのリンクで支持する構造にして連結ピンに荷重がかからないようにしており、ピンリンクからの連結ピン突出量が小さい汎用のローラチェーンに装着してチェーン上にフラットな搬送面を作り出せる利点がある。
【0004】
しかしながら、このチェーンカバーでは、広い荷搬送面をもったチェーンコンベヤを形成することができず、得られるチェーンコンベヤの用途が制限される欠点がある。なお、トップカバーの両端を側方に張り出させれば荷搬送面の幅が広がるが、この方法では、強度確保の観点から張り出し部の張り出し長さが規制されるので、荷搬送面の幅を大きく広げることが難しい。
【特許文献1】特開2001−315936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チェーンカバーを用いて幅の広い荷搬送面を形成できるようにすれば、ローラコンベヤよりも安価なチェーンコンベヤを実現でき、現在ローラコンベヤで搬送している荷をその安価なチェーンコンベヤで搬送することが可能になる。また、チェーンカバーを利用して形成するチェーンコンベヤは、機能的には既知のスラットコンベヤと差のないものを期待でき、ローラコンベヤによる搬送に比べて搬送の安定性を向上させることも可能になる。
【0006】
この発明は、その要求に応えたチェーンカバーと、このチェーンカバーを使用して構成されるスラットコンベヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明においては、ローラチェーンの連結ピンの端部を係止させる軸穴を備えたサイドカバーと、各々の長さをチェーンピッチと略等しくしたn(n≧2)個の並列配置の平板のトップカバーと、隣り合うトップカバーを互いに連結する連結プレートとを有し、ローラチェーンの上部を覆う各トップカバーの両側下部に前記ローラチェーンの両側部を覆う前記サイドカバーがそれぞれ垂下して設けられ、両端のサイドカバーは、前記軸穴と同心の凸形円弧の前縁とその前縁に対応させた凹形円弧の後縁を有し、前記連結プレートとn個のトップカバーが一体になってスラットを形成しているチェーンカバーを提供する。
【0008】
このチェーンカバーは、両端のサイドカバーの下面をトップカバーと平行なストレート面にし、前記軸穴の中心から前記ストレートな下面までの距離と、下面の軸穴中心から後方への伸び出し量をそれぞれチェーンピッチの約1/2に設定したものや、連結プレートの下面に補強用のリブを設けたもの、あるいは、n個のトップカバーと、各トップカバーの両側下部に設けるサイドカバーと、トップカバー間の連結プレートと、連結プレート下面の補強用リブを樹脂で一体に形成したものなどが好ましい。
【0009】
また、両端に配置されるトップカバーには、荷搬送面の幅をより広げるために、外側に突出する張り出し部を設けることができる。
【0010】
この発明においては、上記のチェーンカバーをローラチェーンと組み合わせたコンベヤも併せて提供する。そのコンベヤは、駆動スプロケットと従動スプロケット間に掛け渡す並列配置のn(n≧2)条の無端ローラチェーンと、このローラチェーンの全ピッチに対応する数のチェーンカバーとで構成される。チェーンカバーは、本発明品であり、このチェーンカバーを同一向きに整列させてローラチェーンに装着する。全数のチェーンカバーを装着し終えると、各カバーのスラットが無端に連なってフラットな荷搬送面を有するこの発明のスラットコンベヤができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明のチェーンカバーは、1条のローラチェーンに対応したチェーンカバー(特許文献1が開示しているチェーンカバー)をn個並列に並べ、これらをトップカバーに連なる連結プレートで互いに連結したものと考えることができる。並列配置のn個のトップカバーと隣り合うトップカバー間の連結プレートが、幅の広い(特許文献1のチェーンカバーと比較した幅)スラットを形成し、ローラコンベヤと比較して遜色のない幅をもつ荷搬送面を作り出すことができる。
【0012】
このチェーンカバーは、樹脂の一体成形品を用いると特に安価に提供することができ、n条のローラチェーンと組み合わせてローラコンベヤよりも安価なスラットコンベヤを形成することが可能になる。スラットコンベヤは、平面の荷搬送面をもつので、ローラコンベヤによる搬送に比べて搬送の安定性に優れ、荷の保護に関しても好ましい結果が期待できる。
【0013】
また、チェーンとトッププレートの配列数nを増減して荷搬送面の幅を自由に変えることができ、コンベヤの用途制限の問題も解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を添付図面の図1乃至図6に基づいて説明する。図1のチェーンカバー1は、並列配置の2条の無端ローラチェーンと組み合わせてスラットコンベヤを構成するものである。このチェーンカバー1は、チェーンの条数と同数のトップカバー2、2と、各トップカバー2、2の両側下部に垂下して設けるサイドカバー3、3と、2個のトップカバー2、2を互いに連結する連結プレート4とを有している。例示のチェーンカバー1は、全体が一体に形成された樹脂の射出成形品であり、安価に作れるが、金属の鋳造品を採用することもできる。
【0015】
各トップカバー2、2の長さLは、チェーンピッチP(図2参照)とほぼ等しい。また、各トップカバー2、2の幅wは、1条のローラチェーンに対応させた寸法にしている。具体的には、図3に示すように、被覆対象ローラチェーン21の幅wに左右のサイドカバー3、3の厚みを加算した寸法と略等しくしている。
【0016】
各サイドカバー3には、ローラチェーン21の連結ピン22の端部を係止させる軸穴5と、連結ピン22を軸穴5にはめ込み易くするためのテーパガイド面6を設けている。また、両端のサイドカバー3には、さらに、軸穴5と同心の凸形円弧の前縁7と、その前縁7に対応させた凹形円弧の後縁8を備えさせている。ここでは説明の便宜上、凸形円弧の縁7を前縁、凹形円弧の縁8を後縁と言うが、両縁には実際には前後の関係はない。
【0017】
内側に配置されたサイドカバー3は、材料の節約と成形の容易化のために、軸穴5を形成する領域のみを残して余分な部分を省いた形状にしたが、両端のサイドカバーと同一形状にしてもよい。また、軸穴5は、貫通穴、非貫通穴のどちらであってもよい。
【0018】
図3に示すように、両端のサイドカバー3の高さHは、ローラチェーン21の高さとほぼ等しい。また、両端のサイドカバー3の下面9は、トップカバー2と平行なストレート面にし、軸穴5の中心から下面9までの高さhをチェーンピッチPの約1/2にしている。さらに、後縁8と下面9の交差部にできる鋭角コーナ部を除去して下面9の中心から後方への伸び出し量lもチェーンピッチPの約1/2にしており、これらの条件の設定によってチェーンカバー1のはずれ止めの効果が高まる。
【0019】
このほか、サイドカバー3の内面に、軸穴5を取り巻く小面積の凸部10を設け、左右のサイドカバー3、3の凸部間寸法をチェーンのピンリンク23の設置幅とほぼ等しくしており、凸部10によってローラチェーン21に対するサイドカバー3の接触領域が狭められている。また、両端のサイドカバー間に、トップカバー2の前方にせり出す補助覆い部11を設けている。この補助覆い部11は、好ましい要素であって、チェーン21が折り返されるターン部において前後のチェーンカバー間に生じる隙間を塞ぐ働きをする。
【0020】
連結プレート4は、左右のトッププレート2、2に連なっている。この連結プレート4とトッププレート2、2とによって、上面が平坦な長さL、幅Wのスラットが構成される。例示のチェーンカバーを採用すると、そのスラットの幅が要求されるコンベヤの幅となる。スラットの幅の調整は、トッププレート2、2間の距離を変化させて行う。連結プレート4は、その幅(トッププレート間の距離)が大きくなると撓み易くなるので、幅が大きくて撓みが懸念されるときには、下面に補強リブ12を設けて補強するのがよい。例示のチェーンカバーにおいては、その補強リブ12を2本設けているが、補強リブの設置本数は特に限定されない。補強リブ12があると連結プレート4を薄くすることが可能になり、材料費の削減が図れる。
【0021】
以上の如く構成したチェーンカバー1は、図2に示すように、並列に配置される2条のローラチェーン21(片側のチェーンのみを図示)に対し、同一仕様のものを同一向きに整列させて連結ピン1本当たりに1個のカバーが係止するように装着する。その作業は、カバー1の両側を、各チェーン21に跨がせ、この状態でカバー1を下向き、あるいは斜め下向きに押し込む方法で行う。その押し込み時にテーパガイド面6と連結ピン22の接触部に働く分力によってサイドカバー3が弾性変形して押し広げられ、連結ピン22の両端が左右のサイドカバーの軸穴5に嵌まるとサイドカバー3が弾性復元して連結ピン22との係止状態が維持される。
【0022】
図2は、カバー装着後のローラチェーンの側面を表している。この状態では、図3に示すように、トップカバー2がチェーンのローラリンク24に受け支えられ、連結ピン22に負担がかからない。
【0023】
図4に、図1〜図3のチェーンカバー1を使用して形成されるスラットコンベヤの概要を示す。このスラットコンベヤ25は、各2個設ける駆動スプロケット26と従動スプロケット27間に2条の無端ローラチェーン21を並列配置にして掛け渡し、各ローラチェーン21の全域に全ピッチに対応する数のチェーンカバー1を装着して構成されている。全数のチェーンカバー1を装着し終えると、各カバーのトッププレート2と連結プレート4によって形成されるスラットが無端の状態に連なり、フラットな荷搬送面を有するコンベヤになる。駆動スプロケット26は、ギヤードモータなどの回転駆動源(図示せず)を備えており、その回転駆動源から駆動力を受けて回転する。
【0024】
ローラチェーン21は、コンベヤの要求幅によっては、2条以上のチェーンが設けられる。ローラチェーンが3条設置されるときに使用するチェーンカバーの一例を図5に示す。このチェーンカバー1Aは、トッププレート2の両側下部にサイドカバー3を垂下して設けたチェーンカバーを3個並列に配置し、各チェーンカバー間を連結プレート4で連結したものと考えてよい。サイドカバー3は、両端に配置するものには凸形円弧の前縁と凹形円弧の後縁を備えさせるが、それ以外のサイドカバー3は、外部からは見えないため円弧の前後の縁はなくてもよい。
【0025】
なお、この発明のチェーンカバーは、4条あるいはそれ以上のローラチェーンと組み合わせる形状のものも考えられる。また、図6に示すチェーンカバー1Bのように、両端のトッププレート2、2に、外側に突出する張り出し部13を設けてコンベヤの荷搬送面の幅をより広げることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a):この発明のチェーンカバーの実施形態を示す斜視図、(b):同上のチェーンカバーの正面図、(c):図(b)のX−X線に沿った断面図、(d):図(b)のY−Y線に沿った断面図
【図2】この発明のチェーンカバーをローラチェーンに装着した状態の側面図
【図3】図2のIII−III線部の断面図
【図4】この発明のスラットコンベヤの概要を示す平面図
【図5】チェーンカバーの他の例を示す正面図
【図6】チェーンカバーのさらに他の例を示す正面図
【符号の説明】
【0027】
1、1A、1B チェーンカバー
2 トップカバー
3 サイドカバー
4 連結プレート
5 軸穴
6 テーパガイド面
7 前縁
8 後縁
9 サイドカバーの下面
10 凸部
11 補助覆い部
12 補強リブ
13 張り出し部
21 ローラチェーン
22 連結ピン
23 ピンリンク
24 ローラリンク
25 スラットコンベヤ
26 駆動スプロケット
27 従動スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラチェーンの連結ピンの端部を係止させる軸穴を備えたサイドカバーと、各々の長さをチェーンピッチと略等しくしたn(n≧2)個の並列配置の平板のトップカバーと、隣り合うトップカバーを互いに連結する連結プレートとを有し、
ローラチェーンの上部を覆う各トップカバーの両側下部に前記ローラチェーンの両側部を覆う前記サイドカバーがそれぞれ垂下して設けられ、両端のサイドカバーは、前記軸穴と同心の凸形円弧の前縁とその前縁に対応させた凹形円弧の後縁を有し、前記連結プレートとn個のトップカバーが一体になってスラットを形成しているチェーンカバー。
【請求項2】
両端のサイドカバーの下面をトップカバーと平行なストレート面にし、前記軸穴の中心から前記ストレートな下面までの距離と、下面の軸穴中心から後方への伸び出し量をそれぞれチェーンピッチの約1/2に設定した請求項1に記載のチェーンカバー。
【請求項3】
前記連結プレートの下面に補強用のリブを設けた請求項1に記載のチェーンカバー。
【請求項4】
前記n個のトップカバーと、各トップカバーの両側下部に設けるサイドカバーと、トップカバー間の連結プレートと、連結プレート下面の補強用リブを樹脂で一体に形成した請求項1に記載のチェーンカバー。
【請求項5】
両端に配置されるトップカバーに、外側に突出する張り出し部を設けた請求項1乃至4のいずれかに記載のチェーンカバー。
【請求項6】
駆動スプロケットと従動スプロケット間に掛け渡す並列配置のn(n≧2)条の無端ローラチェーンと、前記ローラチェーンの全ピッチに対応する数の請求項1乃至5のいずれかに記載のチェーンカバーとを有し、前記チェーンカバーを同一向きに整列させてローラチェーンに装着し、このチェーンカバーの無端に連なったスラットでフラットな荷搬送面を構成したスラットコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−96540(P2006−96540A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286426(P2004−286426)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000159766)
【出願人】(503339889)
【Fターム(参考)】