説明

チェーンケース及びこれを備えた自動二輪車

【課題】内側チェーンケースを取り外すことなく後輪の交換作業を容易に行うことができるチェーンケースを提供する。
【解決手段】内側チェーンケース5はドリブンスプロケット25周辺後部を別体の後部プレート33として分割する。これにより後輪19の交換作業は、外側チェーンケースと後側プレート33を取り外すだけで、内側チェーンケース5はスイングアーム9のクロスメンバ17に前側切り欠き部29を取り付けたままの状態で行うことができる。また外側チェーンケースを取り付ける場合は内側チェーンケース5を支える必要がなく、効率的に、また、容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の動力を後輪に伝達するチェーンの周囲を覆うためのチェーンケース及びこれを備えた自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車のうち、チェーンを埃や泥などから保護するために、チェーンケースをチェーンの周囲に取り付けたものがある。この種の自動二輪車用のチェーンケースは、アッパケースとロアケースとから構成されているものが代表的である(例えば、特許文献1参照)。アッパケースは、チェーンの上部を覆い、ロアケースは、チェーンの下部を覆うように上下で分割されて構成されている。アッパケースとロアケースとが上下位置において連結されるのは、後輪の車軸取付部の付近となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−139376号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、後輪を交換する際には、アッパケース及びロアケースをともに取り外す必要がある。したがって、後輪を取り付けた後に、再びアッパケースとロアケースをともに取り付ける必要があり、後輪の交換作業が非常に繁雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、分割構造を工夫することにより、後輪の交換作業を容易に行うことができるチェーンケース及びこれを備えた自動二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、自動二輪車の動力を後輪に伝達するチェーンの周囲を覆い、ピボット部においてフレームに対して揺動可能に支持されたスイングアームに取り付けられるチェーンケースであって、前記スイングアームの左側アーム部と右側アーム部とを前記スイングアームのピボット側で連結しているクロスメンバに取り付けるため、前側に形成された前側切り欠き部と、前記スイングアームの後輪取付部に相当する部位の後部及び下部を切り欠いた後側切り欠き部と、前記後側切り欠き部に取り付けられる後部プレートとを備え、前記左側アーム部及び右側アーム部のうち、後輪のドリブンスプロケット側に位置するチェーン側アーム部に対して車幅方向における内側に取り付けられる内側チェーンケースと、前記チェーンを覆うように、前記内側チェーンケースに対して車幅方向における外側から取り付けられる外側チェーンケースと、を備えているものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、後輪の交換作業を行う際には、内側チェーンケースを取り外すことなく、外側チェーンケースと後側切り欠き部を取り外すだけで、後輪に取り付けられているドリブンスプロケットが内側チェーンケースに干渉することなく、作業を行うことができる。また、チェーンケースを自動二輪車に取り付ける際には、内側チェーンケースの前側切り欠き部をスイングアームのクロスメンバに取り付けた状態で作業を行うことができる。したがって、内側チェーンケースを支える必要がなく、作業を効率的に行うことができ、後輪の交換作業を容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明において、前記前側切り欠き部は、前記クロスメンバの上面及び下面を挟み込む開口高さを備えていることが好ましい(請求項2)。前側切り欠き部の開口高さがクロスメンバの上面及び下面を挟み込む高さであるので、内側チェーンケースをクロスメンバに挟み込ませることができる。したがって、容易に内側チェーンケースをクロスメンバに挟持させることができる。
【0009】
また、本発明において、前記前側切り欠き部は、前記クロスメンバにおける自動二輪車の前後方向と垂直方向とを含む断面の形状に関して、垂直方向の寸法に比べて前後方向の寸法の方が大きい部位に係合され、前記開口高さよりも前後方向の寸法の方が大きく形成されていることが好ましい(請求項3)。前側切り欠き部は、クロスメンバの断面形状に合わせ前後方向に長く形成されている。したがって、内側チェーンケースをクロスメンバに挟持させた際に、安定して保持させることができる。
【0010】
また、本発明において、前記前側切り欠き部は、前記内側チェーンケースの側面を、前記クロスメンバの上面及び下面に沿って形成された縁部を備え、前記縁部は、車幅方向の寸法が、前記内側チェーンケースにおける側面の肉厚より大きく形成されていることが好ましい(請求項4)。前側切り欠き部は、車幅方向における縁部の肉厚が側面の肉厚より大きく形成されている。したがって、クロスメンバに対して内側チェーンケースを安定して取り付けることができる。
【0011】
また、本発明において、前記縁部は、前記外側チェーンケース側にのみ突出していることが好ましい(請求項5)。一方側にのみ縁部を突出形成しているので、容易に製造することができる。
【0012】
また、本発明において、前記縁部は、垂直方向の寸法が、前記内側チェーンケースにおける側面の肉厚より大きく形成されていることが好ましい(請求項6)。前側切り欠き部は、垂直方向における縁部の寸法が側面の肉厚よりも大きく形成されている。したがって、縁部の剛性を高くすることができ、クロスメンバに対して内側チェーンケースを安定して取り付けることができる。
【0013】
また、本発明において、前記前側切り欠き部は、前端が広く、徐々に前記開口高さに向かって狭くなる案内部を備えていることが好ましい(請求項7)。案内部を備えているので、内側チェーンケースの前側切り欠き部をクロスメンバに対して差し込みやすくすることができる。したがって、内側チェーンケースの取付の作業性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記内側チェーンケースは、その後部に前記後輪との干渉を避けるための開口部を有し、前記後側切り欠き部は、その下部の切り欠きが、前記開口部よりも前方にまで大きく切り欠かれていることが好ましい(請求項8)。自動二輪車の後輪は、チェーンが延びた際に前後方向に後輪のアクスルを移動させて、チェーンのたるみを許容範囲に収まるようにチェーンアジャスタにより調整できるように構成されている。つまり、後輪のアクスルが左側アーム部と右側アーム部の後端部に相当する後輪取付部で前後に移動できるようになっている。したがって、そのような作業を行う際には、後輪交換作業時と同様に、スイングアームの前後方向に後輪を移動させるための大きな作業空間を必要とする。内側チェーンケースの後側切り欠き部は、開口部よりも前方にまで大きく切り欠かれているので、この作業空間を大きくとることができる。したがって、チェーン張り作業や後輪交換作業を効率的に行うことができる。
【0015】
また、本発明において、前記外側チェーンケースは、その車幅方向の外側面に、周辺に配置される車載部品との干渉を避けるための凹部を備えていることが好ましい(請求項9)。凹部により車載部品の配置を容易に行うことができる。
【0016】
また、本発明において、前記外側チェーンケースは、車幅方向の外側面に、前記凹部に隣接して凸部が形成され、前記凸部は、前記外側チェーンケースを垂直方向から見たときに、前記凹部の下部に相当する前記後輪のアクスル側が不可視である位置にまで、車幅方向の外側に突出して形成されていることが好ましい(請求項10)。外側チェーンケースの凹部に隣接して形成された凸部は、外側チェーンケースを垂直方向から見たときに、後輪のアクスル側が不可視となるように、外側に突出している。したがって、外側チェーンケースは、面に垂直な方向に上下させる方向に型抜きする手法で製造することができる。
【0017】
また、本発明において、前記車載部品は、前記チェーン側アーム部と前記フレームとの間に掛け渡される緩衝器であり、前記凹部は、前記外側チェーンケースの上部に形成されていることが好ましい(請求項11)。凹部によって、緩衝器と外側チェーンケースとの干渉を防止することができる。
【0018】
また、本発明において、前記外側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部に対して主に上方に位置する上部外側チェーンケースと、前記チェーン側アーム部に対して主に下方に位置する下部外側チェーンケースとを備えているが好ましい(請求項12)。外側チェーンケースが上部外側チェーンケースと下部外側チェーンケースとの2ピース構成であるので、上部外側チェーンケースか下部外側チェーンケースのみを取り外すだけで、例えば、チェーンやドリブンスプロケットの状態を確認することができる。
【0019】
また、本発明において、前記内側チェーンケースと前記外側チェーンケースは、樹脂で構成されており、前記内側チェーンケースは、上部及び下部に、前記外側チェーンケース側に向かって延出された鐔部を備え、前記外側チェーンケースは、上部及び下部に、前記内側チェーンケース側に向かって延出された鐔部を備え、前記内側チェーンケース及び前記外側チェーンケースの一方の鐔部は、複数個の取付穴を備え、前記内側チェーンケース及び前記外側チェーンケースの他方の鐔部は、前記複数個の取付穴に挿入されて前記内側チェーンケースと前記外側チェーンケースとを互いに固定する複数個の爪部を備えているが好ましい(請求項13)。鐔部の複数個の取付穴と、対応する複数個の爪部とによって、樹脂製の内側チェーンケースと外側チェーンケースとを互いに容易に固定することができる。
【0020】
また、本発明において、前記内側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部よりも上方であって、前記外側チェーンケースの内側面に対向した部位に、前記外側チェーンケース側へ突出した上側凸部を形成され、前記内側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部よりも下方であって、前記外側チェーンケースの内側面に対向した部位に、前記外側チェーンケース側へ突出した下側凸部を形成され、前記外側チェーンケースは、前記上側凸部と前記下側凸部にネジ止め固定されることが好ましい(請求項14)。内側チェーンケースの上側凸部と下側凸部によって、ネジ止めで外側チェーンケースを内側チェーンケースに対して確実に固定することができる。
【0021】
また、本発明において、前記上側凸部は、チェーンの移動方向への長さを前記下側凸部よりも長く形成され、かつ、チェーンの位置以上に前記外側チェーンケース側へ突出して形成されていることが好ましい(請求項15)。チェーンがたるんでくると、その下側がチェーンケースの下部に設けられた接触部に接触して、加速時に異音を発生させる構成が従来から存在する。しかし、加速時はエンジン音が大きく、異音を操縦者が聞き逃す恐れがある。上側凸部は、エンジンブレーキをかけた際に、チェーンのうちの上側が接触して異音を発生する。エンジンブレーキ時は、加速時に比較してエンジン音が小さいので、操縦者が異音に気付きやすく、チェーンのたるみに起因するメンテナンス時期を適切に判断することができる。
【0022】
また、本発明において、前記上側凸部は、平面視において、ドライブスプロケットと後輪のアクスルとの実質的な中間位置に設けられていることが好ましい(請求項16)。上側凸部がドライブスプロケットとアクスルのほぼ中間位置に設けられているので、チェーンのたるみを早く検出することができる。
【0023】
また、請求項17に記載の発明は、上記いずれかに記載のチェーンケースを備えた自動二輪車。左右分割式のチェーンケースにより、ドリブンスプロケットを備えた後輪の交換作業を容易に行うことができる自動二輪車を実現することができる。
【0024】
なお、本明細書は、次のようなチェーンケースに係る発明も開示している。
【0025】
従来、チェーンケースは、上部チェーンケースと下部チェーンケースとの上下二分割で構成されている。さらに、その下部チェーンケースの底面には、櫛歯状の突起を備えている。チェーンが延びた場合には、スイングアームより下側のチェーンがたるみ、櫛歯状の突起部にチェーンの下側が接触して異音を発する。これにより自動二輪車の操縦者は、チェーンのたるみが生じていることを知ることができ、メンテナンスが必要であると判断することができるようになっている。
【0026】
しかしながら、その櫛歯状の突起部は、下部チェーンケースの底面に形成されている。そのため、自動二輪車が加速した際にしか異音が生じないが、加速時はエンジンの回転数が高いので、エンジン音によって異音が聞きづらく、操縦者が聞き逃す恐れがある。そのため、チェーンのテンション調整を行うためのメンテナンス時期が遅れがちになるという問題がある。
【0027】
(1)自動二輪車の動力を後輪に伝達するチェーンの周囲を覆い、スイングアームに取り付けられるチェーンケースであって、
スイングアームを構成している二つのスイングアーム部のうち、後輪のドリブンスプロケット側に位置するチェーン側アーム部の内側に取り付けられる内側チェーンケースと、
チェーンを覆うように、前記内側チェーンケースに外側から取り付けられる外側チェーンケースと、
を備え、
前記内側チェーンケース、前記外側チェーンケースのうちの少なくとも一方には、前記チェーン側アーム部より上方であって、かつ、上側のチェーンよりも下方の位置に、チェーンがたるんだ場合に接触する接触部が形成されているチェーンケース。
【0028】
前記(1)に記載の発明によれば、内側チェーンケース、外側チェーンケースのうちの少なくとも一方には、たるんだチェーンの接触部が形成されている。したがって、チェーンがたるんでくると、エンジンブレーキ時に上側のチェーンが接触部に接触して異音を発する。エンジンブレーキ時は、加速時に比較してエンジン音が小さいので、チェーンのたるみに起因する異音を聞き逃し難い。したがって、チェーンのテンション調整を行うためのメンテナンスを好適に実施することができる。
【0029】
(2)前記(1)に記載のチェーンケースにおいて、
前記内側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部よりも上方であって、前記外側チェーンケースの内側面に対向した部位に、前記外側チェーンケース側へ突出した上側凸部を形成され、
前記内側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部よりも下方であって、前記外側チェーンケースの内側面に対向した部位に、前記外側チェーンケース側へ突出した下側凸部を形成され、
前記外側チェーンケースは、前記上側凸部と前記下側凸部にネジ止めされ、
前記接触部が前記上側凸部で構成されているチェーンケース。
【0030】
前記(2)に記載の発明によれば、外側チェーンケースを内側チェーンケースにネジ止めする上側凸部で接触部を兼用することができる。したがって、構成を簡易化することができる。
【0031】
(3)前記(2)に記載のチェーンケースにおいて、
前記上側凸部は、チェーンの移動方向への長さを前記下側凸部よりも長く形成されているチェーンケース。
【0032】
前記(3)に記載の発明によれば、チェーンの接触面積を広くすることができ、チェーンの接触時の異音を大きくできる。したがって、操縦者が異音に気付きやすくできる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るチェーンケースによれば、後輪の交換作業を行う際には、内側チェーンケースを取り外すことなく、外側チェーンケースと後側切り欠き部を取り外すだけで、後輪に取り付けられているドリブンスプロケットが内側チェーンケースに干渉することなく、作業を行うことができる。また、チェーンケースを自動二輪車に取り付ける際には、内側チェーンケースの前側切り欠き部をスイングアームのクロスメンバに取り付けた状態で作業を行うことができる。したがって、内側チェーンケースを支える必要がなく、作業を効率的に行うことができ、後輪の交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例に係るチェーンケースの外観斜視図である。
【図2】チェーンケースの上部外側チェーンケースを取り外した状態を示す外観斜視図である。
【図3】チェーンケースの上部外側チェーンケースと下部外側チェーンケースとを取り外した状態を示す外観斜視図である。
【図4】チェーンケースの外側チェーンケースを取り外し、内側チェーンケースから後部プレートを取り外しつつある状態を示す外観斜視図である。
【図5】チェーンケースの外側チェーンケースと後部プレートを取り外した状態を示す外観斜視図である。
【図6】チェーンケースの組み立て側面図であり、(a)は左側面図であり、(b)は右側面図の一部である。
【図7】図6におけるチェーンケースの縦断面図であり、(a)は101−101矢視断面図であり、(b)は102−102矢視断面図であり、(c)は103−103矢視断面図であり、(d)は104−104矢視断面図である。
【図8】内側チェーンケースを示し、(a)は平面図であり、(b)は右側面図である。
【図9】後部プレートを示し、(a)は後方から見た図であり、(b)は右側面図である。
【図10】内側チェーンケースの連結部を示し、(a)は側面図であり、(b)は横断面図である。
【図11】内側チェーンケースの爪部を示し、(a)は平面図であり、(b)は縦断面図である。
【図12】上部外側チェーンケースを示し、(a)は平面図であり、(b)は左側面図である。
【図13】下部外側チェーンケースを示し、(a)は左側面図であり、(b)は底面図である。
【図14】実施例に係るチェーンケースを備えた自動二輪車の左側面図である。
【図15】実施例に係るチェーンケースの外側チェーンケースを取り外した状態の自動二輪車の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0036】
<チェーンケース>
まず、図1〜図5を参照して、実施例に係るチェーンケースの概略構成について説明する。なお、図1は、実施例に係るチェーンケースの外観斜視図であり、図2は、チェーンケースの上部外側チェーンケースを取り外した状態を示す外観斜視図であり、図3は、チェーンケースの上部外側チェーンケースと下部外側チェーンケースとを取り外した状態を示す外観斜視図であり、図4、チェーンケースの外側チェーンケースを取り外し、内側チェーンケースから後部プレートを取り外しつつある状態を示す外観斜視図であり、図5は、チェーンケースの外側チェーンケースと後部プレートを取り外した状態を示す外観斜視図である。
【0037】
チェーンケース1は、自動二輪車の動力を伝達するチェーン3の周囲を覆うものである。チェーンケース1は、内側チェーンケース5と、外側チェーンケース7とを備えている。本実施例におけるチェーンケース1は、自動二輪車用であり、スイングアーム9に取り付けられている。本実施例におけるチェーンケース1は、例えば、樹脂成形で作製されている。
【0038】
スイングアーム9は、図示しない自動二輪車のメインフレームに対してピボット部11で揺動可能に取り付けられている。スイングアーム9は、左側アーム部13と、右側アーム部15と、クロスメンバ17とを備えている。
【0039】
左側アーム部13と右側アーム部15とは、後端側(図1〜5の右側)に後輪19の取付部21を備えている。左側アーム部13の取付部21には、チェーンアジャスタ23が取り付けられている。取付部21は、後輪19のアクスルを取り付けられ、後輪19を回転自在に支持する。取付部21は、後輪19をアクスルごと前後方向(図1の左右方向)に移動可能に構成されている。その移動は、チェーンアジャスタ23によって行われる。
【0040】
後輪19は、アクスルと同軸にドリブンスプロケット25を備えている。ドリブンスプロケット25の前方であって、ピボット部11の前方には、図示しないエンジンのドライブスプロケット27が配置されている。上述したチェーン3は、ドリブンスプロケット25とドライブスプロケット27に架け渡されている。
【0041】
この実施例では、後輪19の左側にドリブンスプロケット25が取り付けられているので、チェーン3が車幅方向における左側に位置する。そのため、チェーンケース1は、スイングアーム9の左側アーム部13に取り付けられている。この例では、左側アーム部13が本発明における「チェーン側アーム部」に相当する。自動二輪車によっては、車幅方向における右側にドリブンスプロケット25が取り付けられていることがあるが、その場合には、チェーンケース1が右側アーム部15に取り付けられることになる。この場合には、右側アーム部15が本発明における「チェーン側アーム部」に相当することになる。
【0042】
内側チェーンケース5は、図3,図4に示すように、左側アーム部13の車幅方向における内側に取り付けられ、前側切り欠き部29と後側切り欠き部31とを備えている。また、後側切り欠き部31は、後部プレート33を備えている。詳細は後述するが、前側切り欠き部29は、内側チェーンケース5をクロスメンバ17に挟み込んで支持させるためのものである。後側切り欠き部31は、内側チェーンケース5のうち、右側アーム部15の取付部21を含む後部及び下部を切り欠いたものである。後部プレート33は、取付部21との干渉を回避する取付部切り欠き35を形成されており、後側切り欠き部31に取り付けられる。
【0043】
外側チェーンケース7は、図1,図2に示すように、チェーン3を覆うように、車幅方向における外側から内側チェーンケース5に対して取り付けられる。
【0044】
この実施例では、外側チェーンケース7は、上部外側チェーンケース37と下部外側チェーンケース39との2ピース構造を採用している。上部外側チェーンケース37は、左側アーム部13の上部に配置され、下部外側チェーンケース39は、左側アーム部13の下部に配置される。なお、ここでいう左側アーム部13の上部及び下部は、主としてその位置にあるという意味であって、その位置にのみ存在するという意味ではない。
【0045】
次に、図6〜8を参照して、内側チェーンケース5について詳細に説明する。なお、図6は、チェーンケースの組み立て側面図であり、(a)は左側面図であり、(b)は右側面図の一部である。図7は、図6におけるチェーンケースの縦断面図であり、(a)は101−101矢視断面図であり、(b)は102−102矢視断面図であり、(c)は103−103矢視断面図であり、(d)はD−D矢視断面図である。図8は、内側チェーンケースを示し、(a)は平面図であり、(b)は右側面図である。
【0046】
内側チェーンケース5の前側切り欠き部29は、開口高さHとなるように形成されている。この開口高さHは、クロスメンバ17の左側アーム部13側にあたる部位の高さにほぼ一致する高さであることが好ましい。換言すると、前側切り欠き部29は、クロスメンバ17の上面と下面とを挟み込んで、内側チェーンケース5がクロスメンバ17を挟持できる開口高さHを形成されている。
【0047】
また、前側切り欠き部29は、開口長さLで形成されている。この開口長さLは、開口高さHよりも大きく、前側切り欠き部29が自動二輪車の前後方向に長い開口形状で形成されていることが好ましい。なお、図5に示すように、内側チェーンケース5は、クロスメンバ17のうち、自動二輪車の前後方向と垂直方向とを含む断面の形状に関して、垂直方向の寸法に比べて前後方向の寸法が大きい部位に、その前側切り欠き部29が係合される。
【0048】
また、内側チェーンケース5は、前側切り欠き部29の前端(図8の右側)が開口高さHよりも広く、徐々に前端切り欠き部29の奥側(図8の左側)に向かって狭くなる案内部41が形成されていることが好ましい。換言すると、前側切り欠き部29は、開口高さHに向かって徐々に狭くなる案内部41を備えている。
【0049】
さらに、内側チェーンケース5は、その前側切り欠き部29が次のように構成されていることが好ましい。
【0050】
ここで図7(a)を参照する。内側チェーンケース5の側面部は、肉厚dで形成されている。前側切り欠き部29は、クロスメンバ17の上面及び下面に沿って、外側チェーンケース7側に突出した縁部43を形成されている。この縁部43は、車幅方向の肉厚d1が肉厚dよりも大きく形成されている。さらに、縁部43は、垂直方向の肉厚d2が肉厚dよりも大きく形成されている。
【0051】
内側チェーンケース5は、後側切り欠き部31が次のように構成されていることが好ましい。
【0052】
ここで、図8を参照する。後側切り欠き部31は、開口部45を形成されている。この開口部45は、後輪19のハブやアクスルが内側チェーンケース5と干渉するのを回避するために形成されている。内側チェーンケース5は、後端側(図8の左側)に後側切り欠き部31を形成されているが、その下部には、開口部45よりも前方にまで大きく切り欠かれた前方切り欠き部47を形成されている。
【0053】
次に、図9、図10を参照して、内側チェーンケース5と後部プレート33との連結構造について説明する。なお、図9は、後部プレートを示し、(a)は後方から見た図であり、(b)は右側面図である。図10は、内側チェーンケースの連結部を示し、(a)は側面図であり、(b)は横断面図である。
【0054】
後部プレート33は、内側チェーンケース5の前方切り欠き部47に相当する位置に、二つの連結部49が形成されている。連結部49は、105−105矢視断面図に示すように、第1の突起部51と第2の突起部53とを有する。第1の突起部51は、先端側が後部プレート33の側面より高く持ち上げられて、前方側(図9の右側)に突出して形成され、第2の突起部53は、後部プレート33の側面と同じ高さで前方側(図9の右側)に突出して形成されている。また、第1の突起部51と第2の突起部53との間隔は、内側チェーンケース5の前方切り欠き部47の肉厚程度である。
【0055】
図8に示すように、内側チェーンケース5の前方切り欠き部47より前方側(図8の右側)には、上述した連結部49に対応するように、二つの連結部55が形成されている。連結部55は、係合穴57,58と規制突起59とを備えている。係合穴57は、連結部49の第1の突起51を内側チェーンケース5の外側面から受け入れ、第2の突起53を内側チェーンケース5の内側面から受け入れる。規制突起59は、第1の突起部51が過度に侵入することを規制する。係合穴58には、内側チェーンケース5の内側(左側アーム部13側)から第2の突起53がはめ込まれる。
【0056】
上述した連結部49,55により、後部プレート33が内側チェーンケース5の後側切り欠き部41に取り付けられる。
【0057】
図8に示すように、内側チェーンケース5は、その上面と下面とが、外側チェーンケース7側に突出して形成された鐔部61を備えている。鐔部61は、上面と下面のそれぞれ離間した三箇所に爪部63を備えている。爪部63は、図11に示すように構成されていることが好ましい。なお、図11は、内側チェーンケースの爪部を示し、(a)は平面図であり、(b)は縦断面図である。
【0058】
爪部63は、鐔部61の前後方向において所定の間隔をおいて形成された長溝65と、長溝65の間に形成された係止片67とを備えている。係止片67は、垂直方向に突出した突起69が形成されている。長溝65に挟まれた係止片67は、長溝65によって図11(a)における紙面の奥手前方向に、図11(b)における紙面の上下方向に弾性変形が容易になっている。
【0059】
また、内側チェーンケース5は、その内側面に上側凸部71と下側凸部73とを備えている。なお、これらは内側チェーンケース5の内側に形成されているので、図8(b)では本来は点線で描くべきであるが、見やすくするために実線で描いてある。上側凸部71は、図4,図7(b)、図8(b)に示すように、左側アーム部13よりも上方であって、上部外側チェーンケース37の内側面に対向した部位に形成されている。また、下側凸部73は、左側アーム部13よりも下方であって、下部外側チェーンケース39に対向した位置に形成されている。上部凸部71は、チェーン3の移動方向(前後方向)における長さが、下部凸部73よりも長く形成されている。また、上部凸部71は、平面視において、チェーン3の位置以上に上部外側チェーンケース37側へ突出して形成されている。これらには、外側チェーンケース7側にネジ穴が形成されており、上部外側チェーンケース37と下部外側チェーンケース39とがネジ止めされる。また、上部凸部71は、平面視において、ドリブンスプロケット25と後輪19のアクスルとの実質的な中間位置に形成されていることが好ましい。
【0060】
ここで、図12、図13を参照する。なお、図12は、上部外側チェーンケースを示し、(a)は平面図であり、(b)は左側面図である。図13は、下部外側チェーンケースを示し、(a)は左側面図であり、(b)は底面図である。
【0061】
上部外側チェーンケース37は、その後側に、取付部21とチェーンアジャスタ23を収める開口凹部75が形成されている。開口凹部75は、下部外側チェーンケース39側に開口している。上部外側チェーンケース37は、開口凹部75の斜め前方の外側面に、凹部77が形成されている。この凹部77は、上方から後輪19のアクスル側に向かって前傾姿勢で形成されている。この凹部77には、図示しない緩衝器が配置される。また、上部外側チェーンケース37は、凹部77に隣接する位置に凸部79が形成されている。この凸部79は、凹部77の後側(図12(b)の右側)に隣接している。また、凸部79は、図12(a)に示すような平面視において、後輪19のアクスル側が見えない位置にまで、車幅方向の外側に突出して形成されている。
【0062】
上部外側チェーンケース37は、内側チェーンケース5側に突出した鐔部81を上部に備えている。また、下部外側チェーンケース39は、内側チェーンケース5側に突出した鐔部83を下部に備えている。
【0063】
上部外側チェーンケース37は、内側チェーンケース5における上部の爪部63に対応する鐔部81の位置に、取付穴85を形成されている。取付穴85は、爪部63の突起69を係止する。この取付穴85は、図12(b)の107−107矢視断面図に示すように、図12(b)における紙面に垂直な方向に成型時の型抜きが可能に構成されている。また、下部外側チェーンケース39は、内側チェーンケース5における下部の爪部63に対応する鐔部83の位置に、取付穴87を形成されている。取付穴87は、取付穴85と同様に、爪部63の突起69を係止する。また、下部外側チェーンケース39の取付穴87も、図12(a)における紙面に垂直な方向に成型時の型抜きが可能に構成されている。
【0064】
上述した本実施例に係るチェーンケース1は、内側チェーンケース5が後側切り欠き部31を備え、後側切り欠き部31に後部プレート33を備えている。したがって、後輪19の交換作業を行う際には、図5に示すように、内側チェーンケース5を取り外すことなく、外側チェーンケース7と後側切り欠き部31を取り外すだけで、後輪19に取り付けられているドリブンスプロケット25が内側チェーンケース5に干渉することなく、作業を行うことができる。また、チェーンケース1を自動二輪車に取り付ける際には、図5に示すように、内側チェーンケース5の前側切り欠き部29をスイングアーム9のクロスメンバ17に取り付けた状態で作業を行うことができる。したがって、内側チェーンケース5を支える必要がなく、作業を効率的に行うことができ、後輪19の交換作業を容易に行うことができる。
【0065】
また、本実施例に係るチェーンケース1は、前側切り欠き部29の開口高さHがクロスメンバ17の上面及び下面を挟み込む高さであるので、内側チェーンケース5をクロスメンバ17に挟み込ませることができる。したがって、容易に内側チェーンケース5をクロスメンバ17に挟持させることができる。さらに、前側切り欠き部29は、クロスメンバ17の断面形状に合わせ前後方向に長く形成されている。したがって、内側チェーンケース5をクロスメンバ17に挟持させた際に、安定して保持させることができる。また、前側切り欠き部29は、車幅方向における縁部43の肉厚d1が側面の肉厚dより大きく形成されている。したがって、クロスメンバ17に対して内側チェーンケース5を安定して取り付けることができる。また、前側切り欠き部29は、垂直方向における縁部43の肉厚d2が側面の肉厚dよりも大きく形成されている。したがって、縁部43の剛性を高くすることができ、クロスメンバ17に対して内側チェーンケース5を安定して取り付けることができる。
【0066】
また、本実施例に係るチェーンケース1は、内側チェーンケース5が案内部41を備えているので、内側チェーンケース5の前側切り欠き部29をクロスメンバ17に対して差し込みやすくすることができる。したがって、内側チェーンケース5の取付の作業性を向上させることができる。
【0067】
さらに、本実施例に係るチェーンケース1は、後部に後輪19との干渉を避けるための開口部45を有し、後側切り欠き部31は、その下部の切り欠きが、開口部45よりも前方にまで大きく切り欠かれた前方切り欠き部47を備えている。一般的に、自動二輪車の後輪は、チェーン3が延びた際に前後方向に後輪19のアクスルを移動させて、チェーン3のたるみを許容範囲に収まるようにチェーンアジャスタ23により調整できるように構成されている。つまり、後輪19のアクスルが左側アーム部13の取付部21で前後方向に移動できる。したがって、そのような作業を行う際には、後輪19の交換作業時と同様に、スイングアーム9の前後方向に後輪19を移動させるための大きな作業空間を必要とする。内側チェーンケース5の後側切り欠き部31は、前方切り欠き部47が開口部45よりも前方にまで大きく切り欠かれているので、この作業空間を大きくとることができる。したがって、チェーン3の張り作業や後輪19の交換作業を効率的に行うことができる。
【0068】
また、本実施例に係るチェーンケース1は、上部外側チェーンケース37が凹部77を備えている。そのため、図示しない緩衝器の配置を容易に行うことができる。また、上部外側チェーンケース37の凹部77に隣接して形成された凸部79は、上部外側チェーンケース37を垂直方向から見たときに、後輪19のアクスル側が不可視となるように、外側に突出している。したがって、上部外側チェーンケース37は、面に沿った方向への型抜きでは製造することができず、面に垂直な方向に上下させる方向に型抜きする手法で製造することができる。
【0069】
本実施例に係るチェーンケース1は、外側チェーンケース7が上部外側チェーンケース37と下部外側チェーンケース39との2ピース構成となっている。そのため、上部外側チェーンケース37か下部外側チェーンケース39のみを取り外すだけで、例えば、チェーン3やドリブンスプロケット25の状態を確認することができる。
【0070】
また、内側チェーンケース5が鐔部61に爪部63を備え、上部外側チェーンケース37が鐔部81に取付穴85を備え、下部外側チェーンケース39が鐔部83に取付穴87を備えて、これらにより内側チェーンケース5と外側チェーンケース7とを容易に固定することができる。また、内側チェーンケース5の上側凸部71と下側凸部73によって、ネジ止めで外側チェーンケース7を内側チェーンケース5に対して確実に固定することができる。
【0071】
また、上側凸部71は、チェーン3がたるんだ状態でエンジンブレーキがかけられると、チェーン3が接触するようにしてある。チェーン3がたるんでくると、その下側がチェーンケース下部に設けられた接触部に接触して、加速時に異音を発生させる構成が従来から存在する。しかし、加速時はエンジン音が大きく、異音を操縦者が聞き逃す恐れがある。上側凸部71(接触部)は、エンジンブレーキをかけた際に、チェーン3のうちの上側が接触して異音を発生する。エンジンブレーキ時は、加速時に比較してエンジン音が小さいので、操縦者が異音に気付きやすく、チェーン3のたるみに起因するメンテナンス時期を適切に判断することができる。また、上部凸部71は、平面視でチェーン3の実質的な中間位置に設けてあるので、チェーン3のたるみを早く検出できる。
【0072】
<自動二輪車>
図14,図15を参照して、上述したチェーンケース1を備えた自動二輪車について説明する。なお、図14は、実施例に係るチェーンケースを備えた自動二輪車の左側面図であり、図15は、実施例に係るチェーンケースの外側チェーンケースを取り外した状態の自動二輪車の左側面図である。
【0073】
メインフレーム201の前端部には、ヘッドパイプ203が設けられている。ヘッドパイプ203には、左右方向に揺動可能にフロントフォーク205が取り付けられている。フロントフォーク205の下端部には、前輪207が回転可能に取り付けられている。ヘッドパイプ203の上端部には、ステアリングハンドル209が取り付けられている。
【0074】
ステアリングハンドル209の後方にあたるメインフレーム201には、燃料タンク211が取り付けられており、さらにその後方にはシート213が取り付けられている。メインフレーム201のシート213下方には、メインフレーム201に対して揺動可能にスイングアーム9が取り付けられている。このスイングアーム9の後端部には、後輪19がドリブンスプロケット25とともに回転可能に取り付けられている。スイングアーム9の後端にあたる取付部21には、メインフレーム201とスイングアーム9とに挟持されるように緩衝器215が配設されている。
【0075】
上述した自動二輪車は、左右分割式のチェーンケース1により、ドリブンスプロケット25を備えた後輪19の交換作業を容易に行うことができる。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0077】
(1)上述した実施例では、チェーンケース1の外側チェーンケース7が2ピース構成であった。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば、1ピース構成であってもよく、3ピース以上の構成であってもよい。
【0078】
(2)上述した実施例では、チェーンケース1の内側チェーンケース5に前側切り欠き部29を備え、クロスメンバ17に挟持させる構成を採用している。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、内側チェーンケース5をクロスメンバ17にネジ止めする構成としてもよい。また、案内部41は必須要件ではなく、これを省略した構成としてもよい。
【0079】
(3)上述した実施例では、前側切り欠き部29に設けられた縁部43は、外側チェーンケース7側にのみ突出して形成されている。しかしながら、外側チェーンケース7とは反対側にのみ突出した構成としてもよい。これらの場合には、構造が簡単で容易に製造できる。また、外側チェーンケース7側とその反対側の両方に突出した構成としてもよい。この場合には、前側切り欠き部29の剛性を高めることができる。
【0080】
(4)上述した実施例では、内側チェーンケース5と外側チェーンケース7とを爪部63と取付穴85,87で互いに固定した。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、ネジ止めによって固定するようにしてもよい。また、内側チェーンケース5が爪部63を備え、外側チェーンケース7が取付穴85,87を備えているが、内側チェーンケース5が取付穴を備え、外側チェーンケース7が爪部を備える構成としてもよい。
【0081】
(5)上述した実施例では、チェーンケース1が緩衝器215との干渉を回避する凹部77を備えていたが、本発明はこれを必ずしも備える必要はない。
【0082】
(6)上述した実施例では、チェーンケース1の内側チェーンケース5が上部凸部71を備え、チェーン3のたるみを検出する構成とした。しかしながら、本発明は必ずしもこのように構成する必要はない。
【0083】
(7)上述した実施例では、チェーンケース1が樹脂製であるとしたが、金属製であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 … チェーンケース
3 … チェーン
5 … 内側チェーンケース
7 … 外側チェーンケース
9 … スイングアーム
13 … 左側アーム部
15 … 右側アーム部
17 … クロスメンバ
19 … 後輪
25 … ドリブンスプロケット
29 … 前側切り欠き部
31 … 後側切り欠き部
33 … 後部プレート
37 … 上部外側チェーンケース
39 … 下部外側チェーンケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の動力を後輪に伝達するチェーンの周囲を覆い、ピボット部においてフレームに対して揺動可能に支持されたスイングアームに取り付けられるチェーンケースであって、
前記スイングアームの左側アーム部と右側アーム部とを前記スイングアームのピボット側で連結しているクロスメンバに取り付けるため、前側に形成された前側切り欠き部と、前記スイングアームの後輪取付部に相当する部位の後部及び下部を切り欠いた後側切り欠き部と、前記後側切り欠き部に取り付けられる後部プレートとを備え、前記左側アーム部及び右側アーム部のうち、後輪のドリブンスプロケット側に位置するチェーン側アーム部に対して車幅方向における内側に取り付けられる内側チェーンケースと、
前記チェーンを覆うように、前記内側チェーンケースに対して車幅方向における外側から取り付けられる外側チェーンケースと、
を備えているチェーンケース。
【請求項2】
請求項1に記載のチェーンケースにおいて、
前記前側切り欠き部は、前記クロスメンバの上面及び下面を挟み込む開口高さを備えているチェーンケース。
【請求項3】
請求項2に記載のチェーンケースにおいて、
前記前側切り欠き部は、前記クロスメンバにおける自動二輪車の前後方向と垂直方向とを含む断面の形状に関して、垂直方向の寸法に比べて前後方向の寸法の方が大きい部位に係合され、前記開口高さよりも前後方向の寸法の方が大きく形成されているチェーンケース。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のチェーンケースにおいて、
前記前側切り欠き部は、前記内側チェーンケースの側面を、前記クロスメンバの上面及び下面に沿って形成された縁部を備え、
前記縁部は、車幅方向の寸法が、前記内側チェーンケースにおける側面の肉厚より大きく形成されているチェーンケース。
【請求項5】
請求項4に記載のチェーンケースにおいて、
前記縁部は、前記外側チェーンケース側にのみ突出しているチェーンケース。
【請求項6】
請求項4または5に記載のチェーンケースにおいて、
前記縁部は、垂直方向の寸法が、前記内側チェーンケースにおける側面の肉厚より大きく形成されているチェーンケース。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のチェーンケースにおいて、
前記前側切り欠き部は、前端が広く、徐々に前記開口高さに向かって狭くなる案内部を備えているチェーンケース。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のチェーンケースにおいて、
前記内側チェーンケースは、その後部に前記後輪との干渉を避けるための開口部を有し、
前記後側切り欠き部は、その下部の切り欠きが、前記開口部よりも前方にまで大きく切り欠かれているチェーンケース。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のチェーンケースにおいて、
前記外側チェーンケースは、その車幅方向の外側面に、周辺に配置される車載部品との干渉を避けるための凹部を備えているチェーンケース。
【請求項10】
請求項9に記載のチェーンケースにおいて、
前記外側チェーンケースは、車幅方向の外側面に、前記凹部に隣接して凸部が形成され、
前記凸部は、前記外側チェーンケースを垂直方向から見たときに、前記凹部の下部に相当する前記後輪のアクスル側が不可視である位置にまで、車幅方向の外側に突出して形成されているチェーンケース。
【請求項11】
請求項9または10に記載のチェーンケースにおいて、
前記車載部品は、前記チェーン側アーム部と前記フレームとの間に掛け渡される緩衝器であり、
前記凹部は、前記外側チェーンケースの上部に形成されているチェーンケース。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載のチェーンケースにおいて、
前記外側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部に対して主に上方に位置する上部外側チェーンケースと、前記チェーン側アーム部に対して主に下方に位置する下部外側チェーンケースとを備えているチェーンケース。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載のチェーンケースにおいて、
前記内側チェーンケースと前記外側チェーンケースは、樹脂で構成されており、
前記内側チェーンケースは、上部及び下部に、前記外側チェーンケース側に向かって延出された鐔部を備え、
前記外側チェーンケースは、上部及び下部に、前記内側チェーンケース側に向かって延出された鐔部を備え、
前記内側チェーンケース及び前記外側チェーンケースの一方の鐔部は、複数個の取付穴を備え、
前記内側チェーンケース及び前記外側チェーンケースの他方の鐔部は、前記複数個の取付穴に挿入されて前記内側チェーンケースと前記外側チェーンケースとを互いに固定する複数個の爪部を備えているチェーンケース。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のチェーンケースにおいて、
前記内側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部よりも上方であって、前記外側チェーンケースの内側面に対向した部位に、前記外側チェーンケース側へ突出した上側凸部を形成され、
前記内側チェーンケースは、前記チェーン側アーム部よりも下方であって、前記外側チェーンケースの内側面に対向した部位に、前記外側チェーンケース側へ突出した下側凸部を形成され、
前記外側チェーンケースは、前記上側凸部と前記下側凸部にネジ止め固定されるチェーンケース。
【請求項15】
請求項14に記載のチェーンケースにおいて、
前記上側凸部は、チェーンの移動方向への長さを前記下側凸部よりも長く形成され、かつ、チェーンの位置以上に前記外側チェーンケース側へ突出して形成されているチェーンケース。
【請求項16】
請求項14または15に記載のチェーンケースにおいて、
前記上側凸部は、平面視において、ドライブスプロケットと後輪のアクスルとの実質的な中間位置に設けられているチェーンケース。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載のチェーンケースを備えた自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−18388(P2013−18388A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153802(P2011−153802)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)