説明

チェーンソー作業用防護衣

【課題】軽量性、通気性、作業性および経済性に優れた、チェーンソー作業用防護衣の提供。
【解決手段】アウター衣類の内側に着用されるインナー型の耐久性のある厚手の表地層を有しないチェーンソー作業用防護衣であって、
(1)腰部固定部材と、脚部固定用部材と、着用者の正面側に大腿部の上方から下腿部までにかけて設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護下衣、並びに、
(2)着用者の胴体の正面側全体、並びに、腕部の正面側全体およびその上方から背面側の少なくとも一部にかけてまでを覆うように設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護上衣。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンソー刃による事故を防止するためのチェーンソー作業用防護衣(以下、単に「作業用防護衣」という場合がある。)に関し、より具体的には、ジャケット類やズボン類などのアウター衣類の内側に着用される、耐久性のある厚手の表地層を有しないインナー型の作業用防護衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーンソーによる伐採作業時において、安全のために作業用防護衣が着用されている。チェーンソーによる被災位置は、股から足首にかけてがもっとも多く、被災位置の分布割合の60%を占めるとのことである(林業・木材製造業労働災害防止協会の調査結果参照)。下半身を防護するための作業用防護衣としては、ズボン型のもの、或いは図4に示すような作業用ズボンの上から着用できるチャップス型のものがある。しかし、ズボン型は重いこと、屈伸性が悪いこと、通気性が悪く蒸れやすくいこと、などの理由から我が国においては、チャップス型が好んで利用されている。チャップス型の作業用防護衣に関する出願としては、例えば、特許文献1に記載されるものがある。
【0003】
作業用防護衣には、チェーンソー用耐切創防護パッドが設けられている。例えば特許文献2に開示されるように、チェーンソーなどの刃によって切断されることがなく、解繊されたマルチフィラメントがチェーンソーの回転を停止させるために、チェーンソーの刃が脚半の生地を破り、人体に接触するのを未然に防止することができる編織物の層とクッション性不織布の層を有する積層体を主体とする防護パッドが、防護箇所に縫着されている。
【0004】
ところで、我が国における作業用防護衣の開発は歴史が浅く、出願人が平成14年度に国の助成金を受けて着手したのが国内では最初である。出願人の協力企業に係る特許出願としては、例えば、特許文献3に記載のチェーンソー用耐切創衣服に関するものがある。
我が国で販売される外国製の作業用防護衣としては、例えば、非特許文献1に記載されるものがある。しかし、外国製の作業用防護衣は一般に重く、小柄な人が多い日本人には必ずしも適していなかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5095544号公報
【特許文献2】特許第3268656号公報
【特許文献3】特開2004−244741号公報
【非特許文献1】株式会社スチールの製品カタログ(2007/2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の作業用防護衣は、次の課題がある。
(1)重量があるため重いこと。
(2)通気性が悪く暑いこと(特にズボン型)。
(3)作業性が悪いこと。
ズボン型:生地が厚手のため動きにくい。
チャップス型:固定用バンドや衣類との間に枝等に引っかかる。
(4)損傷や油汚れなどのために短期間で交換しなくてはならず、不経済であること。
【0007】
上記(1)の課題は、外側の生地(表地)を丈夫に作らなくてはならないこと、防護性を高めるためにチェーンソー用耐切創防護パッド(以下、「防護パッド」という。)を厚くしたり配置領域を広げると重量が増すこと、などが原因である。ここで、表地は、例えば、厚手のナイロンオックス生地により構成されるが、野外での作業を前提とすると耐久性は充分に確保しなくてはならず、安易に表地を軽量な薄手の素材で構成することはできない。また、言うまでもないが、防護パッドを薄くしたり配置領域を狭くすると、防護性能が低下するという問題が生じる。
【0008】
上記(2)の課題および上記(3)のズボン型の課題も、表地を厚手に構成することに起因する課題である。
上記(3)のチャップス型の課題は、固定バンドにより固定することによる課題である。固定バンドにより固定するのは、チェーンソー刃の回転により、作業用防護衣自体が巻き込まれたりすることを防ぐためである。防護パッドからマルチフィラメントが引き出されるためには、作業用防護衣自体がしっかりと固定される必要があるからである。他方、固定バンドの数を増やした場合、ズボンとの密着性は高まるが、固定バンドにより装着感が損なわれたり作業性が損なわれるという問題がある。
【0009】
上記(4)の課題は、枝や伐採した木との接触等による損傷やチェーンソーからの油による汚れなどに起因する課題である。防護パッドには充分な防護機能が残っているのに、表地の損傷等により作業用防護衣全体を交換しなくてはならないのは不経済である。
【0010】
本発明は、軽量性、通気性、作業性および経済性に優れた、チェーンソー作業用防護衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、我が国の高温多湿な気候や日本人の体系に適合したチェーンソー作業用防護衣を鋭意検討したが、作業用防護衣をアウター衣類として使用することを前提とした外国製の仕様を採用する限りにおいて、上記の課題を解決することは困難であった。発明者は、近年、アウター衣類の価格が下がり、作業用防護衣との価格差が生じていることに着目し、本発明をなした。すなわち、本発明は、次の[1]ないし「10」のチェーンソー作業用防護衣を要旨とする。
【0012】
[1]アウター衣類の内側に着用されるインナー型の下衣であり、耐久性のある厚手の表地層を有しないチェーンソー作業用防護衣であって、腰部固定部材と、脚部固定用部材と、着用者の正面側に大腿部の上方から下腿部までにかけて設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護衣。
[2]前記脚部固定用部材が、下腿部に設けられた固定用バンドである[1]のチェーンソー作業用防護衣。
[3]前記脚部固定用部材が、下腿部に締着性を持たせるよう下腿部の周囲を覆う伸縮性のある布地である[1]のチェーンソー作業用防護衣。
[4]前記防護パッドの表面が、撥水性を有する[1]ないし[3]のいずれかのチェーンソー作業用防護衣。
[5]前記防護パッドが、脚部の周囲の6割〜8割を覆う幅を含んで構成される[1]ないし[4]のいずれかのチェーンソー作業用防護衣。
[6]足裏にかけるためのストラップ部材が設けられている[1]ないし[5]のいずれかのチェーンソー作業用防護衣。
[7]アウター衣類の内側に着用されるインナー型の長袖の上衣であり、耐久性のある厚手の表地層を有しないチェーンソー作業用防護衣であって、着用者の胴体の正面側全体、並びに、腕部の正面側全体およびその上方から背面側の少なくとも一部にかけてまでを覆うように設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護衣。
[8]アウター衣類の内側に着用されるインナー型のベストであり、耐久性のある厚手の表地層を有しないチェーンソー作業用防護衣であって、着用者の胴体の正面側全体に設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護衣。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主に次のような効果が奏される。
(1)インナー型のため薄手の生地のみにより表地層を構成することができ、ゆえに重量を軽くすることができる。
(2)インナー型のため薄手の生地のみにより表地層を構成することができ、ゆえに通気性をよくすることができる。
(3)インナー型のため薄手の生地のみにより表地層を構成することができ、ゆえに作業性をよくすることができる。また、インナー型のため固定用バンドと衣類の間に枝が引っかかるなどの問題が生じない。
(4)インナー型のため、市販のアウター衣類のみを交換すればよく、ゆえに経済性は良好である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最良の形態の本発明を、作業用ズボンの下に着用するインナー型ないしはステテコ型の作業用防護衣の例で説明する。最良の形態に係る本発明の作業用防護衣は、下着パンツの上に着用されるものであり、股引きやステテコの上に着用してもよい。
最良の形態の本発明は、腰から下腿部までにかけてを覆う表地を有する。臀部および/または大腿部後面(背面側)は、防護パッドを配置する必要がないため、表地を設けなくてもよい。また、表地を胸部から下腿部までを覆うように構成し、胸部から臀部の上方部分に向かう肩掛けベルトを設けたオーバーオールタイプとしてもよい。
【0015】
本発明の作業用防護衣はインナー型あることから、表地を薄手の素材のみにより構成することができる。別の言い方をすれば、厚手のナイロンオックス生地のような耐久性のある表地および緩衝材からなる層(厚手の表地層ないしアウターシェル)を有する従来の作業用防護衣は、インナー型には適さない。
従来の作業用防護衣における耐久性のある厚手の表地素材としては、例えば、次のものがある。
[表1]
製品名:ナイロンオックス<M−4400>
素材:ナイロン100%(ナイロン6)
目付:197g/m
組織:経420D×55本/インチ、緯420D×32本/インチ
【0016】
対して、本発明の作業用防護衣は、厚手の表地層が不要であり、しかも表地を薄手の素材により構成することができる。表地の重量に加え強度や目ずれを考慮すると、本発明の目的を達成するためには、目付が40〜140g/mであることが好ましく、より好ましくは50〜100g/mである(但し、表地の総使用量にもよる。)。
本発明の作業用防護衣に好適な薄手の表地としては、例えば、次のものがある。
[表2]
製品名:エムエックスイレブン(ナイロン高密度タフタ)
素材:ナイロン100%(ナイロン6)
目付:98g/m
組織:経50D/40F×175本/インチ、緯50D/40F×107本/インチ
【0017】
表地は、通気性および伸縮性を持たせた布(例えば、ジャージやメリヤス)、換言すれば通気性に優れたストレッチ素材により構成することが好ましい。ストレッチサテン地、ナイロン地などの伸縮性を持たせた布により表地を構成した場合、いわゆるタイツのような締着性を得ることできる。締着性を得ることが好ましいのは、チェーンソーとの接触により防護パッドがずれることがないように固定するためである。表地を構成するストレッチ素材は、縦方向および横方向に伸縮する2ウェイストレッチ編物または2ウェイストレッチ織物であることが好ましい。ストレッチ特性を出すために、例えば弾性糸を編物または織物の構成糸に用いてもよい。例えば、ポリエステル繊維糸と弾性糸とを主成分構成糸とするか、またはナイロン繊維糸と弾性糸とを主成分構成糸としてもよい。ポリエステル繊維糸を用いた場合は、汗をかいても乾き易い。ナイロン繊維糸を用いた場合は、軟らかなタッチとなる。別の構成としては、コットン(木綿)と弾性糸とを主成分構成糸としてもよい。ここで、編物または織物の組織はどのようなものであってもよい。織物としては一般的に良く知られている平織、斜文織、朱子織の3原組織の他、タフタ等の変化織であってもよい。また、編物として一般的に良く知られているラッセル経編機によって編成される編物、トリコット経編機によって編成される編物およびニット緯編み機によって編成される編物等であっても良い。例えば、トリコット経編機によって編成されるハーフ組織の編物やラッセル経編機によって編成されるパワーネット組織の編物等を挙げることができる。ニット緯編物としては、例えば平編(天竺編)、ゴム編、パール編、スムース編(両面編)等どのような組織でもよい。また、ニット緯編み機によって編成される編物は、丸編機または横編機によって編成される編物であってもよい。
【0018】
防護パッドを固定するための構造としては、例えば、a)下腿部(および大腿部)の背面側までにかけての周囲を伸縮性のある表地により覆うこと、b)下腿部(および大腿部)に固定用バンドを設けること、c)下端開口の縁部を横断し、足裏にかけることのできるループ状の固定用紐部材(ストラップ部材)を設けることが開示される。
【0019】
表地には、大腿部の上方から下腿部までにかけて防護パッドが縫着されている。防護パッドは脚部の周囲(大腿部から下腿部にかけての太さ方向)の6割〜8割程度を覆うように設ける(このため、裁断幅は脚部の周囲の7割〜9割程度とする。)。脚部の周囲を全体的に覆うと屈曲性が悪くなるため、防護性と作業性を加味した布幅である。下腿部の下方部分から足首にかけては安全靴等により保護することができる。オーバーオールタイプとする場合には、腹部から胸部にかけて適宜防護パッドを縫着する構成としてもよく、胸当てのみを取り外し可能に構成してもよい。
防護パッドは、公知のチェーンソー用耐切創パッドを用いることができ、例えば、ポリエステルとアラミド繊維からなる編織物がチェーンソー刃と接触した際に、多層構造の繊維が内側から引き出され、チェーンソーのスプロケットに巻き付いて回転を素早く停止させる仕組みになっている。また、防護パッドは、フェルト等のクッション層が積層されており、チェーンソー刃が接触した部位の衝撃を軽減させることができる。
【0020】
表地の上端開口の縁部には、腰部固定部材である固定用ベルトが設けられている。固定用ベルトには、例えば、面ファスナーが設けられており、これにより腰回りの締着性を調整することができる。なお、腰部固定部材は固定用ベルトに限定されず、ファスナーやボタン等の部材により、アウター衣類(作業用ズボン等)に取り付ける構成としてもよい。
【0021】
以下では、本発明を実施するための最良の形態を実施例で説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
実施例1は、インナー型の作業用防護下衣(ローハイドタイプ)に関する。なお、ローハイドとは、臀部がくり抜かれているズボンの形状のことをいうものとする。
図1および図2に示すように、本実施例の作業用防護下衣10は、表地12と、表地12に縫製された防護パッド13と、固定用ベルト14とを主たる構成要素とする。
表地12は、ポリエステル等の化学繊維により構成することができ、本実施例では、東レ株式会社販売のアミーナ(商標)により構成した。表地12は、着用者の正面側は腰から下腿部にかけて脚部全体を覆う構成であるが、着用者の背面側は臀部を開放する構成とし、通気性を向上させている。
防護パッド13は、公知の防護パッドであり、ポリエステルとアラミド繊維からなる編織物とフェルトのクッション層が積層され、それらが表地(表2のエムエックスイレブン)に包まれて構成される。本実施例では防護パッド13が表側に露出する構成としたが、裏側に取り付けてもよい。また、表地12および裏地により防護パッド13を積層する構成としてもよいが、この場合には全体の重量が増加しないよう、目付の小さい薄手の生地を用いるなどの工夫が必要である。一対の防護パッド13は、それぞれ3室構造となっており、腰部、大腿部から膝下、膝下から下腿部の3室に区切られている。
固定用ベルト14には面ファスナーが設けられており、締着性を調整することが可能である。固定用ベルト14の構成は本実施例のものに限定されず、任意の態様とすることができる。
【0023】
図3は、肌着16の上に本実施例の作業用防護下衣10を着用した状態の、(a)正面図および(b)背面斜視図である。
図4は、出願人に係る従来のチャップス型の作業用防護下衣を着用した状態の、(a)正面図および(b)背面斜視図である。図4に係る作業用防護下衣は、ナイロンオックス生地からなるアウター生地33により構成される厚手の表地層を備え、作業用ズボン36の上に着用される。防護パッド13は厚手の表地層の裏側に配置されている。アウター生地33には、第1の固定用バンド31および第2の固定用バンド32が設けられており、これらの固定用バンドにより着用者の脚部に固定される。
【0024】
《重量》
本実施例の作業用防護下衣10と、図4に係る従来のチャップス型の作業用防護下衣(比較例1)と、出願人に係る従来のズボン型の作業用防護下衣(比較例2)との重量を比較した結果を表1に示す。比較例1および実施例1で用いた作業用ズボンは、ホームセンター等で販売される汎用品であり、アウター生地33は上述した表1の素材(ナイロンオックス M−4400)と同等の素材である。
【0025】
[表3]
比較例1:チャップス型(約1kg)+作業用ズボン(約400g)=計約1.4kg
比較例2:ズボン型(約1.3kg)
実施例1:インナー型(約600g)+作業用ズボン(約400g)=計約1kg
【0026】
以上に説明した本実施例の作業用防護下衣によれば、重量の増加を最小限とすることができる。また、インナー型のため薄手の生地のみにより表地を構成することができるため、通気性をよくすることができ、作業性(屈曲性)も良好である。さらに、インナー型のため、固定用バンドと衣類の間に枝が引っかかるなどの問題も生じず、市販のアウター衣類のみを交換すればよいため、経済性も良好である。
なお、本実施例の作業用防護下衣は、丸ごと洗濯することが可能である。
【実施例2】
【0027】
実施例2は、インナー型の作業用防護下衣(レガースないしレッグガードタイプ)に関する。本実施例の作業用防護下衣も耐久性のある厚手の表地層を有しないのみならず、防護パッドの表地(表2のエムエックスイレブン)をそのまま表地として利用するものである。
図5に示すように、本実施例の作業用防護下衣10は、防護パッド13と、固定用ベルト(141〜143)と、固定用バンド15とを主たる構成要素とする。
防護パッド13は、実施例1と同様のものであるが、別途の表地に縫製することなく、それ自体を固定用ベルト(141〜143)により吊す仕様となっている。本実施例の作業用防護下衣10は、表地を有しないことから、下腿部の固定性を高めるための固定用バンド15を備えている。固定用バンド15には面ファスナーが設けられており、これにより下腿部に防護パッド13を締着させることが可能である。また、防護パッド13の大腿部には内側に突出する山片131がそれぞれ設けられている。山片131を大腿部に巻き付けることで固定性を高めることが可能である。山片131の数は任意に設定できる。
【0028】
防護パッド13は、表面を撥水性素材で覆い、或いは、表面に撥水処理を施し、メンテナンス性を高めることが好ましい。例えば、ナイロンやポリエステルなどの撥水化繊素材で表面を覆うことにより、洗濯をしなくとも水拭き等で汚れを除去可能となる。防護パッド13の防護性能は、洗濯を多数回繰り返すと劣化するため、洗濯を行わなくともよいことには技術的意義がある。本実施例の作業用防護下衣10の下に肌着を着用すれば、吸汗性が問題になることはない。なお、作業用防護下衣10の表面に撥油剤処理液を付与するなどして撥油性を持たせてもよく、この目的を達成するために、薄手の素材からなる別途の表地を防護パッド13の表地に縫製してもよい。
【0029】
固定用ベルトは、ベルト紐141の端部に雄具142および雌具143を設けて構成され、長さ調節が可能である。ズボンタイプと異なり、固定用ベルトにより作業用防護下衣10を吊すことから、比較的高い締着力を得られる仕様とする。
なお、下腿部に設けた固定用バンド15は必須の構成ではなく、場合によっては設けなくてもよい。この場合でも、下腿部の周囲の6割〜8割程度を覆うこと、或いは大腿部と同様に山片を設けることにより固定性を高めることが可能である。
【0030】
以上に説明した本実施例の作業用防護下衣の重量は約500gであり、実施例1と比べ更に軽量化をはかることができた。
【実施例3】
【0031】
実施例3は、インナー型の作業用防護上衣(長袖タイプ)に関する。本実施例の作業用防護上衣も耐久性のある厚手の表地層を有しない。
図6に示すように、本実施例の作業用防護上衣20は、表地22と、防護パッド13と、ファスナー部材24とを主たる構成要素とする。
表地22および防護パッド13は、実施例1と同様の素材により構成することができる。本実施例の作業用防護上衣20も、インナー型であるため、伸縮性、屈曲性および通気性に優れた薄手の生地により構成することが好ましい。
防護パッド13も、実施例1と同様の素材により構成することができる。防護パッド13は、胴体の正面側全体、並びに、腕部の正面側全体およびその上方から背面側にかけてまでを覆うように配置されている(図6中の着色箇所)。腕部の周囲全体を覆うと通気性および屈曲性が損なわれるため、本実施例では腕部の周囲の2〜3割程度は防護パッド13を設けない構成とした。
【実施例4】
【0032】
実施例4は、インナー型の作業用防護上衣(ベストタイプ)に関する。本実施例の作業用防護上衣も耐久性のある厚手の表地層を有しない。
図7に示すように、本実施例の作業用防護上衣20は、表地22と、防護パッド13と、ファスナー部材24とを主たる構成要素とする。
表地22および防護パッド13は、実施例1と同様の素材により構成することができる。本実施例の作業用防護上衣20も、インナー型であるため、伸縮性、屈曲性および通気性に優れた薄手の生地により構成することが好ましい。
防護パッド13も、実施例1と同様の素材により構成することができる。防護パッド13は、胴体の正面側全体を覆うように配置されている(図7中の着色箇所)。
【産業上の利用可能性】
【0033】
平成20年の改正により、防護衣の着用が林業・木材製造業労働災害防止規定に定められた。本発明の作業用防護衣が、法令遵守の一翼を担うことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1に係る作業用防護下衣(ローハイドタイプ)の正面図である。
【図2】実施例1に係る作業用防護下衣(ローハイドタイプ)の背面図である。
【図3】実施例1に係る作業用防護下衣(ローハイドタイプ)を着用した状態の、(a)正面図および(b)背面斜視図である。
【図4】従来の作業用防護下衣(チャップス型)を着用した状態の、(a)正面図および(b)背面斜視図である。
【図5】実施例2に係る作業用防護下衣(レガースないしレッグガードタイプ)の正面図である。
【図6】実施例3に係る作業用防護上衣(長袖タイプ)の、(a)正面図および(b)背面図である。
【図7】実施例4に係る作業用防護上衣(ベストタイプ)の、(a)正面図および(b)背面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 作業用防護下衣
12 表地
13 防護パッド
14 腰部固定部材(固定用ベルト)
15 裏面用紐部材(固定用バンド)
16 肌着
20 作業用防護上衣
22 表地
23 防護パッド
24 ファスナー部材
30 従来の作業用防護下衣
31 第1の裏面固定用部材(第1の固定用バンド)
32 第2の裏面固定用部材(第2の固定用バンド)
33 アウター生地
34 腰部固定部材(固定用ベルト)
36 作業用ズボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウター衣類の内側に着用されるインナー型の下衣であり、耐久性のある厚手の表地層を有しないチェーンソー作業用防護衣であって、
腰部固定部材と、脚部固定用部材と、着用者の正面側に大腿部の上方から下腿部までにかけて設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護衣。
【請求項2】
前記脚部固定用部材が、下腿部に設けられた固定用バンドである請求項1のチェーンソー作業用防護衣。
【請求項3】
前記脚部固定用部材が、下腿部に締着性を持たせるよう下腿部の周囲を覆う伸縮性のある布地である請求項1のチェーンソー作業用防護衣。
【請求項4】
前記防護パッドの表面が、撥水性を有する請求項1ないし3のいずれかのチェーンソー作業用防護衣。
【請求項5】
前記防護パッドが、脚部の周囲の6割〜8割を覆う幅を含んで構成される請求項1ないし4のいずれかのチェーンソー作業用防護衣。
【請求項6】
足裏にかけるためのストラップ部材が設けられている請求項1ないし5のいずれかのチェーンソー作業用防護衣。
【請求項7】
アウター衣類の内側に着用されるインナー型の長袖の上衣であり、耐久性のある厚手の表地層を有しないチェーンソー作業用防護衣であって、
着用者の胴体の正面側全体、並びに、腕部の正面側全体およびその上方から背面側の少なくとも一部にかけてまでを覆うように設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護衣。
【請求項8】
アウター衣類の内側に着用されるインナー型のベストであり、耐久性のある厚手の表地層を有しないチェーンソー作業用防護衣であって、
着用者の胴体の正面側全体に設けられ、その繊維がチェーンソーに巻き付いてチェーンソーの回転を止めるように作用する多層構造のチェーンソー用耐切創防護パッドを備えるチェーンソー作業用防護衣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−77583(P2010−77583A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82385(P2009−82385)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【分割の表示】特願2008−257276(P2008−257276)の分割
【原出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(598166928)株式会社マックス (5)
【Fターム(参考)】