説明

チェーンソー用アタッチメント及びチェーンソー

【課題】 現場で用いる手で持って操作する汎用のチェーンソーにおいても、被切断材に比較的精度の良い円弧面を容易に形成できるようにする。
【解決手段】 本体3に突設された板状のガイドバー1の周縁に、被切断材10を切断するエンドレスのチェーン刃2を巻回してなり手で持って操作するチェーンソーCに着脱可能に装着され、ガイドバー1を所定の中心点11を中心とした円に沿って回動させて被切断材10に円弧面12を形成するためのチェーンソー用アタッチメントSであって、ガイドバー1の長手方向に平行且つガイドバー1の側面がわに位置し、先端21側が中心点11に位置させられる軸部材20と、ガイドバー1に着脱可能に取付けられ、軸部材20を軸部材20とガイドバー1との間の距離を可変可能に支持する支持部30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手で持って操作する汎用のチェーンソーに取付けられ、木材等の被切断材に、円弧面を形成するためのチェーンソー用アタッチメント及びこのチェーンソー用アタッチメントを備えたチェーンソーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材等に臍加工、溝加工、切欠き等を施すためのチェーンソーとしては、例えば、特許文献1(特開平8−72003号公報)に掲載され、マシニングセンター等の工作機械に取付けて使用されるものが知られている。
これは、図18に示すように、工作機械100から回転力が伝達されるシャンク101と、シャンク101の基部を収容し且つ駆動装置に回転不能に係止しうる係止部を有したハウジング102と、スプロケットホイール103と、シャンク101からスプロケットホイール103に回転力を伝達するための伝動部材104と、ハウジング102に装着され先端にガイドローラ105を有したガイドバー106と、スプロケットホイール103とガイドローラ105とに巻回されたチェーン刃107とを備えて構成されている。
【0003】
シャンク101は、その軸部108を軸受け109によってハウジング102に支持されている。ハウジング102には、シャンク101の中心軸に直交する水平方向にチェーン刃107を駆動するための駆動軸110が回転自在に支持されている。この駆動軸110の中央部にスプロケットホイール103が装着されている。スプロケットホイール103はシャンク101の中心軸の延長線上に位置し、このスプロケットホイール103の真下にチェーン刃107の回動を案内するためのガイドバー106が、ハウジング102の下端に形成された一対の挾持片111間に嵌挿されて挾持されている。即ち、チェーン刃107は、シャンク101の中心軸の延長線上に巻回されていることになる。
【0004】
このチェーンソーは、例えば、マシニングセンター等の数値制御式の工作機械100にシャンク101が連結され、工作機械100を駆動することによって、チェーン刃107が回転駆動させられる。工作機械100に連結させることで、高精度な加工が可能となる。また、チェーン刃107の角度や方向を自動で変えることが可能なので、被切断材を動かさなくても様々な加工に対応することができる。例えば、被切断材を円柱状に形成し、或いは円柱状に刳り抜きを形成する等、被切断材に円弧面を形成することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−72003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来のチェーンソーにあっては、マシニングセンター等の工場で用いる工作機械に連結される専用機であり、現場で用いられ、手で持って操作する汎用のチェーンソーとは異なるので、比較的高価になるという問題があった。一方、汎用のチェーンソーにあっては、例えば、被切断材を円柱状に形成し、或いは円柱状に刳り抜きを形成する等、被切断材に円弧面を形成するような高精度の加工が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、現場で用いる手で持って操作する汎用のチェーンソーにおいても、被切断材に比較的精度の良い円弧面を容易に形成できるようにした汎用性に優れたチェーンソー用アタッチメント及びこのチェーンソー用アタッチメントを備えたチェーンソーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明のチェーンソー用アタッチメントは、本体に突設された板状のガイドバーの周縁に、被切断材を切断するエンドレスのチェーン刃を巻回してなり手で持って操作するチェーンソーに着脱可能に装着され、上記ガイドバーを所定の中心点を中心とした円に沿って回動させて被切断材に円弧面を形成するためのチェーンソー用アタッチメントであって、上記ガイドバーの長手方向に平行且つ該ガイドバーの側面がわに位置し、先端側が上記中心点に位置させられる軸部材と、上記ガイドバーに着脱可能に取付けられ、上記軸部材を該軸部材と該ガイドバーとの間の距離を可変可能に支持する支持部とを備えて構成している。
【0009】
これにより、例えば、被切断材に円柱状の刳り抜きを加工し、或いは被切断材を円柱状に形成するときは、先ず、被切断材に円柱の中心点を決め、この中心点に円柱の軸に沿い軸部材が挿通される孔をドリル等で予め形成する。この状態で、チェーンソーに取付けたアタッチメントの軸部材の先端を中心点の孔に位置させる。そして、チェーンソーを駆動し、軸部材を中心点の孔に沿って上下させてガイドバーを切断部位に切り入れるとともに、軸部材を中心として被切断材に対して回転させながら、被切断材を切断していく。この場合、ガイドバーの中心点に対する半径位置が一義的に定まっているので、比較的精度の良い円弧面を容易に形成することができる。また、被切断材に円弧状の切欠きを加工するときは、先ず、被切断材の外側に円弧の中心点を決め、チェーンソーに取付けたアタッチメントの軸部材の先端を中心点に位置させる。そして、チェーンソーを駆動し、軸部材を中心として被切断材に対してチェーンソーを回転させながら、被切断材を切断していく。この場合、ガイドバーの中心点に対する半径位置が一義的に定まっているので、比較的精度の良い円弧面を容易に形成することができる。この結果、被切断材を、円柱状に形成したり、円柱状の刳り抜きを加工したり、円弧状の切欠きを加工したりすることができる。この場合、軸部材とガイドバーとの間の距離を可変可能にしたので、被切断材及び目的とする加工の形状に合わせて半径を調節できるようになる。このため、現場で用いる手で持って操作する汎用のチェーンソーにおいても、アタッチメントを取付けるだけで比較的精度の良い円弧面を容易に形成することができ、従来の高価な専用機とは異なって、それだけ、汎用性を増すことができる。
【0010】
そして、必要に応じ、上記支持部を、上記ガイドバーに取付けられる取付部と、上記取付部に設けられ該ガイドバーの面方向に直交する方向に延びる棒状体と、上記棒状体にスライド可能に設けられ上記軸部材を保持する保持部を有したスライダと、上記スライダを該棒状体の適宜の位置に解除可能に保持するスライダロック機構とを備えて構成している。これにより、軸部材とガイドバーとの間の距離を可変させるときは、取付部をガイドバーに取付け、スライダを棒状体に対してスライド移動させる。軸部材はスライダに設けられた保持部に保持されているので、軸部材もスライダとともに移動させられる。そして、スライダロック機構によってスライダを棒状体の適宜の位置でロックする。ロックすることにより、軸部材とガイドバーとを適宜の距離で固定することができる。また、スライダロック機構は解除可能なので、軸部材の位置を変えるときは、ロックを解除して適宜の位置に動かすことが可能となる。
【0011】
また、必要に応じ、上記軸部材を上記保持部に対して進退動可能に設け、該保持部に該軸部材を適宜の位置に解除可能に保持する軸部材ロック機構を備えて構成している。ロック機構により、軸部材の先端の位置を適宜の位置に調節することが可能となり、チェーン刃による軸方向の切り込み深さを調節することができる。
【0012】
更に、必要に応じ、上記スライダを上記棒状体に対してスライド移動させる移動機構を設けて構成している。移動機構によるスライダの位置調整により、半径の調整が容易になる。
【0013】
更にまた、必要に応じ、上記移動機構を、上記棒状体の長手方向と平行に設けられる雄ネジを有したボルトと、上記取付部に取付固定され上記ボルトの一端を回転可能且つ前後動不能に支持する軸受けと、上記スライダに設けられ上記ボルトに螺合し該ボルトの回転によってスライダを移動せしめる雌ネジ部とを備えて構成している。これにより、スライダは、ボルトを回すだけで移動させられる。例えば、ボルトを一方向周りに回転させると、ボルトに螺合する雌ネジ部はボルトの回転によってピッチ分だけガイドバー側に移動させられる。反対に、他方向回りに回転させると雌ネジ部はピッチ分だけガイドバーから離れていく。即ち、ボルト及び雌ネジ部を螺合させたことにより、スライダが僅かずつ移動するので、半径の微調整が容易になるとともに、容易に動きにくくなるので、上述のスライダロック機構の作用,効果に加えて、軸部材を強固に固定することができる。
【0014】
そしてまた、必要に応じ、上記ガイドバーに対する上記軸部材の位置を変更可能になるように、上記スライダを上記棒状体に対して反転可能にした構成としている。これにより、スライダの保持部を有する側を棒状体に対して適宜に反転させると、軸部材とガイドバーとの位置関係が変更されるので、ガイドバーの被切断材に対する接触具合が変更され、このため、チェーン刃を被切断材に対して適正に当てるよう調整可能になる。
【0015】
また、必要に応じ、上記中心点を通って上記被切断材に形成された孔に差込まれ、上記軸部材が進退動可能に挿入されるガイド管を備えて構成している。軸部材はガイド管にガイドされて、その腔内を進退動するようになるので、単に孔を進退動させる場合に比較して、軸部材がぐらつきにくく、より精度の高い円弧面を形成することができる。特に、被切断材の孔と軸部材との間隔が大きい場合、軸部材がガイド管にガイドされるので、極めて有効になる。
【0016】
更に、必要に応じ、上記ガイド管の一端に上記被切断材の孔の開口縁部に当接する鍔を設けた構成としている。これにより、鍔が孔の開口縁部に当接してガイド管を係止するようになるので、ガイド管を適正位置に位置決めできる。また、鍔を被切断材にビス等で取付固定した場合は、軸部材が進退動してもガイド管を確実に位置決めできるので、軸部材を確実に進退動させることができる。
【0017】
更にまた、必要に応じ、上記軸部材を雄ネジで形成し、上記中心点に設けられる孔と同軸に被切断材に固定され上記雄ネジが螺合する雌ネジを有したガイド部材を備えて構成している。これによれば、ガイド部材を被切断材の孔に固定し、軸部材をガイド部材にねじ込みながら、ガイドバーの先端を被切断材に当てて徐々に切断していく。この場合は、チェーンソーの上下送りが1回転で軸部材の雄ネジの1ピッチ分ずつ行なわれることになり、切断部を少しずつ確実に切断でき、それだけ、加工精度が向上させられる。
【0018】
そして、上記目的を達成するための本発明の技術的手段は、上記何れかに記載のチェーンソー用アタッチメントを備えたチェーンソーにある。現場で使用する手で持って操作する汎用のチェーンソーであっても、アタッチメントを取付けるだけで比較的精度の良い円弧面を容易に形成することができようになる。このことから、従来の高価な専用機とは異なって、それだけ、汎用性を増すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のチェーンソー用アタッチメントによれば、ガイドバーを、軸部材を中心として被切断材に対して回転させるので、被切断材を、円柱状に形成したり、円柱状の刳り抜き加工をしたり、円弧状に切欠き加工したりすることができる。この場合、軸部材とガイドバーとの間の距離を可変可能にしたので、被切断材及び目的とする加工の形状に合わせて半径を調節できるようになる。このため、現場で用いる手で持って操作する汎用のチェーンソーにおいても、アタッチメントを取付けるだけで比較的精度の良い円弧面を容易に形成することができ、従来の高価な専用機とは異なって、それだけ、汎用性を増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを説明する。
図1乃至図10に示す本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントSは、チェーンソーCに取付けられる。チェーンソーCは、現場で手で持って操作する汎用のチェーンソーであって、把持可能なハンドル5を有した本体3と、この本体3に突設された板状のガイドバー1と、このガイドバー1の周縁に巻回され被切断材10を切断するエンドレスのチェーン刃2とを備えてなる。
【0021】
チェーンソー用アタッチメントSは、チェーンソーCに着脱可能に装着され、ガイドバー1を所定の中心点11を中心とした円に沿って回動させて被切断材10に円弧面12を形成するためのものである。円弧面12としては、例えば、図15に示すように、丸太の中央を円柱状に刳り抜き加工することによって形成されるもの、また、図16に示すように、丸太の外周を外周円に沿って切削し円柱状に加工することによって形成されるもの、更に、図17に示すように、丸太の外に中心点を取りガイドバーを回転させて丸太を切欠き加工することによって形成されるもの等がある。このチェーンソー用アタッチメントSは、軸部材20と、支持部30とを備えてなる。
【0022】
軸部材20は、図1,図2,図8乃至図10に示すように、ガイドバー1の長手方向に平行且つガイドバー1の側面がわに位置し、先端21側が中心点11に位置させられている。詳しくは、ガイドバー1の長手方向に延びるガイドバー1の中心軸4を通り、ガイドバー1の面方向に直交する平面上に位置させられている。この軸部材20は、円柱状に形成され、後述の保持部61に進退動可能に保持されている。また、軸部材20は、ガイド管22に挿入され、このガイド管22の腔内を通って中心点11に位置させられている。更に、軸部材20には、軸部材20の進退動を規制するストッパ25が設けられている。
【0023】
ガイド管22は、図1,図2,図9及び図10に示すように、中心点11を通って被切断材10に形成された孔13に差込まれている。また、ガイド管22の腔内は、軸部材20に対応して断面円形に形成され、この腔内を通って軸部材20が進退動可能に挿入されている。更に、ガイド管22の一端には、被切断材10の孔13の開口縁部14に当接する鍔23が設けられている。
【0024】
鍔23は、図1,図2,図9及び図10に示すように、円形状に形成され、ビス等の止着部材24が打込まれる孔が設けられている。鍔23を被切断材10に当接させ、鍔23の上面から孔に止着部材24を打込んで、ガイド管22を被切断材10に固定している。
【0025】
ストッパ25は、図1,図2,図9及び図10に示すように、リング状に形成され、軸部材20の先端21と、後述する保持部61との間に設けられている。このストッパ25と軸部材20の先端21との長さが、軸部材20が進退動できる長さとなる。ストッパ25には雌ネジが設けられ、この雌ネジに螺合するネジ26をストッパ25の外側からねじ込むことにより、ストッパ25は軸部材20にロックされる。ロック解除は、ネジ26を緩めて軸部材20から離間させることで行なわれる。
【0026】
支持部30は、図1乃至図10に示すように、ガイドバー1に着脱可能に取付けられ、軸部材20を、軸部材20とガイドバー1との間の距離を可変可能に支持している。この支持部30は、取付部40と、棒状体50と、スライダ60と、スライダロック機構70とを備えてなる。
【0027】
取付部40は、図1乃至図4,図8及び図9に示すように、チェーン刃2を跨いでガイドバー1の側面に取付固定される一対の固定部41と、固定部41から延設されチェーン刃2に対向し且つ一対の固定部41を繋ぐ脚部42とを備えてなる。この取付部40は、ガイドバー1の任意の場所へ2箇所のネジ43で取付け固定されている。
【0028】
棒状体50は、図1乃至図10に示すように、直方体状に形成され、その軸方向がガイドバーの面方向に直交する方向に向いて取付部40の固定部41に設けられている。
【0029】
スライダ60は、図1乃至図10に示すように、筒状に形成され、軸部材20を保持する保持部61を有し、棒状体50に挿通されてスライド可能に設けられている。また、スライダ60は、ガイドバー1に対する軸部材20の位置を変更可能になるように、棒状体50に対して反転可能に設けられている。
【0030】
保持部61は、図1,図2,図4,図6乃至図10に示すように、筒状に形成され、スライダ60に固定されて設けられている。この保持部60は、軸部材20が挿通され、軸部材20の軸方向がガイドバー1の面方向に平行になるように設けられている。また、この保持部61には、軸部材20を適宜の位置で解除可能に保持する軸部材ロック機構62が設けられている。
【0031】
軸部材ロック機構62は、図1,図2,図4,図6及び図10に示すように、保持部61に設けられる雌ネジ63と、いもネジ64とからなる。保持部61の外側からいもネジ64を雌ネジ63にねじ込み、保持部61に保持されている軸部材20に当接させてロックする。ロック解除は、いもネジ64を緩めて軸部材20から離間させることで行なわれる。
【0032】
スライダロック機構70は、図1,図2,図4,図5,図7及び図8に示すように、スライダ60を棒状体50の適宜の位置で解除可能に保持し、スライダ60に設けられる雌ネジ71と、雌ネジ71に螺合される蝶ネジ72とで構成されている。蝶ネジ72を、スライダ60の外周から雌ネジ71にねじ込み、蝶ネジ72の先端を棒状体50に当接させて、スライダ60を棒状体50に対してロックする。ロック解除は、蝶ネジ72を緩めて棒状体50から離間させることで行なわれる。
【0033】
また、支持部30は、スライダ60を棒状体50に対してスライド移動させる移動機構80を備えている。
移動機構80は、図1乃至図3,図5,図7乃至図10に示すように、雄ネジを有したボルト81と、取付部40に取付固定される軸受け82と、ボルト81に螺合しボルト81の回転によってスライダ60を移動せしめる雌ネジ部83と、ボルト81の遊嵌を制止するフック84とを備えてなる。
【0034】
ボルト81は、図1乃至図3,図5,図7乃至図10に示すように、棒状体50の長手方向と平行に設けられている。このボルト81は、一端81aが後述の軸受け82に遊嵌されて支持され、他端81bには、ボルト81を回転させる把手85が設けられている。また、ボルト81は、棒状体50と同じ長さに形成されている。
【0035】
軸受け82は、図1乃至図3,図8乃至図10示すように、ナット状に形成され、ボルト81が挿通されて、ボルト81の一端81aを回転可能に支持している。また、軸受け82の孔の大きさは、ボルト81を前後動不能に支持する大きさに形成されている。
【0036】
雌ネジ部83は、図3,図5,図9に示すように、スライダ60の外周に設けられている。この雌ネジ部83の径は、ボルト81が挿通されて螺合される大きさに形成され、半割りにされて形成されている。
【0037】
フック84は、図3,図7乃至図10に示すように、棒状体50の取付部40側とは反対側の端部51に、ネジ86で回転可能に設けられている。このフック84は、ボルト81の他端81bを係止して、ボルト81の遊嵌を制止している。
【0038】
このように構成される本実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントSをチェーンソーCに装着して被切断材10の加工を行なう場合は、以下のようにする。この加工は、図15に示すように、被切断材10が丸太を玉きりした玉きり丸太であり、これを所定長さの丸太の中央に軸方向に沿う円柱状の刳り抜きを形成する場合である。先ず、玉きり丸太の年輪の見える平面を上下面とし、上面に中心点11をとる。この中心点11を、例えば、ドリル等で切削して貫通させ、孔13を形成する。この孔13を中心として円形にケガキ線を描く。
【0039】
次に、ガイドバー1に支持部30を取付ける。ガイドバー1の先端を支持部30の取付部40に挿通し、一方の固定部41をガイドバー1に接触させ、他方の固定部41にネジ43をねじ込んで、一方の固定部41とネジ43とでガイドバー1を挾持して取付け固定する。ネジ43を外すだけで支持部30をガイドバー1から取外すことができるので、支持部30の位置を容易に変更することが可能となる。
【0040】
そして、保持部61に軸部材20を挿通し、適宜の位置で軸部材ロック機構62によってロックする。保持部61の外側からいもネジ64を雌ネジ63にねじ込み、保持部61に保持されている軸部材20に当接させてロックし、軸部材20の進退動を制止する。更に、ストッパ25に軸部材20を挿通し、適宜の位置でネジ26によってロックする。このとき、ストッパ25及びガイドバー1の先端間の長さが、被切断材10に対するガイドバーの切り込み深さになるので、被切断材10の大きさに合わせて、ストッパ25の位置を決定する。
【0041】
この状態で、移動機構80により、軸部材20をスライドさせて、適宜の位置にスライドロック機構70によりロックする。詳しくは、先ず、フック84を回転させてボルト81に係止させる。そして、ボルト81の把手85を回し、軸部材20が適宜の位置になるようにスライダ60を移動させ、スライダロック機構70の蝶ネジ72をスライダ60の雌ネジ71にねじ込んでロックする。このとき、軸部材20とガイドバー1との距離が、ケガキ線が描く円の半径と同じ長さになるようにスライダを移動させる。雌ネジ部83は、半割りに形成されているので、ボルト81を回転させた際、ボルト81がぐらついて雌ネジ部83から離間しようとすることがあるが、フック84がボルト81を係止しているので、ボルト81のぐらつきを防止することができる。
【0042】
そして、被切断材10の孔13にガイド管22を差し込み、ガイド管22の鍔23を被切断材10の孔13の開口縁部14に当接させ、鍔23の上面から鍔23の孔にビス等の止着部材24を打込んで、ガイド管22を被切断材10に対して固定する。このガイド管22に軸部材20を挿入する。軸部材20はガイド管22の腔内を進退動するようになるので、単に孔を進退動させる場合と比較して、軸部材20がぐらつきにくく、より精度の高い円弧面を形成することができる。また、このとき、ガイドバー1の先端が被切断材10に描かれたケガキ線上を通ることを確認することが望ましい。
【0043】
この状態で、チェーンソーCを駆動し、丸太の中央を刳り抜いていく。この場合、ガイドバー1の先端を被切断材10に描かれたケガキ線に接触させ、ガイドバー1を被切断材10に対して軸方向に進行させて切削していく。このとき、軸部材20が被切断材10の孔13を進行し、ガイド管22によって軸部材20はぐらつきにくくなっているので、ガイドバー1は軸方向に確実に進行し、そのため、被切断材10により精度の高い円弧面を形成することができる。また、ストッパ25がガイド管22の鍔23に当接して軸部材20の進行を規制するので、被切断材10を所望の長さに確実に切削することができる。ガイドバー1の先端が、ある程度まで進行したなら、ガイドバー1を退行させてガイドバー1の先端を被切断材10から離間させる。このときも、軸部材20は、ガイド管22にガイドされ、真っ直ぐに退行していくので、ガイドバー1も軸方向に確実に退行し、この点でも、精度の高い円弧面を形成することができる。次に、ガイドバー1を軸部材20を中心に適宜に回転させて、被切断材10のケガキ線の描かれた切削されていない箇所へガイドバー1の先端を接触させ、被切断材10に対してガイドバー1及び軸部材20を軸方向に進行させて切削していく。
【0044】
このような作業を繰り返して、上面から切削作業を行なう。上面からの作業が終わったならば、丸太の上下面を逆さにして、下面に対して上面と同様の作業を行ない、被切断材10を円柱状に刳り抜く。
【0045】
図11には、本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントSを用いて、被切断材10の別の加工の例を示している。
この別の加工を施す場合は、以下のようになる。これは、図16に示すように、被切断材10が丸太を玉きりした玉きり丸太であり、これを外周を切削して適宜の径の円柱状に形成する場合である。先ず、玉きり丸太の年輪の見える平面を上下面とし、上面に中心点11をとる。この中心点11に加工したい所望の長さの孔13を、例えば、ドリル等で切削する。
【0046】
次に、支持部30をガイドバー1に取付け、軸部材20を保持部61に挿通する。このとき、スライダ60を棒状体50に対して反転させて、軸部材20のガイドバー1の面方向に沿う方向の位置を変更する。軸部材20の位置変更は、スライダ60を棒状体50から外し、保持部61を有する側を棒状体50に対して反転させて、棒状体50をスライダ60に挿通させる。このとき、雌ネジ部83を半割りに形成しているので、ボルト81及び軸受け82を外さなくても良く、それだけ、スライダ60の取付け、取外しが容易になり、軸部材20の位置変更も容易になる。そして、スライダ60を移動機構80によって移動させて、ガイドバー1及び軸部材20間の距離と、丸太の上面の半径とを等しくする。この場合、ガイドバー1の被切断材10に対する接触具合が変更され、ガイドバー1は、被切断材10に対して片側のチェーン刃2が接触するように位置させられるようになる。その他の構成,作用,効果は上述の実施の形態と同様である。
【0047】
この状態で、チェーンソーCを駆動し、被切断材10を切削していく。軸部材20を中心に、チェーンソーCを回転させる。この場合、丸太の外周は、ガイドバー1の片側のチェーン刃2によって削り取られるように切削される。ある程度切削したなら、スライダ60を移動機構80によって移動させ、ガイドバー1及び軸部材20間の距離を短くする。このとき、ガイドバー1の先端及び片側のチェーン刃2が被切断材10に接触するようにする。このような作業を繰り返して、被切断材10を所望の径にする。
【0048】
図12及び図13には、本発明の他の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントSを示している。
このチェーンソー用アタッチメントSは、上述の実施の形態と異なって、軸部材20は、ガイドバー1及び軸部材20間の距離を調節するための調節棒90を介して保持部61に挿通されている。この調節棒90は、棒状体50の軸方向と平行にスライダ60に挿通されている。また、軸部材20は、被切断材10の外に設定され、その下端には、設定された中心点11に接地可能な接地板96が設けられている。
【0049】
また、このチェーンソー用アタッチメントSには、軸部材20に、被切断材10を支持する脚部材91が一対設けられている。この脚部材91は、図12及び図13に示すように、一端92aが軸部材20に設けられる脚保持部97に設けられ他端92bに開口を有した第一脚部材92と、一端93aが第1脚部材92の他端92bの開口に挿通され他端93bに被切断材10を係止する係止棒94を有した第2脚部材93とで構成されている。また、第1脚部材92の他端92bと第2脚部材93の一端93aとはネジ95で固定されている。
その他の構成は、上述の実施の形態と同様である。
【0050】
このチェーンソー用アタッチメントSを用いて、被切断材10を加工する場合は以下のようになる。これは、図17に示すように、被切断材10が丸太であり、これを丸太の軸方向に大きな円弧面の切欠きを形成する場合である。先ず、被切断材10の切断する箇所にケガキ線を入れる。
【0051】
次に、支持部30をチェーンソーCに取付け、移動機構80によってスライダ60を移動させる。このとき、軸部材20は、被切断材10の外に地面に垂直に設け、接地板を中心点に接地させる。また、ガイドバー1がケガキ線上を通るように、ガイドバー1及び軸部材20間の距離を設定する。
【0052】
そして、脚部材91に被切断材10を載せて、この脚部材91の係止棒94によって被切断材10の回動を制止する。このとき、第2脚部材93の一端93aを第1脚部材92の他端92bの開口に挿通して伸縮させ、その長さによって、脚部材91の長さを調節する。これにより、加工作業を行なう際、被切断材10はガイドバー1と係止棒94とで挾持されて動かなくなるので、ガイドバー1が確実にケガキ線上を通るようになる。
【0053】
この状態で、チェーンソーCを駆動し、被切断材10を切削していく。この場合、チェーンソーCは、軸部材20を中心に、大きな円弧面12を描くように回転するので、被切断材10を切欠き形成することができる。
その他の作用,効果は上述の実施の形態と同様である。
【0054】
図14には、本発明の別の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントの例を示している。これは、軸部材20を雄ネジで形成し、中心点11に設けられる孔13と同軸に被切断材10に固定され、雄ネジが螺合する雌ネジを有したガイド部材27を備えて構成されている。ガイド部材27を被切断材10の孔13に固定し、ガイド部材27に設けた上述の実施の形態と同様の構成の鍔23を、被切断材10に当接させて、ビス等の止着部材24で取付ける。これにより、ガイド部材27及び軸部材20は、被切断材10の孔13に固定される。そして、軸部材20をガイド部材27にねじ込みながら、ガイドバー1の先端を被切断材10に当てて徐々に切断していく。この軸部材20を用いた場合の軸部材20の進退動は、チェーンソーCを軸部材20を中心に回転させることで行なわれる。詳しくは、チェーンソーCを一方向に1回転させると、雄ネジの1ピッチ分だけ軸部材20が進行する。また、チェーンソーCを他方向に一回転させると、雄ネジの1ピッチ分だけ軸部材20が退行する。そのため、ガイドバー1の上下送りが少しずつ行なわれるようになり、精度の良い円弧面を形成でき、加工精度が向上する。その他の作用,効果は上述の実施の形態と同様である。
【0055】
尚、上記実施の形態において、雌ネジ部83を半割りにして構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ボルト81と螺合する形状であれば良く、適宜変更して差支えない。
また、上記実施の形態において、棒状体50を直方体状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、円柱状等でも良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記実施の形態において、被切断材10を丸太で構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、角材等木材であれば良く、適宜変更して差支えないのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のチェーンソー用アタッチメントを備えたチェーンソーによれば、例えば、ログハウス換気扇の孔,丸太の椅子,丸テーブル,傘たて,鉢,丸スピーカー,ポスト,ゴミ入れ,遊具,太鼓等、種々の木工品の加工に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントをチェーンソーに取付けた状態及び被切断材を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る支持部を示すA−A断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る支持部を示すB−B断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る支持部を示すC−C断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る支持部を示すD−D断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る支持部を示すE視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの状態を示す平面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの状態を示す側面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの状態を示す正面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に別の円弧面を形成するときの状態を示す図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの状態を示す側面図である。
【図14】本発明の別の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの状態を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの被切断材を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に別の円弧面を形成するときの被切断材を示す図である。
【図17】本発明の他の実施の形態に係るチェーンソー用アタッチメントを用いて被切断材に円弧面を形成するときの被切断材を示す図である。
【図18】従来のチェーンソーの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
S チェーンソー用アタッチメント
C チェーンソー
1 ガイドバー
2 チェーン刃
3 本体
4 中心軸
5 ハンドル
10 被切断材
11 中心点
12 円弧面
13 孔
14 開口縁部
20 軸部材
21 先端
22 ガイド管
23 鍔
24 止着部材
25 ストッパ
26 ネジ
27 ガイド部材
30 支持部
40 取付部
41 固定部
42 脚部
43 ネジ
50 棒状体
51 端部
60 スライダ
61 保持部
62 軸部材ロック機構
63 雌ネジ
64 いもネジ
70 スライダロック機構
71 雌ネジ
72 蝶ネジ
80 移動機構
81 ボルト
82 軸受け
83 雌ネジ部
84 フック
85 把手
86 ネジ
90 調節棒
91 脚部材
92 第1脚部材
93 第2脚部材
94 係止棒
95 ネジ
96 接地板
97 脚保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に突設された板状のガイドバーの周縁に、被切断材を切断するエンドレスのチェーン刃を巻回してなり手で持って操作するチェーンソーに着脱可能に装着され、上記ガイドバーを所定の中心点を中心とした円に沿って回動させて被切断材に円弧面を形成するためのチェーンソー用アタッチメントであって、
上記ガイドバーの長手方向に平行且つ該ガイドバーの側面がわに位置し、先端側が上記中心点に位置させられる軸部材と、
上記ガイドバーに着脱可能に取付けられ、上記軸部材を該軸部材と該ガイドバーとの間の距離を可変可能に支持する支持部とを備えたことを特徴とするチェーンソー用アタッチメント。
【請求項2】
上記支持部を、上記ガイドバーに取付けられる取付部と、上記取付部に設けられ該ガイドバーの面方向に直交する方向に延びる棒状体と、上記棒状体にスライド可能に設けられ上記軸部材を保持する保持部を有したスライダと、上記スライダを該棒状体の適宜の位置に解除可能に保持するスライダロック機構とを備えて構成したことを特徴とする請求項1記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項3】
上記軸部材を上記保持部に対して進退動可能に設け、該保持部に該軸部材を適宜の位置に解除可能に保持する軸部材ロック機構を備えたことを特徴とする請求項2記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項4】
上記スライダを上記棒状体に対してスライド移動させる移動機構を設けたことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項5】
上記移動機構を、上記棒状体の長手方向と平行に設けられる雄ネジを有したボルトと、上記取付部に取付固定され上記ボルトの一端を回転可能且つ前後動不能に支持する軸受けと、上記スライダに設けられ上記ボルトに螺合し該ボルトの回転によってスライダを移動せしめる雌ネジ部とを備えて構成したことを特徴とする請求項4記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項6】
上記ガイドバーに対する上記軸部材の位置を変更可能になるように、上記スライダを上記棒状体に対して反転可能にしたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項7】
上記中心点を通って上記被切断材に形成された孔に差込まれ、上記軸部材が進退動可能に挿入されるガイド管を備えたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項8】
上記ガイド管の一端に上記被切断材の孔の開口縁部に当接する鍔を設けたことを特徴とする請求項7記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項9】
上記軸部材を雄ネジで形成し、上記中心点に設けられる孔と同軸に被切断材に固定され上記雄ネジが螺合する雌ネジを有したガイド部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載のチェーンソー用アタッチメント。
【請求項10】
上記請求項1乃至9何れかに記載のチェーンソー用アタッチメントを備えたことを特徴とするチェーンソー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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