説明

チェーン位置ずれ防止具

【課題】簡易にチェーンのずれを防止できるチェーン位置ずれ防止具を提供する。
【解決手段】本発明に係るチェーン位置ずれ防止具1は、折り曲げ可能な線条部材9と、一端が線条部材9と直接又は他の部材を介して連結された帯状部材11とを有し、線条部材9は、チェーン3の環5に引っ掛かるように形成されたフック部13を有し、帯状部材11は一方の面に面ファスナーの雄部材31が設けられ、他方の面に面ファスナーの雌部材33が設けられてなり、フック部13を、並列配置されたチェーン3の環5に引掛けると共に帯状部材11を並列配置されたチェーン3に巻き回することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁を含む鋼構造物等の架設現場において用いられる足場吊りチェーンのように対象物にチェーンを掛け回した場合において、チェーンの位置のずれを防止するチェーン位置ずれ防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼構造物、例えば橋梁の建設工事において、架設された桁材に足場吊りチェーンを掛け回して足場が吊り下げられる。
図13は架設された桁材100の断面図、図14は図12の一部を抜き出して拡大して示す拡大図である。
架設された桁材100には、図13、図14に示すように、そのフランジ101の下方に設置された補剛板103に形成された1/4円状の1/4円開口部105や、ウェブ107の側面に突設した足場吊り下げ金具109に設けた円形の円開口部111に足場吊りチェーン113を吊り下げ、該足場吊りチェーン113に足場115が吊り下げ支持される。
足場吊りチェーンを開示した先行文献としては、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−161036
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
足場吊りチェーン113を円開口部111に挿通して足場115を吊り下げる場合、図15に示すように、円開口部111の開口周縁にチェーン113の環117が山形になるように当接するようにする必要がある。何故なら、チェーン113の環117が水平状態で円開口部111の縁部に支持されると、チェーン113の環117は溶接接合されているため、溶接部117aからチェーンが切れる恐れがあるからである。
もっとも、足場吊りチェーン113を掛け回した際に山形になるようにしたとしても、多数の足場吊りチェーン113で足場115を支持するため、足場吊りチェーン113のなかには張力が緩むものがあり、その場合、足場吊りチェーン113と円開口部111の縁部との当接部がずれて、足場吊りチェーン113の環が水平状態で開口縁部に支持される状態が生ずることがある。
これを防止するため、実際の現場では、例えばビニールテープのようなもので簡易的に足場吊りチェーン113を固定することが行われているが、ズレ防止の効果はほとんど期待できない。
【0005】
また、足場側においては、足場吊りチェーン113の端部にフック119が設けられており、フック119を足場吊りチェーン113の環117に掛けているが(図14参照)、足場吊りチェーン113が緩むとフック119が足場吊りチェーン113の環117から外れてしまう恐れがある。
フック119が外れると、足場吊りチェーン113が道路側に垂れ下がり危険である。
【0006】
このように、足場吊りチェーン113と開口縁部との位置ずれ、あるいは端部にフック119を有する場合における足場吊りチェーン113の位置ずれを防止する必要がある。
しかしながら、従来においては、そのようなことについての解決策を提示したものはなかった。
上記の説明は、足場吊りチェーンを例に挙げたが、このような問題は足場吊りチェーンに限られず、チェーンを開口部に掛け回したり、余長部分の先端にフックを設けて該フックをチェーンの環に止めるような場合であれば、共通の課題である。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、簡易にチェーンのずれを防止できるチェーン位置ずれ防止具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るチェーン位置ずれ防止具は、折り曲げ可能な線条部材と、一端が前記線条部材と直接又は他の部材を介して連結された帯状部材とを有し、
前記線条部材は、チェーンの環に引っ掛かるように形成されたフック部を有してなり、前記帯状部材は一方の面に面ファスナーの雄部材が設けられ、他方の面に面ファスナーの雌部材が設けられてなり、
前記フック部を並列配置されたチェーンの環に引掛けて係止させると共に、前記帯状部材を前記並列配置されたチェーンに巻き回することを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)記載のものにおいて、並列配置されるチェーンの環に挿通可能な挿入部材を有し、該挿入部材に前記線条部材及び帯状部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記挿入部材は、一端側に膨出部を有する板状体からなることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)に記載のものにおいて、前記帯状部材に、蛍光反射帯を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、線条部材のフック部を、並列配置されたチェーンの環に引掛けると共に帯状部材を並列配置されたチェーンに巻き回して、巻き回した帯状部材上に線条部材を巻き付けて帯状部材を止めるようにしたので、簡易にチェーンのずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具の説明図である。
【図2】図1に示したチェーン位置ずれ防止具の構成部材の説明図である。
【図3】図1に示したチェーン位置ずれ防止具の構成部材の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具の使用方法の説明図である(その1)。
【図5】本発明の一実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具の使用方法の説明図である(その2)。
【図6】本発明の一実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具の使用方法の説明図である(その3)
【図7】本発明の一実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具の使用方法の説明図であって、図6の矢印A方向から見た状態を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具の使用方法の説明図である(その4)
【図9】本発明の実施の形態2のチェーン位置ずれ防止具の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態2のチェーン位置ずれ防止具の使用方法の説明図である(その1)。
【図11】本発明の実施の形態2のチェーン位置ずれ防止具の使用方法の説明図である(その2)。
【図12】本発明の実施の形態2のチェーン位置ずれ防止具の他の態様の説明図である。
【図13】橋梁の建設工事において、架設された桁材に足場吊りチェーンを掛け回して足場を吊り下げている状態を説明する説明図である。
【図14】図3の一部を抜き出して説明する説明図である。
【図15】本発明が解決するべき課題を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具1を、図1乃至図8に基づいて説明する。
本実施の形態に係るチェーン位置ずれ防止具1は、並列配置されるチェーン3の環5に挿通可能な挿入部材7と、一端が該挿入部材7に取り付けられた折り曲げ可能な線条部材9と、一端が前記挿入部材7に取り付けられた帯状部材11とを有し、前記線条部材9は、チェーン3の環5に引っ掛かるように形成されたフック部13(図6参照)を有してなるものである。
以下、詳細に説明する。
【0015】
<挿入部材>
挿入部材7は、図1に示すように、全体が略T字の板状の部材から形成されている。挿入部材7は、一端側に形成された膨出部15と、矩形状の本体部17と、本体部17の他端側に形成された切り欠部19とを有している。
膨出部15の幅は、チェーン3の環5の内径よりも大きく設定されており、挿入部材7をチェーン3の環5に挿入したときに挿入部材7が抜けるのを防止できるようになっている。
膨出部15には、開口部21が設けられており、この開口部21に帯状部材11の一端が連結されている。
膨出部15における、本体部17側の部位には、凹部23が形成されており、チェーン3の環5の外周部の一部が挿入されるようになっている。
本体部17の幅方向中ほどには長手方向に伸びる凹溝25が形成されている。凹溝25は、チェーン3の環5の溶接部5aが挿入される部位である。
また、本体部17の長手方向の中央部には線条部材9が挿入可能な貫通孔27が設けられている。
さらに、本体部17における膨出部15と反対側には、切り欠部19が形成され、帯状部材11が巻き付くようになっている。
【0016】
挿入部材7の材質は特に限定されないが、軽くて硬い部材、例えば強化プラスチックや塩ビのようなものであればよい。
【0017】
<線条部材>
線条部材9は、折り曲げ可能な金属、例えばアルミニウムの針金部材からなる。また、線条部材9の径は、例えば3mm程度である。
線条部材9は、使用前状態では、図1に示すようにほぼ真直ぐな状態であってもよく、使用時において、所望のフック形状に折り曲げでき、図6に示すようなフック部13が形成できればよい。
【0018】
<帯状部材>
帯状部材11は、一端が挿入部材7の開口部21に連結されることにより、挿入部材7に取り付けられている。開口部21への取付は、図1に示すように、一端側を挿入部材7の開口部21に挿して、挿通した端部を折り返して環にして、環にした部分の端部を例えばミシン縫いによって固定するようにすればよい。なお、ミシン縫いに代えてあるいはステープラによって取り付けてもよい。図2は、ステープラで止めた場合の帯状部材11の平面図であり、図3は側面図である。図2、図3では、挿入部材7の図示は省略している。
【0019】
帯状部材11における挿入部材7に取り付ける側と反対側の端部には蛍光反射帯29が設けられている。
帯状部材11の材質は、チェーン3に巻き付けて、縛ることでチェーン3を縛ることができるようなものである必要があり、例えば不織布、布製、樹脂製等が挙げられる。
帯状部材11の一方の面には面ファスナーの雄部材31が、他方の面には面ファスナーの雌部材33が形成されている。
なお、面ファスナーの雄部材、雌部材はいずれがいずれの面にあってもよい。
【0020】
帯状部材は、樹脂製の単一の部材で形成されたものであってもよいし、麻ひも等の別部材に面ファスナーを固定したような複合部材であってもよい。
なお、帯状部材の色を例えば赤色、黄色等にして、チェーン位置ずれ防止具1が設置される場所等によって識別するようにすれば便利である。
【0021】
上記のように構成された本実施の形態のチェーン位置ずれ防止具1の使用方法を、図4〜図8に基づいて説明する。
図4に示すように、並列配置された一対のチェーン3の環5に挿入部材7を挿入する。挿入時に、チェーン3の環5の溶接部5aを挿入部材7の凹溝25の位置にすることで、挿入部材7がガイドされてスムーズに挿入できる。
挿入部材7を挿入した状態では、図5に示すように、膨出部15がチェーン3に当接して挿入部材7が抜けるのを防止する。
【0022】
図5に示す状態から、併設するチェーン3を引き寄せ、線条部材9の先端を挿入部材7に設けた貫通孔27に挿入し、貫通孔27に挿入された線条部材9の端部を折り曲げてフック状にしてチェーン3に引掛けるようにする(図6、図7参照)。これによって、チェーン3の環5が引き寄せられた状態で位置決めされると共に、挿入部材7はチェーン3の環5から抜けないように固定される。
次に、図8に示すように、帯状部材11を、チェーン3にクロスするように巻き回する。帯状部材11が面ファスナーになっているので、しっかりと止めることができる。帯状部材11の巻き回が完了した状態では、図8に示すように、蛍光反射帯29が表面になるようにする。
【0023】
以上のように、本実施の形態によれば、簡易に、かつ確実にチェーン3のずれを防止できる。
また、本実施の形態においては、帯状部材11に蛍光反射帯29を設けたので、夜間などにチェーン3の場所の確認が容易になり、安全上も好ましい。
なお、蛍光反射帯29は必須ではなく、本発明は蛍光反射帯29を設けない場合も含む。
【0024】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、線条部材9と帯状部材11が挿入部材7を介して連結されるものであったが、本実施の形態のチェーン位置ずれ防止具35は挿入部材を用いることなく、線条部材37と帯状部材11を直接連結するものである。
【0025】
本実施の形態のチェーン位置ずれ防止具35を構成する線条部材37は、図9に示すように、使用前の状態では、全体形状が、略釣り針状に形成され、先端部にフック部39が形成されている。釣り針状の形状における横辺が直線部41になっており、この直線部41に帯状部材11が取り付けられるようになっている。
帯状部材11の線条部材37への取付は、帯状部材11を線条部材37に巻きつけて、ミシン縫いやステープラで固定すればよい。
線条部材37は、図9の矢印で示すように、長辺部、短辺部を自由に折り曲げることができる。
帯状部材は、実施の形態1で示したものと同様である。
【0026】
上記のように構成された本実施の形態の使用方法を説明する。
本実施の形態のチェーン位置ずれ防止具35は、足場吊りチェーン3の端部に設けられたフック43をチェーン3の環5に掛ける場合に、該フック43がチェーン3の環5から外れるのを防止することによって、チェーン3のずれ止めを行うのに使用するのに好適である。
【0027】
図10に示すように、フック部39をチェーン3の環5に引掛ける。その状態で、帯状部材11をフック43及びチェーン3に巻き回する。このとき、最後の一巻きが蛍光反射帯29を設けた部位となり、巻き回が完了した状態では、図11に示すように、蛍光反射帯29が表面になるようになっている。
最後に、線条部材37を帯状部材11の表面に巻き回して、帯状部材11が外れるのを確実に防止する。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、チェーン3の端部に設けられたフック43がチェーン3から外れるのを確実に防止できる。
【0029】
上記の実施の形態2においては、線条部材37の使用前の形状として、略釣り針状のものを示したが、線条部材37を図12(a)に示すように、線条部材37をフック部39側に捻って巻きつけて、帯状部材11の端部を取り付ける部位を矩形リング状の矩形リング部45に形成するようにしてもよい。このようにすることで、フック部39側の剛性を高めることができ、それによって、帯状部材11の巻き回を強くすることができる。また、線条部材37全体の剛性を高めることもできる。
【0030】
なお、図9〜図12に示したチェーン位置ずれ防止具35は、実施の形態1で説明した併設されたチェーン3同士のずれ止めに使用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 チェーン位置ずれ防止具
3 チェーン
5 環
5a 溶接部
7 挿入部材
9 線条部材
11 帯状部材
13 フック部
15 膨出部
17 本体部
19 切り欠部
21 開口部
23 凹部
25 凹溝
27 貫通孔
29 蛍光反射帯
31 面ファスナーの雄部材
33 面ファスナーの雌部材
35 チェーン位置ずれ防止具
37 線条部材
39 フック部
41 直線部
43 フック
45 矩形リング部
100 桁
101 フランジ
103 補剛板
105 1/4円開口部
107 ウェブ
109 足場吊り下げ金具
111 円開口部
113 足場吊りチェーン
115 足場
117 環
119 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ可能な線条部材と、一端が前記線条部材と直接又は他の部材を介して連結された帯状部材とを有し、
前記線条部材は、チェーンの環に引っ掛かるように形成されたフック部を有し、前記帯状部材は一方の面に面ファスナーの雄部材が設けられ、他方の面に面ファスナーの雌部材が設けられてなり、
前記フック部を並列配置されたチェーンの環に引掛けて係止させると共に、前記帯状部材を前記並列配置されたチェーンに巻き回することを特徴とするチェーン位置ずれ防止具。
【請求項2】
並列配置されるチェーンの環に挿通可能な挿入部材を有し、該挿入部材に前記線条部材及び帯状部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のチェーン位置ずれ防止具。
【請求項3】
前記挿入部材は、一端側に膨出部を有する板状体からなることを特徴とする請求項2記載のチェーン位置ずれ防止具。
【請求項4】
前記帯状部材に、蛍光反射帯を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のチェーン位置ずれ防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−58356(P2011−58356A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−239222(P2010−239222)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(599159439)
【出願人】(510284716)林工業株式会社 (1)
【出願人】(507230382)首都高メンテナンス西東京株式会社 (4)