説明

チェーン自動給油装置

【課題】チェーンの内部に潤滑油を十分に浸透させるためにかかる時間を短縮することができるチェーン自動給油装置を提供する。
【解決手段】内部に潤滑油が溜められる油槽1と、無端状のチェーン2が連続的に巻き掛けられる複数個の滑車3と、チェーン2に巻き掛けられる回転可能な駆動滑車6と、この駆動滑車6に接続され、駆動滑車6を回転させる駆動装置7とを備え、駆動装置7の作動により、駆動滑車6が回転して、チェーン2が油槽1に溜められた潤滑油8の中を通って循環移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チェーンに潤滑油を給油するチェーン自動給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、循環移動する既設のチェーンに対向して設けられ、循環移動中のチェーンに潤滑油を吹き付ける噴射手段を備えたチェーン自動給油装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このものでは、最初に内部に潤滑油を浸透させたチェーンを滑車に巻き掛けて循環移動させると、チェーンの内部に浸透した潤滑油が徐々に減少するので、この減少した潤滑油を補うために、噴射手段がチェーンに潤滑油を吹き付ける。
【0003】
【特許文献1】特開平11−222310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このものの場合、最初にチェーンの内部に潤滑油を浸透させるためには、潤滑油が溜められた油槽の中にチェーンを浸しておかなければならず、チェーンの内部に潤滑油を十分に浸透させるためには長い時間がかかってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、チェーンの内部に潤滑油を十分に浸透させるためにかかる時間を短縮することができるチェーン自動給油装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るチェーン自動給油装置は、油槽と、無端状のチェーンが連続的に巻き掛けられる複数個の滑車と、前記チェーンを循環移動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段によって、前記チェーンが前記油槽に溜められた潤滑油の中を通って循環移動する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るチェーン自動給油装置によれば、チェーンの内部に潤滑油を十分に浸透させるためにかかる時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るチェーン自動給油装置の全体図である。
実施の形態1に係るチェーン自動給油装置は、潤滑油8が内部に溜められる油槽1と、油槽1の内部に回転自在に設けられ、無端状のチェーン2が連続的に巻き掛けられる4個の滑車3と、油槽1の外部に設けられ、滑車3に巻き掛けられたチェーン2を循環移動させる駆動手段4と、油槽1の内部に設けられ、チェーン2に接触する一対のブラシ5とを備えている。
【0009】
駆動手段4は、油槽1に回転可能に設けられ、チェーン2が巻き掛けられる駆動滑車6と、この駆動滑車6に接続され、作動することで駆動滑車6を回転させる駆動装置7とを有している。
なお、駆動手段4は、油槽1の内部に設けられてもよい。
ブラシ5のそれぞれは、互いに対向し、チェーン2を両側から挟むようにして、チェーン2に接触する毛部5aを有している。
滑車3は、チェーン2の進行方向に沿って、千鳥状に配置されており、この滑車3を通過するチェーン2は、図示しないピンおよびブッシュを中心に回動する。
チェーン2は、エスカレータの手摺駆動に用いられるものである。
【0010】
次に、実施の形態1に係るチェーン自動給油装置を用いて、チェーン2の内部に潤滑油8を浸透させる手順について説明する。
まず、油槽1の内部に潤滑油8を溜め、チェーン2を滑車3および駆動滑車6に巻き掛ける。
次に、駆動装置7を作動させて、駆動滑車6を回転させる。
駆動滑車6が回転すると、チェーン2が循環移動を開始し、チェーン2が油槽1に溜められた潤滑油8を通過する。
このとき、チェーン2には負荷がかかっていないので、チェーン2のピンとブッシュとの間には隙間が発生し、潤滑油8の中では、この隙間に潤滑油8が浸透する。
【0011】
次に、チェーン2がブラシ5の毛部5aの間に接触して通過すると、ブラシ5の毛部5aにより、製造時にチェーン2に付着した防錆材等が取り除かれるとともに、チェーン2の内部に潤滑油8が浸透する。
このとき、ブラシ5の毛部5aがチェーン2と接触することで振動し、この振動により潤滑油8にランダムな流れが発生する。この潤滑油8のランダムな流れにより、チェーン2の内部の微細な隙間にも潤滑油8が浸透する。
【0012】
次に、チェーン2が滑車3を通過すると、滑車3は千鳥状に配置されているので、チェーン2がピンおよびブッシュを中心に回動する。
これにより、チェーン2の可動範囲内の屈曲動作が行われ、チェーン2の内部に潤滑油8がさらに浸透する。
【0013】
以上説明したように、実施の形態1に係るチェーン自動給油装置によると、チェーン2に負荷をかけずにチェーン2を潤滑油8の中を通って循環移動させるので、チェーン2の内部に潤滑油8が浸透しやすくなり、チェーン2の内部に潤滑油8を十分に浸透させるためにかかる時間を短縮することができる。
【0014】
また、ブラシ5の毛部5aがチェーン2と接触するので、チェーン2の表面の異物を除去することができる。
【0015】
また、ブラシ5の毛部5aにより、潤滑油8にランダムな流れが発生するので、チェーン2の内部の微細な隙間にも、潤滑油8を浸透させることができる。
【0016】
また、滑車3が千鳥状に配置されているので、この滑車3を通過するチェーン2がピンおよびブッシュを中心に回動して、チェーン2の内部に潤滑油8をさらに浸透させることができる。
【0017】
また、滑車3が油槽1の内部に設けられているので、滑車3を通過するチェーン2の内部に潤滑油8をさらに浸透させることができる。
【0018】
なお、上記実施の形態1では、滑車3が油槽1の内部に設けられたチェーン自動給油装置について説明したが、勿論このものに限らず、滑車3が油槽1の外部に設けられたチェーン自動給油装置であってもよい。
【0019】
また、上記実施の形態1では、4個の滑車3を備えたチェーン自動給油装置について説明したが、勿論この数に限らず、3個以上であればよい。
【0020】
また、上記実施の形態1では、ブラシ5が油槽1の内部に設けられたチェーン自動給油装置について説明したが、勿論このものに限らず、ブラシ5が油槽1の外部に設けられたチェーン自動給油装置であってもよい。
【0021】
また、上記実施の形態1では、エスカレータの手摺駆動に用いられるチェーン2として説明したが、勿論このものに限らず、その他に用いられるチェーンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1に係るチェーン自動給油装置の全体図である。
【符号の説明】
【0023】
1 油槽、2 チェーン、3 滑車、4 駆動手段、5 ブラシ、5a 毛部、6 駆動滑車、7 駆動装置、8 潤滑油。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽と、
無端状のチェーンが連続的に巻き掛けられる複数個の滑車と、
前記チェーンを循環移動させる駆動手段とを備え、
前記駆動手段によって、前記チェーンが前記油槽に溜められた潤滑油の中を通って循環移動することを特徴とするチェーン自動給油装置。
【請求項2】
毛部が前記チェーンと接触するブラシを備えたことを特徴とする請求項1に記載のチェーン自動給油装置。
【請求項3】
前記ブラシは、前記油槽内に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のチェーン自動給油装置。
【請求項4】
前記滑車は、3個以上設けられており、前記チェーンの進行方向に沿って千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のチェーン自動給油装置。
【請求項5】
前記滑車は、前記油槽内に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のチェーン自動給油装置。
【請求項6】
前記チェーンは、エスカレータの手摺駆動に用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のチェーン自動給油装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−12887(P2009−12887A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174086(P2007−174086)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】