説明

チケット集積用トレイと、これを備えた発券機

【課題】チケットが外側に飛び出したり裏返ったりすることなく順番通りに正しく集積し、しかもその集積した多数枚のチケットを容易に取り出すことのできるチケット集積用トレイと、これを備えた発券機を提供する。
【解決手段】後面板21と底面板22と前面板23と左右の側面板24・24と天面板25とで、前面側がチケット取り出し口27とされたトレイ20を形成する。トレイ20の前面板23の左右方向中央部から底面板の左右方向中央部にかけて切り欠き部28を設ける。天井板25の内面側にチケット案内用のガイド部20を設ける。ガイド部30は、発券機の券放出口14から放出されるチケット32の先端側32aがトレイ20内の上部に進入したときに当該チケット先端側32aがガイド部30に当接してチケット32が前面板23の上縁23aを超えずにその内面側に向けて落下するように、発券機の発券方向に沿った水平面Hに対して所定の角度だけ傾斜させた状態で設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チケットを発行する発券機の券放出口の外側に取り付けられるチケット集積用トレイと、これを備えた発券機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば遊園地やテーマパークその他の有料施設等においては、入場券などのチケットを発行するために発券機が使用されることがある。この種の発券機は、例えば、チケット用紙の供給部から券放出口に至る搬送経路に沿って、チケット用紙切断用のカッタ、情報記録用の磁気ヘッド、印字ヘッド等を配置した構成で、チケット用紙を前記搬送経路に沿って一方向に送りながらカッタにより所定のサイズに切断し、その切断片に磁気ヘッドや印字ヘッドで所定の情報を記録して券放出口から一枚ずつ外部に放出するようになっている。
【0003】
ところで、発券機には、券放出口の外側にトレイを設けて、その上にチケットを放出するようにしたものがあるが(特許文献1の第3図参照)、この種のトレイは、一度に多数枚のチケットを発行する必要がある場合等に備えて、券放出口から放出されたチケットを、それらが必要な枚数に達するまで一時的にためておくことができるようになっているのが望ましい。
【0004】
そこで、従来においては発券機の券放出口の外側に多数枚のチケットを集積・収容できるトレイを備えたものも実用されている。このようなチケット集積用のトレイとしては、チケットを受ける底面板の前縁や側縁にチケット落下防止用の立ち上げ部を互いに所定の間隔をあけて形成したものや、底面板の周囲に側壁を立設して上面側が開口された箱状としたもの(特許文献1の第5図参照)や、さらに上面側も閉じて全体を箱状としたもの(同文献の第1図参照)などが知られている。これらのトレイは、ある程度の数量までチケットの集積が可能であるので、入場者が多数いる場合や団体客へのチケット発行時に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−126966号公報(第1図、第3図、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来の発券機のチケット集積用トレイとしては、大きく分けて、底面板の周囲に落下防止用の立ち上げ部を形成したものと、箱状のものとがあるが、いずれの場合もチケットの発行枚数が多くなると、トレイ内に放出されたチケットが整然とは集積されずに順序が入れ変わったりズレたりしやすいというが問題あった。
【0007】
その原因の一つは、チケットがその一方の面側に反った状態(カールした状態)で発券機の券放出口から所定の速度で放出されることにある。しかしながら、チケット用紙が例えばロール状に巻かれていてその巻きぐせがチケットサイズに切断した後も残っていたり、チケット用紙に所定の情報を記録すべくサーマル式の印字ヘッドで印字したときに印字面側とその裏面側とでチケット用紙の乾燥度合いが異なってしまったりするため、上記のようなチケットのカール自体を完全に解消することは困難である。なお、チケットの放出時の乱れは、チケット用紙やチケットの搬送時の摩擦によって発生する静電気等が原因となって起こることもある。
【0008】
また、入場者が多数いる場合等は発行時間が顧客の待ち時間に直接影響するため、発行時間を短くする必要がある。先にも述べたように、チケットの発行には例えばロール状のチケット用紙から裁断、磁気データ書き込み、サーマル印字を行なってトレイに放出するが、その間約2秒程度であり、安易にチケットの放出速度を遅くできない。したがって、ある程度の速度(例えば、100mm/sec以上)でチケットを放出する必要がある。このため、カールした状態のチケットであっても所要の時間内にトレイ内に正しく集積収容されるように何らかの対策が必要となる。
【0009】
さらに、例えば風の影響を受けやすい場所に発券機が設置されている場合、上述した底面板の周囲に落下防止用の立ち上げ部を形成したタイプのチケット集積用トレイでは、隣り合う立ち上げ部間に一定の隙間(切り欠き)が存在するために、そこから進入してくる風の影響を受けてチケットが翻ったり傾いたりトレイ外に飛び出したりするといった問題が生じやすい。
【0010】
このような問題は、上述した箱状タイプのチケット集積用トレイでは回避することができるが、その反面、集積したチケットをトレイから取り出すには、まず箱を取り出し、そこからチケットを取り出すという2つのアクションが必要となる。このため、上記の立ち上げ部形成タイプのものに比べてチケットを取り出すための操作手間が増える等の問題がある。
【0011】
本発明は、上記のような問題に対処するもので、風の影響を受けにくく、チケット用紙の巻き癖やサーマル印字時の熱印加によりチケットが反っている場合(特に高湿時)や、チケットが静電気を帯びている場合であっても、チケットが外側に飛び出したり裏返ったりすることなく順番通りに正しく集積し、しかもその集積した多数枚のチケットを容易に取り出すことのできるチケット集積用トレイと、これを備えた発券機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、チケットを発行する発券機の券放出口の外側に取り付けられて、当該券放出口から一枚ずつ放出されるチケットを収容するチケット集積用トレイにおいて、次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
すなわち、このトレイを発券機の券放出口の外側に取り付けたときに当該券放出口側に位置することとなる後面板と、この後面板の下端から前方側に延びるように形成されて券放出口から当該トレイ内に放出されたチケットを受ける底面板と、この底面板の前端から立ち上げ形成された前面板と、これらの後面板、底面板および前面板の各左側端および右側端に連続するように形成された左右の側面板と、この左右の側面板の上端どうしを繋ぐように形成された天面板とを備える。
【0014】
天面板の後縁と後面板の上縁との間に、前記発券機の券放出口の外側に取り付けた状態で当該券放出口に対応位置するようにチケット進入口を形成する。また、チケット取り出し用として、天面板の前縁と左右の側面板の前縁と前面板の上縁とにより、前面側に開口するチケット取り出し口を形成する一方、前面板の上縁から底面板にかけてこれらの幅方向の中央部に切り欠き部を形成する。
【0015】
本発明では、このような構成に加えてさらに、天面板の内面側にチケット案内用のガイド部を設けた構成とする。このガイド部は、前記券放出口から放出されるチケットの先端側がチケット進入口を通ってトレイ内の上部に進入したときに当該チケットの先端側が当該ガイド部に当接して当該チケットが前面板の上縁を超えずにその内面側に向けて落下するように、発券機の発券方向に沿った水平面に対して所定の角度だけ傾斜させた状態で設ける。
【0016】
具体的には、例えば図3および図4の(a)に示すように、ガイド部30は、これのチケット当接面30aとその後方側において発券機の発券方向に沿った水平面Hとのなす角度をXとしたときに、115°≦X≦145°となるように設けるのが好ましく、X=130°とするのがさらに良い。Xが115°未満の場合には、印字途中であるにもかかわらずチケットの先端側がガイド部30に当接してしまったときにチケットがガイド部30に沿って所定方向にスムーズに案内されずに突っ張ったような状態となって印字精度に影響する可能性があり、Xが145°を超えた場合には、チケットがガイド部30に当接しても前面板の内面側に向かわずにその上縁を超えて前方に飛び出してしまう可能性がある。また、チケットがガイド部30に接触する位置としては、印刷が50%程度終了してから接触するほうが好ましい。印刷が50%程度終了していないうちに接触しはじめると、紙のコシが強い為、突っ張ったような状態になって印刷精度に影響する可能性がある。
【0017】
ガイド部は、チケットが吸着しにくいように、そのチケット当接面側が粗面化処理(シボ加工)されているのが望ましい。ガイド部のチケット当接面側が凹凸の少ない平滑な面(つるつるした面)であるとチケットが吸着されやすくなるからである。このような吸着現象は、チケットが静電気を帯びていると一層生じやすくなるが、ガイド部のチケット当接面側が粗面化処理されていると、そのような静電気による吸着も防止または抑制できる。
【0018】
底面板22(図3参照)は、例えば図4の(a)に示すように、前下がり状に傾斜させ、その外面とその後方側において発券機の発券方向に沿った水平面Hとのなす角度をYとしたときに、135°≦Y≦165°となるように設けるのが好ましく、Y=150°とするのがさらに良い。Yが135°未満の場合には、図4の(c)に示すように、底面板22の傾斜がきつくなりすぎて、落下してきたチケット32が、トレイ20内において既に集積されているチケット32群の最表面に当たって反転してしまう可能性があり、Yが165°を超えた場合には、図4の(b)に示すように、底面板22の傾斜が緩い(水平に近づく)ために、落下してきたチケット32の下端がトレイ20内に既に集積されているチケット32群の最表面の上にうまく重ならずに斜めになったまま止まってしまう状態(いわゆるブリッジ状態)となる可能性がある。また落下するチケット32と底面板22までの落差h(図3および図4(a)参照)はチケット寸法や、目標集積枚数により異なるが、チケット長手寸法と同等以下であることが好ましい。チケット長手寸法以上の落差となると、チケットがブリッジ状態を超えて、反転してしまう可能性がある。
【0019】
左右の側面板は、その対向面間の間隔をL1とし、発券方向の前方側から見てチケットの左右方向の横幅寸法(短手方向の寸法)をM1とし、チケットの対角寸法をM3としたときに、M1<L1≦0.7×M3となるようにするのが望ましい。トレイ内で左右の側面板とチケットとの間の隙間を支障の無い範囲で小さくすることで、チケットの横方向への動きを規制し、ひいてはチケットが整った状態で集積されるようにするためである。
【0020】
底面板は、その前後方向の長さ寸法をL2とし、平面視で発券方向となるチケットの前後方向(長手方向)の寸法をM2としたときに、M2−10mm<L2<M2となるように設定するのが望ましい。チケットの前後方向(長手方向)の寸法M2に対して底面板の前後方向の長さ寸法L2が大きすぎると、チケットがトレイ内で前後方向に動きやすくなり(自由度が増し)、その分だけチケットが反転したり乱れたりしやすくなるからである。
【0021】
なお、集積枚数が増えた時やチケットのカールが増えた時でも対応できるように、天面板から底面板に向けて程度の落差を有する構造とするのが望ましい。また、発券機から放出直前の印字中のチケットを係員等が直接手を触れられないように、天面板と両側面板で囲まれた後面板の上部位置にチケット挿入口を設けて、誤操作及び印字動作中のチケットの引き抜きを防止し、安全性に配慮した構造とするのが望ましい。
【0022】
一方、本発明に係る発券機は、チケット用の連続用紙を所定の方向に送りながら一定のチケットサイズに切断し、その各切断片に所定の情報を記録してチケットとしたうえで券放出口から外部に一枚ずつ放出する発券機において、前記券放出口の外部に上記のようなチケット集積用トレイを備えた構成としたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、発券機の券放出口の外側にチケット集積用トレイを取り付けた状態で、発券機からチケットを一枚ずつ連続して多数枚発行した場合に、次のようにして、それらのチケットを順番通りに整った状態でトレイ内に集積させることができるだけでなく、その集積した多数枚のチケット群をトレイから容易に取り出すことができることとなる。
【0024】
まず、本発明の発券機においては、チケット用の連続用紙を所定の方向に送りながら一定のチケットサイズに切断し、その各切断片に所定の情報を記録してチケットとしたうえで券放出口から外部に一枚ずつ放出する。このようにして券放出口から外部に放出されるチケットは、券放出口の外側に取り付けられたチケット集積用トレイのチケット進入口から当該トレイ内に進入し、その先端側がトレイの天面板の内面側のガイド部に当接してトレイ内の下方に向けて落下する。
【0025】
このとき、ガイド部は発券機における発券方向に対して所定の角度だけ傾斜させた状態で設けられているので、チケットが上向き等に或る程度反っていたとしても、チケットは前面板の上縁を超えることなくその内面側に向けて落下するようにガイド部によって確実に案内される。また、トレイの両側には天面板から底面板に至る左右一対の側面板が設けられているので、これらによって風の影響を抑制することができる。すなわち、発券機の券放出口から放出されたチケットが上記のようにしてトレイ内に進入して所定の方向に向けて落下する間に、外部からの風によって煽られたりするのを両側面板や天面板の存在よって確実に抑制することができる。こうして、チケットは発行された順番通りにトレイ内に比較的整った状態で集積、収容される。
【0026】
そして、本発明に係るトレイにおいては、チケット取り出し用として、前面側にチケット取り出し口が形成されているとともに、前面板の上縁から底面板にかけてこれらの幅方向の中央部に切り欠き部が形成されているので、この切り欠き部を利用してチケット群を指で掴んで持ち上げることで、その上方側に位置するチケット取り出し口から外部に取り出すことができる。こうして、トレイ内に集積された多数枚のチケットは、手間をかけることなく、またばらけさせることもなく、当該トレイから容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係る発券機の全体構成を簡略化して示す側面図である。
【図2】本発明の実施例に係るチケット集積用トレイを単体で示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る発券機にチケット集積用トレイを取り付けた状態を示す当該トレイ周辺部分の拡大断面図である。
【図4】ガイド部や底面板の傾斜状態の設定について説明するために使用した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施例) 図1に、本発明の実施例に係る発券機の全体構造を示す。この図に示すように、発券機1は、本体2の外部にロール状のチケット用紙3を保持する用紙保持部4を備え、本体2の内部には、用紙保持部4から引き出したチケット用紙3の搬送方向に沿って、カッターユニット5と、磁気ライトヘッド6と、磁気リードヘッド7と、印字用のサーマルヘッド8およびプラテンローラ9等を配置した構成である。
【0029】
また、本体2内には、チケット用紙(感熱紙)3およびその切断後のチケット紙31を一方向に搬送する手段として、券供給用の駆動ローラ10、各駆動プーリ11、これらのプーリ間に掛け渡されたベルト12等が設けられている。本体2の一端にはチケット用紙3を供給するための供給口13が設けられ、他端には券放出口14が設けられている。
【0030】
そして、本体2内に供給されたチケット用紙3が券放出口14の方向に向けて搬送されながら、カッタユニット5において切断され、その切断片(チケット紙31)に磁気ライトヘッド6による磁気情報の書き込みと磁気リードヘッド7によるその確認とが行なわれた後、サーマルヘッド8によって印字されて、最終的に入場券等のチケット32として券放出口14から外部に放出されるようになっている。
【0031】
この発券機1においては、その券放出口14の外側に、本発明に係るチケット集積用トレイ20が取り付けられている。次に、このトレイ20について詳しく説明する。
【0032】
チケット集積用トレイ20は、図2および図3に示すように、このトレイ20を発券機1の券放出口14の外側に取り付けた状態で当該券放出口14側に位置する後面板21と、この後面板21の下端から前方側に延びるように形成されて券放出口14から当該トレイ20内に放出されるチケット32を受ける底面板22と、この底面板22の前端から直角に立ち上げ形成された前面板23と、これらの後面板21、底面板22および前面板23の各左側端および右側端に連続するように形成された左右の側面板24・24と、この左右の側面板24・24の上端どうしを繋ぐように形成された天面板25とを有する。なお、このトレイ20を構成する各面板には、本実施例では金属板(ステンレス板)が使用されている。また、底面板22は、この実施例では、その外面とその後方側において発券機1の発券方向に沿った水平面Hとのなす角度をYとしたときにY=150°となるように、前下がり状に傾斜している。
【0033】
天面板25の後縁25aと後面板21の上縁21aとの間には、このトレイ20を発券機1の券放出口14の外側に取り付けた状態で当該券放出口14に対応位置するチケット進入口26が形成されている。また、チケット取り出し用として、天面板25の前縁25bと左右の側面板24の各前縁24a・24aと前面板23の上縁23aとにより、前面側に開口するチケット取り出し口27が形成されているとともに、前面板23の上縁23aから底面板22の前後方向の略中央部分にかけて、これらの幅方向の中央部に切り欠き部28が形成されている。
【0034】
なお、本実施例では、チケット32が多少反っていてもチケット進入口26からトレイ20内に進入しやすくなるように、後面板21の上縁側が外側に所定角度だけ折り曲げ形成されている。また、後面板21の上縁近傍にはフック部21bが形成されており、このフック部21bを発券機本体2の券放出口14の下部側に引っかけることで、トレイ20が図3に示すような所定位置に取り付けられるようになっている。さらに、後面板21のトレイ内側の面には、チケット32の吸着を防止するために、後述するガイド部30を構成する樹脂シートと同種の樹脂シート211が貼り付けられている。
【0035】
このような構成に加えて、本発明のチケット集積用トレイ20には、天面板25の内面側(トレイ内側)にチケット案内用のガイド部30が設けられている。このガイド部30は、本実施例では縦断側面形状が三角形となるように形成されて表面側(図3において下面側)が粗面化処理された樹脂シート(比較的厚みのあるポリエチレン製のシートで、図3の状態で表面側から押すと僅かに撓む)で構成されており、その後方側の傾斜面がチケット当接面30aとされている。そして、発券機1の券放出口14から放出されるチケット32の先端側32aがチケット進入口26を通ってトレイ20内の上部に進入したときに、チケット32の先端側32aがガイド部30のチケット当接面30aに当接して、チケット32が前面板23の上縁23aを超えることなくその内面23b側に向けて落下するように、発券機1の発券方向に沿った水平面Hに対してガイド部30のチケット当接面30aが前下がり状に所定の角度X(本実施例ではX=130°)だけ傾斜させた構成とされている。なお、この実施例では、上記の樹脂シートからなるガイド部30は、天面板25の左右方向の略幅全体にわたって貼り付けられている。
【0036】
次に、このように構成された発券機1からチケット32を一枚ずつ連続して多数枚発行してチケット集積用トレイ20内に集積させる場合について説明する。
【0037】
発券機1は、チケット用の連続用紙3を所定の方向に送りながら一定のチケットサイズに切断し、その各切断片であるチケット紙31に磁気ライトヘッド6およびサーマルヘッド8により所定の情報を記録してチケット32としたうえで券放出口14から外部に一枚ずつ放出する。このようにして券放出口14から外部に放出されるチケット32は、チケット集積用トレイ20のチケット進入口26から当該トレイ20内に進入し、その先端側32aが、トレイ20の天面板25の内面側のガイド部30に当接してトレイ20内の下方に向けて落下する。
【0038】
このとき、ガイド部30のチケット当接面30aは発券機1における発券方向(水平方向)に沿った水平面Hに対して所定の角度Xだけ傾斜させた状態で設けられているので、チケット32が上向き等に或る程度反っていたとしても、チケット32は前面板23の上縁23aを超えることなくその内面23b側に向けて落下するようにガイド部30によって確実に案内される。また、トレイ20の両側には天面板25から底面板22に至る左右の側面板24・24が設けられてその部分が閉鎖されているので、これらによって風の影響を抑制することができる。すなわち、発券機1の券放出口14から放出されるチケット32が上記のようにしてトレイ20内に進入して所定の方向に向けて落下する間に、外部からの風によって煽られたりするのを両側面板24・24や天面板25の存在よって確実に抑制することができる。こうして、チケット32は発行された順番通りにトレイ20内に比較的整った状態で集積、収容される。
【0039】
そして、トレイ20においては、チケット取り出し用として、前面側にチケット取り出し口27が形成されているとともに、前面板23の上縁23aから底面板22にかけてこれらの幅方向の中央部に切り欠き部28が形成されているので、この切り欠き部28を利用してトレイ内に集積されているチケット32群を指で掴んで持ち上げることで、その上方側に位置するチケット取り出し口27から外部に取り出すことができる。こうして、トレイ20内に集積された多数枚のチケット32は、手間をかけることなく、またばらけさせることもなく、当該トレイ20から容易に取り出すことができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の発券機は、POSに構成される上位システムの命令により大人・子供・幼児用や、1日券、半日券、食事券等の各種チケットを発券する。1顧客に対し10枚以内の発券が通常であるが、団体客等の場合は代表者が数十枚〜数百枚程度のチケットを1度に購入する。本発明のチケット集積用トレイを使用すると、係員は発券中に現金やその他手続きの作業を行なうことができ、発券終了と同時にトレイから取り出して渡すことができる。この時、発券順序が保持されているので、例えば大人20枚、子供20枚の合計40枚発券した場合でもそのまま顧客に渡すことができる。屋根だけがあるような半屋外環境下での使用でも、風の影響を受けることなく確実に集積することが可能である。また、本発明のチケット集積用トレイは、機械的な機構部品を必要とせず、トレイの形状のみで効果を発揮するため、構成部品が少なく安価で製作することが可能であり量産性が見込める。用途例としては、遊園地・テーマパーク・水族館・博物館・美術館等の有料チケットを発行しており、かつ係員が操作しチケットを手渡しする場合に使用することが考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1 発券機
3 チケット用紙
31 切断片(チケット紙)
32 チケット
14 券放出口
20 チケット集積用トレイ
21 後面板
22 底面板
23 前面板
24 左右の側面板
25 天面板
26 チケット進入口
27 チケット取り出し口
28 切り欠き部
30 ガイド部
30a チケット当接面
H 発券方向に沿った水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チケットを発行する発券機の券放出口の外側に取り付けられて、当該券放出口から一枚ずつ放出されるチケットを収容するチケット集積用トレイであって、
このトレイを発券機の券放出口の外側に取り付けたときに当該券放出口側に位置することとなる後面板と、
この後面板の下端から前方側に延びるように形成されて券放出口から当該トレイ内に放出されたチケットを受ける底面板と、
この底面板の前端から立ち上げ形成された前面板と、
これらの後面板、底面板および前面板の各左側端および右側端に連続するように形成された左右の側面板と、
この左右の側面板の上端どうしを繋ぐように形成された天面板と、
天面板の後縁と後面板の上縁との間に形成されて、前記発券機の券放出口の外側に取り付けた状態で当該券放出口に対応位置するチケット進入口と、
天面板の前縁と左右の側面板の前縁と前面板の上縁とにより前面側に開口するように形成されたチケット取り出し口と、
前面板の上縁から底面板にかけてこれらの幅方向の中央部に形成された切り欠き部とを有し、
天面板の内面側にチケット案内用のガイド部が設けられており、
このガイド部は、前記券放出口から放出されるチケットの先端側がチケット進入口を通ってトレイ内の上部に進入したときに当該チケットの先端側が当該ガイド部に当接して当該チケットが前面板の上縁を超えずにその内面側に向けて落下するように、発券機の水平方向に沿った水平面に対して所定の角度だけ傾斜させた状態で設けられていることを特徴とするチケット集積用トレイ。
【請求項2】
ガイド部は、これのチケット当接面とその後方側において発券機の発券方向に沿った水平面とのなす角度をXとしたときに、115°≦X≦145°となるように設けられている、請求項1記載のチケット集積用トレイ。
【請求項3】
ガイド部は、そのチケット当接面側が粗面化処理されている、請求項1または2記載のチケット集積用トレイ。
【請求項4】
底面板は、前下がり状に傾斜しており、その外面とその後方側において発券機の発券方向に沿った水平面とのなす角度をYとしたときに、135°≦Y≦165°となるように設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のチケット集積用トレイ。
【請求項5】
左右の側面板は、その対向面間の間隔をL1とし、発券方向の前方側から見てチケットの左右方向の横幅寸法(短手方向の寸法)をM1とし、チケットの対角寸法をM3としたときに、M1<L1≦0.7×M3となるように設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載のチケット集積用トレイ。
【請求項6】
底面板は、その前後方向の長さ寸法をL2とし、平面視で発券方向となるチケットの前後方向(長手方向)の寸法をM2としたときに、M2−10mm<L2<M2となるように設定されている、請求項1ないし5のいずれかに記載のチケット集積用トレイ。
【請求項7】
チケット用の連続用紙を所定の方向に送りながら一定のチケットサイズに切断し、その各切断片に所定の情報を記録してチケットとしたうえで券放出口から外部に一枚ずつ放出する発券機であって、
前記券放出口の外部に請求項1ないし6のいずれかに記載のチケット集積用トレイが備えられていることを特徴とする発券機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−70451(P2011−70451A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221570(P2009−221570)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(591009093)マクセル精器株式会社 (30)
【Fターム(参考)】