チップコンベア
【課題】サイドプレートの段差部と該段差部と対応する先行側のサイドプレートの後端面との間に形成され、前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間の容積を低減して、サイドプレートのオーバーラップ部の摺動面の隙間に侵入する切屑を低減して周回抵抗を低減することができ、サイドプレートの耐久性を向上することができるチップコンベアを提供する。
【解決手段】連結軸38により上下方向の屈曲可能に無端状に連結されたサイドプレート39に対し、前後するサイドプレート39の屈曲を許容するための空間Vを形成する段差部39bを設け、該段差部39bを連結軸38の軸方向から見て屈折弧状に湾曲させ、垂直線Yに対する直線状の傾斜部39hの傾斜角αを20°、後端面39kの垂直線Yに対する傾斜角βを0°に設定する。
【解決手段】連結軸38により上下方向の屈曲可能に無端状に連結されたサイドプレート39に対し、前後するサイドプレート39の屈曲を許容するための空間Vを形成する段差部39bを設け、該段差部39bを連結軸38の軸方向から見て屈折弧状に湾曲させ、垂直線Yに対する直線状の傾斜部39hの傾斜角αを20°、後端面39kの垂直線Yに対する傾斜角βを0°に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤その他の切削用工作機械等により切削されたチップを排出するためのチップコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無端状のチップコンベアとして、図11に示すものが用いられている。このチップコンベアのコンベア本体35は、多数のヒンジプレート37の前後両端部に複数の軸受筒部37aを一体的に折り曲げ形成し、前後に隣接するヒンジプレート37同士の各軸受筒部37aを左右方向へ互いに直列状に噛み合わせて、それらの軸受筒部37aに連結軸38を貫通して構成されている。そして、前後するヒンジプレート37が連結軸38を中心に屈曲可能になっている。又、各連結軸38の左右両端部にヒンジプレート37と別体で形成したサイドプレート39がその軸孔39aを用いて前記連結軸38に支持され、サイドプレート39の外側部に搬送チェーン36が装着されている。
【0003】
前記各サイドプレート39には、前後するサイドプレート39をチップコンベアの周回方向Xに関してオーバーラップさせるための段差部39bが形成されている。そして、前記段差部39bを用いてサイドプレート39をオーバーラップさせることにより各サイドプレート39の内側面とヒンジプレート37の左右両端面との接触領域を多くして、工作機械からクーラントとともに排出されたコンベア本体35上の切屑がヒンジプレート37の左右両端面とサイドプレート39の内側面との隙間から落下するのを抑制するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のチップコンベアは、図12に示すように前記サイドプレート39の段差部39b全体が連結軸38の軸方向(図12の紙面直交方向)から見て直線状に形成されるとともに、段差部39bと先行するサイドプレート39の後端面39kも直線状に形成されていた。このため、前後するサイドプレート39の屈曲を許容するための前記段差部39bと後端面39kの間の空間Vの容積が大きくなり、次のような問題があることが判明した。すなわち、前記空間Vの容積が大きくなると、コンベア本体35上の切屑が前記空間Vへ進入する量が多くなり、進入した切屑が図12に示すように例えばサイドプレート39が水平状態から周回方向Xに移動されて立ち上がって斜め上方に移動する際に、前記空間Vの容積が減少する。このとき、図13に示す先行するサイドプレート39の内側プレート39cの外側摺動面39eと、後行側のサイドプレート39の外側プレート39dの内側摺動面39fとの隙間に噛み込まれる切屑の量が多くなり、チップコンベアの周回抵抗が大きくなるばかりでなく、前記サイドプレート39の磨耗が促進され、その耐久性を損なうという問題があった。
【0005】
又、図12又は図14において、前記各サイドプレート39が水平状態で、垂直線Yに対する前記段差部39bの傾斜角αが30°、後端面39kの傾斜角βが10.4°に形成されているので、次のような問題もあった。すなわち、図14に示すように、チップコンベアが周回方向Xに周回されて上部水平状態から下部水平状態に移行する切屑の下方への落出行程において、下部の水平状態のサイドプレート39の段差部39b及び後端面39kが垂直線Yに対し0°よりも大きい傾斜角α及び傾斜角βのままであるため、垂直方向に指向した状態と比較して、両者の表面及び後端面39kの表面に付着している切屑が落下し難く、前記空間Vに残留する切屑が多くなり、空間V内の切屑の排出効率を向上することができないという問題もあった。図14の右側に示すように、サイドプレート39がターンする傾斜状態においても、前記傾斜角α及び傾斜角βが大きいので、切屑が落下し難くなる。
【0006】
この発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、サイドプレートの段差部と該段差部と対応する先行側のサイドプレートの後端面との間に形成され、前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間の容積を低減するとともに、サイドプレートのオーバーラップ部の摺動面の隙間に侵入する切屑を少なくして周回抵抗を低減することにより、サイドプレートの耐久性を向上することができるチップコンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、前記段差部を、前記周回方向に関して傾斜する直線状の傾斜部と、この傾斜部に連続する上側屈曲部とにより前記連結軸の軸方向から見て、周回方向の前方に凸状に張り出す屈折弧状に形成し、前記傾斜部と対向する先行するサイドプレートの後端面を直線状に形成し、前記各サイドプレートが水平状態において、垂直線に対する前記傾斜部の傾斜角が18〜22°の範囲に、垂直線に対する前記サイドプレートの後端面の傾斜角が0°±2°の範囲に設定されていることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記傾斜部の下端には下側屈曲部が形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記傾斜角は20°、傾斜角は0°に設定されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、前記段差部は前記連結軸の軸方向から見て周回方向の前方に凸状に張り出す円弧状に形成され、該段差部と対向する先行するサイドプレートの後端面の中間部は、前記連結軸の軸方向から見て同じく周回方向の前方に凹状にへこむ円弧状に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイドプレートの段差部と該段差部と対応する先行側のサイドプレートの後端面との間に形成され、前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間の容積を低減して、サイドプレートのオーバーラップ部の摺動面の隙間に侵入する切屑を少なくして周回抵抗を低減することができ、サイドプレートの耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明のチップコンベアを備えた切屑回収装置を具体化した一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図5に示すように切屑回収装置11は例えば旋盤等の工作機械12の近傍に装設されている。工作機械12の前方には加工具によりワークを加工中に発生する切屑を前方に排出するシュータ13が設けられ、該シュータ13の直下には切屑回収装置11の支持台14が水平に配設されている。切屑回収装置11は前記支持台14に支持される水平フレーム21と、該水平フレーム21に接続され、かつ図5において右斜め上方に立ち上がる傾斜フレーム22と、該傾斜フレーム22の上端部に連結された上部水平フレーム23とにより構成されている。
【0012】
前記水平フレーム21の基端(図5において左端)には固定支持軸24を介して左右一対の被動スプロケットホイール25が設けられ、前記上部水平フレーム23の先端部には可動支持軸26を介して左右一対の駆動スプロケットホイール27が設けられている。前記両駆動スプロケットホイール27と被動スプロケットホイール25との間には切屑を搬送するための無端状のチップコンベア28が図5において時計回り方向(以下、周回方向Xという)への周回可能に装着されている。又、上部水平フレーム23には前記可動支持軸26及び駆動スプロケットホイール27を回動してチップコンベア28を周回駆動するためのモータ及びベルト等よりなる駆動機構(図示略)が装着されている。
【0013】
図6に示すように前記水平フレーム21は底板31と、該底板31の左右両側フランジ部にそれぞれ溶接された一対の下部案内レール32とを備えている。又、水平フレーム21は、前記両下部案内レール32に溶接された左右一対の上部案内レール33と、両上部案内レール33内にそれぞれ溶接されたチャンネル状の浮き上がり阻止レール34とを備えている。
【0014】
前記下部案内レール32は、側板32a、下部水平案内板32b及び上部水平案内板32cにより構成されている。前記上部案内レール33は側板33a及び前記側板33aの上端縁に斜めに一体的に折り曲げ形成されたカバー部33bにより構成されている。前記チップコンベア28は図7に示すように無端状のコンベア本体35と、その左右両側に連結された搬送チェーン36,36と、コンベア本体35と搬送チェーン36との間に介在された多数のサイドプレート39とにより構成されている。
【0015】
前記コンベア本体35を構成する多数のヒンジプレート37は、図8に示すようにそれぞれ同じ構成となっており、各プレート37の前後両側縁には複数の軸受筒部37aが一体に形成されている。これらの軸受筒部37aは左右にそれぞれ同じ個数だけ所定のピッチ、つまり軸受筒部37aの長さと軸受筒部37aが形成されていない部分の長さが等しくなるように形成されている。前側の軸受筒部37aと後側の軸受筒部37aとは、前後に対応しないように千鳥状に前記ピッチと同ピッチで位相が異なるように設けられている。そして、前記各ヒンジプレート37を互いに連結するには、後行側のヒンジプレート37の軸受筒部37aの間に先行側のヒンジプレート37の軸受筒部37aを挿入して各軸受筒部37aを順次噛み合わせる。次に、直列状に噛み合わされた数個の前記軸受筒部37aに対し連結軸38を貫通する。これによって各ヒンジプレート37は連結軸38を中心に屈曲(相対回動)可能に、かつ多数のヒンジプレート37が無端状に連結される。
【0016】
前記各ヒンジプレート37の左右両端部には前記軸受筒部37aに貫通された連結軸38を用いてサイドプレート39がそれぞれ装着されている。各サイドプレート39の下端部には前記連結軸38を貫通するための軸孔39aが二箇所に形成されている。各サイドプレート39には各サイドプレート39を前記周回方向Xに関して互いにオバーラップするように段差部39bが形成されている。
【0017】
前記各連結軸38の左右両端部には、左右対となっている搬送チェーン36を構成する連結リンク40及びコロ41が連結されている。図7に示すように前記サイドプレート39側、つまり内側に位置する連結リンク40は連結軸38に対しオーバーラップしないように一つおきに架橋され、外側に位置する連結リンク40は連結軸38に対しオーバーラップするように連続的に架橋されている。図6に示すように前記連結軸38の端部にはプレスによって抜止め突部38aが形成され、最外側の連結リンク40が外れないようになっている。
【0018】
次に、この発明の要部構成について、図1〜図4を中心に説明する。
図4に示すように、前記サイドプレート39は前記段差部39bによってヒンジプレート37の左右方向の端面に接触する内側プレート39cと、接触しない外側プレート39dとにプレス成形されている。先行するサイドプレート39の前記内側プレート39cの外側摺動面39eには、後行するサイドプレート39の前記外側プレート39dの内側摺動面39fが摺接されている。前記段差部39bの内側表面は、前記内側摺動面39fから反周回方向Xに行くに従って、前記ヒンジプレート37の端面に接近する傾斜段差面39gとなっている。
【0019】
図3に示すように、前記傾斜段差面39gの中間部は前記連結軸38の軸方向から見て直線状の傾斜部39hとなっている。この傾斜部39hの下端e1には下側屈曲部39iが連続して形成され、上端e2には上側屈曲部39jが連続して形成されている。前記傾斜部39hは前記上端e2が周回方向Xに関して後側になるように形成され、下側屈曲部39iは前記下端e1から離れるに従い反周回方向Xに変位するように形成されている。上側屈曲部39jは前記上端e2から離れるに従い反周回方向Xに変位するように形成されている。そして、前記段差部39bの傾斜段差面39gは、前記連結軸38の軸方向から見て、全体として周回方向Xの前方に張り出す屈折弧状に形成されている。
【0020】
前記内側プレート39cの前記傾斜部39hと対向する先行側のサイドプレート39の内側プレート39cの後端面39kは、サイドプレート39が水平状態にあるとき、連結軸38の軸方向から見て前記周回方向Xと直交するように直線状に形成され、該後端面39kの上下両端部には、四半円弧状の円弧面39l,39mに形成されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、前記段差部39bの傾斜段差面39gと、後端面39kとの間には、前後するサイドプレート39の連結軸38を中心とする屈曲動作を許容する空間Vが形成されている。この空間Vと対応する外側プレート39dの前記内側摺動面39fの露出面積Sは、図1,2に示すように、サイドプレート39の屈曲角γ(両連結軸38の軸線を結ぶ直線のなす角)によって変化する。図1に示すように、サイドプレート39が水平状態にあって前記屈曲角γが0°のときの露出面積S1は、図9(a)に示される形状となる。又、図1に示すように、サイドプレート39が右斜め上方に立ち上がって屈曲角γが最小角の15°となった場合には、露出面積S2は図9(b)に示す形状となり、前記露出面積S1よりも小さくなる。さらに、図1に示すようにサイドプレート39が前記被動スプロケットホイール25に対応して屈曲角γが最大角の85°となった場合には、露出面積S3は図9(c)に示す形状となり、露出面積S1よりも広くなる。
【0022】
図1に示すように、サイドプレート39が水平状態にあるとき、垂直線Yに対する傾斜部39hの傾斜角αは、18〜22°の範囲に設定され、この実施形態では、20°に設定されている。又、垂直線Yに対する後端面39kの傾斜角βは、0°±2°の範囲に設定され、この実施形態では、0°に設定されている。
【0023】
次に、前記のように構成した切屑回収装置11についてその動作を説明する。
図5は、切屑回収装置11が所定位置に据え付けられた使用可能な状態を示す。この状態において、切屑回収装置11が作動されて、可動支持軸26及び駆動スプロケットホイール27が回動されると、チップコンベア28が水平フレーム21及び傾斜フレーム22内を周回方向Xに周回される。工作機械12のシュータ13から図6に示すチップコンベア28の往行部28Aにクーラントとともに落下された切屑は、図5の上部右端に搬送された後、上部水平フレーム23の排出口から落下され、図示しない回収箱に回収される。なお、切屑の排出を終えたチップコンベア28は図6に示す復行部28Bとなってシュータ13側に帰還され、再び切屑の搬送を行う。
【0024】
図6に示すチップコンベア28の往行部28Aにクーラントとともに供給された切屑は、サイドプレート39によってコンベア本体35の上面から側方に落下するのを阻止する。
【0025】
前記のように構成した切屑回収装置11のチップコンベア28についてその効果を構成と共に記載する。
(1)前記実施形態では、図3に示すようにサイドプレート39の段差部39bを傾斜部39h、下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jにより連結軸38の軸方向から見て全体として周回方向Xに凸状に張り出す屈折弧状に形成し、垂直線Yに対する前記傾斜部39hの傾斜角αを20°に設定した。又、先行するサイドプレート39の後端面39kの垂直線Yに対する傾斜角βを0°とした。このため、段差部39bと先行するサイドプレート39の後端面39kとの間のサイドプレート39の屈曲を許容する空間Vを、従来のチップコンベアの直線状の段差部39bと先行するサイドプレート39の後端面39kとにより形成される空間Vよりも小さくすることができる。従って、図4に示す先行するサイドプレート39の内側プレート39cの外側摺動面39eと、後行側のサイドプレート39の外側プレート39dの内側摺動面39fとの隙間に侵入して噛み込まれる切屑の量を少なくして、コンベア本体35の周回運動時の抵抗を低減し、サイドプレート39の磨耗を抑制することができる。
【0026】
図9(a)〜(c)に示す前記実施形態の内側摺動面39fの露出面積S1,S2,S3と対応する従来のチップコンベアの露出面積S1a,S2a,S3aを、図9(g),(h),(i)に示す。図3に示すように、前記連結軸38の中心O1,O2のピッチPを3.81cm、サイドプレート39の上下方向の高さHを3.15cm、前記中心O1と後端面39kの水平方向の距離Lを0.75cm、前記傾斜部39hの形成角δを40°、下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jの形成角εを15°、中心O1からの距離r1を2.9cm、前記円弧面39l及び円弧面39mの半径r2,r3を0.75cm,0.3cmとした場合に、前記露出面積S1、S2,S3は、それぞれ181.1mm2、90.6mm2、470.5mm2である。これに対し、従来のチップコンベアにおける露出面積S1a,S2a,S3aは、それぞれ210.7mm2、124.1mm2、478.8mm2であり、本実施形態の露出面積S1、S2,S3は、従来のチップコンベアのそれぞれ対応する露出面積S1a,S2a,S3aよりも小さいことが判った。
【0027】
(2)この実施形態では、図1に示すように、サイドプレート39の段差部39bを直線状の傾斜部39hと、下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jにより形成し、垂直線Yに対する前記傾斜部39hの傾斜角α(図1参照)を20°に設定し、これに対応して先行するサイドプレート39の直線状の後端面39kの同じ傾斜角βを0°に設定した。このため、図2に示すようにチップコンベア28が切屑を落下させる位置に周回された状態で、垂直線Yに対する傾斜部39hの傾斜角α及び後端面39kの傾斜角βを従来のチップコンベアの傾斜角α(30°),傾斜角β(10.4°)と比較して小さくすることができる。この結果、傾斜部39h及び後端面39kに付着した切屑の落下を円滑に行うことができ、空間V内の切屑の排出効率を向上することができる。特に、前記後端面39kに付着した切屑の排出が適正に行われることにより、前記摺動面の隙間への切屑の噛み込みが低減されるとともに、前述したコンベア本体35の周回運動時の抵抗を少なくでき、ひいてはサイドプレート39の磨耗を抑制する効果を高めることができる。
【0028】
(3)この実施形態では、前記傾斜部39hの上端e2に上側屈曲部39jを屈曲するように形成したので、図2に示すように下側に周回移動された各サイドプレート39間の空間Vが下端に行くに従い末広がりとなり、空間V内の切屑の排出を円滑に行うことができる。
【0029】
(4)この実施形態では、前記傾斜部39hの下端e1に下側屈曲部39iを設けたので、図3に示すようにサイドプレート39の往行状態において、下側屈曲部39iと円弧面39lと間の空間Vaが下端に行くに従い末広がりとなり、前記空間V,Va内のクーラントを下方に円滑に排出することができる。
【0030】
次に、この発明の別の実施形態のチップコンベアについて説明する。
この実施形態は、前述した本実施形態の前後するサイドプレート39の連結軸38を中心とする屈曲動作を許容する前記空間Vの容積を低減するという新規な課題を達成するためのものである。この実施形態では、図10に示すように、サイドプレート39の段差部39bを連結軸38の軸方向から見て全体が円弧状になるように、かつ周回方向Xに凸状に張り出すように形成している。又、後端面39kの中間部は前記段差部39bに対応するように、かつ周回方向Xに凹状にへこむように円弧状に形成している。
【0031】
前記連結軸38の中心O1からの段差部39bの半径r4を2.84cm、先行するサイドプレート39の後端面39kの曲率半径r5を2.95cm、図3に基づいて説明したピッチP、距離L、高さH及び半径r2,r3のそれぞれ寸法を前述した各寸法と同じとした場合に、前記露出面積S1,S2,S3とそれぞれ対応するこの実施形態の露出面積S1´,S2´,S3´が図9(d)、(e)、(f)に示すように従来の露出面積S1a,S2a,S3aと比較して小さくなることが判った。具体的には、前記露出面積S1´、S2´,S3´は、それぞれ189.1mm2、101.6mm2、469.2mm2である。
【0032】
従って、この実施形態においても、先行するサイドプレート39の内側プレート39cの外側摺動面39e(以下図4参照)と、後行側のサイドプレート39の外側プレート39dの内側摺動面39fとの隙間に侵入して噛み込まれる切屑の量を少なくして、コンベア本体35の周回運動時の抵抗を低減し、サイドプレート39の磨耗を抑制することができる。
【0033】
なお、前記実施形態のチップコンベアは以下のように変更して具体化することもできる。
・前記ヒンジプレート37の左右両端部に前記サイドプレート39を一体に形成したものを用いてもよい。
【0034】
・図3に示す前記傾斜部39hと下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jの接続部を滑らかな円弧状に接続してもよい。
・前記下側屈曲部39iを省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明のチップコンベアのサイドプレートの連結状態を示す正面図。
【図2】サイドプレートの連結状態を示す正面図。
【図3】サイドプレートの拡大正面図。
【図4】チップコンベアの部分平面図。
【図5】チップコンベアの正面図。
【図6】図1の1−1線断面図。
【図7】チップコンベアの部分平面図。
【図8】チップコンベアの分解斜視図。
【図9】(a)〜(c)は、本実施形態のサイドプレートの内側摺動面の露出面積を示す説明図、(d)〜(f)は、別の実施形態のサイドプレートの内側摺動面の露出面積を示す説明図、(g)〜(i)は従来のチップコンベアのサイドプレートの内側摺動面の露出面積を示す説明図。
【図10】この発明の別の実施形態を示すサイドプレートの正面図。
【図11】従来のチップコンベアの部分斜視図。
【図12】従来のサイドプレートの連結状態の部分正面図。
【図13】従来のサイドプレートの連結状態の部分平面図。
【図14】従来のサイドプレートの連結状態の部分正面図。
【符号の説明】
【0036】
α,β…傾斜角、V,Va…空間、X…周回方向、Y…垂直線、e1…下端、28…チップコンベア、35…コンベア本体、36…搬送チェーン、37…ヒンジプレート、38…連結軸、39…サイドプレート、39b…段差部、39h…傾斜部、39i…下側屈曲部、39j…上側屈曲部、39k…後端面。
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤その他の切削用工作機械等により切削されたチップを排出するためのチップコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無端状のチップコンベアとして、図11に示すものが用いられている。このチップコンベアのコンベア本体35は、多数のヒンジプレート37の前後両端部に複数の軸受筒部37aを一体的に折り曲げ形成し、前後に隣接するヒンジプレート37同士の各軸受筒部37aを左右方向へ互いに直列状に噛み合わせて、それらの軸受筒部37aに連結軸38を貫通して構成されている。そして、前後するヒンジプレート37が連結軸38を中心に屈曲可能になっている。又、各連結軸38の左右両端部にヒンジプレート37と別体で形成したサイドプレート39がその軸孔39aを用いて前記連結軸38に支持され、サイドプレート39の外側部に搬送チェーン36が装着されている。
【0003】
前記各サイドプレート39には、前後するサイドプレート39をチップコンベアの周回方向Xに関してオーバーラップさせるための段差部39bが形成されている。そして、前記段差部39bを用いてサイドプレート39をオーバーラップさせることにより各サイドプレート39の内側面とヒンジプレート37の左右両端面との接触領域を多くして、工作機械からクーラントとともに排出されたコンベア本体35上の切屑がヒンジプレート37の左右両端面とサイドプレート39の内側面との隙間から落下するのを抑制するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のチップコンベアは、図12に示すように前記サイドプレート39の段差部39b全体が連結軸38の軸方向(図12の紙面直交方向)から見て直線状に形成されるとともに、段差部39bと先行するサイドプレート39の後端面39kも直線状に形成されていた。このため、前後するサイドプレート39の屈曲を許容するための前記段差部39bと後端面39kの間の空間Vの容積が大きくなり、次のような問題があることが判明した。すなわち、前記空間Vの容積が大きくなると、コンベア本体35上の切屑が前記空間Vへ進入する量が多くなり、進入した切屑が図12に示すように例えばサイドプレート39が水平状態から周回方向Xに移動されて立ち上がって斜め上方に移動する際に、前記空間Vの容積が減少する。このとき、図13に示す先行するサイドプレート39の内側プレート39cの外側摺動面39eと、後行側のサイドプレート39の外側プレート39dの内側摺動面39fとの隙間に噛み込まれる切屑の量が多くなり、チップコンベアの周回抵抗が大きくなるばかりでなく、前記サイドプレート39の磨耗が促進され、その耐久性を損なうという問題があった。
【0005】
又、図12又は図14において、前記各サイドプレート39が水平状態で、垂直線Yに対する前記段差部39bの傾斜角αが30°、後端面39kの傾斜角βが10.4°に形成されているので、次のような問題もあった。すなわち、図14に示すように、チップコンベアが周回方向Xに周回されて上部水平状態から下部水平状態に移行する切屑の下方への落出行程において、下部の水平状態のサイドプレート39の段差部39b及び後端面39kが垂直線Yに対し0°よりも大きい傾斜角α及び傾斜角βのままであるため、垂直方向に指向した状態と比較して、両者の表面及び後端面39kの表面に付着している切屑が落下し難く、前記空間Vに残留する切屑が多くなり、空間V内の切屑の排出効率を向上することができないという問題もあった。図14の右側に示すように、サイドプレート39がターンする傾斜状態においても、前記傾斜角α及び傾斜角βが大きいので、切屑が落下し難くなる。
【0006】
この発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、サイドプレートの段差部と該段差部と対応する先行側のサイドプレートの後端面との間に形成され、前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間の容積を低減するとともに、サイドプレートのオーバーラップ部の摺動面の隙間に侵入する切屑を少なくして周回抵抗を低減することにより、サイドプレートの耐久性を向上することができるチップコンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、前記段差部を、前記周回方向に関して傾斜する直線状の傾斜部と、この傾斜部に連続する上側屈曲部とにより前記連結軸の軸方向から見て、周回方向の前方に凸状に張り出す屈折弧状に形成し、前記傾斜部と対向する先行するサイドプレートの後端面を直線状に形成し、前記各サイドプレートが水平状態において、垂直線に対する前記傾斜部の傾斜角が18〜22°の範囲に、垂直線に対する前記サイドプレートの後端面の傾斜角が0°±2°の範囲に設定されていることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記傾斜部の下端には下側屈曲部が形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記傾斜角は20°、傾斜角は0°に設定されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、前記段差部は前記連結軸の軸方向から見て周回方向の前方に凸状に張り出す円弧状に形成され、該段差部と対向する先行するサイドプレートの後端面の中間部は、前記連結軸の軸方向から見て同じく周回方向の前方に凹状にへこむ円弧状に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイドプレートの段差部と該段差部と対応する先行側のサイドプレートの後端面との間に形成され、前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間の容積を低減して、サイドプレートのオーバーラップ部の摺動面の隙間に侵入する切屑を少なくして周回抵抗を低減することができ、サイドプレートの耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明のチップコンベアを備えた切屑回収装置を具体化した一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図5に示すように切屑回収装置11は例えば旋盤等の工作機械12の近傍に装設されている。工作機械12の前方には加工具によりワークを加工中に発生する切屑を前方に排出するシュータ13が設けられ、該シュータ13の直下には切屑回収装置11の支持台14が水平に配設されている。切屑回収装置11は前記支持台14に支持される水平フレーム21と、該水平フレーム21に接続され、かつ図5において右斜め上方に立ち上がる傾斜フレーム22と、該傾斜フレーム22の上端部に連結された上部水平フレーム23とにより構成されている。
【0012】
前記水平フレーム21の基端(図5において左端)には固定支持軸24を介して左右一対の被動スプロケットホイール25が設けられ、前記上部水平フレーム23の先端部には可動支持軸26を介して左右一対の駆動スプロケットホイール27が設けられている。前記両駆動スプロケットホイール27と被動スプロケットホイール25との間には切屑を搬送するための無端状のチップコンベア28が図5において時計回り方向(以下、周回方向Xという)への周回可能に装着されている。又、上部水平フレーム23には前記可動支持軸26及び駆動スプロケットホイール27を回動してチップコンベア28を周回駆動するためのモータ及びベルト等よりなる駆動機構(図示略)が装着されている。
【0013】
図6に示すように前記水平フレーム21は底板31と、該底板31の左右両側フランジ部にそれぞれ溶接された一対の下部案内レール32とを備えている。又、水平フレーム21は、前記両下部案内レール32に溶接された左右一対の上部案内レール33と、両上部案内レール33内にそれぞれ溶接されたチャンネル状の浮き上がり阻止レール34とを備えている。
【0014】
前記下部案内レール32は、側板32a、下部水平案内板32b及び上部水平案内板32cにより構成されている。前記上部案内レール33は側板33a及び前記側板33aの上端縁に斜めに一体的に折り曲げ形成されたカバー部33bにより構成されている。前記チップコンベア28は図7に示すように無端状のコンベア本体35と、その左右両側に連結された搬送チェーン36,36と、コンベア本体35と搬送チェーン36との間に介在された多数のサイドプレート39とにより構成されている。
【0015】
前記コンベア本体35を構成する多数のヒンジプレート37は、図8に示すようにそれぞれ同じ構成となっており、各プレート37の前後両側縁には複数の軸受筒部37aが一体に形成されている。これらの軸受筒部37aは左右にそれぞれ同じ個数だけ所定のピッチ、つまり軸受筒部37aの長さと軸受筒部37aが形成されていない部分の長さが等しくなるように形成されている。前側の軸受筒部37aと後側の軸受筒部37aとは、前後に対応しないように千鳥状に前記ピッチと同ピッチで位相が異なるように設けられている。そして、前記各ヒンジプレート37を互いに連結するには、後行側のヒンジプレート37の軸受筒部37aの間に先行側のヒンジプレート37の軸受筒部37aを挿入して各軸受筒部37aを順次噛み合わせる。次に、直列状に噛み合わされた数個の前記軸受筒部37aに対し連結軸38を貫通する。これによって各ヒンジプレート37は連結軸38を中心に屈曲(相対回動)可能に、かつ多数のヒンジプレート37が無端状に連結される。
【0016】
前記各ヒンジプレート37の左右両端部には前記軸受筒部37aに貫通された連結軸38を用いてサイドプレート39がそれぞれ装着されている。各サイドプレート39の下端部には前記連結軸38を貫通するための軸孔39aが二箇所に形成されている。各サイドプレート39には各サイドプレート39を前記周回方向Xに関して互いにオバーラップするように段差部39bが形成されている。
【0017】
前記各連結軸38の左右両端部には、左右対となっている搬送チェーン36を構成する連結リンク40及びコロ41が連結されている。図7に示すように前記サイドプレート39側、つまり内側に位置する連結リンク40は連結軸38に対しオーバーラップしないように一つおきに架橋され、外側に位置する連結リンク40は連結軸38に対しオーバーラップするように連続的に架橋されている。図6に示すように前記連結軸38の端部にはプレスによって抜止め突部38aが形成され、最外側の連結リンク40が外れないようになっている。
【0018】
次に、この発明の要部構成について、図1〜図4を中心に説明する。
図4に示すように、前記サイドプレート39は前記段差部39bによってヒンジプレート37の左右方向の端面に接触する内側プレート39cと、接触しない外側プレート39dとにプレス成形されている。先行するサイドプレート39の前記内側プレート39cの外側摺動面39eには、後行するサイドプレート39の前記外側プレート39dの内側摺動面39fが摺接されている。前記段差部39bの内側表面は、前記内側摺動面39fから反周回方向Xに行くに従って、前記ヒンジプレート37の端面に接近する傾斜段差面39gとなっている。
【0019】
図3に示すように、前記傾斜段差面39gの中間部は前記連結軸38の軸方向から見て直線状の傾斜部39hとなっている。この傾斜部39hの下端e1には下側屈曲部39iが連続して形成され、上端e2には上側屈曲部39jが連続して形成されている。前記傾斜部39hは前記上端e2が周回方向Xに関して後側になるように形成され、下側屈曲部39iは前記下端e1から離れるに従い反周回方向Xに変位するように形成されている。上側屈曲部39jは前記上端e2から離れるに従い反周回方向Xに変位するように形成されている。そして、前記段差部39bの傾斜段差面39gは、前記連結軸38の軸方向から見て、全体として周回方向Xの前方に張り出す屈折弧状に形成されている。
【0020】
前記内側プレート39cの前記傾斜部39hと対向する先行側のサイドプレート39の内側プレート39cの後端面39kは、サイドプレート39が水平状態にあるとき、連結軸38の軸方向から見て前記周回方向Xと直交するように直線状に形成され、該後端面39kの上下両端部には、四半円弧状の円弧面39l,39mに形成されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、前記段差部39bの傾斜段差面39gと、後端面39kとの間には、前後するサイドプレート39の連結軸38を中心とする屈曲動作を許容する空間Vが形成されている。この空間Vと対応する外側プレート39dの前記内側摺動面39fの露出面積Sは、図1,2に示すように、サイドプレート39の屈曲角γ(両連結軸38の軸線を結ぶ直線のなす角)によって変化する。図1に示すように、サイドプレート39が水平状態にあって前記屈曲角γが0°のときの露出面積S1は、図9(a)に示される形状となる。又、図1に示すように、サイドプレート39が右斜め上方に立ち上がって屈曲角γが最小角の15°となった場合には、露出面積S2は図9(b)に示す形状となり、前記露出面積S1よりも小さくなる。さらに、図1に示すようにサイドプレート39が前記被動スプロケットホイール25に対応して屈曲角γが最大角の85°となった場合には、露出面積S3は図9(c)に示す形状となり、露出面積S1よりも広くなる。
【0022】
図1に示すように、サイドプレート39が水平状態にあるとき、垂直線Yに対する傾斜部39hの傾斜角αは、18〜22°の範囲に設定され、この実施形態では、20°に設定されている。又、垂直線Yに対する後端面39kの傾斜角βは、0°±2°の範囲に設定され、この実施形態では、0°に設定されている。
【0023】
次に、前記のように構成した切屑回収装置11についてその動作を説明する。
図5は、切屑回収装置11が所定位置に据え付けられた使用可能な状態を示す。この状態において、切屑回収装置11が作動されて、可動支持軸26及び駆動スプロケットホイール27が回動されると、チップコンベア28が水平フレーム21及び傾斜フレーム22内を周回方向Xに周回される。工作機械12のシュータ13から図6に示すチップコンベア28の往行部28Aにクーラントとともに落下された切屑は、図5の上部右端に搬送された後、上部水平フレーム23の排出口から落下され、図示しない回収箱に回収される。なお、切屑の排出を終えたチップコンベア28は図6に示す復行部28Bとなってシュータ13側に帰還され、再び切屑の搬送を行う。
【0024】
図6に示すチップコンベア28の往行部28Aにクーラントとともに供給された切屑は、サイドプレート39によってコンベア本体35の上面から側方に落下するのを阻止する。
【0025】
前記のように構成した切屑回収装置11のチップコンベア28についてその効果を構成と共に記載する。
(1)前記実施形態では、図3に示すようにサイドプレート39の段差部39bを傾斜部39h、下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jにより連結軸38の軸方向から見て全体として周回方向Xに凸状に張り出す屈折弧状に形成し、垂直線Yに対する前記傾斜部39hの傾斜角αを20°に設定した。又、先行するサイドプレート39の後端面39kの垂直線Yに対する傾斜角βを0°とした。このため、段差部39bと先行するサイドプレート39の後端面39kとの間のサイドプレート39の屈曲を許容する空間Vを、従来のチップコンベアの直線状の段差部39bと先行するサイドプレート39の後端面39kとにより形成される空間Vよりも小さくすることができる。従って、図4に示す先行するサイドプレート39の内側プレート39cの外側摺動面39eと、後行側のサイドプレート39の外側プレート39dの内側摺動面39fとの隙間に侵入して噛み込まれる切屑の量を少なくして、コンベア本体35の周回運動時の抵抗を低減し、サイドプレート39の磨耗を抑制することができる。
【0026】
図9(a)〜(c)に示す前記実施形態の内側摺動面39fの露出面積S1,S2,S3と対応する従来のチップコンベアの露出面積S1a,S2a,S3aを、図9(g),(h),(i)に示す。図3に示すように、前記連結軸38の中心O1,O2のピッチPを3.81cm、サイドプレート39の上下方向の高さHを3.15cm、前記中心O1と後端面39kの水平方向の距離Lを0.75cm、前記傾斜部39hの形成角δを40°、下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jの形成角εを15°、中心O1からの距離r1を2.9cm、前記円弧面39l及び円弧面39mの半径r2,r3を0.75cm,0.3cmとした場合に、前記露出面積S1、S2,S3は、それぞれ181.1mm2、90.6mm2、470.5mm2である。これに対し、従来のチップコンベアにおける露出面積S1a,S2a,S3aは、それぞれ210.7mm2、124.1mm2、478.8mm2であり、本実施形態の露出面積S1、S2,S3は、従来のチップコンベアのそれぞれ対応する露出面積S1a,S2a,S3aよりも小さいことが判った。
【0027】
(2)この実施形態では、図1に示すように、サイドプレート39の段差部39bを直線状の傾斜部39hと、下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jにより形成し、垂直線Yに対する前記傾斜部39hの傾斜角α(図1参照)を20°に設定し、これに対応して先行するサイドプレート39の直線状の後端面39kの同じ傾斜角βを0°に設定した。このため、図2に示すようにチップコンベア28が切屑を落下させる位置に周回された状態で、垂直線Yに対する傾斜部39hの傾斜角α及び後端面39kの傾斜角βを従来のチップコンベアの傾斜角α(30°),傾斜角β(10.4°)と比較して小さくすることができる。この結果、傾斜部39h及び後端面39kに付着した切屑の落下を円滑に行うことができ、空間V内の切屑の排出効率を向上することができる。特に、前記後端面39kに付着した切屑の排出が適正に行われることにより、前記摺動面の隙間への切屑の噛み込みが低減されるとともに、前述したコンベア本体35の周回運動時の抵抗を少なくでき、ひいてはサイドプレート39の磨耗を抑制する効果を高めることができる。
【0028】
(3)この実施形態では、前記傾斜部39hの上端e2に上側屈曲部39jを屈曲するように形成したので、図2に示すように下側に周回移動された各サイドプレート39間の空間Vが下端に行くに従い末広がりとなり、空間V内の切屑の排出を円滑に行うことができる。
【0029】
(4)この実施形態では、前記傾斜部39hの下端e1に下側屈曲部39iを設けたので、図3に示すようにサイドプレート39の往行状態において、下側屈曲部39iと円弧面39lと間の空間Vaが下端に行くに従い末広がりとなり、前記空間V,Va内のクーラントを下方に円滑に排出することができる。
【0030】
次に、この発明の別の実施形態のチップコンベアについて説明する。
この実施形態は、前述した本実施形態の前後するサイドプレート39の連結軸38を中心とする屈曲動作を許容する前記空間Vの容積を低減するという新規な課題を達成するためのものである。この実施形態では、図10に示すように、サイドプレート39の段差部39bを連結軸38の軸方向から見て全体が円弧状になるように、かつ周回方向Xに凸状に張り出すように形成している。又、後端面39kの中間部は前記段差部39bに対応するように、かつ周回方向Xに凹状にへこむように円弧状に形成している。
【0031】
前記連結軸38の中心O1からの段差部39bの半径r4を2.84cm、先行するサイドプレート39の後端面39kの曲率半径r5を2.95cm、図3に基づいて説明したピッチP、距離L、高さH及び半径r2,r3のそれぞれ寸法を前述した各寸法と同じとした場合に、前記露出面積S1,S2,S3とそれぞれ対応するこの実施形態の露出面積S1´,S2´,S3´が図9(d)、(e)、(f)に示すように従来の露出面積S1a,S2a,S3aと比較して小さくなることが判った。具体的には、前記露出面積S1´、S2´,S3´は、それぞれ189.1mm2、101.6mm2、469.2mm2である。
【0032】
従って、この実施形態においても、先行するサイドプレート39の内側プレート39cの外側摺動面39e(以下図4参照)と、後行側のサイドプレート39の外側プレート39dの内側摺動面39fとの隙間に侵入して噛み込まれる切屑の量を少なくして、コンベア本体35の周回運動時の抵抗を低減し、サイドプレート39の磨耗を抑制することができる。
【0033】
なお、前記実施形態のチップコンベアは以下のように変更して具体化することもできる。
・前記ヒンジプレート37の左右両端部に前記サイドプレート39を一体に形成したものを用いてもよい。
【0034】
・図3に示す前記傾斜部39hと下側屈曲部39i及び上側屈曲部39jの接続部を滑らかな円弧状に接続してもよい。
・前記下側屈曲部39iを省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明のチップコンベアのサイドプレートの連結状態を示す正面図。
【図2】サイドプレートの連結状態を示す正面図。
【図3】サイドプレートの拡大正面図。
【図4】チップコンベアの部分平面図。
【図5】チップコンベアの正面図。
【図6】図1の1−1線断面図。
【図7】チップコンベアの部分平面図。
【図8】チップコンベアの分解斜視図。
【図9】(a)〜(c)は、本実施形態のサイドプレートの内側摺動面の露出面積を示す説明図、(d)〜(f)は、別の実施形態のサイドプレートの内側摺動面の露出面積を示す説明図、(g)〜(i)は従来のチップコンベアのサイドプレートの内側摺動面の露出面積を示す説明図。
【図10】この発明の別の実施形態を示すサイドプレートの正面図。
【図11】従来のチップコンベアの部分斜視図。
【図12】従来のサイドプレートの連結状態の部分正面図。
【図13】従来のサイドプレートの連結状態の部分平面図。
【図14】従来のサイドプレートの連結状態の部分正面図。
【符号の説明】
【0036】
α,β…傾斜角、V,Va…空間、X…周回方向、Y…垂直線、e1…下端、28…チップコンベア、35…コンベア本体、36…搬送チェーン、37…ヒンジプレート、38…連結軸、39…サイドプレート、39b…段差部、39h…傾斜部、39i…下側屈曲部、39j…上側屈曲部、39k…後端面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、
前記段差部を、前記周回方向に関して傾斜する直線状の傾斜部と、この傾斜部に連続する上側屈曲部とにより前記連結軸の軸方向から見て、周回方向の前方に凸状に張り出す屈折弧状に形成し、前記傾斜部と対向する先行するサイドプレートの後端面を直線状に形成し、前記各サイドプレートが水平状態において、垂直線(Y)に対する前記傾斜部の傾斜角(α)が18〜22°の範囲に、垂直線(Y)に対する前記サイドプレートの後端面の傾斜角(β)が0°±2°の範囲に設定されていることを特徴とするチップコンベア。
【請求項2】
請求項1において、前記傾斜部の下端には下側屈曲部が形成されていることを特徴とするチップコンベア。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記傾斜角(α)は20°、傾斜角(β)は0°に設定されているチップコンベア。
【請求項4】
多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、
前記段差部は前記連結軸の軸方向から見て周回方向の前方に凸状に張り出す円弧状に形成され、該段差部と対向する先行するサイドプレートの後端面の中間部は、前記連結軸の軸方向から見て同じく周回方向の前方に凹状にへこむ円弧状に形成されているチップコンベア。
【請求項1】
多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、
前記段差部を、前記周回方向に関して傾斜する直線状の傾斜部と、この傾斜部に連続する上側屈曲部とにより前記連結軸の軸方向から見て、周回方向の前方に凸状に張り出す屈折弧状に形成し、前記傾斜部と対向する先行するサイドプレートの後端面を直線状に形成し、前記各サイドプレートが水平状態において、垂直線(Y)に対する前記傾斜部の傾斜角(α)が18〜22°の範囲に、垂直線(Y)に対する前記サイドプレートの後端面の傾斜角(β)が0°±2°の範囲に設定されていることを特徴とするチップコンベア。
【請求項2】
請求項1において、前記傾斜部の下端には下側屈曲部が形成されていることを特徴とするチップコンベア。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記傾斜角(α)は20°、傾斜角(β)は0°に設定されているチップコンベア。
【請求項4】
多数のヒンジプレートの前後両端部を連結軸により連結した無端状のコンベア本体の左右両側に対し前記連結軸を利用して搬送チェーンをそれぞれ装着するとともに、前記各ヒンジプレートの左右両端部にサイドプレートをそれぞれ設け、前記各サイドプレートに対し前後するサイドプレートをオーバーラップさせるための段差部を形成し、前記コンベア本体の周回方向に後行するサイドプレートの前記段差部の段差面と、先行するサイドプレートの後端面との間に相前後するサイドプレートの屈曲を許容する空間を設けたチップコンベアにおいて、
前記段差部は前記連結軸の軸方向から見て周回方向の前方に凸状に張り出す円弧状に形成され、該段差部と対向する先行するサイドプレートの後端面の中間部は、前記連結軸の軸方向から見て同じく周回方向の前方に凹状にへこむ円弧状に形成されているチップコンベア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−119782(P2008−119782A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305459(P2006−305459)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(592213132)榎本ビーエー株式会社 (8)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(592213132)榎本ビーエー株式会社 (8)
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